(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動部材が、前記当接部と連続して形成され、前記筐体に挿入された前記挿入部と軸方向で係合して、前記移動部材を前記没入状態で保持することを可能にする係合部を備えている請求項2記載の開閉扉の取付構造。
前記第1の軸部の軸心と前記開閉扉の回転軸側に近い木口面との間の距離が、前記第2の軸部の軸心と前記開閉扉の回転軸側に近い木口面との間の距離よりも大きくなるように前記第1の軸部および第2の軸部が設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の開閉扉の取付構造。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の開閉扉の取付構造を詳細に説明する。なお、以下の実施形態はあくまで一例であり、本発明の開閉扉の取付構造は以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1および
図2に示されるように、本実施形態の開閉扉の取付構造1は、回転軸X周りにスイングする開閉扉2と、開閉扉2のうち、回転軸Xの軸方向(以下、単に軸X方向と呼ぶ場合がある)の一方側に設けられた第1の軸支部3と、開閉扉2のうち、軸X方向の他方側に設けられ、第1の軸支部3とともに回転軸Xを構成する第2の軸支部4とを備えている。
【0018】
開閉扉2は、その用途は特に限定されないが、たとえば、住宅用の扉などに用いられる。本実施形態では、開閉扉2は、鉛直方向に延びる回転軸Xを中心にスイングするように構成され、
図1に示されるように、第1の軸支部3は開閉扉2の上側の角部に設けられ、第2の軸支部4は開閉扉2の下側の角部に設けられている。第1の軸支部3および第2の軸支部4は、後述する第1の軸部32および第2の軸部42が直線状に配置され、1つの回転軸Xを形成している。なお、開閉扉2は、水平軸周りや、傾斜した回転軸周りに回転するものであってもよい。
【0019】
開閉扉2は、本実施形態では、一般的な扉に用いられる平蝶番などの蝶番は用いられておらず、
図2に示されるように、開閉扉2の回転中心側の木口面が湾曲して形成されている。したがって、本実施形態の構成では、開閉扉2が開閉する際に、蝶番により生じる手や足を挟む隙間が生じにくく、手や足が隙間に挟まることによる怪我の危険性が低くなる。なお、開閉扉2の回転中心側の木口面は、本実施形態では湾曲して形成されているが、
図2における湾曲部分を直線的にカットしたものなど、開閉扉2が開閉可能であれば、木口面の構造は図示する形状に限定されるものではない。
【0020】
第1の軸支部3は、回転軸Xの一部を構成し、開閉扉2の軸X方向の一端を取り付けるために設けられる部材である。本実施形態では、
図1に示されるように、鉛直方向に延びる回転軸Xの上側の部分を担うように構成されている。本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、第1の軸支部3は、開閉扉2の上端の木口面側に埋め込まれるように取り付けられる。
【0021】
第1の軸支部3は、
図3〜
図5に示されるように、開閉扉2に設けられた筐体31と、筐体31から出没可能であり、開閉扉2の軸X方向の一方側に向かって突出する第1の軸部32を備えている。
【0022】
筐体31は、本実施形態では、開閉扉2に埋め込まれる部位であり、
図3〜
図5に示されるように、第1の軸部32や、後述する移動部材33、付勢部材34などの各部材を収容可能な収容空間Sを有するように構成されている。本実施形態では、筐体31は、
図3に示されるように、第1の軸部32等が収容される収容空間Sを有する本体31aと、本体31aに各部材が収容された後、本体31aに取り付けられるカバー部31bとを有している。
【0023】
本体31aは、本実施形態では、
図3に示されるように、略直方体状のブロックから略直方体状にくり抜かれて収容空間Sが形成されており、本体31aの第1の面F1(本実施形態では上面)に、第1の軸部32が出没する貫通孔H1が形成されている。また、本体31aは、筐体31が開閉扉2に取り付けられたときに、開閉扉2の木口面に位置する第2の面F2に、後述する保持具35が挿入される挿通孔H2(
図3参照)が形成されている。また、第2の面F2には、その他、本体31aとカバー部31bとがねじScで螺合される際に挿入されるねじ孔H3や、後述するキャップ部材Cの突出部Cp(
図9参照)が嵌合する嵌合孔H4等を有している。また、本実施形態では、本体31aの収容空間Sに各部材が収容された後、
図3に示される蓋部材36により収容空間Sが閉鎖され、本体31aとカバー部31bとが取り付けられ、ねじScにより固定される。
【0024】
カバー部31bは、図示しないねじ、接着剤等の公知の固定手段により開閉扉2に取り付けられる。なお、本体31aおよびカバー部31bの形状はあくまで一例であり、図示する形状に限定されるものではない。また、筐体31は、必ずしも本体31aとカバー部31bにより構成される必要はない。
【0025】
第1の軸部32は、開閉扉が取り付けられたときに、開閉扉の回転軸の一部を構成する部材である。第1の軸部32は、
図3および
図7に示されるように、略円柱状の棒状部材である。第1の軸部32は、
図1および
図5に示されるように、第1の軸部32を回転可能に支持する軸受部Bに挿入される。軸受部Bは、本実施形態では、天井や床面などの構造物に対して、着脱可能に取り付けられるプレート状の軸受部材として示されているが、開閉扉2が設けられる任意の構造物に孔を形成したり、開閉扉2が取り付けられる扉枠に形成された孔などであってもよい。また、軸受部Bの表面が、扉枠や床面などの取付箇所の表面と、略同一面上となるように、軸受部Bを扉枠や床面などの取付箇所に埋め込んでも構わない。本実施形態では、軸受部Bは、
図8に示されるように、第1の軸部32が挿入される軸受孔Baと、軸受孔Baを挟んで、ねじが挿入される複数のねじ孔H5、H6、H7が設けられている。複数のねじ孔H5、H6、H7のうちのいくつか(本実施形態では2つのねじ孔H6、H7)は、長孔として形成され、ねじが挿入された状態(完全にねじ込まれていない状態)で、ねじに対して軸受部Bを
図8中、左右にスライドさせることにより、軸受孔Baの位置(たとえば、
図1中、左右方向の位置)を調整することができる。
【0026】
本実施形態では、
図8に示されるように、軸受部Bは、扉枠や床面などの取付箇所に取り付けられるベース部材Bbと、ベース部材Bbに設けられ、軸受孔Baが形成された軸挿入部Bcとを備えている。ベース部材Bbの材料は特に限定されないが、本実施形態では、ベース部材Bbは、金属製のプレートとして形成されている。軸挿入部Bcは、ベース部材Bbと一体に形成しても構わないが、本実施形態では、ベース部材Bbとは別体として設けられ、ベース部材Bbに取り付けられるように構成されている。具体的には、ベース部材Bbに設けられた係合孔Bdに、軸挿入部Bcに設けられた係合爪Bg(
図15参照)が係合することにより、軸挿入部Bcがベース部材Bbに取り付けられる。軸挿入部Bcは、本実施形態では、
図8に示されるように、第1の軸部32を挿入可能な軸受孔Baが形成された環状部と、環状部から突出する係合爪Bg(
図15参照)を有している。軸挿入部Bcの材料は特に限定されないが、たとえば、樹脂製とすることができる。たとえば、樹脂製の軸挿入部Bcを金属製のベース部材Bbに取り付けるように構成した場合、ベース部材Bbとして充分な強度を確保したうえで、開閉扉2の回転時に、第1の軸部32が円滑に回転しやすく、第1の軸部32と軸挿入部Bcとの間の摺動音も低減される。
【0027】
本実施形態では、軸挿入部Bcは、ベース部材Bbの表面から突出するように設けられているが、軸挿入部Bcの表面(開閉扉2に対向する面)が、軸受部Bの開閉扉2に対向する面(
図8ではベース部材Bbの表面)に対して突出しないように設けられていてもよい。この場合、後述するように、第1の軸部32を軸受部Bの軸受孔Baに挿入するために突出させるときに、突出した第1の軸部32の位置が軸受孔Baの位置からずれてしまった場合であっても、容易に軸受孔Baに第1の軸部32を挿入することができる。具体的には、第1の軸部32が軸受孔Baの位置からずれて突出した場合、たとえば、ベース部材Bbの表面など、軸受部Bの開閉扉2に対向する面に第1の軸部32の先端が当接する。その後第1の軸部32の先端をベース部材Bbの表面上を滑らせて、軸受孔Baに挿入することができる。そのため、第1の軸部32の位置がずれて突出してしまった際に、第1の軸部32を再度没入状態に戻す必要がなく、現場での開閉扉2の取付作業が容易になる。
【0028】
軸挿入部Bcの表面が、軸受部Bの開閉扉2に対向する面に対して突出しないようにする構造は、特に限定されないが、たとえば、
図14に示されるように、ベース部材Bbに、ベース部材Bbをカバーするカバー部材Beが取り付けられた構造とすることができる。なお、軸挿入部Bcの表面が、軸受部Bの開閉扉2に対向する面に対して突出しないようにする構造は、ベース部材Bbに、軸挿入部Bcがベース部材Bbの表面から突出しないような深さで設けられた凹部を設け、その凹部に軸挿入部Bcが嵌合するものなどであってもよい。
図14に示されるカバー部材Beは、ベース部材Bbをカバーし、ベース部材Bbと係合する爪などの係合部(図示せず)により、ベース部材Bbに取り付けられる。カバー部材Beは、たとえば、ベース部材Bbに係合することにより取り付けることができるが、カバー部材Beのベース部材Bbへの取付方法は特に限定されない。
【0029】
カバー部材Beは、
図14に示されるように、軸挿入部Bcが設けられる位置に対応した位置に、開口部Bfが形成されている。本実施形態では、カバー部材Beは、軸受孔Baが露出するように、ベース部材Bbをカバーし、ベース部材Bbに設けられた複数のねじ孔H5、H6、H7をカバーしている。このため、ねじ孔H5、H6、H7が露出せず、不用意なねじ孔H5、H6、H7の操作が防止され、外観も良好となる。
【0030】
開口部Bfは、
図14に示されるように略円形の開口であり、環状の軸挿入部Bcの外周よりも内側に、開口部Bfの開口縁が位置するように形成されている。この場合、第1の軸部32が軸受孔Baの位置からずれて突出した場合、たとえば、カバー部材Beの表面など、軸受部Bの開閉扉2に対向する面に第1の軸部32の先端が当接する。その後第1の軸部32の先端をカバー部材Beの表面上を滑らせて、軸受孔Baに挿入することができる。そのため、第1の軸部32の位置がずれて突出してしまった際に、第1の軸部32を再度没入状態に戻す必要がなく、現場での開閉扉2の取付作業が容易になる。
【0031】
また、開口部Bfが、環状の軸挿入部Bcの外周よりも内側に、開口部Bfの開口縁が位置するように形成されていることにより、たとえば、軸挿入部Bcの係合爪Bgが折れてしまったとしても、軸挿入部Bcがベース部材Bbから外れて脱落することを防止することができる。
【0032】
なお、上述した構造に代えて、軸挿入部Bcに、軸挿入部Bcの外周から軸受孔Baとの間に設けられたテーパー面が形成され、軸受孔Baからずれて突出した第1の軸部32が、軸挿入部Bcのテーパー面を乗り越えて、軸受孔Baに挿入されるように構成しても構わない。
【0033】
第1の軸部32は、軸受部Bの軸受孔Ba内に挿入されて回転するため、本実施形態では、
図7に示されるように、第1の軸部32の先端部32aは湾曲した凸状に形成され、軸受孔Ba内に第1の軸部32の先端部32aが当接する場合の回転抵抗を低減する。
【0034】
また、
図3〜
図5に示されるように、第1の軸支部3は、第1の軸部32の基端側(
図4および
図5中、下側)が接続され、筐体31内部で軸方向に移動可能に設けられた移動部材33と、筐体31内部に配置され、移動部材33を、第1の軸部32の突出方向に付勢する付勢部材34と、筐体31の外部から筐体31の内部に向かって挿入される挿入部35aを有し、挿入部35aの筐体31内部への挿入時に移動部材33を、第1の軸部32の没入方向(
図4および
図5中、下側)へと移動させ、第1の軸部32を没入状態(
図4参照)で保持する保持具35とを備えている。
【0035】
移動部材33は、筐体31の収容空間S内を移動して、第1の軸部32を出没させる。移動部材33は、第1の軸部32の基端側が直接または間接的に接続されるか、第1の軸部32と一体に形成される。移動部材33は、
図4および
図5に示されるように、筐体31の収容空間S内で軸X方向にガイドされて移動する。本実施形態では、
図3〜
図5に示されるように、移動部材33と第1の軸部32とは、連結部材37を介して接続されている。より具体的には、第1の軸部32の基端側には、その外周に環状の溝Gが形成され、環状の溝Gが、連結部材37に形成された略U字状に切り欠かれた切欠部37aに係合し、連結部材37が移動部材33に形成された凹部33aに取り付けることにより、第1の軸部32と移動部材33とが連結される。なお、第1の軸部32と移動部材33との間の接続方法はあくまで一例であり、上述したように一体的に形成してもよいし、他の方法で接続しても構わない。
【0036】
移動部材33は、
図4および
図5に示されるように、筐体31内において、付勢部材34に直接または間接的に接続され、第1の軸部32と接続された移動部材33は、軸X方向における第1の軸部32の突出方向、すなわち
図3〜
図5中、上側に向かって、付勢部材34により付勢される。付勢部材34は、移動部材33を第1の軸部32の突出方向へと付勢できるものであれば特に限定されないが、たとえば、コイルばね等、公知の付勢手段が用いられる。
【0037】
移動部材33は付勢部材34により付勢され、第1の軸部32は筐体31から突出する方向に移動するように力を受けるが、開閉扉2の取り付け、取り外し時など、第1の軸部32を筐体31の内部側へと没入した状態で保持するために、保持具35が用いられる。
【0038】
保持具35は、
図3〜
図5に示されるように、筐体31の内部に向かって挿入される挿入部35aを有している。挿入部35aは、筐体31の内部に向かって挿入されることにより、移動部材33を、付勢部材34の付勢力に抗して第1の軸部32の没入方向へと移動させる。また、保持具35が筐体31から抜去されることにより、移動部材33は、付勢部材34の付勢力により、第1の軸部32の突出方向へと移動する。なお、本明細書において、
図4に示されるような、移動部材33および第1の軸部32が没入方向へ移動して、保持具35により保持された状態を、没入状態と呼び、
図5に示されるような、移動部材33および第1の軸部32が突出方向へ移動した状態を、突出状態と呼ぶ。
【0039】
本実施形態では、挿入部35aは、
図3〜
図5に示されるように、軸X方向に対して略垂直な方向(以下、単に挿入方向Yと呼ぶ場合がある)に挿入されるアーム状に形成され、本体31aの第2の面F2に形成された挿通孔H2から挿入される。本実施形態では、保持具35は、
図3に示されるように、2つのアーム状の挿入部35aと、把持部35bとを備えている。把持部35bは、2つのアーム状の挿入部35aと連続して形成されている。また、把持部35bは、挿入部35aの筐体31への挿入時に筐体31の外部に把持可能に筐体31の表面から突出する。把持部35bの形状は把持可能な形状であれば特に限定されない。本実施形態では、把持部35bは、
図3〜
図5に示されるように、挿入部35aが挿入されたときに筐体31の第2の面F2と係合する係合段部35cを有し、挿入部35aの挿入量を所定の範囲に制限している。本実施形態では、係合段部35cは、挿入部35aの(上下方向の)幅よりも幅が広がることにより形成されている。把持部35bは、
図3に示されるように、略U字状に形成され、2つのアーム状の挿入部35aと連続している。保持具35が把持部35bを有していることにより、挿入部35aの筐体31への挿入、および、筐体31からの抜去が容易となる。なお、挿入部35aの数は特に限定されず、その形状も保持具35を移動させることができれば、特に限定されない。
【0040】
移動部材33は、
図3〜
図5に示されるように、アーム状の挿入部35aの先端T側と当接可能であり、軸X方向に対して傾斜した当接部33bを有している。当接部33bは、挿入部35aが挿入されることにより、挿入部35aの先端T側から、軸X方向で没入側へ移動する力を加えられ、没入方向へと移動する。挿入部35aの先端Tは、
図3〜
図5に示されるように湾曲して形成され、当接部33bに没入方向への力を加えやすくなっている。
【0041】
筐体31の挿通孔H2は、移動部材33が収容空間S内で、
図5に示される突出位置にあるときに、挿通孔H2に挿通された挿入部35aが当接部33bに当接できる位置に設けられる。当接部33bは、その傾斜が挿入方向Yにおいて挿通孔H2側から離れるにつれて、軸X方向の突出側へ向かうように形成されている。なお、本明細書において、「軸X方向の突出側(突出方向)」とは、軸X方向において、第1の軸部32(または第2の軸部42)が筐体31(第2の筐体41)から突出する際に移動する方向側をいい、「軸X方向の没入側(没入方向)」とは、軸X方向において、第1の軸部32(または第2の軸部42)が筐体31(第2の筐体41)内へ向かって没入する際に移動する方向側をいう。また、移動部材33は、
図3〜
図5に示されるように、当接部33bの軸X方向の突出側の端部と連続して形成された係合部33cを有している。係合部33cは、挿入部35aが筐体31に完全に挿入されたときに、挿入部35aと軸X方向で係合して、移動部材33を没入状態で保持することを可能にする。本実施形態では、係合部33cは、挿入部35aの挿入方向Yに沿って延びる平坦面として形成され、挿入部35aが筐体31内に完全に挿入されたときに、
図4に示されるように、挿入部35aの直線状の部位と係合部33cの平坦面とが係合して、移動部材33が没入状態で保持される。
【0042】
また、移動部材33は、本実施形態では、
図3に示されるように、第1の軸部32が取り付けられる本体部MBと、開閉扉2の厚さ方向(軸X方向および挿入方向Yの両方に垂直な方向)で両側に設けられた側部SPを有している。側部SPは、挿入部35aが挿入される位置に対応した位置に形成される。本体部MBは、底面(
図4および
図5中の下側の面)に付勢部材34の一端を受容する付勢部材受け部(図示せず)を有し、底面と反対側に、連結部材37を介して第1の軸部32が取り付けられる凹部33aを有している。本体部MBの形状は特に限定されるものではない。側部SPには、当接部33bおよび係合部33cが設けられている。本体部MBに第1の軸部32が取り付けられ、本体部MBの両側部に側部SPが設けられているので、挿入部35aと第1の軸部32とが干渉することがない。なお、本実施形態では、
図3〜
図5に示されるように、側部SPは、本実施形態では略三角形状(または台形)に形成されているが、側部SPの形状は、当接部33bおよび係合部33cを有していれば、特に限定されるものではない。
【0043】
また、本実施形態では、保持具35が筐体31から抜去され、開閉扉2が取り付けられたときに、筐体31の第2の面F2を覆うキャップ部材C(
図3および
図9参照)が設けられていてもよい。キャップ部材Cは、
図3および
図9に示されるように、筐体31の第2の面F2に対応する形状を呈し、第2の面F2に設けられた嵌合孔H4に圧入嵌合される突出部Cpを有している。これにより、保持具35が筐体31から抜去された後に残る挿通孔H2やねじなどが外部から見えず、開閉扉2の取り付け後の外観が良好となる。
【0044】
つぎに、開閉扉2の下端側に設けられる第2の軸支部4について説明する。
図10〜
図12に示されるように、第2の軸支部4は、開閉扉2に設けられた第2の筐体41と、第2の筐体41から出没可能であり、軸X方向で第1の軸部32と反対側に向かって突出する第2の軸部42とを備えている。
【0045】
本実施形態では、
図10に示されるように、第2の筐体41は筐体31と同様に、本体41aおよびカバー部41bとを有している。なお、第2の筐体41は筐体31と基本的な構成を同様とすることができるため、共通する事項についての説明は省略する。また、第2の軸部42は第1の軸部32と同様の構成とすることができるため、その説明は省略する。なお、第2の筐体41は筐体31と異なる構成としてもよいし、第2の軸部42は第1の軸部32と異なる構成としてもよい。また、第2の軸部42が挿入される軸受部は、第1の軸部32の軸受部と同様とすることができる。
【0046】
また、第2の軸支部4は、
図10〜
図12に示されるように、第2の軸部42の基端側が接続され、第2の筐体41内部で軸X方向に移動可能に設けられた第2の移動部材5と、第2の筐体41の外部からの操作により、第2の移動部材5を軸X方向に移動させ、第2の軸部42の第2の筐体41からの突出量を調整可能な突出量調整部6とを備えている。突出量調整部6により、第2の軸部42の突出量を調整できることにより、開閉扉2の高さを容易に調整することができる。
【0047】
突出量調整部6は、本実施形態では、
図10〜
図12に示されるように、第2の筐体41に、軸X方向に対して略垂直方向(上述した挿入方向Yと平行)に挿入された状態で回転可能に保持された、雄ねじ部61aを有するねじ部材61と、雄ねじ部61aと螺合し、ねじ部材61がその場で回転することにより、ねじ部材61に沿って移動する螺合部材62とを備えている。ねじ部材61は、
図10〜
図12に示されるように、第2の筐体41の本体部41aを貫いてその場で回転できるように構成されている。具体的には、ねじ部材61は、本体部41aに設けられたねじ部材挿入孔H8から挿入され、ねじ部材61の先端側は、EリングEが嵌められて、ねじ部材61の長手方向への移動を規制している。
【0048】
螺合部材62は、本実施形態では、
図10に示されるように、雄ねじ部61aが螺合する雌ねじ部62bを有するブロック状の部材であり、螺合部材62の外表面からは、ねじ部材61の長手方向および軸X方向に対して垂直な方向に突出する突出部62aを有している。なお、本実施形態では、突出部62aは、螺合部材62の貫通孔62cに挿入される軸状部材として示されているが、突出部62aは螺合部材62自体を、外表面に突出部62aが形成されるように加工してもよい。また、
図10〜
図12に示されるように、第2の移動部材5は、突出部62aが係合し、軸X方向に対して傾斜したスリット部SLを有している。これにより、ねじ部材61を外部から回転させると、ねじ部材61はその場で回転し、ねじ部材61の雄ねじ部61aに螺合する螺合部材62は、
図11および
図12に示されるように、ねじ部材61に沿って左右方向に移動する。螺合部材62がネジ部材61に沿って移動すると、螺合部材62の突出部62aもねじ部材61に沿って移動する。そして、突出部62aがねじ部材61に沿って移動することによって、突出部62aの外周に当接するスリット部SLは、突出部62aから軸X方向に移動する力が加えられ、第2の移動部材5は軸X方向に沿って移動する。これにより、第2の軸部42が、第2の筐体41から出没可能に構成されている。なお、突出量調整部6は、図示した構造に限定されるものではなく、第2の軸部42を軸X方向に移動させることができれば、他の構造であってもよい。たとえば、ラックギヤとピニオンギヤなどのギヤ機構を用いて、第2の筐体41の外部からの回転力を、第2の軸部42の直線運動に代えて、第2の軸部42の突出量を調整しても構わない。
【0049】
つぎに、本実施形態の開閉扉の取付構造1の効果について説明する。以下の説明では、上下方向に延びる回転軸Xを有する開閉扉2を天井と床面との間に取り付ける場合について説明するが、本発明の開閉扉の取付構造1は、以下の内容に限定されるものではない。また、以下の説明における操作の順序などはあくまで一例であり、以下の順序に限定されるものではない。
【0050】
まず、開閉扉2の上端の木口面側に第1の軸支部3が設けられ、開閉扉2の下端の木口面側に第2の軸支部4が設けられた開閉扉2を用意する。そして、第1の軸支部3の第1の軸部32と第2の軸支部4の第2の軸部42とが突出する部位である、天井および床面のそれぞれに軸受部Bをねじにより固定する。
【0051】
用意された開閉扉2において、
図5に示されるように、保持具35が筐体31に挿入されていない場合、保持具35を筐体31に挿入して、
図4に示されるように、第1の軸支部3の第1の軸部32が下方に後退した没入状態とする。この場合、上述したように、
図5の状態から、保持具35の挿入部35aを筐体31の挿通孔H2に挿入する。挿通孔H2に挿入部35aが挿入されると、
図6に示されるように、傾斜した当接部33bに挿入部35aの先端T側が当接する。そのまま挿入部35aをさらに挿入していくと、移動部材33は、挿入部35aの先端Tから力を受け、先端Tからの押圧力の分力が
図6中、下向きに加わり、移動部材33は付勢部材34の付勢力に抗して、没入方向へと移動する。
図6の状態からさらに挿入部35aを挿入していくと、挿入部35aの先端Tは、当接部33bを越えて、
図4に示されるように、係合部33cに乗り上げる形となる。そして、挿入部35aの直線状の部位と係合部33cとが係合して、移動部材33が押し下げられ、第1の軸部32が没入状態で保持される。
【0052】
つぎに、第2の軸支部4の第2の軸部42を第2の筐体41から突出させる。たとえば、
図11に示される状態から、上述したようにねじ部材61を回転させて、第2の軸部42を
図12に示されるように下降させて、第2の軸部42を第2の筐体41から突出させる。
【0053】
第2の軸支部4の第2の軸部42を第2の筐体41から突出させると、床面側に設けられた軸受部Bの軸受孔Baに第2の軸部42を挿入する。つぎに、第1の軸部32を天井側の軸受部Bの軸受孔Baに挿入するために、没入状態にある第1の軸部32を突出させる。具体的には、開閉扉2を持ちながら、第1の軸支部3の第1の軸部32を、
図4に示されるように、天井側の軸受部Bの軸受孔Baの位置に合わせた後、保持具35を筐体31から抜去することにより行う。保持具35を筐体31から水平方向に抜去すると、保持具35の挿入部35aが挿通孔H2から抜去される。この挿入部35aの抜去時に、移動部材33が付勢部材34により、第1の軸部32の突出方向へと押圧されて第1の軸部32が筐体31から突出する。より具体的には、挿入部35aが挿通孔H2から抜去されると、付勢部材34の付勢力に抗して移動部材33を押さえていた、係合部33cと挿入部35aとの間の軸X方向での係合が解除される。これにより、移動部材33は移動可能となり、移動部材33は付勢部材34の付勢力により、上側に移動する。移動部材33が上側に移動すると、第1の軸部32は、移動部材33とともに上側へと移動し、
図5に示されるように、開閉扉2の上端面から突出する。第1の軸部32が開閉扉2の上端面から突出すると、第1の軸部32が軸受部Bの軸受孔Baに挿入され、開閉扉2の取り付けが完了する。
【0054】
このように、本実施形態の開閉扉の取付構造1によれば、保持具35を抜去するだけで、第1の軸部32が筐体31から突出し、軸受部Bへの取り付けが完了する。したがって、開閉扉2の取り付け作業が非常に容易となる。たとえば、重い開閉扉2を持って位置合わせしながら、軸部を操作するためにねじを回したりするのは、非常に大変であるが、本実施形態によれば、片手で開閉扉2を支持しながら、反対側の手で保持具35を抜去することにより、簡単に開閉扉2を取付けることができる。また、開閉扉2の上端側など、高所での作業が必要となる場合であっても、保持具35を抜去するだけで開閉扉2の取り付けを完了させることができるため、高所での作業も迅速に完了することができ、作業の安全性も高めることができる。
【0055】
また、本実施形態では、保持具35により第1の軸部32が没入した状態で、開閉扉2を天井と床面などの間に入れることができる。そのため、たとえば、(保持具35を有していない)単に上側の軸部がバネにより突出方向に付勢されたものなどのように、開閉扉を天井と床面などの間に入れる際に、軸部を没入方向に押圧しながら上側の軸部を差し込むといった煩雑な操作が不要となる。そして、このような単にばねにより突出方向に付勢された軸部では、一旦軸部を軸受部に挿入してしまうと取り外すことが難しいが、本実施形態では保持具35により第1の軸部32を容易に没入状態に移動させることができるため、取り外しも容易である。さらに、第1の軸部32が没入した状態で開閉扉2を取付けることができるため、開閉扉2の上端と天井との間の隙間を小さくすることができる。
【0056】
また、開閉扉2を一旦取り付けた後、たとえば、上下の軸受部Bの位置がずれて、開閉扉2をうまく開閉させることができない場合がある。このような場合に、一度開閉扉2を取り外して、上述したように、軸受部Bの位置をスライドさせることによって、軸受部Bの位置の調整を行い、開閉扉2の位置を調整することができる。そして、このような開閉扉2の位置ずれや、他の要因によって、開閉扉2を取り外す必要がある場合にも、保持具35を筐体31に挿入することによって、容易に開閉扉2を取り外すことができる。
【0057】
また、第1の軸部32は、専用の治具としての保持具35がなければ、第1の軸部32が没入位置に移動することがない。そのため、一般家庭などにおいて不意に第1の軸部32が没入位置へと移動して、開閉扉2が倒れるといった事故を防止することができる。また、本実施形態では、開閉扉2が、平蝶番などで扉枠と接合されておらず、第1の軸部32と第2の軸部42とによって、軸支されているため、開閉扉2の回転軸X側の木口面において、手や足を挟む隙間の発生が防止され、安全な開閉扉構造とすることができる。さらに、第1の軸部32と第2の軸部42とを、天井と床面に固定するだけで開閉扉2の取り付けを行うことができるため、扉枠が不要である。そのため、部品点数を減らすことができるうえ、部屋の改築などで開閉扉2を新たに設ける場合に、天井および床面さえあれば、軸受部Bを設けるだけで、任意の場所に開閉扉2を設けることができる。
【0058】
上記実施形態では、
図1に示されるように、第1の軸支部3の第1の軸部32と、第2の軸支部4の第2の軸部42とを同軸に設けたものを示したが、
図13に示されるように、第1の軸部32と第2の軸部42とをずらして配置しても構わない。より具体的には、
図13に示されるように、第1の軸部32が開閉扉2の上側に設けられ、第2の軸部42が開閉扉2の下側に設けられ、第1の軸部32の軸心と開閉扉2の回転軸側に近い木口面21との間の距離が、第2の軸部42の軸心と開閉扉2の回転軸側に近い木口面21との間の距離よりも大きくなるように第1の軸部32および第2の軸部42が設けられる。開閉扉2の上下に設けられる軸受部Bは、第1の軸部32および第2の軸部42の位置に対応する位置にそれぞれ取り付けられる。
【0059】
第1の軸部32および第2の軸部42は、上述した方法で開閉扉2の上下に設けられた軸受部Bの軸受孔Baに挿入される。第2の軸部42の先端は、下側の軸受部Bの軸受孔Baの底部と当接して支持される。一方、第1の軸部32の先端は、第1の軸部32が軸受孔Baに入った状態で、上側の軸受部Bの軸受孔Baの底部に当接していてもよいし、底部から離間していてもよい。
【0060】
第1の軸部32および第2の軸部42の先端は、
図7に示されるように湾曲しており、軸受孔Baの底部との間で、点接触または点接触に近い小さい接触面積となるように構成され、上述したように第1の軸部32の軸心と第2の軸部42の軸心とがずれていても、開閉扉2の回転が可能である。なお、本実施形態では、第1の軸部32および第2の軸部42の先端が湾曲して形成されているが、たとえば、軸受孔Baの底部が湾曲していてもよいし、両方が湾曲していてもよい。また、第1の軸部32および第2の軸部42の先端と、軸受孔Baの底部とが、点接触または点接触に近い小さい接触面積で接触することができれば、第1および第2の軸部32、42、軸受孔Baの底部の形状は特に限定されず、たとえば凹状の湾曲面などであってもよい。
【0061】
図13に示される実施形態によれば、第1の軸部32の軸心と開閉扉2の回転軸側に近い木口面21との間の距離が、第2の軸部42の軸心と開閉扉2の回転軸側に近い木口面21との間の距離よりも大きくなるように第1の軸部32および第2の軸部42がオフセットしている。そのため、開閉扉2の回転軸X2が鉛直方向(
図13においては、延長方向はXとして示している)に対してわずかに傾斜する。この場合、回転軸X2が鉛直方向Xに対して傾斜した開閉扉2を閉鎖状態から開放すると、開閉扉2を閉鎖する方向に回転力が加わる。そのため、開閉扉2を開放しても、開閉扉2が自動で閉鎖される。したがって、本実施形態によれば、開閉扉2の取付作業が容易となるうえ、開閉扉2を取り付けた後は自動で閉鎖状態を保つことができる。