特許第6553027号(P6553027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許6553027-外科レーザ治療温度モニタ 図000002
  • 特許6553027-外科レーザ治療温度モニタ 図000003
  • 特許6553027-外科レーザ治療温度モニタ 図000004
  • 特許6553027-外科レーザ治療温度モニタ 図000005
  • 特許6553027-外科レーザ治療温度モニタ 図000006
  • 特許6553027-外科レーザ治療温度モニタ 図000007
  • 特許6553027-外科レーザ治療温度モニタ 図000008
  • 特許6553027-外科レーザ治療温度モニタ 図000009
  • 特許6553027-外科レーザ治療温度モニタ 図000010
  • 特許6553027-外科レーザ治療温度モニタ 図000011
  • 特許6553027-外科レーザ治療温度モニタ 図000012
  • 特許6553027-外科レーザ治療温度モニタ 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553027
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】外科レーザ治療温度モニタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/22 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   A61B18/22
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-525502(P2016-525502)
(86)(22)【出願日】2014年10月20日
(65)【公表番号】特表2016-538026(P2016-538026A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】US2014061319
(87)【国際公開番号】WO2015061201
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年10月18日
(31)【優先権主張番号】61/934,387
(32)【優先日】2014年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/895,211
(32)【優先日】2013年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】チア ウェン−ジュイ レイ
(72)【発明者】
【氏名】ハーゼンバーグ トーマス シー
(72)【発明者】
【氏名】ワン ホイ
(72)【発明者】
【氏名】カールソン ブライアン クリストファー
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−519554(JP,A)
【文献】 特表2008−543505(JP,A)
【文献】 特開平01−250271(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0251116(US,A1)
【文献】 特開昭61−257638(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/071388(WO,A2)
【文献】 米国特許第7869016(US,B2)
【文献】 特表2013−516245(JP,A)
【文献】 特表2001−503645(JP,A)
【文献】 特開平02−279169(JP,A)
【文献】 特開2005−185829(JP,A)
【文献】 特開2012−40106(JP,A)
【文献】 特表2005−502389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/22 − 18/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科レーザシステムであって、
レーザエネルギを発生させるように構成されたレーザ源と、
前記レーザ源に光学的に結合されたレーザファイバと、を有し、前記レーザファイバは、レーザエネルギを放出して、電磁エネルギフィードバックを治療部位から収集するように構成され、
更に、治療部位から収集された電磁エネルギに応答して、出力信号を発生させるように構成された光検出器と、
ディスプレイと、
コントローラと、を有し、前記コントローラは、前記出力信号に基づいて、治療部位における少なくとも1つの状態ついての画像又は表示を前記ディスプレイ上に生成するように構成され
前記コントローラは、前記出力信号を、時間ベースの信号から周波数ベースの信号に変換するように構成され、前記周波数ベースの信号を使用して、治療モードが識別される、外科レーザシステム。
【請求項2】
前記出力信号は、治療部位における少なくとも1つの状態に対応する、請求項1に記載の外科レーザシステム。
【請求項3】
治療部位における少なくとも1つの状態は、温度である、請求項2に記載の外科レーザシステム。
【請求項4】
前記治療モードは、蒸発及び凝固から構成される群から選択される、請求項に記載の外科レーザシステム。
【請求項5】
前記画像は、前記出力信号に基づく温度情報を含み、前記温度情報は、前記レーザファイバによってレーザエネルギが放出された治療部位における近似温度、又は、ある期間にわたる治療部位における平均近似温度を指示する、請求項1に記載の外科レーザシステム。
【請求項6】
前記画像は、温度情報のグラフィック表示、又は、温度情報の英数字表示を含む、請求項5に記載の外科レーザシステム。
【請求項7】
前記画像は、前記出力信号に基づく治療モード情報を含み、前記治療モード情報は、前記レーザファイバによってレーザエネルギが放出された治療部位で行われているレーザ治療を指示する、請求項1に記載の外科レーザシステム。
【請求項8】
前記画像は、治療モード境界を含み、前記治療モード境界は、少なくとも1つの治療モードの上側作動パラメータ及び下側作動パラメータを指示する、請求項7に記載の外科レーザシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記出力信号に応答して前記レーザファイバから放出されるレーザエネルギを制御するように構成される、請求項1に記載の外科レーザシステム。
【請求項10】
更に、入力デバイスを有し、
前記コントローラは、前記入力デバイスを通して受信されたユーザ入力に応答して、前記レーザファイバから放出されるレーザエネルギを制御するように構成される、請求項1に記載の外科レーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、2013年10月24日出願の米国仮特許出願第61/895,211号及び2014年1月31日出願の米国仮特許出願第61/934,387号の利益を主張するものである。上記仮特許出願の各々の内容は、全ての目的に対してその全体が引用によって本明細書に組込まれている。
【0002】
本発明の実施形態は、一般的に、光ファイバを利用する医療レーザの分野に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、例えば、組織温度、行われているレーザ治療などのような治療部位における条件に関するリアルタイム情報を医師に提供するための治療部位からの電磁エネルギフィードバックの使用に関する。
【0003】
本発明の実施形態は、一般的に、外科レーザシステム及びそのようなシステムを作動又は制御する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
外科レーザシステムは、例えば、泌尿器科学、神経科学、耳鼻咽喉科学、全身麻酔眼科学、歯科学、消化器病学、心臓病学、婦人科学、並びに胸部及び整形外科的処置のような様々な実施分野において使用されている。一般的に、これらの処置は、例えば、がん細胞及び前立腺組織のようなターゲット組織を切断、蒸発、又は融除するための治療プロトコルの一部としてレーザエネルギの正確に制御された送出を必要とする。
【0005】
黒体放射は、身体の温度を測定するために一般的に使用されてきた物理学における基本的現象のうちの1つである。一般的に、熱力学的平衡にある被験者は、身体の温度だけに依存する特定スペクトル及び強度を有する電磁波を放射することになる。
【0006】
本出願と同じ譲受人に譲渡され、かつその内容が全ての目的に対してその全体が引用によって本明細書に組込まれている特許文献1は、ファイバ先端部からの黒体放射をモニタすることによってレーザファイバ先端部を保護するための技術を開示している。黒体放射の強度は、ファイバ先端部の温度を示すのに使用され、それは、温度が安全でない条件に達した時にレーザエネルギの放出を自動的に遮断するのに使用される。すなわち、この事例において、医師は、形成されているレーザ手順を変更するか、又はシステム停止を回避するためにレーザデバイスの作動パラメータを変える能力を持たない。
【0007】
組織又は治療部位をレーザエネルギに露出させることによって達成される温度は、行われているレーザ治療のタイプ(例えば、凝固、蒸発、その他)、並びにレーザ治療の有効性を決定するのに重要な役割を果たす。例えば、温度が治療部位において低すぎる場合に、蒸発治療を行うことが可能でない場合があり、又は蒸発治療が非効率的である場合がある。これに加えて、治療部位で感知される温度はまた、レーザエネルギを放出するレーザファイバがファイバ先端部の過熱により損傷を受ける場合があることを示すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,869,016号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
行われているレーザ治療を識別し、例えば、過剰又は過少治療を防止することによってレーザ治療の効率を改善し、潜在的なファイバ先端部損傷を外科医に警告し、及び/又は現在利用不能な他の利益を医師に提供するために外科レーザ治療中の医師を助けるためのリアルタイムレーザ治療部位温度情報を提供することが望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、外科レーザシステムに関し、外科レーザシステムは、レーザエネルギを発生させるように構成されたレーザ源と、レーザ源に光学的に結合されたレーザファイバを有し、レーザファイバは、レーザエネルギを放出して、電磁エネルギフィードバックを患者の治療部位から収集するように構成される。外科レーザシステムはまた、治療部位から収集された電磁エネルギに応答して出力信号を発生させるように構成された光検出器と、ディスプレイと、コントローラを有し、コントローラは、出力信号に基づいて、治療部位における少なくとも1つの条件に関する画像又は表示をディスプレイ上に生成するように構成される。
【0011】
本発明の実施形態はまた、外科レーザシステムを作動させる方法に関し、レーザ源を使用して、レーザエネルギを発生させる段階と、レーザエネルギをレーザファイバから治療部位に放出する段階を含む。本方法はまた、レーザエネルギを治療部位に放出することに応答して生成された治療部位からの電磁エネルギフィードバックを光検出器に送出する段階と、電磁エネルギフィードバックに基づいて光検出器出力信号を発生させる段階を含む。光検出器出力信号を発生させた後、コントローラを使用して光検出器出力信号を解析し、治療部位情報(すなわち、治療部位における条件)を決定する。コントローラによって解析した状態で、治療部位情報を、医師に見えるようにディスプレイ上に表示する。
【0012】
本発明の別の実施形態では、外科レーザシステムを作動させる方法を提供する。本方法は、レーザ源を使用して、レーザエネルギを発生させる段階と、レーザエネルギをレーザファイバから治療部位に放出する段階と、レーザエネルギを治療部位に放出することに応答して生成された治療部位からの電磁エネルギフィードバックを解析する段階と、電磁エネルギフィードバックの解析に基づいて、レーザエネルギを自動的に調節する段階を含む。
【0013】
本発明の実施形態、その作動利点、及びその使用によって達成される特定の目的をより良く理解するために、本発明の好ましい実施形態が添付の図面に示されている添付の説明的内容を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】例示の外科レーザ治療を行う本発明の実施形態による外科レーザシステムの概略図である。
図2】例示のレーザ治療を行う内視鏡内の図1の外科レーザシステムのレーザファイバの遠位端部の概略図である。
図3A】レーザファイバが1mm/sでターゲット組織を横切って移動する時の黒体放射を示すグラフである。
図3B】レーザファイバが1mm/sでターゲット組織を横切って移動する時のターゲット組織上の蒸発効果を示す写真である。
図4A】レーザファイバが4mm/sでターゲット組織を横切って移動する時の黒体放射を示すグラフである。
図4B】レーザファイバが4mm/sでターゲット組織を横切って移動する時のターゲット組織上の蒸発効果を示す写真である。
図5A】レーザファイバが16mm/sでターゲット組織を横切って移動する時の黒体放射を示すグラフである。
図5B】レーザファイバが16mm/sでターゲット組織を横切って移動する時のターゲット組織上の蒸発効果を示す写真である。
図6】レーザファイバ走査速度の関数として黒体放射を示す線形目盛のグラフである。
図7図6を対数目盛で示すグラフである。
図8】本発明の実施形態によるディスプレイの概略図である。
図9】本発明の実施形態による外科レーザシステムを作動させる方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態は、一般的に、外科レーザシステム及び患者に対するレーザ治療の実行中などに外科レーザシステムを制御する方法に関する。本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下により完全に説明される。しかし、本発明の様々な実施形態は、多くの異なる形態に具現化することができ、本明細書に説明する実施形態に限定すると解釈すべきではない。そうではなく、それらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全になり、本発明の範囲を当業者に完全に伝達するように提供されるものである。同じか又は類似の参照文字を使用して識別される要素は、同じか又は類似の要素を指す。
【0016】
本明細書に使用する専門用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、本発明を限定するように考えられているものではない。本明細書に使用される場合に、単数形「a」、「an」、及び「the」は、そうでないとする異なる指示がない限り複数形も含むことを意図している。用語「comprise」及び/又は「comprising」は、本明細書に使用する時に、述べられた特徴、整数、段階、作動、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1又は2以上の他の特徴、整数、段階、作動、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないことは更に理解されるであろう。
【0017】
ある要素が別の要素に「接続」又は「結合」されていると言及される時に、その要素は、他の要素に直接に接続又は結合することができ、又は介在要素が存在する場合があることは理解されるであろう。対照的に、ある要素が別の要素に「直接に接続」又は「直接に結合」されていると言及される場合に、介在要素は存在しない。
【0018】
用語第1、第2、その他は、本明細書では様々な要素を説明するのに使用することができるが、それらの要素は、それらの用語によって限定すべきではないことは理解されるであろう。それらの用語は、一方の要素を別の要素と区別するのに使用されるに過ぎない。従って、第1の要素は、本発明の教示から逸脱することなく第2の要素と呼ぶことができる。
【0019】
別に定めない限り、本明細書に使用する全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本発明の属する当業者が一般的に理解するものと同様の意味を有する。一般的に使用する辞書に定義されるような用語は、関連の技術分野との関連でそれらの意味と一致する意味を有すると解釈しなければならず、本明細書でそのように明示的に定義されない限り理想的な又は非常に形式的な感覚で解釈されることはないことは更に理解されるであろう。
【0020】
当業者によって更に認められるように、本発明は、方法、システム、及び/又はコンピュータプログラム製品として具現化することができる。従って、本発明は、完全ハードウエア実施形態、完全ソフトウエア実施形態、又はソフトウエア及びハードウエア態様を組み合わせた実施形態の形態を取ることができる。更に、本発明は、媒体に組込まれたコンピュータ使用可能プログラムコードを有するコンピュータ使用可能ストレージ媒体上のコンピュータプログラム製品の形態を取ることができる。ハードディスク、CD−ROM、光学ストレージデバイス、又は磁気ストレージデバイスを含むあらゆる適切なコンピュータ可読媒体を利用することができる。
【0021】
本明細書で「メモリ」と呼ばれるコンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体は、例えば、以下に限定されるものではないが、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、又は半導体システム、装置、デバイス、又は伝播媒体とすることができる。コンピュータ可読媒体のより具体的な例(非網羅的リスト)は、1又は2以上のワイヤを有する電気接続、携帯型コンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、及び携帯式コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD−ROM)を含むと考えられる。プログラムは、例えば、紙又は他の媒体の光学走査を通じて電子的に取り込まれ、次に、コンパイルされ、解釈され、又は他に必要に応じて適切な方式で処理され、次に、コンピュータメモリに格納することができるので、コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体は、プログラムが印刷された紙又は別の適切な媒体とさえすることができると考えられることに注意されたい。
【0022】
本発明の実施形態はまた、流れ図及びブロック図を使用して説明される。各ブロック(流れ図及びブロック図の)及びブロックの組合せは、コンピュータプログラム命令によって実施することができることは理解されるであろう。それらのプログラム命令は、プロセッサ上で実行される命令が、1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能を実施するための手段を生成するように、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又は他のプロセッサのような1又は2以上のプロセッサ回路を各々が含む1又は2以上のコントローラに提供することができる。コンピュータプログラム命令は、プロセッサ上で実行される命令が、1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能を実施するための段階を提供するようなコンピュータ実施式処理を生成するように、一連の作動段階をプロセッサによって実行させるためにプロセッサによって実行することができる。
【0023】
従って、ブロックは、指定された機能を実施するための手段の組合せ、指定された機能を実施するための段階の組合せ、及び指定された機能を実施するためのプログラミング命令手段をサポートする。各ブロック及びブロックの組合せは、指定された機能又は段階、又は特別な目的のハードウエア及びコンピュータ命令の組合せを実行する特別な目的のハードウエアベースのシステムによって実施することができることも理解されるであろう。
【0024】
本発明の実施形態は、例えば、凝固、組織蒸発、組織融除、組織切断、腎臓又は膀胱結石断片(すなわち、レーザ砕石術)、又は他の外科レーザ治療などの外科レーザ治療を患者に行うための外科レーザシステム及びシステムを作動又は制御する方法に関する。幾つかの実施形態では、システムは、システムによって発生されるレーザエネルギへの治療部位の露出に応答して生成された治療部位からのレーザエネルギフィードバック又は放射フィードバックを利用して、治療部位の近似温度を決定する。幾つかの実施形態では、近似温度は、リアルタイムで医師に表示され、及び/又は治療部位で行われているレーザ治療を示すシステムの作動モードを決定するのに使用される。
【0025】
図1は、本発明の実施形態によって形成された外科レーザシステム100の概略図である。幾つかの実施形態では、システム100は、レーザ源102、導波管又はレーザファイバ104、光検出器106、ディスプレイ107、及びコントローラ108を含む。レーザ源102は、一般的に110で参照するレーザエネルギを発生させるように構成される。レーザファイバ104は、例えば、レンズ又は他の従来の技術を使用してレーザ源102に光学的に結合される。レーザファイバ104は、レーザ源102によって発生させたレーザエネルギ110をターゲット治療部位120に放出するように構成される。光検出器106は、レーザファイバ104からのレーザエネルギ110の放出に応答して治療部位120で生成された電磁エネルギフィードバック114を表す出力信号112を発生させるように構成される。幾つかの実施形態では、コントローラ108は、出力信号112に基づいてディスプレイ107上に画像140を生成するように構成される。
【0026】
レーザ源102は、レーザエネルギ110を生成するのに使用される1又は2以上のレーザ発生器を含むことができる。各レーザ発生器は、レーザ共振器のような従来の構成要素を含み、望ましい出力及び波長を有するレーザエネルギ110を生成することができる。幾つかの実施形態では、レーザエネルギ110は、約532nm(グリーンレーザエネルギ)の波長を有する。例えば、レーザ砕石術処置を実施するのに適切な約400〜475nm(ブルーレーザエネルギ)の波長を有するレーザエネルギ、又は約2000〜2200nmの波長を有するレーザエネルギのような他の波長のレーザエネルギ110の波長も使用することができる。それら及び他の波長は、行われるレーザ治療に応じてレーザエネルギ110に使用することができる。
【0027】
幾つかの実施形態では、レーザ源102によって発生されるレーザエネルギ110は、レンズを含むことができる従来の光結合器(図示せず)を通じてレーザファイバ104に光学的に結合される。光ファイバのようなレーザファイバ104は、任意の従来の外科レーザ波長を含むことができる。幾つかの実施形態では、レーザファイバ104は、遠位端部116においてレーザエネルギ110を放出するように構成される。レーザファイバ104の遠位端部又はファイバ先端部116は、図2に示すように又は別の従来の方式で、レーザファイバ104(すなわち、端部発射ファイバ)の軸線117に沿って図1に示すように、横方向に(すなわち、側面発射ファイバ)レーザエネルギ110を放出するように構成されてもよい。
【0028】
外科レーザ治療中、レーザエネルギ110は、レーザファイバ104の遠位端部116からレーザ治療部位121のターゲット組織又は物体120に向けて放出され、ターゲット物体120上で望ましいレーザ治療を行う。本明細書に使用される場合に、用語「ターゲット物体」は、例えば、腫瘍、前立腺組織又は他の身体組織、又は腎臓又は膀胱結石のようなレーザ治療を行うように考えられている患者の物体を意味する。本発明の実施形態は、治療部位121の温度又は処置部位でのターゲット物体120の指示として及び/又は治療部位121で物体120上に行われているレーザエネルギ治療のインジケータとして、ファイバ先端部116からのレーザエネルギ110の放出に応答して治療部位121で生成される黒体放射又は電磁エネルギフィードバック114を利用する。
【0029】
豚腎臓に対して生体外に実施する実験では、レーザエネルギ110を、ファイバ104によって豚腎臓のターゲット組織120に送出した。ファイバ先端部116からのこのレーザエネルギ110の放出に応答して治療部位121で生成された黒体放射又は電磁エネルギフィードバック114を、次に、レーザファイバ104によって収集して解析した。レーザファイバ104が異なる速度でターゲット組織120を横切って移動し、生成されて得られた黒体放射又は電磁エネルギフィードバック114を収集してグラフ上にプロットする3つの実験を実施した。
【0030】
図3Aは、レーザファイバ104を1mm/sでターゲット組織120を横切って移動させたとき、Y軸に沿って黒体放射を示し且つX軸に沿って対応する時間を秒単位で示すグラフである。0秒から約4秒まで、レーザ源102はオフであった。約4秒から約17秒まで、レーザ源102をオンにし、レーザファイバ104は、豚腎臓を支持していたアルミニウムトレイを横切って移動した。約17秒から約28秒まで、レーザ源102はオンであり、レーザファイバ104はターゲット組織120を横切って移動した。約28秒から約34秒まで、レーザ源102はオンであり、レーザファイバ104は、豚腎臓を支持していたアルミニウムトレイを横切って移動した。最後に、約34秒において、レーザ源102をオフにした。グラフから明確に認められるように、黒体放射は、レーザファイバ104が17秒〜28秒の間にターゲット組織120を横切って移動していた時に約7500から約15000まで増加した。図3Bは、レーザファイバ104が1mm/sの速度でターゲット組織120を横切って移動した時の豚腎臓組織120において作り出された蒸発溝を示す写真である。
【0031】
図4Aは、レーザファイバ104を4mm/sでターゲット組織120を横切って移動させたとき、黒体放射をY軸に沿って示し且つX軸に沿って対応する時間を秒単位で示すグラフである。0秒から約1秒まで、レーザ源102はオフであった。約1秒から約7秒まで、レーザ源102をオンにし、レーザファイバ104は、豚腎臓を支持していたアルミニウムトレイを横切って移動した。約7秒から約13秒まで、レーザ源102はオンであり、レーザファイバ104は、ターゲット組織120を横切って移動した。約13秒で、レーザ源102はオフにされた。グラフから明確に認められるように、黒体放射は、レーザファイバ104が7秒〜13秒の間にターゲット組織120を横切って移動していた時に約7500から約10000まで増加した。図4Bは、レーザファイバ104が4mm/sの速度でターゲット組織120を横切って移動した時に豚腎臓組織120において作り出された蒸発溝を示す写真である。
【0032】
図5Aは、レーザファイバ104を16mm/sでターゲット組織120を横切って移動させたとき、黒体放射をY軸に沿って示し且つX軸に沿って対応する時間を秒単位で示すグラフである。0秒から約0.5秒まで、レーザ源102はオフであった。約0.5秒から約1.5秒まで、レーザ源102をオンにし、レーザファイバ104は、豚腎臓を支持していたアルミニウムトレイを横切って移動した。約1.5秒から約7.5秒まで、レーザ源102はオンであり、レーザファイバ104は、ターゲット豚組織120を横切って移動した。約7.5秒で、レーザ源102はオフにされた。グラフから明確に認められるように、黒体放射は、レーザファイバ104が1.5秒〜7.5秒の間にターゲット組織120を横切って移動していた時に約8000から約8500まで増加した。図5Bは、レーザファイバ104が16mm/sの速度でターゲット組織120を横切って移動した時に豚腎臓組織120において作り出された蒸発溝を示す写真である。
【0033】
図3A図4A、及び図5Aに示すように、レーザ源102がオンであり、かつレーザファイバ104がターゲット組織120を横切って移動した時に生成される黒体放射又は電磁エネルギフィードバック114の増加を、明確に識別することができる。同様に、図3B図4B、及び図5Bに示すように、異なる速度でターゲット組織120を横切ってレーザファイバ104を移動させることにより、レーザファイバ104が比較的遅い速度でターゲット組織120を横切って移動する時に蒸発が増加し(図3B)、レーザファイバ104が比較的速い速度でターゲット組織120を横切って移動する時に蒸発が減少する(図5B)ように異なる蒸発度合を生成することができる。蒸発度合は蒸発しているターゲット組織の温度に相関するので、蒸発しているターゲット組織120の温度を、生成された黒体放射又は電磁エネルギフィードバック114に相関させることもできる。
【0034】
図6及び図7に示しているのは、ターゲット組織120にわたるレーザファイバ104の走査及び移動速度に対する黒体放射114の強度及び従って蒸発度合の相関を示すグラフである。X及びY軸に沿った値が線形目盛である図6において明確に認められるように、黒体放射強度114(Y軸)は、蒸発度合と共に増加し、これは、ターゲット組織120の温度の増加に対応する。図7において明確に認められるように、ここで対数目盛のX及びY軸に沿った値により、蒸発度合と黒体放射強度114の間の高い相関があり、相関係数R2は1に近い。従って、組織蒸発度合のインジケータとしてターゲット組織120上に生成された黒体放射又は電磁エネルギフィードバック114を使用することができると考えられる。従って、ターゲット組織120上に生成された電磁エネルギフィードバック114に基づいて、現在作動しているモード又は治療部位で行われているレーザ治療(すなわち、凝固、低蒸発、高蒸発、炭化、その他)は、リアルタイムで識別されて医師に瞬時に通信して戻すことができる。
【0035】
幾つかの実施形態では、ファイバ先端部116から収集された電磁エネルギフィードバック114(又は黒体放射)は、レーザファイバ104又は別の構成要素のいずれかを通じて光検出器106に送出される。電磁エネルギフィードバック114は、温度がレーザ治療の結果として増加する時に治療部位121で放射される赤外線(IR)又は遠赤外線(FIR)範囲の光であるので、この赤外線(IR)又は遠赤外線(FIR)の光は、レーザファイバ104によって収集され、2方向に光を透過させる機能を有するレーザファイバ104の結果として光検出器106に透過して戻される。電磁エネルギフィードバック114が受信されて光検出器106によって解析された時に、光検出器106は、ターゲット物体120の温度のような治療部位121における近似温度を示す出力信号112を生成する。
【0036】
幾つかの実施形態では、システム100は、図1に示すように、レーザエネルギ110が通過することを可能にしながら、電磁エネルギフィードバック114を反射する二色性ビームスプリッタ又はミラー128を含む。ミラー128に反射する電磁エネルギフィードバック114は、光検出器106に送出される。システム100の構成要素は、電磁エネルギフィードバック114がミラー128を通過することを可能にしながら、ミラー128がレーザ源102からのレーザエネルギ110を光結合器に反射するように修正することができることを理解すべきである。
【0037】
幾つかの実施形態では、ミラー128は、レーザエネルギ110の波長にわたって高度に透過性であり、電磁エネルギフィードバック114の波長にわたって高度に反射性である。従って、レーザエネルギ110の波長とは異なる波長を有する治療部位121でのターゲット物体120の黒体放射である電磁エネルギフィードバック114は、ミラー128によって光検出器106に反射することができるが、レーザ源102から放出されたレーザエネルギ110は、ミラーを通じてレーザファイバ104に移動する。
【0038】
幾つかの実施形態では、ミラー128は中心孔(図示せず)を含み、中心孔を通じてレーザ源102によって発生されるレーザエネルギ110が放出される。電磁エネルギフィードバック114の各部分は、孔の縁部の外側でミラー128に衝突し、ミラー128によって光検出器106に反射される。ミラーのこの実施形態は、電磁エネルギフィードバック114が、反射されたレーザエネルギ110を含む時に特に必要である。
【0039】
幾つかの実施形態では、システム100は、電磁エネルギフィードバック114の周波数を濾波し、濾波された電磁エネルギフィードバック114を光検出器106に送出するように構成された1又は2以上のフィルタ130を含む。1又は2以上のフィルタ130の例示の実施形態は、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、及び/又はバンドパスフィルタを含む。例えば、1.4um〜1.8umのバンドパスフィルタを使用して電磁フィードバック114をモニタすることができるが、更に長い波長のバンドパスフィルタも有用であるとすることができる。従って、出力信号112の実施形態は、電磁エネルギフィードバック114又は濾波された電磁エネルギフィードバック114に応答して光検出器106によって発生される出力信号112を含む。考察を簡素化するために、出力信号112への言及は、他に説明されるか又は適用不能でない限り、濾波されるか又は濾波されていない電磁エネルギ114に応答して発生される出力信号112を含む。
【0040】
幾つかの実施形態では、1又は2以上のフィルタ130及び光検出器106は、電磁エネルギフィードバック114を解析し、波長又は周波数の範囲にわたる電磁エネルギフィードバック114の強度レベル及び/又は他の情報のような情報を出力する分光計で置換することができる。幾つかの実施形態では、分光計は、ある一定の周波数で電磁エネルギフィードバック114の強度レベルのみを出力する。考察を簡素化するために、出力信号112への言及はまた、出力信号112を電磁エネルギフィードバック114の解析に応答して分光計によって発生される分光計情報と置換する実施形態を説明すると解釈しなければならない。
【0041】
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、システム100のメモリ132又は他の位置に格納されたプログラム命令を実行して本明細書に説明する様々な機能を実施することができる従来の電子機器及びプロセッサを表している。幾つかの実施形態では、コントローラ108は、出力信号112を処理し(例えば、増幅し)及び/又は解析して治療部位121及び/又はターゲット物体120の信号112により示される近似温度を決定する。幾つかの実施形態では、システム100は、出力信号112により示される近似温度が処置部位121において正確な近似の実温度であることを保証するために較正される。
【0042】
幾つかの実施形態では、出力信号112は、異なる蒸発レベル又は実施されている異なるレーザ治療に対応するジュール利用を決定するために解析して表示することができる。
【0043】
幾つかの実施形態では、電磁エネルギフィードバック114は、光学チョッパー又は任意その他の強度変調器又は固有変調(Qスイッチパルスレーザなど)を使用して変調し、光検出器106から変調出力信号112を発生させることができる。次に、コントローラ108は、コントローラに含まれるソフトウエア又は追加ハードウエアを使用して位相固定ループ又は乗算器のような復調器によりこの信号を復調し、電磁エネルギフィードバック114を取り出すことができる。このようにして、SN比は、レーザ空洞からの放射エネルギ及び光検出器106からの任意の暗ノイズのような任意の環境又は背景電磁エネルギを排除することによって改善することができる。
【0044】
上述のように、コントローラ108は、出力信号112に基づいてディスプレイ107上に画像140を生成するように構成される。幾つかの実施形態では、図8に示すように、画像140は、温度情報及び/又は作動モード情報144を含み、それらの両方は、出力信号112により示される近似温度に基づいて決定される。温度情報は、治療部位121における近似温度を示している。幾つかの実施形態では、温度情報は、治療部位における平均近似温度を示し、平均近似温度は、0.1〜1.0秒のような期間にわたって取られた出力信号112のサンプルに基づいてコントローラ108を使用して計算される。幾つかの実施形態では、作動モード情報144は、レーザエネルギ110を使用して治療部位121において又はターゲット物体120上に行われているレーザ治療を示している。
【0045】
幾つかの実施形態では、画像140は、ジュール利用に関する情報を含む。治療部位121で現在使用されているジュールを含むことで、医師が行われているレーザ治療の効率を決定することを可能にする。例えば、医師が、100KJを使用していることを知り、かつ処置部位で高蒸発があることを知る場合に、彼らは、蒸発が効率的に実施されていることを知る。しかし、100KJを使用していることを知り、かつ処置部位で起こっている低蒸発があることを彼らが知る場合に、これは低蒸発効率の指示であると考えられ、これはレーザファイバ104又はターゲット組織120の過熱をもたらす可能性がある。この追加情報は、医師が治療部位で行われているレーザ治療の効率を識別して制御するのを可能にすると同時に、レーザファイバ104が過熱するのを防止するのを補助することになる。
【0046】
コントローラ108を使用してディスプレイ107上に生成された画像140は、出力信号112の変化に応答して変化する。すなわち、出力信号112が、温度情報(すなわち、治療部位121における近似温度)又は作動モード情報の変化を示すと、コントローラ108によってディスプレイ107上に生成される画像は変化する。好ましくは、画像140のそれらの変化は、実質的にリアルタイムで生じる。その結果、出力信号112が治療部位121における近似温度の変化を示すと、ディスプレイ107上に生成された画像140が変化してこの近似温度の変化を示す。同様に、作動モードの変化を示す出力信号112の変化は、画像140内に生成された作動モード情報144の変化をもたらす。それらの温度及び/又は作動モードの変化に基づいて、医師は、レーザ手順を続けるのに必要があると認める時はリアルタイムで補償することができる。例えば、医師は、処置を行っている方法を変更することができ(すなわち、ターゲット物体120からファイバ先端部の距離を変更することができるなど)、又はレーザデバイスの作動入力を変更することができ、すなわち、医師は、レーザデバイスの出力を増加させるか又は低減することができ、又は医師は、レーザパルス幅、繰返し速度、変調、波長、その他を変更することができる。
【0047】
幾つかの実施形態では、画像140は、図8に示すように温度情報のグラフィック表示を含む。例えば、温度情報は、棒グラフ142の形態で画像140に提示することができる。治療部位121における比較的低い近似温度は、比較的短い棒により示され、治療部位121における比較的高い近似温度は、比較的高い棒により示される。幾つかの例示の実施形態では、温度情報を示すグラフィック表示は、時間と共に治療部位又はターゲット物体における近似温度を提示する折れ線グラフを含むことができる。
【0048】
幾つかの実施形態では、温度情報は、ディスプレイ107上の画像140に英数字で示されている。例えば、画像140の温度情報は、現在の出力信号112により示される近似温度(例えば、100℃)を含むことができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、画像140の温度情報は、図8に示すようにグラフィック及び英数字の両方で表されている。更に、棒グラフ142は、棒グラフに隣接して列挙された現在の近似温度、並びに棒グラフの温度目盛を含むことができる。
【0050】
幾つかの実施形態では、システム100は、上述の異なるレーザ治療(すなわち、蒸発及び凝固)又は任意その他のものに各々が対応する少なくとも2つの異なる作動モードで作動するように構成される。幾つかの実施形態では、システム100は、コントローラ108を使用して出力信号112に基づいてレーザエネルギ110によって実施されている作動モード及びレーザ治療を決定する。
【0051】
幾つかの実施形態では、システム100により識別可能なレーザ治療及び作動モードの各々は、上側近似温度及び下側近似温度によって境界付けられた対応する近似温度範囲を有する。幾つかの実施形態では、システム100の作動モードの各々の近似温度範囲は重ならない。幾つかの実施形態では、システム100のメモリ132又は他のメモリは、出力信号112により示される近似温度のマッピング及びコントローラ108によってアクセス可能な対応する作動モード又はレーザ治療を含む。
【0052】
作動中に、コントローラ108は、出力信号112により示される近似温度を上述のようにメモリ132に格納することができるシステム100のレーザ治療又は作動モードの各々に関連付けられた近似温度範囲と比較することによってレーザ治療部位121で行われているレーザ治療を決定する。出力信号112により示される近似温度が、システム100によってモニタされているレーザ治療の近似温度範囲のうちの1つに含まれる時に、そのレーザ治療は、レーザ治療部位121で現在行われているレーザ治療であると決定される。現在の作動モード又はレーザ治療を示す作動モード情報は、次に、コントローラ108を使用してディスプレイ107上の画像140にリアルタイムで提示することができ、医師が処置部位121での条件をそれらが発生じている時に見ることを可能にする。例えば、図8では、作動モード144は蒸発である。幾つかの例示の実施形態では、実施されている作動モード又はレーザ治療を示す画像は、作動モード又はレーザ治療(すなわち、蒸発、凝固、その他)が治療部位で又はターゲット物体上で実施された期間を提示する折れ線グラフ又は他のインジケータを含むことができる。
【0053】
一例示の実施形態では、コントローラ108は、出力信号112に基づいて、システム100が、レーザ治療部位で行われているレーザ治療が凝固治療である凝固モードにあるか否かを決定するように構成される。凝固治療は、レーザ治療部位でレーザエネルギ110に露出された血液を凝固させる。別の例示の実施形態では、コントローラ108は、出力信号112に基づいて、システム100が、レーザ治療部位で行われているレーザ治療が蒸発治療である蒸発モードにあるか否かを決定するように構成される。蒸発治療は、レーザ治療部位におけるレーザエネルギ110への露出に応答して組織、血液、又は他のターゲット物体120を蒸発させる。他の実施形態は、出力信号112を使用するコントローラ108によるシステム100の他の作動モード及びレーザ治療の識別に関わるものである。更に別の例示の実施形態では、コントローラ108は、システムが、図8の作動モード144により示すように凝固モードであるか又は蒸発モードであるかを決定するように構成される。
【0054】
幾つかの実施形態では、凝固作動モードは、約40〜70℃の間の近似温度範囲を有する。幾つかの実施形態では、蒸発レーザ治療がレーザ治療部位に実施されているシステム100の蒸発モードは、約80〜150℃の間の近似温度範囲を有する。
【0055】
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、出力信号112を時間ベースの信号から周波数ベースの信号に変換するように構成される。これは、システム100が電磁エネルギフィードバック114からより多くの情報を取り出すことを可能にすることができる。信号変換は、周波数解析器を使用する出力信号112の周波数解析を通して又は出力信号112へのフーリエ変換の適用を通して達成することができる。
【0056】
幾つかの実施形態では、周波数ベースの出力信号112を使用して、レーザ治療部位121で行われているレーザ治療を識別することができる。例えば、コントローラ108は、周波数ベースの出力信号112に基づいて、システム100が凝固モードで作動しているか又は蒸発モードで作動しているかを決定することができる。幾つかの実施形態では、凝固治療は、周波数ベースの出力信号112が、凝固中に治療部位121において気泡又はデブリが生成されていないので比較的安定であるより低い周波数成分を含む時に示される。蒸発治療中には、組織デブリ及び気泡が治療部位で形成する場合があり、それらは、ファイバ先端部116から収集されるレーザエネルギフィードバック114を乱すことになる。この妨害は、凝固治療に対応する周波数ベースの信号に見いだされるものよりも周波数ベースの出力信号が安定性に劣りかつより高い周波数成分を有するように現れる。すなわち、幾つかの実施形態では、コントローラ108は、電磁エネルギフィードバック114に応答して生成された周波数ベースの出力信号の解析に基づいて異なる作動モードを区別することができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、画像140の作動モード情報は、システム100の現在の作動モードを示す英数字及び/又はグラフィック情報を含む。幾つかの実施形態では、英数字情報は、画像140の144に示すように、現在の作動モード又はレーザ治療(例えば、蒸発)の一覧を含む。
【0058】
幾つかの実施形態では、現在の作動モード又はレーザ治療を示す画像140内のグラフィック情報は、図8に示すように、各作動モードに対する下側近似温度境界146及び上側近似温度境界148を含む。幾つかの実施形態では、棒グラフ142のような温度情報は、図8に示すように、境界146及び148に対して近似温度を示している。
【0059】
幾つかの実施形態では、画像140内の作動モード情報は、現在の作動モードに対応する色を有するグラフィック表示を含む。例えば、レーザ治療部位121で行われているレーザ治療が凝固治療であることを出力信号112に対応する近似温度が示す時に、画像140内の作動モード情報は、凝固モードに対応する色を有するグラフィック画像を含む。同様に、蒸発治療が治療部位121に実施されていることを出力信号112が示す時に、コントローラ108は、作動の蒸発作動モードに対応する色のグラフィック画像を有する画像140を生成する。結果として医師は、ディスプレイ107上の画像140に表示されている色に基づいて現在行われているレーザ治療を迅速に決定することができる。この色は、例えば、棒グラフ142の強調表示、作動モードの一覧、近似温度の表示、画像140の背景として、又は別の好ましい方式で提示することができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、システム100によって実施されるレーザ治療モードの近似温度範囲の各々は、レーザ治療を行うのに適切な近似温度に対応するターゲット近似温度範囲を有する。例えば、凝固レーザ治療は、約50〜60℃のターゲット近似温度範囲で最も効率的であると考えられ、蒸発レーザ治療は、約100〜120℃のターゲット近似温度範囲で最も効率的に実施することができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、画像140内に生成される作動モード情報は、作動モードのうちの少なくとも1つに対するターゲット近似温度範囲を示す。幾つかの実施形態では、モード又はレーザ治療に対するターゲット近似温度範囲は、図8に示すように、ターゲット近似温度範囲の下側近似温度境界146’及び上側近似温度境界148’によって画像140内にグラフィックに提示される。
【0062】
幾つかの実施形態では、各作動モードに対する作動モード情報(すなわち、凝固又は蒸発)は、画像140内に生成されて作動モードを示すことができる少なくとも2つの色を含む。各作動モードに対する色のうちの1つは、出力信号112により示される近似温度が作動モードの近似温度範囲にあるが、作動モードに対するターゲット近似温度範囲にはないことを示している(すなわち、境界線146’及び148’の外側であるが境界線146及び148内である)。第2の色を使用して、出力信号112により示される近似温度が、作動モードに対するターゲット近似温度範囲にあることを示している(すなわち、境界146’と148’の間にある)。上述のように、色は、棒グラフ142の強調表示、作動モードの一覧、近似温度の表示、画像140の背景として、又は別の好ましい方式で提示することができる。
【0063】
幾つかの実施形態では、画像140内の作動モード情報は、出力信号112により示される近似温度と作動モードの近似温度境界146又は148のうちの一方への近似温度の近接性とに基づいて変化する。作動中に、近似温度が作動モードの下側近似温度境界146に向けて上昇すると、画像140内に生成された作動モード情報は、レーザ治療部位における近似温度が作動モードに対応するレーザ治療を行うほど十分に高くないことを示すことができる(以前開示したいずれかの方式において英数字で及び/又はグラフィックに)。近似温度が作動モードの下側近似温度境界まで上昇すると、画像140内に生成された作動モード情報は、レーザ治療が実施されていることを示す(以前開示したいずれかの方式において英数字で及び/又はグラフィックに)。近似温度が更に作動モードに対するターゲット近似温度範囲へと上昇すると、画像140内の作動モード情報は、近似温度が作動モードに対するターゲット近似温度範囲にあることを示すことができる(以前開示したいずれかの方式において英数字で及び/又はグラフィックに)。温度が上昇してターゲット近似温度範囲の上側境界148’を超えると、画像140内に生成される作動モード情報は、作動モードに関連付けられたレーザ治療が、依然としてレーザ治療部位で実施されているが、近似温度が、もはやターゲット近似温度範囲にないことを示すことができる(以前開示したいずれかの方式において英数字で及び/又はグラフィックに)。近似温度が作動モードに対する上側近似温度境界148を超える時に、画像140内に生成される作動モード情報は、レーザ治療がもはや実施されていないことを示す(以前開示したいずれかの方式において英数字で及び/又はグラフィックに)。
【0064】
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、メモリ132に格納されたレーザファイバ104情報を使用されている現在のファイバ104からの情報と比較することにより、レーザ治療部位121において実施されている特定のレーザ治療に使用されているファイバ104のタイプを決定する。メモリ132はまた、システム100と共に使用することができる各レーザファイバ104に対する作動パラメータを含むことができる。従って、コントローラ108は、使用されているレーザファイバ104に対する格納された安全な作動パラメータをレーザ治療を行うのに使用中のレーザファイバ104に対する作動情報と比較するように構成することができる。使用中のレーザファイバ104の作動情報(すなわち、ファイバ先端部温度)が満足できる作動温度の範囲外である場合に、コントローラ108は、システムを自動的に遮断し、又はレーザファイバ104への損傷を防止するためにレーザ出力を低減するなどの他のアクションを取ることができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、その遠位端部が図2に示されている内視鏡150内にレーザファイバ104を支持することができる。幾つかの実施形態では、システム100は、その遠位端部が図2に示されている観察ファイバ152を含む。例えば、観察ファイバ152を使用して、治療部位121の画像を取り込み、又は他の機能を実施することができる。
【0066】
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、図8に示すように、観察ファイバ152を通じて受信した画像154をディスプレイ107上に生成するように構成される。幾つかの実施形態では、観察ファイバからの画像154及び出力信号112に基づいてコントローラ108によって生成される画像140は、図8に示すように、ディスプレイ107上に同時に表示することができる。上述のように、出力信号112に基づく画像140は、温度情報及び/又は作動モード情報を含むことができる。
【0067】
幾つかの実施形態では、システム100は、図1に示すように出力デバイス160を含む。幾つかの実施形態では、コントローラ108は、出力信号112に基づいて出力デバイス(例えば、スピーカ)を使用して可聴信号を出力するように構成される。幾つかの実施形態では、可聴信号は、治療部位における近似温度を示す温度情報及び/又は治療部位で行われているレーザ治療を示す作動モード情報を含む。例えば、可聴信号は、近似温度及び/又は作動モードを言葉に示すことができる。幾つかの実施形態では、可聴信号は、近似温度及び/又は作動モードを示す発信音を含む。例えば、可聴信号は、温度情報又は作動モード情報を示すピッチ、振幅、又はパターンを有することができる。幾つかの実施形態では、可聴信号のピッチ、振幅、又はパターンは、出力信号112により示される近似温度の変化に応答して変化する。幾つかの実施形態では、可聴信号は、どの作動モード又はレーザ治療が実施されているか、及び/又はそのようなレーザ治療がターゲット近似温度範囲のいずれかの内側にあるか否かを示す言葉表示、ピッチ、振幅、又はパターンを含むことができる。
【0068】
幾つかの実施形態では、システムは、医師が使用してレーザ源102から放出されたレーザエネルギ110を制御することができる入力デバイス162を含む。幾つかの実施形態では、入力デバイスは、医師がレーザ源102によって発生されるレーザエネルギ110の出力のレベルを調節することを可能にするダイヤル、キーパッド、タッチスクリーン、又は他の適切な入力デバイスを含む。レーザエネルギの出力のこの調節は、電源164の制御、シャッター機構165の制御、レーザエネルギ110の変調、レーザエネルギ110のデューティサイクルの調節、レーザ源102内のレーザ共振器のレーザ利得媒体への入力光の出力の調節、又はレーザ源102から出力されたレーザエネルギ110の出力を修正する他の従来の調節を含むことができる。幾つかの実施形態では、入力デバイス102はまた、医師がレーザパルス幅、繰返し速度、変調、及び/又は波長を調節することを可能にする。
【0069】
幾つかの実施形態では、システム100は、医師がシステム100を作動させたいと思う望ましい近似温度又は作動モードを維持するように作動する。幾つかの実施形態では、医師は、入力デバイス162を通じて望ましい温度又は作動モードを入力する。幾つかの実施形態では、コントローラ108は、レーザ源102から出力されるレーザエネルギ110を出力信号112に基づいて自動的に調節してレーザ治療部位121における近似温度を医師が設定する望ましい温度又はその近くに維持し、レーザ治療部位121における近似温度を医師が選択する望ましい作動モードに関連付けられた近似温度の範囲に維持し、又は望ましいレーザ治療モード、すなわち、蒸発又は凝固を維持するようにレーザ源102を制御する。レーザエネルギ110の出力の調節は、レーザエネルギのデューティサイクルの調節、レーザエネルギの変調の調節、レーザ源102のレーザ共振器のレーザ利得媒体への入力光の強度の調節、又は他の技術のような任意適切な技術によって実施することができる。行うことができる追加の調節は、以下に限定されるものではないが、レーザパルス幅、繰返し速度、及び/又は波長を含むことができる。
【0070】
図9は、本発明の実施形態による外科レーザシステム100を作動させる方法を示す流れ図である。一般的に、本方法は、本明細書に説明する実施形態のうちの1又は2以上による外科レーザシステム100を使用して患者の治療部位121でレーザ治療を行う段階を伴う。段階の各々は、例えば、メモリ132又は他の位置に格納されたプログラム命令の実行に応答してコントローラ108を使用して実施することができる。
【0071】
本方法の200において、レーザ源102を使用してレーザエネルギ110を発生させる。202において、レーザエネルギ110は、ファイバ104を通じて治療部位121に放出される。204において、電磁エネルギフィードバック114が、光検出器106に送出される。206において、電磁エネルギフィードバック114に応答して光検出器106によって発生される出力信号112が解析される。208において、画像140が、コントローラ108を使用して出力信号112に基づいてディスプレイ107上に表示される。これに代えて、208において、レーザ源102によって発生されるレーザエネルギ110は、望ましいレーザ治療条件パラメータ、すなわち、治療部位/ターゲット物体での蒸発、凝固、温度などを維持するために、出力信号112に基づいてコントローラ108によって自動的に調節することができる。上記に列挙した方法段階の各々は、開示して上述した外科レーザシステム100の実施形態のうちの1又は2以上を使用して実施することができる。
【0072】
段階206の幾つかの実施形態では、光検出器106からの出力信号112は、コントローラ108を使用してリアルタイムで解析される。幾つかの実施形態では、時間ベースの出力信号112を使用して、治療部位121での近似温度の形態の温度情報を決定する。これは、電磁エネルギフィードバック114の強度をメモリ132又は他の位置に格納されて強度を対応する近似温度にマップするルックアップテーブルと比較することによって達成することができる。
【0073】
段階206の幾つかの実施形態では、出力信号112を使用して、システム100の作動モードの形態の作動モード情報又は処置部位121で行われているレーザ治療を決定する。幾つかの実施形態では、コントローラ108は、出力信号112により示される近似温度又は強度を近似温度又は強度を対応する作動モード又はレーザ治療に相関させるメモリ132又は他の位置に格納されたルックアップテーブルと比較する。
【0074】
幾つかの実施形態では、コントローラ108又は適切な周波数解析器は、出力信号112の周波数解析を実施して周波数ベースの出力信号112を生成するように構成される。幾つかの実施形態では、周波数ベースの出力信号112をコントローラ108によって使用して、上述のように、システム100の作動モード又は治療部位121で行われているレーザ治療を決定する。
【0075】
段階208の幾つかの実施形態では、ディスプレイ107上にコントローラ108によって生成される画像140は、温度情報及び/又は作動モード情報を含む。幾つかの実施形態では、温度情報は、出力信号112に基づく治療部位121での近似温度を示している。幾つかの実施形態では、温度情報は、出力信号112により示される近似温度の英数字及び/又はグラフィック表現を含む。
【0076】
幾つかの実施形態では、画像140に提示される作動モード情報は、システム100の作動モード、及び/又は治療部位121で行われているレーザ治療を示す。幾つかの実施形態では、作動モード情報は、画像140内に英数字で及び/又はグラフィックに表される。
【0077】
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明したが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく形態及び詳細に変更を行うことができることを認識するであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9