特許第6553034号(P6553034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553034有機発光ダイオードデバイスでの電流分配
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553034
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】有機発光ダイオードデバイスでの電流分配
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/06 20060101AFI20190722BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190722BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20190722BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20190722BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H05B33/06
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
   H05B33/10
   H05B33/26 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-535239(P2016-535239)
(86)(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公表番号】特表2016-539475(P2016-539475A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2014074956
(87)【国際公開番号】WO2015082213
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年11月17日
(31)【優先権主張番号】13195432.3
(32)【優先日】2013年12月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005362
【氏名又は名称】オーエルイーディーワークス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OLEDWorks GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】モネスティエ フローレン
(72)【発明者】
【氏名】ビュイトナー クリスチャン
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−010130(JP,A)
【文献】 特表2013−522922(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/136262(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50 − 51/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光領域の電極シートと、前記電極シートに接触する電極コンタクトとを有し、前記電極シートと前記電極コンタクトとの間にインターフェースが存在する有機発光ダイオードデバイスであって、
前記電極シートと前記電極コンタクトとが、セパレータによって局所的に分離され、前記セパレータが、絶縁材、及び/又は前記電極コンタクトのシート抵抗よりも高いシート抵抗を有する材料から形成され、
前記セパレータが、前記インターフェースの隅部領域に配置され、前記隅部領域が、前記インターフェースの一部分によって画定される2つの平面の交線の近傍の領域であり、前記セパレータが、前記交線から離れて配置される、有機発光ダイオードデバイス。
【請求項2】
前記電極シートは、有機発光ダイオードのアノードを形成する、請求項1に記載の有機発光ダイオードデバイス。
【請求項3】
有機発光ダイオードの有機スタックの形成前及び/又は後に、パターン形成法によって前記セパレータを提供するステップを含む、請求項1又は2に記載の有機発光ダイオードデバイスを製造するための、方法。
【請求項4】
前記パターン形成法は、レーザアブレーション及び/又はフォトリソグラフィパターン形成を含む、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光領域の電極シートと、電極シートに接触する電極コンタクトとを有する有機発光ダイオードデバイスに関する。より詳細には、本発明は、有機発光ダイオードデバイスの発光領域内での電流分配に関する。更に、本発明は、発光領域の電極シートと、電極シートに接触する電極コンタクトとを有するそのような有機発光ダイオードデバイスを形成する方法、及び、発光領域の電極シートと、電極シートに接触する電極コンタクトとを有するそのような有機発光ダイオードデバイスを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオードデバイス(OLEDデバイス)の照明領域(又は発光領域)にわたる輝度の均一性が、デバイスの美観と信頼性との両方に影響を及ぼす。輝度は電流密度に比例するので、デバイスの寿命にわたって非常に高い輝度均一性を有することが重要である。
【0003】
OLEDデバイスの1つの特定の態様は、発光領域全体で光が放出されるものである。
【0004】
この態様に関わる欠点は、デバイスが、電流の不均一性の影響を非常に受けやすいことである。高い電流密度では有機スタックの抵抗がより低く、これは、アノード表面にわたって流れる電流の大半を、「ホットスポット」と呼ばれる低抵抗領域に流す。その結果、低抵抗領域は非常に急速に温度上昇し、電流とT°との間で熱暴走ループプロセスが始まり、寿命の短縮、並びに場合によってはデバイスの使用中の非常に早期の損壊及び故障を引き起こす。このプロセスは、デバイスに対するストレスによって速められる。
【0005】
従って、そのような脆弱スポットが現れるのを防止し、デバイスの寿命にわたって電流均一性をできるだけ良好に保つことが望ましい。
【0006】
実用において、デバイスが照明領域にわたって均一に冷却されない場合、例えば、デバイスが、垂直構成の場合に下から上に強制自然対流を受ける場合;デバイスを保持するために上記領域にわたって異なる熱特性を有する材料を使用する等、不適切な取扱いの場合;又は単に、デバイスの一部の限られた部分にしかより良い冷却が適用されない場合、高い局所電流密度を有する小さい領域が容易に現れ得る。デバイスの照明領域でのエネルギーの単純な局所入力(例えば局所的なスポットの光反射等)も、ホットスポットの原因となり得る。
【0007】
更に、機械的、熱的、又は電気的ストレスに対するより低い感受性を実現するようにデバイスを設計することも望ましい。これは、適切な基板レイアウト設計及びシステムアーキテクチャによって実現され得る。基本的には、従来の解決策は、電流と熱との間で熱暴走ループが始まる程のレベルに達するのを防止するために、照明領域のサイズを制限し、電流ストレスを制限することにある。第2の可能性は、適切な基板レイアウト設計によって、電流分配を改良することである。この場合、基本原理は、高抵抗のITOアノードにわたる電力損失を減少することである。実用において、電力損失を減少させるために、OLED製造業者によって幾つかの解決策が適用されている。典型的な解決策は、電極コンタクト領域の形状及び寸法の最適化、並びにアノード導電率の最適化である。
【0008】
しかし、レイアウトの最適化後でさえ、電流分配は完璧には均一でなく、外部ストレス(電流や温度)のレベルに対する高い感受性を有する脆弱領域が常に生成される。
【0009】
従って、ホットスポットの数がより少ないOLEDデバイスを設計できることが求められている。
【0010】
ホットスポットは通常、発光領域の隅部に現れることが判明した。これに対処するために、既知の解決策は、発光領域の隅部を切断すること、又は隅部の半径を増加させることを企図する。この手法の特定の欠点は、設計のばらつきによってデバイスの見た目が損なわれると共に、隅部を切断すること及び/又は隅部半径を増加させることが、デバイスを使用するための設計オプションを制限することである。
【0011】
米国特許出願公開第2013/009199号は、隅縁部に隣接する第1及び第2の側面を有する活性層を有する有機発光デバイスを開示しており、ここで、第1の側面は、隅縁部に隣接する陥凹区域を有する。活性層内に電荷キャリアを注入するために、デバイスは金属コンタクト層を有し、金属コンタクト層は、活性層の第1の側面に沿って延在し、三角形構造を有し、それにより、金属コンタクト層は、陥凹区域に近付けば近付くほど活性層の第1の側面から陥凹され、従って、陥凹区域で、金属コンタクト層から活性層内への電荷キャリアの注入が抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、発光領域の電極シートと、電極シートに接触する電極コンタクトとを有する有機発光ダイオード(OLED)デバイスであって、デバイスの隅部の幾何形状を変える既知の手法によって提供される欠点及び制限を回避しながら、ホットスポットを発生する傾向がより小さい有機発光ダイオード(OLED)デバイスを提供することである。また、本発明の目的は、そのようなOLEDデバイスを製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様では、この目的は、発光領域の電極シートと、電極シートに接触する電極コンタクトとを有し、電極シートと電極コンタクトとの間にインターフェースが存在する有機発光ダイオードデバイスであって、電極シートと電極コンタクトとが、セパレータによって局所的に分離され、セパレータが、絶縁材、及び/又は電極コンタクトのシート抵抗よりも高いシート抵抗を有する材料から形成され、セパレータが、インターフェースの隅部領域に配置され、隅部領域が、インターフェースの一部分によって画定される2つの平面の交線の近傍の領域であり、セパレータが、交線からある距離(L、L)に配置される、有機発光ダイオードデバイスによって実現される。この有機発光ダイオードデバイスは、OLEDデバイスの動作中にインターフェースの隅部領域でインターフェースを通って流れる電流の局所的及び/又は平均の区域的な電流密度が減少されるように構成される。
【0014】
本発明は、以下の洞察に基づく。
【0015】
OLEDの輝度は、電流密度によって決定され、電流密度は、デバイススタックの電気抵抗に依存する。低い電気抵抗を有する領域が、高い電流密度を有する。その結果、この領域は、明るいスポットとして現れ、より高温であるため、より急速に劣化する。高い電流密度のそのような領域は、「ホットスポット」と呼ばれる。OLEDデバイスでは、ホットスポットは、典型的には、光放出領域の隅部に形成される。このことは、2面から電荷注入が行われるときに隅部がホットスポットを有する可能性が高いことから説明される。これは、隅部を切断する又は隅部の半径を増加させるという従来の手法によって対処される。
【0016】
本発明は、ホットスポットの問題に対処するために、隅部領域で生じる電流を制限することを狙いとする。電流密度が局所的に減少される場合、これは、ホットスポットが生じる可能性に影響を及ぼす。
【0017】
OLED照明デバイスに関する典型的な設計では、アノードコンタクト領域は、透明アノード材料の高い抵抗をサポートするために、照明領域の全周にある(図1参照)。アノードコンタクト領域は、照明領域の輪郭全体にわたって均一に、損失なく、電流を分配することを可能にする。この構成の欠点は、対角線に沿って電流注入がより高いので、ホットスポットが照明領域の隅部付近に発生されることである。これらのホットスポットは、縁部間の距離が最小になる位置、即ち対角線に合致する。「アノードコンタクト領域」は、透明導電性酸化物(TCO)層、メタライゼーション層、及びメタライゼーション層の導電性をサポートするための追加の電流分配器層等、様々な種類の層が存在し得る空間全般を表す。例えば、メタライゼーションの導電性をサポートするための追加の層を使用することが知られている。典型的には、これは、PCBボード、PCB輪郭フレーム、銅ストリップ、可撓性箔等である。そのような追加の層は通常、電極の外側に配置され、アノードに接触する。
【0018】
照明領域と環境との間のT°遷移は、連続的に、しかし数mmだけ行われ、従って、照明領域の縁部とコンタクト領域との間で大きい勾配で温度が低下する。その結果、ホットスポットは、照明領域の隅部に直接は位置されず、T°がより高い照明領域の中央へ、数ミリメートルずらされる。図2は、照明領域の隅部近くのホットスポットの計算された例を示す。この例では、メタライゼーションなしのコンタクト領域を使用した。測定されたデバイスのレイアウトは、10.4×10.4cmの正方形の照明領域とし、アノード層にわたって電流を分配するために使用されるコンタクト領域の3面と、カソード層のために使用される1面とを有するものとした。
【0019】
上記の例とは異なり、隅部の少なくとも1面で数ミリメートルにわたって、アノードコンタクト領域と照明領域との間に絶縁部材が提供される場合、この領域での全体的な注入が減少され、従ってホットスポットの発生が減少される。
【0020】
セパレータは、絶縁材、及び/又は電極コンタクトのシート抵抗よりも高いシート抵抗を有する材料から形成される。
【0021】
絶縁材は、所定の領域内で電流を選択的に遮断するために直接使用されてよく、それに従って電流密度が調節され得る。より低い導電率(即ち、より高いシート抵抗)を有する領域は、発光領域と(高い導電率を有する)コンタクト領域との間の高い抵抗と同様である。その結果、より低い導電率を有する領域の近くに注入される電圧及び電流の降下がより大きく、隅部でのホットスポットを減少させる。
【0022】
セパレータは、電極シートと電極コンタクトとの間のインターフェースの部分によって画定される2つの平面の交線の近傍の領域内に配置される。この領域を「隅部領域」と呼び、2つの平面の交線を「隅部」と呼ぶ。セパレータは、隅部の少なくとも1つの面で、隅部からある距離に配置される。
【0023】
特にセパレータが隅部の両側に提供される場合、隅部からセパレータの範囲への電流を完全には遮断しないことが有利であることが判明した。
【0024】
セパレータの寸法は、好ましくは、パターン形成がない場合に生じることになるホットスポットの位置に関連付けられる。効率的な熱拡散を有するデバイスに関して、ホットスポットの位置は、典型的にはOLEDサイズに依存しない。ホットスポットは大抵、隅部から約5〜10mmに位置されると仮定することができるので、隅部の各側に関して、5mm以上の長さで電流を遮断することが好ましい。設計規則は、隅部の各側に関して、絶縁された領域の長さの和が4mm以上であるというものでよい。
【0025】
また、セパレータは、セパレータの少なくとも一部に関して、インターフェースに垂直な方向でのセパレータの幅が隅部からの距離の増加と共に減少するように形成され得る。
【0026】
隅部から離れる方向へ向かって減少していく深さ(インターフェースに垂直な方向での厚さ)を有する非絶縁セパレータを形成することが、セパレータにわたる電圧降下(及び対応する電流分布)の勾配を生み出すことを可能にし、設計に更なる自由度を与え得る。
【0027】
また、電極シート及び電極コンタクトは、発光領域の平面に垂直な方向に沿って、セパレータによって一部のみ分離され得る。
【0028】
電流密度に対する効果を有するために、セパレータが、電極シートと電極コンタクトとの間に完全に介在する必要はない。電極コンタクト(又は電極シート)の広がり全体をインターフェースの合計の高さとみなすと、この実施形態によれば、セパレータは、この合計の高さの一部のみにわたって提供される。
【0029】
セパレータの少なくとも一部に関して、発光領域の平面に垂直な方向に沿ったセパレータの割合は、隅部からの距離の増加と共に減少し得る。
【0030】
上で論じた隅部からの距離に伴う深さの変化と同様に、セパレータ(絶縁部材でもあり得る)の高さの変化も、OLEDデバイスの設計に更なる自由度を与える。
【0031】
インターフェース、電極シート、及び/又は電極コンタクトは、隅部領域において、電極シートと電極コンタクトとの間の局所的及び/又は平均の区域的な接触抵抗が、電極シートと電極コンタクトとの間の全体的な平均接触抵抗よりも高くなるように構成され得る。
【0032】
上で論じたようにセパレータを提供することの代替として、又はそれと共に、局所的又は区域的な電流密度を調節するために、関連の領域内の接触抵抗が増加され得る。接触抵抗の差は、好ましくは、10−6Ωm以上である。
【0033】
より高い局所的及び/又は平均の区域的な接触抵抗の区域は、隅部の少なくとも1つの面で、隅部からある距離に提供され得る。
【0034】
好ましい実施形態では、電極シートは、有機発光ダイオードのアノードを形成する。
【0035】
本発明は、カソード側での電流分配にも適用され得ることに留意されたい。しかし、典型的には、カソード側は、カソードのシート抵抗が約30分の1であるので、あまり重要でない(これは、OLEDデバイスの1面しかカソード電流分配に使用されないことにも反映される)。
【0036】
前述のように、隅部領域は、電極シートと電極コンタクトとの間のインターフェースの部分によって画定される2つの平面の交線の近傍の領域である。2つの平面は垂直である必要はなく、従って、交線に提供される隅部は、必ずしも90°の角度を有さないことに留意されたい。隅部領域は、30°を超える角度を有する2つの連続する平面の交線の近傍の領域(照明領域縁部の部分)でもよい。
【0037】
本発明の第2の態様では、上記目的は、本発明の第1の態様による有機発光ダイオードデバイスを製造するための方法であって、有機発光ダイオードの有機スタックの形成前及び/又は後に、パターン形成法によってセパレータを提供するステップを含む方法によって実現される。即ち、この方法は、電極シートと電極コンタクトとの間のインターフェースの隅部領域で、電極シートと電極コンタクトとの間にセパレータを提供するステップであって、セパレータが、絶縁材、及び/又は電極コンタクトのシート抵抗よりも高いシート抵抗を有する材料から形成されるステップ、及び/又は、隅部領域で、電極シートと電極コンタクトとの間の平均の全体的な接触抵抗よりも高い、電極シートと電極コンタクトとの間の局所的及び/又は平均の区域的な接触抵抗を提供するステップを含む。
【0038】
好ましい実施形態では、パターン形成法は、レーザアブレーション及び/又はフォトリソグラフィパターン形成を含む。
【0039】
接触抵抗を増加させることができる1つの可能性は、関連の層間のコンタクト領域を縮小することである。コンタクト領域は、低い導電率を有する又は実質的に導電性を有さない材料パターン(2Dパターン)を関連の層間に追加することによって縮小され得る。絶縁材料は、例えばバンドパターンやグリッドパターン等、任意のパターンで堆積され得る。
【0040】
本発明の第1の態様による有機発光ダイオードデバイス、及び本発明の第2の態様による方法は、特にそれぞれの従属請求項で定義され得るように、同様及び/又は同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0041】
本発明は、OLED照明デバイスのみに限定されず、例えばOLEDディスプレイデバイスの文脈でも採用され得て、特にその場合、(サブ)ピクセルレベルの均一性が重要であり、これは、広告目的等でスタジアム又は道路で使用される大型のOLEDディスプレイについて該当し得る。
【0042】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態とそれぞれの独立請求項との任意の組合せでもよいことを理解されたい。
【0043】
本発明のこれら及び他の態様は、本明細書で後述する実施形態から明らかになり、それらを参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】従来のOLED照明デバイスの隅部を示す図である。
図2図1に示されるOLED照明デバイスの輝度分布を示す図である。
図3】本発明の一実施形態によるOLED照明デバイスの隅部を示す図である。
図4図2に示されるような従来のOLED照明デバイスと、図3に示される本発明の実施形態によるOLED照明デバイスとの比較を示す図である。
図5】OLED照明デバイスの部分断面図である。
図6】OLED照明デバイスの隅部を示す図である。
図7】OLED照明デバイスの電極コンタクトと電極シートとの間のインターフェースの部分断面図である。
図8】本発明の一実施形態によるOLED照明デバイスの隅部を示す図である。
図9】本発明の一実施形態によるOLEDデバイスを製造する方法を示す流れ図である。
図10】OLEDデバイスを動作させる方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、従来のOLED照明デバイスの隅部を示す図である。
【0046】
OLED照明デバイスは、OLED照明デバイスの照明領域を有する電極シート1を含み、電極シート1は、電極コンタクト2(アノード)によって(部分的に)取り囲まれており、それにより、電極シート1と電極コンタクト2との間にインターフェース3がある。このインターフェースを介して、OLED照明デバイスの動作中、矢印4によって示されるように電流が流れている。
【0047】
図2は、図1に示されるOLED照明デバイスの輝度分布を示す図である。
【0048】
図2に示されるOLED照明デバイスは、アノード用の電極コンタクト2によって3面で取り囲まれた電極シート1を含む。基本的には正方形の電極シート1の第4の面には、カソード用の電極コンタクト6が設けられる。アノードとカソードとは、分離体7によって分離されている。電極シート1及び電極コンタクト2は、インターフェース3を共有し、インターフェース3を通って、動作中、矢印4によって示されるように電流が流れている。隅部の構成(その左下が、図1に示される隅部に対応する)により、電流密度は、隅部領域でより高い電流注入を生じ、各隅部にホットスポット5を生じる。電極シート1に関する図2に示される輝度分布は、10.4cm×10.4cmの正方形のOLED照明領域に関して2Dカメラによって測定された実際の分布に基づく。
【0049】
図3は、本発明の一実施形態によるOLED照明デバイスの隅部を示す。
【0050】
図3に一部が示されるOLED照明デバイスは、従来の電極シートと基本的には同じ構造を有する電極シート1を含む。電極シート1は、電極コンタクト12(やはり図1と同様にアノード)によって(部分的に)取り囲まれており、それにより、電極シート1と電極コンタクト12との間にインターフェース13がある。このインターフェースを介して、OLED照明デバイスの動作中、矢印4によって示されるように電流が流れている。図1に示されるデバイスとは異なり、この隅部領域には、セパレータ18の2つの部分が提供され、セパレータ18は、電極コンタクト12と電極シート1との間に提供される。セパレータ18は、矢印4によって示されるように、局所電流密度を減少させる。セパレータ18の上記部分は、それぞれ隅部自体から距離L及びLの位置に提供され、それぞれL及びLの広がり又は長さを有する。
【0051】
図3に示される実施形態では、セパレータ18は、絶縁部材として形成され、セパレータ18の上記部分を通る全ての電流を効果的に遮断する。代替として、このセパレータはまた、電極コンタクト12と比較して高いシート抵抗を有するものとして形成されてもよく、それにより、依然として幾らかの電流がセパレータを通って流れるようにする。
【0052】
更に、セパレータを隅部領域全体にわたって広げること(即ち、隅部自体にセパレータを提供すること)も可能であるが、この例示的実施形態では、セパレータの上記部分は、隅部からある距離(L及びL)の位置に提供される。これはまた、以下に論じる他の実施形態にも当てはまる。
【0053】
図4は、図2に示されるような従来のOLED照明デバイスと、図3に示される本発明の実施形態によるOLED照明デバイスとの比較を示す。
【0054】
図4の左部は、図2に示されるような従来のOLED照明デバイスを示す(輝度分布は含まないが、ホットスポット5の位置を強調して示す)。
【0055】
本発明の実施形態によるOLED照明デバイス10は、図3に示されるようなセパレータ18の提供を除き、従来のOLED照明デバイスに対応する。
【0056】
本発明のこの実施形態によれば、照明領域の隅部に直接進む電流が制限される。そのために、照明領域の隅部の近くに位置された数ミリメートルの小さい帯状部分が、セパレータ18によって絶縁される。この目的は、VOledとT°との差が最大である領域に進む電流を減少させることである。このようにして、照明領域縁部の隅部の近くに現れるホットスポット5がかなり減少される。本発明のこの実施形態によれば、各隅部の2つの縁部が絶縁され、絶縁された各縁部の間に数ミリメートルの空間を残し、隅部への電流注入を減少させはするが、照明領域の隅部での注入が完全にはなくならないようにする。
【0057】
一例として、本発明に従ってパターン形成された隅部を有する場合と有さない場合とについて、長方形デバイス(10.3cm×10.3cm)の電熱シミュレーションを行った。パターン形成された隅部を有する場合と有さない場合とのシミュレートされたデバイスのレイアウト構成が図4に示されている。この例に関して、照明領域1の隅部を、2面で、6mm(L+L)の小さな隙間を設けて16mm(L=L=16mm)にわたって絶縁した。
【0058】
シミュレーションの結果、隅部での輝度の最大値は、電力損失なく、約10%だけ(7700から7000Cd/mに)減少されることが判明した。
【0059】
照明領域の隅部の近くに現れるホットスポットを減少させるこの概念は、照明領域の隅部が同じ電極によって支持される任意のデバイスに適用され得る。
【0060】
ホットスポットを減少させることは、見た目の大幅な改良は対象とせず、主に、外部ストレスに対する感受性、従って生じ得る信頼性の問題の改良を対象とすることに留意されたい。
【0061】
一般に、(適度に効率のよい熱拡散特性を有するデバイスに関して)ホットスポットの位置がOLEDサイズに依存しておらず、ホットスポットが典型的には隅部から約5〜10ミリメートルの距離に位置するという仮定の下で、好ましくは、セパレータの上記部分の長さは5mmよりも長い(L≧3mm、L≧3mm)。更に、隅部からのセパレータ部分の距離は3〜45mmの範囲内であることが好ましい。
【0062】
上記のことは、以下に論じる実施形態にも当てはまる。
【0063】
図5は、本発明の別の実施形態によるOLED照明デバイスの部分断面図である。
【0064】
図5に示されるOLED照明デバイスは、ガラス基板20上に提供され、ガラス基板20上に、照明領域24と、低い導電率を有する透明導電性酸化物(TCO)層21とが提供される。TCO層21の上に、高い導電率を有するメタライゼーション層22が提供され、メタライゼーション層22の上、及びメタライゼーション層22と照明領域24との間にレジスト層23が提供されて、照明領域24、並びにレジスト層23の上に提供される更なるカソード及び有機物層26、27からメタライゼーション層22を分離する。照明領域22と電気コンタクト領域25との間に、薄膜カプセル化(TFE)層28が提供される。
【0065】
OLED照明領域の縁部29は、レジスト層23の内縁部によって画定される。レジスト層23は、全ての蒸着層の下にある環状輪郭であり、短絡を防止する。メタライゼーション層22の内縁部30は、レジスト層23によって覆われる。従って、レジスト縁部29とメタライゼーション縁部30との間に空間があり、そこでは、低い導電率を有するTCO層21による電極接続のみが存在する。この空間は、数ミクロン〜数ミリメートルの間で変えられ得る。本発明によれば、(照明領域の縁部とメタライゼーションとの間にある)この空間のサイズが調整されて、隅部の近く等、特定の位置で電流注入を制限する。
【0066】
上述した構成は一例に過ぎないことに留意されたい。他の実施形態では、レジスト縁部29とメタライゼーション縁部30との間のセパレータ18は非常に小さくてよく、又は更には存在しなくてもよい。他の実施形態では、メタライゼーションは使用されず、PCB縁部ボードのみが、コンタクト領域(電流分配器)の輪郭に沿って配置される。そのような場合、電流の分配は、平均電流レベルが減少されることを除いて、メタライゼーションの場合と同じである。
【0067】
図6は、本発明の更に別の実施形態によるOLED照明デバイスの隅部を示す。
【0068】
図6に一部を示されるOLED照明デバイスは、従来の電極シート又は図3に示される電極シート1と基本的には同じ構造を有する電極シート1を含む。電極シート1は、電極コンタクト12(やはり図1及び図3と同様にアノード)によって(部分的に)取り囲まれており、それにより、電極シート1と電極コンタクト12との間にインターフェース13がある。このインターフェースを介して、OLED照明デバイスの動作中、電流が流れている。
【0069】
図3に示されるデバイスとは異なり、この隅部領域には、連続的なセパレータ18が提供され、セパレータ18は、電極コンタクト12と電極シート1との間に提供される。セパレータ18は、隅部から先細り、それにより、インターフェース13に垂直な方向での厚さは、隅部からセパレータの各端部それぞれに向かって減少される。この実施形態では電極コンタクト12よりも高いシート抵抗を有するものとして提供されるセパレータ18は、インターフェース13のそれぞれの部分を通って流れる電流密度を単に減少させるので、電流密度分布は、(電極コンタクト12のみになるまで徐々に推移していくセパレータ18と電極コンタクト12との組合せにわたる電圧降下に対応する)連続的な勾配を有する。
【0070】
図7は、本発明の更なる実施形態によるOLED照明デバイスの電極コンタクトと電極シートとの間のインターフェースの部分断面図を示す。
【0071】
図7に関して提供される図は、図1図3、及び図6の図に対して垂直である。図7で、OLEDデバイスの隅部は、図示されるインターフェースの左縁部にある。OLEDデバイスの動作中にインターフェース13を通って流れる電流は、紙面に垂直に流される。インターフェース13(より正確には、電極コンタクト12と電極シート(図示せず)との間)に、セパレータ18が提供される。高さ方向で、セパレータ18は楔形を有し、この形状は、図6に示される実施形態と同様の全体的な電流分布の勾配を提供する。
【0072】
図8は、本発明の更なる実施形態によるOLED照明デバイスの隅部を示す。
【0073】
図8に一部が示されるOLED照明デバイスは、従来の電極シート又は図3及び図6に示される電極シート1と基本的には同じ構造を有する電極シート1を含む。電極シート1は、電極コンタクト12(やはり図1図3、及び図6と同様にアノード)によって(部分的に)取り囲まれており、電極シート1と電極コンタクト12との間にインターフェース13がある。このインターフェースを介して、OLED照明デバイスの動作中、電流が流れている。
【0074】
図3又は図6に示される実施形態とは異なり、電極コンタクト12と電極シート1との間に提供されるセパレータではなく、隅部に対してある距離に離隔して配置された2つの部分19において電極コンタクト12と電極シート1との間の接触抵抗が増加され、従って、OLEDデバイスの動作中にこれらの部分を通って流れる電流の電流密度は、部分19の外側のインターフェース領域を通って流れる電流の電流密度よりも小さく、それにより、他の実施形態と同様にホットスポットの発生を減少させる。
【0075】
図9は、本発明の一実施形態によるOLEDデバイスを形成する方法を示す流れ図を示す。
【0076】
本発明による有機発光ダイオードデバイスを形成するための方法は、従来の方法に対応する幾つかのステップ(ここでは図示せず)を含み、それらのステップに続いて、OLEDデバイスの電極シートと電極コンタクトとの間のインターフェースの隅部領域で、電極シートと電極コンタクトとの間にセパレータを提供する分離ステップであって、セパレータが、絶縁材、及び/又は電極コンタクトのシート抵抗よりも高いシート抵抗を有する材料から形成される分離ステップ101と、隅部領域で、電極シートと電極コンタクトとの間の平均の全体的な接触抵抗よりも高い、電極シートと電極コンタクトとの間の局所的及び/又は平均の区域的な接触抵抗を提供する接触抵抗ステップ102との少なくとも一方が行われる。これらのステップの後、再び従来の方法に対応する更なるステップが提供される。
【0077】
図10は、本発明の一実施形態によるOLEDデバイスを動作させる方法を示す流れ図を示す。本発明によるOLEDデバイスを動作させる方法は2つの態様を提供し、これらの態様は、本来的に別個のものではなく、連続的に行われるが、本明細書では説明のためにステップとして示される。態様103において、電極シートと電極コンタクトとの間のインターフェースを通って流れる電流の第1の(局所的又は平均の区域的な)電流密度がインターフェースの隅部領域に提供される。態様104において、電極シートと電極コンタクトとの間のインターフェースを通って流れる電流の第2の(局所的又は平均の区域的な)電流密度がインターフェースの隅部領域の外側に提供される。本発明によれば、第1の電流密度は、第2の電流密度よりも小さい。
【0078】
本発明を図面及び上記の説明で詳細に図示して説明してきたが、そのような図示及び説明は例示又は例説とみなされるべきであり、限定とみなされるべきではない。本発明は、開示される実施形態に限定されない。
【0079】
開示される実施形態に対する他の変形は、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から当業者によって理解され、特許請求される発明を実践する際に実施され得る。
【0080】
特許請求の範囲において、用語「備える」は、他の要素又はステップを除外せず、「1つの(“a”または“an”)」は、複数を除外しない。
【0081】
「値が下限(下限を含む)と上限(上限を含む)との間にある」といった表現は、その値が、下限と上限の値を含めた所与の範囲内の任意の値を有していてよいことを意味する。
【0082】
特許請求の範囲内の任意の参照符号は、範囲を限定するものとみなされるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10