(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553031
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】IR反射層間のスズ酸亜鉛系層を有する低放射率コーティングを含む熱処理可能な被覆製品及びその対応方法
(51)【国際特許分類】
C03C 17/36 20060101AFI20190722BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20190722BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20190722BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20190722BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20190722BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
C03C17/36
B32B17/06
B32B7/027
B32B9/00 A
E06B5/00 B
G02B5/26
【請求項の数】45
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-532580(P2016-532580)
(86)(22)【出願日】2014年11月10日
(65)【公表番号】特表2017-506203(P2017-506203A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】US2014064733
(87)【国際公開番号】WO2015077064
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2017年10月20日
(31)【優先権主張番号】14/084,895
(32)【優先日】2013年11月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516046983
【氏名又は名称】サントル・ルクセンブルジョワ・ドゥ・ルシェルシュ・プール・ル・ベール・エ・ラ・セラミック(シーアールブイシー)エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Centre Luxembourgeois de Recherches pour le Verre et la Ceramique (C.R.V.C.) SARL
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(72)【発明者】
【氏名】パロッタ・ピエール
(72)【発明者】
【氏名】フェレイラ・ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ラーゲ・ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】フランク・マーカス
【審査官】
吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0196622(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第102584031(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第101497501(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0202254(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0295330(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0219821(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0237917(US,A1)
【文献】
国際公開第2014/078062(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/034798(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101497500(CN,A)
【文献】
特開平01−301537(JP,A)
【文献】
米国特許第05059295(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/00 − 17/44
B32B 7/027
B32B 9/00
B32B 17/06 − 17/10
E06B 5/00
G02B 5/26 − 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板によって支持されるコーティングを含む被覆製品において、
前記ガラス基板によって支持される第1誘電体層と;
前記ガラス基板によって支持されて少なくとも前記第1誘電体層上に位置する銀を含む第1赤外線(IR)反射層と;
前記銀を含む第1IR反射層上に位置し、これと直接接触しているNi及び/又はCrの酸化物を含む上部接触層と;
前記Ni及び/又はCrの酸化物を含む上部接触層上に位置し、これと直接接触しているスズ酸亜鉛を含む層と;
前記スズ酸亜鉛を含む層上に位置し、これと直接接触しているシリコン窒化物を含む第1層と;
少なくとも前記シリコン窒化物を含む第1層上に位置する銀を含む第2IR反射層と;
少なくとも前記第2IR反射層上に位置するまた他の誘電体層と;
を含み、
前記スズ酸亜鉛を含む層は、Snより多くのZnを含有する、被覆製品。
【請求項2】
前記銀を含む第2IR反射層下に位置し、これと直接接触している亜鉛酸化物を含む層をさらに含む、請求項1に記載の被覆製品。
【請求項3】
前記上部接触層は、NiCrの酸化物を含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項4】
前記第1誘電体層は、シリコン窒化物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項5】
前記また他の誘電体層は、スズ酸化物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項6】
前記シリコン窒化物を含む第1層とシリコン窒化物を含む追加の層との間に位置し、これらと直接接触しているNiCrを含む層をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項7】
前記銀を含む第1IR反射層下に位置し、これと直接接触している亜鉛酸化物を含む層をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項8】
前記コーティングは、銀を含む2つ以下のIR反射層を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項9】
前記スズ酸亜鉛を含む層は、金属含有量に対して、51〜90%Zn及び10〜49%Sn(重量%)を含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項10】
前記スズ酸亜鉛を含む層は、実質的に十分に酸化される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項11】
前記スズ酸亜鉛を含む層は、本質的にスズ酸亜鉛で構成された、請求項1〜10のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項12】
前記コーティングは、シート抵抗(Rs)が3.0Ω/□以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項13】
前記被覆製品は、一体型で測定された可視光線透過率が少なくとも約40%である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項14】
前記被覆製品が熱処理される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項15】
前記スズ酸亜鉛を含む層が前記コーティング内で最も厚い層である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項16】
前記スズ酸亜鉛を含む層は、前記Ni及び/又はCrの酸化物を含む上部接触層より少なくとも5倍さらに厚い、請求項1〜15のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項17】
前記スズ酸亜鉛を含む層は、前記スズ酸亜鉛を含む層上に位置し、これと直接接触しているシリコン窒化物を含む層の少なくとも2倍程厚い、請求項1〜16のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項18】
前記銀を含む第2IR反射層は、前記銀を含む第1IR反射層より少なくとも40オングストロームさらに厚い、請求項1〜17のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項19】
前記スズ酸亜鉛を含む層は、厚さが350〜600オングストロームである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項20】
少なくとも前記また他の誘電体層上に位置する銀を含む第3IR反射層をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項21】
前記コーティングの層は、前記被覆製品が0から30分の全ての期間の間、約650℃の熱処理時5.0以下の透過率ΔE*値を有するようにする物質及び厚さである、請求項1〜20のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項22】
前記コーティングの層は、前記被覆製品が0から30分の全ての期間の間、約650℃の熱処理時5.0以下のガラス側反射率ΔE*値を有するようにする物質及び厚さである、請求項1〜21のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項23】
前記コーティングの層は、前記被覆製品が0から24分の全ての期間の間、約650℃の熱処理時4.0以下のガラス側反射率ΔE*値を有するようにする物質及び厚さである、請求項1〜22のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項24】
前記コーティングの層は、前記被覆製品が0から24分の全ての期間の間、約650℃の熱処理時4.0以下の透過率ΔE*値を有するようにする物質及び厚さである、請求項1〜23のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項25】
前記コーティングの層は、前記被覆製品が0から30分の全ての期間の間、約650℃の熱処理時0.60%以下のヘイズ%を有するようにする物質及び厚さである、請求項1〜24のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項26】
前記コーティングの層は、前記被覆製品の可視光線透過率が実質的に保持され、約650℃の熱処理温度で12から24分の熱処理時間の間で1.0%以下で変化する物質及び厚さである、請求項1〜25のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項27】
焼き戻し処理被覆製品の製造方法として、前記方法は、
ガラス基板によって支持されるコーティングを含む被覆製品において、前記コーティングが前記ガラス基板によって支持される第1誘電体層と、前記ガラス基板によって支持されて少なくとも前記第1誘電体層上に位置する銀を含む第1赤外線(IR)反射層と、前記銀を含む第1IR反射層上に位置し、これと直接接触しているNi及び/又はCrの酸化物を含む上部接触層と、前記Ni及び/又はCrの酸化物を含む上部接触層上に位置し、これと直接接触しているスズ酸亜鉛を含む層と、前記スズ酸亜鉛を含む層上に位置し、これと直接接触しているシリコン窒化物を含む第1層と、少なくとも前記シリコン窒化物を含む第1層上に位置する銀を含む第2IR反射層と、少なくとも前記第2IR反射層上に位置するまた他の誘電体層と、を含む被覆製品を、少なくとも600℃の温度で熱処理する工程を含み、
前記被覆製品の可視光線透過率は、実質的に保持され、前記熱処理の間の12〜24分の熱処理時間の間に1.0%以下で変化する、方法。
【請求項28】
前記被覆製品は、透過率ΔE*値が0から30分の全ての期間の間の熱処理時5.0以下である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記被覆製品は、ガラス側反射率ΔE*値が0から30分の全ての期間の間の熱処理時5.0以下である、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記被覆製品は、ガラス側反射率ΔE*値が0から24分の全ての期間の間、約650℃で熱処理時4.0以下である、請求項27〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記被覆製品は、透過率ΔE*値が0から24分の全ての期間の間の熱処理時4.0以下である、請求項27〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記被覆製品は、ヘイズ%が0から30分の全ての期間の間、約650℃の熱処理時0.60%以下である、請求項27〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記被覆製品は、前記銀を含む第2IR反射層下に位置し、これと直接接触している亜鉛酸化物を含む層をさらに含む、請求項27〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記被覆製品は、前記シリコン窒化物を含む第1層とシリコン窒化物を含む追加の層との間に位置し、これらと直接接触しているNiCrを含む層をさらに含む、請求項27〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記コーティングは、銀を含む2つ以下のIR反射層を有する、請求項27〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記スズ酸亜鉛を含む層は、金属含有量に対して51〜90%Zn及び10〜49%Sn(重量%)を含有する、請求項27〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記スズ酸亜鉛を含む層は、前記コーティング内で最も厚い層である、請求項27〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記銀を含む第2IR反射層は、前記銀を含む第1IR反射層より少なくとも40オングストロームさらに厚い、請求項27〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記スズ酸亜鉛を含む層は、厚さが350〜600オングストロームである、請求項27〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記コーティングは、少なくとも前記また他の誘電体層上に位置する銀を含む第3IR反射層をさらに含む、請求項27〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
焼き戻し被覆製品の製造方法として、
ガラス基板によって支持されるコーティングを含む被覆製品において、前記コーティングは、前記ガラス基板によって支持される第1誘電体層と、前記ガラス基板によって支持されて少なくとも前記第1誘電体層上に位置する銀を含む第1赤外線(IR)反射層と、前記銀を含む第1IR反射層上に位置し、これと直接接触しているNi及び/又はCrの酸化物を含む上部接触層と、前記Ni及び/又はCrの酸化物を含む上部接触層上に位置し、これと直接接触しているスズ酸亜鉛を含む層と、前記スズ酸亜鉛を含む層上に位置し、これと直接接触しているシリコン窒化物を含む第1層と、少なくとも前記シリコン窒化物を含む第1層上に位置する銀を含む第2IR反射層と、少なくとも前記第2IR反射層上に位置するまた他の誘電体層と、を含む、被覆製品を、少なくとも600℃の温度で熱処理する工程、を含み、
前記被覆製品のヘイズ%は、0から30分の全ての熱処理期間の間の熱処理時0.60%以下である、方法。
【請求項42】
ガラス基板によって支持されるコーティングを含む被覆製品において、
前記ガラス基板によって支持される第1誘電体層と;
前記ガラス基板によって支持されて少なくとも前記第1誘電体層上に位置する銀を含む第1赤外線(IR)反射層と;
前記銀を含む第1IR反射層上に位置し、これと直接接触している上部接触層と;
前記上部接触層上に位置し、これと直接接触しているスズ酸亜鉛を含む層と;
前記スズ酸亜鉛を含む層上に位置し、これと直接接触しているシリコン窒化物を含む第1層と;
少なくとも前記シリコン窒化物を含む第1層上に位置する銀を含む第2IR反射層と;
少なくとも前記第2IR反射層上に位置するまた他の誘電体層と;
を含み、
前記スズ酸亜鉛を含む層は、Snより多くのZnを含有する、被覆製品。
【請求項43】
前記銀を含む第2IR反射層下に位置し、これと直接接触している亜鉛酸化物を含む層をさらに含む、請求項42に記載の被覆製品。
【請求項44】
前記上部接触層は、NiCrの酸化物を含む、請求項42に記載の被覆製品。
【請求項45】
前記上部接触層は、Tiを含む、請求項42に記載の被覆製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低放射率(低E)コーティングを含む被覆製品に関する。特定の実施形態において、被覆製品は、熱処理(例えば、焼き戻し処理(thermally tempered)、熱曲げ(heat bent)及び/又は熱強化(heat strengthened))される。本発明の特定の実施形態において、被覆製品は、銀系の赤外線(IR)反射層に近接して(例えば、その上に)提供されるスズ酸亜鉛系層を含み、好ましくはスズ酸亜鉛系層は、第1及び第2銀系のIR反射層間に位置する。特定の実施形態において、スズ酸亜鉛系層は(i)Ni及び/又はCrの又はこれを含む上部接触層及び(ii)シリコン窒化物の又はこれを含む層間に提供され、かつ、これらと接触しており、例えば、ガラス基板からの層スタックは、ガラス...Ag/NiCrO
x/ZnSnO/SiN...Ag...を含む層を含んでもよい。本発明の様々な実施形態に係る低放射率コーティングは、例えば、2つ又は3つの銀系IR反射層を有してもよい。驚くべきことにスズ酸亜鉛系層を提供すると、熱処理(HT)時に向上した熱安定性を有する被覆製品を形成することを発見した。本発明の特定の実施形態に係る被覆製品は、熱処理してもしなくてもよく、例示の用途において一体型又はIG窓ユニットなどの窓に用いてもよい。
【背景技術】
【0002】
当該分野において、被覆製品が断熱ガラス(IG)窓ユニットなどの窓の用途に使用されることは知られている。特定の場合においては、強化、曲げ、などの目的のためには、このような被覆製品の熱処理(例えば、焼き戻し処理、熱曲げ、及び/又は熱強化)が好ましいことが分かる。一般的に被覆製品の熱処理(HT)は、少なくとも580℃、さらに好ましくは少なくとも約600℃、より好ましくは少なくとも620℃の温度の利用を必要とする。このような高温(例えば、約5〜10分以上)では、しばしばコーティングが破壊され、かつ/又は予測不可能な方法で劣化若しくは変化する。したがって、HTが要求される場合、コーティングを大きく損傷させない予測可能な方法で、このような熱処理(例えば、熱強化)に耐えることができるコーティングが好ましい。
【0003】
強化被覆ガラス製品を生産するために、低放射率コーティングのような建築用コーティングは、一般的に熱処理を必要とする。強化ガラスは、非強化ガラスに比べて高いため、強化被覆製品は、一般的に必要とする場合にだけ用いられる。したがって、市場で提供される2つの製品(熱処理された製品及び熱処理されていない製品)、すなわち特定色及び熱性能を有する実際に「コーティングされた」(AC)製品、また、熱強化などの熱処理後の性能及び色に対してAC製品に実質的に一致する熱処理(HT)メイト(mate)製品が好ましい。ACとHTメイトの間の色整合は、2つの製品が特定の方法で並べて適用されるときに実質的又は本質的に肉眼で区別できないように十分に近いことが好ましい。これは、(a)AC及びHT製品が同一又は類似のコーティングを有する場合、(b)被覆製品が熱処理され得る場合(例えば、焼き戻し処理)及び(c)熱処理された被覆製品が低いΔE
*値(例えば、5.0以下、さらに好ましくは4.0以下のΔE
*値)の場合に達成される。HTに起因する低ΔE
*値は、例えば、被覆製品の色が、HTバージョンが被覆製品の非HTバージョンに実質的に一致するように、HTによって大きく変化しないことを示す。
【0004】
用語ΔE
*(及びΔE)は、当該分野でよく理解され、Hunter et.al., The Measurement of Appearance、2nd Ed.Cptr.9, page 162 et seq.[John Wiley & Sons、1987]に報告されるだけでなく、ASTM−2244−93でΔE
*(及びΔE)を決定するための様々な技術と共に報告される。当技術分野において使用されるように、ΔE
*(及びΔE)は、熱処理後又は熱処理による製品の反射率及び/又は透過率(従って、色の出現)の変化(又は欠如)を適切に表現する方法である。ΔEは、「ab」技術又はHunter技術(下付文字「H」を用いて指定される)によって算出されてもよい。ΔEは、Hunter Lab L,a,bスケール(又はL
h,a
h,b
h)に対応する。同様に、ΔE
*は、CIE LAB Scale L
*,a
*,b
*に対応する。これらはいずれも有用なものとして考慮され、本発明の目的で、等価なものである。例えば、前記参照されたHunter et.al.に報告されたように、L
*,a
*,b
*スケールとして公知の長方形座標/スケール技術(CIE LAB 1976)が用いられてもよく、L
*は(CIE 1976)明度ユニットである。a
*は(CIE 1976)赤緑色ユニットであり、b
*は(CIE 1976)黄青色ユニットである。L
*o a
*o b
*oとL
*1a
*1b
*1の間の距離ΔE
*は、[(ΔL
*)
2+(Δa
*)
2+(Δb
*)
2]
1/2で、ΔL
*=L
*1−L
*0;Δa
*=a
*1−a
*0;Δb
*=b
*1−b
*0;下付文字「o」は、熱処理前のコーティング(被覆製品)を示し、下付文字「l」は、熱処理後のコーティング(被覆製品)を示し;使用された数値(例えば、a
*,b
*,L
*)は、前記(CIE LAB 1976)L
*,a
*,b
*座標技術によって算出される。例えば、ガラス側反射率ΔE
*が測定されれば、ガラス側反射率a
*、b
*及びL
*が用いられる。同様に、ΔEは、前記ΔE
*の式(すなわち、[ΔE
*=(ΔL
*)
2+(Δa
*)
2+(Δb
*)
2]
1/2)で、a
*,b
*,L
*をHunter Lab値(a
h,b
h,L
h)に交換することによって算出されてもよい。上述したのと同一の概念のΔE
*を用いる任意の他の技術によって算出されたものに転換される場合の同等の数値も、本発明の範囲内及びΔE
*の定量化の範囲内である。ΔE
*はまた、参照で本明細書に含まれた米国特許第7,964,284号に定義される。
【0005】
HT処理の間、コーティングされたガラスは、650℃〜750℃の間の温度まで加熱した後、高速で冷却されて固有応力を形成し、さらに高い強度になり、破壊時に微細な破壊パターンになり得る。このような高温処理は、コーティング内で異なる工程(例えば、酸化、再結晶、拡散、体積変化、応力増加、又は緩和など)を起こして被覆製品の色値(color value)を変化させる傾向がある。したがって、HT工程により生じる、コーティング内での変化(例えば、a
*及び/又はb
*カラー値の変化によって示される色変化)は、HT時間変化によって予測可能なままであることが好ましい。
【0006】
以下に説明するように、HTバージョンは、適切な異なる期間の間に熱処理されてもよいが、AC及びHTメイトが色に対して実質的に一致する(すなわち、熱処理されなかったAC製品及び熱処理されたHT製品と実質的に一致する)ことが好ましい。実際、低放射率コーティングは、4mm〜12mmの様々な異なるガラスの厚さに適用され、このようなそれぞれのガラスの厚さは、必要な強化ガラス特性を達成するために、HT工程の間に異なる加熱計画を必要とする。一般に、厚いガラスは、長い時間及び/又は高温で加熱する必要があり、低速で冷却される。被覆製品は、一般的に炉の異なるモデル及び形態、例えば、照射(irradiation)炉、対流炉、又はハイブリッドモデルを用いる様々な消費者に販売される。このようなそれぞれの炉形態において、ガラス及びコーティングでの熱伝達が互いに異なる。
【0007】
したがって、適切な異なる炉形態及びガラスの厚さに関係なく、HT製品のHT工程後に、HT製品が、色に対して類似の又は同一のコーティングを有するアニールされた製品及び非強化製品と実質的に一致する熱安定製品を達成することが好ましい。すなわち、HT製品が特定のHT期間、例えば、10分、16分、及び/又は24分のうち1つ以上内に低いΔE
*値、例えば、5.0以下、さらに好ましくは4.0以下のΔE
*値を実現することが好ましい。
【0008】
HT工程のうちにコーティング内で発生する上述した工程により、一部性能及び色変化が回避されることはない。しかし、色変化が発生する場合、炉形態に関係がなく被覆製品がHT工程の増加した強化期間にわたる色変化に対して実質的に安定したままであることができるように、熱処理された製品が実質的にHT工程の初期の16分程以内に最終的な所望の色値に到達するように、多くのこのような変化が、HT工程の初期又はHT工程の短期間内に(例えば、HTの初期8〜16分、又は、初期10〜12分、又は10〜16分)発生することが好ましい。勿論、HT期間は、場合によって16分未満である。例えば、24分の例示のHT工程を仮定した場合、被覆製品が約16分から24分にわたる色変化に対して実質的に安定したままであることができるように、被覆製品は、実質的にHT工程の初期16分程以内に最終的な好ましい色値を実現することが好ましい。別の言い方をすれば、被覆製品は、24分熱処理工程の0〜16分の期間よりHTの16〜24分の期間に低いΔE
*値を実現することが好ましい。したがって、例えば、同一のコーティングを含む一対の焼き戻し処理製品は、1つが12分間熱処理されて、他の1つが20分間熱処理される場合に、実質的に一致する。
【0009】
特定の状況において、被覆製品の設計者は、所望の可視光線透過率、所望の色、低放射率(又は放射強度)及び低シート抵抗(R
s)の組合せを試みる。低放射率(低E)及び低シート抵抗特徴は、このような被覆製品が、相当量のIR放射を遮断して、例えば車両又は建物内の好ましくない加熱を低減することを許容する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の例示的な実施形態は、ガラス基板によって支持された低放射率(低E)コーティングを含む被覆製品に関する。被覆製品は、熱処理(例えば、焼き戻し処理、熱曲げ、及び/又は熱強化)されてもよい。本発明の特定の実施形態において、被覆製品は、銀系の赤外線(IR)反射層の上に提供されるスズ酸亜鉛系層を含み、好ましくはスズ酸亜鉛系層は、第1及び第2銀系のIR反射層間に位置する。特定の実施形態において、スズ酸亜鉛系層は(i)Ni及び/又はCrの又はこれを含む上部接触層及び(ii)シリコン窒化物の又はこれを含む層間に提供され、かつ、これらと接触しており、例えば、ガラス基板からの層のスタックは、ガラス...Ag/NiCrO
x/ZnSnO/SiN...Ag...を含む層を含んでもよい。本発明の様々な実施形態に係る低放射率コーティングは、例えば、2つ又は3つの銀系IR反射層を有してもよい。驚くべきことに、スズ酸亜鉛系層を提供すると、熱処理(HT)時に向上した熱安定性を有する被覆製品を形成することを発見した。このような被覆製品は、熱処理される場合(例えば、焼き戻し処理される場合)、10分、16分、及び/又は24分のうちの1つ以上などの特定のHT時間内に低いΔE
*値(ガラス側反射率及び/又は透過率)、例えば、5.0以下、さらに好ましくは4.0以下のΔE
*値を実現する。また、驚くべきことにスズ酸亜鉛系層が提供される場合、製品のガラス側反射率及び/又は透過率ΔE
*値が、スズ酸亜鉛系層が存在しない場合(例えば、スズ酸亜鉛系層の代わりにスズ酸化物層がある場合)に比べて、驚くべきことにHT時の所望の方法で減少することが発見された。本発明の特定の実施形態に係る被覆製品は、熱処理してもしなくてもよく、例示の用途において一体型又はIG窓ユニットなどの窓に用いてもよい。
【0011】
したがって、10分、16分、及び/又は24分のうちの1つ以上などの特定のHT時間内に約5.0以下、さらに好ましくは約4.5以下、最も好ましくは約4.0以下のガラス側反射率ΔE
*値を達成するために、(i)所望の可視光線透過率、(ii)良好な耐久性、(iii)所望の着色、(iv)所望の放射率、(v)低ヘイズ、及び/又は(vi)HT時の熱安定性のうちの1つ以上を特徴とする被覆製品を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の特定の実施形態では、ガラス基板によって支持されるコーティングを含む被覆製品において、前記ガラス基板によって支持される第1誘電体層と;前記ガラス基板によって支持されて少なくとも前記第1誘電体層上に位置する銀を含む第1赤外線(IR)反射層と;前記銀を含む第1IR反射層上に位置し、これと直接接触しているNi及び/又はCrの酸化物を含む上部接触層と;前記Ni及び/又はCrの酸化物を含む上部接触層上に位置し、これと直接接触しているスズ酸亜鉛を含む層と;前記スズ酸亜鉛を含む層上に位置し、これと直接接触しているシリコン窒化物を含む第1層と;少なくとも前記シリコン窒化物を含む第1層上に位置する銀を含む第2IR反射層と;少なくとも前記第2IR反射層上に位置するまた他の誘電体層と;を含む、被覆製品が提供される。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、焼き戻し処理被覆製品の製造方法において、前記方法は、ガラス基板によって支持されるコーティングを含む被覆製品であり、前記コーティングが前記ガラス基板によって支持される第1誘電体層と;前記ガラス基板によって支持されて少なくとも前記第1誘電体層上に位置する銀を含む第1赤外線(IR)反射層と;前記銀を含む第1IR反射層上に位置し、これと直接接触しているNi及び/又はCrの酸化物を含む上部接触層と;前記Ni及び/又はCrの酸化物を含む上部接触層上に位置し、これと直接接触しているスズ酸亜鉛を含む層と;前記スズ酸亜鉛を含む層上に位置し、これと直接接触しているシリコン窒化物を含む第1層と;少なくとも前記シリコン窒化物を含む第1層上に位置する銀を含む第2IR反射層と;少なくとも前記第2IR反射層上に位置するまた他の誘電体層と;を含む被覆製品を、少なくとも600℃の温度で熱処理する工程を含み、(i)前記被覆製品の可視光線透過率は、実質的に保持され、前記熱処理の間の12〜24分の熱処理時間の間に1.0%以下で変化し、かつ/又は(ii)被覆製品は、0〜30分の全ての時間の熱処理時に0.60%以下のヘイズ%を有する、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の例示的な実施形態に係る被覆製品の断面図である。
【
図2】本発明のまた別の例示的な実施形態に係る被覆製品の断面図である。
【
図3】(IG窓ユニットの表面2上の)本発明の例示的な実施形態に係るIG窓ユニット内に提供された
図1又は
図2の被覆製品の断面図である。
【
図4】実施形態1対比較例(CE)をプロットした熱処理(HT)時間(単位:分)、対可視光線透過率(TY%)グラフである。
【
図5】実施形態1対比較例(CE)をプロットした熱処理(HT)時間(単位:分)、対ヘイズ%グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
具体的に伴う図面を参照するとき、同一の符号は、様々な図面/実施形態を通して同一の部分を示す。
【0016】
本発明の特定の実施形態に係る被覆製品は、断熱ガラス(IG)窓ユニット、車両の窓、又は、別の形態の窓に対して用いてもよい。例えば、本明細書でのコーティングは、例えば、
図3に示したIG窓ユニットの表面#2に用いてもよい。本発明の特定の実施形態に係る被覆製品は、(i)所望の可視光線透過率、(ii)良好な耐久性、(iii)所望の着色、(iv)所望の放射率、(v)低ヘイズ、及び/又は(vi)HT時の熱安定性のうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ全てを特徴とする。
【0017】
本発明の例示的な実施形態は、ガラス基板1によって支持された低放射率(低E)コーティング30を含む被覆製品に関する。コーティング30は、スパッタ蒸着できる。被覆製品は、熱処理(例えば、焼き戻し処理、熱曲げ、及び/又は熱強化)できる。本発明の特定の実施形態において、被覆製品は、銀系の赤外線(IR)反射層9の上に提供されるスズ酸亜鉛系層14を含み、好ましくはスズ酸亜鉛系層14は、第1及び第2銀系のIR反射層(9,19)の間に位置する。特定の実施形態において、スズ酸亜鉛系層14は(i)Ni及び/又はCrの又はこれを含む上部接触層11、及び(ii)シリコン窒化物の又はこれを含む層15の間に提供され、かつ、これらと接触しており、例えば、ガラス基板1から順にIR反射層を含み、かつ/又はIR反射層間の層スタックは、ガラス...Ag/NiCrO
x/ZnSnO/SiN...Ag...を含む層を含んでもよい(例えば、
図1及び
図2の層(9,11,14,15)を参照)。本発明の様々な実施形態に係る低放射率コーティングは、例えば、2つ又は3つの銀系IR反射層を有してもよい。
【0018】
また、驚くべきことに、スズ酸亜鉛系層14の提供は、HT時に向上した熱安定性を有する被覆製品を形成することを発見した。本発明の実施形態に係る被覆製品は、熱処理される場合(例えば、焼き戻し処理される場合)、10分、16分、及び/又は24分のうちの1つ以上などの特定のHT時間内に、低いΔE
*値(ガラス側反射率及び/又は透過率)、例えば、5.0以下、さらに好ましくは4.0以下のΔE
*値を実現する。驚くべきことに、スズ酸亜鉛系層14の提供により、製品のガラス側反射率及び/又は透過率ΔE
*値が、驚くべきことに、スズ酸亜鉛系層14が存在しない場合(例えば、スズ酸亜鉛系層14の代わりにスズ酸化物層がある場合)に比べてHT時に所望の方法で減少することが発見された。
【0019】
例示的な実施形態において、誘電体スズ酸亜鉛(例えば、ZnSnO、Zn
2SnO
4、など)系層14は、Sn重量より多いZnを含んでもよい。本発明の特定の実施形態において、例えば、スズ酸亜鉛系層14の金属含量は約51〜90%Zn及び約10〜49%Sn、さらに好ましくは約51〜70%Zn及び約30〜49%Snを含み、一例として約52%Zn及び約48%Sn(重量%、層内の酸素と共に)を含む。したがって、本発明の特定の実施形態において、例えば、スズ酸亜鉛系層は、約52%Zn及び約48%Snを含む金属ターゲットを用いてスパッタ蒸着できる。任意に、スズ酸亜鉛系層14は、Alなどのその他の金属でドープしてもよい。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、コーティング30は、二重銀スタックを含むが(例えば、
図1参照)、本発明は、全ての例においてそのようには限定されない(例えば、特定の例において、3つの銀系層は、例えば、
図2に示すように用いることができる)。
図1及び
図2は、一体型形態の被覆製品を示すものと認識される。例えば、本発明の特定の実施形態において、複数のIR反射層(例えば、2つ又は3つの離隔した銀系層)を有する熱処理及び/又は非HT被覆製品は、3.0Ω/□以下(さらに好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下、及び最も好ましくは1.6Ω/□以下)のシート抵抗(R
s)を実現してもよい。特定の実施形態において、HT又は非HT形態の一体型形態で測定された本明細書の被覆製品は、少なくとも約40%、さらに好ましくは少なくとも約50%、さらに好ましくは少なくとも約55%、最も好ましくは少なくとも約60%の可視光線透過率(Ill.C,2 degree)を実現してもよい。
【0021】
本明細書に使用された「熱処理」及び「熱処理すること」は、ガラス含有被覆製品の焼き戻し処理、熱曲げ、及び/又は熱強化を得るために十分な温度まで製品を加熱することを意味する。この定義は、強化、曲げ、及び/又は熱強化を得るために、例えば、少なくとも約580℃、好ましくは少なくとも約600℃の温度でオーブン又は炉で十分な期間の間、被覆製品を加熱することを含む。特定の例において、熱処理は、本明細書で検討された少なくとも約4又は5分以上の間実施されてもよい。
【0022】
図1は、本発明の実施例の非限定的な実施形態による被覆製品の側断面図であり、低放射率コーティング30は、2つの銀系IR反射層(9,19)を有する。被覆製品は、基板1(例えば、厚さが約1.0から10.0mm、さらに好ましくは約1.0から8.0mmである、例えば、約6mmである透明、緑色、青銅色、又は、青緑色のガラス基板)及び基板1上に直接又は間接的に提供されるコーティング(又は層システム)30を含む。コーティング(又は層システム)30は、例えば、Si
3N
4であってもよい、ヘイズ減少用Siリッチ型の、又は本発明の他の実施形態において任意の異なる適切な化学量論の下部のシリコン窒化物を含む透明な誘電体層3、第1下部接触層7(これは、IR反射層9と接触する)、第1導電性(好ましくは金属性又は実質的に金属性)赤外線(IR)反射層9、第1上部接触層11(IR反射層9に接触)、前記接触層11上にあり、これと接触するスズ酸亜鉛の又はこれを含む透明な誘電体層14、一部の酸貨物を含んでも含まなくてもよい透明な誘電体シリコン窒化物を含む層(15a,15b)、NiCr、NiCrO
xなどの又はこれを含む選択的吸収剤及び/又はバリア層16、第2下部接触層17(IR反射層19に接触)、第2導電性(好ましくは金属性又は実質的に金属性)IR反射層19、第2上部接触層21(IR反射層19に接触する)、透明な誘電体層23、及び透明なシリコン窒化物を含む誘電体層25を含む。バリア/吸収剤層16が存在しなければ、2つの窒化ケイ素系層(15a,15b)は、シリコン窒化物の又はこれを含む単一層15を形成するために結合されてもよい。「接触」層7,11,17,21は、各々少なくとも1つのIR反射層(例えば、Ag系層)に接触する。前記層(3〜25)は、ガラス又はプラスチック基板1の上に提供されるスパッタ蒸着された低E(すなわち、低放射率)コーティング30を構成する。
【0023】
図2は、本発明のまた他の例示的な実施形態に係る被覆製品の側断面図である。
図2は、三重銀コーティング30を示す一方、
図1は、二重銀コーティング30を示す。
図2の実施形態は、参照符号で示されたように、
図1の実施形態で示された多くの層を含む。
図2の実施形態の低放射率コーティング30は、
図1の実施形態に比べて、チタン酸化物(例えば、TiO
2)の又はこれを含む透明な誘電体層5、亜鉛酸化物の又はこれを含む透明な誘電体下部接触層27、NiCr、NiCrO
xなどの又はこれを含む透明な第3下部接触層28、第3導電性(好ましくは金属性又は実質的に金属性)IR反射層29、第3上部接触層31(層29に接触)、透明な誘電体層33、及び透明なシリコン窒化物を含む誘電体層35をさらに含む。
図1の実施形態からのNiCr又はNiCrO
xバリア層16は、
図2の実施形態で存在する必要はない。
【0024】
図1及び
図2の実施形態の各々において、スズ酸化物層33を層14と類似のスズ酸亜鉛層に交換してスズ酸亜鉛層が接触層31上にあり、これと直接接触するようにしてもよい。これは、前記説明されたものと同様の理由で有利である。
【0025】
一体型の例として、被覆製品は、
図1及び
図2で示すように1つのガラス基板1だけを含む。しかし、本明細書に記載した一体型被覆製品は、積層された車両用フロントガラス、IG窓ユニットなどの装置に用いてもよい。IG窓ユニットに対して、IG窓ユニットは、少なくとも2つの離隔したガラス基板を含んでもよい。例示のIG窓ユニットは、例えば、米国特許文献第2004/0005467号に図示して記載され、その全体内容は、参照として本明細書に含まれている。
図3には、例示のIG窓ユニットを示す。これは、
図1又は
図2に示したコーティングされたガラス基板1が、また他のガラス基板2との間に限定された間隙50を有するように、スペーサ、シール剤40などによって、また他のガラス基板2に結合されたものを含む。IG窓ユニット実施形態で基板の間の間隙50は、特定の例において、アルゴン(Ar)のような気体又はAr気体と空気の混合物で充填してもよい。例示のIG窓ユニットは、一対の離隔した透明なガラス基板(1,2)を含み、それぞれの厚さは、約3から8mmであり(例えば、厚さ約6mm)、2つの基板のうちの1つは、特定の例において、コーティング30でコーティングされ、基板の間の間隙50は約5mmから30mm、好ましくは約10から20mm、最も好ましくは約16mmであってもよい。特定の例において、低放射率コーティング30は、間隙に対向するいずれかの基板の内側表面に提供される(コーティングは、間隙50に対向する
図3に示した基板1の内側の主面上に配置されるが、代わりに間隙50に対向する基板2の内側の主面上に配置されてもよい)。基板1又は基板2は、建物の外側におけるIG窓ユニットの最も外側の基板であってもよい(例えば、
図3に示した基板1は、建物の外側に最も近い基板で、低放射率コーティング30は、IG窓ユニットの表面#2の上に提供される)。本発明の好ましい実施形態において、コーティング30は、
図3に示したようにIG窓ユニットの表面#2に提供される。本発明の特定の実施形態において、
図1又は
図2のコーティング30は、3重ガラス(glazed)IG窓ユニットに用いてもよく、例えば、このような3重ガラスIG窓ユニットの表面#2又はこのようなユニットの任意のその他の適切な表面に位置する。
【0026】
本発明の特定の実施形態において、誘電体層(3,15(15a,15bを含む),25,35)は、シリコン窒化物の又はこれを含んでもよい。シリコン窒化物層(3,15,25,35)は、特に被覆製品の熱処理(例えば、熱強化など)能力を向上して、一部の酸素を含んでも含まなくてもよい。層(3,15,25及び/又は35)のシリコン窒化物は、化学量論形態のもの(すなわち、Si
3N
4)や、本発明の異なる実施形態でSiリッチ型のものであってもよい。例えば、スズ酸亜鉛14と結合されたSiリッチシリコン窒化物層(3及び/又は15及び/又は25)は、銀の下に特定の異なる物質があるのに比べて、シート抵抗が減少する方法で銀が(例えば、スパッタリングなどによって)蒸着されてもよい。また、Siリッチシリコン窒化物層で遊離Si(free−Si)が存在すれば、熱処理(HT)中にガラス1から外側に移動するナトリウム(Na)のような特定の原子が銀に到達して損傷させる前に、Siリッチシリコン窒化物を含む層によって特定の原子が効率的に遮断されてもよい。
【0027】
特定の実施形態において、Siリッチシリコン窒化物が層3,15,25の1つ以上に使用されれば、蒸着されたSiリッチシリコン窒化物層は、Si
xN
y層を特徴として、x/yは、0.76から1.5、さらに好ましくは0.8から1.4、より好ましくは0.85から1.2であってもよい。また、特定の実施形態において、HT前及び/又は後に、SiリッチSi
xN
y層は、屈折率「n」が少なくとも2.05、さらに好ましくは少なくとも2.07、場合により少なくとも2.10(例えば、632nm)である(注:使用できる化学量論Si
3N
4は、インデックスnが2.02から2.04である)。特定の実施形態において、驚くべきことに、向上した熱安定性は、蒸着されたSiリッチSi
xN
y層の屈折率「n」が少なくとも2.10、さらに好ましくは少なくとも2.20、最も好ましくは2.2から2.4である場合に特に実現可能であることが発見された。また、特定の実施形態でSiリッチSi
xN
y層は、消滅係数「k」が少なくとも0.001、さらに好ましくは少なくとも0.003である(注:化学量論Si
3N
4は、消滅係数「k」が効果的に0である)。また、特定の実施形態において、驚くべきことに、向上した熱安定性は、(550nm)蒸着されたSiリッチSi
xN
y層の「k」が0.001から0.05である場合に実現可能であることが発見された。n及びkは、熱処理によって減少する傾向があることに留意されたい。本発明の特定の実施形態において、本明細書に検討されたシリコン窒化物層3,15,25,35の一部及び/又は全部をステンレススチール又はアルミニウムなどのその他の物質でドープしてもよい。例えば、本明細書で検討されたシリコン窒化物層の一部及び/又は全体は、本発明の特定の実施形態において、任意に約0から15%アルミニウム、好ましくは約1から10%アルミニウムを含んでもよい。シリコン窒化物は、本発明の特定の実施形態において、少なくとも窒素気体を有する雰囲気でターゲットSi又はSiAlをスパッタリングすることによって蒸着してもよい。
【0028】
赤外線(IR)反射層(9,19,29)は、好ましくは実質的に又は全体的に金属性及び/又は導電性を有し、銀(Ag)、金、又は、任意のその他の適切なIR反射物質を含んでもよく、本質的にこれらで構成してもよい。IR反射層(9,19,29)は、コーティングが低E及び/又は良好な太陽光調節特徴を有するように助ける。しかし、本発明の特定の実施形態において、IR反射層は、若干酸化されてもよい。
【0029】
本発明の特定の実施形態において、上部接触層(11,21,31)(及び場合によって下部接触層28)は、ニッケル(Ni)酸化物、クロミウム/クロム(Cr)酸化物、又は、ニッケルクロム酸化物(NiCrO
x)のようなニッケル合金酸化物、又はTi又はTi酸化物などのその他の適切な物質の、又はこれを含んでもよい。例えば、このような層内でNiCrO
xが使用されれば、耐久性を向上させることができる。本発明の特定の実施形態では、このような層のNiCrO
xが十分に(すなわち、十分に化学量論的に)酸化されてもよく、部分的に(すなわち、サブ酸化物)酸化されてもよい。特定の例において、NiCrO
x層は、少なくとも約50%酸化されてもよい。接触層(11,21,28、及び/又は31)(例えば、Ni及び/又はCrの酸化物の又はこれを含む)は、本発明の異なる実施形態で酸化勾配されてもされなくてもよい。酸化勾配は、層内の酸化程度が層の厚さ全体にわたって変化することを意味する。例えば、接触層は、すぐに隣接したIR反射層からさらに/最も遠い接触層の一部よりも、すぐに隣接したIR反射層との接触界面で少なく酸化されるように勾配される。様々な形態の酸化勾配された接触層の説明は、米国特許第6,576,349号に記載されており、この特許の開示は、本明細書に参照として含まれる。接触層(11,21,28及び/又は29)(例えば、Ni及び/又はCrの酸化物の又はこれを含む)は、本発明の異なる実施形態で上部又は下部IR反射層全体に対して連続していても、連続していなくてもよい。
【0030】
本発明の特定の実施形態において、透明な誘電体層(23,33)は、スズ酸化物の又はこれを含んでもよい。しかし、他の実施形態で特定のその他の物質、例えば、特定の例のまた他の実施形態において、Al又はZnでドープしてもよい。
【0031】
本発明の特定の実施形態において、下部接触層又はシード層(7及び/又は17)及び透明な誘電体層27は、亜鉛酸化物(例えば、ZnO)の又はこれを含む。このような層の亜鉛酸化物は(例えば、ZnAlO
xを形成するために)Alのようなその他の物質も含むことができる。例えば、本発明の特定の実施形態において、亜鉛酸化物層7,17,27のうちの1つ以上は約1から10%Al、さらに好ましくは約1から5%Al、及び最も好ましくは約1から4%Alでドープしてもよい。
【0032】
スズ酸亜鉛系層14は、第1反射層と第2反射層(9,19)との間の層スタックの特定の部分で、Ni及び/又はCrの酸化物を含む上部接触層11上に提供され、これと接触していて、かつシリコン窒化物の又はこれを含む層(15,若しくは15a)の下に提供され、場合によってこれと接触している。上記のように、驚くべきことに、このような層スタックは、HT時の熱安定性を著しく向上させて耐久性を向上させることが発見された。特定のまた他の実施形態において、スズ酸亜鉛系層14(例えば、ZnSnO)は、Al、Zn、N、などのその他の物質でドープしてもよい。スズ酸亜鉛系層14は、本発明の好ましい実施形態で実質的に又は実質的に十分に酸化される。上述したように、スズ酸亜鉛系層14が示された位置に存在すれば、驚くべきことにコーティングの熱安定性を向上させることが発見され、これは、実施形態対比較例を用いて、下記にて十分に立証されるであろう。
【0033】
図示されたコーティングの下又は上のその他の層が提供されてもよい。したがって、層システム又はコーティングは(直接的又は間接的に)基板1「上に」ある、又は基板1「によって支持される」が、その間にその他の層が提供されてもよい。したがって、例えば、
図1又は
図2のコーティングは、層3と基板1との間にその他の層が提供されても、基板1「上に」ある、又は基板1「によって支持される」と見ることができる。また、特定の実施形態において、図示されたコーティングの特定の層が除去されてもよく、様々な層の間にその他の層が追加されてもよく、又は様々な層は、本発明の特定の実施形態の全体の思想を逸脱しない範囲で、本発明のその他の実施形態では分離した領域の間に添加されたその他の層により分離されてもよい。
【0034】
様々な厚さ及び様々な物質が本発明の異なる実施形態で層に使用されるが、
図1の実施形態では、ガラス基板1上のそれぞれの層の例示の厚さ及び物質は、ガラス基板から順に次のようになる。
【0036】
本発明の特定の実施形態において、スズ亜鉛を含む層14は、コーティング30の最も厚い層であり、コーティング30でその他の全ての層よりもさらに厚くてもよいことが分かる。特定の実施形態において、スズ酸亜鉛を含む層14は、接触層(例えば、Ni及び/又はCrの酸化物)11とシリコン窒化物を含む層15a(又は15)の間に位置し、これらと直接接触している。特定の実施形態において、スズ酸亜鉛を含む層14は、すぐに隣接した接触層(例えば、Ni及び/又はCrの酸化物)11より少なくとも2倍さらに厚い(さらに好ましくは少なくとも5倍、最も好ましくは少なくとも10倍さらに厚い)。特定の実施形態において、スズ酸亜鉛を含む層14は、すぐに隣接した窒化ケイ素系層15a(又は15)より少なくとも2倍さらに厚い(さらに好ましくは少なくとも3倍さらに厚い)。これは、
図1及び/又は
図2の実施形態に適用する。
【0037】
本発明の特定の実施形態において(例えば、
図1参照)、上部銀系IR反射層19は、下部銀系IR反射層9より厚いことが分かる。特定の実施形態において、上部銀系IR反射層19は、下部銀系IR反射層9より少なくとも20オングストロームさらに厚い(さらに好ましくは少なくとも40オングストロームさらに厚く、さらに好ましくは少なくとも60オングストロームさらに厚く、最も好ましくは少なくとも70オングストロームさらに厚い)。本明細書の全ての厚さは、物理的な厚さである。
【0038】
本発明の特定の実施形態において、
図1の実施形態に係る被覆製品は、選択的HT前及び/又は後に一体型で測定された以下の光学及び太陽光特徴を有してもよい。本明細書のシート抵抗(R
s)は、全てのIR反射層(例えば、銀層9,19)を考慮する。
【0040】
様々な厚さ及び様々な物質は、本発明の異なる実施形態において層に用いることができるが、
図2の実施形態でガラス基板1上のそれぞれの層の例示的な厚さ及び物質は、ガラス基板から順に次のようになる。
【0041】
【表3】
本発明の特定の実施形態において、
図2の実施形態に係る被覆製品は、選択的HT前及び/又は後に一体型で測定された以下の光学及び太陽光特徴を有してもよい。本明細書のシート抵抗(R
s)は、全てのIR反射層(例えば、銀層9,19,29)を考慮する。
【0043】
以下の実施例は、単に例示の目的で提供されるものであって、具体的に記載しない限り、限定することを意図するものではない。
【0044】
[実施例]
図1の実施形態
以下の実施例は、下記に記載された層スタックを有するように6mm厚さの透明なガラス基板1上に
図1に示したようにコーティングをスパッタリングして行われた。厚さは、オングストローム(Å)単位である。比較例は、本発明の実施例1のスズ酸亜鉛層14の代わりに比較例ではスズ酸化物層が用いられることを除いて本発明の実施例1と同じであることが分かる(「n/a」は、この例で適用可能な層が存在しないことを意味する)。すなわち、本発明に係る実施例1は、CEの中間誘電体部におけるスズ酸化物層を本発明の実施例1ではスズ酸亜鉛層14に代えた以外は比較例(CE)と同一である。
【0046】
ガラス基板1上にスパッタ蒸着された後、CE及び実施例1のサンプルは、650℃のボックス炉内で12〜30分の多様な時間で熱処理(HT)をした。下記の表では、比較例(CE)に対する結果を表示し、多様な熱処理時間後の、様々な色値(a
*、b
*)、可視光線透過率%(TY)、L
*値、可視ガラス側反射率(RgY)、可視フィルム側反射率(RfY)、シート抵抗(R
s、単位Ω/□)、及びヘイズ%を表示する[Ill.C2 deg.Observer]。下記のデータを得るために、複数の同一のCEが行われ、それぞれのものが除去され、下記の表でのそれぞれのHT時間後に測定値が採取される。CEの下記の表はまた、0〜16分のHT期間による透過率、ガラス側反射率及びフィルム側反射率ΔE
*値(ΔE
*0/16)を表示する。特に、650℃で16分の熱処理の間、CEは、透過率ΔE
*値3.27、ガラス側反射率ΔE
*値1.29、及びフィルム側反射率ΔE
*値2.16を実現した。下記の表でΔE
*16/30は、16分間の熱処理をしたCEサンプルと30分間の熱処理をしたCEサンプルとの間のΔE
*変化を示す。したがって、ガラス側反射率ΔE
*値に対して、例えば、ΔE
*値は、HTの初期16分の間に1.29変化するが、続いて16分マークから30分マークまでのまた他のHT期間の間に、追加の2.87が変化する。したがって、ガラス側反射率色値は、安定せずに、16分マークから30分マークまでのHT期間の間、持続的に大きく変化することが分かる。
【0048】
下記の表で、本発明の実施例1に対する結果が表示され、多様な熱処理時間後の様々な色値(a
*、b
*)、可視光線透過率%(TY)、L
*値、可視ガラス側反射率(RgY)、可視フィルム側反射率(RfY)、シート抵抗(R
s単位Ω/□)、及びヘイズ%を表示する[Ill.C 2 deg.Observer]。下記のデータを得るために、実施例1の複数の同一のサンプルが作られて、それぞれのものが除去され、下の表のそれぞれのHT後にそれらから測定値が採取される。実施例1に対する下記の表ではまた、0から16分のHT期間による透過率、ガラス側反射率及びフィルム側反射率ΔE
*が示されている(ΔE
*0/16)。特に、650℃で16分の熱処理の間、実施例1は、透過率ΔE
*値2.50、ガラス側反射率ΔE
*値2.70、及びフィルム側反射率ΔE
*値3.74を実現した。下記の表でΔE
*16/30は、16分間の熱処理をした実施例1サンプルと30分間の熱処理をした実施例1サンプルとの間のΔE
*変化を示す。したがって、ガラス側反射率ΔE
*値に対して、例えば、ΔE
*値は、HTの初期16分の間に2.70変化して、16分マークから30分マークまでのまた他のHT期間の間、追加の1.25を変化させる。実施例1に対する透過率ΔE
*に対して、ΔE
*は、HTの初期16分の間に2.50変化して、16分マークから30分マークまでのまた他のHT期間の間、追加の0.93を変化させる。
【0050】
したがって、CEとは異なり、実施例1でスズ酸亜鉛層14が存在する場合、少なくともガラス側反射率色値及び透過率色値は安定化し、16分マークから30分マークまでのHT中に大きく変化しないことを前記表から知ることができる。特に、実施例1に対するΔE
*16/30値は、驚くべきことにCEより非常に低く、スズ酸亜鉛系層14を使用することと関連する予想外の利点を立証する(スズ酸亜鉛層14は、実施例1には存在するが、CEには存在しない)。CEとは異なり、実施例1は、HT工程の初期16分ほど以内に最終的な好ましい色値(例えば、透過率又はガラス側反射率の1つ又は両方のa
*、b
*及びL
*)を実質的に実現することができ、実施例1は、16分から30分の熱処理期間にわたってa
*、b
*及びL
*値(ガラス側反射率及び/又は透過率)に対して実質的に安定したままであった。したがって、例えば、実施例1の一対の焼き戻し処理製品は、1つは、16分間、また他の1つは、30分間の熱処理とする場合、透過率及びガラス側反射率値に対して実質的に互いに一致する。これは、0〜30分の熱処理期間の間、CEに対して5を超過する好ましくない高い透過率ΔE
*値に注目すると、CEに対しては当てはまらず、この値は、CEに対する透過率ΔE
*0/16(3.27)と透過率ΔE
*16/30(2.54)を合計して得られる。また、実施例1は、有利なことに、対応するガラス側反射率、フィルム側反射率、及び透過率ΔE
*0/16値より低いガラス側反射率、フィルム側反射率、及び透過率ΔE
*16/30値を有し、これは、実施例1におけるサンプルの外観が潜在的に長い熱処理工程前に実質的に安定する一方、CEは、ガラス側反射率又はフィルム側反射率ΔE
*値に対してこれを達成できないことを示し、また、スズ酸亜鉛系層14の使用は、驚くべきことにコーティングの熱安定性を向上させることを示す。また、全ての透過率ΔE
*値は、CEに対する対応するΔE
*値より実施例1に対して顕著により優れる(低い)ことが分かる。
【0051】
図4及び
図5は、
図1に示したスズ酸亜鉛系層14を用いて達成された向上した熱安定性を示す。
図4は、実施例1対比較例(CE)に対してプロットした熱処理(HT)時間(単位:分)、対可視光線透過率(TY%)グラフである。
図5は、実施例1対比較例(CE)をプロットした熱処理(HT)時間(単位:分)、対ヘイズ%グラフである。
図4及び
図5における実施例1プロット(ZnSn)は、複数の円を有し、
図4及び
図5でのCEプロット(Sn)は、複数のXを有する。
図4は、実施例1の可視光線透過率が実質的に約12〜24分のHT時間の間に保持される反面(例えば、1.5%以下で変化して、さらに好ましくは1.0%以下で変化する)、CEの可視光線透過率は、実質的にはるかに短いHT時間の間保持されて、実施例1がCEより可視光線透過率に対して熱的にさらに安定であることを立証する。これは、実際の適用でコーティングは、熱処理装置によって使用された炉形態及びコーティングが適用された支持ガラス1の厚さに基づいて、異なる時間の熱処理が行われる傾向があるために有利であり、長いHT範囲をかけて向上した熱安定性は、より多くの量の製造されたコーティングによって最終的に好ましい外観を実現するため有利である。同様に、
図5は、実施例1がHTの22から30分マークからヘイズ%に対して非常に安定する一方、CEは、HTの22分マーク後に好ましくない上方への顕著な急上昇をすることを示す。また、このことにより、ヘイズに対する実施例1は、CEでより潜在的に長いHT時間の範囲にかけて熱的に安定することを立証する。本発明の例示的な実施形態で被覆製品は、0〜30分の全体HT期間にわたって0.60%以下のヘイズ%を実現する。また、ヘイズ、色及び/又は可視光線透過率に対する潜在的に長いHT時間の期間にわたる熱安定性は、実際の適用において、コーティングは、製造者の熱処理装置によって使用された炉形態及びコーティングが適用された支持ガラス1の厚さに基づいて異なる期間の間の熱処理される傾向があるので有利であり、長いHT範囲をかけて向上した熱安定性は、多い量の製造されたコーティングによって所望の最終外観を実現するため有利である。
【0052】
[実施例]
図2の実施形態
以下の実施例は、下記に記載された層スタックを有するように6mm厚さの透明なガラス基板1上に
図2に示したコーティングをスパッタリングして行われた。厚さは、オングストローム(Å)単位である。比較例(CE)は、CEでスズ酸亜鉛層14に隣接したスズ酸化物層が本発明の実施例2で存在しないことを除いて本発明の実施例2と同一なことが分かる(「n/a」は、この例で適用可能な層が存在しないことを意味する)。すなわち、本発明に係る実施例2は、(CEにて、間にスズ酸化物層を有するのとは異なり)実施例2でスズ酸亜鉛層14がNiCrO
x接触層11に直接接触することとスズ酸亜鉛厚さを除いては、比較例(CE)と本質的に同一である。スズ酸亜鉛層は、ZnSnターゲットを介して52/48のZn/Sn重量%比でスパッタリングされた。
【0054】
ガラス基板1上にスパッタ蒸着された後、CE及び実施例2のサンプルは、650℃のボックス炉内で10〜24分の多様な時間で熱処理(HT)をした。下記の表では比較例(CE)及び実施例2に対する特定の結果を表示する[Ill.C 2 deg.Observer]。データの理解を助けるために実施例1に対する前記データに対する検討参照。
【0056】
例えば、650℃で16分間の熱処理に対して、CEではガラス側反射率ΔE
*値2.46を実現した。前記の表でΔE
*16/24は、16分間の熱処理をしたサンプルと24分間の熱処理をしたサンプルの間のΔE
*の変化を示す。したがって、ガラス側反射率ΔE
*値に対して、例えば、CEのΔE
*は、HTの初期16分の間に2.46が変化するが、続いて16分マークから24分マークまでの追加のHT期間の間、追加の2.11が変化した。しかし、実施例2は、ガラス側反射率ΔE
*値に対して、例えば、ΔE
*は、HTの初期16分の間に1.81が変化したが、16分マークから24分マークまで追加のHT期間の間、追加の1.21だけが変化した。実施例2の透過率ΔE
*16/24値(0.69)は、CEに比べて非常に優れ(低く)、また、上述したように有利である。したがって、ガラス側反射率色値は、CEより実施例2でさらに安定したことが分かる。実際の適用で、熱処理は、異なるガラスの厚さ及び/又は異なる強化炉形態に基づいて上述した異なる期間の間、発生する可能性があるが、熱安定性の向上は、上述したような強化工程の工程窓を広げて、最終製品又は本質的に最終製品色を達成することを容易にする。
【0057】
本発明の特定の実施形態において、ガラス基板によって支持されるコーティングを含む被覆製品で、ガラス基板によって支持される第1誘電体層と;前記ガラス基板によって支持されて少なくとも前記第1誘電体層上に位置する銀を含む第1赤外線(IR)反射層と;前記銀を含む第1IR反射層上に位置し、これと直接接触している上部接触層(例えば、Ni及び/又はCrの酸化物、又はTi、又はTiの酸化物を含む)と;前記上部接触層上に位置し、これと直接接触しているスズ酸亜鉛を含む層と;前記スズ酸亜鉛を含む層上に位置し、これと直接接触しているシリコン窒化物を含む第1層と;少なくとも前記シリコン窒化物を含む第1層上に位置する銀を含む第2IR反射層と;少なくとも前記第2IR反射層上に位置するまた他の誘電体層と;を含む、被覆製品を提供する。
【0058】
直前の段落の被覆製品は、前記銀を含む第2IR反射層下に位置し、これと直接接触している亜鉛酸化物を含む層をさらに含んでもよい。
【0059】
前記2つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記上部接触層は、NiCrの酸化物を含んでもよい。
【0060】
前記3つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記第1誘電体層は、シリコン窒化物を含んでもよい。
【0061】
前記4つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、スズ酸化物を含むまた他の誘電体層があってもよい。
【0062】
前記5つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記シリコン窒化物を含む第1層とシリコン窒化物を含む追加の層との間に位置し、これらと直接接触しているNiCrを含む層があってもよい。
【0063】
前記6つの段落のうちいずれか1つの被覆製品は、前記銀を含む第1IR反射層下に位置し、これと直接接触している亜鉛酸化物を含む層をさらに含んでもよい。
【0064】
前記7つの段落のうちいずれか1つの被覆製品は、銀を含む2つ以下のIR反射層を有してもよい。
【0065】
前記8つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記スズ酸亜鉛を含む層は、Snより多くのZnを含有してもよい。
【0066】
前記9つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記スズ酸亜鉛を含む層は、金属含有量に対して、51〜90%Zn及び10〜49%Sn(重量%)を含有してもよい。
【0067】
前記10個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記スズ酸亜鉛を含む層は、実質的に十分に酸化されてもよい。
【0068】
前記11個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記スズ酸亜鉛を含む層は、スズ酸亜鉛で構成されたり、本質的にスズ酸亜鉛で構成してもよい。
【0069】
前記12個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記コーティングは、シート抵抗(R
s)が3.0Ω/□以下であってもよい。
【0070】
前記13個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記被覆製品は、一体型で測定された可視光線透過率が少なくとも約40%であってもよい。
【0071】
前記14個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記被覆製品が熱処理されてもよい。
【0072】
前記15個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記スズ酸亜鉛を含む層が前記コーティング内で最も厚い層であってもよい。
【0073】
前記16個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記スズ酸亜鉛を含む層は、前記上部接触層より少なくとも5倍さらに厚くてもよい。
【0074】
前記17個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記スズ酸亜鉛を含む層は、前記スズ酸亜鉛を含む層上に位置し、これと直接接触しているシリコン窒化物を含む層の少なくとも2倍程厚くてもよい。
【0075】
前記18個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記銀を含む第2IR反射層は、前記銀を含む第1IR反射層より少なくとも40オングストロームさらに厚くてもよい。
【0076】
前記19個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記スズ酸亜鉛を含む層は、厚さが350〜600オングストロームであってもよい。
【0077】
前記20個の段落のうちいずれか1つの被覆製品は、少なくとも前記また他の誘電体層上に位置する銀を含む第3IR反射層をさらに含んでもよい。
【0078】
前記21個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記コーティング層は、前記被覆製品が0から30分の全ての期間の間、約650℃の熱処理時5.0以下の透過率及び/又はガラス側反射率ΔE
*値を有するようにする物質及び厚さであってもよい。
【0079】
前記22個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記コーティング層は、前記被覆製品が0から24分の全ての期間の間、約650℃の熱処理時4.0以下のガラス側反射率及び/又は透過率ΔE
*値を有するようにする物質及び厚さであってもよい。
【0080】
前記23個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記コーティング層は、前記被覆製品が0から30分の全ての期間の間、約650℃の熱処理時0.60%以下のヘイズ%を有するようにする物質及び厚さであってもよい。
【0081】
前記24個の段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記コーティング層は、前記被覆製品の可視光線透過率が実質的に保持され、約650℃の熱処理温度で12から24分の熱処理時間の間で1.0%以下で変化する物質及び厚さであってもよい。
【0082】
本発明は、最も実用的で好ましい実施形態であると現在考えられるものに関して説明してきたが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、添付する特許請求の範囲の思想と範囲内に含まれる様々な変更及び同等の配置を含むものと理解されるべきである。