【実施例】
【0058】
本出願に報告された研究は、第7次欧州共同体フレームワーク計画(FP7/2007−2013)を介して222878番の下で助成金による恩典を受けた。
【0059】
材料及び方法
細胞:
HEK293T細胞株及びHCT116細胞株(結腸直腸癌細胞CCL−247;入手源:ATCC)を、2〜10%のウシ胎児血清(FCS)(Life Technologies)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)(DMEM+グルタマックス)中で5%CO
2の存在下で37℃で培養する。培養培地:塩酸(HCl37%、Sigma-Aldrich)の添加によってpH6.0で緩衝化し、次いで、Corning(登録商標)1,000mLのフィルター(0.22μmPES(ポリエーテルスルホン))を用いてろ過した、DMEM/FCS。
【0060】
ウイルスベクターの産生:
様々な糖タンパク質を用いてシュードタイプ化されたHIV−1由来のウイルスベクターは、Merten et al.(2011)によって記載されているような4つのプラスミドによる、293T細胞におけるリン酸カルシウムを用いての一過性の四重トランスフェクションによって産生される。2×10
8個の293T細胞を、1,760cm
2のハイパーフラスコ(Corning)中のDMEM10%FCS 550mLに蒔いた(Kutner et al. 2009)。24時間後、培養培地を、トランスフェクション培地の中でDNA/CaCl
2/HBS複合体を合わせることによって、該トランスフェクション培地と交換する。4つのプラスミド:gagpol(pKLgagpol)136μg、rev(pKrev)52.25μg、トランスジェニックプラスミド(pCCL−eGFP)206.8μg、各シュードタイプに対して適切なエンベローププラスミド:LV−GaLV−TRを作製するためのGaLV−TR:pBA.GALV−TR/Ampho−Kana(テナガザル白血病ウイルス)223μg;LV−VSV−gを作製するためのVSV−GpMDG(水疱性口内炎ウイルス−g)68.13μg;LV−MVを作製するためのpFΔ30及びpHCMH2(麻疹ウイルスの改変されたエンベロープタンパク質)40μg及び14μg;十分量のH
2O 18mL及びTE0.1× 8.9mLを、CaCl
2(2.5M)3mLと混合し、次いでHBS2X 30mLを加え、複合体の形成を4分間待ち、混合物を培養培地に加える。16時間後、上清を、2%FCS 15Uベンゾナーゼ(Merck)及び2mM MgCl
2(Sigma-Aldrich)の新たな培地と交換する。トランスフェクションから48時間後に収集を行ない、酢酸セルロース(CA)1L(Corning)中の上清を0.45μmのフィルターでろ過する。
【0061】
レトロウイルスベクターMLV−GaLVはPG13細胞によって産生される。これらは、MLV−GaLVベクターを産生する細胞であり(Miller et al. 1991)、細胞を、2〜10%FCSを補充したダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)(DMEM+グルタマックス)中で37℃で5%CO
2で維持する。ベクターの収集は、培養培地を交換してから24時間後に行なう。次に、酢酸セルロース(Corning)中の産物の上清を、0.45μmのフィルターで清澄化する。
【0062】
タンジェンシャルフローろ過(TFF)によるウイルスベクターの濃縮
この工程は、産物の上清を濃縮し、次いでプロセスの継続のために培養培地を適切な緩衝液と交換することからなる。
【0063】
限外ろ過(UF)は、UFカセットの調製、及び0.5バールで20℃での標準水透過性能NWPの決定後に行なわれる。次いで、膜を、他のpHでの濃縮/ダイアフィルトレーションを行なうために(例えば、PBS、pH7.0、5%スクロース、2mM MgCl
2)、pH6.0、5%スクロース、2mM MgCl
2のビス−トリス緩衝液、又は、他の緩衝液を用いて平衡化する。全プロセスは約4℃で行なわれ、濃縮しようとする産物のタンクをアイスボックスに入れる。
【0064】
原理:まず20mLの容量まで濃縮し、次いでイオン交換クロマトグラフィーにローディングするために10倍容量の緩衝液(この場合、10×20mL)を用いてのダイアフィルトレーションが行なわれる。これらの工程の後に、可能な最小限の容量(この場合では10mL)まで2回目の濃縮を行なう。
【0065】
Kros-Flow research II TFFシステム(Spectrum)を使用することによる、750kDa、410cm
2の膜:「中空糸膜カートリッジ」(GE Healthcare、参照番号:UFP750-E3MA)。
【0066】
膜の完全性を確認した後、ベクターの濃縮は初期容量500mLの粗上清から始め、500mLから20mLまで膜によって濃縮する。
【0067】
濃縮された産物を、緩衝液A 200mL(濃縮液20mLを10回ダイアフィルトレーションすることを目的として)に対してダイアフィルトレーションする。これは、25倍の濃縮係数を示す。ダイアフィルトレート液の最終容量は10mLである。この場合、濃縮係数は50倍である。
【0068】
陰イオン交換クロマトグラフィー:
第一の手順では、陰イオン交換クロマトグラフィー工程を、TFFの下流で行なう。いくつかのクロマトグラフィー基材を試験する:一体型カラムCIMD DEAE、CIMD Q(BIAseparation, Villach, Austria)、カラム容量:1mL;サルトバインドD 75MA、容量:2.1mL(Sartorius Stedim Biotech);Poros PI、カラム容量:4mL;Poros D 50、カラム容量:4mL、Poros HQ、カラム容量:4mL(LifeTechnologies)、トヨパール650C DEAE、カラム容量:2mL(Tosoh)。
【0069】
試験しようとするカラムを、280UV吸光度リーダー、伝導率計、プロッタ(Chart recorder 1327, Bio-Rad)、及びフラクションコレクター(Model 2110, Bio-Rad)の装備されたBiologic-LPクロマトグラフ(Biorad)に接続する。
【0070】
5カラム容量(5CV)の緩衝液Aを2mL/分で用いてカラムを平衡化する。試料をカラムにローディングした後、カラムを、所望のpHに依存して、表Aに従って、5CVの適切な平衡緩衝液で洗浄する。次いで2工程の溶出を行なう:ベクターの溶出のための、0.3M NaCl、20mMビス−トリス、5%スクロース、2mM MgCl
2(pH6.0)及び次いで650mM NaCl、20mMビス−トリス、5%スクロース、2mM MgCl
2(pH6.0)。5%スクロース及びMgCl
2(2mM)の存在下(5%)並びに非存在下で適切な緩衝液(例えばビス−プロパン、PBS、L−Hisなどの緩衝液を含む)を使用することによって、3つの他のpHも試験する(pH5.5、7.0、及び8.0)。
【0071】
最後に、画分を、650mM NaClでベクターと共に溶出する混入している塩及びタンパク質を除去するためにゲルろ過カラム(排除クロマトグラフィー)に直ちにローディングする。
【0072】
第二の手順では、清澄化された産物の上清を、これらの条件下におけるクロマトグラフィーの収率を評価するために、事前の限外ろ過/ダイアフィルトレーション工程を全く行なうことなく、陰イオン交換クロマトグラフィーカラムPorosDにローディングする。使用される平衡緩衝液のpHは5.5であり、5%スクロース及び2mM MgCl
2を含有する。
【0073】
排除クロマトグラフィー:
これは、プロセスA及びBのための滅菌ろ過前の最終工程である(
図1)。この工程は、使用されるゲル(例えば、750kDa、又はさもなくば500kDa)よりも小さなサイズを有する混入物を除去することからなる。Captocore700カラムをこの工程のために使用した。これは以下の2つの機能を有するゲルである:排除クロマトグラフィー及び吸着ゲルクロマトグラフィー。
【0074】
ローディングを開始する前に、カラムを1M NaOHを用いて衛生的にし、製剤化用緩衝液を用いて平衡化する。UF/DF産物(プロセスA)、又は陰イオン交換クロマトグラフィー(AXC)のクロマトグラフィーピークに対応する画分(プロセスB)を、カラムにローディングする。8mL(UF/DF、又はAXC画分)を、0.5mL/分の流速でローディングする。次に、製剤化用緩衝液を、0.5mL/分(5CVの製剤化用緩衝液)で注入する。画分はUVピークに対応し、収集し(約16mL)、次いで0.22μmのフィルター上でろ過する(滅菌ろ過)。試料を−80℃で保存する。
【0075】
ウイルスベクターの滴定:
レポーター遺伝子eGFPを有するベクターの形質導入単位(TU)でのウイルス力価を、HCT116細胞の形質導入によって分析する。形質導入から72時間後に、細胞を、以前に記載されているように(Pfeifer et al. 2009)、力価(TU/mL)を決定するためにFACSに通す。ウイルス粒子の物理的分析のために、キットELISAp24(PerkinElmer)を、業者の説明書に従ってレンチウイルスのキャプシドタンパク質p24を定量するのに使用した。
【0076】
臍帯血液細胞CD34+の形質導入:
CD34+細胞を、免疫磁気選択法(Miltenyi Biotec)によって臍帯血から単離する。CD34+細胞の培養及び形質導入は、記載のように(Charrier et al. 2011)成し遂げられる:まず細胞を、培地X−Vivo20(Lonza)中で一晩かけて予め刺激し、サイトカインを補充する。予め活性化された細胞を48ウェルプレートに蒔く(5×10
4個の細胞/100μl)。形質導入は、8μg/mLのベクトフシン(vectofusine)−1の存在下で精製されたベクター100μl(10
6のTU)を添加することによって成し遂げられる。6時間のインキュベート後、分化培地1mL(10%血清を、記載のように(Charrier et al. 2011)サイトカイン(hSCF、h−Il−3 h−Flt3 h−Il−6)の存在下で補充されたX−VIVO−20)を各ウェルに加え、5日後に、形質導入効率を、FACSによってGFPの発現を測定することによって評価する(FC500, BD Biosciences)。
【0077】
SDS−Pageウェスタンブロット:
レンチウイルスベクターを含有している培養試料又は精製された試料を、SDS−PAGE及びウェスタンブロットによって分析して、p24キャプシドタンパク質の存在を検出する。p24タンパク質の顕現を、LI−CORによって開発された方法に従って、Odyssey装置及びOdyssey2.1ソフトウェアパッケージを用いて行なう。使用される一次抗体は、HIVのp24キャプシドタンパク質の検出のための抗p24抗体(Santa-Cruz 番号SC−57823)である。抗体を、0.1%PBS1×−Tween+ブロッカーOdyssey(1:1)中1/200の希釈度で使用する。Li−CORの蛍光色素「Dey800」と結合させて使用される二次ヤギ抗体は、一次抗体に対して指向される。
【0078】
残留タンパク質及び特定の残留DNAの定量:
全タンパク質を、標準物質として血清アルブミンを用いてブラッドフォード法(Bio-Rad)によって定量する。試験は、業者の説明書に従って実施される。
【0079】
残留DNA:プラスミドを起源とする及び/又は宿主細胞から生じる残留DNAの定量は、定量PCRによって成し遂げられる。試料をプロテイナーゼK(Roche)で処理し、次いでDNAをシステム:MagNA Pure ADN及びウイルスNA小容量キット(MagNA Pure 96 Roche)を使用することによって抽出する。次いで、定量リアルタイムPCRをカナマイシンの遺伝子のための特異的プライマーを用いて行ない、プラスミドを起源とする残留DNAを検出する。宿主細胞に由来する残留DNAを検出するために、E1A遺伝子を標的化するプライマーを使用する。絶対的な定量は、定量PCRによって増幅された領域を含有し、かつコピー数が公知である、基準プラスミドと比較して行なわれる。
【0080】
【表1】
【0081】
結果
本発明は、精製されたウイルス粒子の良好な収率及び良好な品質を確保しつつ、GaLV−TR、VSV−G、麻疹ウイルスなどの様々なエンベロープ糖タンパク質を有する、一過性トランスフェクションによって又は安定でシュードタイプ化された産生細胞を用いて産生された、HIV−1に由来するか又は他のレトロウイルスに由来するレンチウイルスベクター、及びPG13などの安定な細胞から産生されたγ−レトロウイルスベクターGaLVのための新規精製プロトコールの開発及び確立に関する。この開発は、本質的にであって排他的ではないが、以下の3つの精製技術に基づく:TFF(タンジェンシャルフローろ過)、陰イオン交換クロマトグラフィー、及び排除クロマトグラフィー。様々な組合せを
図1に示す。
【0082】
細胞の培養及び清澄化:
これらの工程は、定期的に培地が交換され、レンチウイルスベクターの産生を誘導するために3個又は4個のプラスミド(レンチウイルスの「ヘルパー」機能及び組換えベクターの配列を与える)でトランスフェクトされなければならないHEK293又はHEK293Tなどの細胞を用いての連続培養における、レトロウイルスベクターの安定かつ持続的な産生によって特徴付けられる、PG13などの安定な細胞を使用することによる、レトロウイルス及びレンチウイルスベクターの産生からなる。一過性産生は時間が限られ、トランスフェクションから数日後における1回又は数回の収集が可能である。力価は一般的に、ベクターの構成(配列)に依存するがエンベロープタンパク質にも依存する。以下の力価は、これらの産生系を用いて得ることができる(表1)。
【0083】
【表2】
【0084】
あらゆる更に他の処理の前に、産物の上清中に存在する細胞片及び凝集物を除去することが可能である。従来的には、0.45μmのフィルター(酢酸セルロース)を使用する。この工程の収率は80±5%である。しかしながら、当業者は、類似の挙動及び収率によって特徴付けられる、他の膜又は連続した膜を使用してもよい。
【0085】
タンジェンシャルフローろ過:
タンジェンシャルフローろ過は、限外ろ過及びダイアフィルトレーション(UF/DF)の2つの連続した工程を含む。これらの両方の工程は、サイズが、使用される膜の孔の排除サイズよりも小さい大部分の混入物を除去する可能性を与える。このUF/DF工程はまた、ウイルス粒子を濃縮し、精製しようとする産物の容量を減少させる可能性を与える。750kDaの孔の排除サイズを有する110cm
2の膜(GE HealthCare)を使用した。UFを開始するために、様々な濃度のスクロース(特に5%スクロース(重量/容量))、及び様々な濃度のMgCl
2(特に2mM MgCl
2(最終濃度))を、清澄化した産物に加える。次に、UF濃縮工程を、流速80mL/分、7プサイグで行なう。TFFタンクをアイスボックスに入れ、UF/DF中の低温を確保する。ダイアフィルトレーション工程は、UF中に500mLから20mLへと容量を減少させた後に開始する。DFのために、200mL(濃縮産物の10倍容量)のダイアフィルトレーション緩衝液:PBS、5%スクロース、2mM MgCl
2を使用する。この工程の終了時に、20mLのUF/DF産物を50mLのCorningチューブに回収する。緩衝液の選択は、調製物の用途又は濃縮/ダイアフィルトレーション後の工程の最適条件に依存する(例えば、この場合、他の緩衝液、例えばビス−トリス(pH6.0)、5%スクロース、2mM MgCl
2を使用し得る)(表A参照)。試料を、Fenard et al.(2013)によって記載されているようなHCT116細胞上で滴定する。
【0086】
濃縮/ダイアフィルトレーション条件の最適化のための研究:
1.レンチウイルス粒子は、80〜120nmの範囲の直径を有し、このことは濃縮/ダイアフィルトレーションのために使用され得る膜の孔サイズは、最大で約50nm(又は750kDa)までの範囲であり得ることを意味する。本発明の範囲内において、500kDa及び750kDaのカットオフサイズを評価した。収率(TU)は以下であった:750kDaの膜については64%の収率(TU)に対して、500kDaの膜については34%の収率(TU)。
【0087】
図2は、500kDa及び750kDaのカットオフ値を有する膜を使用することによるタンジェンシャルろ過後のベクターの調製物についての電気泳動ゲル(SDS−PAGE及びウェスタンブロット)を示す。750kDaの膜を使用した時に得られたより高い収率に加えて、750kDaのカットオフ値(
図2、第2列、第3列)は、混入しているタンパク質の除去に関して、500kDaの膜(
図2、第5列、第6列)の使用と比較してプラスの効果を有することは明らかである。更に、750kDaの膜を用いて作製された濃縮液は、粗上清で観察されたよりもはるかに弱いタンパク質バンドを含有している。
【0088】
2.タンジェンシャルろ過工程は、レトロウイルス/レンチウイルス粒子の失活をもたらすずり磁場の発生によって特徴付けられるので、これらのベクターの機能を維持するためにこの工程を最適化することが必要であった。タンジェンシャルろ過の有害条件からレンチウイルスベクターを保護するために、様々な濃度のポリオールの添加が評価された。
【0089】
【表3】
【0090】
これらの結果は明らかに、スクロース及びMgCl
2の存在下でLV−GaLV−TRベクターを含有している上清の濃縮/ダイアフィルトレーションを行なう利点を示す。最善の収率は、2%〜5%の濃度のスクロースで得られる(表2)。
【0091】
更に、中程度のスクロース濃度の使用は、濃縮しようとする試料がより粘性が低いという利点を有する。なぜなら、高いスクロース濃度(10%〜15%)は粘度の増加をもたらすからである。
【0092】
3.機能的ベクターのタンジェンシャルろ過及び収率に対する、pH及びその影響の評価
本出願人によって提出された出願FR1358909において、様々なエンベロープタンパク質を用いてシュードタイプ化されたエンベロープベクターの産生が、pH6.0の使用時に増加する(2倍まで)ことが示された。タンジェンシャルろ過の効率に対する、レンチウイルスベクターを含有している上清のpHの選択の影響を評価することを決断した。この脈絡において、2つの異なるpHを、GaLV−TFシュードタイプ化レンチウイルスベクターの濃縮/ダイアフィルトレーション中に評価した(pH6及びpH7)(表3)。7.0から6.0へのpHの低減により、収率は約10%低減した(73.6%から64%に)。しかしながら、この収率は依然として許容されるものであり、それ故、酸性pHでの濃縮/ダイアフィルトレーションを想定することが可能である。
【0093】
【表4】
【0094】
4.GaLV−TRレンチウイルスベクターの濃縮/ダイアフィルトレーションのための最善条件の同定
GaLV−TRレンチウイルスに関して、最善の濃縮/ダイアフィルトレーション(タンジェンシャルろ過)条件は以下であった:LV−GaLV−TRベクター(1L)を、5%スクロース及び2mM MgCl
2の存在下で0.45μmの酢酸セルロース膜を通して清澄化し、続いてTFF工程(カートリッジ750kDa、410cm
2)を行ない、容量を低減させて20mL(50倍)に達する。次いでダイアフィルトレーション工程を、容量200mLの適切な緩衝液(例えば、ビス−トリス20mM pH6.0、5%スクロース、及び2mM MgCl
2、又はPBS pH7.0、5%スクロース及び2mM MgCl
2)に対して行なう。
【0095】
LV−GaLV−TRベクターのためのこの工程の収率は、550mLの初期容量の粗生成物に対して86%±5%である。濃縮生成物の容量は15mLであり、濃縮係数は36.6倍であり、混入物の除去は90%超を達成した。
【0096】
5.様々なエンベロープタンパク質を用いてシュードタイプ化された他のレトロウイルス及びレンチウイルスベクターの濃縮/ダイアフィルトレーションのために確立されたタンジェンシャルろ過条件の評価
科学文献において、レトロウイルス及びレンチウイルスベクターの指向性を研究及び改良するために、様々なエンベロープタンパク質が評価された。この脈絡において、GaLV−TRレンチウイルスベクターの濃縮/ダイアフィルトレーションのために確立された条件を、様々なエンベロープタンパク質を用いてシュードタイプ化されたレトロウイルス及びレンチウイルスベクターの濃縮/ダイアフィルトレーションについて評価した(表4)。GaLV−TRシュードタイプ化レンチウイルスベクターを用いて得られた結果が基準として示されている。
【0097】
【表5】
【0098】
表4で提示された結果は、様々なエンベロープタンパク質を用いてシュードタイプ化されたレトロウイルス又はレンチウイルスベクターを、pH7.0でスクロース及びMgCl
2の存在下において濃縮し得、これにより、LV−GaLV−TRについては約74%から、VSVgについては約100%までの範囲の収率が得られることを示す。pH6.0の使用に関しては、VSVgを用いてシュードタイプ化されたベクターについては全く差異が観察されなかった。
【0099】
GaLV−TRシュードタイプ化レンチウイルスベクターに関して、これらのベクターは、タンジェンシャルろ過中にpH7.0においてより安定であることが判明する。濃縮/ダイアフィルトレーション収率は90%超であったが、GaLV−TRレンチウイルスベクターについての収率は約74%であった。
【0100】
陰イオン交換クロマトグラフィー:
タンジェンシャルフローろ過による濃縮/ダイアフィルトレーション工程は、タンパク質及びDNAの積載量をかなり低減させ(上記参照)、このことはクロマトグラフィーのリガンドへの接近に関して精製しようとするベクターの競合物質であり得る混入物のかなりの割合が低減されることを意味する。原則的に、その後の用途に応じて、精製を検討する際に2つの異なる方法を想像することが可能である。それらは
図1に示されている:1回の排除クロマトグラフィー工程を適用する単純化されたプロセス(
図1のA)、及び臨床使用のためのレンチウイルスベクターを調製するための追加の陰イオン交換クロマトグラフィー工程を適用するより精巧なプロセス(
図1のB)。
【0101】
様々なクロマトグラフィーの可能性が続いて展開されている:
TFF UF/DF工程後に、混入物を低減させ、ウイルス粒子を良好に分離するために、陰イオン交換クロマトグラフィー工程を追加する。この技術は、pH及び塩濃度に応じて、その等電点に従って生体分子の分離を可能とする。それ故、所与のpH値において、捕捉された生体分子を脱離するために特定の塩濃度(しばしばNaCl)が必要とされ、この濃度は、生体分子とリガンドとの間の相互作用力に従って選択されなければならない:この相互作用が大きいほど、塩濃度(塩分)は高くなければならない。更に、クロマトグラフィー緩衝液のpHが、精製しようとする生体分子種の等電点に近いほど、クロマトグラフィーリガンドから生体分子を脱離するために必要とされる塩は少ない。しかしながら、レトロウイルス及びレンチウイルスベクターは、塩濃度に依存してその感染力を急速に失うことが知られている(Segura et al. 2006によって概説されている)。それ故、第一段階で、様々なNaCl濃度に対するレンチウイルスベクターの安定性を評価した。
【0102】
1.GaLV−TRレンチウイルスベクターの安定性に対する塩分の影響:
上記に示されているように、クロマトグラフィーカラムによって捕捉された生体分子の溶出はしばしば、塩勾配(NaClを含有している緩衝液)を用いて又は塩濃度(NaCl)を増加させる工程を用いて成し遂げられる。それ故、NaCl濃度の影響を評価するために、TFF後のレンチウイルスベクターのインキュベーション試験を、50mMから1,500mMの範囲の様々なNaCl濃度で室温で4時間かけて行なった。
図3は、NaCl濃度による室温でのレンチウイルスベクターの感染力を、全くNaClを加えない条件又はNaClを加えずに4℃でインキュベートされた同じベクター調製物と比較して示す。この試験は明らかに、50mMと1Mとの間に含まれるNaCl濃度が、GaLV−TRレンチウイルスベクターの安定性に対してやや有害な作用を及ぼし、感染力は29.52%(50mM NaCl)から43.86%(1M NaCl)(4℃で保存された調製物に対する比率)の範囲で低下することを示す。他方で、1.5M NaClの濃度は、ベクターの調製物を室温で4時間保存した場合には63.8%の感染力の低下をもたらす。NaClを加えずに20℃(室温)で4時間保存しても、4℃での保存と比較して、ベクターの感染力は約23%とある程度減少することを注記すべきである。
【0103】
これらの結果は、最大の感染力を維持するために、可能な最も低い塩分を用いて、それ故、理想的には1M未満のNaClを用いて、クロマトグラフィー基材のGaLV−TRレンチウイルスベクターを溶出することが不可欠であることを意味する。更に、また、低温(理想的には4℃〜10℃)で精製全体(全工程)を行なうことが好ましい。
【0104】
2.様々な陰イオン交換クロマトグラフィー基材(AEX)の評価:
本発明者らは、低級陰イオン交換クロマトグラフィー基材(DEAD(D))を使用して、特にクロマトグラフィーカラムから該ベクターを脱離させるために必要とされる塩濃度を減少させようと試みることによって、このタイプの基材によるベクターの失活を制限することが可能であるかどうかを決定した。PG13細胞(MLV−GaLV)の培養物から濃縮された上清を使用した予備試験においては、DEAE(東ソーTSKゲルDEAE 5PW)に基づいたクロマトグラフィー基材の使用により、収率が僅か16%であった(溶出中に失活を引き起こす強力すぎる相互作用に因る)強力な交換体(GE HealthCareのQセファロースFF)の使用中よりも高い約71%という感染性ベクターの収率をもたらすことを示すことが可能であった。この例では、レトロウイルスベクターの脱離のために必要とされる塩濃度は、それぞれ655mM及び915mMであった。これらの結果に基づいて、低級陰イオン交換体が、展開の継続のために選択された:いくつかのクロマトグラフィー基材を評価した:モノリスCIM D(DEAE)、PorosD50(Life Technologies)、サルトバインド(Sartorius)(Bandeira et al. 2012)、トヨパール650C DEAE(Merten et al. 2011)。
【0105】
予備試験として、GaLV−TRレンチウイルスベクターの精製を目的として、3つの基材をpH5.5又は6.0及び7.0において評価した。pH5.5又は6.0及び7.0で試験された全ての基材について、低いpHの選択(5.5又は6.0)が、感染性ベクターの収率の点で有益であった:CIM D DEAE基材に関しては、収率は、クロマトグラフィーに使用される緩衝液のpHを7.0から6.0へと減少させる間に23%(pH7.0)から64%(pH6.0)まで増加した(
図4)。類似した結果が、サルトバインド75D(5.8%から15.6%まで収率が増加)及びPorosDの基材(32%(pH7.0)から80.2%(pH6.0)及び約100%(pH5.5)まで収率が増加)、並びにトヨパール650Cゲル(23%(pH7.0)から89%(pH5.5)まで収率が増加)について観察された(
図4)。更に、基材からベクターを脱離するために、溶出緩衝液の塩分は、pH6.0でのクロマトグラフィー中により低くあることが可能であった(それ故、レンチウイルスベクターにとってはより穏やかである)。pH6.0で使用されるPorosD基材に関しては、ベクターの溶出は650mM NaClで達成される(以下参照)。全体的な効率の点では、「現代的な」基材(より最近になって開発され、クロマトグラフィー中により少ないずり応力(本質的には他の基材よりも大きな多孔度に起因する)を発生し、モノリスCIM D DEAE又はPorosDのような、緩衝液の流速の変更中における基材の非圧縮性によって特徴付けられる)は、膜(サルトバインド75D)を有する基材又は圧縮性ゲル(トヨパール650C)に基づいた基材の収率よりも高い収率を示した。
【0106】
最後に、最近の基材で選択が行なわれた。なぜなら、ベクターを分離し回収するその効率が、より従来の基材と比較してより高かったからであった。それ故、これらのどちらの支持体もより広く評価され、レンチウイルスベクターを精製するためにその使用が最適化された。CIM D DEAE及びPorosDのどちらの支持体も、60%を超える興味深い収率を有する。溶出は、650mM NaCl、ビス−トリス、5%スクロース、2mM MgCl
2、pH6.0で行なわれる。溶出緩衝液(PBS)のpHを7.0まで上昇させることにより、7%未満の数値まで収率の低下が引き起こされるが、PBSに5%スクロースを添加することにより、約7%から40%への有意な増加が引き起こされる。しかしながらこの場合、1Mを超えるNaCl濃度を使用することが必要である。実際に、pH7.0ではベクターを溶出するために(追加のスクロースを含まない緩衝液)、約1.5MのNaClがPBS中に必要であることが観察され、これがおそらく低収率の原因である。ウイルス粒子の安定性に対する塩濃度のマイナス効果が知られている(Segura et al. 2005)。
【0107】
3.PorosD基材を使用することによるクロマトグラフィーの効率に対する様々なpH値の評価:
pHを、5%スクロースの存在下及び非存在下において5.5〜8.0の範囲内で変化させた。5%スクロースの存在は、pHが5.5を超える場合には陰イオン交換クロマトグラフィー工程中の収率にプラスの効果を及ぼす(例:PorosD)(表5)。収率に対するスクロースの存在のプラスの効果は、pH5.5ではもはや観察されない。他方で、スクロースの存在は、pH8.0においては、約58%の感染性ベクターの回収のために不可欠である。6.0から7.0の範囲のpHの使用中に、収率は52〜65%であり、最善の収率(約100%)はpH5.5で得られる。
【0108】
一般的に、5%スクロースの存在は、レンチウイルスベクターの溶出を開始するのに必要とされる塩分の減少と、必要とされるNaCl濃度の約25mMの減少をもたらす。
【0109】
【表6】
【0110】
4.第一工程として陰イオン交換クロマトグラフィーを含む代替的な手順の評価:
本発明者らは、清澄化工程の直後に陰イオン交換クロマトグラフィー工程を適用した時に得られた収率を評価した。これらの条件下で観察された収率は、限外ろ過/ダイアフィルトレーション工程を、清澄化と陰イオン交換クロマトグラフィーとの間に適用した場合よりも低い。それ故、後者の手順が、その後の精製のために選択された。
【0111】
排除クロマトグラフィー:
排除クロマトグラフィーは、その分子サイズに従って生体分子を分離するために選択された方法であり、これにより、粒子を混入物から分離することが可能となる。
【0112】
ろ過用ゲルCapto Core700(GE HealthCare)を使用したが、他の基材も考えられ得る。この工程は、前の工程の緩衝液を所望の製剤化用緩衝液で置換し、750kDa未満のサイズの混入分子を除去し、ローディングしようとする試料の希釈を回避することを可能とする。このクロマトグラフィー工程は、タンジェンシャルフローろ過後に(濃縮/ダイアフィルトレーション−プロセスA)又は陰イオン交換クロマトグラフィー工程後に(プロセスB)直接使用され得る(
図1)。レンチウイルスベクターを含有しているタンジェンシャルフローろ過からの試料又は陰イオン交換クロマトグラフィー画分からの試料を、排除クロマトグラフィーカラムにローディングする。どちらの場合においても、この工程の収率は、その後の使用のために保持された画分に応じて86%±4である。
【0113】
図5は、ゲル(Capto Core700)ろ過によるレンチウイルスベクター(タンジェンシャルフローろ過によって濃縮及びダイアフィルトレーションにかけられた)の精製を示す。ベクターの溶出ピークは、緩衝液の前の通路に見られ、画分4〜9でカラムから出て、これはカラムに最初にローディングされたベクターの量の約70%を網羅する(
図5a)。
図5B及び5Cは、電気泳動(ウェスタンブロット、SDS−PAGE)による各画分の分析を示し、これは明らかに混入しているバンドがないこと(
図5c)及びレンチウイルスベクターのキャプシドタンパク質p24に相当する24〜25kDaにおけるバンドの存在を示す。
【0114】
収率及び純度:
最も重要なパラメーターは、全収率、並びに、混入タンパク質及び混入DNAの積載量の低減時のレンチウイルスベクター調製物の純度に関する。
【0115】
臨床使用のためのレンチウイルスベクターの精製を目的とした手順B(TFF、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び排除クロマトグラフィー(SEC)を含む)に関して(
図1)、収率は約50%であり、この手順は混入タンパク質の99.9%除去及び混入DNAの99.9%除去を可能とする。
【0116】
研究に使用するためのレンチウイルスベクターの精製を目的とした手順A(TFF及び排除クロマトグラフィー(SEC)を含む)(
図1)はより単純である。なぜなら、それは陰イオン交換クロマトグラフィー工程を含まないからである。全収率は、精製工程数の減少のためにより高く、60.2%を達成し、この単純化された手順の残留DNA混入物の除去は96.17%の次元であり、混入タンパク質の99.63%の減少が観察される。
【0117】
標的細胞の形質導入の実践例:
CD34+細胞の形質導入:
精製ベクターの品質を決定するために、臍帯血細胞CD34+を形質導入する。細胞を、サイトカインで予め刺激した18時間後に解凍する。形質導入を6時間かけて行なう。次に、細胞を、5日間、分化培地に入れる。次いで細胞を、GFPの発現率を測定するために、FACS FC500(BD Biosciences)に通過させる。以下の結果が典型的には得られる(
図6):レンチウイルスベクター(GaLV−TR)の濃縮/ダイアフィルトレーションによる精製により、CD34+細胞の形質導入効率(GFPを発現している細胞の比率として表現される)は、粗上清の使用時の9%から、濃縮/ダイアフィルトレーションにかけられたLVベクターの調製物の使用時の70%まで増加する。
【0118】
麻疹ウイルスの改変されたエンベロープを用いてシュードタイプ化されたレンチウイルスベクターの精製
麻疹ウイルスのエンベロープの改変された糖タンパク質を用いてシュードタイプ化(MVシュードタイプ化)されたレンチウイルスベクターの精製プロセスをここに記載する。上記に示された手順に従って産生されたLV−MV−CMHII(CMHII=抗CMHII抗体)レンチウイルスベクターを、以下の工程に従って精製する:
【0119】
1)TFF工程を用いての濃縮/ダイアフィルトレーション
−使用する膜:1リットルの産物の精製のための、GE 番号UFP−750−E−3MA 110cm
2
−ダイアフィルトレーション緩衝液:PBS((pH7.0)、2mM MgCl
2、5%スクロース)
−容量の低減:500mL/1,000mLから20mLへ、緩衝液をダイアフィルトレーション緩衝液と交換する。
−
感染性ベクターの収率:64〜70%。
【0120】
2)排除クロマトグラフィー(ゲルろ過):
−使用するカラム:CaptoCore700 4.7mL
−製剤化用緩衝液:PBS、5%スクロース、2mm MgCl
2、又はさもなくば5%スクロース及び2mM MgCl
2を含有しているX−vivo又はHANKS
−10CVの製剤用緩衝液を用いてのカラムの平衡化
−TFFからの濃縮液を、0.5mL/分の速度でCaptoCore700カラムにローディング
−20CVの製剤化用緩衝液を用いてのカラムの洗浄
−ODピークに対応する試料の収集(50倍で容量21mL)
−
感染性ベクターの収率:90%超(TU)。
【0121】
この精製の全収率は、感染性ベクター60〜63%であり、これは、精製についての、それ故、改変されたMV糖タンパク質を用いてシュードタイプ化されたレンチウイルスベクターの利用についての大きな進歩を示す。
【0122】
参考文献
【表7】