特許第6553024号(P6553024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553024インラインのイオン反応デバイスセルおよび動作方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553024
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】インラインのイオン反応デバイスセルおよび動作方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/42 20060101AFI20190722BHJP
   H01J 49/06 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H01J49/42
   H01J49/06
【請求項の数】18
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-516256(P2016-516256)
(86)(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公表番号】特表2016-520979(P2016-520979A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】IB2014000893
(87)【国際公開番号】WO2014191821
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年5月26日
(31)【優先権主張番号】61/828,757
(32)【優先日】2013年5月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】馬場 崇
【審査官】 小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−033322(JP,A)
【文献】 特開2006−234782(JP,A)
【文献】 特開2012−138270(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/044370(WO,A1)
【文献】 特表2011−509513(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0026360(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J40/00−49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の経路であって、前記第1の経路は、第1の軸端と、第1の中心軸に沿って前記第1の軸端から距離を置いて配置された第2の軸端とを含む、第1の経路と、
第2の経路であって、前記第2の経路は、第1の軸端と、第2の中心軸に沿って前記第2の経路の前記第1の軸端から距離を置いて配置された第2の軸端とを含み、
前記第1の中心軸および前記第2の中心軸は、実質的に互いに直交して、交点を有する、第2の経路と、
前記第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、前記第1の経路の前記第1の軸端と前記交点との間に配置された第1組の4重極電極であって、前記第1組の4重極電極は、前記第1の中心軸の第1の部分に沿ってイオンを案内する、第1組の4重極電極と、
前記第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、前記第1の経路の前記第2の軸端と前記交点との間に配置された第2組の4重極電極であって、前記第2組の4重極電極は、前記第1の中心軸の第2の部分に沿ってイオンを案内し、
前記第1組の4重極電極は、前記第1組の4重極電極と前記第2組の4重極電極との間に間隙を形成するように前記第2組の4重極電極から離される、第2組の4重極電極と、
RF場を生成するように前記第1組の4重極電極および前記第2組の4重極電極にRF電圧を提供するための電圧源と、
前記RF電圧を制御するためのコントローラと、
前記第1の経路の前記第1の軸端または前記第2の軸端のいずれかに配置または近接され、前記第1の中心軸に沿って、前記第1の経路の前記第1の軸端または前記第2の軸端のうちのもう一方に向けてイオンを導入するためのイオン源と、
前記第2の経路の前記第1の軸端または前記第2の軸端のいずれかに配置または近接され、前記第2の中心軸に沿って荷電種を導入するための荷電種源であって、前記荷電種は、前記間隙を通して前記交点に向かって動く、荷電種源と、
前記第2の中心軸に平行に沿った磁場を生成する磁場発生器と、
を備え、
前記コントローラは、前記第1組の4重極電極内の各電極が、前記第2組の4重極電極内の電極と対を成して電極対を形成するよう、前記第1組の4重極電極および前記第2組の4重極電極に電圧を送達するように構成され、各電極対内の各電極は、反対の極性を有し、前記電極対内のもう一方の電極と前記交点を横切って正反対にあり、前記交点と前記第2の経路の前記第1の軸端との間で前記第1組の4重極電極および前記第2組の4重極電極によって生成されるRF場は、前記交点と前記第2の経路の前記第2の軸端との間で生成されるRF場に対して逆相であり、
前記イオンは、正に荷電され、前記荷電種は、電子である、イオンの反応装置。
【請求項2】
前記荷電種源は、フィラメントまたはYカソードであり、随意に、前記フィラメントは、タングステンまたはトリウム処理タングステンフィラメントである、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の経路は、前記イオンが導入される前記第1の軸端または前記第2の軸端とは反対側の軸端に配置または近接されるゲートを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の経路は、前記第1の軸端および前記第2の軸端の両方に配置または近接されるゲートを含み、前記ゲートの1つは、前記イオンの導入を制御するためのものであり、前記ゲートのもう一方が、前記イオンまたは前記イオンの反応生成物の除去を制御するためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、前記第2の経路の前記第1の軸端および前記第2の軸端の両方にあるかまたは近接されるゲート電極をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の経路は、前記荷電種を集束させるため、前記第1の軸端または前記第2の軸端に配置または近接されるレンズを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の経路は、前記荷電種を導入するための前記第1の軸端または前記第2の軸端に配置または近接されるレーザ源を含み、前記レーザ源は、前記イオンまたは前記荷電種にエネルギーを提供する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記レーザ源は、紫外線または赤外線光を提供する、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記第2の経路の前記第1の軸端および前記第2の軸端の両方は、荷電種源を含み前記荷電種源のうちの1つのみが、1度に動作可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記イオンは、前記荷電種と相互に作用し、随意に、相互作用は、電子捕獲解離、電子移動解離、または陽子移動解離を引き起こす、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記生成されるRF場は、約400kHz〜1.2MHzの周波数にある、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記周波数は、約800kHzである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
電子捕獲解離反応を実行するための方法であって、
第1の経路を提供することであって、前記第1の経路は、第1の軸端と、第1の中心軸に沿って前記第1の経路の前記第1の軸端から距離を置いて配置された第2の軸端とを含む、ことと、
第2の経路を提供することであって、前記第2の経路は、第1の軸端と、第2の中心軸に沿って前記第2の経路の前記第1の軸端から距離を置いて配置された第2の軸端とを含む、ことと、
前記第1の中心軸および前記第2の中心軸が互いに実質的に直交して、交点を有するように、前記第1の中心軸および前記第2の中心軸を配置することと、
前記第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、前記第1の経路の前記第1の軸端と前記交点との間に配置された第1組の4重極電極を提供することであって、前記第1組の4重極電極は、前記第1の中心軸の第1の部分に沿ってイオンを案内する、ことと、
前記第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、前記第1の経路の前記第2の軸端と前記交点との間に配置された第2組の4重極電極を提供することであって、前記第2組の4重極電極は、前記第1の中心軸の第2の部分に沿ってイオンを案内し、
前記第1組の4重極電極は、前記第1組の4重極電極と前記第2組の4重極電極との間に間隙を形成するように前記第2組の4重極電極から離される、ことと、
前記第2の中心軸に平行な磁場を提供することと、
前記第1組の4重極電極および前記第2組の4重極電極にRF電圧を提供することと、
前記第1組の4重極電極および前記第2組の4重極電極によって生成されるRF場を制御するように前記RF電圧を制御するためのコントローラを提供することと、
前記第1の中心軸に沿った前記第1の経路の前記第1の軸端または前記第2の軸端のいずれかに、正に荷電された複数のイオンを導入することと、
前記第2の中心軸に沿った前記第2の経路の前記第1の軸端または前記第2の軸端に電子を導入することであって、前記電子は、前記間隙を通って前記交点に向かって動く、ことと、
前記コントローラによって、前記第1組の4重極電極内の各電極が、前記第2組の4重極電極内の電極と対を成して電極対を形成するよう、前記第1組の4重極電極および前記第2組の4重極電極に電圧を送達することであって、各電極対内の各電極は、反対の極性を有し、前記電極対内のもう一方の電極と前記交点を横切って正反対にあり、前記交点と前記第2の経路の前記第1の軸端との間で前記第1組の4重極電極および前記第2組の4重極電極によって生成されるRF場は、前記交点と前記第2の経路の前記第2の軸端との間で生成されるRF場に対して逆相である、ことと
を含む、方法。
【請求項14】
前記第1の経路内で前記軸端とは反対側の軸端にあるかまたは近接されるゲートを提供することをさらに含み、前記正に荷電されたイオンが、導入され、前記ゲートは、開および閉位置の間を切り替え可能であり、開位置にあるときには、前記イオンまたは前記イオンの反応生成物は通過でき、閉位置にあるときには、前記イオンまたは前記イオンの反応生成物は通過できない、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ゲートは、連続的に開である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ゲートが開のときと前記ゲートが閉のときとの時間の長さを制御することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記電子は、フィラメントまたはYカソードを介して導入され、随意に、前記フィラメントは、タングステンまたはトリウム処理タングステンフィラメントである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
正荷電種を集束させるため、前記第2の経路の前記第1の軸端または前記第2の軸端のいずれかに配置または近接されるレンズを提供することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2013年5月30日に出願された、米国仮特許出願第61/828,757号の利益を主張するものであり、その内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本教示の内容は、イオン反応デバイスおよび動作の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン反応は、典型的には、正または負のいずれかに荷電したイオンと、正または負に荷電した別のイオンまたは電子であり得る別の荷電種との反応を含む。
【0004】
電子誘起解離では、電子がイオンによって捕捉され、その結果、イオンの断片化が起こり得る。電子誘起解離は、質量分析(MS)で生体分子を解離させる技術として使用されるが、他の用途にも利用され得る。これらの機能は、液体クロマトグラフ質量分析/質量分析での定期的なプロテオミクスから、トップダウン分析(無消化)、デノボシーケンシング(異常なアミノ酸配列の発見)、翻訳後修飾の研究(グリコシル化、リン酸化等)、タンパク質―タンパク質相互作用(タンパク質の機能的研究)に至り、さらには小分子の同定をも含む可能な用途の広範囲にわたる。
【0005】
運動エネルギーが0〜3eVの電子を用いた電子捕獲解離(ECD)の最初の報告の後、試薬アニオンを用いた電子移動解離(ETD)、運動エネルギーが5〜10eVの電子を用いたホットECD、3eVを上回る運動エネルギーの電子を用いた電子イオン化解離(EID)活性イオンECD(AI−ECD)、運動エネルギーが3eVを上回る電子を用いた電子脱離解離(EDD)、試薬カチオンを用いたネガティブETD、および電子を用いたネガティブECD等を含む他の電子誘起技法が報告されている。ECD、ETD、およびホットECDは、正に荷電された前駆体イオンのために開発され、一方、他は、負電荷を持つ前駆体イオンのために開発されてきた。EIDは、単一荷電前駆体を含む両極性を解離することができる。これらの技法は、ペプチド、タンパク質、グリカン、および後翻訳的に修飾されたペプチド/タンパク質等の生体分子種に非常に有用である。ECDはまた、タンパク質/ペプチドおよびそれらのデノボシーケンシングのトップダウン分析をも可能にする。陽子移動反応(PTR)は、イオンの電荷状態を低減するために利用され得、その場合、陽子は1つの荷電種から別の荷電種に転送される。
【0006】
これらの電子誘起された解離は、従来の衝突誘起または活性化解離(CIDまたはCAD)と補完的であると考えられ、高度なMSデバイスに組み込まれている。ETDは、特にこれらのデバイスで利用される。
【0007】
ECDでは、低エネルギー(通常は<1eV)の電子が正イオンによって捕捉される。FT−ICRが、自由電子の加熱を回避するイオン閉じ込めのために静的な電磁場を利用したため、歴史的には、ECDは、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT−ICR)質量分析で実行された。このようなデバイスは、比較的長い相互作用時間を必要とし、作るのに高価な大型の器具を必要とした。高周波数(RF)イオントラップを必要とするより小さな用途でECDを使用しようとする試みは、トラップRF場による電子の加速を引き起こすことが見出されている。これを克服するため、例えば、負に荷電された試薬イオンの電子源としての使用および磁場の付いた線形RFイオントラップ内で実施されるECDの使用等のETDおよび他の電子誘起技法が用いられてきた。
【0008】
以降、本教示での用語「ECD」の使用は、電子が関連する解離技法の全ての形態に及び、運動エネルギーが0〜3eVの電子によるECDの使用のみに限定されないと理解されるべきである。本教示での「ECD」の使用は、したがって、代表的なものであり、ホットECD、EID、EDD、およびネガティブECDを含む、電子が関連する解離現象の全ての形態を含むものと理解されるべきである。
【0009】
捕獲デバイス内でイオン化を行うECDおよびETDの従来の使用は、前駆体イオンと、ECDでは電子、ETDではアニオンである解離のための試薬イオンとの反応に比較的長い時間を必要とする。ETDで用いられるとき、十分な解離を得るには、アニオンとカチオンとは同時にトラップされる必要がある。トラップ動作は、ECDの場合で、線形トラップが反応デバイスとして使用され、電子注入およびイオン注入/抽出が同じポート(または同じ終端レンズ電極)を分かち合うときに必要とされる。複数のステップを必要とする、トラップ動作は、連続フロースルー様式で動作する、従来のCIDに基づく4重極飛行時間質量分析計(QTOF)との適合性に劣る。
【0010】
線形イオントラップ内のECDの実施中での電子ビームおよびイオンの平行注入は、ECDの感度を制限することが見出されている。(参照により本明細書に組み込まれる、Anal.Chem.,2004,76(15),pp4263〜4266)電子およびイオンの非平行注入もまた報告されている(参照により本明細書に組み込まれる、Anal.Chem.,2007,79(22),pp8755〜8761)が、電子ビームがRFイオントラップのレンズ電極と相互作用して電極上に絶縁面を形成し、これが電子の荷電を引き起こして、焦点(レンズ)視野の制御不能な変化の原因となるため、イオン注入および排出での電子ビーム障害という問題に悩まされる。これは、不安定で予測不可能な表面電位変化を引き起こし、イオンの注入および排出が制御不能になる。
【0011】
横型電子注入が開示されている(両文書とも参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,995,366号、第WO11 028 450号)が、これらの構成は、所与のイオントラップRF場による電子線散乱の問題に悩まされる。多重イオン源経路を質量分析計の出口にT字形形態で結合した多重イオン経路デバイスもまた開示されているが、これらは複雑で、構築するのが高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,995,366号明細書
【特許文献2】国際公開2011/028450号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
いくつかの広範な教示によれば、イオン反応のための交差イオン経路型デバイスの方法および装置が開示される。
【0014】
様々な実施形態では、イオントラップおよび電子注入のための交差イオン経路型デバイスが開示される。この構成では、イオン経路と電子ビーム注入とが別にされている。
【0015】
様々な実施形態では、1組の非位相反転型および位相反転型の磁場付き線形RF場によって電子ビームが集束され得る。移動電子は、線形高周波4重極(RFQ)と磁場との結合領域によってデフォーカスされ得る。RF場の位相は、その後、デフォーカスされた電子が、再度集束されるように移動中に反転され得る。
【0016】
様々な実施形態では、電子ビーム注入による予測不可能なイオン運動不全を回避するデバイスが開示される。いくつかの実施形態では、電子ビームは集束され、これにより反応効率を高め、フィラメント電流を減少させることによってフィラメントの寿命を延長することができる。いくつかの実施形態では、TOF測定のための最適なデューティサイクルが実現されるように、連続的ECDまたはフロースルーECDが、行われ得る。
【0017】
様々な実施形態では、横型電子注入法を用いて電子ビーム障害を最小化するデバイスが開示される。いくつかの実施形態では、ECD反応を可能にするように磁場を有する十字型イオンガイド構造を利用するデバイスが開示される。
【0018】
様々な実施形態では、インライン構成を可能にするデバイスが提供される。いくつかの実施形態では、イオン注入および排出への電子ビーム障害を回避するデバイスが開示される。
【0019】
様々な実施形態では、従来のCIDベースのプロセスとの適合を可能にする連続的/フロースルー動作でECDが機能できるようにするデバイスが提供される。いくつかの実施形態では、ETDや陽子移動反応(PTR)等、他のイオン動作技法が同様に動作できるようにするデバイスが開示される。
【0020】
様々な実施形態では、高感度と分析が容易な単純解離スペクトルとを提供し得る、ECDによる前駆体イオンおよび生成物イオンの荷電制御を可能にするPTR用途にも利用することができるデバイスが提供される。
【0021】
様々な実施形態では、荷電種は、デバイス内に導入され得る。いくつかの実施形態では、荷電種は、フィラメント(タングステン、トリウム処理タングステン等)またはYカソードを含む電子エミッタ等の電子源によって生成された電子である。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1の軸端および第1の中心軸に沿って第1の経路軸端から距離をおいて配置された第2の軸端を含む第1の経路と、第1の軸端および第2の中心軸に沿って第2の経路の第1の軸端から距離をおいて配置された第2の軸端を含む第2の経路とを備える、イオンの反応装置が開示される。第1および第2の中心軸は実質的に互いに直交し、交点で交差する。本反応装置はまた、第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、第1の経路の第1の軸端と交点との間に配置された第1組の4重極電極を含み得る。第1組の電極は、第1の中心軸の第1の部分に沿ってイオンを案内する。本装置は、第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、第1の経路の第2の軸端と交点との間に配置された第2組の4重極電極をも含むことができる。第2組の電極は、第1の中心軸の第2の部分に沿ってイオンを案内する。第1組および第2組の電極は、第1の中心軸の直角方向に間隙を形成するように、互いに分離される。反応装置はまた、第1および第2組の電極にRF電圧を提供しRF場を生成するための電圧源と、RF電圧を制御するためのコントローラと、イオン源と、荷電種源とを含み得る。イオン源は、第1の経路の第1または第2の軸端のいずれかまたはその近傍に配置され、第1の経路の第1または第2の軸端のもう一方に向け、第1の中心軸に沿ってイオンを導入するためのものである。荷電種源は、第2の中心軸に沿って荷電種を導入するためのもので、第2の経路の第1もしくは第2の軸端のいずれかまたはその近傍に配置され、荷電種は間隙を通って交点に向かって移動する。
【0023】
いくつかの実施形態では、電子捕獲解離反応を実行するための方法が記載され、この方法は、第1の軸端と第1の中心軸に沿って第1の経路軸端から距離を置いて配置された第2の軸端とを含む第1の経路を提供するステップと、第1の軸端と第2の中心軸に沿って第2の経路軸端から距離を置いて配置される第2の軸端とを含む第2の経路を提供するステップと、第1および第2の中心軸が実質的に互いに直交し交点を有するように、第1および第2の中心軸を配置するステップと、第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、第1の経路の第1の軸端と交点との間に配置された第1組の4重極電極であって、第1の中心軸の第1の部分に沿ってイオンを案内するための第1組の4重極電極を提供するステップと、第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、第1の経路の第2の軸端と交点との間に配置された第2組の4重極電極であって、第1の中心軸の第2の部分に沿ってイオンを案内するための第2組の4重極電極を提供するステップと、第1組の電極を、第1の中心軸の直角方向に間隙を形成するように第2組の電極から離すステップと、第2の中心軸に平行な磁場を提供するステップと、第1組および第2組の電極にRF電圧を提供するステップと、第1組および第2組の電極によって生成されるRF場を制御するようにRF電圧を制御するためのコントローラを提供するステップと、第1の中心軸に沿って第1の経路の第1または第2の軸端のいずれかに正に荷電された複数のイオンを導入するステップと、第2の中心軸に沿って、第2の経路の第1または第2の軸端に電子を導入するステップであって、電子は、間隙を通って交点に向かって動くステップとを含むことができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、装置は、第2の中心軸に沿って平行な磁場を生成する磁場発生器を含んでもよい。いくつかの特定の実施形態では、イオンは正に荷電され、荷電種は電子である。電子は、好ましくは、タングステンもしくはトリウム処理タングステンのフィラメントから生成されるか、Yカソードから生成され得る。他の実施形態では、荷電種は、試薬アニオンである。
【0025】
異なる実施形態は、第1の経路内で、イオンが導入される第1または第2の端部とは反対側の端部に配置または近接されたゲート電極の存在を含む。さらに異なる実施形態では、ゲート電極は、第1の経路の両端に配置または近接される。ゲート電極の1つは、装置内へのイオンの進入を制御するためのもので、もう一方のゲート電極は、イオンまたはイオンの反応生成物の除去を制御するためのものである。ゲート電極はまた、第2の経路の第1または第2の端部の両方にも配置または近接され得る。様々な実施形態では、装置は、ゲート電極を制御するためのコントローラをさらに備えることができる。
【0026】
装置および方法の実施形態はまた、第2の経路内の第1または第2の端部に配置または近接された、荷電種の集束のためのレンズの使用または提供を含み得る。
【0027】
選択的実施形態は、第2の経路内に位置し、荷電種が導入された端部とは反対側の端部に配置または近接されたレーザ源を含み得る。いくつかの実施形態では、レーザ源は、紫外線または赤外線のいずれかを提供する。
【0028】
いくつかの実施形態では、第2の経路の両端は、荷電種源を含み、荷電種は電子であり、1度に1つの荷電種源のみが操作可能である。
【0029】
いくつかの実施形態では、イオンは、荷電種源と相互作用し、相互作用は、電子捕獲解離、電子移動解離、または陽子移動解離を潜在的に引き起こし得る。
【0030】
選択的実施形態では、生成されたRF場は、周波数が約400kHz〜1.2MHzで、より具体的には、周波数が約800kHzである。
【0031】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の経路内で、正に荷電されたイオンが導入される端部とは反対側にある端部またはそれに近接して、ゲート電極を提供するステップを含む。いくつかの実施形態では、ゲート電極は、開位置と閉位置との間を切り替え可能であり、開位置にあるとき、イオンまたはイオン反応生成物は通過することができ、閉位置にあるとき、イオンまたはイオン反応生成は通過することができない。このような方法はまた、ゲートが開のときとゲートが閉のときとの時間を制御するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、ゲートは、連続的に開となるように構成される。
【0032】
いくつかの実施形態では、本方法は、電子がフィラメントを介して導入される場合、好ましくは、タングステンもしくはトリウム処理タングステンフィラメントのいずれかを含み、またはYカソードで導入される。
【0033】
いくつかの実施形態では、装置は、該第1の複数の電極内の各電極が、第2の複数の電極の電極と対を成して電極対を形成するよう該電極に電圧を送達するように構成されたコントローラを含み得、各電極対内の各電極が反対の極性を有し、電極対のもう一方の電極と交点を横切って正反対にあり、それにより、該交点と該第2の経路の該第1の軸端との間で、該第1および該第2の複数の電極によって生成されるRF場は、該交点と該第2の経路の該第2の軸端との間で生成されるRF場に対して逆相となる。
【0034】
いくつかの実施形態では、電子は、該交点に近づくにつれてデフォーカス効果を、また該電子がこの該交点をいったん通過すると集束効果を経験する。
【0035】
様々な実施形態では、装置はまた、第2の経路の第1および第2の軸端の両方またはその近傍に配置されたゲート電極を含む。
【0036】
様々な実施形態では、第2の経路が、荷電種を集束させるため、第1または第2の軸端に配置または近接されたレンズを含む。
【0037】
様々な実施形態では、第2の経路は、該荷電種を導入するための該端部とは反対側の軸端に配置または近接される、レーザ源を含むまたは内部に配置し、該レーザ源は、該イオンまたは該荷電種にエネルギーを提供する。
【0038】
様々な実施形態では、レーザ源は、紫外線または赤外線を提供する。
【0039】
様々な実施形態では、第2の経路の両方の軸端は、荷電種源を含み、これらの荷電種源の1つのみが1度に操作可能である。
【0040】
様々な実施形態では、イオンは、荷電種と相互作用する。
【0041】
様々な実施形態では、相互作用は、電子捕獲解離、電子移動解離、または陽子移動解離を引き起こす。
【0042】
様々な実施形態では、イオン反応を実行するための方法が、開示され、第1の軸端と第1の中心軸に沿って第1の経路の軸端から距離を置いて配置された第2の軸端とを含む第1の経路を提供するステップと、第1の軸端と第2の中心軸に沿って第2の経路軸端から距離を置いて配置された第2の軸端とを含む第2の経路を提供するステップであって、該第1および第2の中心軸が互いに実質的に直交し交点を有する、ステップと、該第1の中心軸の周りに多重極配向に配列され、該第1の軸端と該交点との間に配置された第1の複数の電極を提供するステップであって、該電極は、該第1の中心軸の第1の部分に沿ってイオンを案内する、ステップと、第1の中心軸の周りに多重極配向に配列され、該第2の軸端と該交点との間に配置された第2の複数の電極を提供するステップであって、該電極は、該第1の中心軸の第2の部分に沿ってイオンを案内し、第1の複数の電極は、該第1の中心軸の直角方向に間隙を形成するように第2の複数の電極から離される、ステップと、該第2の中心軸に平行な磁場を提供するステップと、該第1および第2の複数の電極にRF電圧を提供するステップと、該第1および第2の複数の電極によって生成されるRF場を制御するようにRF電圧を制御するためのコントローラを提供するステップと、第1の中心軸に沿った第1の経路の第1または第2の軸端のいずれかに複数のイオンを導入するステップと、第2の中心軸に沿った第2の経路の第1または第2の軸端に荷電種を導入するステップであって、荷電種は、間隙を通って該交点に向かって動くステップとを含む。
【0043】
様々な実施形態では、本方法は、第1の経路内でイオンが導入される軸端とは反対側の軸端またはその近傍にゲートを提供するステップさらに含み、該ゲートは開および閉位置の間を切り替え可能であり、開位置にあるときには、該イオンまたは該イオン反応の生成物は通過でき、閉位置にあるときにはイオンまたはイオン反応の生成物は通過できない。様々な実施形態では、ゲートは、連続的に開である。
【0044】
様々な実施形態では、本方法は、ゲートが開のときおよびゲートが閉のときの時間の長さを制御するステップをさらに含む。様々な実施形態では、開位置および閉位置の時間の長さ間の比は、8ミリ秒:2ミリ秒である。他の実施形態では、開および閉位置の時間の長さ間の比は、3ミリ秒:7ミリ秒である。
【0045】
様々な実施形態では、イオンは正に荷電され得る一方、荷電種は電子であり得る。
【0046】
様々な実施形態では、1つまたは1つを上回る多重極は、4重極である。
【0047】
様々な実施形態では、本方法は、荷電種を集束させるために、該第2の経路の該第1または第2の軸端のいずれかまたはその近傍に配置されたレンズを提供するステップをさらに含む。
【0048】
様々な実施形態では、本方法は、荷電種が注入される端部とは反対側の軸端またはその近傍に、該イオンまたは荷電種のいずれかにエネルギーを提供するためのレーザ源を提供するステップをさらに含む。様々な実施形態では、レーザ源は、紫外線または赤外線である。
【0049】
様々な実施形態では、イオンは、荷電種と相互作用し、電子捕獲解離、電子移動解離、または陽子移動解離を引き起こし得る。
【0050】
様々な実施形態では、荷電種は、アニオンである。
【0051】
様々な実施形態では、イオンは、アニオンである。
【0052】
様々な実施形態では、例えば、レーザ光線を用いて光子を注入するようにも利用できるデバイスが、開示され、UV光解離および赤外線多光子解離(IRMPD)等の補完的な解離技術を提供し得る。
【0053】
様々な実施形態では、電子ビームは、連続モードで動作しているときに生成物イオンがECD装置から排出されるとき、オフにされ得る。
【0054】
様々な実施形態では、装置は、半または準連続モードで動作できる。
【0055】
様々な実施形態では、多重極に印加されるRF周波数は、400kHz〜1.2MHzの範囲内にあり、好ましくは、周波数は、800kHzである。
【0056】
様々な実施形態では、イオンの反応装置が、開示され、第1の軸端と第1の中心軸に沿って第1の経路軸端から距離を置いて配置された第2の軸端とを含む第1の経路と、第1の軸端と第2の中心軸に沿って第2の経路の第1の軸端から距離を置いて配置された第2の軸端とを含む第2の経路であって、第1および第2の中心軸は、実質的に互いに直交して、交点を有する、第2の経路と、第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、該第1の経路の該第1の軸端と交点との間に配置された第1組の4重極電極であって、該第1の中心軸の第1の部分に沿ってイオンを案内するための該第1組の4重極電極と、第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、該第1の経路の第2の軸端と該交点との間に配置された第2組の4重極電極であって、該第2組の4重極電極は、該第1の中心軸の第2の部分に沿ってイオンを案内し、第1組の電極は、該第1の中心軸の直角方向に間隙を形成するように第2組の電極から離されている、第2組の4重極電極と、該第2の中心軸に平行に沿った磁場を生成する磁場発生器と、RF場を生成するように該第1組および第2組の電極にRF電圧を提供するための電圧源と、RF電圧を制御するためのコントローラと、第1の経路の第1または第2のいずれかの軸端に配置または近接され、第1の中心軸に沿って、第1の経路の第1または第2のもう一方の軸端に向けてイオンを導入するためのイオン源と、第2の経路の第1または第2のいずれかの軸端に配置または近接され、第2の中心軸に沿って荷電種を導入するための荷電種源であって、該荷電種は、間隙を通して該交点に向かって動く荷電種源とを含む。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
第1の経路であって、前記第1の経路は、第1の軸端と、第1の中心軸に沿って前記第1の経路の軸端から距離を置いて配置された第2の軸端とを含む、第1の経路と、
第2の経路であって、前記第2の経路は、第1の軸端と、第2の中心軸に沿って前記第2の経路の前記第1の軸端から距離を置いて配置された第2の軸端とを含み、
前記第1および第2の中心軸は、実質的に互いに直交して、交点を有する、第2の経路と、
前記第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、前記第1の経路の前記第1の軸端と前記交点との間に配置された第1組の4重極電極であって、前記第1組の電極は、前記第1の中心軸の第1の部分に沿ってイオンを案内する、第1組の4重極電極と、
前記第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、前記第1の経路の前記第2の軸端と前記交点との間に配置された第2組の4重極電極であって、前記第2組の電極は、前記第1の中心軸の第2の部分に沿ってイオンを案内し、
前記第1組の電極は、前記第1の中心軸の直角方向に間隙を形成するように前記第2組の電極から離される、第2組の4重極電極と、
RF場を生成するように前記第1組および第2組の電極にRF電圧を提供するための電圧源と、
前記RF電圧を制御するためのコントローラと、
前記第1の経路の第1または第2のいずれかの軸端に配置または近接され、前記第1の中心軸に沿って、第1の経路の前記第1または第2の軸端のうちのもう一方に向けてイオンを導入するためのイオン源と、
第2の経路の第1または第2のいずれかの軸端に配置または近接され、第2の中心軸に沿って荷電種を導入するための荷電種源であって、前記荷電種は、前記間隙を通して前記交点に向かって動く荷電種源と、
を備える、イオンの反応装置。
(項目2)
前記コントローラは、前記第1の複数の電極内の各電極が、前記第2の複数の電極の電極と対を成して電極対を形成するよう、前記電極に電圧を送達するように構成され、各電極対内の各電極は、反対の極性を有し、電極対内のもう一方の電極と交点を横切って正反対にあり、前記交点と前記第2の経路の前記第1の軸端との間で前記第1および第2の複数の電極によって生成されるRF場は、前記交点と前記第2の経路の前記第2の軸端との間で生成されるRF場に対して逆相である、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記第2の中心軸に平行に沿った磁場を生成する磁場発生器をさらに備える、項目1に記載の装置。
(項目4)
前記イオンは、正に荷電され、前記荷電種は、電子である、項目3に記載の装置。
(項目5)
前記荷電種源は、フィラメントまたはYカソードであり、随意に、前記フィラメントは、タングステンまたはトリウム処理タングステンフィラメントである、項目4に記載の装置。
(項目6)
前記荷電種は、試薬アニオンである、項目1に記載の装置。
(項目7)
前記第1の経路は、前記イオンが導入される前記第1または第2の軸端とは反対側の軸端に配置または近接されるゲートを含む、項目1に記載の装置。
(項目8)
前記第1の経路は、前記第1および第2の軸端の両方に配置または近接されるゲートを含み、前記ゲートの1つは、前記イオンの導入を制御するためのものであり、前記ゲートのもう一方が、前記イオンまたは前記イオンの反応生成物の除去を制御するためのものである、項目1に記載の装置。
(項目9)
前記装置は、前記第2の経路の第1および第2の軸端の両方またはその近傍にあるゲート電極をさらに含む、項目1に記載の装置。
(項目10)
前記第2の経路は、前記荷電種を集束させるため、前記第1または第2の軸端に配置または近接されたレンズを含む、項目1に記載の装置。
(項目11)
前記第2の経路は、前記荷電種を導入するための前記端部とは反対側の軸端に配置または近接されるレーザ源を含み、前記レーザ源は、前記イオンまたは前記荷電種にエネルギーを提供する、項目1に記載の装置。
(項目12)
前記レーザ源は、紫外線または赤外線を提供する、項目11に記載の装置。
(項目13)
前記第2の経路の前記軸端の両方は、荷電種源を含み、前記荷電種は、電子であり、前記荷電種源のうちの1つのみが、1度に動作可能である、項目1に記載の装置。
(項目14)
前記イオンは、前記荷電種と相互に作用し、随意に、相互作用は、電子捕獲解離、電子移動解離、または陽子移動解離を引き起こす、項目1に記載の装置。
(項目15)
生成されるRF場は、約400kHz〜1.2MHzの周波数にある、項目1に記載の装置。
(項目16)
周波数は、約800kHzである、項目14に記載の装置。
(項目17)
電子捕獲解離反応を実行するための方法であって、
第1の経路を提供するステップであって、前記第1の経路は、第1の軸端と、第1の中心軸に沿って前記第1の経路の軸端から距離を置いて配置された第2の軸端とを含む、ステップと、
第2の経路を提供するステップであって、前記第2の経路は、第1の軸端と、第2の中心軸に沿って前記第2の経路の軸端から距離を置いて配置された第2の軸端とを含む、ステップと、
前記第1および第2の中心軸が互いに実質的に直交して、交点を有するように、前記第1および第2の中心軸を配置するステップと、
前記第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、前記第1の経路の前記第1の軸端と前記交点との間に配置された第1組の4重極電極を提供するステップであって、前記第1組の電極は、前記第1の中心軸の第1の部分に沿ってイオンを案内する、ステップと、
前記第1の中心軸の周りに4重極配向に配列され、前記第1の経路の前記第2の軸端と前記交点との間に配置された第2組の4重極電極を提供するステップであって、前記第2組の電極は、前記第1の中心軸の第2の部分に沿ってイオンを案内し、
前記第1組の電極は、前記第1の中心軸の直角方向に間隙を形成するように前記第2組の電極から離される、ステップと、
前記第2の中心軸に平行な磁場を提供するステップと、
前記第1組および第2組の電極にRF電圧を提供するステップと、
前記第1組および第2組の電極によって生成されるRF場を制御するようにRF電圧を制御するためのコントローラを提供するステップと、
前記第1の中心軸に沿った前記第1の経路の第1または第2の軸端のいずれかに、正に荷電された複数のイオンを導入するステップと、
前記第2の中心軸に沿った前記第2の経路の第1または第2の軸端に電子を導入するステップであって、前記電子は、前記間隙を通って前記交点に向かって動くステップと、
を含む、方法。
(項目18)
前記第1の経路内で前記軸端とは反対側の軸端またはその近傍にゲートを提供するステップをさらに含み、前記正に荷電されたイオンが、導入され、前記ゲートは、開および閉位置の間を切り替え可能であり、開位置にあるときには、前記イオンまたは前記イオン反応の生成物は通過でき、閉位置にあるときには、前記イオンまたは前記イオン反応の生成物は通過できない、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記ゲートは、連続的に開である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記ゲートが開のときと前記ゲートが閉のときとの時間の長さを制御するステップをさらに含む、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記電子は、フィラメントまたはYカソードを介して導入され、随意に、フィラメントは、タングステンまたはトリウム処理タングステンフィラメントである、項目17に記載の方法。
(項目22)
前記正荷電種を集束させるため、前記第2の経路の前記第1または第2の軸端のいずれかまたはその近傍に配置されたレンズを提供するステップをさらに含む、項目17に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、本発明の実施形態の実施の模式図を描示する。
図2図2は、本発明の実施形態による断面図を描示する。
図3A図3Aは、図2のI−I線に沿った断面図を描示する。
図3B図3Bは、図2のII−II線に沿った断面図を描示する。
図4図4は、本発明の実施形態による電子注入の実施例の略式側面図を描示する。
図5図5は、本発明のある実施形態による電子ビームの集束およびデフォーカス効果の略式側面図を描示する。
図6図6は、本発明のある実施形態による装置へのイオンの注入およびトラップを描示する。
図7図7は、本発明の実施形態による装置からの、イオンまたはイオン反応生成物の排出を描示する。
図8図8は、本発明の実施形態の連続モード動作を描示し、ここでは、イオンおよび電子は、連続的に注入され、イオン−電子相互作用の結果としての生成物イオンの流れが連続的に排出される。
図9図9は、本発明の実施形態の断面図を描示し、磁場の配向を図示する。
図10図10は、本発明の実施形態の断面図を描示する。
図11図11は、本発明の実施形態の別の断面図を描示する。
図12図12は、図11に示される実施形態の背面図を描示し、磁石の1つの可能な位置を示す。
図13図13は、本発明の実施形態の断面図を描示し、本発明のある実施形態での1連の磁石の位置を示す。
図14図14は、本発明の別の実施形態の断面図を描示する。
図15図15は、本発明の実施形態によりRF場を生成するのに使用され得る回路の模式図を描示する。
図16図16は、本発明の実施形態による装置の連続モード動作で得られた、2重陽子化された物質Pの質量スペクトルを描示する。
図17A図17AおよびBは、本発明の実施形態による装置の半または準連続モード動作で得られた3重陽子化ニューロテンシンの質量スペクトルを描示する。
図17B図17AおよびBは、本発明の実施形態による装置の半または準連続モード動作で得られた3重陽子化ニューロテンシンの質量スペクトルを描示する。
図18図18は、間隙を表す本発明の実施形態の図を描示する。
図19図19は、本発明の実施形態の4つの電極の図を描示する。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1を参照すると、本発明の実施形態の概略的な模式図が描示されている。イオン反応セル1は、入力として、イオン2および荷電種3である1連の反応物を有する。随意に、光子または光4の形態のエネルギーが追加される。光4は、レーザ源から得られ得、好ましくは、紫外線または赤外線スペクトルのいずれかである。イオン2は、正(カチオン)または負(アニオン)に荷電された任意のイオンであり得る。荷電種3は、電子または正もしくは負のいずれかに荷電されたイオンであり得る。荷電種が電子である場合、電子源は、タングステンもしくはトリウム処理タングステンフィラメント等のフィラメントまたはYカソード等の他の電子源であり得る。本反応デバイス内は、ヘリウム(He)および窒素(N)等の冷却ガスが満たされている。冷却ガスの典型的な圧力は、10−2〜10−4Torrであり得る。
【0059】
フィラメント電子源は、安価であるため一般的に使用されるが、酸素残留ガスに対して堅牢ではない。一方、Yカソードは、高価な電子源であるが、酸素に対してより堅牢であり、ラジカル−酸素反応を用いたデノボシーケンシングに有用である。動作時には、電子源を加熱するために1〜3Aの電流が典型的に適用され、1〜10Wの熱電力を生成する。電子源のヒートシンクシステムは、利用される磁石があるなら、その温度を、永久磁石の磁化が失われるキュリー温度よりも低く維持するように設置され得る。磁石を冷却する他の公知の方法も利用され得る。
【0060】
イオン反応セル1の内部では、イオン2および荷電種3、さらには随意に追加される光子4が全て相互作用する。利用される反応物の性質に応じて、相互作用は、数々の現象を引き起こすことができ、その結果、生成物イオン5が形成され、これがその後、潜在的には他の未反応のイオン2および/または状況によっておそらくは荷電種3とともに、イオン反応セル1から抽出または排出される。
【0061】
イオン2がカチオンで荷電種3が電子のとき、カチオンは電子を捕捉して電子捕獲解離を起こし、イオン2と荷電種3との間の相互作用が、元のイオン2の断片である生成物イオン5の形成を結果としてもたらす。イオン2がカチオンで荷電種3がアニオンのとき、イオン2と荷電種3との間の相互作用は、電子が荷電種3からイオン2に移動し、これがイオン2の断片化を引き起こす電子移動解離であり得る。イオン反応セルから排出された種の流れは、イオン2、または生成物イオン5、またはある場合には荷電種3の1つまたはそれを上回る混合物から成り得る。
【0062】
加えて、電子が関連する断片化として、ホットECD、電子イオン化解離(EID)、活性イオンECD(AI−ECD)、電子脱離解離(EDD)、ネガティブETD、ネガティブECDが実施され得る。ECDについて、イオン2がカチオンのとき、ETDおよびホットECDが実施され得る一方、イオン2がアニオンである場合、EIDが使用され得る。陽子移動反応もまた、荷電種3が適切に選択される場合、実施され得る。
【0063】
ここで図2を参照すると、本発明の実施形態の側面によるイオン反応装置10の側面図が描示されている。切り出し断面として示されているが、外側円筒ハウジング29および内側円筒ハウジング30が、第1の中心軸12と、第1の軸端13と、第2の軸端14とを有する第1の経路11を囲む。この経路は、イオン2がイオン反応装置10内に入るための通路を提供する。第1の経路11の各端部にはゲート電極(15、16)が配置されている。ゲート電極15は、イオン2が装置10に入ることを可能にし、ゲート電極16は、未反応のイオン2または生成物イオン5の装置10からの排出を制御する。ゲート電極は軸端に直接配置される必要はなく、軸端のすぐ外側に近接して配置され得る。理解されるであろうように、デバイスの対称的な性質により、イオンの方向は逆にされ得、周辺のイオン輸送デバイスが適切に構成されている場合、イオン2がゲート電極16を通って入り、ゲート電極15を通って出てもよい。装置10は、内側円筒ハウジング30に取り付けられた第1組の4重極電極17を備え、電極17は、4重極型配列で第1の中心軸12の周りに配列される。本明細書では、4重極が特に具現化されているが、6重極、8重極等を含む任意の多重極配列が利用され得る。図では、4つの4重極電極のうち2つのみが描示されているが、他の2つの電極は、描示されている電極の真裏にある。4重極電極17に描示される2つの電極について、これらの電極は反対の極性を有する。これらの第1組の4重極電極17は、4重極の中点である第1の中心軸12に向けてイオン2を案内できるRF場を生成するようにRF電圧を電極に提供するRF電圧源およびコントローラ(図示せず)に接続される。また内側円筒ハウジング30に取り付けられた第2組の4重極電極18(2つのみが描示され、他の2つは真裏にある)は、第1組の4重極電極17から少し距離を置いて配置されており、この距離が第1組(17)および第2組(18)の電極間に、略円柱形の間隙19を形成する。第1(17)および第2(18)の4重極は、同一の中心軸12を分かち合い、第1組の4重極17のロッドは、第2組の4重極18と直線状に並ぶ。略円柱形の間隙は、間隙が強調されている図18でより容易に見ることができる。円柱形として描示されているが、この間隙の形状は重要ではなく、むしろ、第1組(17)および第2(18)組の4重極の間に間隙があるということが理解されるであろう。例えば、この形状は、4重極が同一の構成を有するとしても、角箱形状として記述され得る。第2組の4重極電極18もまた、第2組の4重極電極18の中点である中心軸12に向けてイオン2および/または生成物イオン5を案内するよう作用できるRF場を生成するように、RF電圧を電極に提供するRF電圧源およびコントローラ(図示せず)に接続される。内側および外側円筒ハウジングは、第1の軸端22と第2の軸端23とを持つ第2の中心軸21を有する第2の経路20を挿入するための切抜を有する。この第2の経路20は、荷電種3を装置10内に移送するための通路を提供する。第1および第2の経路は、実質的に互いに直交して、交点24で交差し、この交点は第1(12)および第2(21)の中心軸に沿う。図3Aおよび3Bは、それぞれ図2のI−I線およびII−II線での断面図であるが、これらに容易に描示されるように、第1組の4重極電極17内の4つの電極は、第2組の電極18の4つの電極の1つとそれぞれ対を成すことができ、例えば、各電極対内の各電極(25a、25b)が反対の極性を有し、それぞれ電極対内のもう一方の電極(25b、25a)と交点を横切って正反対にある。同様の関係は、電極(26a、26b)の電極対についても存在する。同じ関係が、第2組の電極18内の残り2つの電極と対を成す第1組の電極17内の残り2つの電極についても適用される。電極のこの配向は、交点24と第2の経路20の第1の軸端22との間に生成されるRF場が、交点24と第2の経路20の第2の軸端23との間に生成されるRF場に対して逆相となる結果をもたらす。電極のこの構成により、中心軸21上にはRF場が存在しない。第2の経路20の第1の軸端22は、交点24に向かって第2の経路20内に送られる電子を生成するのに用いられる電子フィラメント27を含むまたはそれに近接して有する。第1の軸端22はまた、装置10への電子の進入を制御する好適な電極ゲート28を含むまたはそれに近接して有することができる。永久磁石等の磁場源(図示せず)は、第2の経路20に平行な磁場を実現するように構成される。この磁場は、ECD、ホットECD、EID、EDD、およびネガティブECDが実行され、荷電種が電子である場合に有用である。荷電種が試薬アニオンで、例えば、起こる反応がETD反応であるシナリオを含むとき、磁場源および磁場は必要とされない。間隙の存在は、間隙領域での4重極RF場が弱いセルの側を通るイオンの漏出につながり得る。これは、この漏れを防止するように配置された、典型的には、板状電極であるブロッキング電極の使用によって軽減され得る。ブロッキング電極は、垂直方向に整列され、電極から間隔を置いて配置される。デバイス内部の描示を可能にする目的で、このようなブロッキング電極は添付の図面に描示されないが、例外として、図14にブロッキング電極およびベーン578が示されている。理解されるであろうように、このブロッキング電極は、好適な電圧源に電気的に接続される。
【0064】
4重極に印加されるRF周波数は、およそ400kHz〜1.2MHzの範囲にあり、好ましくは、RF周波数は、およそ800kHzである。
【0065】
ここで図4を参照すると、イオン反応デバイス40の側面図における別の実施形態の描示が示され、ここでは、荷電種3、具体的には電子のみが注入される。イオン反応デバイス40は、第1の中心軸42を有する第1の経路41を含み、経路41は、第1の軸端43と第2の軸端44とを有する。第1の経路41の各端部には、電極ゲート(45、46)が配置され、イオン反応デバイス40からのイオンの進入および排出の制御を可能にする。装置41は、略L字形で、第1の中心軸42周りに配列された第1組の4重極電極47を備える。図では、4つの4重極電極のうち2つのみが描示されており、残りの2つの電極は描示された電極の真裏にある。描示される4重極電極47の2つの電極について、これらの電極は反対の極性を有する。また略L字型の第2組の4重極電極48(2つのみが描示され、他の2つは真裏にある)は、第1組の4重極電極47から少し距離を置いて配置されており、この距離が第1組(47)および第2組(48)の電極間に、略中実円柱形の間隙49を形成する。4重極電極48に描示される2つの電極について、これらの電極は反対の極性を有する。第1組(47)および第2組(48)の4重極電極のそれぞれについて上方に描示された電極は、極性が互いに反対である。当業者によって理解されるであろうように、各組の4重極電極の図示されない2つの電極は、例えば、図3Aおよび3Bに示される構成のように、4重極電極の極性と適合する極性を有するであろう。第2の経路50は、第1の軸端52および第2の軸端53を有する第2の中心軸51を有する。本第2の経路は、荷電種を装置40内に移送するための通路を提供する。電極のこの配向は、(第1の経路41および第2の経路50の)交点と第2の経路50の第1の軸端52との間に生成されるRF場が、(第1の経路41および第2の経路50の)交点と第2の経路50の第2の軸端53との間に生成されるRF場に対して逆相となる結果をもたらす。第2の経路50の第1の軸端52は、第2の経路50内に移送される電子60を生成するのに用いられる電子フィラメント57を含むまたはそれに近接配置する。第1の軸端52はまた、電子60の装置40内への進入を制御する好適な電極ゲート58を含むまたはそれに近接配置することができる。別のゲート電極59が、第2の経路50の第2の軸端53に存在または近接配置される。磁場発生器(図示せず)は、第2の経路に平行な磁場を作るように配置および配向される。磁場の方向は、第1の軸端52から第2の軸端53に向かう、またはその逆のいずれかとすることができる。この磁場は、ECD、ホットECD、EID、EDD、およびネガティブECDが実行され、荷電種が電子である場合に有用である。荷電種が試薬アニオンで、例えば、起こる反応がETD反応であるシナリオを含むとき、磁場源および磁場は必要とされない。グリッド61は、電子フィラメント57の近くにあるまたは近接する電子60を切り替えるゲートとして作用するように配置され得る。RF場は、装置40に進入する際に集束された電子60が、第1の経路41と第2の経路50との交点に接近するにつれてデフォーカスされるようにする。電子60が交点を通過する際、RF場の逆の極性が、電子60を再び集束されるようにする。これが、第1の経路に垂直な電子のより均一な分布を形成し、装置40内におけるイオン―電子相互作用の機会を増大させ、その結果、より良好な感度をもたらし得る。電子ビームは、局所的な引力ポテンシャルを作る。
【0066】
電子デフォーカス効果のより明確な様子は、図5に描示されており、装置70は、第1組の4重極電極71および第2組の4重極電極72を有する装置40と同様に、構成される。+1Vの電位を有する電子レンズが、電子ビームの集束を補助するのに使用される電子ビーム経路の入口および出口に配置される。その他の部分は簡略化のため繰り返さない。装置70への電子の流れ60は、それらが中心点74に接近するにつれてデフォーカスされるが、中心点を通過すると再び集束されることが分かる。0.1Tの磁場(図示せず)は電子方向の経路に沿って平行になるように整列される。この磁場は、ECD、ホットECD、EID、EDD、およびネガティブECDが実行され、荷電種が電子である場合に有用である。荷電種が試薬アニオンで、例えば、起こる反応がETD反応であるシナリオを含むとき、磁場源および磁場は必要とされない。RF場は、ピークからピークまで100Vであり、電子ビームエネルギーは、中心で0.2eVである。
【0067】
図6および図7は、バッチ式の本発明の実施形態による装置100によって生成されたイオントラップ効果の側面図を描示する。第1の経路101は、第1の軸端103と第2の軸端104とを含み、第1の軸端103から注入されるイオンの流れ経路を提供する。第2の経路110は、第1の軸端112と第2の軸端113とを含み、フィラメント114よって生成される電子ビームのための経路を提供する。適切な組のRF電圧源に接続された1つの組の4重極電極107(2つのみが描示され、他の2つは真裏にある)は、中心軸102に沿って4重極電極107内の中点にイオンを案内するように向けられ、作用する。第2組の4重極電極108(2つのみが描示され、他の2つは真裏にある)は、第1組の4重極電極107から少し距離を置いて配置されており、第1組(107)および第2組(108)の4重極電極の間の距離が、これらの組の電極間に間隙109を形成する。第2組の4重極電極108は、4重極電極108と中心軸102との間の中点にイオンを案内するように作用する。4重極電極107の描示される2つの電極について、これらの電極は反対の極性を有する。4重極電極108の描示される2つの電極について、これらの電極は反対の極性を有する。第1組(107)および第2組(108)の4重極電極のそれぞれについて上方に描示された電極は、極性が互いに反対である。当業者によって理解されるであろうように、各組の4重極電極の図示されない2つの電極は、例えば、図3Aおよび3Bに示される構成のように、4重極電極の極性と適合する極性を有するであろう。磁場発生器(図示せず)は、第2の経路の方向に平行で第2の中心軸111に沿って配向された磁場を作る。この磁場は、ECD、ホットECD、EID、EDD、およびネガティブECDが実行され、荷電種が電子である場合に有用である。荷電種が試薬アニオンで、例えば、起こる反応がETD反応であるシナリオを含むとき、磁場源および磁場は必要とされない。入口ゲート電極105および出口レンズゲート電極106は、装置100へのイオンの流入および流出を制御する。本実施形態では、入口レンズゲート電極105は、装置100へのイオンの流入を可能にする電位に設定される一方、出口レンズゲート電極106は、装置からのイオンの流出を阻止するのに十分に高い電位を有する。第2の経路はまた、第2の経路110の軸端112、113を通るイオンの流出を防ぐ、正にバイアスされたゲート電極115、116を含むまたはそれに近接配置する。本実施形態では、イオンが注入される際、フィラメント114が最初にオフにされ、荷電種は、第2の経路110を介して装置100に入らない。このようにして、装置100は、注入されたイオンが、第1(101)および第2(110)の経路の間の交点に蓄積されるイオントラップとして機能する。十分なイオンが蓄積されたとき、装置100へのイオンの流入を防止するようにゲート電極105の電位を上昇させ、それによってイオンの出入りを防ぐ。フィラメント114は、その後、オンにすることができ、ゲート電極115の電位は、装置100への電子117の流入を可能にするように低下され得る。このとき、電子はイオンと相互作用して、ECDを経過し、その結果、生成物イオンへの断片化が起こる。十分な断片化がいったん生じると、フィラメント114はオフにされ得、ゲート電極115の電位は増大され得、ゲート電極106の電位は低下され、図7に描示されるように、第2の軸端104を介した生成物イオンの排出を可能にすることができる。例えば、ヘリウムまたは窒素ガス等の冷却ガスは、より効率的なトラップを得るように、デバイス100に導入され得る。第1(107)および第2(108)の4重極からの各電極は、第1の中心軸102と実質的に平行に配向された電極の第1の部分を有する一方、第2の部分は、第2の中心軸と実質的に平行に配向されている。各電極の各部分は、所与の電極について同じ極性を有するので、電極は、中心軸102および中心軸111の両方にイオンを方向付けるトラップとして集合的に作用し得る。このように、装置100は、2次元トラップ、より正確には2方向での線形トラップとして機能する。図6では、第1の部分と第2の部分との間には滑らかな丸みを帯びた遷移があるものとして描示されているが、鋭い角等の他の構成も利用され得る。図6および図7のそれぞれの装置の下方には、中心軸102に沿った装置内の横方向における正イオンの空間電位のグラフがある。図6では、入り口の電位が、入ってくる単離したイオンのそれとほぼ等しく、したがって、イオンが通過し装置に入れるようになっており、出口に存在する電位は、装置に入ってくる単離したイオンのそれよりも高く、したがって、イオンは、装置の右側を通って出ずにトラップされるようになる。図7では、入口の電位がより高く、それによって、イオンが戻って入口から出ることを防ぐ一方、出口での電位は、生成物イオンのそれよりも低く、それによって、イオンが装置を発つことができる。
【0068】
図8は、半連続モードにある装置100の動作の側面図を描示し、ここで、イオンはゲート105を通して連続的に入り、電子117は、ゲート115を通して連続的に入る。イオンと電子117との間の相互作用は、ECDを引き起すことができ、その結果、断片化と生成物イオンの形成が起こる。これらの生成物イオン、さらには未反応のイオンが、ゲート電極106を通して装置から半連続的に抽出され、その際、ゲート電極106が、開位置と閉位置との間で切り替わる。閉位置のとき、ゲート電極の電位は、装置内に含まれるイオンのそれよりも高く、それによって、イオンは、蓄積して、滞留および反応時間の増大を可能にし、ECD反応が起こり得るようにする。イオンを抽出しようとするとき、ゲートの電位を低下させることによりゲート電極106は開かれ、生成物イオンが取り出せるようになる。図8の装置100の下方には、正イオンの電位の水平空間表示があり、出口電位が、ゲート106の開位置と閉位置とを表す高電位と低電位との間を搖動することを示す。
【0069】
ここで図9を参照すると、本発明の実施形態による装置200が、2つの4重極フィルタの間に直列に挿入された状態の側面図に描示される。4重極ロッド218を有する4重極フィルタQ1は、装置200の上流に位置し、イオンのトラップ/ガイド/その他として作用し、また装置200の入口にイオン源を提供する。4重極ロッド219を有する4重極Q2は、装置200の下流に位置し、生成物イオンおよび未反応イオンを受容し、さらなる分析または処理のために、4重極内でトラップ/ガイド/等のいずれかを行うように作用できる。本装置は、前述の装置と同様であり、簡潔のために詳細には記述されない。装置200は、第1の経路201と第2の経路210とを有する。装置200は、第2の経路210の第1の軸端212または第2の軸端213のいずれかにそれぞれ配置された2つのフィラメントを含む。この構成は、フィラメントの独立した動作を可能にし、仮に、1つのフィラメントが使用され、急に動作しなくなった場合、もう一方のフィラメントがスペアとしてその後使用され、ダウンタイムが生じないまたは最小限となるように起動され得る。付加的な4重極の使用を具体的に例示するが、他種のデバイスが、本発明の教示による装置の前または後のいずれかに配置され得ることが理解されるであろう。例えば、これらのデバイスは、種々のイオンガイド、フィルタ、トラップ、ならびに微分移動度および電界非対称イオン移動度分光計、および飛行時間型質量分析計等の他の質量分析装置を含むイオン移動度デバイスを含み得る。
【0070】
ここで図10および図11を参照すると、装置300の別の実施形態が描示されている。図11は、第1の中心軸302を有し、さらに第1の軸端303と第2の軸端304とを有する第1の経路301の周りを囲む、内側円筒ハウジング318および外側半円筒状のハウジング319を部分的切り出し断面として示す。この経路301は、イオンがイオン反応装置300に入るための通路を提供する。経路301の各端部には電極ゲート(305、306)が配置される。電極ゲート305は、イオンが装置300に入ることを可能にし、電極ゲート306は、装置300からのイオン、または生成物イオン、または未反応イオンの排出を制御する。装置300は、内側円筒ハウジング318に取り付けられた第1組の4重極電極307を備え、電極307は、第1の中心軸302の周りに配列される。図では、4つの4重極電極のうち2つのみが描示され、もう2つの電極は描示された電極の真裏にある。4重極電極307内の描示された2つの電極について、これら電極は反対の極性を有している。これらの第1組の4重極電極307は、RF電圧源およびコントローラ(図示せず)に接続され、4重極307の中点である第1の中心軸302にイオンを案内できるRF場を生成するように作用する。また内側円筒ハウジング318に取り付けられた第2組の4重極電極308(2つのみが図11に描示され、他の2つは真裏にあり図10により容易に描示される)は、第1組の4重極電極307から少し距離を置いて配置され、この距離が、第1組(307)と第2組(308)の電極との間に間隙309を形成する。この第2組の4重極電極308もまた、イオンおよび/または生成物イオンを、第2組の4重極電極308の中点である中心軸302に向けて案内するように作用し得るRF場の生成を目的とした、好適なRF電圧源に接続される。内側318および外側円筒ハウジング319は、フィラメントハウジング320が挿入可能な切抜を有している。この切抜は、第1の軸端312と第2の軸端313とを有する第2の中心軸311を有する第2の経路310の確立を可能にする。本第2の経路310は、装置300内への電子の移送のための通路を提供する。第1(301)および第2(310)の経路は、実質的に互いに直交し交点24で交差する。電極の構成および極性は、図10に、より容易に示されている。フィラメントハウジング320は、電子流のための好適な開口部315を含む第1の軸端および第2の軸端に配置または近接される。ハウジング内には、電子を生成するためのフィラメント314が収納される。磁場は、第2の経路310の中心軸311に沿って平行な磁石322により生成される。この磁場は、ECD、ホットECD、EID、EDD、およびネガティブECDが実行され、荷電種が電子である場合に有用である。荷電種が試薬アニオンで、例えば、起こる反応がETD反応であるシナリオを含むとき、磁場源および磁場は必要とされない。
【0071】
別の実施形態では、2つの電子フィラメントハウジングのうち1つは、除去され、真空ビューポートで置き換えられ得る。赤外線レーザがその後、進入する電子と反対方向に赤外光を注入するように取り付けられ得る。IRレーザは、前駆体イオンまたは生成物イオンを、より良好な分離効率を得るよう加熱するのに使用される。別の実施形態では、IRレーザは、UVレーザに置き換えられ得る。UVレーザは前駆体イオンの光解離に用いられ得る。この代替的解離技法は、イオン構造の補完情報を提供する。
【0072】
さらに別の実施形態では、装置内の電子源の1つまたは両方が、イオン源、好ましくはアニオン源で置き換えられ得る。このような実施形態は、ETDおよびPTRが実行され得るイオン−イオン反応に有用である。
【0073】
図12は、図10に示された実施形態を代表する装置400の背面図を描示し、装置400は、外側円筒ハウジング419と、第1の経路401のための流路と、第2の経路410のための別の流路とを有する。フィラメントハウジング420は、円筒ハウジング419の開口部に挿入されている。永久磁石422は、第2の経路410に沿って平行な磁場を作る。磁場はまた、第2の経路の中心軸に沿って平行な磁場を発生させるように機能する電磁石、ネオジム磁石または同等物を含む、任意の他の磁場発生源によっても生成され得る。磁束密度は、電子ビームの集束を引き起こす磁場を形成できる任意の密度であればよく、例えば、1.5Tまでまたはこれを上回る、好ましくは約0.1〜1.0Tの範囲にあり得る。より高い密度を有する磁石は、電極対からより遠くに配置され得る。
【0074】
図13は、図10および図11に描示された装置300と同様の装置500の実施形態の断面図を描示する。装置500は、各4重極組の異なる形状の下部2つの電極550とともに描示される。下部2つの電極は、内部に磁石が配置され得るノッチまたは留め部551を有している。その他の相違点は、磁気源522の位置と、随意のベーン552の追加を含む。磁石522の配置は、前述の実施形態で述べた磁場と同様、電子流の方向に平行な磁場を生成する。電極は、任意の数の可能な形状を包含し得る。円柱状ロッドを含む従来の多重電極形状は、双曲線断面を有するもの等、当該技術分野で公知の他の形状と同様、本発明の教示の範囲内である。ベーン552は、イオン注入経路線内におけるイオンの位置の制御を補助する。適切な手段によってベーン552に正バイアスが印加されるとき、イオンは、荷電種通路内に選択的にトラップされ、より良好なイオン―荷電種相互作用を可能にする。
【0075】
図14は、図10および図11に描示される装置300と同様の装置575のさらに別の実施形態の断面図を描示する。本実施形態では、リターンヨーク577を有するネオジム磁石576は、磁場の生成に利用され、ブロッキング電極板とベーン578は、ハウジング579に適宜取り付けられ、他の要素は、先に説明した実施形態と同様に配列される。
【0076】
図15は、実施形態の例で説明した両方の4重極の組のいずれかで、半径方向のトラップRF場を生成するのに使用され得るRF回路600の例を描示する。1組の4重極電極604は、2つの電極対に分割され、1つの電極対605は、もう一方の電極対606に対して反対の極性を有する。本回路は、発生器601、1次トランス602、2次トランス603、およびコンデンサ607を含む。
【0077】
様々な実施形態では、電子制御光学系およびイオン制御光学系が完全に分けられており、両方の荷電粒子についての独立操作が可能である。電子について、電子エネルギーは、電子源とイオン経路および荷電種経路の交点との間の電位差によって制御され得る。荷電種経路は、ゲート電極を用いることによるON/OFF方式で制御され得る。レンズは、第2の経路のいずれかの軸端に配置または近接され得、正にバイアスされたとき、種が電子のときに、荷電種の集束を引き起こす。もう一方の経路を通して導入されるイオンは、正にバイアスされているので、レンズの近傍でも安定である。
【0078】
ある実施形態の別の側面において、イオンが負で、電子線が約10eVのエネルギーを有するときにEDDの適用が要求される場合、レンズ電極およびゲートの極性は反転されるべきである。
【0079】
本教示はまた、第3の経路の導入に拡張され得る。第3の経路は、第1および第2の経路のそれぞれに直交する。このような経路は、例えば、図2において図から見る人に向かって出てくる経路として視覚化されるであろう。第3の経路は、第1および第2の端部と中心軸とを有し、中心軸は、第1および第2の経路の第1および第2の中心軸とそれぞれ直交し、交点で交わる。第3の経路は、導入を可能にし得、第2の経路と同様に構成されており、その目的は、荷電種(アニオン、カチオン、または電子等)または赤外線もしくは紫外線を含む光子の形態のエネルギー等の反応物を反応セル内に提供することにある。例えば、第3の経路の各端部は、電子が生成され第3の経路を通して端部から交点に向けられる電子フィラメントハウジングを含むまたはそれに近接配置してもよい。第3の経路はまた、第3の経路の端部からのイオンの流出を防ぐ好適なRF電圧に接続された適切なゲート電極を各端または両端に配置してもよい。適切なグリッドはまた、イオン経路への電子の進入を制御するため電子源をオンまたはオフに切り替えるゲートとして機能するように電子フィラメントに配置されるまたは近接し得る。したがって、このタイプの構成では、3つまたは4つの電子源が、第1の経路の周りに適宜取り付けられ、それぞれが反応セルに電子を導入するため別々に使用され得る。理解されるであろうように、磁場発生器は、時間内の所与の瞬間に利用される経路の中心軸に沿った磁場の配向を可能にするよう変更または再配置される必要があるであろう。他の実施形態では、1つまたはそれを上回る電子源は、レーザ光源を含む光源を搭載し得る好適な真空ビューポートと置き換えられ得る。光/レーザ源は、IRまたはUVレーザを含み得る。
【0080】
3経路構成で使用されるとき、4重極電極のそれぞれは、電極が3つの部分を含み、各部分が、第1、第2、または第3の経路のいずれか1つに実質的に平行なフィンガを含み、3つのフィンガが実質的に互いに直交するように改変され得る。別の実施形態では、3つのフィンガは、4重極の第1組および第2組それぞれの2つの電極が示される図19に描示されるような、隅部で交わる3つの円形ロッドである。3経路構成について理解されるであろうように、各第1組および第2組の4重極の他の2つの電極は、概して、2つのみのフィンガを含むL字型であろう。
【0081】
他の実施形態では、3経路構成は、L字型電極が、別組の3フィンガ電極で置き換えられた4経路構成に拡張され得る。このように、4つの3フィンガ電極は、図19にすでに描示された4つの電極を鏡写しにするであろうように加えて存在するであろう。このような構成は、反応物またはエネルギーをセルに導入するための4つの経路を提供するであろう。
【0082】
別の実施形態では、生成物イオンや他のイオンが装置から排出されるとき、電子ゲートが閉じられてもよく、電子を発生する電子ビームがオフにされてもよい。
【実施例】
【0083】
連続モード
【0084】
連続モード動作では、イオンの流れは、一端で連続的に反応装置に導入され、電子は、イオンの流れに直交する流れとして反応装置に導入される。イオン経路と電子経路の両方の入口と出口に位置するゲートは連続的に開である。イオンが電子と相互作用すると、イオンの一部はECDを起こし断片化する。断片化された部分と断片化されていない部分とを含む生成物イオンは、その後、反応装置から連続的に抽出され、続いて、イオン検出器を用いて処理され、分析される。図16は、そのような動作モードから得られた神経ペプチド物質Pの質量スペクトルを描示し、約675Daのピークは、断片化されていない元の2重荷電イオンを表す。
半連続モード
(ニューロテンシン)
【0085】
半連続モードでは、装置は、イオン経路の入口ゲートが連続して開である一方、イオン経路の出口ゲートが開位置と閉位置との間で切り換わる様式で構成されている。電子経路の入口ゲートは、連続的に開であり得る。イオン経路の出口ゲートが閉位置にあるとき、イオンは出口ゲートを通って装置を出ることができず、イオンの蓄積が装置内で起こる。入って来るイオン流に対して垂直に、装置に連続的に入る電子は、蓄積するイオンと相互作用し、イオンの一部はECDを起こし断片化する。十分な時間がいったん経過すると、イオン経路の出口ゲートは開かれ、蓄積された生成物イオンおよび未反応イオンの除去を可能にする。これらの排出されるイオンは、その後、後段でさらに処理および/もしくは操作され、ならびに/またはイオン検出器を用いて分析される。図17aおよび図17bは、ニューロテンシンから得られた質量スペクトルを描示し、イオン経路の出口ゲートが閉の時間を長くすると、装置内に蓄積されたイオンがECDを起こす機会を増大させることを実証する。図17aは、本発明の教示による装置から受容されたイオンより得られる質量スペクトルを描示し、ここでは、イオン経路の出口ゲートが開位置と閉位置との間で切り替わり、ゲートが2ミリ秒間閉じられた後、8ミリ秒間開けられる。図17bには、質量スペクトルが描示され、ここでは、出口ゲートが7ミリ秒間閉じられ、3ミリ秒間開けられる。図17bで用いられた設定では、イオンは、図17aで用いられた設定より長時間蓄積することが可能となり、その結果、未反応の前駆体イオンのピーク(約558Da)の断片化された生成物イオンに対する比率によって証明されるように、イオンのさらなる断片化を見ることができる。
【0086】
生成物出口レンズが、電子ビームと前駆体イオンとの同時注入の間に数ミリ秒間閉じられたとき、断片化信号は大幅に向上され、場合によっては、ECD効率が>60%となることが見出された。この半または擬似フロースルー適応モードもまた、従来のトラップモード(入口および出口レンズは閉)より多くの断片を生み出した。
(BSA)
【0087】
トリプシンおよびLysCによって消化されるBSAは、逆位相C18UPLC−ESIに注入され、ここで、移動相のアセトニトリル濃度が2%から40%まで10分間走査された。データ依存取得条件として、5つの最も強いピークが、各調査MSスキャンについて選択された。スペクトル蓄積は0.2秒であり、毎秒5つのECDスペクトルが得られた。本ECD技法は、85%(LysC)および75%(トリプシン)の配列包括度を提供した。より詳細には、擬似フロースルーモードでの電子捕獲効率および解離効率は、単一荷電状態選択のLC−ECD MSを用いて調べられた。[M+2H]2+前駆体の電子捕捉効率は、[M+3H]3+および[M+4H]4+前駆体の半分(2+については約40%;3+および4+については80%)であったにもかかわらず、異なる荷電状態([M+2H]、[M+3H]2+、および[M+4H]3+)に対する残留電荷減少前駆体イオンの量の間で有意な差は認められなかった。より重要なことに、2重プロトン化ケースのECD効率は比較的低いにもかかわらず、得られたECDスペクトルは、依然として質量スペクトル中にECD生成物の明確なピークを提供した。
バッチモード
【0088】
バッチモードでは、装置は、入口および出口ゲートが、非連続モードでイオンが装置に入れるように操作されるのと同様の方式で利用される。イオン経路の入口ゲートは開で、イオン経路の出口ゲートは閉じられ、イオンは入口ゲートを通って装置内に移送される。この期間中、電子経路の入口ゲートは閉じられる。十分なイオンが装置内にいったん蓄積されると、イオン経路の入り口ゲートは閉じられ、電子経路への入り口ゲートは開かれて、電子が装置内に入れるようになり、そこで電子は蓄積したイオンと相互作用し、イオンを断片化するECDを引き起こし得る。反応のために十分な時間がいったん経過すると、電子入口ゲートは閉じられ、または電子ビームはオフにされ、イオン経路の出口ゲートが開かれて、断片化した生成物イオンまたは未反応の前駆体イオンの抽出を可能にし、これらは、さらに処理および/もしくは操作され、ならびに/またはイオン検出器を用いて分析され得る。イオン出口ゲートが閉じられ、イオンと電子との間の相互作用の持続時間は、元の前駆体イオンの電荷状態の関数として予め決定されるか、経験に基づいて手動で設定され得る。
【0089】
多数の変更は、本教示の範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に対して行われ得ると理解されるべきである。上述の図および実施例は特定の要素を参照するが、これは例および図示のみを意図したもので、限定を意図したものではない。開示された実施形態の形および詳細について、添付の請求項に包含される教示の範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ得ることは、当業者によって理解されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19