【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様では、この目的は、発光領域の電極シートと、電極シートに接触する電極コンタクトとを有し、電極シートと電極コンタクトとの間にインターフェースが存在する有機発光ダイオードデバイスであって、電極シートと電極コンタクトとが、セパレータによって局所的に分離され、セパレータが、絶縁材、及び/又は電極コンタクトのシート抵抗よりも高いシート抵抗を有する材料から形成され、セパレータが、インターフェースの隅部領域に配置され、隅部領域が、インターフェースの一部分によって画定される2つの平面の交線の近傍の領域であり、セパレータが、交線からある距離(L
1、L
2)に配置される、有機発光ダイオードデバイスによって実現される。この有機発光ダイオードデバイスは、OLEDデバイスの動作中にインターフェースの隅部領域でインターフェースを通って流れる電流の局所的及び/又は平均の区域的な電流密度が減少されるように構成される。
【0014】
本発明は、以下の洞察に基づく。
【0015】
OLEDの輝度は、電流密度によって決定され、電流密度は、デバイススタックの電気抵抗に依存する。低い電気抵抗を有する領域が、高い電流密度を有する。その結果、この領域は、明るいスポットとして現れ、より高温であるため、より急速に劣化する。高い電流密度のそのような領域は、「ホットスポット」と呼ばれる。OLEDデバイスでは、ホットスポットは、典型的には、光放出領域の隅部に形成される。このことは、2面から電荷注入が行われるときに隅部がホットスポットを有する可能性が高いことから説明される。これは、隅部を切断する又は隅部の半径を増加させるという従来の手法によって対処される。
【0016】
本発明は、ホットスポットの問題に対処するために、隅部領域で生じる電流を制限することを狙いとする。電流密度が局所的に減少される場合、これは、ホットスポットが生じる可能性に影響を及ぼす。
【0017】
OLED照明デバイスに関する典型的な設計では、アノードコンタクト領域は、透明アノード材料の高い抵抗をサポートするために、照明領域の全周にある(
図1参照)。アノードコンタクト領域は、照明領域の輪郭全体にわたって均一に、損失なく、電流を分配することを可能にする。この構成の欠点は、対角線に沿って電流注入がより高いので、ホットスポットが照明領域の隅部付近に発生されることである。これらのホットスポットは、縁部間の距離が最小になる位置、即ち対角線に合致する。「アノードコンタクト領域」は、透明導電性酸化物(TCO)層、メタライゼーション層、及びメタライゼーション層の導電性をサポートするための追加の電流分配器層等、様々な種類の層が存在し得る空間全般を表す。例えば、メタライゼーションの導電性をサポートするための追加の層を使用することが知られている。典型的には、これは、PCBボード、PCB輪郭フレーム、銅ストリップ、可撓性箔等である。そのような追加の層は通常、電極の外側に配置され、アノードに接触する。
【0018】
照明領域と環境との間のT°遷移は、連続的に、しかし数mmだけ行われ、従って、照明領域の縁部とコンタクト領域との間で大きい勾配で温度が低下する。その結果、ホットスポットは、照明領域の隅部に直接は位置されず、T°がより高い照明領域の中央へ、数ミリメートルずらされる。
図2は、照明領域の隅部近くのホットスポットの計算された例を示す。この例では、メタライゼーションなしのコンタクト領域を使用した。測定されたデバイスのレイアウトは、10.4×10.4cmの正方形の照明領域とし、アノード層にわたって電流を分配するために使用されるコンタクト領域の3面と、カソード層のために使用される1面とを有するものとした。
【0019】
上記の例とは異なり、隅部の少なくとも1面で数ミリメートルにわたって、アノードコンタクト領域と照明領域との間に絶縁部材が提供される場合、この領域での全体的な注入が減少され、従ってホットスポットの発生が減少される。
【0020】
セパレータは、絶縁材、及び/又は電極コンタクトのシート抵抗よりも高いシート抵抗を有する材料から形成される。
【0021】
絶縁材は、所定の領域内で電流を選択的に遮断するために直接使用されてよく、それに従って電流密度が調節され得る。より低い導電率(即ち、より高いシート抵抗)を有する領域は、発光領域と(高い導電率を有する)コンタクト領域との間の高い抵抗と同様である。その結果、より低い導電率を有する領域の近くに注入される電圧及び電流の降下がより大きく、隅部でのホットスポットを減少させる。
【0022】
セパレータは、電極シートと電極コンタクトとの間のインターフェースの部分によって画定される2つの平面の交線の近傍の領域内に配置される。この領域を「隅部領域」と呼び、2つの平面の交線を「隅部」と呼ぶ。セパレータは、隅部の少なくとも1つの面で、隅部からある距離に配置される。
【0023】
特にセパレータが隅部の両側に提供される場合、隅部からセパレータの範囲への電流を完全には遮断しないことが有利であることが判明した。
【0024】
セパレータの寸法は、好ましくは、パターン形成がない場合に生じることになるホットスポットの位置に関連付けられる。効率的な熱拡散を有するデバイスに関して、ホットスポットの位置は、典型的にはOLEDサイズに依存しない。ホットスポットは大抵、隅部から約5〜10mmに位置されると仮定することができるので、隅部の各側に関して、5mm以上の長さで電流を遮断することが好ましい。設計規則は、隅部の各側に関して、絶縁された領域の長さの和が4mm以上であるというものでよい。
【0025】
また、セパレータは、セパレータの少なくとも一部に関して、インターフェースに垂直な方向でのセパレータの幅が隅部からの距離の増加と共に減少するように形成され得る。
【0026】
隅部から離れる方向へ向かって減少していく深さ(インターフェースに垂直な方向での厚さ)を有する非絶縁セパレータを形成することが、セパレータにわたる電圧降下(及び対応する電流分布)の勾配を生み出すことを可能にし、設計に更なる自由度を与え得る。
【0027】
また、電極シート及び電極コンタクトは、発光領域の平面に垂直な方向に沿って、セパレータによって一部のみ分離され得る。
【0028】
電流密度に対する効果を有するために、セパレータが、電極シートと電極コンタクトとの間に完全に介在する必要はない。電極コンタクト(又は電極シート)の広がり全体をインターフェースの合計の高さとみなすと、この実施形態によれば、セパレータは、この合計の高さの一部のみにわたって提供される。
【0029】
セパレータの少なくとも一部に関して、発光領域の平面に垂直な方向に沿ったセパレータの割合は、隅部からの距離の増加と共に減少し得る。
【0030】
上で論じた隅部からの距離に伴う深さの変化と同様に、セパレータ(絶縁部材でもあり得る)の高さの変化も、OLEDデバイスの設計に更なる自由度を与える。
【0031】
インターフェース、電極シート、及び/又は電極コンタクトは、隅部領域において、電極シートと電極コンタクトとの間の局所的及び/又は平均の区域的な接触抵抗が、電極シートと電極コンタクトとの間の全体的な平均接触抵抗よりも高くなるように構成され得る。
【0032】
上で論じたようにセパレータを提供することの代替として、又はそれと共に、局所的又は区域的な電流密度を調節するために、関連の領域内の接触抵抗が増加され得る。接触抵抗の差は、好ましくは、10
−6Ωm
2以上である。
【0033】
より高い局所的及び/又は平均の区域的な接触抵抗の区域は、隅部の少なくとも1つの面で、隅部からある距離に提供され得る。
【0034】
好ましい実施形態では、電極シートは、有機発光ダイオードのアノードを形成する。
【0035】
本発明は、カソード側での電流分配にも適用され得ることに留意されたい。しかし、典型的には、カソード側は、カソードのシート抵抗が約30分の1であるので、あまり重要でない(これは、OLEDデバイスの1面しかカソード電流分配に使用されないことにも反映される)。
【0036】
前述のように、隅部領域は、電極シートと電極コンタクトとの間のインターフェースの部分によって画定される2つの平面の交線の近傍の領域である。2つの平面は垂直である必要はなく、従って、交線に提供される隅部は、必ずしも90°の角度を有さないことに留意されたい。隅部領域は、30°を超える角度を有する2つの連続する平面の交線の近傍の領域(照明領域縁部の部分)でもよい。
【0037】
本発明の第2の態様では、上記目的は、本発明の第1の態様による有機発光ダイオードデバイスを製造するための方法であって、有機発光ダイオードの有機スタックの形成前及び/又は後に、パターン形成法によってセパレータを提供するステップを含む方法によって実現される。即ち、この方法は、電極シートと電極コンタクトとの間のインターフェースの隅部領域で、電極シートと電極コンタクトとの間にセパレータを提供するステップであって、セパレータが、絶縁材、及び/又は電極コンタクトのシート抵抗よりも高いシート抵抗を有する材料から形成されるステップ、及び/又は、隅部領域で、電極シートと電極コンタクトとの間の平均の全体的な接触抵抗よりも高い、電極シートと電極コンタクトとの間の局所的及び/又は平均の区域的な接触抵抗を提供するステップを含む。
【0038】
好ましい実施形態では、パターン形成法は、レーザアブレーション及び/又はフォトリソグラフィパターン形成を含む。
【0039】
接触抵抗を増加させることができる1つの可能性は、関連の層間のコンタクト領域を縮小することである。コンタクト領域は、低い導電率を有する又は実質的に導電性を有さない材料パターン(2Dパターン)を関連の層間に追加することによって縮小され得る。絶縁材料は、例えばバンドパターンやグリッドパターン等、任意のパターンで堆積され得る。
【0040】
本発明の第1の態様による有機発光ダイオードデバイス、及び本発明の第2の態様による方法は、特にそれぞれの従属請求項で定義され得るように、同様及び/又は同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0041】
本発明は、OLED照明デバイスのみに限定されず、例えばOLEDディスプレイデバイスの文脈でも採用され得て、特にその場合、(サブ)ピクセルレベルの均一性が重要であり、これは、広告目的等でスタジアム又は道路で使用される大型のOLEDディスプレイについて該当し得る。
【0042】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態とそれぞれの独立請求項との任意の組合せでもよいことを理解されたい。
【0043】
本発明のこれら及び他の態様は、本明細書で後述する実施形態から明らかになり、それらを参照して説明する。