【実施例】
【0013】
図1〜
図6は、本発明の実施例を示す。
【0014】
最初に、電極本体について説明する。
【0015】
銅合金製の電極本体1は、円筒状の形状であり、静止部材11に差し込まれる固定部2と、鋼板部品3が載置されるキャップ部4がねじ部5において結合されている。電極本体1には、断面円形のガイド孔6が形成され、このガイド孔6は、大径孔7と、キャップ部4の中央部に形成した小径孔8と、小径孔8よりも小径で電極本体1の上面に開口している通孔9によって構成されている。
【0016】
固定部2の下部にテーパ部10が形成され、このテーパ部10が静止部材11に設けたテーパ孔に嵌入される。固定部2の側部に、圧縮空気をガイド孔6に導入する通気口12が設けてある。なお、電極の中心軸線は符号O−Oで示してある。
【0017】
つぎに、摺動部材について説明する。
【0018】
ガイドピン14は、ステンレス鋼のような金属材料またはセラミック材料等の耐熱硬質材料で構成されている。摺動部材15は、耐熱性に優れた絶縁性合成樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))によって構成されている。ガイドピン14は、摺動部材15に挿入された状態で一体化されている。ガイドピン14と摺動部材15は、いずれも断面円形であり、ガイドピン14は鋼板部品3の下孔16を相対的に貫通して鋼板部品3の位置決め機能を果たし、その先端部に嵌め合わされた鉄製のプロジェクションナット17を支持している。そのために、プロジェクションナット17のねじ孔に進入する小径部18とテーパ部19が形成されている。以下の説明において、プロジェクションナットを単にナットと表現する場合もある。
【0019】
ガイドピン14は上記のように、摺動部材15に挿入された状態で一体化されている。一体化の方法としては、ねじ止めや樹脂インジェクション式のインサート成形など種々な方式が採用できるが、ここでは前者のねじ止めタイプである。摺動部材15は、大径孔7内に実質的に隙間がなくて摺動できる状態で嵌め込んである。摺動部材15に挿入孔20が開けられ、そこにガイドピン14が圧入されている。ガイドピン14の端部にこれと一体的にボルト21が形成され、摺動部材15の底部材22にボルト21を貫通し、ワッシャ23を組み付けてロックナット24で締め付けてある。
【0020】
ナット17は、四角い本体の中央部にねじ孔が形成されたもので、本体の四隅に溶着用突起25が形成されている。電極本体1は、固定電極であり、それと同軸状態で可動電極26が配置してある。摺動部材15は、可動電極26が動作して溶接電流が通電されたときに、電流はナット17の溶着用突起25から鋼板部品3にのみ流れるように、絶縁機能を果たしている。
【0021】
なお、
図1(A)のB−B断面が同図の(B)図である。
【0022】
つぎに、摺動部材とガイドピンの挿入構造を説明する。
【0023】
摺動部材15は前述のように、大径孔7内に実質的に隙間がなくて摺動できる状態で嵌め込んであり、この大径孔7に嵌め込まれている部分が大径の摺動部27であり、この摺動部27から連続した状態で伸びている部分が筒状の延長部28であり、小径孔8内に進入させてある。
【0024】
図1(B)に示すように、摺動部27の外周面に、冷却空気の空気通路30が電極本体1の中心軸線O−O方向に形成してある。空気通路30としては種々な構造が採用できる。ここでは、
図1(A)や(B)に示すように、摺動部材15(摺動部27)の外周面に平面部31を90度間隔で4つ形成して空気通路30が構成してある。これに換えて、図示していないが、摺動部材15の外周面に複数の凹溝を中心軸線O−Oの方向に形成して、空気通路30を構成してもよい。
【0025】
ガイドピン14は、通孔9を貫通して電極本体1の端面から突出しており、可動電極26の進出前の段階、すなわち弾性リング37が後述の冷却空気用の流通間隙を閉鎖している段階では、テーパ部19に係止されたナット17と鋼板部品3の間に、空隙L1が形成されている。
【0026】
摺動部材15とガイド孔6の内底面の間に圧縮コイルスプリング32が嵌め込まれており、その張力が摺動部材15に作用している。なお、符号33は、ガイド孔6の内底面に嵌め込んだ絶縁シートである。また、圧縮コイルスプリング32の張力に換えて、通気口12から導入した空気圧を利用することも可能である。
【0027】
つぎに、流通間隙について説明する。
【0028】
通気口12からガイド孔6に供給された冷却空気は、摺動部27と大径孔7の間に設けられている空気通路30から、延長部28と小径孔8の間に設けられた流通間隙34(
図2(A)参照)と、後述の弾性リングを通過し、ガイドピン14と通孔9との間に設けられた流通間隙35(
図2(A)参照)を通って、下孔16から溶着用突起25の溶融部にいたる。流通間隙は、符号34と35で示されているが、平面部31によって形成された空気通路30も、流通間隙を構成する空隙として存在している。
【0029】
なお、符号36で示された環状の空間部分は、摺動部27が進退するための空間である。また、この空間部分36の内径は、小径孔8の内径よりも大きく設定してある。
【0030】
つぎに、弾性リングについて説明する。
【0031】
通気口12から入った冷却空気が、流通間隙30、34および35を通過して下孔16を抜けて行く途上で、空気流路を閉鎖したり開通したりするために、弾性リング37が設けてある。
【0032】
弾性リング37の断面形状は、円形、楕円形、四角形など種々なものが採用できるが、ここでは図示のように、円形断面である。弾性リング37は、弾性のある非金属材料で作られている。代表的な材料としては、合成ゴムが適しており、ウレタン・ゴムが最適である。
【0033】
ガイドピン14の外周面に、円周方向にわたって断面円弧状の溝38が形成してあり、そこに弾性リング37がはめ込まれている。このはめ込みによる締め付けを強くするために、溝38の最小径部の直径寸法が、弾性リング37の最小径部の内径寸法よりも、大きく設定してある。こうすることにより、弾性リング37が溝38を締め付けた状態になって、弾性リング37とガイドピン14の一体性が強固なものとなる。なお、上記のように、弾性リング37の断面形状を変更することにより、溝38の断面形状もそれに合わせて変更する。
【0034】
溝38に嵌め込まれたときの弾性リング37の最大外径寸法は、小径孔8の内径寸法よりもわずかに大きくしてある。こうすることにより、
図2に符号52で示すように、圧着部が形成される。圧着部52は、弾性リング37の外周部が小径孔8の内面に押し付けられて弾性変形をした、円筒状の面である。
【0035】
図2(A)に示すように、摺動部材15の延長部28の端面が、加圧端面39とされ、溝38にはめ込まれた弾性リング37の外周面に対して接触している。つまり、溝38と加圧端面39の相対位置が、加圧端面39が溝38に嵌め込まれた弾性リング37の表面に接触するように設定してある。この加圧端面39は、中心軸線O−Oと垂直な位置関係になっている仮想平面上に存在させてある。加圧端面39の加圧力は、圧縮コイルスプリング32の張力と、通気口12から導入された冷却空気の空気圧である。
【0036】
一方、
図2(A)や
図4(A)に示すように、ガイド孔6の内端面40が、加圧端面39と向かい合った位置関係になっている。そして、弾性リング37の中心部41が、向かい合った加圧端面39と内端面40の間に位置している。つまり、内端面40、弾性リング37、加圧端面39が、中心軸線O−O方向に一直線上で並んでいる。
【0037】
なお、弾性リング37の締め付け力を強くすることにより、前述の溝38を止めることも可能である。
【0038】
図4(A)に示すように、可動電極26の進出でガイドピン14が押し下げられたとき、弾性リング37を小径孔8から脱出させて、冷却空気の流路面積を確保している。そのために、空間部分36の内径を、小径孔8の内径よりも大きく設定してあるとともに、小径孔8の長さL2を前記空隙L1よりも短くしてある(L1>L2)。
【0039】
小径孔8から脱出した弾性リング37が小径孔8へ戻るときに、摺動部材15の偏心量が何らかの原因で過大になったりすると、弾性リング37が小径孔8の開口角部に接触して、弾性リング37の表面を損傷させる恐れがある。このような事態を考慮して、
図4(B)に示すように、小径孔8の開口角部に面取りと称される斜面加工部42を設けたり、
図4(C)に示すように、小径孔8の開口部にテーパ部43を設けたりする。
【0040】
図2(B)に示した状態は、中心軸線O−O方向で見て、弾性リング37の中心部41が、加圧端面39と内端面40の間に位置していない場合の例である。つまり、内端面40が加圧端面39から電極の直径方向(外周方向)にずれた斜め向かいに位置している。このような場合であっても、流通間隙34、35は、弾性リング37で遮断されたり連通したりする。
図2(B)のように、加圧端面39と内端面40が直径方向にずれている場合には、弾性リング37に延長部28の角部と通孔9の角部が食い込んだ変形部44、45が形成される。この食い込んだ箇所が気密保持機能を果たしている。このような食い込み状態が形成されている場合であっても、加圧端面39と内端面40にも弾性リング37が、密着面積は少なくなるが、密着している。
【0041】
また、
図2(A)の場合には、加圧端面39によって弾性リング37が内端面40に押し付けられているので、弾性リング37は加圧端面39と内端面40の間で圧縮されている。
【0042】
したがって、加圧端面39が弾性リング37を内端面40に押し付ける態様は、
図2(A)と同図(B)に示すように、2種類となる。
【0043】
つぎに、変形例を説明する。
【0044】
先に説明した電極は、プロジェクションナット17を鋼板部品3に溶接する場合であるが、同じような電極構造でプロジェクションボルトを溶接することも可能である。その具体例が
図3に示されている。以下の説明において、プロジェクションボルトを単にボルトと表現する場合もある。ボルト47は、軸部48とフランジ49と溶着用突起50から構成されている。
【0045】
ここでのガイドピン14は、受入孔51が形成された中空状のピンであり、この受入孔51に軸部48を挿入する。軸部48の長さは、受入孔51の深さよりも長くしてあるので、可動電極26の進出前の状態では、フランジ49と鋼板部品3の間に空隙L1が形成されている。ここでも先の事例と同様に、L1>L2となっている。前述の環状の空間部分36がガイド孔6に相当し、小径孔8の内径の方がガイド孔6の内径よりも小さくなっている。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先のナットの事例と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0046】
なお、
図3に示した変型例では、摺動部材15の中間部に形成した端面がキャップ部4の端面に、符号29で示した着座箇所において密着している。この密着は、圧縮コイルスプリング32の張力で維持されており、この状態で弾性リング37が圧縮されて気密機能を果たすようになっている。つまり、弾性リング37の圧縮量(弾性変形量)が適正値となるように延長部28や小径孔8の長さが設定されている。
【0047】
さらに、他の変形例を説明する。
【0048】
先に説明した電極は、摺動部材15に延長部28が形成され、弾性リング37が、
図2(A)に示すように、加圧端面39と内端面40の間で挟み付けられたり、
図2(B)に示すように、延長部28の角部と通孔9の角部が、弾性リング37に食い込んだ変形部44、45が形成されたりする場合である。
【0049】
図5に示した変型例は、先の例におけるような延長部28が存在していない場合であり、また、ガイド孔6に、前述の大径孔7や小径孔8のような径差が付与されていない場合である。したがって、摺動部材15の上面が加圧端面39とされ、ガイド孔6の上側端面が内端面40とされている。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先のナットやボルトの事例と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0050】
さらに、もう1つの他の変形例を説明する。
【0051】
図6に示すように、この変型例では、前述の圧着部52に換えて、弾性リング37の外周部と小径孔8の内面との間に隙間53を形成している。こうすることにより、前述のL1とL2の大小関係にかかわることなく、弾性リング37が内端面40から離れると、直ちに流通間隙34から35への空気通路が開通する。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の各変型例と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0052】
つぎに、冷却空気の流通制御について説明する。
【0053】
図1は、圧縮コイルスプリング32の張力により、弾性リング37が、
図2の(A)または(B)に示す状態になっていて、流通間隙34から35に向かう流路が封止されている状態である。このため、通気口12から導入された冷却空気は、弾性リング37の封止動作で流通が遮断され、流通間隙35から電極本体1の外側に漏洩することがない。
【0054】
ついで、可動電極26が進出すると、ガイドピン14が押し下げられて、弾性リング37は小径孔8の内面を擦りながら下降し、溶着用突起25が鋼板部品3に押し付けられたとき、
図4(A)に示すように、L1>L2であることおよび空間部分36の内径が小径孔8の内径よりも大きいことにより、小径孔8から脱出した位置に停止する。この状態のときに、ナット17と鋼板部品3が可動電極26と電極本体1との間で加圧され、溶接電流が通電されて溶着がなされる。
【0055】
上記の停止状態で、通気口12、大径孔7、空気通路である流通間隙30、空間部分36、小径孔8、流通間隙35、下孔16が一連の空気通路を形成する。この空気通路を流れる冷却空気によって、溶着用突起25の溶融部から発生した溶接熱が冷却されるとともに、流通間隙35から侵入するスパッタなどの不純物を排出する。
図4(A)の黒く塗りつぶした箇所が溶着部46である。
【0056】
その後、可動電極26が後退してナット付き鋼板部品3が取り出されると、圧縮コイルスプリング32の張力で摺動部材15やガイドピン14が押し戻され、弾性リング37が
図2(A)または(B)に示す位置に復帰して、冷却空気の流通が封止される。それから、つぎの鋼板部品3が載置され、ナット17がガイドピン14にセットされる。
【0057】
上記の流通制御の動作は、
図1および
図2記載の事例におけるものであるが、
図3、
図5および
図6に示した変形例においても、実質的に同じである。
【0058】
以上に説明した実施例の作用効果は、つぎのとおりである。
【0059】
ガイドピン14と一体化されている弾性材料製の弾性リング37が、小径孔8の内端面40またはガイド孔6の内端面40に対して加圧端面39によって押し付けられているので、弾性リング37は内端面40と加圧端面39の間で挟み付けられた状態になる。したがって、摺動部材15とガイド孔6の間およびガイドピン14とガイド孔6との間に形成された冷却空気の流通間隙30、34、35が弾性リング37で閉鎖され、ガイドピン14が電極本体1の端面から突き出て溶接動作が行われていない時には、冷却空気の流通が完全に封止され、冷却空気が流通間隙35の後流側へ漏洩することが確実に防止でき、圧縮空気の浪費を回避し、経済的な電極がえられる。
【0060】
弾性リング37は、内端面40と加圧端面39の間で挟み付けられた状態になるので、弾性リング37は電極の中心軸線O−O方向に圧縮されて、内端面40や加圧端面39に対して広い面積で密着するとともに、強く押し付けられる。このため、摺動部材15やガイドピン14とガイド孔6との間に形成された冷却空気の流通間隙34、35が、高い気密性のもとで確実に封鎖されて、空気漏れが完全に防止される。弾性リング37が加圧端面39と内端面40の間で挟み付けられたときに、弾性リング37が押し潰されて直径方向の外方へ膨出し、小径孔8の内面への弾性リング37の圧接(
図2の圧着部52参照)が得られて、シール性が一層向上する。
【0061】
上記圧着部52が小径孔8の内面に圧接していることと、摺動部材15がガイド孔6内に摺動可能な状態で嵌め込まれていることにより、ガイドピン14と摺動部材15の一体化部材が2箇所で支持される。このため、ガイドピン14の先端近くの箇所に直径方向の外力が作用しても、ガイドピン14の傾斜変位が著しく少なくなり、電極本体1と鋼板部品3の相対位置の狂いが最少化される。
【0062】
上記のように、弾性リング37が内端面40と加圧端面39の間で挟み付けられた状態のときには、換言すると、内端面40、弾性リング37、加圧端面39が電極の中心軸線O−O方向に一直線上に並んでいるときには、弾性リング37の外面が内端面40や加圧端面39に広い面積で密着する。他方、内端面40と加圧端面39が電極の直径方向にずれた位置関係での挟み付けの場合には、電極本体1のガイド孔6の角部が弾性リング外面に食い込んだ状態で、弾性リング37の外面が内端面40や加圧端面39に狭い面積で密着し、この食い込みや狭い面積の密着状態で冷却空気の流通間隙34、35が封鎖される。したがって、このように直径方向にずれた場合であっても、確実な空気漏れ防止が果たされる。
【0063】
上記のように、弾性リング37が内端面40と加圧端面39の間で挟み付けられた状態のときには、弾性リング37の外面が内端面40や加圧端面39に密着するが、内端面40と加圧端面39が斜め方向にずれた挟み付けの場合には、電極本体1のガイド孔6の角部が弾性リング外面に食い込んだ状態になり、この食い込み状態で冷却空気の流通間隙34、35が封鎖される。したがって、このようにずれた場合であっても、食い込み箇所における強い気密維持機能が支配的になって、確実な空気漏れ防止が果たされる。
【0064】
一方、ガイドピン14が摺動部材15とともに押し下げられて溶接動作が行われているときには、ガイド孔6の内端面40から弾性リング37が離れるので、冷却空気の流通間隙34、35が開通し、これによる空気流でスパッタ等の不純物の排出や、電極各部の冷却を行い、電極の温度状態を正常に保つことができる。同時に、熱影響を受けやすい非金属製弾性材料で作られた弾性リング37自体が冷却空気で冷却されるので、弾性リング37の耐久性を長期にわたって維持することが可能となる。
【0065】
弾性リング37は、ガイド孔6の内端面40と加圧端面39との間で挟み付けられているので、前述のように、弾性リング37の外周側を膨らませて小径孔8またはガイド孔6の内面に押し付けることが可能となる(
図2の圧着部52参照)。このような外周側への押し付けを活用することよって、弾性リング37が果たす気密維持機能を一層高くすることができ、空気漏れのない経済的な電極がえられる。
【0066】
図2(A)や
図4(A)に示すように、ガイド孔6の内端面40が、加圧端面39と向かい合った位置関係になっている。そして、弾性リング37の中心部41が、向かい合った加圧端面39と内端面40の間に位置している。このように弾性リング37の断面の中心部41が、ガイド孔6の内端面40と加圧端面39との間に配置してあることによって、弾性リング37は内端面40と加圧端面39との間で安定した状態で挟み付けられる。このため、上記挟み付けにともなって弾性リング37の位置が電極の直径方向にずれようとする力成分が発生したりせず、気密維持に適した弾性リング37の変形がえられる。
【0067】
一方、
図2(B)に示すように、内端面40が加圧端面39からずれていて、弾性リング37の中心部41が内端面40と加圧端面39の間に存在していない場合であっても、変形部44、45における食い込みによって、確実な気密状態が確保できる。
【0068】
ガイド孔6が、摺動部材15が嵌め込まれる大径孔7と延長部28が進入する小径孔8によって構成され、しかも弾性リング37が小径孔8内に進入して小径孔8の内端面40に押し付けられている場合には、ガイドピン14が押し下げられたときに、弾性リング37を小径孔8から脱出させて冷却空気の流通路を確保することができる。このような弾性リング37の脱出によって冷却空気の流通路が形成される場合には、流通路の流路面積を大きくすることができ、冷却空気の流量を増大して冷却効果を高めることができる。
【0069】
同時に、小径孔8から脱出している弾性リング37が小径孔8内へ戻る際に、小径孔8の開口角部に面取り傾斜である斜面加工部42や、ガイドテーパ部43を設けることにより、弾性リング37の戻り動作が円滑になされて、ガイドピン14の進退動作が円滑化され、しかも弾性リング37の表面に傷がついたりすることが防止でき、弾性リング37の耐久性を向上させるのに効果的である。
【0070】
ガイドピン14に溝38を設けて、そこに弾性リング37を嵌め込み、この嵌め込んだ状態の弾性リング37に対して、加圧端面39が接触するように、溝38と加圧端面39の相対位置を設定してある。このような溝38と加圧端面39の位置関係を付与することによって、ガイドピン14に対する弾性リング37の一体性を高めることができるとともに、加圧端面39からの押し付け力を確実に弾性リング37へ作用させることができ、内端面40に対する弾性リング37の加圧を確実におこなわせることができる。