(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被計測物は、クリーム半田が印刷されたプリント基板であること、又は、半田バンプが形成されたウエハ基板であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の三次元計測装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板上に電子部品を実装する場合、まずプリント基板上に配設された所定の電極パターン上にクリーム半田が印刷される。次に、該クリーム半田の粘性に基づいてプリント基板上に電子部品が仮止めされる。その後、前記プリント基板がリフロー炉へ導かれ、所定のリフロー工程を経ることで半田付けが行われる。昨今では、リフロー炉に導かれる前段階においてクリーム半田の印刷状態を検査する必要があり、かかる検査に際して三次元計測装置が用いられることがある。
【0003】
従来、光を用いた非接触式の三次元計測装置が種々提案されている。例えば位相シフト法を用いた三次元計測装置がある。
【0004】
位相シフト法を用いた三次元計測装置としては、例えば被計測物を移動する移動機構と、該被計測物に対し縞状のパターン光を照射する照射装置と、該パターン光の照射された被計測物を撮像する撮像装置とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
かかる三次元計測装置においては、照射装置及び撮像装置からなる計測ヘッドに対し被計測物を相対移動することにより、被計測物上における光強度分布がパターン光の所定位相分ずつ異なる複数の画像データを取得することができる。そして、これら複数の画像データを基に位相シフト法により被計測物の三次元計測を行うことができる。
【0006】
例えば被計測物上における光強度分布がパターン光の位相90°分ずつ異なる4通りの画像データを取得した場合、該4通りの画像データにおける被計測物上の所定の座標位置の輝度値I
0,I
1,I
2,I
3は、それぞれ下記式(1)、(2)、(3)、(4)により表すことができる。
【0007】
I
0=α+βsinφ ・・・(1)
I
1=α+βsin(φ+90°) ・・・(2)
I
2=α+βsin(φ+180°) ・・・(3)
I
3=α+βsin(φ+270°) ・・・(4)
但し、α:オフセット、β:ゲイン、φ:パターン光の位相。
【0008】
上記式(1)、(2)、(3)、(4)を位相φについて解くと、下記式(5)を導き出すことができる。
【0009】
φ=tan
-1{(I
0−I
2)/(I
1−I
3)}・・・(5)
そして、上記のように算出された位相φを用いて、三角測量の原理に基づき、被計測物上の各座標(X,Y)における高さ(Z)を求めることができる。
【0010】
上記撮像装置に用いられる撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)エリアセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)エリアセンサなどが知られている。
【0011】
例えばインターライン転送方式のCCDエリアセンサは、行列状に2次元配置されかつ入射光をその光量に応じた電荷に変換して蓄積する複数の受光部(画素)と、該受光部に蓄積された電荷を垂直方向に転送する複数の垂直転送部と、該垂直転送部から転送される電荷を水平方向に転送する水平転送部と、該水平転送部から転送される電荷を電圧に変換し増幅して出力する出力アンプとを備えてなる。
【0012】
近年、三次元計測の分野においては、計測の高速化が求められている。これに対応するため、例えば撮像素子として、撮像領域を左右2つの領域に区画し、該2つの領域からの出力をそれぞれ異なるチャンネルから並行して行うエリアセンサを用いることで、撮像速度(画像データの取得速度)を高速化することが考えられる(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1のような三次元計測装置において、複数の出力チャンネルを有する撮像素子を用いた場合には、被計測物上の所定位置について位相シフト法による三次元計測を行う上で必要な複数のデータ(輝度値)が異なるチャンネルから取得されてしまう場合がある。
【0015】
例えば
図14(a)〜(d)に示すように、2つの出力チャンネルCH1,CH2を有する撮像素子80によって、同図右方向へ向け連続搬送される被計測物90を所定時間Δtが経過する毎に撮像し、被計測物90上の所定位置Pについて位相シフト法による三次元計測を行う上で必要な4通りのデータ(輝度値)を取得する場合を想定する。
【0016】
図14に示す例では、被計測物90上の所定位置Pは、撮像タイミングt1,t2においては、第1出力チャンネルCH1に対応する左側撮像領域80Aで撮像され〔
図14(a),(b)参照〕、撮像タイミングt3,t4においては、第2出力チャンネルCH2に対応する右側撮像領域80Bで撮像される。つまり、4回の撮像を行う間に被計測物90上の所定位置Pが、各チャンネルCH1,CH2に対応する撮像領域80A,80Bの境界部(区画線)80Cを跨いでしまい、所定位置Pに係る4通りのデータが2つずつ異なるチャンネルから取得されることとなる。
【0017】
複数の出力チャンネルを有する撮像素子においては、各チャンネル毎に出力アンプが異なるため、各チャンネルにおけるゲインやオフセットの値が厳密には一致しない。つまり、位相シフトに係る上記各式(1)〜(4)における「α(オフセット)」及び「β(ゲイン)」の値が一致しないため、
図14に示すような場合には、計測結果の誤差が増大するおそれがある。
【0018】
尚、上記課題は、必ずしもプリント基板上に印刷されたクリーム半田等の高さ計測に限らず、他の三次元計測装置の分野においても内在するものである。
【0019】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、位相シフト法による三次元計測を行うにあたり、計測効率の向上及び計測精度の低下抑制等を図ることのできる三次元計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0021】
手段1.所定のパターン光を被計測物(例えばプリント基板)に対し照射可能な照射手段と、
所定の撮像領域が複数の領域に区画され、該区画された複数の領域からの出力をそれぞれ異なるチャンネルから並行して行う撮像素子を有し、前記パターン光の照射された前記被計測物を撮像可能な撮像手段と、
前記照射手段及び前記撮像手段と前記被計測物とを所定方向に沿って相対移動可能な移動手段と、
前記照射手段から照射された前記パターン光の下で、前記照射手段及び前記撮像手段と前記被計測物とが所定量相対移動する毎に、前記撮像素子における前記複数の領域のうちの同一領域において撮像される前記被計測物上の各座標位置に係る複数のデータを取得可能なデータ取得手段と、
前記データ取得手段により取得された前記複数のデータを基に位相シフト法により前記被計測物上の各座標位置に係る三次元計測を実行可能なデータ処理手段とを備えたことを特徴とする三次元計測装置。
【0022】
上記手段1によれば、例えば連続搬送される被計測物に対し縞状(正弦波状)の光強度分布を有するパターン光が照射され、該パターン光の照射された被計測物が所定量(例えばパターン光の位相90°分に相当する距離)搬送される毎に撮像手段により撮像される。これにより、照射されたパターン光の位相が所定量ずつ(例えば位相90°ずつ)異なる複数通りの画像データが取得される。そして、これらの画像データを基に被計測物の三次元計測が行われる。
【0023】
さらに、本手段では、撮像領域が複数の領域に区画され、該区画された複数の領域からの出力をそれぞれ異なるチャンネルから並行して行う撮像素子が用いられている。これにより、撮像速度(画像データの取得速度)の高速化が可能となり、計測効率の向上を図ることができる。
【0024】
加えて、本手段では、撮像素子の同一チャンネルから取得される複数のデータを基に、被計測物上の各座標位置について、位相シフト法による三次元計測を行う構成となっている。このため、位相シフトに係る上記各式(1)〜(4)における「α(オフセット)」及び「β(ゲイン)」の値が一致することとなり、計測精度の低下抑制を図ることができる。
【0025】
手段2.前記撮像素子は、前記複数の領域を区画する区画線(複数の領域の境界部)が前記所定方向に沿うように設けられていることを特徴とする手段1に記載の三次元計測装置。
【0026】
上記手段2によれば、撮像素子において、所定方向(照射手段及び撮像手段と被計測物との相対移動方向)と直交する区画線が存在せず、所定方向と直交する方向に複数の領域が並設された構成となる。これにより、撮像素子における所定方向全域をデータ取得に活用することができる。ひいては、照射手段及び撮像手段と被計測物との相対移動速度を高速化することが可能となるなど、計測効率のさらなる向上を図ることができる。
【0027】
手段3.所定のパターン光を被計測物に対し照射可能な第1照射手段と、
前記被計測物に対し前記パターン光とは異なる第2の光を照射可能な第2照射手段と、
所定の撮像領域が複数の領域に区画され、該区画された複数の領域からの出力をそれぞれ異なるチャンネルから並行して行う撮像素子を有し、前記各種光の照射された前記被計測物を撮像可能な撮像手段と、
前記両照射手段及び前記撮像手段と前記被計測物とを所定方向に沿って相対移動可能な移動手段と、
前記第1照射手段から照射された前記パターン光の下で、前記両照射手段及び前記撮像手段と前記被計測物とが所定量相対移動する毎に、前記撮像素子における前記複数の領域のうちの第1領域(例えば所定方向上流側領域)において撮像される前記被計測物上の各座標位置に係る複数のデータを取得可能な第1データ取得手段と、
前記第1データ取得手段により取得された前記複数のデータを基に位相シフト法により前記被計測物上の各座標位置に係る三次元計測を実行可能な第1データ処理手段と、
前記第2照射手段から照射された前記第2の光の下で、前記撮像素子における前記複数の領域のうち、前記第1領域とは前記所定方向に異なる第2領域(例えば所定方向下流側領域)において撮像されるデータを取得可能な第2データ取得手段と、
前記第2データ取得手段により取得されたデータに基づき、所定の処理を実行可能な第2データ処理手段とを備えたことを特徴とする三次元計測装置。
【0028】
上記手段3によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。さらに、本手段では、三次元計測を目的とした第1領域における撮像に加え、第2の光の下で第2領域における撮像を行う構成となっている。つまり、三次元計測用のデータの取得に加え、該三次元計測とは異なる他の用途に用いるデータ(第2データ処理手段により所定の処理を実行するためのデータ)を取得することができる。
【0029】
結果として、複数種類の計測を組み合せて行うことが可能となるため、計測精度のさらなる向上を図ることができる。また、第1領域における撮像と、第2領域における撮像を同時に行うことができるため、撮像処理の簡素化を図ると共に、計測効率の低下抑制等を図ることができる。
【0030】
手段4.前記第2照射手段は、前記第2の光として、光強度が一定の均一光を照射可能に構成されていることを特徴とする手段3に記載の三次元計測装置。
【0031】
上記手段4によれば、均一光を照射して輝度画像データを取得することが可能となる。ひいては該輝度画像データを基に、例えば三次元計測により得られる三次元データに対しマッピングを行うことや、計測領域の抽出を行うこと等が可能となるため、さらなる計測精度の向上等を図ることができる。
【0032】
手段5.前記第2照射手段は、前記第2の光として、所定のパターン光を照射可能に構成されていることを特徴とする手段3に記載の三次元計測装置。
【0033】
上記手段5によれば、第1照射手段から照射されるパターン光に基づく上記三次元計測とは別の三次元計測を新たに行うことが可能となり、さらなる計測精度の向上を図ることができる。
【0034】
例えば、撮像素子の第1領域において取得した複数のデータを基に三次元計測した計測結果と、撮像素子の第2領域において取得した複数のデータを基に三次元計測した計測結果との平均値を求める等して、計測精度の向上を図ることができる。
【0035】
また、「第2の光」として、第1照射手段から照射されるパターン光とは輝度の異なるパターン光を照射すれば、被計測物上の各部位の明暗の違いに基づく各種不具合の発生を抑制することができる。例えばプリント基板上のクリーム半田の印刷部分(半田印刷領域)と、その他の部分(背景領域)とでは光の反射率等が異なることから、同一輝度のパターン光の下では、各部分のより正確なデータを取得することが困難となるおそれがある。
【0036】
手段6.前記被計測物は、クリーム半田が印刷されたプリント基板であること、又は、半田バンプが形成されたウエハ基板であることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0037】
上記手段6によれば、プリント基板に印刷されたクリーム半田、又は、ウエハ基板に形成された半田バンプの高さ計測等を行うことができる。ひいては、クリーム半田又は半田バンプの検査において、その計測値に基づいてクリーム半田又は半田バンプの良否判定を行うことができる。従って、かかる検査において、上記各手段の作用効果が奏されることとなり、精度よく良否判定を行うことができる。結果として、半田印刷検査装置又は半田バンプ検査装置における検査精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず被計測物としてのプリント基板の構成について詳しく説明する。
【0040】
図2に示すように、プリント基板1は、平板状をなし、ガラスエポキシ樹脂等からなるベース基板2に、銅箔からなる電極パターン3が設けられている。さらに、所定の電極パターン3上には、クリーム半田4が印刷形成されている。このクリーム半田4が印刷された領域を「半田印刷領域」ということにする。半田印刷領域以外の部分を「背景領域」と総称するが、この背景領域には、電極パターン3が露出した領域(記号E1)、ベース基板2が露出した領域(記号E2)、ベース基板2上にレジスト膜5がコーティングされた領域(記号E3)、及び、電極パターン3上にレジスト膜5がコーティングされた領域(記号E4)が含まれる。尚、レジスト膜5は、所定配線部分以外にクリーム半田4がのらないように、プリント基板1の表面にコーティングされるものである。
【0041】
次に、本実施形態における三次元計測装置を具備する基板検査装置の構成について詳しく説明する。
図1は、基板検査装置10を模式的に示す概略構成図である。
【0042】
基板検査装置10は、プリント基板1を搬送する搬送手段(移動手段)としてのコンベア13と、プリント基板1の表面に対し斜め上方から所定の光を照射する照射手段としての照明装置14と、該光の照射されたプリント基板1を撮像する撮像手段としてのカメラ15と、コンベア13や照明装置14、カメラ15の駆動制御など基板検査装置10内における各種制御や画像処理、演算処理を実施するための制御装置16(
図3参照)とを備えている。制御装置16は、本実施形態におけるデータ取得手段やデータ処理手段を構成する。
【0043】
コンベア13には、図示しないモータ等の駆動手段が設けられており、該モータが制御装置16により駆動制御されることによって、コンベア13上に載置されたプリント基板1が所定方向(
図1右方向)へ定速で連続搬送される。これにより、カメラ15の撮像範囲Wは、プリント基板1に対し逆方向(
図1左方向)へ相対移動していくこととなる。
【0044】
照明装置14は、所定の光を発する光源や、該光源からの光をパターン光に変換する格子(液晶パネルなど)を備え、プリント基板1に対し縞状(正弦波状)の光強度分布を有するパターン光を照射可能に構成されている。
【0045】
図4に示すように、本実施形態では、搬送されるプリント基板1上において、縞の方向が基板搬送方向(X方向)と直交するパターン光が照射される。すなわち、縞の方向が基板搬送方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に平行なパターン光が照射される。
【0046】
カメラ15は、レンズ15aや撮像素子15b等を備え、その光軸がコンベア13上に載置されたプリント基板1に垂直な方向(Z方向)に沿って設定されている。本実施形態では、カメラ15の撮像素子15bとして、インターライン転送方式のCCDエリアセンサ30を採用している(
図5参照)。
【0047】
図5に示すように、CCDエリアセンサ30は、行列状に2次元配置されかつ入射光をその光量に応じた電荷に変換して蓄積する光電変換素子(例えばフォトダイオード)からなる複数の受光部(画素)31と、該受光部31の各垂直列に対応してそれぞれ設けられ、該垂直列の各受光部31に蓄積された電荷を垂直方向に1行分(一画素分)ずつ順次転送する複数の垂直転送部(垂直CCDシフトレジスタ)32と、該垂直転送部32から転送される1行分の電荷を水平方向に順次転送する水平転送部(水平CCDシフトレジスタ)33と、該水平転送部33から転送される電荷を電圧に変換し増幅して出力する出力アンプ35とを備えている。
【0048】
尚、本実施形態では、CCDエリアセンサ30の水平方向が基板搬送方向であるX方向に沿い、かつ、CCDエリアセンサ30の垂直方向が基板搬送方向(X方向)と直交するY方向に沿うように、カメラ15が配置されている。
【0049】
さらに、本実施形態に係るCCDエリアセンサ30は、
図5に示すように、その1画面分の撮像領域38がカメラ15の光軸を中心として垂直方向(Y方向)に2分割(2つに区画)され、該分割(区画)された2つの領域からの出力をそれぞれ異なる2つのチャンネルから並行して行う構成となっている。
【0050】
より詳しくは、
図5上側(
図1奥側)に位置する第1撮像領域38Aに含まれる受光部31から読み出された電荷は、
図5上側の第1水平転送部33Aを介して、
図5上側の第1出力アンプ35Aから出力される。かかる出力経路が第1チャンネルCH1となる。
【0051】
一方、
図5下側(
図1手前側)に位置する第2撮像領域38Bに含まれる受光部31から読み出された電荷は、
図5下側の第2水平転送部33Bを介して、
図5下側の第2出力アンプ35Bから出力される。かかる出力経路が第2チャンネルCH2となる。
【0052】
両チャンネルCH1,CH2からそれぞれ出力された画像信号(画像データ)は、図示しない回路等を介して、撮像領域38全体によって撮像された1画面分の画像信号(画像データ)として合成されると共に、デジタル信号に変換された上で、カメラ15から制御装置16へ出力される。制御装置16に入力された画像データは、後述する画像データ記憶装置24に記憶される。そして、制御装置16は、該画像データを基に、後述するような画像処理や演算処理等を実施する。
【0053】
次に、制御装置16の電気的構成について
図3を参照して詳しく説明する。
図3は、基板検査装置10の電気的構成を示すブロック図である。
【0054】
図3に示すように、制御装置16は、基板検査装置10全体の制御を司るCPU及び入出力インターフェース21、キーボードやマウス、タッチパネル等で構成される「入力手段」としての入力装置22、CRTや液晶などの表示画面を有する「表示手段」としての表示装置23、カメラ15により撮像され取得された画像データなどを記憶するための画像データ記憶装置24、該画像データに基づいて得られた三次元計測結果など、各種演算結果を記憶するための演算結果記憶装置25、設計データなどの各種情報を予め記憶しておくための設定データ記憶装置26などを備えている。尚、これら各装置22〜26は、CPU及び入出力インターフェース21に対し電気的に接続されている。
【0055】
次に、基板検査装置10にて実行される三次元計測処理等の各種処理について詳しく説明する。
【0056】
制御装置16は、コンベア13を駆動制御してプリント基板1を定速で連続搬送する。そして、制御装置16は、コンベア13に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて、照明装置14及びカメラ15を駆動制御する。
【0057】
より詳しくは、プリント基板1が所定量Δx搬送される毎、つまり所定時間Δtが経過する毎に、パターン光の照射されたプリント基板1をカメラ15により撮像する。所定時間Δtが経過する毎に、カメラ15により撮像され取得された画像データは、随時、制御装置16へ転送され、画像データ記憶装置24に記憶される。
【0058】
本実施形態では、所定量Δxが、照明装置14から照射されるパターン光の位相90°分に相当する距離に設定されている。また、基板搬送方向(X方向)におけるカメラ15の撮像範囲Wがパターン光の1周期(位相360°)分に相当する長さに設定されている。勿論、所定量Δxやカメラ15の撮像範囲Wは、これに限定されるものではなく、これより長くてもよいし、短くてもよい。
【0059】
ここで、照明装置14から照射されるパターン光と、カメラ15により撮像されるプリント基板1との関係について具体例を挙げ詳しく説明する。
図6は、時間経過と共に相対移動するプリント基板1上の座標位置とカメラ15の撮像範囲Wとの関係を説明するための模式図である。
図7は、時間経過と共に相対移動するプリント基板1上の座標位置とパターン光の位相との関係を説明するための表である。
【0060】
図6,7に示すように、所定の撮像タイミングt1において、カメラ15の撮像範囲W内には、プリント基板1のうち、その基板搬送方向(X方向)における座標P2〜P17に相当する範囲が位置する。つまり、撮像タイミングt1においては、パターン光が照射されたプリント基板1表面の座標P2〜P17の範囲の画像データが取得される。
【0061】
図7に示すように、撮像タイミングt1においては、プリント基板1に照射されたパターン光の位相が座標P17で「0°」、座標P16で「22.5°」、座標P15で「45°」、・・・、座標P1で「360°(0°)」といったように、パターン光の位相が各座標P2〜P17ごとに「22.5°」ずつずれた画像データが取得される。但し、
図7で示されるパターン光の位相は、高さ位置「0」かつ平面をなす基準面に照射された場合を想定したものである。
【0062】
尚、プリント基板1上における基板搬送方向(X方向)と直交する方向(Y方向)については、プリント基板1のY方向全範囲がカメラ15の撮像範囲内に含まれ、X方向の同一座標位置におけるY方向の各座標位置についてはパターン光の位相に違いはない。また、カメラ15と照明装置14の位置関係は固定されているため、照明装置14から照射されるパターン光の位相は、撮像素子15b(CCDエリアセンサ30)の各座標位置に対し固定されている。
【0063】
撮像タイミングt1より所定時間Δtが経過した撮像タイミングt2において、カメラ15の撮像範囲W内には、プリント基板1上の座標P6〜P21に相当する範囲が位置し、該範囲の画像データが取得される。
【0064】
撮像タイミングt2より所定時間Δtが経過した撮像タイミングt3において、カメラ15の撮像範囲W内には、プリント基板1の座標P10〜P25に相当する範囲が位置し、該範囲の画像データが取得される。
【0065】
撮像タイミングt3より所定時間Δtが経過した撮像タイミングt4において、カメラ15の撮像範囲W内には、プリント基板1の座標P14〜P29に相当する範囲が位置し、該範囲の画像データが取得される。
【0066】
以後、所定時間Δtが経過する毎に、上記撮像タイミングt1〜t4の処理と同様の処理が繰り返し行われる。
【0067】
尚、本実施形態に係る撮像素子15b(CCDエリアセンサ30)は、第1撮像領域38A及び第2撮像領域38Bの区画線(境界部)38Cが基板搬送方向(X方向)に沿うように配置されている。従って、本実施形態では、
図10(a)〜(d)に示すように、プリント基板1の所定位置Pが4回の撮像(撮像タイミングt1,t2、t3,t4)すべてにおいて、第1出力チャンネルCH1に対応する第1撮像領域38Aで撮像されることとなる。つまり、プリント基板1の所定位置Pについて位相シフト法による三次元計測を行う上で必要な4通りのデータ(輝度値)が同一のチャンネルから取得される。
【0068】
このようにして、プリント基板1の所定の座標位置(例えば座標P17)に係る全てのデータが取得されると、上記各画像データの座標位置を位置合せする(各画像データの相互間の座標系を合せる)位置合せ処理を実行する(
図8参照)。
図8は、撮像タイミングt1〜t4において取得した複数の画像データの座標位置を位置合せした状態を模式的に示した表である。
【0069】
続いて、複数の画像データの同一座標位置に係る各種データを各座標位置ごとにまとめた上で演算結果記憶装置25に記憶する(
図9参照)。
図9は、プリント基板1の各座標位置に係る各種データを整理して並べ替えた状態を模式的に示した表である。但し、
図9では、プリント基板1の座標P17に係る部分のみを例示している。これにより、本実施形態では、プリント基板1の各座標位置につき、パターン光の位相が90°ずつずれた4通りの輝度データが取得されることとなる。
【0070】
次に、制御装置16は、上記のように取得した4通りの画像データ(各座標の4通りの輝度値)を基に、背景技術でも示した公知の位相シフト法により各座標毎の高さ計測を行う。制御装置16は、該処理を各座標毎に繰り返すことで、プリント基板1全体の高さデータを算出し、該プリント基板1の三次元データとして演算結果記憶装置25に記憶する。
【0071】
そして、制御装置16は、上記のように得られた計測結果を基にクリーム半田4の印刷状態の良否判定を行う。具体的に、制御装置16は、高さ基準面より所定長以上、高くなったクリーム半田4の印刷範囲を検出し、この範囲内での各部位の高さを積分することにより、印刷されたクリーム半田4の量を算出する。
【0072】
続いて、制御装置16は、このようにして求めたクリーム半田4の位置、面積、高さ又は量等のデータを、予め設定データ記憶装置26に記憶されている基準データ(ガーバデータなど)と比較判定し、この比較結果が許容範囲内にあるか否かによって、クリーム半田4の印刷状態の良否を判定する。
【0073】
以上詳述したように、本実施形態では、連続搬送されるプリント基板1に対し縞状の光強度分布を有するパターン光が照射され、該パターン光の照射されたプリント基板1が所定量搬送される毎にカメラ15により撮像される。これにより、照射されたパターン光の位相が90°ずつ異なる4通りの画像データが取得される。そして、これらの画像データを基にプリント基板1の三次元計測が行われる。
【0074】
さらに、本実施形態では、カメラ15の撮像素子15bとして、1画面分の撮像領域38がカメラ15の光軸を中心として垂直方向(Y方向)に2分割され、該分割された2つの領域からの出力をそれぞれ異なる2つのチャンネルCH1,CH2から並行して行うCCDエリアセンサ30が用いられている。これにより、撮像速度(画像データの取得速度)の高速化が可能となり、計測効率の向上を図ることができる。
【0075】
加えて、本実施形態に係る撮像素子15b(CCDエリアセンサ30)は、第1撮像領域38A及び第2撮像領域38Bの境界部(区画線)38Cが基板搬送方向に沿うように配置されている。そして、撮像素子15b(CCDエリアセンサ30)の同一チャンネルから取得される複数のデータを基にプリント基板1上の各座標位置について、位相シフト法による三次元計測を行う構成となっている。このため、位相シフトに係る上記各式(1)〜(4)における「α(オフセット)」及び「β(ゲイン)」の値が一致することとなり、計測精度の低下抑制を図ることができる。
【0076】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0077】
(a)上記実施形態では、三次元計測装置を、プリント基板1に印刷形成されたクリーム半田4の高さを計測する基板検査装置10に具体化したが、これに限らず、例えば基板上に印刷された半田バンプや、基板上に実装された電子部品など、他のものの高さを計測する構成に具体化してもよい。
【0078】
(b)上記実施形態では、コンベア13によりプリント基板1を連続移動することにより、照明装置14及びカメラ15とプリント基板1との位置関係を相対移動させる構成となっているが、これに限らず、照明装置14及びカメラ15からなる計測ヘッドを動かし、プリント基板1との位置関係を相対移動させる構成としてもよい。
【0079】
(c)上記実施形態では、位相シフト法による三次元計測を行う上で、パターン光の位相が90°ずつ異なる4通りの画像データを取得する構成となっているが、位相シフト回数及び位相シフト量は、これらに限定されるものではない。位相シフト法により三次元計測可能な他の位相シフト回数及び位相シフト量を採用してもよい。
【0080】
例えば位相が120°(又は90°)ずつ異なる3通りの画像データを取得して三次元計測を行う構成としてもよいし、位相が180°(又は90°)ずつ異なる2通りの画像データを取得して三次元計測を行う構成としてもよい。
【0081】
(d)上記実施形態では、カメラ15の撮像素子15bとして、インターライン転送方式のCCDエリアセンサ30が採用されている。撮像素子15bの構成は、これに限定されるものではない。
【0082】
例えばフルフレーム転送方式やフレーム転送方式、フレームインターライン転送方式などのCCDエリアセンサを採用してもよい。勿論、CCDエリアセンサに限らず、例えばCMOSエリアセンサ等を採用してもよい。
【0083】
一般のCCDエリアセンサ等を用いた場合には、露光中にデータ転送を行うことができないため、上記実施形態のようにプリント基板1が所定量搬送される毎に撮像(露光)を行う場合には、その間にデータ転送(読出)を行う必要がある。
【0084】
これに対し、CMOSエリアセンサや、データ転送中に露光可能な機能を持ったCCDエリアセンサ等を用いた場合には、撮像(露光)とデータ転送とを一部で重複して行うことができるため、プリント基板1の連続搬送に適しており、計測効率の向上を図ることができる。
【0085】
(e)上記実施形態では、撮像領域38がY方向に2分割され、該分割された2つの領域からの出力をそれぞれ異なる2つのチャンネルCH1,CH2から並行して行うCCDエリアセンサ30が採用されている。チャンネル数及び撮像領域の区画構成は、上記実施形態に限定されず、他の構成を採用してもよい。例えば撮像領域を3つ以上の領域に分割した撮像素子(エリアセンサ)を採用してもよい。
【0086】
具体例として、
図11に示す例が挙げられる。同図に示す撮像素子60は、撮像領域をY方向に4分割し、該4つの領域からの出力をそれぞれ異なる4つのチャンネルCH1,CH2,CH3,CH4から並行して行う構成となっている。撮像素子60は、撮像領域を各チャンネルCH1〜CH4に対応する複数の領域に区画する区画線(複数の領域の境界部)60a,60b,60cがすべて基板搬送方向(X方向)に沿うように設けられている。
【0087】
また、他の具体例として、
図12,13に示す例が挙げられる。同図に示す撮像素子70は、その1画面分の撮像領域78がカメラ15の光軸を中心として水平方向及び垂直方向に区画線78E,78Fによりそれぞれ2分割、計4分割され、該4つの領域からの出力をそれぞれ異なる4つのチャンネルCH1,CH2,CH3,CH4から並行して行う構成となっている。
【0088】
より詳しくは、
図12右上に位置する第1撮像領域78Aに含まれる受光部71Aから読み出された電荷は、所定の垂直転送部72A及び第1水平転送部73Aを介して、第1出力アンプ75Aから出力される。かかる出力経路が第1チャンネルCH1となる。
【0089】
図12右下に位置する第2撮像領域78Bに含まれる受光部71Bから読み出された電荷は、所定の垂直転送部72B及び第2水平転送部73Bを介して、第2出力アンプ75Bから出力される。かかる出力経路が第2チャンネルCH2となる。
【0090】
図12左上に位置する第3撮像領域78Cに含まれる受光部71Cから読み出された電荷は、所定の垂直転送部72C及び第3水平転送部73Cを介して、第3出力アンプ75Cから出力される。かかる出力経路が第3チャンネルCH3となる。
【0091】
図12左下に位置する第4撮像領域78Dに含まれる受光部71Dから読み出された電荷は、所定の垂直転送部72D及び第4水平転送部73Dを介して、第4出力アンプ75Dから出力される。かかる出力経路が第4チャンネルCH4となる。
【0092】
但し、撮像素子70には、基板搬送方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に沿って延びる区画線78Eが存在し、撮像領域78が基板搬送方向に2分割されている。そのため、撮像素子70によって、プリント基板1上の所定位置Pについて位相シフト法による三次元計測を行う上で必要な4通りのデータ(輝度値)を取得する場合には、例えば第1撮像領域78A及び第2撮像領域78BのX方向幅内にパターン光の少なくとも1周期(位相360°)分が投影されるように設定する。
【0093】
そして、
図13(a)〜(d)に示すように、同図右方向へ向け連続搬送されるプリント基板1を所定時間Δtが経過する毎(例えばプリント基板1がパターン光の位相90°分に相当する距離を移動する毎)に撮像し、プリント基板1の所定位置Pが4回の撮像(撮像タイミングt1,t2、t3,t4)すべてにおいて、第1出力チャンネルCH1に対応する第1撮像領域78A内で撮像されるようにする。
【0094】
また、撮像素子70から区画線78Fを省略し、第1撮像領域78A及び第2撮像領域78Bを1つの領域とすると共に、第3撮像領域78C及び第4撮像領域78Dを1つの領域とした構成としてもよい。つまり、
図14に示す撮像素子80の区画構成と同様に、撮像領域78が区画線78Eにより基板搬送方向(X方向)に2分割され、該2つの領域からの出力をそれぞれ異なる2つのチャンネルから並行して行う構成としてもよい。
【0095】
かかる構成とした場合においても、上記
図13(a)〜(d)に示した場合と同様に、一方の領域のX方向幅内にパターン光の少なくとも1周期(位相360°)分が投影され、プリント基板1の所定位置Pが4回の撮像(撮像タイミングt1,t2、t3,t4)すべてにおいて前記一方の領域内で撮像されるようにすれば、計測精度の低下を抑制することができる。
【0096】
(f)照明装置14の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば所定のパターン光を照射可能な第1照射手段としての第1照明と、前記パターン光とは異なる第2の光を照射可能な第2照射手段としての第2照明とを備えた構成としてもよい。
【0097】
かかる構成の下、例えば撮像領域が基板搬送方向(X方向)に分割された上記撮像素子70を用いて、第1照明からパターン光が照射されたプリント基板1上の所定領域を撮像素子70の第1領域(例えば第1撮像領域78A及び第2撮像領域78B)により撮像すると共に、第2照明から第2の光が照射されたプリント基板1上の他の領域を撮像素子70の第2領域(例えば第3撮像領域78C及び第4撮像領域78D)により撮像する構成としてもよい。
【0098】
撮像素子70の第1領域における撮像によりデータを取得する機能により、本実施形態における第1データ取得手段が構成され、これにより取得されたデータを基に位相シフト法により三次元計測を実行する機能により、本実施形態における第1データ処理手段が構成される。また、撮像素子70の第2領域における撮像によりデータを取得する機能により、本実施形態における第2データ取得手段が構成され、これにより取得されたデータに基づき所定の処理を実行する機能により、本実施形態における第2データ処理手段が構成される。
【0099】
ここで、「第2の光」として、光強度が一定の均一光を照射可能な構成としてもよい。かかる構成により、輝度画像データを取得することが可能となる。ひいては該輝度画像データを基に、例えば三次元計測により得られる三次元データに対しマッピングを行うことや、計測領域の抽出を行うこと等が可能となり、さらなる計測精度の向上等を図ることができる。
【0100】
また、「第2の光」として、所定のパターン光を照射可能な構成としてもよい。かかる構成により、第1照明から照射されるパターン光に基づく第1の三次元計測とは別に、第2照明から照射されるパターン光に基づく第2の三次元計測を行うことが可能となり、さらなる計測精度の向上を図ることができる。
【0101】
例えば、プリント基板1の所定位置Pについて、撮像素子70の第1領域(例えば第1撮像領域78A及び第2撮像領域78B)において取得した複数のデータを基に三次元計測した計測結果と、撮像素子70の第2領域(例えば第3撮像領域78C及び第4撮像領域78D)において取得した複数のデータを基に三次元計測した計測結果との平均値を求める等して、計測精度の向上を図ることができる。
【0102】
特に「第2の光」として、第1照明から照射されるパターン光とは輝度の異なるパターン光を第2照明から照射すれば、プリント基板1上の各部位の明暗の違いに基づく各種不具合の発生を抑制することができる。例えば第1照明のパターン光の輝度を、「暗部」となる「背景領域」に対応した比較的明るい第1輝度に設定する一方、第2照明のパターン光の輝度を、「明部」となる「半田印刷領域」に対応した、前記第1輝度よりも暗い第2輝度に設定することが一例に挙げられる。
【0103】
尚、撮像領域が基板搬送方向(X方向)に分割された上記撮像素子70等を用いる場合には、必ずしも撮像素子70の第2領域(例えば第3撮像領域78C及び第4撮像領域78D)によるデータ取得は必要なく、第2照明等を省略し、撮像素子70の第1領域(例えば第1撮像領域78A及び第2撮像領域78B)によるデータ取得のみを行う構成としてもよい。これにより、データ処理の簡素化や処理負荷の低減を図ることができる。