(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553037
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】粉体ベースの付加製造のための機械及び方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/105 20060101AFI20190722BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20190722BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20190722BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20190722BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
B22F3/105
B33Y50/02
B33Y30/00
B33Y10/00
B22F3/16
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-536887(P2016-536887)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公表番号】特表2017-508063(P2017-508063A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2014076701
(87)【国際公開番号】WO2015082677
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年10月11日
(31)【優先権主張番号】1362183
(32)【優先日】2013年12月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】デ ラジュディー クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェル ルドヴィク
【審査官】
池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−042611(JP,A)
【文献】
特開平09−136139(JP,A)
【文献】
特開2001−334581(JP,A)
【文献】
特表2006−500241(JP,A)
【文献】
特表2015−527942(JP,A)
【文献】
特開2018−150624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105
B22F 3/16
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業ゾーン(41、42)内の粉体層(23)に作用するエネルギービーム(3)を用いて粉体(2)を焼結又は溶融することによる付加製造のための機械(1)であって、前記機械は前記粉体を層状にする積層装置を含み、前記積層装置は、
前記粉体を分配して付加製造に適した最終厚さ(24)を有する層(23)にするために前記作業ゾーン上を移動することができる粉体分配手段(6)と、
前記粉体を重力により前記分配手段に移送することができる供給手段(71)と、
前記分配手段に移送される粉体の量を制御することができる計量手段(81、82;811、812)と、を備え、
前記供給手段及び前記計量手段は、前記分配手段と共に移動することができ、
前記機械が、2つの分離した作業ゾーン(41、42)を有し、
前記機械が、互いに独立して動くことができる2つの分離した作業トレイ(601、602)を有し、
前記2つの作業トレイの各々が、前記2つの作業ゾーンの一にのみ関連付けられ、
前記積層装置が、前記供給手段、前記計量手段、及び前記分配手段を搬送する可動キャリッジ(111;111’)を有し、前記可動キャリッジは、両方の作業ゾーンに共通であり、
前記機械が、前記2つの作業ゾーン(41、42)間に配置された中央待機ゾーン(43)を備え、前記中央待機ゾーンは、前記積層装置の前記可動キャリッジを収容することができ、
前記積層装置が、対称的に構成され、積層動作中に各作業ゾーンの上を前記中央待機ゾーンの方向に移動することができるように構成され、
前記計量手段が、前記分配手段(6)の両側に配置された2つの回転計量ロール(811、812)を有し、前記2つの計量ロールの各々が前記2つの作業ゾーンの一に割り当てられている、
ことを特徴とする機械。
【請求項2】
前記分配手段が、両方の作業ゾーンに共通の単一の分配ロール(612)を用いる、
請求項1に記載の機械。
【請求項3】
前記積層装置は、可動キャリッジ(111’) 内の共通分配ロール(612)の両側に配置された、2つのホッパ(521、522)と、2つの回転計量ロール(811、812)とを有している、
請求項2に記載の機械。
【請求項4】
前記エネルギービーム(3)の供給源(11、12)及び制御手段を備え、前記供給源(11、12)及び制御手段は、前記2つの作業ゾーンの各々に対して固有である、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の機械。
【請求項5】
前記積層装置が、作業ゾーン上を一回通過する際に積層を行うように構成される、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の機械。
【請求項6】
一方のホッパが、前記供給手段、前記計量手段及び前記分配手段と共に前記可動キャリッジによって搬送される、
請求項3に記載の機械。
【請求項7】
一方の回転計量ロール(81;811、812)が、計量中に粉体の計量量を定めることが可能な少なくとも1つのキャビティを備え、を有している、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の機械。
【請求項8】
前記分配ロールの高さが、前記ロールの角位置に応じて調整可能である、
請求項2に記載の機械。
【請求項9】
2つの成形ロール(641、642)をさらに備え、前記作業ゾーン上でのそれらの移動は、前記分配手段の移動と一体であり、2つの成形ロールの各々が前記2つの作業ゾーンの一に割り当てられている、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射(例えばレーザビーム)又は粒子線(例えば電子線)などのエネルギービームを用いて粉体の粒を焼結すること又は溶融することによる粉体ベースの付加製造のための機械及びプロセスに関する。
【0002】
特に、本発明は、機械の構成、並びに、エネルギービームを用いて層を焼結又は溶融する前に粉体床を層状にするための、すなわち準備するための手段及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は特に、粉体(金属又はセラミック)をレーザによって焼結するための積層装置を開示する。この装置は、粉体を貯蔵して制御された量で溝付きロールに供給することを可能にするフィードトレイを含み、溝付きロールは、一方で、該ロールが作業ゾーン上を1回目に通過する際に上記量の粉体を堆積トレイへと移送してその上に分配させることができ、他方で、2回目に通過する際にロールの回転運動によって粉体を成形することができる。粉体は次に、レーザビームに供される。この構成の1つの欠点は、フィードトレイのサイズ及び相当の費用である。別の欠点は、作業ゾーンの長さがロールの有効周長によって制限されることである。
【0004】
特許文献2は、レーザによって粉体を溶融するための積層装置を開示する。この装置は、粉体を貯蔵して制御された量でスクレーパシステムに供給することを可能にするフィードトレイを含み、該スクレーパシステムは、堆積トレイ及びロールに供給することができ、該ロールは、上記量の粉体を堆積トレイ上に分配してこれを成形することができる。粉体は次に、レーザビームに供される。この構成の1つの欠点は、フィードトレイのサイズ及び相当の費用であり、また、多数のツール(スクレーパ、分配及び/又は成形ロール、トレイのためのラム)を制御しなければならないことによる必然的な機械の複雑さである。
【0005】
特許文献3は、レーザによって粉体を焼結するための積層装置を開示する。この装置は、粉体を制御された量で作業ゾーンの近傍に供給することを可能にする供給及び計量手段を含む。供給は、上方に設置された粉体のストックから重力によって行われる。スクレーパは、粉体のかたまりの厚さを調整することを可能にし、これが次に予備加熱操作に供される。次いで回転ロールが、上記量の予備加熱された粉体を作業ゾーンへ移送してその上に分配させることを可能にする。ロールを作業ゾーンの一方の側から他方の側へ搬送する、従ってロールの戻りの際にのみ使用されるキャリッジのカバー上に、所定量の粉体が、同様に堆積される場合がある。この構成1つの欠点は、粉体の一部(ごく少量部分であっても)がカバー上に保持され、その後キャリッジが粉体床の上を通過する際に作業ゾーンへと落下するリスクである。このリスクは、工業的用途においては許容できない。
【0006】
特許文献4は、積層装置が粉体を作業ゾーンの上に分配させる手段と一体として移動する供給及び計量手段を有する、粉体ベースの付加製造のための機械及びプロセスを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1641580号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/007087A2号
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0263934号明細書
【特許文献4】国際公開第2013/092757号
【特許文献5】欧州特許第1517779号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術における種々の提案に共通する1つの課題は、機械設備全体の生産性が低いことであり、これは、積層段階中に溶融が中断され、逆に溶融段階中に積層を行うことができないことによる。
【0009】
従って、本発明の目的は、これら欠点の少なくとも1つを克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的で、本発明は、作業ゾーン内の粉体層に作用するエネルギービームを用いて粉体を焼結又は溶融することによる付加製造のための機械を提案するものであり、該機械は、粉体を層状にするための装置を含み、該装置は、
粉体を分配して付加製造に適した最終厚さを有する層にするための、作業ゾーンの上を移動することができる粉体分配手段と、
粉体を重力により分配手段に移送することができる供給手段と、
分配手段に移送される粉体の量を制御することができる計量手段と、を備え、
供給手段及び計量手段は、分配手段と共に移動することができ、該機械は、
機械が、2つの分離した作業ゾーンを有し、
機械が、互いに独立して動くことができる2つの分離した作業トレイを有し、
2つの作業トレイが、2つの作業ゾーンのうちの一方にのみ関連付けられ、
積層装置が、供給手段、計量手段及び分配手段を搬送する可動キャリッジを含み、可動キャリッジは、両方の作業ゾーンに共通であり、
機械が、2つの作業ゾーン間に設置された中央待機ゾーン(43)を備え、中央待機ゾーンは、積層装置の可動キャリッジを収容することができ、
積層装置が、実質的に対称的な方式で構成されており、積層動作中に各作業ゾーンの上を中央待機ゾーンの方向に移動することができるようになっている、
を特徴とする。
【0011】
好ましくは、機械は、粉体貯蔵手段をさらに備え、貯蔵手段は、作業ゾーンよりも高いところに配置される。
【0012】
好ましくは、機械は、エネルギービームの供給源及び制御手段を備え、この供給源及び手段は、2つの作業ゾーンの各々に対して固有である。
【0013】
好ましくは、積層装置は、作業ゾーン上を一回通過する際に積層を行うように構成される。
【0014】
好ましくは、貯蔵手段は、少なくとも1つのホッパを含み、少なくとも1つのホッパもまた、供給手段、計量手段及び分配手段と共に可動キャリッジによって搬送される。
【0015】
好ましくは、計量手段は、計量中に粉体の計量量を定めることが可能な少なくとも1つのキャビティ、好ましくは溝を設けた、少なくとも1つの回転計量ロールを含む。
【0016】
好ましくは、分配手段は、少なくとも1つの分配ロールを含む。
【0017】
好ましくは、少なくとも1つの分配ロールの高さは、ロールの角位置に応じて調整可能である。
【0018】
好ましくは、計量手段は、分配手段の両側に配置された2つの回転計量ロールを含み、2つの計量ロールの各々は、2つの作業ゾーンの一方に割り当てられている。
【0019】
好ましくは、分配手段は、両方の作業ゾーンに共通の単一の分配ロールを用いる。
【0020】
別の好ましい実施形態によれば、分配手段は、計量手段及び供給手段の両側に配置された2つの分配ロールを含み、2つの分配ロールの各々は、2つの作業ゾーンの一に割り当てられている。
【0021】
好ましくは、計量手段は、両方の作業ゾーンに共通の単一の計量ロールを用いる。
【0022】
別の好ましい実施形態によれば、分配手段は、供給手段の両側に配置された2つのスクレーパを含み、2つのスクレーパの各々は、2つの作業ゾーンの一に割り当てられている。
【0023】
好ましくは、機械は、2つの成形ロールをさらに備え、前記作業ゾーン上でのそれらの移動は、分配手段の移動と一体であり、2つの成形ロールの各々は、2つの作業ゾーンの一に割り当てられている。
【0024】
本発明はまた、エネルギービームを用いて粉体を焼結又は溶融することによって物品を付加製造するためのプロセスを提案するものであり、該プロセスは、
A−積層装置を用いて作業ゾーン内に粉体層を堆積するステップと、
B−粉体層を作業ゾーン内で、物品の断面に対応するパターンでエネルギービームを用いて溶融するステップと、
C−ステップA及びBを物品が完成するまで繰り返すステップと、
で、逐次的に構成されるステップを含み、該プロセスは、
分離した作業トレイ上に各々が載置された2つの分離した作業ゾーンを有する機械が用いられ、
両方の作業ゾーンに対して単一の積層装置が用いられ、
積層装置を、積層動作中に各作業ゾーンの上を2つの作業ゾーンの間に設置された中央待機ゾーンの方向に移動させること、を特徴とする。
【0025】
好ましくは、エネルギービームの供給源及び制御手段が用いられ、この供給源及び手段は、2つの作業ゾーンの各々に対して固有である。
【0026】
本発明は、以下の図面に基づくこの説明の残りの部分からより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】従来技術による第1の機械の略断面図である。
【
図2】従来技術による第2の機械の略断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態による機械の略断面図である。
【
図4】本発明による機械によって可能になる製造プロセスにおける典型的なステップの略図である。
【
図5】本発明による機械によって可能になる製造プロセスにおける典型的なステップの略図である。
【
図6】本発明による機械によって可能になる製造プロセスにおける典型的なステップの略図である。
【
図7】本発明による機械によって可能になる製造プロセスにおける典型的なステップの略図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態による機械の略断面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態による機械の略断面図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態による機械の積層装置の略断面図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態による機械の積層装置の略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
種々の図面において、同一又は類似の要素には、同じ符号又は明らかに互いに関連する符号が付されている。従って、これら同一又は類似の要素の構造及び機能の説明を体系的に繰り返すことはしない。
【0029】
図1は、物品40の付加製造のための従来技術による第1の機械を模式的に示す。エネルギー源、この事例ではレーザ源10は、レーザビーム3を放出し、その方向は、ガルバノメータ(検流計)20に従うミラーによって制御される。光学レンズ30は、粉体2の上層を加熱して正確なパターンで粉体を選択的に溶融するために、ビーム3を作業ゾーン4上に合焦し、このパターンは製造される物品の断面に対応する。ビームによる粉体層の処理の後、物品40を一層ずつ形成するために、作業トレイ60を単位厚さだけ降下させ、新たな粉体層で覆い、以下同様に行われる。使用されるエネルギービーム及び粉体のタイプに応じて、粉体層の厚さは、数マイクロメートル(例えば10μm)から数百マイクロメートル(例えば500μm=0.5mm)まで変更することができる。物品40が完成すると、すなわちその構築に必要な数百又は数千の層が逐次的に固化されると、物品は作業ゾーンから取り出される。
【0030】
作業ゾーンに新たな粉体層を適用するための機械の部分を、一般に、全体として「積層装置」と呼ぶ。従来技術の積層装置は、貯蔵手段5と、粉体2を作業ゾーン4の上に分配させるための手段6とを有している。上述のように、従来技術の貯蔵手段は、一般に、作業トレイ60と類似の垂直可動トレイ51を用いる。分配手段6(
図1には詳細を示していない)は、粉体の薄層を作業ゾーン全体の上に分配させる機能を有する。供給手段7(
図1には詳細を示していない)は、粉体を貯蔵手段から分配手段6へ移送する機能を有する。従来技術の分配手段及び供給手段は、共通して、貯蔵手段5と作業ゾーン4との間で移動することができる1又は2以上のキャリッジで搬送される、スクレーパ及び/又はロールを用いる。計量手段8は、この事例では可動トレイ51の上昇を正確に制御する手段であり、積層装置が用いられる各回で使用される粉体の量を制御することを可能にする。ひとたび分配手段が作業ゾーン全体の上を(
図1では左に向かって)移動し終えると、余剰の粉体は、回収容器21の中に押し入れられる。
【0031】
図2は、特許文献4に記載された従来技術による機械を示す。貯蔵手段5は、作業ゾーン4の平面の上方に配置されたホッパ52の形態である。分配手段6は、スクレーパを用いる。スクレーパは、ホッパと一体である。供給手段7は、粉体を重力で分配手段6へ向かって移送するためにホッパ内の下部開口部71を用いる。計量手段は、回転計量ロール81の形態であり、移送される粉体の量を制御することを可能にする。積層装置は、粉体2の層を分配させるために作業ゾーンの上を移動する。移動の最後に、余剰の粉体が回収容器21の中に押し入れられる。
【0032】
図3は、本発明による機械1の第1の実施形態を示す。本発明による機械の本質的な特徴は、2つの分離した作業ゾーン41及び42を有すること、並びに、積層装置がこれら作業ゾーンの両方に共通であることである。従って、機械は、互いに独立して動くことができる2つの分離した作業トレイ601及び602を有し、2つの作業ゾーンの各々はそれぞれの作業トレイの上に載っている。2つの作業ゾーンは、面一である。エネルギービーム3の供給源及び制御部は、従来技術と同じ方式で示される。これは単なる一例である。本出願の序文に記載したように、本発明は、電磁放射(例えばレーザビーム)又は粒子線(例えば電子線)などのエネルギービームを用いて粉体の粒を焼結することによる又は完全に溶融することによる、事実上全てのタイプの粉体ベースの付加製造に適用可能である。従って、本説明の残りの部分は、主として、プロセス及び積層装置、並びに積層装置と2つの作業ゾーンとの協働を中心に論じる。機械は、2つの作業ゾーン41と42との間に設置された中央待機ゾーン43を含む。積層装置の可動キャリッジ111が待機ゾーン内に駐機しているとき(
図5参照)、2つの作業ゾーンは、溶融のために用いることができる。待機ゾーンが2つの作業ゾーンの間に設置されることで、積層装置は、2つの作業ゾーンのどちらか一方で、他方のゾーン内の作業を中断又は妨害することなく作動することが可能になる。
【0033】
機械がまた、各作業ゾーンに対してエネルギービームの固有の供給源(11、12)及び固有の制御手段を含む、好ましい実施形態を本明細書で示す。しかしながら、例えば特許文献5に記載されているように、移動するか又はそのビームが一方のゾーンから他方へと交互に切り換えられる、単一光源を用いることもまた可能である。その場合、共通光源の使用度は、100%になる傾向がある。単一光源を用いる構成の利点は、主として本発明による機械の費用がさらに削減されることである。機械が各作業ゾーンに固有の光源を含む本明細書に示す好ましい事例では、積層装置のキャリッジが中央待機ゾーン43内に配置されているとき(
図5参照)、機械は、左側作業ゾーン41及び右側作業ゾーン42の両方で粉体の溶融を同時に行うことが可能である。2つの光源の各々の使用度が100%よりかなり低いままであっても、このように機械の総生産性が高められることが理解されるであろう。
【0034】
本発明の別の本質的な特徴は、積層動作の間、積層装置の可動キャリッジが作業ゾーンの上を規則正しく中央待機ゾーンの方向に移動することである。これは、積層装置が、右側作業ゾーン42では右から左へ、左側作業ゾーン41では左から右へ作業するように構成されることを意味する。従って、積層装置及びその動作は、実質的に対称的である。好ましくは、回収容器21は、両方の作業ゾーンに共通であり、中央待機ゾーン43の下に設置される。左側作業ゾーン41の余剰の粉体はシャフト211に押し入れられ、右側作業ゾーン42の余剰粉体はシャフト212に押し入れられることが理解されるであろう。2つのシャフトは、共通の回収容器21内で一点に集まる。
【0035】
貯蔵手段5は、この事例では、作業ゾーン41及び42の平面の上方を移動するホッパ52の形態である。この事例の分配手段6は、分配ロール61及び62を用いる。右側ロール62は、右側作業ゾーン42に粉体を分配させ、左側ロール61は、左側作業ゾーン41に粉体を分配させる。供給手段7は、粉体2を重力によって分配手段6に向けて移送するために、単にホッパ内の下部開口部71を用いる。計量手段は、この事例では少なくとも1つのキャビティを含む回転ロール81の形態であり、移送される粉体の量を制御することを可能にする。この少なくとも1つのキャビティは、好ましくは溝82であり、再現性のある粉体の計量量を定める。溝は、計量ロール81の実質的に全有効長に沿って、すなわち作業ゾーン41及び42の実質的に全幅にわたって延びる。溝82の断面の寸法及び形状は、全作業ゾーンにわたる粉体の分配をさらに改善するためにロール81に沿って変化させることができる。
【0036】
図3から
図7は、本発明による機械によって可能にされる製造プロセスにおける典型的な逐次ステップを模式的に示す。
【0037】
図3及び
図4において、粉体2の層23が右側作業ゾーン42の上に積層装置によって徐々に堆積される様子を見ることができる。この積層と平行して、左側物品401を徐々に形成するために、以前に堆積された粉体層の溶融が他方の作業ゾーン(左側作業ゾーン41)において行われる。
【0038】
より詳細には、
図3及び
図4は、ある量の粉体が下部開口部71を通って作業ゾーンの上に堆積されることを示す。この粉体の量は、1又は2以上の計量量、すなわち計量ロール81内の1又は2以上の溝82の容量に対応することができる。分配ロール62は、制御された厚さの粉体層の形成を保証し、余剰の粉体を右側シャフト212を経て回収容器21押し入れる。分配ロールは、固定ロール、又は、好ましくは逆回転ロール、すなわち、その移動とは反対の方向に回転するように(図面内の矢印で示されるように)なっているロールとすることができる。
【0039】
図5に示すように、右側作業ゾーン42における積層が完了すると、積層装置の可動キャリッジ111は、一方又は他方の作業ゾーンでの新たな粉体層の調製のために直ちに使用可能になるように、中央待機ゾーン43内に配置することができる。従って、ここに示すように、粉体の溶融を両方の作業ゾーンで同時に行うことが可能である。
【0040】
左側作業ゾーン41において1つの層の溶融が完了するとすぐに、左側作業トレイ401を降下させることができ、
図6及び
図7に示すように、積層装置がこの作業ゾーンに新たな粉体層を堆積することができる。従って、単一の積層装置が両方の作業ゾーンで交互に用いられる。当然、実際には積層シーケンスは必ずしも2つの作業ゾーン間で交互である必要はないことが理解される。これは、2つの物品401及び402の各々の各層の溶融に対して実際に必要な時間による。例えば、一方の作業ゾーンにおける層の溶融時間を比較的長くすると同時に、他方の作業ゾーンでは2又は3以上の層を堆積して溶融することができるというのは、よくあることである。1つの物品において堆積され溶融される層を増やし、その間、他の物品を機械から取り出すこと及び/又は新たな物品の製造のために作業ゾーンを準備することもまたあり得る。従って、重要な点は、本発明による機械は、特に本明細書で示す2つのエネルギービーム源を各々の作業ゾーンに1つずつ備える事例において、2つの作業ゾーンで事実上独立して作業することを可能にするということである。
【0041】
積層装置のこの実施形態において、貯蔵手段、計量手段及び供給手段は、両方の作業ゾーンに共通である。対照的に、2つの分配ロール61及び62の各々は、単一の作業ゾーン専用である。
【0042】
この実施形態に基づいて、第2のアプローチは、対照的に、作業ゾーンの外側にも駐機することができるキャリッジを提供することである。この場合、積層は、各作業ゾーン内で両方向の移動で行うことができる。このとき、2つの分配シリンダは、所与の作業ゾーン内でキャリッジの移動方向で交互に用いられる。従って、キャリッジは、中央待機ゾーンを規則正しく通過しないことになり、従って、余剰の粉体を回収容器の中へ規則正しく押し込むことなく分配ロール間に保持することになる。この場合の1つの利点は、機械の生産性の向上及び粉体消費の削減である。
【0043】
図8及び
図9は、本発明の第2の好ましい実施形態を示し、ここで積層装置は、可動キャリッジ111’内の共通分配ロール612の両側に配置された2つのホッパ521及び522並びに2つの回転計量ロール811及び812を含む。左側ホッパ522及び左側計量ロール812は、右側作業ゾーン42の積層に用いられ、他方、右側ホッパ521及び右側計量ロール811は、左側作業ゾーン41の積層に用いられる。共通分配ロール612は、両方の作業ゾーンに用いられる。これが逆回転ロールである場合、その回転方向は、一方の作業ゾーンで他方と比べて逆になる。しかしながら、2つの作業ゾーン上でのこの積層装置の動きは、第1の実施形態に関して
図2乃至
図7で説明した動きと同様である。従って、この動作方式をここで再度示すことはしない。
【0044】
図10は、本発明の第3の実施形態を示し、ここで分配手段は、同じくキャリッジ111と一体のスクレーパ631及び632を用いる。左側スクレーパ631は、キャリッジ111の左から右への移動中に左側作業ゾーンの上に粉体を分配することを意図しており、右側スクレーパ632は、キャリッジ111の右から左への移動中に右側作業ゾーンの上に粉体を分配することを意図していることが理解される。同じくキャリッジで搬送される固定又は逆回転成形ロール641及び642が粉体床のさらなる成形を行うことが好ましい。左側ロール641が左側作業ゾーンに用いられ、右側ロール642が右側作業ゾーンに用いられる。機械の残りの部分及びかかる積層装置の動作は、
図3から
図7を参照して上述した通りである。
【0045】
図11は、本発明の第4の実施形態を示し、ここで計量手段及び分配手段は、共通の回転ロール64を用いる。計量機能は、
図3を参照して上述した原理に従って、共通ロール64の溝821又は822によって保証される。分配機能は、共通ロールの平滑化部分65によって保証される。共通ロール64は、作業ゾーンの上を移動する間は回転が固定されていることが好ましい。平滑化部分65、すなわち、共通ロールの粉体を分配することを意図した部分の境界を点線で記号的に定める。好ましくは、この部分は、隆起部66を有する。この隆起部は、全体の高さが小さく(例えば、高々、数十ミリメートル)、この図では拡大されているにもかかわらずほとんど見えない。平滑化部分が隆起部66を有していることで、粉体を分配させる動作中に共通ロール64によって採用される角位置の選択により、平滑化の厚さを精密に調節することが可能になる。
【0046】
図11の描写において、積層装置は、右側作業ゾーン402の上を上述のように通過しており、粉体層23を平滑化して最終厚さ24にするように、物品402の上で粉体2のかたまりを押していることが理解されるであろう。
【0047】
好ましくは、
図11の積層装置はまた、同じくキャリッジ11によって搬送される固定又は逆転ロール641及び642も含み、これらは
図10の実施形態に関して上述したように粉体床のさらなる成形を行う。
【0048】
典型的には、本発明によれば、分配ロールが逆転ロールではない実施形態において、各分配ロールは、作業ゾーンの平面に対するその高さがロールの角位置に応じて調節可能となるように偏心で取り付けられることが好ましい。必要であれば、同じ原理を成形ロールにも適用することができる。
【0049】
図3から
図11は、本発明の本質的な特徴を示したものであり、これに従って積層装置は、一回通過で、すなわち作業ゾーンの上を一度移動して、2つの作業ゾーンの各々を作業ゾーンの外側から待機ゾーンまでスイープすることにより、積層を行うことが可能になる。このことは、これが1つの作業ゾーンであっても他方であっても、当てはまる。
【0050】
従って本発明によれば層は一回通過で製造することができることが理解される。粉体層の幾何学的な品質を向上させるために、作業ゾーンをエネルギービームに供する前に、作業ゾーンの上で分配手段の2回目の通過(従って積層装置のキャリッジの2回目の通過)を行うこともまた可能であることも、理解される。
【0051】
好ましくは、ホッパ内に貯蔵される粉体の量は、数百層、さらには数千層を生成するのに十分であり、すなわち、機械が、ホッパを補充することなく1又は2以上の完全な物品の付加製造を達成することができる。好ましくは、ホッパは、積層装置が動作していないときに補充される。補充は、例えば、物品の製造が完了して仕上がった物品を取り出した後、新規の製造操作を開始する前に行うことができるが、溶融段階(両方の作業ゾーンでの同時溶融段階を含む)の間に行うこともできる。
【0052】
用いられる粉体は、好ましくは金属又はセラミック粉体である。使用されるエネルギービームのタイプに応じて、及び、最終層の意図される厚さに応じて、粉体粒子の平均直径を数マイクロメートル(例えば5μm)から300若しくは400μmまで変更することができる。
【0053】
本発明による機械及びプロセスの説明を、完全に対称な機械の左側部分及び右側部分に基づいて行った。しかしながら、当業者は、機械のこれら2つの部分が必ずしも完全に同一である必要はないことを理解するであろう。当業者は、本明細書で説明し示した種々の実施形態が本発明による手段の組合せの特定の例であることもまた理解するであろう。例えば特許文献4に記載されているような、さらなる組合せ又は均等な手段による種々の手段の自明の置き換えもまた、本発明の一部である。例えば、
図10及び
図11に記載のような、分配手段の両側に成形ロールを追加する原理を、前の図の実施形態に適応することができる。同様に、2つの作業ゾーンをこれら2つの作業ゾーンに共通の積層装置に関連付ける本発明の原理を、本出願で説明したもの以外の積層装置、特に上から供給するタイプのもの以外の積層装置と共に実装することができる。