【文献】
UOYAMA Hiroki et al.,Highly efficient organic light-emitting diodes from delayed fluorescence,Nature,米国,2012年12月13日,Vol.492,pp.234-238
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カソードもしくは存在するならば電子注入層と、発光層との間に存在する全ての電子輸送層が、−2.55eV以下のLUMOを有する少なくとも一つの化合物を含むことを特徴とする、請求項1記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
TADF化合物が、ドナーおよびアクセプター置換基の両者を有する芳香族化合物であることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
TADF化合物がマトリックス中に存在し、以下が、TADF化合物のLUMO:LUMO(TADF)およびマトリックスのHOMO:HOMO(マトリックス)に適用されることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセント素子:
LUMO(TADF)−HOMO(マトリックス)>S1(TADF)−0.4eV 式中、S1(TADF)は、TADF化合物の第1励起一重項状態である。
発光層に直接隣接する電子輸送層の最低三重項エネルギーが、TADF化合物の三重項エネルギーよりも、最大で0.1eV低いことを特徴とする、請求項1〜8何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
リチウム化合物および/またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属フッ化物、酸化物もしくは炭酸塩から選ばれる化合物を含む少なくとも一つの電子注入層が、−2.55eV以下のLUMOを有する電子輸送材料を含む電子輸送層とカソードとの間に存在することを特徴とする、請求項1〜10何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
カソードもしくは存在するならば電子注入層に隣接する電子輸送材料が、−2.55eV以下のLUMOを有する電子輸送材料とリチウム化合物との混合物を含むことを特徴とする、請求項1〜11何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
電子輸送材料が、トリアジン、ピリミジン、ラクタム、金属錯体、芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシド、アザホスホール、アザボロール(少なくとも一つの電子伝導置換基で置換される)、ベンズイミダゾールおよびキノキサリンの物質クラスから選ばれることを特徴とする、請求項1〜12何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
少なくとも一つの層が昇華法により適用されることおよび/または少なくとも一つの層がOVPD法(有機気相堆積)またはキャリアーガス昇華法により適用されることおよび/または少なくとも一つの層が溶液から、スピンコーティングによりまたは印刷法により適用されることを特徴とする、請求項1〜18何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光層中に小一重項-三重項間隔を有するルミネッセンス材料と電子伝導層中に−2.55eV以下のLUMOを有する材料を含む有機エレクトロルミネッセント素子に関する。
【0002】
有機半導体が機能性材料として用いられる有機エレクトロルミネッセント素子(OLED)の構造は、たとえばUS4539507、US5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。ここで用いられる発光材料は、次第に、蛍光ではなく燐光を呈する有機金属イリジウムおよび白金錯体に代わってきている(M.A.Baldoら、Appl.Phys.Lett.1999、75、4−6)。量子力学的理由により、4倍までのエネルギーおよびパワー効率の増加が、燐光発光エミッターとして有機金属化合物を使用して可能である。
【0003】
しかしながら、有機金属イリジウムおよび白金錯体により達成される良好な結果にもかかわらず、これらは多くの欠点を有している。このように、イリジウムと白金は、稀少であり高価な金属である。したがって、資源保存のために、これらの稀少金属の使用を回避できることが望ましい。さらに、このタイプの金属錯体は、幾つかの場合で、昇華中に純粋有機化合物よりも低い熱安定性を有し、その結果、純粋有機化合物の使用は、比較的良好な効率をもたらす限り、この理由で有利でもある。さらに、高い効率と長い寿命を有する青色-、特に、深青色燐光イリジウムおよび白金エミッターは、技術的困難性を伴ってのみ達成することができ、その結果、ここでも、改善の必要性が存在する。さらに、OLEDが幾つかの用途で必要とされる高温で駆動される場合に、IrおよびPtエミッターを含む燐光OLEDの寿命での改善の必要性が存在する。
【0004】
代替的開発は、熱活性化遅延蛍光(TADF)を示すエミッターの使用である(たとえば、H. Uoyama et al., Nature 2012, Vol. 492, 234)。これらは、最低三重項状態T
1と第1励起一重項状態S
1との間の離隔が小さく、その結果、このエネルギー離隔がより小さいか、または熱エネルギー領域内である有機材料である。量子統計的理由で、励起状態は、OLEDの電子的励起において、三重項状態で75%の範囲まで、一重項状態で25%の範囲までで起こる。純粋有機化合物は、通常三重項状態から発光することができず、発光のために励起状態の75%を利用することはできないことから、これは、原則として、励起エネルギーの25%を光に変換することができないことを意味する。しかしながら、最低三重項状態と最低励起一重項状態との間のエネルギー離隔が存在しないか、またはkTにより記載される熱エネルギーよりは著しく大きくないならば、分子の第1励起一重項状態は、熱励起を通じて三重項状態からアクセズ可能であり、熱的に占有することができる。この一重項状態は、そこから蛍光発光が可能である発光状態であるから、この状態は、光の生成のために使用することができる。したがって、100%までの電気エネルギーの光への変換が、原則として、エミッターとしての純粋有機化合物の使用について可能である。したがって、19%を超える外部量子効率が、先行技術において記載されているが、燐光OLEDと同程度である。したがって、この型の純粋有機材料を使用して、非常に良好な効率を達成することができると同時にイリジウムまたは白金等の稀少金属の使用を回避することができる。さらに、そのような材料を使用して極めて効率的な青色発光OLEDを達成することもできる。
【0005】
先行技術は、熱活性化遅延蛍光を示すエミッター層に隣接する、たとえば、TPBi(H. Uoyama et al., Nature 2012, 492, 234)等のベンズイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体(Mehes et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 11311; Endo et al., Appl. Phys. Lett. 2011, 98, 083302/1 or WO 2013/011954))またはフェナントロリン誘導体(Nakagawa et al., Chem. Commun. 2012, 48, 9580 or WO 2011/070963)の種々の電子伝導化合物の使用を記載している。それらは、全て−2.51eV以上のLUMOを有することがこれらの電子伝導材料に共通している。
【0006】
一般的に、TADFメカニズムにより発光を示す有機エレクトロルミネッセント素子において、特に、効率、電圧および寿命に関してさらなる改善の必要性が未だ存在する。したがって、本発明が基礎とする技術的目的は、TADFに基づいて発光し、特に、一以上の上記特性に関して、改善された特性を有するOLEDの提供に基づいている。
【0007】
驚くべきことに、発光層中に、有機TDAF分子を有し、カソード側でこの層に隣接して2.55eV以下のLUMOを有する電子伝導材料を含む有機エレクトロルミネッセント素子が、この目的を達成し、有機エレクトロルミネッセント素子における改善をもたらすことが見出された。したがって、本発明は、このタイプの有機エレクトロルミネッセント素子に関する。
【0008】
本発明は、カソード、アノード、少なくとも一つの0.15eV以下の、最低三重項状態T
1と第1励起一重項状態S
1との間の離隔を有するルミネッセント有機化合物を含む発光層とを含む有機エレクトロルミネッセント素子であって、エレクトロルミネッセント素子は、発光層のカソード側に2.55eV以下のLUMOを有する少なくとも一つの化合物を各々含む一以上の電子輸送層を含むことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセント素子に関する。
【0009】
本発明の意味での有機エレクトロルミネッセント素子は、アノード、カソード、アノードとカソードの間に配置された発光層と少なくとも一つの電子輸送層とを含む。本発明の意味での電子輸送層は、カソードもしくは電子注入層と発光層との間に配置された層である。本発明の意味での電子注入層は、カソードに直接隣接し、5nmを超える、好ましくは、0.5〜5nmの厚さを有する層である。
【0010】
本発明にしたがうと、全ての電子輸送層、すなわち、カソードもしくは存在するならば電子注入層と発光層との間に存在する全ての層は、−2.55eV以下のLUMOを有する少なくとも一つの化合物を含む。
【0011】
0.15eV以下の、最低三重項状態T
1と第1励起一重項状態S
1との間の離隔を有するルミネッセント有機化合物は、以下に詳細に説明される。これは、TADF(熱活性化遅延蛍光)を呈する化合物である。この化合物は、以下の説明において「TADF化合物」と略される。
【0012】
本発明の意味での有機化合物は、金属を含まない炭素含有化合物である。特に、有機化合物は、C、H、D、B、Si、N、P、O、S、F、Cl、BrおよびIの元素から構築される。
【0013】
本発明の意味でのルミネッセント有機化合物は、有機エレクトロルミネッセント素子中に存在するままの環境下で光学的励起により室温で発光することができる化合物を意味するものと解される。化合物は、好ましくは、少なくとも40%の、特に、好ましくは、少なくとも50%の、非常に、特に、好ましくは、少なくとも60%の、特別に、好ましくは、少なくとも70%のルミネッセンス量子効率を有する。ここで、ルミネッセンス量子効率は、有機エレクトロルミネッセント素子中で利用されるままの、マトリックス材料との混合物中において層中で決定される。本発明の目的のためにルミネッセンス量子収率の決定が実行される方法は、例部分において一般的用語で詳細に説明される。
【0014】
TADF化合物は短減衰時間を有することが、さらに好ましい。減衰時間は、好ましくは、50μs以下である。本発明の目的のために減衰時間を決定する方法は、例部分において一般的用語で詳細に説明される。
【0015】
最低励起一重項状態(S
1)と最低三重項状態(T
1)のエネルギーは、量子化学計算により決定される。本発明の目的のためにこの決定を実行する方法は、例部分において一般的用語で詳細に説明される。
【0016】
上記記載のとおり、化合物が、本発明の意味でのTADF化合物であるためには、S
1とT
1との間の離隔が、最大で0.15eVであり得る。S
1とT
1との間の離隔は、好ましくは、0.10eV以下、特に、好ましくは、0.08eV以下、非常に、特に、好ましくは、0.05eV以下である。
【0017】
TADF化合物は、好ましくは、ドナーおよびアクセプター置換基両者を有する芳香族化合物であり、ここで、化合物のLUMOとHOMOは、弱く空間的に重複するだけである。ドナーおよびアクセプター置換基により意味されるものは、原則として当業者に知られている。適切なドナー置換基は、特に、ジアリールおよびジヘテロアリール基とカルバゾール基もしくはカルバゾール誘導体であり、それぞれは、好ましくは、Nを介して芳香族化合物に結合する。これらの基は、さらに置換されてもよい。適切なアクセプター置換基は、特に、シアノ基であるが、たとえば、電子不足ヘテロアリール基であり、さらに置換されてもよい。
【0018】
TADFを示す適切な分子の例は、以下の表に示される構造である。
【化1】
【0019】
発光層中のTADF化合物は、好ましくは、マトリックス中に存在する。マトリックス材料は、混合物の発光に全く貢献しないか、本質的には貢献しない。
【0020】
発光層でのエキシプレックス形成を防止するために、以下が、LUMO(TADF)すなわちTADF化合物のLUMOおよびHOMO(マトリックス)すなわち電子輸送化合物のHOMOに適用されることが好ましい:
LUMO(TADF)−HOMO(マトリックス)>S
1(TADF)−0.4eV;
特に、好ましくは:
LUMO(TADF)−HOMO(マトリックス)>S
1(TADF)−0.3eV;
および、非常に、特に、好ましくは:
LUMO(TADF)−HOMO(マトリックス)>S
1(TADF)−0.2eV。
【0021】
式中、S
1(TADF)は、TADF化合物の第1励起一重項状態(S
1)である。
【0022】
TADF化合物が発光層中で発光化合物であるために、マトリックスの最低三重項エネルギーが、TADFを呈する分子の三重項エネルギーよりも、最大で−0.1eV低いことが好ましい。特に、好ましくはT
1(マトリックス)≧T
1(TADF)である。以下が、特に、好ましくは、適用され:T
1(マトリックス)−T
1(TADF)≧0.1eV:非常に、特に、好ましくは、
1(マトリックス)−T
1(TADF)≧0.2eVである。ここで、T
1(マトリックス)は、マトリックス化合物の最低三重項エネルギーであり、T
1(TADF)はTADFを呈する化合物の最低三重項エネルギーである。ここで、T
1(マトリックス)の三重項エネルギーは、TADFを呈する化合物に対する例部分において一般的用語で詳細に説明されるとおり、量子化学計算により決定される。
【0023】
適切なマトリックス材料の例は、たとえば、WO2004/013080、WO2004/093207、WO2006/005627もしくはWO2010/006680にしたがうケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよびスルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえば、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)または、WO 2005/039246、US 2005/0069729、JP 2004/288381、EP1205527、WO2008/086851もしくはUS2009/0134784に記載されたカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746にしたがうインドロカルバゾール誘導体、WO2010/136109もしくはWO2011/000455にしたがうインデノカルバゾール誘導体、たとえば、EP 1617710、EP 1617711、EP 1731584、JP 2005/347160にしたがうアザカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/137725にしたがうバイポーラーマトリックス材料、たとえば、WO 2005/111172にしたがうシラン、たとえば、WO2006/117052にしたがうアザボロールもしくはボロン酸エステル、たとえば、WO2010/054729にしたがうジアザシロール誘導体、たとえば、WO2010/054730にしたがうジアザホスホール誘導体、たとえば、WO2010/15306、WO2007/063754もしくはWO2008/056746にしたがうトリアジン誘導体、たとえば、EP652273もしくはWO2009/062578にしたがう亜鉛錯体、たとえば、US2009/0136779、WO2010/050778、WO2011/042107、WO2011/088877もしくはWO2012/143080にしたがう架橋カルバゾール誘導体である。
【0024】
本発明の電子輸送層は、以下に詳細に説明される。
【0025】
上記に既述したように、一以上の電子輸送層が存在し、これらの層の各々は、−2.55eV以下のLUMOを有する少なくとも一つの材料を含む。
【0026】
本発明の好ましい1態様では、このタイプの1、2または3個の電子輸送層、特に、好ましくは、1または2個の電子輸送層が存在する。
【0027】
ここで、電子輸送層の層厚は、好ましくは、合計で10〜100nm、特に、好ましくは、合計で15〜90nm、非常に、特に、好ましくは、合計で20〜70nmである。
【0028】
上記記載のとおり、電子輸送層は、−2.55eV以下のLUMOを有する少なくとも一つの電子輸送化合物を含む。LUMOは、好ましくは、−2.60eV以下、特に、好ましくは、−2.65eV以下、非常に、特に、好ましくは、−2.70eV以下である。ここで、LUMOは、最低非占分子軌道である。化合物のLUMOの値は、以下の例部分で一般的に記載される量子化学計算により決定される。
【0029】
TADF化合物の発光が、直接隣接する電子輸送層で消光しないために、この電子輸送層の最低三重項エネルギーは、TADFを呈する分子の三重項エネルギーよりも最大で0.1eV低いことが好ましい。特に、好ましくは、T
1(ETL)≧T
1(TADF)である。以下が、特に、好ましくは、適用される:T
1(ETL)−T
1(TADF)≧0.1eV、非常に、特に、好ましくは、T
1(ETL)−T
1(TADF)≧0.2eV。ここで、T
1(ETL)は、発光層に直接隣接する電子輸送層の最低三重項エネルギーであり、T
1(TADF)は、TADF化合物の最低三重項エネルギーである。電子輸送層の材料の三重項エネルギーは、以下の例部分で一般的に記載される量子化学計算により決定される。電子輸送層が、一以上の化合物を含むならば、三重項エネルギーに対する条件は、化合物のそれぞれに適用される。
【0030】
三重項エネルギーに対する上記言及した条件は、発光層に直接隣接する電子輸送層に対して選好されるだけである。発光層に直接隣接する電子輸送層のカソード側に配置されるさらなる電子輸送層の存在の場合には、これらのさらなる電子輸送層に対する三重項エネルギーは、重要ではなく、その結果、ここで、最低三重項エネルギーを有する電子輸送材料、たとえば、アントラセン誘導体を選択することもできる。
【0031】
カソード側の発光層に直接隣接する本発明の電子輸送層は、正孔ブロック層として機能することもでき、すなわち、電子輸送特性に加えて、正孔ブロック特性を同時に有することもできる。これは、層のHOMO準位の位置に依存する。以下が層のHOMOに適用されるならば、層は正孔ブロック層として機能する:HOMO(EML)−HOMO(ETL)>0.2eV、好ましくは、HOMO(EML)−HOMO(ETL)>0.3eV。HOMO(ETL)は電子輸送層の材料のHOMOである。この層が複数の材料から成る場合には、HOMO(ETL)は、これら材料の最高HOMOである。HOMO(EML)は発光層の材料のHOMOである。この層が複数の材料から成る場合には、HOMO(EML)は、これら材料の最高HOMOである。ここで、HOMO(最高占有分子軌道)は、各場合に、以下の例部分で一般的に記載される量子化学計算により決定される。
【0032】
明確にするために、ここで、HOMOとLUMOに対する値は、定義により負の数値である。したがって、最高HOMOは、最小絶対値のHOMOであり、最低LUMOは、最大絶対値のLUMOである。
【0033】
本発明の電子輸送層は、純粋層の形態であってよい、すなわち、一つの化合物のみより成り、そこで、−2.55eV以下のLUMOを有する。層は、混合物の形態であってもよく、ここで、少なくとも一つの化合物は、そこで、−2.55eV以下のLUMOを有する。この化合物は、層中に、好ましくは、少なくとも30体積%、特に好ましくは、少なくとも50体積%、非常に、特に好ましくは、少なくとも70体積%の割合で存在する。層は、特別に好ましくは、純粋層の形態であってよい、すなわち、一つの化合物のみより成り、そこで、−2.55eV以下のLUMOを有する。電子輸送層が2以上の材料の混合物を含むならば、これらの材料の各々は、−2.55eV以下のLUMOを有することが好ましい。
【0034】
本発明の電子輸送層での使用のために適切な電子輸送材料は、トリアジン、ピリミジン、ラクタム、金属錯体、特に、Be、ZnおよびAl錯体、芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシド、アザホスホール、アザボロール(少なくとも一つの電子伝導置換基で置換される)、ベンズイミダゾールおよびキノキサリンの物質クラスから選ばれる。これらの化合物が、−2.55eV以下のLUMOを有することが重要である。上記言及した物質の多くの誘導体は、このようなLUMOを有し、その結果、これらの物質クラスは、たとえ、これらの物質クラスからの個々の化合物が、LUMO>−2.55eVである可能性があるとしても、一般的に適切であると見なすことができる。しかしながら、−2.55eV以下のLUMOを有するそれら電子伝導材料だけが、本発明にしたがって用いられる。当業者は、発明性を要することなく、本発明の電子輸送層のために適切な材料を選ぶことができるであろう。
【0035】
本発明の電子輸送層での電子輸送材料が、トリアジンまたはピリミジン化合物であるならば、この化合物は、以下の式(1)および(2)の化合物から選ばれ、
【化2】
【0036】
式中、以下が、使用される記号に適用される;
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、N(Ar)
2、N(R
1)
2、C(=O)Ar、C(=O)R
1、P(=O)(Ar)
2、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々、1以上の基R
1により置換されてよく、1以上の隣接しないCH
2基は、R
1C=CR
1、C≡C、Si(R
1)
2、C=O、C=S、C=NR
1、P(=O)(R
1)、SO、SO
2、NR
1、O、SもしくはCONR
1で置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNO
2で置き代えられてよい。)、または各場合に、1以上の基R
1により置換されてよい5〜80個の、好ましくは、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基R
1により置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、1以上の基R
1により置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基より成る基から選ばれ;ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、1以上の基R
1により置換されてよい単環式あるいは多環式の脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を随意に形成してよく;
R
1は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、N(Ar)
2、N(R
2)
2、C(=O)Ar、C(=O)R
2、P(=O)(Ar)
2、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々、1以上の基R
2により置換されてよく、1以上の隣接しないCH
2基は、R
2C=CR
2、C≡C、Si(R
2)
2、C=O、C=S、C=NR
2、P(=O)(R
2)、SO、SO
2、NR
2、O、SもしくはCONR
2で置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNO
2で置き代えられてよい。)、または各場合に、1以上の基R
2により置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基R
2により置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、1以上の基R
1により置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基より成る基から選ばれ;ここで、2個以上の隣接する置換基R
1は、1以上の基R
2により置換されてよい単環式あるいは多環式の脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を随意に形成してよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の非芳香族基R
2により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、同じN原子もしくはP原子に結合する2個の基Arは、単結合または、N(R
2)、C(R
2)OもしくはSから選ばれるブリッジにより互いにブリッジされてよく、
R
2は、H、D、F、CN、1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造(ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IもしくはCNで置き代えられてよい。)より成る基から選ばれ、ここで、2個以上の隣接する置換基R
2は、単環式あるいは多環式の脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を互いに形成してもよい。
【0037】
本出願の意味での隣接する置換基は、同じ炭素原子に結合するか、または、順に互いに直接結合する炭素原子に結合する置換基である。
【0038】
アリール基は、本発明の意味では、6〜60個のC原子を含有し、ヘテロアリール基は、本発明の意味では、2〜60個のC原子および少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、ただしC原子およびヘテロ原子の合計は、少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される。ここで、アリール基またはヘテロアリール基は、簡単な芳香族環、すなわち、ベンゼン、または簡単な複素環式芳香族環、たとえば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または縮合(縮合環化)アリールもしくはヘテロアリール基、たとえば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン等のいずれかを意味するものと解される。たとえば、ビフェニル等の単結合により互いに結合した芳香族環は、逆に、アリールもしくはヘテロアリール基ではなく、芳香族環構造と称される。
【0039】
芳香族環構造は、本発明の意味では、環構造中に6〜80個のC原子を含有する。複素環式芳香族環構造は、本発明の意味では、環構造中に2〜60個のC原子および少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、ただしC原子およびヘテロ原子の合計は、少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される。芳香族または複素環式芳香族環構造は、本発明の意味では、必ずしもアリールまたはヘテロアリール基だけを含有するとは限らない構造であって、複数のアリールまたはヘテロアリール基が、非芳香族単位、たとえばC、NもしくはO原子などによって連結されていてもよい構造の意味で使用されることを意図する。したがって、たとえば9,9’−スピロビフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等の構造は、2つ以上のアリール基が、たとえば短いアルキル基によって中断されている構造と同様に、本発明の意味ではやはり芳香族環構造の意味で使用されることを意図する。
【0040】
本発明の目的のために、1〜40個のC原子を含んでよく、さらに個々のH原子またはCH
2基が、前述の基により置換されていてもよいアルキル基もしくはアルケニル基もしくはアルキニル基は、好ましくは、基メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、ネオヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルまたはオクチニルの意味で使用される。1〜40個のC原子を有するアルコキシ基は、特に、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、2-メチルブトキシ、n-ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n-ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシの意味で使用される。1〜40個のC原子を有するチオアルキル基は、特に、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、i-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、s-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n-ヘプチチオル、シクロヘプチルチオ、n-オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2-トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニルチオル、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオまたはオクチニルチオの意味で使用される。一般に、本発明のアルキル、アルコキシまたはチオアルキル基は直鎖状、分枝または環状であってよく、1以上の隣接していないCH
2基は上記基によって置きかえられていてもよく、さらに、1以上のH原子もD、F、Cl、Br、I、CNまたはNO
2、好ましくはF、ClまたはCN、さらに好ましくはFまたはCN、特に好ましくはCNによって置きかえられていてもよい。
【0041】
各場合において、前述の基R、R
1またはR
2により置換されていてもよい、5〜30個もしくは5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族または複素環式芳香族環構造は、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、トリフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、cis-またはtrans-インデノフルオレン、cis-またはtrans-インデノカルバゾール、cis-またはtrans-インドロカルバゾール、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ヘキサアザトリフェニレン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールまたはこれら構造の組み合わせから得られる基の意味で使用される。
【0042】
式(1)または式(2)の化合物の好ましい1態様では、少なくとも一つの置換基Rは、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。式(1)において、すべての3個の置換基Rは、各場合に1以上の基R
1により置換されてよい芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であることが、特に、好ましい。式(2)において、1、2または3個の置換基Rは、各場合に1以上の基R
1により置換されてよい芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、その他の置換基RはHであることが、特に、好ましい。したがって、特に、好ましい態様は、以下の式(1a)および(2a)〜(2d)の化合物であり、
【化3】
【0043】
式中、R
formula(1a)は、出現毎に同一であるか異なり、各場合に、1以上の基R
1により置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、R
1は、上記言及した意味を有する。
【0044】
ここで、ピリミジン化合物の場合には、好ましいのは、式(2a)および(2d)の化合物、特に、式(2d)の化合物である。
【0045】
好ましい芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、5〜30個の芳香族環原子、特に、6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、1以上の基R
1により置換されてよい。ここで、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、好ましくは、2個を超える芳香族6員環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含まない。それらは、特に、好ましくは、芳香族6員環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を絶対的に含まない。この選好は、このタイプの置換基のより高い三重項エネルギーに基づく。したがって、Rは、たとえば、ナフチル基もしくはより高い縮合アリール基と同様キノリン基、アクリジン基等も有さないことが好ましい。反対に、Rは、6員環芳香族もしくは複素環式芳香族環構造がこれらの構造中で互いに直接縮合しないことから、たとえば、カルバゾール基、ジベンゾフラン基等を含むことも可能である。
【0046】
好ましい置換基Rは、ベンゼン、オルト-、メタ-もしくはパラ-ビフェニル、オルト-、メタ-、パラ-もしくは分岐テルフェニル、オルト-、メタ-、パラ-もしくは分岐クアテルフェニル、1-,2-,3-もしくは4-フルオレニル、1-,2-,3-もしくは4-スピロビフルオレニル、1-もしくは2-ナフチル、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、1-,2-もしくは3-カルバゾール、1-,2−もしくは3-ジベンゾフラン、1-,2-もしくは3-ジベンゾチオフェン、インデノカルバゾール、インドロカルバゾール、2-,3-もしくは4-ピリジン、2-,4-もしくは5-ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ベンズアントラセンまたは2もしくは3個のこれらの組み合わせから選ばれ、それぞれは、1以上の基R
1により置換されてよい。
【0047】
少なくとも一つの基Rは、次の式(3)〜(44)の構造から選ばれることが、特に、好ましい。
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
【0048】
式中、R
1とR
2は、上記言及した意味を有し、破線の結合は、式(1)または(2)の基への結合であり、さらに、
Xは、出現毎に同一であるか異なり、CR
1またはNであり、ここで、好ましくは、環毎の最大2個の記号Xは、Nであり;
Yは、出現毎に同一であるか異なり、C(R
1)
2、NR
1、OまたはSであり、
nは、0または1であり、n=0は、基Yがこの位置で結合せず、その代わり、基R
1が対応する炭素原子に結合することを意味する。
【0049】
上記言及され、以下も使用される用語「環毎」は、本発明の目的のために、化合物中に存在するそれぞれ個々の環、すなわち、それぞれ個々の5もしくは6員環に関する。
【0050】
上記言及した式(3)〜(44)の好ましい基において、環毎の最大1個のXは、Nである。記号Xは、特に、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、CR
1、特に、CHである。
【0051】
式(3)〜(44)の基が、複数の基Yを有する場合には、Yの定義からの全ての組み合わせが、この目的のために可能である。好ましいのは、YがNR
1であり、その他の基YがC(R
1)
2である式(3)〜(44)の基か、または両方のYがNR
1である式(3)〜(44)の基か、または両方のYがOである式(3)〜(44)の基である。
【0052】
本発明のさらに好ましい1態様では、式(3)〜(44)中の少なくとも一つの基Yは、出現毎に同一であるか異なり、C(R
1)
2であるか、またはNR
1である。
【0053】
さらに、好ましくは、これらの基において窒素原子に直接結合する置換基R
1は、5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、1以上の基R
2により置換されてもよい。特に、好ましい1態様では、置換基R
1は、出現毎に同一であるか異なり、6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、2個を超える芳香族6員環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくは縮合ヘテロアリール基を含まず、各場合に1以上の基R
2により置換されてもよい。
【0054】
YがC(R
1)
2である場合には、R
1は、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル基、または、1以上の基R
2により置換されてよい5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。R
1は、非常に、特に、好ましくは、メチル基またはフェニル基である。
【0055】
さらに、上記言及した式(3)〜(44)の基が、式(1)のトリアジンまたは式(2)のピリミジンに直接結合せず、架橋基を介して結合することが好ましい。そこで、この架橋基は、好ましくは、5〜24個の芳香族環原子を有する、特に、6〜12個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造から選ばれ、各場合に、1以上の基R
1により置換されてよい。
【0056】
式(1)または(2)の好ましい化合物の例は、以下の表に示される化合物である。
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
【化5-4】
【化5-5】
【化5-6】
【化5-7】
【化5-8】
【化5-9】
【化5-10】
【化5-11】
【化5-12】
【化5-13】
【化5-14】
【化5-15】
【0057】
本発明の電子輸送層での電子輸送材料が、ラクタムであるならば、この化合物は、そこで、好ましくは、以下の式(45)および(46)の化合物から選ばれ、
【化6】
【0058】
式中、R、R
1、R
2およびArは、上記言及した意味を有し、以下が、使用する記号と添え字に適用される:
Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合、NR、CR
2、OまたはSであり;
Ar
1は、明確に示された炭素原子と一緒になって、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Ar
2、Ar
3は、出現毎に同一であるか異なり、明確に示された炭素原子と一緒になって、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Lは、m=2に対しては、単結合もしくは2価基であり、またはm=3に対しては、3価基であり、またはm=4に対しては、4価基であり、各場合に、Ar
1、Ar
2もしくはAr
3に、任意の所望の位置で結合するか、または基Rの場所でEに結合し、
mは、2、3または4である。
【0059】
式(45)または(46)の化合物の好ましい1態様では、基Ar
1が、以下の式(47)、(48)、(49)または(50)の基であり、
【化7】
【0060】
式中、破線の結合はカルボニル基への結合を示し、
*は、EもしくはAr
2への結合位置を示し、さらに、
Wは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNであるか;または、二個の隣接する基Wは、以下の式(51)または(52)の基であり、
【化8】
【0061】
式中、Gは、CR
2、NR、OまたはSであり、Zは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNであり;
∧は、式(47)〜(50)における対応する隣接基Wを示し;
Vは、NR、OまたはSである。
【0062】
本発明のさらに好ましい1態様では、基Ar
2は、以下の式(53)、(54)および(55)の一つの基であり、
【化9】
【0063】
式中、破線の結合はNへの結合を示し、#は、EもしくはAr
3への結合位置を示し、
*は、EもしくはAr
1への結合を示し、WとVは、上記言及した意味を有する。
【0064】
本発明のさらに好ましい1態様では、基Ar
3は、以下の式(56)、(57)、(58)および(59)の一つの基であり、
【化10】
【0065】
式中、破線の結合はNへの結合を示し、
*は、EもしくはAr
2への結合位置を示し、WとVは、上記言及した意味を有する。
【0066】
ここで、上記言及した好ましい基Ar
1、Ar
2およびAr
3は、所望のとおりに互いに組み合わせることができる。
【0067】
本発明のさらに好ましい1態様では、少なくとも一つの基Eは単結合である。
【0068】
本発明の好ましい1態様では、上記言及した選好は、同時に生じる。したがって、特に、好ましくは、式(45)または(46)の化合物であり、
Ar
1は、上記言及した式(47)、(48)、(49)および(50)の基から選ばれ、
Ar
2は、上記言及した(53)、(54)および(55)の基から選ばれ、
Ar
3は、上記言及した式(56)、(57)、(58)および(59)の基から選ばれる。
【0069】
特に、好ましいのは、基Ar
1、Ar
2およびAr
3の少なくとも二つの基が、6員アリール環基または6員ヘテロアリール環基である。したがって、特に、好ましくは、Ar
1が、式(47)の基であり、同時にAr
2が、式(53)の基であるか、またはAr
1が、式(47)の基であり、同時にAr
2が、式(56)の基であるか、またはAr
2が、式(53)の基であり、同時にAr
3が、式(59)の基である。
【0070】
したがって、式(45)の、特に、好ましい態様は、次の式(60)〜(69)の化合物であり、
【化11】
【0071】
式中、使用される記号は、上記言及した意味を有する。
【0072】
さらに、好ましくは、Wは、CRまたはNであり、式(51)または(52)の基ではない。式(60)〜(69)の化合物の好ましい1態様では、環毎の合計で最大1個の記号Wは、Nであり、残る記号Wは、CRである。本発明の、特に、好ましい1態様では、全ての記号Wは、CRである。したがって、特に、好ましいのは、次の式(60a)〜(69a)の化合物であり、
【化12】
【0073】
式中、使用される記号は、上記言及した意味を有する。
【0074】
非常に、特に、好ましいのは、次の式(60b)〜(69b)の構造であり、
【化13】
【0075】
式中、使用される記号は、上記言及した意味を有する。
【0076】
非常に、特に、好ましいのは、式(60)および(60a)および(60b)の化合物である。
【0077】
式(46a)の化合物中の架橋基Lは、好ましくは、単結合または一以上のRにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。ここで、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、好ましくは、2個を超える6員芳香族環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含まない。特に、好ましくは、それらは、芳香族6員環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を絶対的に含まない。
【0078】
本発明のさらに好ましい1態様では、式(46)の化合物中の添え字mは、2または3、特に、2である。
【0079】
本発明の好ましい1態様では、上記言及された式中のRは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、CN、N(Ar)
2、C(=O)Ar、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキルもしくはアルコキシ基、2〜10個のC原子を有するアルケニル基(夫々、1以上の基R
1により置換されてよく、1以上の隣接しないCH
2基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)、各場合に、1以上の基R
1により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基R
1により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または、これらの構造の組み合わせより成る基から選ばれる。
【0080】
本発明の、特に、好ましい1態様では、上記言及された式中のRは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、CN、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル基(夫々、1以上の基R
1により置換されてよく、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)、各場合に、1以上の基R
1により置換されてよい5〜18個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、これらの構造の組み合わせより成る基から選ばれる。
【0081】
基Rは、これらが、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を含むならば、好ましくは、2個を超える芳香族6員環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含まない。特に、好ましくは、それらは、芳香族6員環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を絶対的に含まない。ここで、特別に、好ましいのは、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、カルバゾール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、インデノカルバゾール、インドロカルバゾール、トリアジンもしくはピリミジンであり、それぞれ、1以上の基R
1により置換されてもよい。
【0082】
真空蒸発により加工される化合物に対しては、アルキル基は、5個を超えるC原子、特に、好ましくは、4個を超えるC原子、非常に、特に、好ましくは、1個を超えるC原子を有さない。溶液から加工される化合物に対しては、化合物は、10個までのC原子を有するアルキル基により置換されるか、オリゴアリーレン基、たとえば、オルト-、メタ-、パラ-もしくは分岐テルフェニルより置換される化合物も適している。
【0083】
式(45)または(46)の化合物は、原則的に知られている。これらの化合物の合成は、WO 2011/116865もしくはWO 2011/137951に記載された方法により実施することができる。
【0084】
上記言及した態様にしたがう好ましい化合物の例は、以下の表に示される化合物である。
【化14-1】
【化14-2】
【化14-3】
【化14-4】
【化14-5】
【化14-6】
【化14-7】
【0085】
さらに、芳香族ケトンまたは芳香族ホスフィンオキシドは、本発明の電子輸送層中の電子伝導化合物として適している。本出願の意味での芳香族ケトンは、2個の芳香族もしくは複素環式芳香族環基または芳香族もしくは複素環式芳香族環構造が直接結合するカルボニル基の意味で使用される。本出願の意味での芳香族ホスフィンオキシドは、3個の芳香族もしくは複素環式芳香族環基または芳香族もしくは複素環式芳香族環構造が直接結合するP=O基の意味で使用される。
【0086】
本発明の電子輸送層中の電子輸送材料が、芳香族ケトンまたは芳香族ホスフィンオキシドである場合には、そこで、この化合物は、好ましくは、以下の式(70)および(71)の化合物から選ばれ、
【化15】
【0087】
式中、R、R
1、R
2およびArは、上記言及した意味を有し、以下が、使用する記号に適用され:
Ar
4は、出現毎に同一であるか異なり、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜80個の芳香族環原子、好ましくは、60個までの芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。
【0088】
式(70)および(71)の適切な化合物は、たとえば、WO2004/093207およびWO2010/006680に開示されたケトンとWO2005/003253に開示されたホスフィンオキシドである。これらは、参照として、本発明に組込まれる。
【0089】
式(70)および(71)の定義から、それらが、丁度1つのカルボニル基とカルボニル基を必ずしも含むのではなく、複数のこれらの基を含んでもよいことが明らかである。
【0090】
式(70)および(71)の化合物中の基Ar
4は、好ましくは、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造であり、すなわち、いかなるヘテロアリール基をも含まない。上記定義されるとおり、芳香族環構造は、必ずしも芳香族基だけを含むのではなく、その代わりに、2個のアリール基が、非芳香族基により、たとえば、さらなるカルボニル基もしくはホスフィンオキシド基により中断されてもよい。
【0091】
本発明のさらに好ましい1態様では、基Ar
4は、2個を超える縮合環を含まない。したがって、それは、フェニルおよび/またはナフチル基からのみ、特に、好ましくは、フェニルからのみ構築され、たとえば、アントラセン等の任意のより大きな縮合芳香族基を含まない。
【0092】
カルボニル基に結合する好ましい基Ar
4は、出現毎に同一であるか異なり、フェニル、2-、3-もしくは4-トリル、3-もしくは4-o-キシリル、2-もしくは4-m-キシリル、2-p-キシリル、o-,m-もしくはp-tert-ブチルフェニル、o-,m-もしくはp-フルオロフェニル、ベンゾフェノン、1-,2-もしくは3-フェニルメタノン、2-,3-もしくは4-ビフェニル、2-,3-もしくは4-o-テルフェニル、2-,3-もしくは4-m-テルフェニル、2-,3-もしくは4-p-テルフェニル、2’-p-テルフェニル、2’-,4’-もしくは5’-m-テルフェニル、3’-もしくは4’-o-テルフェニル、p,m-,o,p-,m,m-,o,m-もしくはo,o-クアテルフェニル、キンケフェニル、セキシフェニル、1-,2-,3-もしくは4-フルオレニル、2-,3-もしくは4-スピロ-9,9'-ビフルオレニル、1-,2-,3-もしくは4-(9,10-ジヒドロ)フェナントレニル、1-もしくは2-ナフチル、2-,3-,4-,5-,6-,7-もしくは8-キノリニル、1-,3-,4-,5-,6-,7-もしくは8-イソキノリニル、1-もしくは2-(4-メチルナフチル)、1-もしくは2-(4-フェニルナフチル)、1-もしくは 2-(4-ナフチルナフチル)、1-,2-もしくは3-(4-ナフチルフェニル)、2-3-もしくは4-ピリジル、2-,4-もしくは5-ピリミジニル、2-もしくは3-ピラジニル、3-もしくは4-ピリダジニル、2-(1,3,5-トリアジニル)、2-,3-もしくは4-(フェニルピリジル)、3-,4-,5-もしくは6-(2,2'-ビピリジル)、2-,4-,5-もしくは6-(3,3'-ビピリジル)、2-もしくは3-(4,4'-ビピリジル)および1以上のこれらの基の組み合わせである。
【0093】
基Ar
4は、1以上の基Rにより置換されてよい。これらの基Rは、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)Ar、P(=O)(Ar)
2、S(=O)Ar、S(=O)(Ar)
2、1〜4個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜5個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル基(夫々、1以上の基R
1により置換されてよく、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)、または、1以上の基R
1により置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造、またはこれらの構造の組み合わせより成る基から選ばれ;ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、単環式あるいは多環式の脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を随意に形成してよい。有機エレクトロルミネッセント素子が溶液から適用される場合には、10個までのC原子を有する直鎖、分岐あるいは環式アルキル基も、置換基Rとして好ましい。基Rは、特に、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、H、C(=O)Ar、または6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造であり、1以上の基R
1により置換されてよいが、好ましくは、非置換である。
【0094】
本発明のさらに好ましい態様では、基Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基R
1により置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造である。Arは、特に、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、6〜12個の芳香族環原子を有する芳香族環構造である。
【0095】
特に、好ましいのは、上記定義にしたがう一以上の基Rにより順に置換され、5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造により、3,5,3',5'位のそれぞれで置換されたベンゾフェノン誘導体である。さらに好ましくは、少なくとも一つのスピロビフルオレン基で置換されたケトンである。
【0096】
したがって、好ましい芳香族ケトンまたは芳香族ホスフィンオキシドは、以下の式(72)〜(75)の化合物であり、
【化16】
【0097】
式中、X、Ar
4、R、R
1およびR
2は、上記記載された意味を有し、さらに、
Tは、出現毎に同一であるか異なり、CまたはP(Ar
4)であり;
nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1である。
【0098】
上記言及した式(72)〜(75)中のAr
4は、1以上の基R
1により置換されてよい5〜3個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。特に、好ましいのは、上記言及した基Ar
4である。
【0099】
式(70)および(71)の適切な化合物の例は、以下の表に示される化合物である。
【化17-1】
【化17-2】
【化17-3】
【化17-4】
【化17-5】
【化17-6】
【0100】
本発明の電子輸送層中で電子輸送材料として用いることができる適切な金属錯体は、これらの化合物のLUMOが−2.55eV以下である限り、Be、ZnもしくはAl錯体である。
【0101】
適切な金属錯体の例は、以下の表に示される化合物である。
【化18】
【0102】
しかしながら、本発明の好ましい1態様では、本発明の電子輸送層で−2.55eV以下のLUMOを有する電子輸送材料は、純粋な有機材料、すなわち、金属を含まない材料である。
【0103】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子で電子伝導マトリックス材料として用いることができる適切なアザホスホールは、これらの化合物のLUMOが−2.55eV以下である限り、WO2010/054730に開示された化合物である。この適用は参照として本発明に組み込まれる。
【0104】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子の電子伝導マトリックス材料として用いることができる適切なアザボロールは、これらの化合物のLUMOが−2.55eV以下であり限り、少なくとも一つの電子伝導置換基により置換されたアザボロール誘導体である。このタイプの化合物は、未公開出願EP11010103.7に開示されている。この適用は参照として本発明に組み込まれる。
【0105】
さらに、適切なものはベンズイミダゾール誘導体である。これらが−2.55eV以下のLUMOを有するためには、縮合アリール基、特に、アントラセン、ベンズアントラセンまたはピレンが、直接または随意に置換された2価の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を介してベンズイミダゾールに結合することが好ましい。ここで、ベンズイミダゾールと縮合アリール基の両者は、随意に置換されてよい。ベンズイミダゾール誘導体のために適する置換基は、上記記載された基Rである。
【0106】
有機エレクトロルミネッセント素子は、以下に詳細に説明される。
【0107】
有機エレクトロルミネッセント素子は、カソード、アノード、発光層とカソード側でそこに隣接する少なくとも一つの電子輸送層とを含む。これらの層とは別に、さらなる層、たとえば、各場合に、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、さらなる電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電子ブロック層および/または電荷生成層を含んでもよい。しかしながら、これらの層の夫々は、必ずしも存在する必要がないことに留意する必要がある。
【0108】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子のその他の層には、特に、正孔注入および輸送層と電子注入および輸送層では、先行技術により通常用いられるような全ての材料の使用がなされることができる。ここで、正孔輸送層は、p-ドープされてもよく、電子輸送層は、n-ドープされてもよい。ここで、p-ドープ層は、遊離正孔が生成され、その伝導性がそこで増加した層の意味で使用される。OLEDでドープされる輸送層の総括的検討は、Chem. Rev. 2007, 107, 1233に見出すことができる。p-ドーパントは、特に、好ましくは、正孔輸送層で正孔輸送材料を酸化することができる、すなわち、十分に高い還元電位、特に、正孔輸送材料より高い還元電位を有する。適切なドーパントは、原則として電子受容性化合物であり、ホストの酸化により有機層の伝導性を増加することができる全ての化合物である。当業者は、その専門的知識に基づいて、多大の努力を要せずに適切な化合物を同定することができるだろう。特に、適切なドーパントは、WO 2011/073149、EP1968131、EP2276085、EP2213662、EP1722602、EP2045848、DE102007031220、US 8044390、US 8057712、WO 2009/003455、WO2010/094378、WO2011/120709およびUS 2010/0096600に開示された化合物である。
【0109】
したがって、当業者は、発明性を要することなく、本発明の発光層と組み合わせて有機エレクトロルミネッセント素子に対して公知の全ての材料を使用することができるであろう。
【0110】
特に、さらなる電子輸送層および/または電子注入層が、本発明の電子輸送層とカソードとの間に存在することが好ましい可能性がある。本発明の好ましい1態様では、さらなる電子輸送層および/または電子注入層は、リチウム化合物、たとえば、LiQ(リチウムキノリナート)を含む。さらに適するリチウム化合物は、WO 2010/072300により明らかにされる。
【0111】
さらに、カソードに、存在するならば電子注入層に隣接する電子輸送層は、−2.55eV以下のLUMOを有する電子輸送材料とリチウム化合物、特に、リチウムキノリナートもしくはリチウムキノリナート誘導体の混合物を含むことが好ましい可能性がある。
【0112】
本発明のエレクトロルミネッセント素子のカソードは、好ましくは、低い仕事関数を有する金属、金属合金または、たとえば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属もしくはランタノイド(たとえば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)のような種々の金属を含む多層構造である。多層構造の場合、比較的高い仕事関数を有するさらなる金属、たとえば、Agを前記金属に加えて使用することができ、その場合、たとえば、Mg/Ag、Ca/AgもしくはBa/Agのような金属の組み合わせが、一般的に使用される。同様に好ましいのは、金属合金、特に、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属と銀とを含む合金、特に、好ましくは、MgとAgとの合金である。金属カソードと有機半導体との間に高誘電定数を有する材料の薄い中間層を導入することも好ましい可能性がある。この目的に適するものは、たとえば、アルカリ金属フッ化物もしくはアルカリ土類金属フッ化物だけでなく、また対応する酸化物もしくは炭酸塩(たとえば、LiF、Li
2O、CsF、Cs
2CO
3、BaF
2、MgO、NaF等)である。たとえば、リチウムキノリナート(LiQ)等の有機アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属が、同様に適している。電子輸送層とみなされるこの層の層厚は、好ましくは、0.5〜5nmである。
【0113】
本発明のエレクトロルミネッセント素子のアノードは、好ましくは、高い仕事関数を有する金属を含む。アノードは、好ましくは、4.5eV対真空超の仕事関数を有する。この目的に適するものは、一方で、たとえば、Ag、PtもしくはAuのような高還元電位を有する金属である。他方で、金属/金属酸化物電極(たとえば、Al/Ni/NiO
x、Al/PtO
x)が、また、好まれてもよい。少なくとも一つの電極は、光のカップリング-アウトを容易にするために、透明もしくは一部透明である必要がある。好ましい透明もしくは一部透明アノード材料は、伝導性混合金属酸化物である。特に、好ましいのは、イリジウム錫酸化物(ITO)もしくはイリジウム亜鉛酸化物(IZO)である。さらに、好ましいのは、伝導性でドープされた有機材料、特に、伝導性ドープポリマーである。
【0114】
素子は、(用途に応じて)対応して構造化され、接点を供され、本発明の素子の寿命が水および/または空気の存在で極めて短くなることから、最後に気密封止される。
【0115】
更に好ましい有機エレクトロルミネッセント素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用され、材料は、10
−5mbar未満、好ましくは、10
−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で真空気相堆積されることを特徴とする。しかしながら、初期圧力は、さらにより低くても、たとえば、10
−7mbar未満でも可能である。
【0116】
好ましいのは、同様に、有機エレクトロルミネッセント素子であって、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により被覆されることを特徴とし、材料は、10
−5mbar〜1barの圧力で適用される。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、そのように構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0117】
好ましいのは、さらに、有機エレクトロルミネッセント素子であって、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)インクジェット印刷もしくはノズル印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。この目的のために可溶性の化合物が必要であり、たとえば、適切な置換により得られる。これらのプロセスは、特に、オリゴマー、デンドリマーおよびポリマーに適しもする。
【0118】
これらのプロセスは、当業者に知られ、当業者は、発明性を要することなく、本発明の化合物を含む有機エレクトロルミネッセント素子に適用することができるであろう。
【0119】
したがって、本発明は、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法に関し、少なくとも一つの層が昇華プロセスにより適用されることおよび/または少なくとも一つの層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスまたはキャリアガス昇華により適用されることおよび/または少なくとも一つの層が、溶液から、スピンコーティングにより、もしくは、印刷プロセスにより適用されることを特徴とする。
【0120】
本発明による有機エレクトロルミネッセント素子は、一以上の以下の驚くべき利点によって従来技術とは区別される。
【0121】
1.本発明による有機エレクトロルミネッセント素子は、TADFを同様に示す先行技術にしたがう素子と比べて、改善された極めて良好な効率を有する。
【0122】
2.本発明による有機エレクトロルミネッセント素子は、極めて低い駆動電圧を有する。
【0123】
3.本発明による有機エレクトロルミネッセント素子は、TADFを同様に示す先行技術にしたがう素子と比べて、改善された極めて良好な寿命を有する。
【0124】
4.発光化合物としてイリジウムもしくは白金錯体を含む先行技術にしたがう有機エレクトロルミネッセント素子と比べて、本発明のルミネッセント素子は、高温で改善された寿命を有する。
【0125】
これらの上記言及した利点には、他の電子的特性の障害が伴わない。
【0126】
本発明を、以下の例によってより詳細に説明するが、それにより本発明が制限されるものではない。本明細書に基づいて、当業者は、特許請求の範囲の全般にわたって本発明を実施することができ、発明性を要さずに本発明のさらなる化合物を製造し、それらを電子素子に使用し、本発明のプロセスを使用することができよう。
【0127】
例:
HOMO、LUMO、一重項および三重項準位の決定
材料のHOMOおよびLUMOのエネルギー準位と、最低の三重項状態T
1のエネルギー、または最低の励起一重項状態S
1のエネルギーを、量子化学計算によって決定する。この目的のために、「ガウシアン09W」ソフトウエアパッケージ(Gaussian Inc.)を使用する。金属を含まない有機物質を計算するために(表4では“org”法と示されている)、最初に、「基底状態/準実験的/デフォルトスピン/AM1/電荷0/一重項スピン」法を使用して、幾何学的な最適化を実施する。続いて幾何学的な最適化を基準にしてエネルギー計算を実施する。ここでは、「6−31G(d)」ベースセット(電荷0、一重項スピン)を用いる「TD−SCF/DFT/デフォルトスピン/B3PW91」法を使用する。金属含有化合物(表4では“organom”法と示されている)に対しては、ジオメトリーは、「基底状態/ハートリー-フォック/デフォルトスピン/LanL2MB/電荷0/一重項スピン」法を介して最適化される。エネルギー計算は、「LanL2DZ」基本セットが金属原子のために使用され、「6−31G(d)」基本セットがリガンドのために使用されるという相違の他は、上記記載のとおりの有機物質と同じように実行される。エネルギー計算は、ハートリー単位でHOMOエネルギー準位HEhまたはLUMOエネルギー準位LEhを与える。サイクリックボルタンメトリ測定を参照して較正されたHOMOおよびLUMOのエネルギー準位は、そこから電子ボルトで、以下のように決定される:
HOMO(eV)=((HEh
*27.212)−0.9899)/1.1206
LUMO(eV)=((LEh
*27.212)−2.0041)/1.385
これらの値は、本出願の意味においては、材料のHOMOおよびLUMOのエネルギー準位とみなされる。
【0128】
最低の三重項状態T
1は、前述の量子化学計算から生じる最低のエネルギーを有する三重項状態のエネルギーとして定義される。
【0129】
最低の励起一重項状態S
1は、前述の量子化学計算から生じる最低のエネルギーを有する励起一重項状態のエネルギーとして定義される。
【0130】
以下の表4は、種々の材料のHOMOおよびLUMOエネルギー準位と、S
1およびT
1を示している。
【0131】
PL量子効率(PLQE)の決定
種々のOLEDで用いられる発光層の50nm厚の膜が、適切な透明基板、好ましくは石英に適用され、即ち、層はOLEDと同じ濃度で同じ材料を含む。ここでは、OLEDの発光層の製造と同じ製造条件を用いる。この膜の吸収スペクトルを350−500nmの範囲の波長において測定する。この目的のために、試料の反射スペクトルR(λ)と透過スペクトルT(λ)とが入射角6°で測定される(即ち、実質的に垂直の入射)。本願の意味では吸収スペクトルを、A(λ)=1−R(λ)−T(λ)と定義する。
【0132】
350−500nmの範囲でA(λ)≦0.3であるならば、350−500nmの範囲の吸収スペクトルの最大に属す波長を、λ
excと定義する。任意の波長に対してA(λ)>0.3であるならば、A(λ)が0.3未満の値から0.3を超える値へ変化する最大波長、あるいは0.3を超える値から0.3未満の値へ変化する最大波長をλ
excとして定義する。
【0133】
PLQEは、Hamamatsu C9920−02測定システムを使用して、測定される。その原理は、規定された波長の光による試料の励起と、吸収および発光された放射の測定とに基づいている。試料は、測定中、ウルブリヒト球(「積分球」)に位置される。励起光のスペクトルは、おおよそ、半値幅<10nmと、先に定義したようなピーク波長λ
excとを有するガウシアンである。PLQEは、前記測定システムでは一般的である評価法により測定される。重要なことは、いかなるときでも、確実に、試料が酸素と接触をしないことであり、その理由は、S
1とT
1との間のエネルギー離隔が小さいPLQEが、酸素によって非常に大幅に減少されるためである(H. Uoyama et al., Nature 2012, Vol. 492, 234)。
【0134】
表2は、先に定義したようなOLEDの発光層についてのPLQEを、使用する励起波長と共に示している。
【0135】
減衰時間の測定
減衰時間を、「PL量子効率(PLQE)の決定」で前述したように、製造された試料を用いて測定する。試料をレーザーパルス(波長266nm、パルス期間1.5ns、パルスエネルギー200μJ、光線直径4mm)により、温度295Kで励起する。ここでは、試料を真空(<10
−5ミリバール)に位置させる。励起後(t=0として定義)、時間にわたる、発光されたフォトルミネッセンスの強度の変化を測定する。フォトルミネッセンスは、TADF化合物の即発蛍光が原因で、初めは急落を示す。時間の継続につれて、ゆっくりとした落下、即ち遅延蛍光が観察される(たとえば、H. Uoyama et al., Nature, vol. 492, no. 7428, pp. 234-238, 2012 と、K. Masui et al., Organic Electronics, vol. 14, no. 11, pp. 2721-2726, 2013を参照)。本願の意味では、減衰時間t
aは、遅延蛍光の減衰時間であり、次のように決定される:時間t
dが選択され、その時間では、即発蛍光は遅延蛍光の強度を非常に下回るように減衰し(<1%)、よってそれに続く減衰時間の決定は影響を受けない。この選択は当業者により行われることができる。時間t
dからの測定データについて、減衰時間t
a=t
e−t
dが決定される。ここでt
eはt=t
d後の時間であり、その時間では、強度は初めは、t=t
dにおけるその値の1/eまで低下する。
【0136】
表2は、本発明によるOLEDの発光層について決定されるt
aとt
dの値を示している。
【0137】
例:OLEDの製造
種々のOLEDのデータを、以下の例V1〜E16で提示する(表1と2参照)。
【0138】
厚さ50nmの構造化されたITO(インジウムスズ酸化物)で被覆されたガラス板が、OLEDの基板を形成する。基板は、湿式洗浄され(皿洗い機、Merck Extran洗浄剤)、引き続き250℃で15分間の加熱により乾燥され、被覆前に酸素プラズマで130秒、処理される。これらのプラズマ処理されたガラス板は、OLEDが適用される基板を形成する。被覆前には基板は真空に維持される。被覆は、遅くてもプラズマ処理後10分間で開始する。
【0139】
OLEDは、基本的に、次の層構造を有する:基板/随意に、正孔注入層(HIL)/随意に、正孔輸送層(HTL)/随意に、中間層(IL)/電子ブロック層(EBL)/発光層(EML)/随意に、正孔ブロック層(HBL)/電子輸送層(ETL)/随意に、電子注入層(EIL)/および最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層により形成される。OLEDの正確な構造を、表2に示す。OLEDの製造に必要とされる材料を、表3に示す。
【0140】
すべての材料は、真空室において、熱気相堆積により適用される。ここで、発光層は、常に、マトリックス材料(ホスト材料)と、発光TADF化合物、即ちS
1とT
1との間に小さいエネルギー差を示す材料からなる。これは共蒸発により一定の体積割合でマトリックス材料と予備混合される。ここで、IC1:D1(95%:5%)等の表現は、材料IC1が95体積%の割合で層中に存在し、D1が5体積%の割合で層中に在在することを意味する。同じように、電子輸送層もまた、二種の材料の混合物からなる。
【0141】
OLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、ランベルト発光特性を仮定して、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としての電流効率(cd/Aで測定)、パワー効率(Im/Wで測定)、外部量子効率(EQE、パーセントで測定)、ならびに寿命が測定される。エレクトロルミネセンススペクトルは、輝度1000cd/m
2で測定され、CIE1931xおよびy色座標はそこから計算される。表2中の用語「U1000」は、1000cd/m
2での輝度に必要とされる電圧を示す。CE1000とPE1000は、1000cd/m
2で実現される電流とパワー効率とをそれぞれ示している。最後に、EQE1000は、駆動輝度1000cd/m
2における外部量子効率を示す。
【0142】
ロールオフは、5000cd/m
2でのEQEを、500cd/m
2でのEQEで除算したものと定義され、即ち、高い値は、高輝度での効率における小さい低下に対応し、これは好都合である。
【0143】
寿命LTは、一定の電流で動作する輝度が、初期輝度から、ある比率L1に落ちるまでの時間として定義される。表2中のj0=10mA/cm
2、L1=80%という表現は、輝度が、10mA/cm
2での動作における時間LT後に、その初期輝度の80%に低下することを意味する。
【0144】
発光層で使用する発光ドーパントは、S
1とT
1との間のエネルギー離隔が0.09eVを有する化合物D1、またはS
1とT
1との間の差が0.06eVである化合物D2である。
【0145】
種々のOLEDのデータが表3に要約されている。例V1−V6は先行技術による比較例であり、例E1−E7は本発明によるOLEDのデータを示している。
【0146】
表から分かるように、本発明による電子輸送層で、電圧と効率に関する著しい改善が得られ、パワー効率の著しい改善を生じる。さらに、良好な寿命および、多くのケースでは、ロールオフ挙動における追加的な改善が得られる。これらの利点は、1つのみの層がEMLとカソードとの間に配置される場合(例V1、V2、E7−E10)だけでなく、複数の層がEMLとカソードとの間に配置され、すべての層がこのような低いLUMOを有する場合(例V3−V11、E1−E6、E11−E16)にも、適用される。
【表1】
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表4】