(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反応生成物(R)が、二量体脂肪酸と、120〜6000g/molの数平均分子量を有する脂肪族、芳香脂肪族、及び/又は芳香族ジヒドロキシ官能性化合物との反応によって調製され、使用される前記ジヒドロキシ官能性化合物が、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及び/又は二量体ジオールである請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
前記ポリウレタン樹脂(X)が、化合物(x.1)として、少なくとも1種のα,α−ジメチロールアルカン酸を使用して調製される請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
前記少なくとも1種のα,α−ジメチロールアルカン酸が、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、及び/又は2,2−ジメチロールペンタン酸からなる群から選択される請求項6に記載の製造方法。
前記ベースコート材料(b.2.1)、又は前記ベースコート材料(b.2.2.x)の少なくとも1種もしくは前記ベースコート材料(b.2.2.x)の全てが、さらに、バインダーとしての、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、及びこれらのポリマーのコポリマーからなる群から選択される、(CP)、(R)、及び(X)以外の、少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリマーを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
前記ベースコート材料(b.2.1)、又は前記ベースコート材料(b.2.2.x)の少なくとも1種もしくは前記ベースコート材料(b.2.2.x)の全てが、さらに、架橋剤としてメラミン樹脂を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
前記ベースコート材料(b.2.1)、又は前記ベースコート材料(b.2.2.x)の少なくとも1種もしくは前記ベースコート材料(b.2.2.x)の全てが、少なくとも1種の着色顔料、及び/又は効果顔料を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
前記ベースコート材料(b.2.1)、又は前記ベースコート材料(b.2.2.x)の少なくとも1種もしくは前記ベースコート材料(b.2.2.x)の全てが、一成分コーティング組成物である請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
前記オレフィン性不飽和モノマーの混合物が、重合に使用されるオレフィン性不飽和モノマーの総量に対して、10.0質量%未満のビニル芳香族モノマーを含む請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず第一に、本発明において使用されるいくつかの用語が、説明される。
【0018】
基板へのコーティング組成物の施与、又は基板上のコーティング膜の生成は、以下の通り理解される。各コーティング組成物は、それらから生成されるコーティング膜が、基板上に配置されるが、前記基板に必ずしも直接接触することを要しない方法で施与される。例えば、その他の層が、前記コーティング膜、及び前記基板の間に配置されてもよい。例えば、段階(1)において、硬化した電気塗装(E.1)が、前記金属基板(S)上に生成されるが、以下に示すように、リン酸亜鉛コーティング等の化成処理が、前記基板、及び前記電気塗装の間に配置されてもよい。
【0019】
同様な原理は、別のコーティング組成物(a)によって生成されるコーティング膜(A)へのコーティング組成物(b)の施与、又は例えば、金属基板(S)上に配置される別のコーティング膜(A)上のコーティング膜(B)の生成に適用される。コーティング膜(B)は、コーティング層(A)と接触していることを要しないが、ただ単にその上に配置され、すなわち、前記金属基板を背にしているコーティング膜(A)を支持しなければならない。
【0020】
対照的に、基板へのコーティング組成物の施与、又は基板上のコーティング膜の生成は、以下の通り理解される。各コーティング組成物は、それらから生成される前記コーティング膜が前記基板上に配置され、前記基板と直接接触するような方法で施与される。したがって、さらに具体的には、他の層は、コーティング膜、及び基板の間に一切配置されていない。当然に、同様なことが、コーティング組成物(a)によって生成されるコーティング膜(A)への直接のコーティング組成物(b)の施与、又は例えば、金属基板(S)上に配置される別のコーティング膜(A)上の直接のコーティング膜(B)の生成に適用される。この場合、2種のコーティング膜は、直接接触しており、すなわち、一方が、他方の上に直接配置される。さらに具体的には、コーティング膜(A)、及び(B)の間に、さらなる層は一切ない。
【0021】
当然に、同様な原理は、コーティング組成物の直接連続する施与、又は直接連続するコーティング膜の生成に適用される。
【0022】
本発明との関連で、「フラッシュオフ(flashing off)」、「中間乾燥」、及び「硬化」は、マルチコート塗装系(paint system)の製造方法に関連して、当業者によく知られている意味を有する。
【0023】
したがって、用語「フラッシュオフ」は、原則として、通常、大気温度(すなわち室温)で、例えば、15〜35℃で、例えば、0.5〜30分間で、塗装系の製造において施与されたコーティング組成物中の有機溶媒、及び/又は水の蒸発、又は蒸発を可能にすることとして理解される。したがって、前記フラッシュオフ操作の間、施与されたコーティング組成物中に存在する有機溶媒、及び/又は水が蒸発する。前記コーティング組成物は、少なくとも施与直後、及びフラッシュオフ操作の開始時には、まだ田自由流動性であるので、それは、前記フラッシュオフ操作の間、流れ得る。これは少なくともスプレー塗布によって施与されたコーティング組成物が、一般に液滴の形態で施与され、均一な厚さで施与されないからである。しかしながら、それは、存在する有機溶媒、及び/又は水のおかげで自由流動性であり、したがって、流れることによって、均一で、平坦なコーティング膜を形成し得る。同時に、フラッシュオフ段階後に形成された比較的平坦なコーティング膜が、施与されたコーティング組成物と比較して、より少ない水、及び/又は有機溶媒を含んで、形成されるように、有機溶媒、及び/又は水が、徐々に蒸発する。しかしながら、フラッシュオフ操作後、前記コーティング膜は、まだ、使用のために準備できた状態ではない。例えば、もはや自由流動性ではないが、まだ柔らかく、粘着性であり、いくつかの場合は、部分的に乾燥されているだけであり、前記コーティング膜は、まだ、以下に記載されるように、硬化されていない。
【0024】
したがって、中間乾燥は、同様に、通常、大気温度と比較して上昇した温度で、例えば、40〜90℃で、例えば、1〜60分間で、塗装系の製造において施与されたコーティング組成物中の有機溶媒、及び/又は水の蒸発、又は蒸発を可能にすることを意味すると理解される。したがって、中間乾燥操作も、施与されたコーティング組成物が、有機溶媒、及び/又は水の一部を失う。特定のコーティング組成物に関して、フラッシュオフと比較して、有機溶媒、及び/又は水のより高い割合が、施与されたコーティング膜から、排出されるように、一般に、フラッシュオフと比較して、例えば、より高い温度、及び/又は、より長い期間で、中間乾燥が行われる。しかしながら、前記中間乾燥でも、使用のために準備できた状態のコーティング膜、すなわち、以下に記載される硬化したコーティング膜を形成しない。フラッシュオフ、及び中間乾燥操作の典型的な順序は、例えば、施与されたコーティング膜を大気温度で、5分間、フラッシュオフする工程、及びその後、それを、80℃、10分間で、中間乾燥する工程を伴う。しかしながら、2種の用語の決定的な区切りは必要でないか、又は意図されない。純粋にに明確にするため、これらの用語は、以下に記載される硬化操作が、コーティング組成物、前記コーティング組成物に存在する有機溶媒、及び/又は水の、より高い、又はより低い割合が蒸発する蒸発温度、及び蒸発時間に応じて、可変で、順次的なコーティング膜の調整に、先行され得ることを明確にするために使用される。場合によっては、バインダーとしてコーティング組成物に存在するポリマーの割合が、この早期の段階でさえ、以下に記載されるように架橋、又はインターループ(interloop)し得る。しかしながら、フラッシュオフ、中間乾燥操作のいずれも、以下に記載される硬化によって達成されるような、すぐ使える(ready-to-use)コーティング膜を形成しない。したがって、硬化は、フラッシュオフ、及び中間乾燥操作と、明確に区切られる。
【0025】
したがって、コーティング膜の硬化は、そのようなフィルムのすぐに使える状態への、すなわち、各コーティング膜を有する供給された基板を輸送できる状態へ変換することを意味することが理解される。さらに具体的には、硬化したコーティング膜は、もはや柔らかくも、粘着性でもなく、以下に記載される硬化条件へのさらなる暴露下であっても、前記基板上における硬さ、又は粘着性等の、その特性において、いかなるさらなる重要な変化を受けない、固形化したコーティング膜として調整されている。
【0026】
周知の通り、コーティング組成物は、原則として、バインダー、及び架橋剤等の存在する成分に従って、物理的、及び/又は化学的に硬化性である。化学的硬化の場合、熱化学的硬化、及び放射線化学的硬化(actinochemical curing)が、選択肢である、それが熱化学的に硬化し得る場合、コーティング組成物は、自己架橋性(self-crosslinking)、及び/又は外部架橋性(externally crosslinking)であってもよい。本発明との関連で、コーティング組成物が、自己架橋性、及び/又は外部架橋性であるという記述は、この組成物が、バインダーとして、ポリマー、及び、任意に、それに応じて、互いに架橋し得る架橋剤を含むことを意味すると理解されるべきである。基本的な機構、及び使用され得るバインダー、及び架橋剤は、以下に記載される。本発明との関連で、「物理的に硬化性である」又は用語「物理的な硬化」は、ポリマー溶液、又はポリマー分散系からの溶媒の放出を通じた硬化したコーティング膜の形成であり、前記硬化は、ポリマー鎖のインタールーピングを通じて達成されることを意味する。
【0027】
本発明との関連で、「熱化学的に硬化性である」、又は「熱化学的硬化」は、塗装膜の、反応性官能基の化学反応によって開始される架橋(硬化したコーティング膜の形成)であり、これらの化学反応のための活性化エネルギーを、熱エネルギーを通じて提供することが可能であることを意味する。これは、互いに異なる相互に補完する官能基(相補的官能基(complementary functional group))の反応、及び/又は自己反応性基、すなわち、同種の基と内部反応する(intrer-react)官能基の反応に基づく硬化層の形成を伴い得る。適切な相補的反応性官能基、及び自己反応性官能基の例は、例えば、ドイツ特許出願DE19930665A1、7頁28行〜9頁24行から公知である。
【0028】
この架橋は、自己架橋性、及び/又は外部架橋性であってもよい。例えば、相補的反応性官能基が、バインダーとして使用される有機ポリマー、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、又はポリ(メタ)アクリレート内に既に存在する場合、自己架橋性が存在する。外部架橋性は、例えば、特定の官能基、例えばヒドロキシル基を含有する(第一)有機ポリマーが、それ自体公知である架橋剤、例えばポリイソシアネート、及び/又はメラミン樹脂と反応する場合、存在する。したがって、架橋剤は、バインダーとして使用される前記(第一)有機ポリマーに存在する反応性官能基に相補的は反応性官能基を含有する。
【0029】
特に外部架橋性の場合において、それ自体公知である、一成分、及び多成分系、特に二成分系が有用である。
【0030】
一成分系において、架橋される成分、例えばバインダーとしての有機溶媒、及び架橋剤は、互いに一緒に、すなわち、一成分中に存在する。このための必須条件は、前記架橋される成分が、例えば100℃を超える、比較的高い温度でのみ互いに反応する、すなわち、硬化反応を開始することである。さもなければ、架橋される成分は、早期硬化(premature)、少なくとも部分的な熱化学的硬化を避けるため、互いに別々に貯蔵され、基板への施与の直前にのみ互いに混合されなければならない(二成分系参照)。組み合わせの例は、ヒドロキシ官能性ポリエステル、及び/又はポリウレタンと、架橋剤としてのメラミン樹脂、及び/又はブロック化ポリイソシアネートのものである。
【0031】
二成分系において、架橋される成分、例えば、バインダーとしての有機ポリマー、及び架橋剤は、施与の直前にのみ混合される、少なくとも二成分に別々に存在する。この形態は、架橋される成分が、大気温度、又は例えば40〜90℃のわずかに上昇した温度でさえ、互いに反応する場合に選択される。組み合わせの例は、ヒドロキシ官能性ポリエステル、及び/又はポリウレタン、及び/又はポリ(メタ)アクリレートと、架橋剤としての遊離のポリイソシアネートのものである。
【0032】
バインダーとしての有機ポリマーが、自己架橋性、及び外部架橋性官能基の両方を有し、その後、架橋剤と混合されることも可能である。
【0033】
本発明との関連で、「放射線化学的に硬化性である」、又は用語「放射線化学的硬化」は、硬化が、化学線、すなわち、近赤外線(NIR)、及び紫外線(UV)放射等の電磁波放射、特にUV放射、並びに電子ビーム等の粒子線を、硬化のために使用して可能である事実を意味することと理解される。UV放射による硬化は、一般に、ラジカル、又はカチオン光開始剤によって開始される。典型的な化学線硬化性官能基は、一般にフリーラジカル光開始剤が使用されるため、炭素−炭素二重結合である。したがって、化学線硬化は、銅様に化学的架橋に基づいている。
【0034】
当然、化学的に硬化性であるとして記載されたコーティング組成物の硬化において、常に物理的硬化、すなわちポリマー鎖のインタールーピングが、生じる可能性もある。それにもかかわらず、そのようなコーティング組成物は、その場合、化学的に硬化性であるとして記載される。
【0035】
上記から当然の結果として、コーティング組成物、及びそれに存在する成分の性質に従って、硬化は、当然、硬化における種々の条件、さらに具体的には硬化温度、及び硬化時間も必要とする、種々の機構によって引き起こされることになる。
【0036】
純粋に物理的硬化のコーティング組成物の場合、硬化は、好ましくは15〜90℃の範囲で、2〜48時間にわたって実施される。この場合、硬化は、このように、コーティング膜の調整の期間に過ぎない、フラッシュオフ、及び/又は中間乾燥操作とは異なってもよい。また、フラッシュオフ、及び中間乾燥の間の区別は、意味を持たない。例えば、最初に、物理的硬化性コーティング組成物を施与することによって生成されたコーティング膜を、15〜35℃で、例えば、0.5〜30分間、フラッシュオフするか、又は中間乾燥し、その後、それを50℃で、5時間保持することが可能であろう。
【0037】
しかしながら、好ましくは、本発明の方法に使用するコーティング組成物、すなわち、電気塗装材料、水性ベースコート材料及びクリアコート材料は、少なくとも熱化学的に硬化性であり、特に好ましくは熱化学的に硬化性であり、外部架橋性である。
【0038】
原則として、本発明との関連で、一成分系の硬化は、これらの条件が、コーティング膜を、化学的架橋反応を通じて、硬化したコーティング膜に変換するために、一般に必要であるので、100〜250℃、好ましくは100〜180℃の温度で、5〜60分間、好ましくは10〜45分間で、好ましくは行われる。したがって、硬化に先行する、任意のフラッシュオフ、及び/又は中間乾燥段階は、より低い温度、及び/又はより短い期間で実施される。そのような場合、例えば、フラッシュオフが、15〜35℃で、例えば、0.5〜30分間で実施され得、及び/又は中間乾燥が、例えば、40〜90℃で、例えば、1〜60分間で実施され得る。
【0039】
原則として、本発明との関連で、二成分系の硬化は、例えば15〜90℃、好ましくは40〜90℃の温度で、5〜80分間、好ましくは10〜50分間で行われる、したがって、硬化に先行する、任意のフラッシュオフ、及び/又は中間乾燥段階は、より低い温度、及び/又はより短い期間で実施される。そのような場合、もはや、用語「フラッシュオフ」及び「中間乾燥」の間を区別する意味はない。硬化に先行する、任意のフラッシュオフ、及び/又は中間乾燥段階は、例えば、15〜35℃で、例えば0.5〜30分間で進行され得、ただし、少なくとも、その後に続く硬化よりも、低い温度、及び/又は短い期間で進められ得る。
【0040】
これは、当然に、より高温での二成分系の硬化を除外しない。例えば、以下に詳細に説明する、本発明の方法の工程(4)において、1層のベースコート、又は複数層のベースコートが、クリアコートと一緒に硬化される。例えば、一成分のベースコート、及び二成分のクリアコート等、一成分、及び二成分系の両方が、膜中に存在する場合、一緒に行う硬化工程は当然に、一成分系に必要な硬化条件によって導かれる。
【0041】
本発明との関連で、実証した全ての温度は、コーティングされた基板が存在する部屋の温度として理解される。したがって、基板それ自体が、特定の温度を有していなければならないという意味ではない。
【0042】
本発明との関連で、有効性の公式期間に関連なく公式標準(official standard)の言及がなされた場合、これは、当然に、出願日時点で最新の標準のバージョンを意味するか、この日時点で、最新のバージョンが存在しない場合、最後のバージョンを意味する。
【0043】
[本発明の方法]
本発明の方法において、マルチコート塗装系が、金属基板(S)上に形成される。
【0044】
有用な金属基板(S)は、原則として例えば、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、マグネシウム、及びそれらの合金、並びに多種多様な異なる形態、及び組成の鋼鉄を含むか、又はそれらからなる基板を含む。好ましいものは、鉄、及び鋼鉄基板、例えば、典型的には、自動車産業において使用される鉄、及び鋼鉄基板である。前記基板は、原則として、任意の形態であってもよく、すなわち、それらは、例えば単純なシート、又は、その他の複雑な部品、さらに具体的には、自動車車体及びそれらの部分(parts)等であってもよい。
【0045】
本発明の方法の段階(1)の前に、金属基板(S)は、それ自体公知の方法で、前処理、すなわち、例えば、洗浄、及び/又は公知の化成処理の付与等を受け得る。洗浄は、機械的に、例えば、ワイピング(wiping)、グラインディング(grinding)、及び/又はポリッシング(polishing)の手段で、及び/又は化学的に、例えば、塩酸又は硫酸による、酸又はアルカリ溶液槽中の表面エッチングによるエッチング法の手段で、実施され得る。当然、有機溶媒、又は水性洗剤を用いた洗浄も可能である。化成処理の適用による前処理は、特にリン酸塩化、及び/又はクロム化、好ましくはリン酸塩化の手段による前処理が、同様に行われてもよい。好ましくは、前記金属基板は、特にリン酸塩化、好ましくはリン酸亜鉛化によって少なくとも化成処理される。
【0046】
本発明の方法の、段階(1)において、硬化した電気塗装(E.1)は、前記基板(S)への電気塗装材料(e.1)の電気泳動施与、及びそれに続く、電気塗装材料(e.1)の硬化によって、前記金属基板(S)上に生成される。
【0047】
本発明の方法の段階(1)において使用される前記電気塗装材料(e.1)は、陰極(cathodic)、又は陽極(anodic)電気塗装材料であってもよい。好ましくは陰極電気塗装材料である。電気塗装材料は、昔から当業者に公知である。これらは、バインダーとして、アニオン性、又はカチオン性ポリマーを含む水性コーティング材料である。これらのポリマーは、例えば、潜在的にアニオン性の、すなわち、カルボン酸基等の、アニオン性基へ変換され得る官能基、又は潜在的にカチオン性の、すなわち、アミノ基等の、カチオン性基へ変換され得る官能基を含む。荷電基(charged group)への変換は、一般に、その後、アニオン性、又はカチオン性ポリマーを生じさせる、適切な中和剤(有機アミン(アニオン性)、ギ酸等の有機カルボン酸(カチオン性))の使用を通じて達成される。電気塗装材料は、一般に、したがって、好ましくは、さらに、典型的な防食顔料を含む。本発明との関連で、好ましい陰極電気塗装材料は、好ましくは、バインダーとしてカチオン性ポリマー、特に、好ましくは芳香族構造単位を有する、ヒドロキシ官能性ポリエーテルアミンを含む。そのようなポリマーは、一般に、アミン、例えば、モノ、及びジアルキルアミン、アルカノールアミン、及び/又はジアルキルアミノアルキルアミンを有する、適切なビスフェノール系エポキシ樹脂の反応によって得られる。これらのポリマーは、特にそれ自体公知のブロック化ポリイソシアネートとの組み合わせで使用される。例として、WO9833835A1、WO9316139A1、WO0102498A1、及びWO2004018580A1に記載される電気塗装材料が参照される。
【0048】
したがって、電気塗装材料(e.1)は、好ましくは、少なくとも熱化学的硬化性コーティング材料であり、特に外部架橋性である。電気塗装材料(e.1)は、好ましくは一成分コーティング組成物である。好ましくは、電気塗装材料(e.1)は、バインダーとして、ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂、及び架橋剤として、完全ブロック化ポリイソシアネートを含む。前記エポキシ樹脂は、好ましくは陰極であり、特にアミノ基を含有する。
【0049】
本発明の段階(1)において行われる、そのような電気塗装材料(e.1)の電気泳動施与も公知である。前記施与は、電気泳動によって進行する。これは、コーティングされる金属被加工物(workpiece)が、まずコーティング材料を含む浸漬溶液槽に浸漬され、直流電場が金属被加工物と対電極(counterelectrode)の間に加えられることを意味する。したがって、被加工物は、電極として機能し、バインダーとして使用される前記ポリマーの上記電荷のため、前記基板への電場を介して、電気塗装材料の不揮発性の成分が移行し、基板に沈着され、電気塗装膜を形成する。例えば、陰極電気塗装の場合、したがって、前記基板が陰極(cathode)として接続され、そこで水電解によって生じる水酸化物イオンが、カチオン性バインダーを、前記基板に沈着され、電気塗装層を形成するように中和する。したがって、その場合、施与は電気泳動浸漬法によって達成される。
【0050】
電気塗装材料(e.1)の電解施与の後、コーティングされた基板(S)は、前記溶液槽から除去され、任意に、例えば水系洗浄液で洗い流され、その後任意にフラッシュオフされ、及び/又は中間乾燥され、最後に、施与された電気塗装材料が、硬化される。
【0051】
施与された電気塗装材料(e.1)(又はまだ硬化していない状態の施与された電気塗装)は、例えば、15〜35℃で、例えば0.5〜30分間でフラッシュオフされ、及び/又は好ましくは40〜90℃の温度で、例えば1〜60分間で中間乾燥される。
【0052】
好ましくは、前記基板に施与された電気塗装材料(e.1)(又はまだ硬化していない状態の施与された電気塗装)は、100〜250℃、好ましくは140〜220℃の温度で、5〜60分間、好ましくは10〜45分間で硬化され、硬化した電気塗装(E.1)を生成する。
【0053】
特定したフラッシュオフ、中間乾燥、及び硬化条件は、特に電気塗装材料(e.1)が、上記のような熱化学的硬化性の一成分コーティング組成物である、好ましい場合に適用する。しかしながら、これは、電気塗装材料が、別の方法で硬化性のコーティング組成物である、及び/又は別のフラッシュオフ、中間乾燥、及び硬化条件が使用される可能性を除外するものではない。
【0054】
硬化した電気塗装の層厚は、例えば、10〜40μm、好ましくは15〜25μmである。本発明との関連で記載された全ての膜厚は、乾燥膜厚として理解されるべきである。したがって、前記膜厚は、問題になっている硬化した膜のものである。したがって、コーティング材料が特定の膜厚で施与されると記載されている場合、これは、前記コーティング材料が、硬化後に、記載された膜厚を生じるように施与されることを意味すると理解されるべきである。
【0055】
本発明の方法の段階(2)において、(2.1)1層のベースコート(B.2.1)が生成されるか、又は(2.2)複数層の直接連続するベースコート(B.2.2.x)が生成される。前記コーティングは、(2.1)前記硬化した電気塗装(E.1)に水性ベースコート材料(b.2.1)を直接施与するか、又は(2.2)前記硬化した電気塗装(E.1)に複数のベースコート材料(b.2.2.x)を、直接連続して施与することによって、生成される。
【0056】
したがって、硬化した電気塗装(E.1)への複数のベースコート材料(b.2.2.x)の直接連続する施与は、第一ベースコート材料が、まず前記電気塗装に直接施与され、続いて、第二へースコート材料が、前記税一ベースコート材料のコーティングに直接施与されることを意味すると理解される。その後、任意の第三ベースコート材料が、前記第二ベースコート材料のコーティングに直接施与される。その後、この操作が、さらなるベースコート材料(すなわち、第四、第五等のベースコート)のために同様に繰り返され得る。
【0057】
したがって、前記ベースコート(B.2.1)、又は前記第一ベースコート(B.2.2.x)は、生成の後、硬化した電気塗装(E.1)上に直接配置される。
【0058】
本発明の方法の段階(2)において、施与されるコーティング組成物、及び生成されるコーティング膜に関して、用語「ベースコート材料」、及び「ベースコート」は、より明確化するために使用される。ベースコート(B.2.1)及び(B.2.2.x)は、別々に硬化されないが、むしろクリアコート材料と一緒に硬化される。したがって、硬化は、序論で記載された標準方法において使用される、いわゆるベースコート材料の硬化と同様に実施される。さらに具体的には、本発明の方法の段階(2)で使用される前記コーティング組成物は、標準方法との関連でプライマー・サーフェーサーと称したコーティング組成物のように、別々に硬化されない。
【0059】
段階(2)で使用される水性ベースコート材料(b.2.1)は、以下に詳細に記載される。しかしながら、それは、好ましくは少なくとも熱化学的硬化性であり、それは、特に外部架橋性である。好ましくは、ベースコート材料(b.2.1)は、一成分コーティング組成物である。好ましくは、ベースコート材料(b.2.1)は、バインダーとして、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、及び上記ポリマーのコポリマー、例えば、ポリウレタン−ポリアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリマー、及び架橋剤として、少なくとも1種のメラミン樹脂の組み合わせを含む。
【0060】
ベースコート材料(b.2.1)は、液体コーティング組成物の施与のための当業者に公知の方法によって、例えば、ディッピング、バーコーティング、スプレー、ローリング等によって施与され得る。スプレー施与方法、例えば、圧縮空気スプレー(圧縮空気施与)、エアレススプレー、高速回転、静電スプレー施与(ESTA)を、任意に熱スプレー施与(hot-spray application)、例えば、熱空気スプレー(hot-air spraying)と共同して使用することが好ましい。最も好ましくは、ベースコート材料(b.2.1)は、圧縮空気スプレー施与、又は静電スプレー施与によって施与される。このようにして、ベースコート材料(b.2.1)の施与は、ベースコート(B.2.1)、すなわち、電気塗装(E.1)に直接施与されたベースコート材料(b.2.1)のコーティングを生成する。
【0061】
施与の後、施与されたベースコート材料(b.2.1)、又は対応するベースコート(B.2.1)は、例えば15〜35℃で、例えば0.5〜30分間でフラッシュオフされ、及び/又は好ましくは40〜90℃の温度で、例えば1〜60分間で中間乾燥される。まず、15〜35℃で、0.5〜30分間でフラッシュオフし、次に40〜90℃で、例えば1〜60分間で中間乾燥することが好ましい。記載されたフラッシュオフ、及び中間乾燥条件は、特に、ベースコート材料(b.2.1)が、熱化学的硬化性の一成分コーティング組成物である好ましい場合に適用される。しかしながら、これは、ベースコート材料(b.2.1)が、別の方法で硬化性のコーティング組成物である、及び/又は別のフラッシュオフ、及び/又は中間乾燥条件が使用される可能性を除外するものではない。
【0062】
本発明の方法の段階(2)においては、ベースコート(B.2.1)は、硬化されず、すなわち、好ましくは100℃を超える温度に、1分間より長い期間暴露されず、特に好ましくは、100℃を超える温度に全く暴露されない。これは、以下に記載される本発明の方法の段階(4)から明確に(clearly and unambiguously)明白である。前記ベースコートは、段階(4)まで硬化されないので、それは初期の段階(2)では硬化され得ない。その場合、段階(4)における硬化が、不可能になるからである。
【0063】
本発明の方法の段階(2.2)において使用される水性ベースコート材料(b.2.2.x)も、以下に詳細に記載される。しかしながら、段階(2.2)で使用されるベースコート材料(b.2.2.x)の少なくとも1種は、好ましくは段階(2.2)で使用されるそれらの全ては、好ましくは少なくとも熱化学的硬化性であり、特に好ましくは外部架橋性である。好ましくは、少なくとも1種のベースコート材料(b.2.2.x)は、一成分コーティング組成物であり、これは、好ましくは、全てベースコート材料(b.2.2.x)に適用される。好ましくは、ベースコート材料(b.2.2.x)の少なくとも1種は、バインダーとして、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、及び上記ポリマーのコポリマー、例えば、ポリウレタン−ポリアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリマー、及び架橋剤として、少なくとも1種のメラミン樹脂の組み合わせを含む。これは、好ましくは、全てベースコート材料(b.2.2.x)に適用される。
【0064】
ベースコート材料(b.2.2.x)は、液体コーティング組成物の施与のための当業者に公知の方法によって、例えば、ディッピング、バーコーティング、スプレー、ローリング等によって施与され得る。スプレー施与方法、例えば、圧縮空気スプレー(圧縮空気施与)、エアレススプレー、高速回転、静電スプレー施与(ESTA)を、任意に熱スプレー施与、例えば、熱空気スプレーと共同して使用することが好ましい。最も好ましくは、ベースコート材料(b.2.2.x)は、圧縮空気スプレー施与、及び/又は静電スプレー施与によって施与される。
【0065】
本発明の方法の段階(2.2)において、以下のネーミングシステムが、提案される。ベースコート材料及びベースコートは、一般に(b.2.2.x)、及び(B.2.2.x)と指定され、xは、具体的な個々のベースコート材料、及びベースコートのネーミングにおいて、他の適切な文字に置換され得る。
【0066】
第一ベースコート材料、及び第一ベースコートは、aと指定され得、最上層のベースコート材料、及び最上層のベースコートは、zと指定され得る。これらの2種のベースコート材料、又はベースコートは、段階(2.2)では常に存在する。間に配置されるコーティングは、順次に、b、c、d等と指定され得る。
【0067】
したがって、第一ベースコート材料(b.2.2.a)の施与は、硬化した電気塗装(E.1)上に、ベースコート(B.2.2.a)を直接し得制する。次に、少なくとも1層のさらなるベースコート(B.2.2.x)が、ベースコート(B.2.2.a)上に直接生成される。複数層のさらなるベースコート(B.2.2.x)が生成される場合、これらは、直接連続して生成される。例えば、厳密に1層のさらなるベースコート(B.2.2.x)が生成され、その場合、これはその後、最終的に製造されるマルチコート塗装系において、クリアコート(K)の下に配置されることが可能であり、したがって、ベースコート(B.2.2.z)と称され得る(
図2も参照のこと)。また、例えば、2層のさらなるベースコート(B.2.2.x)が生成され、その場合、ベースコート(B.2.2.a)上に直接生成されたコーティングは、(B.2.2.b)と、最終的にクリアコート(K)の下に直接配置されたコーティングが、今度は、(B.2.2.z)と指定され得る(
図3も参照のこと)。
【0068】
ベースコート材料(b.2.2.x)は、同一、又は異なっていてもよい。複数層のベースコート(B.2.2.x)を同一のベースコート材料で生成すること、及び1層以上のさらなるベースコート(B.2.2.x)を1種以上の別のベースコート材料で生成することも可能である。
【0069】
施与されたベースコート材料(b.2.2.x)は、一般に、別々に及び/又は一緒に、フラッシュオフされ、及び/又は中間乾燥される。段階(2.2)においても、15〜35℃で、0.5〜30分間でフラッシュオフし、40〜90℃で、1〜60分間で中間乾燥することが好ましい。個々の又は複数層のベースコート(B.2.2.x)のフラッシュオフ、及び/又は中間乾燥操作は、個々の場合の要求に従って、調整され得る。上記の好ましいフラッシュオフ、及び中間乾燥条件は、特に、少なくとも1種のベースコート材料(b.2.2.x)が、好ましくは全てのベースコート材料(b.2.2.x)が、熱化学的硬化性の一成分コーティング組成物を含む好ましい場合に適用される。しかしながら、これは、ベースコート材料(b.2.2.x)が、別の方法で硬化性のコーティング組成物である、及び/又は別のフラッシュオフ、及び/又は中間乾燥条件が使用される可能性を除外するものではない。
【0070】
ベースコート材料(b.2.2.x)のベースコート順序の、いくつかの好ましい変形が、以下に説明される。
【0071】
変形a)第一ベースコート材料の静電スプレー施与(ESTA)によって第一ベースコートを生成し、同じベースコート材料の圧縮空気スプレー施与によって第一ベースコート上に直接さらなるベースコートを生成することが可能である。したがって、2層のベースコートは、同じベースコート材料に基づいているが、本発明の方法において、前記施与は、問題になっているベースコートが、第一ベースコート材料(b.2.2.a)、及びさらなるベースコート材料(b.2.2.z)に対応するように、明らかに2段階で実行される。圧縮空気施与の前に、第一ベースコートは、好ましくは短く、例えば15〜35℃で、0.5〜30分間でフラッシュオフされる。圧縮空気施与の後、次に、フラッシュオフが、例えば、15〜35℃で、0.5〜30分間で実行され、その後、40〜90℃で、1〜60分間で中間乾燥される。記載された構造は、2種の施与(ESTAによる1種、圧縮空気による1種)で生成された1層の(one-coat)ベースコート構造と称される場合も多い。しかしながら、特に実際のOEM仕上げにおいて、塗装施設における技術状況は、特定の期間が、常に第一施与、及び第二施与の間で経過し、その期間で、基板、例えば自動車車体が、例えば15〜35℃で調整され、それによってフラッシュオフされることを意味するので、正式には、この構造の特性は、2層の(two-coat)ベースコート構造として、より明らかである。この段階(2.2)の変形は、好ましくは、使用される前記ベースコート材料(b.2.2.x)(又は、使用される2種の同一のベースコート材料(b.2.2.a)及び(b.2.2.z))が、以下に記載されるような効果顔料を含む場合に選択される。ESTA施与は、良好な材料移行、又は施与における少量の塗料損失を保証し得る一方、その後に続く、圧縮空気施与は、効果顔料の良好な配置(alignment)、それによる、全体の塗装系の良好な特性、特に高いフロップを達成する。
【0072】
変形b)第一ベースコート材料の静電スプレー施与(ESTA)によって、硬化した電気塗装上に第一ベースコートを直接生成し、前記第一ベースコート材料をフラッシュオフし、及び/又は中間乾燥し、その後、前記第一ベースコート以外の第二ベースコート材料の直接施与によって第二ベースコートを生成することも可能である。この場合、第二ベースコート材料も、変形a)で記載されたように、まず静電スプレー施与(ESTA)によって、次に圧縮空気スプレー施与によって施与され得、結果として両方とも第二ベースコート材料に基づく2層の直接連続するベースコートが、前記第一ベースコート上に直接生成される。前記施与の間、及び/又は後に、フラッシュオフ、及び/又は中間乾燥が、当然、同様に可能である。段階(2.2)の変形b)は、好ましくは、以下に記載されるような着色調製(color-preparing)ベースコートが、まず、電気塗装上に直接生成され、その後、順番に効果顔料を含むベースコート材料の二重の施与、又は有彩顔料(chromatic pigment)を含むベースコート材料の施与が実施される場合に選択される。その場合、前記第一ベースコートは、色彩調製ベースコート材料に基づき、前記第二、及び第三ベースコートが、効果顔料を含むベースコート材料に基づくか、又は1層のさらなるベースコートが、有彩顔料を含むさらなるベースコート材料に基づく。
【0073】
変形c)同様に、硬化した電気塗装上に直接連続して、3層のベースコートを連続して生成することが可能である(この場合、前記ベースコートは、3種の異なるベースコート材料に基づく)。例えば、着色調製ベースコート、着色顔料及び/又は効果顔料を含むベースコート材料に基づくさらなるコーティング、並びに着色顔料及び/又は効果顔料を含む第二ベースコート材料に基づくさらなるコーティングを生成することが可能である。前記個々の施与の間、及び/又は後に、又は3層の施与の全ての後に、フラッシュオフ、及び/又は中間乾燥が、同様に可能である。
【0074】
したがって、本発明との関連で、好ましい実施形態は、本発明の方法の段階(2.2)において、2又は3層のベースコートの生成を伴い、これに関連して、同一のベースコート材料を用いる、2層の直接連続するベースコートの生成が好ましく、これらの2層のベースコートの第一層のESTA施与による生成、及びこれらの2層のベースコートの第二層の圧縮空気施与による生成が、非常に特に好ましい。その場合、前記3層ベースコート構造の生成の場合に、前記硬化した電気塗装上に直接生成されたベースコートが、着色調製ベースコート材料に基づくことが好ましい。第二、及び第三コーティングは、好ましくは効果顔料を含む1種の同一のベースコート材料に基づくか、又は着色顔料及び/又は効果顔料を含む第一ベースコート材料、及び着色顔料及び/又は効果顔料を含む異なる第二ベースコート材料に基づく。
【0075】
前記ベースコート(B.2.2.x)は、本発明の方法の段階(2)では、硬化されず、すなわち、好ましくは100℃より高い温度に、1分間より長く暴露されず、好ましくは100℃より高い温度に全く暴露されない。これは、以下に記載される本発明の方法の段階(4)から、明確に明白である。前記ベースコートは、段階(4)まで硬化されないので、それは初期の段階(2)では硬化され得ない。その場合、段階(4)における硬化が、不可能になるからである。
【0076】
ベースコート材料(b.2.1)、及び(b.2.2.x)の施与は、前記ベースコート(B.2.1)、及び前記個々のベースコート(B.2.2.x)が、段階(4)で実施される硬化の後、例えば、5〜40μm、好ましくは6〜35μm、特に7〜30μmの層厚を有するような手段で実施される。段階(2.1)においては、好ましくは、15〜40μm、好ましくは20〜35μmの、より高い層厚で生成される。段階(2.2)においては、どちらかといえば、個々のベースコートが、比較的低い層厚を有し、この場合、全体の構造が、同様に、前記1層のベースコート(B.2.1)の高さ程度の層厚を有する。例えば、2層のベースコートの場合、第一ベースコート(B.2.2.a)は、好ましくは5〜35、特に10〜30μmの層厚を有し、第二ベースコート(B.2.2.z)は、好ましくは5〜30μm、特に10〜25μmの層厚を有する。
【0077】
本発明の段階(3)においては、クリアコート(K)が、(3.1)前記ベースコート(B.2.1)、又は(3.2)前記最上層のベースコート(B.2.2.z)上に直接施与される。この生成は、クリアコート材料(k)の適切な施与によって実施される。
【0078】
前記クリアコート材料(k)は、原則として、この関連において、当業者に公知の任意の透明コーティング組成物であり得る。これは、一成分又は二成分コーティング組成物か、又は多成分コーティング組成物として処方され得る、水性又は溶媒性(solventborne)透明コーティング組成物を含む。さらに、粉体スラリークリアコート材料もまた適切である。溶媒系クリアコート材料が好ましい。
【0079】
使用されるクリアコート材料(k)は、特に熱化学的、放射線化学的に硬化性であり得る。さらに具体的には、それらは熱化学的に硬化性であり、外部架橋性である。好ましいものは、二成分クリアコート材料である。
【0080】
したがって、透明コーティング組成物は、典型的に且つ好ましくは、官能基を有するバインダーとして少なくとも1種の(第一)ポリマー、及び前記バインダーの官能基に相補的な官能性を有する少なくとも1種の架橋剤を含む。バインダーとして少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートポリマー、及び架橋剤としてポリイソシアネーとを使用することが好ましい。
【0081】
適切なクリアコート材料は、例えば、WO2006042585A1、WO2009077182A1、或いはWO2008074490A1に記載される。
【0082】
クリアコート材料(k)は、液体コーティング組成物の施与のための当業者に公知の方法によって、例えば、ディッピング、バーコーティング、スプレー、ローリング等によって施与され得る。スプレー施与方法、例えば、圧縮空気スプレー(圧縮空気施与)、及び静電スプレー施与(ESTA)を使用することが好ましい。
【0083】
施与の後、クリアコート材料(k)、又は対応するクリアコート(K)は、15〜35℃で、0.5〜30分間、フラッシュオフ、又は中間乾燥される。この種のフラッシュオフ、及び中間乾燥条件は、特に、クリアコート材料(k)が、熱化学的硬化性の二成分コーティング組成物である、好ましい場合に適用される。しかしながら、これは、クリアコート材料(k)が、別の方法で硬化性のコーティング組成物である、及び/又は別のフラッシュオフ、及び/又は中間乾燥条件が使用される可能性を除外するものではない。
【0084】
クリアコート材料(k)の施与は、前記クリアコートが、段階(4)で実施される硬化の後、例えば、15〜80μm、好ましくは20〜65μm、特に25〜60μmの層厚を有するような手段で実施される。
【0085】
本発明の方法の段階(4)において、(4.1)ベースコート(B.2.1)及びクリアコート(K)、又は(4.2)ベースコート(B.2.2.x)及びクリアコート(K)を一緒に(合わせて)行う硬化工程がある。
【0086】
前記一緒の硬化工程は、好ましくは、100〜250℃、好ましくは100〜180℃の温度で、5〜60分間、好ましくは10〜45分間実施される。この種の効果条件は、特に、特に、ベースコート(B.2.1)、又はベースコート(B.2.2.x)の少なくとも1層、好ましくは全てのベースコート(B.2.2.x)が、熱化学的硬化性の一成分コーティング組成物である、好ましい場合に適用される。これは、上記の通り、そのような条件が、一般に、一成分コーティング組成物において、上記の通り、硬化を達成するために要求されるからである。クリアコート材料(k)が、例えば、同様に熱化学的硬化性の一成分コーティング組成物である場合、問題になっているクリアコート(K)は、もちろん、これらの条件下で、同様に効果される。クリアコート材料(k)が熱化学的硬化性の二成分コーティング組成物である好ましい場合についても、明らかに同様である。
【0087】
しかしながら、上記記述は、ベースコート材料(b.2.1)、及び(b.2.2.)、並びにクリアコート材料(k)が、別の方法で硬化性のコーティング組成物である、及び/又は別の硬化条件が使用される可能性を除外するものではない。
【0088】
本発明の方法の段階(4)が終了した後、その結果、本発明のマルチコート塗装系が得られる。
【0089】
[本発明に従って使用するベースコート材料]
本発明に従って使用するベースコート材料(b.2.1)は、少なくとも1種の特定のコポリマー(CP)、好ましくは厳密に1種のコポリマー(CP)を含む特定の水性分散液を含む。
【0090】
本発明との関連で、コポリマーは、異なるポリマー、例えば、ポリウレタン及び(メタ)アクリレートポリマーから形成されるポリマーに言及する。これは、互いに共有結合したポリマー、及び種々のポリマーが接着によって互いに結合したポリマーの両方を明確に含む。両方の種類の結合の組み合わせもまた、この定義に含まれる。用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、及びそれらの混合物を含む。
【0091】
コポリマー(CP)は、
(i)最初に、少なくとも1種のポリウレタンの水性分散液を充填する工程(charging)、その後、
(ii)(i)からの前記ポリウレタンの存在下で、オレフィン性不飽和モノマーの混合物を重合する工程であり、
a.水溶性開始剤が使用され、
b.前記オレフィン性不飽和モノマーが、全体の反応時間に渡って、前記反応溶液中に、重合に使用されるオレフィン性不飽和モノマーの総量に基づいて、6.0質量%の濃度を超えないように、計量され、且つ
c.前記オレフィン性不飽和モノマーの混合物が、少なくとも1種のポリオレフィン性不飽和モノマーを含む、工程によって調製され得る。
【0092】
第一調製工程において、ポリウレタン樹脂の水分散系が、最初に充填される。
【0093】
適切な飽和またh不飽和ポリウレタン樹脂は、例えば、
・ドイツ特許出願DE19948004A1、4頁19行〜11頁29行(ポリウレタンプレポリマーB1)、
・欧州特許出願EP0228003A1、3頁24行〜5頁40行
・欧州特許出願EP0634431A1、3頁38行〜8頁9行、又は
・国際特許出願WO92/15405。2頁35行〜10頁32行、
に記載される。
【0094】
前記ポリウレタン樹脂は、第一に、好ましくは、当業者に公知の脂肪族、脂環式、脂肪族−脂環式、芳香族、脂肪族−芳香族、及び/又は脂環式−芳香族ポリイソシアネートを使用して調製される。特に好ましいものは、脂肪族、及び脂肪族−脂環式ポリウレタン樹脂である。
【0095】
ポリウレタン樹脂の調製に使用されるアルコール成分は、好ましくは、当業者に公知の飽和、及び不飽和ポリオール、並びに任意に少量のモノアルコールである。さらに具体的には、ジオール、及び任意に少量のトリオールが分岐の導入のために使用される。適切なポリオールの例は、飽和、又はオレフィン性不飽和のポリエステルポリオール、及び/又はポリエーテルポリオールである。さらに具体的には、使用される前記ポリオールは、ポリエステルポリオール、特に400〜5000g/molの数平均分子量を有するものである。特に指示の無い限り、本発明との関連で、数平均分子量は、蒸気圧浸透(vapor pressure osmosis)法によって測定される。測定は、蒸気圧浸透圧計(vapor pressure osmometer)(model 10.00(Knauer製))を使用して、トルエン中、50℃で、調査中の成分の濃度系列で、使用した装置の実験的な較正定数を測定するための較正物質としてベンゾフェノンを用いて(較正物質としてベンジルが使用された、E.Schroder、G.Muller、K.−F.Arndt、「Leitfaden der Polymercharakterisierung」、Akademie−Verlag、Berlin、47〜54頁、1982年に従って)、実施した。
【0096】
水性分散液において、最初に充填されたポリウレタンは、好ましくは親水性安定化されたポリウレタンである。親水性安定化のため、及び/又は水性溶媒中の分散性を向上するため、好ましく存在する前記ポリウレタン樹脂は、特定のイオン基、及び/又はイオン基に変換され得る基(潜在的イオン基)を含んでもよい。この種のポリウレタン樹脂は、本発明との関連で、イオン性親水性安定化ポリウレタン樹脂と称される。同様に、非イオン性親水性変性基も存在してもよい。しかしながら、好ましくはイオン性親水性安定化ポリウレタンが好ましい。より正確な用語において、或いは、前記変性基は、
・中和剤、及び/又は四級化剤(quaternizing agent)によってカチオンに変換され得る官能基、及び/又はカチオン性基(カチオン変性)、
又は
・中和剤によってアニオンに変換され得る官能基、及び/又はアニオン性基(アニオン変性)、
又は
・非イオン性親水性基(非イオン性変性)、
又は
上記の基の組み合わせである。
【0097】
当業者が認識しているように、カチオン変性のための前記官能基は、例えば、第一級、第二級、及び/又は第三級アミノ基、第二級スルフィド基、及び/又は第三級ホスフィン基、さらに具体的には、第三級アミノ基、及び第二級スルフィド基(中和剤、及び/又は四級化剤によってカチオン性基に変換され得る官能基)である。カチオン性基、すなわち、第一級、第二級、第三級、及び/又は第四級アンモニウム基、第三級スルホニウム基、及び/又は第四級ホスホニウム基等、さらに具体的には第四級アンモニウム基、及び第四級スルホニウム基等の、上記官能基から当業者に公知の中和剤、及び/又は四級化剤を使用して調製される基も挙げられるべきである。
【0098】
周知の通り、アニオン変性のための前記官能基は、例えば、カルボン酸、スルホン酸、及び/又はリン酸基、さらに具体的にはカルボン酸基(中和剤によってアニオン性基に変換され得る官能基)、さらにはアニオン性基、すなわち、カルボキシレート、スルホネート、及び/又はホスホネート基等の、上記官能基から当業者に公知の中和剤を使用して調製される基である。
【0099】
非イオン性親水性変性のための官能基は、好ましくはポリ(オキシアルキレン)基、さらに具体的にはポリ(オキシエチレン)基である。
【0100】
イオン性親水性変性は、イオン基、又は潜在的イオン基を含有するモノマーを介して、ポリウレタン樹脂に導入され得る。非イオン性変性は、例えば、ポリウレタン分子中の側部又は端部の基として、ポリ(エチレン)オキシドポリマーの組み込みを介して導入される。親水性変性は、例えば、イソシアネート基に対して反応性の少なくとも1種の基、好ましくは少なくとも1種のヒドロキシル基を含有する化合物を介して導入される。イオン性変性は、変性基と同様に、少なくとも1種のヒドロキシル基を含有するモノマーを使用して導入され得る。非イオン性変性を導入するため、当業者に公知のポリエーテルジオール、及び/又はアルコキシポリ(オキシアルキレン)アルコールを使用することが好ましい。
【0101】
最初に充填されたポリウレタン分散系に、少なくとも1種の有機溶媒を添加することが好ましく、前記有機溶媒は、好ましくは任意の比率で水と混和性であり、且つ任意の比率でオレフィン性不飽和モノマーの混合物と混和性である。ピロリドン系溶媒は、環境的理由のため、単独で調剤され得ることは留意すべきであるが、適切な有機溶媒は、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、及び特にメトキシプロパノール等のエーテルアルコールである。しかしながら、有機溶媒の量は、前記分散系の水性の性質が保存されるように選択される。
【0102】
第二調製工程において、ポリウレタンの存在下で、オレフィン性不飽和モノマーの混合物の重合が、少なくとも1種の重合開始剤の存在下で、フリーラジカル乳化重合(free-radical emulsion polymerization)と呼ばれる方法で行われる。
【0103】
使用される重合開始剤は、水溶性開始剤でなければならない。適切な開始剤の例は、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、又はペルオキソ二硫酸アンモニウム、或いは、過酸化水素、tert−ブチルヒドロペルオキシド、2,2‘−アゾビス(2−アミノイソプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、又は2,2‘−アゾビス(4−シアノ)ペンタン酸である。前記開始剤は、単独、又は例えば過酸化水素、及び過硫酸ナトリウムの混合物等の混合物で使用される。
【0104】
公知のレドックス開始剤系もまた、重合開始剤として使用され得る。例えば、そのようなレドックス開始剤系は、例えばアルカリ金属及びアンモニア化合物の亜硫酸水素塩、亜流酸塩、チオ硫酸塩、亜ジチオン酸塩、テトラチオン酸塩等、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(hydroxymethanesulfinate dihydrate)、及び/又はチオ尿素等の還元硫黄化合物(reducing sulfur compound)等のレドックス副開始剤(coinitiator)との組み合わせにおいて、少なくとも1種の過酸化物含有化合物を含む。例えば、ペルオキソ二硫酸塩の、アルカリ金属又はアンモニウムの硫酸水素塩との組み合わせ、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、及び二亜硫酸アンモニウムを使用することが可能である。過酸化物含有化合物の、レドックス副開始剤に対する質量比は、好ましくは50:1〜0.05:1である。前記開始剤、又は前記レドックス開始剤系の組み合わせにおいて、さらに、遷移金属触媒、例えば、硫酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸ニッケル(II)、塩化銅(I)、酢酸マンガン(II)、酢酸バナジウム(III)、塩化マンガン(II)等の鉄塩、ニッケル塩。コバルト塩、マンガン塩、銅塩、バナジウム塩、又はクロム塩を使用することが可能である。モノマーに基づいて、これらの遷移金属塩は、典型的には0.1〜1000ppmの量で使用される。例えば、過酸化水素と、鉄塩(II)との組み合わせ、例えば0.5〜30%の過酸化水素、及び0.1〜500ppmのモール塩(Mohr’s salt)を使用することが可能である。
【0105】
好ましくは、前記開始剤は、重合に使用されるオレフィン性不飽和モノマーの総質量に基づいて、0.05〜20質量%、好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%の量で使用される。用語、「総量」及び「総質量」は同意義である。
【0106】
水溶性開始剤の使用の結果、最初に充填された水性分散液に添加されるオレフィン性不飽和モノマーが、直ちに反応し、オリゴマーを生成し得る。これらのオリゴマーは、より小さいモノマーよりも、最初に充填された分散系の前記ポリウレタン粒子中に浸透する傾向が小さい。前記重合は、例えば、0超〜160℃、好ましくは60〜95℃の温度で、適切に行われる。
【0107】
酸素の排除下で、好ましくは窒素流中で行うことが好ましい。一般に、重合は、標準圧力で行われるが、特に、前記モノマーの、及び/又は有機溶媒の沸点より高い重合温度が使用される場合、より低い圧力、又はより高い圧力を使用することも可能である。
【0108】
本発明に従って使用されるコポリマー(CP)は、フリーラジカル水性乳化重合によって調製され、その場合、界面活性剤、又は保護コロイド(protective colloid)が、反応媒体に添加され得る。適切な乳化剤、及び保護コロイドは、例えば、Houben Weyl,Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry]、XIV/1巻 Makromolekulare Stoffe [Macromolecular Substances]、Georg Thieme Verlag、Stuttgart 1961、411頁以下に記載される。
【0109】
本発明に従って使用する、コポリマー(CP)を含む水性分散液の調製のための重要な因子は、ポリウレタンの存在下でオレフィン性不飽和モノマーの混合物の重合反応の条件の制御である。これは、「スターブフィード(starve feed)」、「スターブフェッド(starve fed)」、又は「スターブドフィード(starved feed)」と呼ばれる方法で行われる。
【0110】
本発明との関連で、スターブド供給重合は、反応期間中、反応溶液における残存モノマーの含有量が最小限に抑えられる乳化重合であると考えられており、すなわちオレフィン性不飽和モノマーの計量された添加が、全体の反応時間に渡って、いずれの場合にも、重合に使用されるオレフィン性不飽和モノマーの総量に対して、6.0質量%、好ましくは5.0質量%、さらに好ましくは4.0質量%、特に有利には、3.5質量%の濃度を超えないような方法で実施される。これに関連して、いずれの場合にも、重合に使用されるオレフィン性不飽和モノマーの総量に対して、0.01〜6.0質量%、好ましくは0.02〜5.0質量%、さらに好ましくは0.03〜4.0質量%、特に0.05〜3.5質量%のオレフィン性不飽和モノマーの濃度範囲がさらに好ましい。例えば、反応中に検出可能な最も高い比率(又は濃度)は、0.5質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%、2.5質量%、又は3.0質量%であってもよく、さらに、その結果、検出される全てのさらなる数値は、ここで明記された数値未満である。したがって、これに関連して、用語「濃度」は、明らかに用語「比率」と同意義である。
【0111】
前記反応溶液において、以下、フリーモノマーと称される前記モノマーの濃度は、種々の方法で制御され得る。
【0112】
フリーモノマーの濃度を最小限に抑える1方法は、オレフィン性不飽和モノマーの混合物のために、非常に低い計量速度を選択することである。計量された添加の速度が、全てのモノマーが、それらが反応溶液中にあるとすぐに、非常に速やかに反応し得るほど低い場合、フリーモノマーの濃度が最小限に抑えられることを確保することが可能である。
【0113】
計量速度と同様に、計量された前記モノマーが、非常に迅速に互いに反応し得るように、十分なフリーラジカルが、反応溶液中に、常に存在することが重要である。この目的のため、反応条件は、好ましくは、前記オレフィン性不飽和モノマーの計量された添加の開始前に、前記開始剤の供給が、既に開始されているように選択されるべきである。好ましくは、前記計量された添加は、少なくとも5分前に、さらに好ましくは少なくとも10分前に開始される。好ましくは、いずれの場合にも、開始剤の総量に対して、前記開始剤の少なくとも10質量%、さらに好ましくは前記開始剤の少なくとも20質量%、最も好ましくは前記開始剤の少なくとも30質量%が、前記オレフィン性不飽和モノマーの計量された添加の開始前に添加される。
【0114】
前記開始剤の量は、反応溶液中のフリーラジカルの十分な存在のために重要な因子である。前記開始剤の量は、計量された前記モノマーが反応し得るように、十分なフリーラジカルがいつでも利用できるように、選択されるべきである。前記開始剤の量が増加した場合、より大量のモノマーが同時に反応することも可能である。
【0115】
前記反応速度を決定し得る、さらなる因子は、モノマーの構造、すなわち具体的には、それらの構造特性、及びそれらに由来する反応性である。
【0116】
したがって、前記フリーモノマーの濃度は、前記開始剤の量の相互作用、開始剤添加の速度、モノマー添加の速度によって、及びモノマーの選択によって制御され得る。前記計量された添加の減速、及び前記開始剤の量の増加の両方、並びに、開始剤の添加の早期の開始は、前記フリーモノマーの濃度を上記の制限値未満に維持する、特定の目的を果たす。
【0117】
前記反応溶液中の前記モノマーの濃度は、前記反応中の任意の時点で、ガスクロマトグラフィーによって測定され得る。前記ガスクロマトグラフィーの典型的なパラメーターは、以下の通り:ポリエチレングリコール相を有する50mシリカキャピラリーカラム、又はポリジメチルシロキサン相を有する50mシリカキャピラリーカラム、ヘリウムキャリアガス、スプリットインジェクター150℃、オーブン温度40〜220℃、フレームイオン化検出器、検出器温度275℃、内部標準:イソブチルアクリレート、である。本発明との関連で、前記モノマーの濃度は、好ましくはガスクロマトグラフィーによって、特に上記パラメーターを監視しながら測定される。
【0118】
この分析によって、スターブドフィード重合のために、制限値に近いフリーモノマーの濃度を測定する場合、例えば、低い反応性を有するオレフィン性不飽和モノマーの高い比率のために、上記パラメーターが、前記反応を制御するために利用され得る。この場合、例えば、前記モノマーの計量速度が低減され得、及び/又は前記始剤の量が増加され得る。
【0119】
適切なオレフィン性不飽和モノマーは、モノ−、又はポリオレフィン性不飽和であってもよい。好ましくは、少なくとも1種のものオレフィン性不飽和モノマー、及び少なくとも1種のポリオレフィン性不飽和モノマーが存在する。
【0120】
適切なモノオレフィン性不飽和モノマーの例は、特に(メタ)アクリレート系モノオレフィン性不飽和モノマー、及びアリル化合物等のビニル系モノオレフィン性不飽和モノマーを含む。例は、α,β−不飽和カルボン酸でもある。必須とは限らないが、少なくとも、(メタ)アクリレート系モノオレフィン性不飽和モノマーを使用することが好ましい。
【0121】
前記(メタ)アクリレート系、モノオレフィン性不飽和モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、及び、(メタ)アクリル酸のエステル、ニトリル、又はアミドであってもよい。
【0122】
好ましいものは、非オレフィン性不飽和R基を有する(メタ)アクリル酸のエステルである。
【0124】
R基は、脂肪族、又は芳香族であってもよい。R基は、好ましくは脂肪族である。
【0125】
R基は、例えば、アルキル基であってもよく、又はヘテロ原子を含有してもよい。ヘテロ原子を含有するR基の例は、エーテルである。必須とは限らないが、少なくとも、R基がアルキル基であるモノマーを使用することが好ましい。
【0126】
Rがアルキル基である場合、例えば、直鎖、分岐、又は環状アルキル基であってもよい。全ての3種の場合において、非置換のアルキル基、又は官能基によって置換されたアルキル基を含んでいてもよい。アルキル基は、好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個の炭素原子を有する。
【0127】
特に好ましい、不飽和アルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステルは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルへキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレートであり、特に好ましいものは、n−、及びtert−ブチル(メタ)アクリレート、及びメチルメタクリレートである。
【0128】
適切な、置換されたアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステルは、好ましくは1個以上のヒドロキシル基によって置換されていてもよい。
【0129】
特に好ましい、1個以上のヒドロキシル基によって置換されたアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステルは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。
【0130】
可能性がある、さらなるビニル系モノ不飽和モノマーは、前記ビニル基上に、非オレフィン性不飽和R’基を有するモノマーである。
【0132】
R’基は、脂肪族、又は芳香族であってもよく、好ましいものは芳香族基である。
【0133】
R’基は、ヒドロカルビル基であってもよく、又はヘテロ原子を含有してもよい。ヘテロ原子を含有するR’基の例は、エーテル、エステル、アミド、ニトリル、及びヘテロ環である。好ましくはR’基は、ヒドロカルビル基である。R’が、ヒドロカルビル基である場合、ヘテロ原子で、置換されてもよく、又は非置換であってもよく、好ましいものは、非置換基である。好ましくは、R’基は、芳香族ヒドロカルビル基である。
【0134】
特に好ましい、さらなるビニル系オレフィン性不飽和モノマーは、ビニル芳香族炭化水素、特にビニルトルエン、α−メチルスチレン、及び特にスチレンである。
【0135】
さらに好ましい、ヘテロ原子含有モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、及びN−ビニル−2−メチルイミダゾール等のオレフィン性不飽和モノマーである。
【0136】
適切なポリオレフィン性不飽和モノマーの例は、オレフィン性不飽和R”基を有する(メタ)アクリル酸のエステル、及び多価アルコールのアリルエーテルを含む。
【0138】
R”基は、例えば、アリル基、又は(メタ)アクリル酸エステル基であってもよい。
【0139】
好ましいポリオレフィン性不飽和モノマーは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン1,2−グリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン2,2−グリコールジ(メタ)アクリレート、ブタン−1,4−ジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及びアリル(メタ)アクリレートである。
【0140】
好ましいポリオレフィン性不飽和化合物はまた、2個を超えるOH基を有するアルコールのアクリル酸、及びメタクリル酸エステル、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレートであるが、さらに、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートモノアリルエーテル、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレートジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレートモノアリルエーテル、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレートジアリルエーテル、ペンタエリトリトール(メタ)アクリレートトリアリルエーテル、トリアリルスクロース、及びペンタアリルスクロースである。
【0141】
前記ポリオレフィン性不飽和モノマーとしてアリルメタクリレートを使用することが特に好ましい。
【0142】
前記オレフィン性不飽和モノマーの混合物は、少なくとも1種のポリオレフィン性不飽和モノマーを含む。好ましくは、前記オレフィン性不飽和モノマーの混合物はまた、非置換のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸の1種以上のモノ不飽和エステルも含む。
【0143】
好ましくは、前記オレフィン性不飽和モノマーの混合物は、0.1〜6.0mol%、さらに好ましくは0.1〜2.0mol%、最も好ましくは0.1〜1.0mol%のポリオレフィン性不飽和モノマーを含有する。好ましくは前記オレフィン性不飽和モノマーの基は、一価不飽和である。
【0144】
好ましくは、前記オレフィン性不飽和モノマーの混合物は、0.1〜6.0mol%、さらに好ましくは0.1〜2.0mol%、最も好ましくは0.1〜2.0mol%のアリルメタクリレートを含有する。さらに好ましくは、アリルメタクリレートは別として、前記混合物中に、さらなるポリオレフィン性不飽和モノマーが、一切存在しない。
【0145】
好ましくは、前記オレフィン性不飽和モノマーの混合物は、前記重合に使用されるオレフィン性不飽和モノマーの総量に対して、10.0質量%未満、さらに好ましくは5.0質量%未満のビニル芳香族炭化水素を含有する。最も好ましくは、前記オレフィン性不飽和モノマーの混合物中に、ビニル芳香族炭化水素が、一切存在しない。前記重合に使用されるオレフィン性不飽和モノマーの総量に対して、10.0質量%未満、さらに好ましくは5.0質量%未満の芳香族基を有するオレフィン性不飽和モノマーが使用される場合、特に好ましい。さらに具体的には、前記オレフィン性不飽和モノマーの混合物中に、芳香族基を有するオレフィン性不飽和モノマーが、一切存在しない。
【0146】
したがって、好ましいとして、上記に規定した前記ビニル芳香族炭化水素、特にビニルトルエン、α−メチルスチレン、及びスチレンは、当然、前記芳香族基を含有するモノマーの群の範囲でのみ好ましい。これにもかかわらず、これらのモノマーは、本発明との関連で、好ましくは使用されない。それにもかかわらず、個々の場合において、そのようなモノマーの使用が、考えられる場合は、好ましいと指定した、前記芳香族基を含有するモノマーを使用することが好ましい。
【0147】
好ましい実施形態において、前記オレフィン性不飽和モノマーの混合物は:
いずれの場合にも前記重合に使用されるオレフィン性不飽和モノマーの総量に対して、
・98.0〜99.5質量%の、非置換のアルキル基(前記アルキル基は、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する)を有する(メタ)アクリル酸の1種以上の一価不飽和エステル、
・0.5〜2.0質量%の、(メタ)アクリル酸の1種以上の多価不飽和エステル、
を含む。
【0148】
少なくとも1種の溶媒を前記オレフィン性不飽和モノマーの混合物に添加することが好ましく、前記溶媒は、好ましくは任意の比率で水と混和性であり、且つ任意の比率でオレフィン性不飽和モノマーの混合物と混和性である。ピロリドン系溶媒は、環境的理由のため、単独で調剤され得ることは留意すべきであるが、適切な有機溶媒は、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、及び特にメトキシプロパノール等のエーテルアルコールである。しかしながら、有機溶媒の量は、前記分散系の水性の性質が保存されるように選択される。
【0149】
記載された調製プロセスの効力によって、本発明の水性分散液中のコポリマーは、記載された調製プロセスを介して達成され得る、特にコアーシェル(core-shell)構造を有する。このコア−シェル構造は、少なくとも1種のポリウレタンを含有するコア、及びオレフィン性不飽和モノマーの重合によって得られた、少なくとも1種のポリマーを含有するシェルによって特徴付けられる。
【0150】
前記コアーシェル構造は、スターブドフィード重合の特定の反応条件によって達成される。全体の反応時間に渡って、最初に充填されたポリウレタンの存在下で、ポリウレタン粒子中に浸透し得る、大量のオレフィン性不飽和モノマーが、決して存在しない。前記水溶性開始剤によって供給され、水相中のモノマーの添加の間に常に存在するフリーラジカルが、添加してすぐにオリゴマーを形成し、もはやポリウレタン中に浸透し得ない。その後、これらはポリウレタンの表面に重合する。
【0151】
好ましい実施形態において、コアのシェルに対する質量比は、80:20〜20:80、さらに好ましくは60:40〜40:60である。ここで意味することは、コア(工程(i)、ポリウレタン)、及びシェル(工程(ii)オレフィン性不飽和モノマーの混合物)の生成のために使用した成分の量の比である。
【0152】
好ましくは、前記水性分散液におけるコポリマー(CP)は、Malvern Nano S90(Malvern Instruments社製)を用いて、25±1℃で、光子相関分光法(photon correlation spectroscopy)によって測定された、60〜130nm、さらに好ましくは70〜115nmの粒径(z平均)を有する。633nmの波長で、4mWHe−Neレーザーを備える前記装置は、1〜3000nmの範囲のサイズを対象にする。
【0153】
コポリマー(CP)は、好ましくは架橋されてもよい。本発明の水性分散液のゲル含有量は、いずれの場合にも前記分散系の固形分に基づいて、好ましくは40〜97質量%、さらに好ましくは75〜90質量%である。
【0154】
ゲル含有量は、前記分散系を凍結乾燥し、凍結乾燥されたポリマー(ゲル含有量を測定することとの関連で、前記分散系の固形分に相当する)の総質量を測定し、及びその後、前記ポリマーを、過剰のテトラヒドロフラン中で(テトラヒドロフランの、凍結乾燥されたポリマーに対する比=300:1)、25℃で、24時間抽出することによって、重量測定法で測定され得る。不溶性画分が、除去され、空気循環オーブン中、50℃で4時間乾燥される。その後、前記乾燥した不溶性画分が、質量測定され、凍結乾燥ポリマーの総質量との割合が算出される。得られた数値が、ゲル含有量に相当する。
【0155】
コポリマー(CP)の質量平均モル質量は、好ましくは3*10
7g/mol〜8.5*10
9g/molであり、小角レーザー光散乱(small-angle laser light scattering)によって、質量平均モル質量を測定することが可能である。
【0156】
コポリマー(CP)の酸価は、好ましくは0〜220mgKOH/g固体樹脂、好ましくは0〜40mgKOH/g固体樹脂、さらに好ましくは0〜25mgKOH/g固体樹脂である。OH価は、好ましくは70mgKOH/g固体樹脂未満、好ましくは20mgKOH/g固体樹脂未満である。ポリマー又はポリマーの分散系に関して、用語「固体樹脂」、及び「固体」は、同意義である。したがって、それらは、さらに具体的には、以下で説明されるポリマー分散系の固体、又は固形分に言及する。
【0157】
前記酸価は、DIN EN ISO2114に基づいて、THF/水(9体積部のTHF、及び1体積部の蒸留水)の、水酸化カリウムエタノール溶液との均質溶液中で、測定され得る。
【0158】
前記OH価は、R.−P.Kruger,R.Gnauck and R.Algeier,Plaste und Kautschuk,20,274(1982)に基づいて、室温で、テトラヒドロフラン(THF)/ジメチルホルムアミド(DMF)溶液中、触媒として4−ジメチルアミノピリジンの存在下で、無水酢酸によって、アセチル化後に残存する過剰の無水酢酸を完全に加水分解し、水酸化カリウムアルコール溶液で無水酢酸の電位差滴定の逆滴定(back-titration)を行うことによって、測定され得る。
【0159】
前記少なくとも1種のコポリマー(CP)の水性分散液は、好ましくは15〜45質量%、特に好ましくは25〜35質量%の固形分を有する。この種の固形分は、前記コポリマーを調製する過程で、適切な量の有機溶媒及び特に水の使用によって、及び/又は前記調製後の適切な希釈によって問題なく確立され得る。
【0160】
前記コポリマー(CP)の割合は、いずれの場合にも水性ベースコート材料(b.2.1)の総質量に基づいて、好ましくは0.5〜15.0質量%、さらに好ましくは0.75〜12.5質量%、特に好ましくは1.0〜10.0質量%、特に1.5〜7.5質量%の範囲である。
【0161】
本発明に従って使用するベースコート材料(b.2.1)は、さらに少なくとも1種の特定の反応生成物(R)、好ましくは厳密に1種の反応生成物(R)を含む。
【0162】
前記反応生成物は、直鎖状である。直鎖状反応生成物は、原則として、二官能性反応体(difunctional reactant)の変換によって得られ、その場合、前記官能基の反応を介する前記反応体の結合が、直鎖状、すなわち、連鎖結合された構造を生じさせる。したがって、例えば、前記反応生成物がポリマーである場合、主鎖が直鎖状の特徴を有する。前記反応生成物が、例えばポリエステルの場合、使用される反応体は、ジオール、及びジカルボン酸であってもよく、その場合、反応生成物におけるエステル結合の連続が、直鎖状の特徴を有する。したがって、好ましくは、反応生成物(R)の調製において、主に二官能性反応体が使用される。したがって、特に単官能性化合物等の別の反応体は、仮にあったとしても、好ましくは、ほんの少量で使用される。特に、少なくとも80mol%の、好ましくは少なくとも90mol%の、最も好ましくは専ら二官能性反応体が使用される。さらなる反応体が使用される場合、これらは、好ましくは専ら単官能性反応体の群から選択される。しかしながら、専ら二官能性反応体が使用されることが好ましい。
【0163】
前記反応体のための有用な官能基は、これに関連して、当業者に公知の官能基を含む。互いに結合され得、それにより、前記反応生成物の調製に役立ち得る適切な官能基を有する反応体の組み合わせもまた、原則として公知である。結合に必要な反応条件についても同様に当てはまる。前記反応体のための好ましい官能基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イミノ基、カルバメート基、アロファネート基、チオ基、無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、メチロール基、メチロールエーテル基、シロキサン基、及び/又はアミノ基であり、特に好ましくはヒドロキシル基、及びカルボキシル基である。互いに結合され得る官能基の好ましい組み合わせは、ヒドロキシル基とカルボキシル基、、イソシアネート基とヒドロキシル基、イソシアネート基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、及び/又はエポキシ基とアミノ基であり、前記官能基を選択する際に、以下に記載されるヒドロキシル官能価(hydroxyl functionality)、及び酸価が、反応生成物に得られることを確保すべきである。その後、前記結合は、当業者に公知の結合点(linkage point)、例えば、エステル基、ウレタン基、及び/又はウレア基を生じさせる。非常に特に好ましいものは、ヒドロキシル基とカルボキシル基の組み合わせである。この実施形態において、したがって、少なくとも1種の反応体がヒドロキシル基を有し、且つ少なくとも1種のさらなる反応体がカルボキシル基を有する。ジヒドロキシ官能性、及びジカルボキシ官能性の反応体を使用することが好ましい。それ自体公知である方法で、これらの反応体の反応を行い、エステル結合を含有する反応生成物を形成する。
【0164】
前記反応生成物は、ヒドロキシ官能性である。前記反応体は、形成する直鎖状分子が、2個の末端ヒドロキシル基を有するように変換されることが好ましい。これは、1個のヒドロキシル基が、これらの分子の2個の末端のそれぞれに存在することを意味する。
【0165】
反応生成物は、20mgKOH/g未満、好ましくは15mgKOH/g未満、特に好ましくは10mgKOH/g未満、最も好ましくは5mgKOH/gの酸価を有する。したがって、好ましくは、それは非常に少量のみのカルボン酸基を有する。特に明確な指示の無い限り、本発明との関連で、前記酸価は、DIN53402に従って測定される。したがって、それは、反応生成物自体に、すなわち固形分に関連する(前記固形分の測定のため、下記参照)。
【0166】
本発明との関連で、有効性の公式期間に関連なく公式標準の言及がなされた場合、これは、当然に、出願日時点で最新の標準のバージョンを意味するか、この日時点で、最新のバージョンが存在しない場合、最後のバージョンを意味する。
【0167】
前記ヒドロキシル官能価は、低酸価(low acid number)と同様に、例えば、適切な官能基を有する反応体の適切な比率での使用によって、それ自体公知の方法で得られ得る。したがって、ジヒドロキシ官能性、及びジカルボキシ官能性の反応体が前記調製に使用される好ましい場合においては、適切な過剰のジヒドロキシ官能性成分が使用される。これに関連して、以下にさらに説明される。純粋に統計的理由だけのために、実際の反応は、当然、例えば、所望の(ジ)ヒドロキシル官能価を有する分子だけを与えない。しかしながら、適切な条件の選択、例えば、過剰のジヒドロキシ官能性反応体、及び所望の酸価が得られるまで反応を行うことは、前記反応生成物を作り上げる変換生成物、又は分子が、少なくとも平均で、ヒドロキシ官能性であることを保証する。当業者は、適切な条件を選択する方法を知っている。
【0168】
前記反応生成物の調製において、使用される、又は反応体として変換される、少なくとも1種の化合物(v)は、2個の官能基(v.a)、及び前記2個の官能基間に配置され、12〜70個、好ましくは22〜55個、さらに好ましくは30〜40個の炭素原子を有する、脂肪族又は芳香脂肪族(alaliphatic)ヒドロカルビル基(v.b)を有する。したがって、化合物(v)は、2個の官能基、及びヒドロカルビル基からなる。
【0169】
有用な官能基は、当然に、上記の官能基、特にヒドロキシル基、及びカルボキシル基を含む。脂肪族ヒドロカルビル基は、非環式、又は環式の、飽和、又は不飽和の、非芳香族ヒドロカルビル基であることが知られている。芳香脂肪族ヒドロカルビル基は、脂肪族、及び芳香族構造単位の両方を含むものである。
【0170】
前記反応生成物の数平均分子量は、広範囲に変化し、例えば、600〜40000g/mol、特に800〜10000g/mol、最も好ましくは1200〜5000g/molである。特に明確な指示の無い限り、本発明との関連で数平均分子量は、蒸気圧浸透法によって測定される。測定は、蒸気圧浸透圧計(vapor pressure osmometer)(model 10.00(Knauer社製))を使用して、トルエン中、50℃で、調査中の成分の濃度系列で、使用した装置の実験的な較正定数を測定するための較正物質としてベンゾフェノンを用いて(較正物質としてベンジルが使用された、E.Schroder、G.Muller、K.−F.Arndt、「Leitfaden der Polymercharakterisierung」、Akademie−Verlag、Berlin、47〜54頁、1982年に従って)、実施した。
【0171】
好ましい化合物(v)は、二量体脂肪酸(dimer fatty acid)であるか、又は二量体脂肪酸中に存在する。したがって、反応生成物(R)の調製において、二量体脂肪酸は、化合物(v)として、独占的ではないが、好ましく使用される。二量体脂肪酸(二量体化脂肪酸(dimerized fatty acid)、又はダイマー酸(dimer acid)としても長い間知られている)は、一般に、且つ特に、本発明との関連で、不飽和脂肪酸のオリゴマー化によって調製される混合物である。それらは、例えば、不飽和植物脂肪酸の触媒的二量体化によって調製でき、さらに具体的には、使用される出発物質は、C
12〜C
22脂肪酸である。結合は、主にディールス・アルダー(Diels-Alder)機構によって形成され、その結果、二量体脂肪酸を調製するために使用される脂肪酸中の二重結合の数、及び位置に応じて、前記カルボキシル基の間に、主として、脂環式、直鎖脂肪族、分岐脂肪族、及びC
6芳香族炭化水素基の混合物が生じる。機構、及び/又はそれに続く水素化に応じて、脂肪族基は、飽和、又は不飽和であってもよく、芳香族基の画分も変化してもよい。したがって、前記カルボン酸基の間の基は、例えば、24〜44個の炭素原子を含む。前記調製のため、18個の炭素原子を有する脂肪酸が、好ましく使用され、そのため前記二量体生成物は、36個の炭素原子を有する。二量体脂肪酸のカルボキシル基に結合する基は、好ましくは不飽和結合を一切有さず、且つ芳香族炭化水素基を一切有さない。
【0172】
したがって、本発明との関連で、C
18脂肪酸は、前記調製において、好ましく使用される。リノレン酸、リノール酸、及び/又はオレイン酸の使用が特に好ましい。
【0173】
反応方式(reaction regime)に応じて、上記で特定したオリゴマー化は、第一に二量体分子、さらに三量体分子、及び単量体分子、及びその他の副生成物を含む混合物を生じさせる。精製が、典型的には蒸留によって実施される。市販の二量体脂肪酸は、一般に少なくとも80質量%の二量体分子、19質量%以下の三量体分子、並びに1質量%以下の単量体分子、及びその他の副生成物を含有する。
【0174】
少なくとも90質量%の範囲の、好ましくは少なくとも95質量%の範囲の、最も好ましくは少なくとも98質量%の範囲の二量体脂肪酸分子からなる二量体脂肪酸を使用することが好ましい。
【0175】
本発明との関連で、少なくとも90質量%二量体分子、5質量%未満の三量体分子、並びに5質量%未満の単量体分子、及び副生成物からなる二量体脂肪酸を使用することが好ましい。95〜98質量%の二量体分子、5質量%未満の三量体分子、並びに1質量%未満の単量体分子、及びその他の副生成物からなる二量体脂肪酸の使用が特に好ましい。同様に、少なくとも98質量%の二量体分子、1.5質量%未満の三量体分子、並びに0.5質量%未満の単量体分子、及びその他の副生成物からなる二量体脂肪酸が、特に好ましく使用される。前記二量体脂肪酸中の単量体、二量体、及び三量体分子、及びその他の副生成物の画分は、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)法によって測定され得る。その場合、GC分析の前に、前記二量体脂肪酸は、三フッ化ホウ素法(DIN EN ISO 5509参照)によって、対応するメチルエステルに変換され、その後GC方によって分析される。
【0176】
したがって、本発明との関連で、「二量体脂肪酸」の基本的な識別子(indentifier)は、それらの調製が、不飽和脂肪酸のオリゴマー化を伴うことである。言い換えれば、このオリゴマー化は、主として、好ましくは少なくとも80質量%の範囲、さらに好ましくは少なくとも90質量%の範囲、さらにいっそう好ましくは少なくとも95質量%の範囲、さらに具体的には少なくとも98質量%の範囲に、二量体生成物を生じさせる。したがって、前記オリゴマー化が、主として、厳密に2個の脂肪酸分子を含有する二量体生成物を生じさせるという事実は、いずれの場合でも通常である、この指定を正当化する。したがって、関連する用語「二量体脂肪酸」についての別の表現は、「二量体化脂肪酸を含む混合物」である。したがって、二量体脂肪酸の使用は、自動的に二官能性化合物(v)の使用を実行する。これはまた、本発明との関連で選択された、二量体脂肪酸は、化合物(v)として、好ましく使用されるという記述を正当化する。これは、化合物(v)が明らかに、二量体脂肪酸と称された混合物の主成分であるからである。したがって、二量体脂肪酸が、化合物(v)として使用される場合、これは、これらの化合物(v)が、上記単量体、及び/又は三量体分子、及び/又はその他の副生成物との対応する混合物の形態で使用されることを意味する。
【0177】
使用される前記二量体脂肪酸は、市販品として得られ得る。例としては、Radiacid0970、Radiacid0971、Radiacid0972、Radiacid0975、Radiacid0976、及びRadiacid0977(Oleon社製)、Pripol1006、Pripol1009、Pripol1012、及びPripol1013(Croda社製)、Empol1008、Empol1061、及びEmpol1062(BASF社製)、及びUnidyme10、及びUnidymeTI(Arizona Chemical社製)を含む。
【0178】
さらなる好ましい化合物(v)は、二量体ジオール(dimer diol)であるか、又は二量体ジオール中に存在する。二量体ジオールは、長い間知られており、二量体脂肪アルコールとしても科学論文に言及される。これらは、例えば、不飽和脂肪酸、又はそれらのエステルのオリゴマー化、及び続く、前記酸、又はエステル基の水素化によって、又は不飽和脂肪アルコールのオリゴマー化によって、調製される混合物である。使用される出発物質は、不飽和C
12〜C
22脂肪酸、若しくはそれらのエステル、又は不飽和C
12〜C
22脂肪アルコールであってもよい。二量体ジオール中のヒドロキシル基に接続する前記ヒドロカルビル基は、前記二量体脂肪酸を分ける前記ヒドロカルビル基と同様に規定される。
【0179】
例えば、DE−1198348は、280℃超で塩基性アルカリ土類金属化合物を用いる不飽和脂肪アルコールの二量体化による、その調製を記載する。
【0180】
それらはまた、ドイツ公告公報(Auslegeschrift)DE−B−1768313に従って、上記のような二量体脂肪酸、及び/又はそれらのエステルの水素化によっても調製され得る。そこに記載の条件下で、前記脂肪酸のカルボキシル基がヒドロキシル基に水素化されるだけでなく、前記二量体脂肪酸、又はそれらのエステル中にまだ存在する任意の二重結合もまた、部分的に、又は完全に水素化される。前記水素化中に、前記二重結合が、完全に保存されるように水素化を行うことも可能である。この場合、不飽和二量体ジオールが得られる。好ましくは、前記水素化は、前記二重結合が、非常に実質的に水素化されるように実施される。
【0181】
二量体ジオールを調製する別の方法は、国際出願WO91/13918に従って、ケイ質土/アルミナ触媒、及び塩基性アルカリ金属化合物の存在下での、不飽和アルコールの二量体化を伴う。
【0182】
前記二量体ジオールの調製のために記載されたプロセスに関わりなく、C
18脂肪酸、若しくはそのエステル、又はC
18脂肪アルコールから調製されている、それらの二量体ジオールを使用することが好ましい。この場合、主として、36個の炭素原子を有する二量体ジオールが形成される。
【0183】
上記の工業プロセスによって調製されている二量体ジオールは、常に、さまざまな量の三量体トリオール、及び単官能アルコールを有する。一般に、二量体分子の比率は、70質量%超であり、残りは、三量体分子、及び単量体分子である。本発明との関連で、これらの二量体ジオール、又は90質量%超の二量体分子を有する純粋な二量体ジオールのいずれかを使用することが可能である。特に好ましいものは、90〜99質量%の二量体分子を有する二量体ジオールであり、次にこれらの中で好ましいものは、その二重結合、及び/又は芳香族基が、少なくとも部分的に、又は完全に水素化されている前記二量体ジオールである。したがって、関連する用語「二量体ジオール」についての別の表現は、「脂肪アルコールの二量体化によって調製される二量体を含む混合物」である。したがって、二量体ジオールの使用は、自動的に二官能性化合物(v)の使用を実行する。これはまた、本発明との関連で選択された、二量体ジオールが、化合物(v)として使用されるという記述を正当化する。これは、化合物(v)が明らかに、二量体ジオールと称された混合物の主成分であるからである。したがって、二量体ジオールが、化合物(v)として使用される場合、これは、これらの化合物(v)が、上記単量体、及び/又は三量体分子、及び/又はその他の副生成物との対応する混合物の形態で使用されることを意味する。
【0184】
好ましくは、前記二量体ジオールの平均ヒドロキシル官能価は、1.8〜2.2であるべきである。
【0185】
したがって、本発明との関連で、上記の二量体脂肪酸から水素化によって調製され得る前記二量体ジオールを使用することが好ましい。非常に特に好ましいものは、≧90質量%の二量体分子、≦5質量%の三量体分子、並びに≦5質量%の単量体分子、及びその他の副生成物からなり、及び/又は1.8〜2.2のヒドロキシル官能価を有する、前記二量体ジオールである。95〜98質量%の二量体分子、5質量%未満の三量体分子、並びに1質量%未満の単量体分子、及びその他の副生成物からなる二量体脂肪酸から、水素化によって調製され得る前記ジオールの使用が、特に好ましい。同様に、≧98質量%の二量体分子、≦1.5質量%の三量体分子、並びに≦0.5質量%の単量体分子、及びその他の副生成物からなる二量体脂肪酸から、水素化によって調製され得る前記ジオールの使用が、特に好ましい。
【0186】
二量体ジオールを調製するために使用され得る二量体脂肪酸は、既に上記したように、反応方式に従って、脂肪族、及び場合によっては芳香族分子フラグメントの両方を含有する。前記脂肪族分子フラグメントは、さらに、次に飽和又は不飽和であってもよい、直鎖及び環状フラグメントに分類され得る。水素化によって、前記芳香族、及び前記不飽和脂肪族分子フラグメントは、対応する飽和脂肪族分子フラグメントに変換され得る。したがって、成分(v)として使用できる前記二量体ジオールは、飽和、又は不飽和であってもよい。前記二量体ジオールは、好ましくは脂肪族であり、特に、脂肪族、且つ飽和である。
【0187】
本発明との関連で、カルボン酸基の、好ましくは飽和脂肪族の二量体脂肪酸の水素化によって調製され得る、前記二量体ジオールを使用することが好ましい。
【0188】
特に好ましいことは、≧98質量%の二量体分子、≦1.5質量%の三量体分子、並びに≦0.5質量%の単量体分子、及びその他の副生成物からなる二量体脂肪酸から、水素化によって調製され得る前記ジオールの使用である。
【0189】
さらに好ましくは、前記二量体ジオールは、DIN ISO4629による方法で測定された、170〜215mgKOH/gの、さらにいっそう好ましくは195〜212mgKOH/gの、特に200〜210mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。さらに好ましくは、前記二量体ジオールは、1500〜5000mPasの、さらにいっそう好ましくは1800〜2800mPasの粘度を有する(25℃、Brookfield、ISO2555)。
【0190】
非常に特に好ましく使用される二量体ジオールは、市販製品Pripol(登録商標)2030、及び特にPriopol(登録商標)2033(Uniqema社製)、又はSovermol(登録商標)908(BASF社製)を含む。
【0191】
好ましい反応生成物(R)は、二量体脂肪酸と、脂肪族、芳香脂肪族、又は芳香族ジヒドロキシ官能性化合物との反応によって調製される。脂肪族化合物は、非芳香族有機化合物である。それらは、直鎖、環状、又は分岐であってもよい。可能性のある化合物の例は、二個のヒドロキシル基、及び脂肪族ヒドロカルビル基からなる。二個のヒドロキシル基中に存在する酸素原子と同様に、例えば、エーテル、及び/又はエステル結合を連結する形態で、酸素、又は窒素、特に酸素原子等のさらなるヘテロ原子を含む化合物の可能性もある。芳香脂肪族化合物は、脂肪族、及び芳香族構造単位の両方を含むものである。しかしながら、反応生成物(R)は、二量体脂肪酸と脂肪族ジヒドロキシ官能性化合物との反応によって調製されることが好ましい。
【0192】
前記脂肪族、芳香脂肪族、又は芳香族ジヒドロキシ官能性化合物は、好ましくは120〜6000g/mol、特に好ましくは200〜4500g/molの数平均分子量を有する。
【0193】
したがって、前記数平均分子量の記述は、好ましいジヒドロキシ官能性化合物が、種々の大きいジヒドロキシ官能性分子の混合物であることを示唆する。粗前記ジヒドロキシ官能性化合物は、好ましくはポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、又は二量体ジオールである。
【0194】
本発明との関連で、前記二量体脂肪酸、及び前記脂肪族、芳香脂肪族、及び/又は芳香族、好ましくは、脂肪族ジヒドロキシ官能性化合物は、0.7/2.3〜1.6/1.7の、好ましくは0.8/2.2〜1.6/1.8、最も好ましくは0.9/2.1〜1.5/1.8のモル比で、互いに反応される。したがって、過剰のヒドロキシル基の結果として、さらに低い酸価を有するヒドロキシ官能性反応生成物が得られる。前記過剰のレベルを介して、前記反応生成物の分子量を制御することが可能である。わずかに過剰のヒドロキシ官能性反応体が使用された場合、その場合、存在する酸基の実質的な変換が保証されるだけであるので、それに応じて、より長鎖の生成物が結果として得られる。より大過剰のヒドロキシ官能性反応体の場合は、それに応じて、より短鎖の反応生成物が結果として得られる。前記反応生成物の数平均分子量は、当然、反応体の、例えば、好ましくは脂肪族ジヒドロキシ官能性化合物の分子量によっても影響を受ける。前記好ましい反応生成物の数平均分子量は、高範囲に変化してもよく、例えば、600〜40000g/mol、特に800〜10000g/mol、最も好ましくは1200〜5000g/molである。
【0195】
したがって、好ましい反応生成物は、直鎖ブロック型化合物A−(B−A)
nとしても記載され得る。その場合、ブロック型の少なくとも1種は、化合物(v)に基づいている。好ましくは、前記Bブロックが、二量体脂肪酸、すなわち、化合物(v)に基づいている。前記Aブロックは、好ましくは脂肪族ジヒドロキシ官能性化合物、特に好ましくは脂肪族ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、又は二量体ジオールに基づいている。したがって、後者の場合、前記それぞれの反応生成物は、専ら互いに接続した化合物(v)に基づいている。
【0196】
非常に特に好ましい反応生成物は、二量体脂肪酸と、一般構造式(I):
【化4】
で表わされる少なくとも1種の脂肪族ジヒドロキシ官能性化合物との反応によって調製され、
式中、Rは、C
3〜C
6アルキレン基であり、nは、式(I)の化合物が、120〜6000g/molの数平均分子量を有するように対応して選択され、前記二量体脂肪酸、及び式(I)の化合物は、0.7/2.3〜1.6/1.7のモル比で使用され、結果として得られる反応生成物は、600〜40000g/molの数平均分子量、及び10mgKOH/g未満の酸価を有する。
【0197】
したがって、非常に特に好ましい実施形態において、nは、ここで式(I)の化合物が、450〜2200g/molの、特に800〜1200g/molの数平均分子量を有するように選択される。Rは、好ましくはC
3〜C
4アルキレン基である。それは、さらに好ましくはイソプロピレン基、又はテトラメチレン基である。最も好ましくは式(I)の化合物は、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラヒドロフランである。前記二量体脂肪酸、及び式(I)の化合物は、好ましくは、ここで0.7/2.3〜1.3/1.7のモル比で使用される、この実施形態において、結果として得られる反応生成物は、1500〜5000g/molの、好ましくは2000〜4500g/molの、最も好ましくは2500〜4000g/molの数平均分子長を有する。
【0198】
同様に、非常に特に好ましい反応生成物は、二量体脂肪酸と、一般構造式(II):
【化5】
で表わされる少なくとも1種のジヒドロキシ官能性化合物との反応によって調製され、
式中、
Rは、2〜10個の炭素原子を含む二価の有機基であり、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、2〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキレン基であり、
X及びYは、それぞれ独立して、O、S、又はNR
3(式中、R
3は水素、又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である)であり、且つ
m及びnは、式(II)の化合物が、450〜2200g/molの数平均分子量を有するように対応して選択され、
成分(a)及び(b)は、0.7/2.3〜1.6/1.7のモル比で使用され、結果として得られる反応生成物は、1200〜5000g/molの数平均分子量、及び10mgKOH/g未満の酸価を有する。
【0199】
構造式(II)において、Rは、2〜10個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子を含む二価の有機基である。R基は、例えば、脂肪族、芳香族、又は芳香脂肪族であってもよい。R基は、炭素原子及び水素原子と同様に、例えばO又はN等のヘテロ原子も含有しもよい。前記基は、飽和、又は不飽和であってもよい。Rha,好ましくは2〜10個の炭素原子を有する脂肪族基、さらに好ましくは2〜6個の炭素原子を有する脂肪族基、最も好ましくは2〜4個の炭素原子を有する脂肪族基である。例えば、R基は、C
2H
4、C3H
6、C
4H
8、又はC
2H
4−O−C
2H
4である。
【0200】
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、2〜10個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子、さらに好ましくは3〜5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキレン基である。これらの基は、好ましくは炭素、及び水素のみを含有する。
【0201】
構造式(II)の化合物において、n個のR
1及びm個のR
2の全てが、同一であってもよい。しかしながら、異なる種類のR
1及びR
2が、存在することも可能である。好ましくは全てのR
1及びR
2は、同一である。非常に特に好ましくは、R
1及びR
2は、C
4又はC
5アルキレン基、特にテトラメチレン、又はペンタメチレン基である。
【0202】
X及びYは、それぞれ独立して、O、S、又はNR
3(式中、R
3は水素、又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である)である。好ましくはX及びYは、それぞれ独立して、O、又はNR
3であり、さらに好ましくは、それらは、それぞれ独立して、O、及びNHであり、最も好ましくはX及びYは、Oである。
【0203】
したがって、指数m及びnは、構造式(II)の化合物が、450〜2200g/molの、好ましくは500〜1400g/molの、さらに好ましくは500〜1200g/molの数平均分子量を有するように対応して選択される。
【0204】
一般構造式(I)のポリエステルポリオールは、化合物HX−R−YHが、出発化合物として作用し、ヒドロキシ末端のポリエステル鎖が、前記出発化合物上にヒドロキシカルボン酸HO−R
1−COOH、及びHOR
2−COOHのラクトンの開環重合によって重合される、第一経路によって調製され得る。第一に、例えば、ヒドロキシカルボン酸HO−R
1−COOH、及びHOR
2−COOHのラクトンの開環重合、又はヒドロキシカルボン酸HO−R
1−COOH、及びHOR
2−COOHの重縮合によって、α−ヒドロキシ−γ−カルボキシ末端ポリエステルを調製する、第二経路によっても、当然に可能である。その後、α−ヒドロキシ−γ−カルボキシ末端ポリエステルは、今度は化合物HX−R−YHと、縮合法によって反応され、本発明に従って使用されるポリエステルジオールを得ることができる。
【0205】
例えば、対応するプロセスは、出願人Stamicarbon N.V.からのドイツ公開公報2234265「Hydroxylendstandige Polylactone」[ヒドロキシル末端ポリラクトン]に記載される。
【0206】
二量体脂肪酸及び式(II)の化合物は、ここで、好ましく0.7/2.3〜1.3/1.7のモル比で使用される。この実施形態において、好ましくは、結果として得られる反応生成物は、1200〜5000g/molの、好ましくは1200〜4500g/molの、最も好ましくは1200〜4000g/molの数平均分子量を有する。
【0207】
同様に、非常に特に好ましい反応生成物(R)は、二量体脂肪酸と、二量体ジオールとの反応であって、前記二量体脂肪酸、及び二量体ジオールが、0.7/2.3〜1.6/1.7のモル比で使用され、結果として得られる反応生成物が、1200〜5000g/molの数平均分子量、及び10mgKOH/g未満の酸価を有する反応によって調製される。
【0208】
好ましい二量体ジオールは、上記に既に記載されている。ここで、前記二量体脂肪酸、及び二量体ジオールは、0.7/2.3〜1.3/1.7のモル比で使用されることが好ましい。ここで、結果として得られる反応生成物は、1200〜5000g/molの、好ましくは1300〜4500g/molの、非常に好ましくは1500〜4000g/molの数平均分子量を有する。
【0209】
上記記述から、反応生成物(R)が、化合物(v)の独占的な使用によって調製されることになる。例えば、前記反応生成物を、上記の好ましい二量体脂肪酸及び二量体ジオールの使用によって、調製することが可能である。両方の化合物の分類は、化合物(v)であるか、又は両方の化合物の分類は、二官能性化合物(v)を含む混合物である。しかしながら、化合物(v)の、好ましくは二量体脂肪酸と、他の有機化合物、特に構造式(I)、及び(II)の化合物との反応によって、反応生成物(R)を調製することが同様に可能である。
【0210】
本発明との関連で、少なくとも1種の化合物(v)の25〜100mol%が、前記反応生成物の調製に使用される。専ら化合物(v)が使用される場合、少なくとも2種の化合物(v)が使用されることが明らかである。
【0211】
反応生成物(R)の比率は、好ましくは、いずれの場合にも前記水性ベースコート材料(b.2.1)の総質量に基づいて、0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜12質量%、さらに好ましくは0.75〜8質量%の範囲である。
【0212】
反応生成物(R)の含有量が、0.1質量%未満である場合、ピンホール(pinhole)に対する安定性において、さらなる改善が達成されない場合があり得る。前記含有量が、15質量%より大きい場合、不利な点が、例えば、水性コーティング組成物中の前記反応生成物の非相溶性(incompatibility)等のいくつかの環境下で発生し得る。そのような非相溶性は、例えば、平坦でないレベリング(uneven leveling)において、及び流動(floating)、又は沈降(settling)においても認められる。
【0213】
本発明の反応生成物は、一般に、水溶液系にやや溶け難い。したがって、好ましくは、水性コーティング組成物の製造に直接に使用され、さもなければ、製造完了すると、完成したコーティング組成物に添加されない。
【0214】
本発明に従って使用されるベースコート材料(b.2.1)は、さらに、少なくとも1種の特定のポリウレタン樹脂(X)を、好ましくは厳密に1種のそのようなポリウレタン樹脂を含む。
【0215】
ポリウレタン樹脂は、原則として公知であり、その調製、及びその調製に使用される出発化合物、特に、ポリウレタン樹脂(X)の調製用にも使用される、ポリイソシアネート及びポリオールが、例えば、WO92/15405A1、4頁28行〜10頁32行、4頁、及び14頁13行〜15頁28行に、或いは、DE19948004A1、4頁10行〜9頁62行に記載され、及び/又はコポリマー(CP)の調製の工程(i)において使用される前記ポリウレタンの記載にさらに挙げられる。
【0216】
少なくとも1種のポリウレタン樹脂(X)が、カルボキシ官能性であることが好ましい。それは、好ましくは、5〜100mgKOH/g、さらに好ましくは7〜50mgKOH/g、特に好ましくは15〜35mgKOH/gの酸価を有する。特に、存在するカルボン酸基が、ポリウレタン樹脂(X)を親水性的に安定化させ得るか、又はポリウレタン樹脂(X)が、高い水性溶媒中の分散性を有することにより、それが、以下に記載するように、悪影響なしに水性分散液に移行され得、したがって、本発明の水性コーティング組成物中にも一体化され得る。周知の通り、そのようなカルボン酸基は、pHに従って、又はこれに関連して公知の中和剤の使用に従って、イオン性カルボキシレート基としても存在し得る。したがって、カルボン酸基は、イオン性基に変換され得る官能基の1種である(潜在的イオン性基)。カルボン酸の中和は、例えば、ジ−、及びトリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジイソプロパノールアミン、モルホリン、及び/又はN−アルキルモルホリン等の、アンモニア、アミン、及び/又はアミノアルコールを使用して達成される。
【0217】
前記カルボン酸基は、これらのポリウレタン樹脂の調製用の対応する出発化合物の使用を介して、すなわち、少なくとも1個のカルボン酸基、及びイソシアネート基に対して反応性である少なくとも1個の官能基、好ましくはヒドロキシル基を含有する、カルボキシル含有化合物(x.1)を介して、ポリウレタン樹脂(X)の調製に使用される。この方法においては、化合物(x.1)をポリウレタンベース骨格(polyurethane base skeleton)中に組み込むこと、及び同時に、カルボン酸基をポリウレタン樹脂(X)中に導入することが可能である。好ましくは、化合物(x.1)は、少なくとも1個のカルボン酸基、及び少なくとも2個のヒドロキシル基、最も好ましくは1個のカルボン酸基、及び2個のヒドロキシル基を含有する。
【0218】
有用な化合物(x.1)は、それらがカルボキシル基を含有する場合、例えば、ポリエーテルポリオール、及び/又はポリエステルポリオール、特にポリエステルポリオールを含む。この種のポリエステルポリオールは、例えば、DE3903804A1に記載され、当業者に公知の方法で調製され得る。例えば、前記ポリエステルポリオール(x.1)は、有機溶媒中で、ジブチル錫ラウレート等の標準触媒の存在下での標準ポリエステル合成を介して調製され得、典型的に使用される二官能性モノマー出発化合物、すなわち、ジオール、及びジカルボン酸、及び対応する無水物だけではなく、例えば、無水トリメリット酸、及びジヒドロキシカルボン酸等の、トリオール、トリカルボン酸、及び対応する無水物等の三官能性出発化合物を使用することが可能である。この方法においては、可能性のある分岐部位の導入を介して、ヒドロキシル基、及びカルボン酸基の両方を含有し得るポリエステルを調製することが可能である。ポリマー系であるポリエステルは、常に、異なる大きさの分子の混合物であるので、例えば、ポリエステル(x.1)中のカルボン酸基、又はヒドロキシル基の存在に関して、上記で規定された特徴は、統計的な平均値として見なされることは明らかである。好ましくは、そのような化合物(x.1)は、300〜3000g/molの数平均分子量を有する。そのような化合物(x.1)の調製は、例えば、反応条件、及び記載された前記出発物質のための使用比の簡単な調節を介して可能である。
【0219】
しかしながら、使用される化合物(x.1)は、好ましくは、少なくとも1個のカルボン酸基、及びイソシアネートに対して反応性である少なくとも1個の官能基、好ましくはヒドロキシル基を有する低分子量化合物である。本発明との関連で、表現「低分子量化合物」は、より高分子量の化合物、特にポリマーの対語として、個別の分子量が指定され得る基を意味すると理解されるべきである。したがって、さらに具体的には、後者は、常に分子の混合物であり、平均分子量を使用して記載されなければならないので、低分子量化合物はポリマーではない。好ましくは、用語「低分子量化合物」は、対応する化合物が、300g/mol未満の分子量を有することを意味すると理解される。100〜200g/molの範囲が好ましい。
【0220】
これに関連して好ましい化合物(x.1)は、例えば、二個のヒドロキシル基を含有するモノカルボン酸、例えばジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシコハク酸、及びジヒドロキシ安息香酸等である。非常に特に好ましい化合物(x.1)は、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、及び/又は2,2−ジメチロールペンタン酸等のα,α−ジメチロールアルカン酸、特に2,2−ジメチロールプロピオン酸である。
【0221】
ポリウレタン樹脂(X)は、大量に、又は溶液中で、公知の、確立された方法で、特に好ましくは、メチルエチルケトン等の典型的な有機溶媒中で、高い温度で、任意にポリウレタン調製に典型的な触媒を用いて、使用される出発化合物の変換によって調製され得る。そのような触媒は、当業者に公知であり、一例は、ジブチル錫ラウレートである。
【0222】
しかしながら、前記調製は、120℃以下、好ましくは30〜100℃、特に40〜90℃の温度で実施される。このことは、化合物(x.1)に存在するカルボン酸基が、たとえあったとしても、わずかな程度でのみ、存在する任意のポリオールと反応し、エステル結合を形成するので、これにより前記カルボン酸基が、それらの遊離の形態のままであり、したがって、ポリウレタン樹脂(X)のカルボキシル官能性の基礎を形成し得る利点を有する。しかしながら、上記温度は、いずれの場合でも、イソシアネートの、アルコール、及びアミンとの効果的な反応を可能とするために十分である。同様に、これに関連して、例えばジブチル錫ラウレート等の、ポリウレタン調製に使用できる触媒が、使用されない場合も好ましい。これは、ポリウレタン調製に使用できる触媒は、一般にエステル形成も触媒することが知られているからである。好ましくは、前記ポリウレタン樹脂は、好ましくは有機溶媒中で進行する調製後、水性分散液に移行される。これは、好ましくは、既に上述した中和剤を添加し、及び水を添加し、さらに少なくとも1種の有機溶媒を留去することによって行われる。前記水の添加は、ポリウレタン樹脂(X)の前記分散系が、好ましくは10〜60質量%、特に15〜45質量%の固形分(不揮発性分)を有するように行われる。ポリウレタン樹脂(X)は、好ましくはそのような分散系の形態で、本発明のコーティング組成物に使用される。
【0223】
好ましくは、ポリウレタン樹脂(X)の調製は、二官能性出発化合物、好ましくはジオール、及びジイソシアネート、及び成分(x.1)が、まず互いに反応され、未だイソシアネート基を含むプレポリマーを形成し、その後、後者が、少なくとも3個のヒドロキシル基、好ましくは厳密に3個のヒドロキシル基を有する出発化合物と反応されるように進行する。単量体トリオール、特にトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及びグリセロールが好ましい。これは、その後、説明された通り、好ましくは第三級アミンでの中和、及びポリウレタン樹脂(X)の水中の分散が続く。
【0224】
好ましくは、第一工程において、上記のように、少なくとも1種のポリエステルジオール、少なくとも1種の単量体ジオール、少なくとも1種の単量体化合物(x.1)、及び少なくとも1種のポリイソシアネートが反応され、その後、第二工程において、前記生成物が、上記のように、少なくとも1種の上記の単量体トリオールと反応される。
【0225】
本発明との関連で、ポリウレタン樹脂(X)の調製に使用される出発化合物の少なくとも70質量%が、官能性重合性基(すなわち、ポリマーベース骨格の形成に適切なもの)として、専ら、イソシアネート基、ヒドロキシル基、及びカルボン酸基、さらには、それらに由来する無水物基を含むものであることが好ましい。このような方法で、ポリウレタン樹脂の調製のそれ自体公知の反応条件の適切な選択を介して、前記出発化合物が、主に、ウレタン結合を介して(イソシアネート基、及びヒドロキシル基の反応によって)結合され、且つ前記カルボン酸基は、本発明に必須である酸価を達成するために、前記ポリマー中に未変換の形態のままである樹脂を調製することが可能である。したがって、前記ポリウレタン樹脂(B)は、出発化合物の適切な選択を介して、これらの出発化合物の結合が、主にウレタン結合を介して達成されている樹脂である。さらなる官能性重合性基は、当業者に公知である。究極的には、これに関連して有用な基は、重縮合、及び重付加樹脂の調製に可能性のある全ての基、さらには、(メタ)アクリレート(コ)ポリマー等のフリーラジカル重合によって調製される樹脂の調製のためのビニル含有、アリル含有、並びにアクリロイル、及びメタクリロイル含有出発化合物としてのオレフィン性不飽和基である。例としては、チオ基、N−メチロールアミノ−N−アルコキシメチルアミノ基、イミノ基、カルバメート基、アロファネート基、エポキシ基、メチロール基、メチロールエーテル基、シロキサン基、炭酸塩基、アミノ基、及びβ−ヒドロキシアルキルアミド基、さらには、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基を含む。ポリウレタン樹脂(X)の調製に使用される出発化合物の少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%、最も好ましくは100質量%が、重合性基として、専ら、イソシアネート基、ヒドロキシル基、及びカルボン酸基を含むことが好ましい。したがって、ポリウレタン樹脂(X)は、コポリマーではないことが、特に好ましい。
【0226】
ポリウレタン樹脂(X)の数平均分子量は、広範囲に変化してもよい。それは、好ましくは1000〜50000g/mol、特に2000〜30000g/molの範囲である。
【0227】
ポリウレタン樹脂(X)の比率は、いずれの場合にも水性ベースコート材料(b.2.1)の総質量に基づいて、好ましくは、0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは0.75〜8質量%の範囲である。
【0228】
ベースコート材料(b.2.1)は、好ましくは、顔料、すなわち、着色顔料、及び/又は効果顔料を含む。そのような着色顔料、及び効果顔料は、当業者に公知であり、例えば、Rompp−Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart、New York、1998年、176〜451頁に記載されている。用語「着色顔料(colorling pigment)」、及び「着色顔料(color pigment)」は互換性があり、用語「視覚効果顔料(visual effect pigment)」、及び「効果顔料(effect pigment)」も同様である。
【0229】
好ましい効果顔料は、例えば、層状アルミニウム顔料、ゴールドブロンズ、酸化ブロンズ、及び/又は鉄酸化アルミニウム顔料等の小板状(platelet-shaped)金属効果顔料、パールエッセンス、塩基性炭酸鉛、酸化ビスマス塩化物、及び/又は金属酸化物マイカ顔料等の真珠光沢顔料、及び/又は小板状グラファイト、小板状酸化鉄、PVD膜、及び/又は液晶ポリマー顔料からなる多層効果顔料等の他の効果顔料である。小板状金属効果顔料、特に小板状アルミニウム顔料が、特に好ましい。
【0230】
典型的な着色顔料は、特に、二酸化チタン、亜鉛白、硫化亜鉛、又はリトポン等の白色顔料;カーボンブラック、鉄マンガンブラック、スピネルブラック等の黒色顔料;酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーン又はウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルー又はマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット又はコバルトバイオレット及びマンガンバイオレット、赤酸化鉄、硫セレン化カドミウム、モリブデン赤又はウルトラマリン赤等の有彩顔料;褐色酸化鉄、混合ブラウン、スピネル相及びコランダム相、又はクロムオレンジ;又は黄色酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、硫化亜鉛、クロムイエロー、又はバナジン酸ビスマス等の無機着色顔料を含む。
【0231】
前記顔料の比率は、例えば、いずれの場合にも水性ベースコート材料(b.2.1)の総質量に基づいて、0.5〜30質量%、好ましくは1.5〜20質量%、さらに好ましくは2.0〜15質量%の範囲であってもよい。
【0232】
前記ベースコート材料(b.2.1)は、成分(CP)、(R)、及び(X)の使用を介して、硬化性バインダー、特に物理的及び熱的硬化性バインダーを含む。本発明との関連で、及び関連のあるDIN EN ISO4618に従って、「バインダー」は、顔料、及びフィラーを除いた、コーティング組成物の不揮発成分である。従って、具体的なバインダーは、例えば、標準的なコーティング添加剤、コポリマー(CP)、反応生成物(R)、ポリウレタン樹脂(X)、又は以下に記載される使用可能なさらなるポリマー、及び以下に記載される典型的な架橋剤でもある。しかしながら、前記表現は、単により明確にするために、主に、特定の物理的及び熱的硬化性ポリマー、例えば、特定のポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、及び/又は上記ポリマーのコポリマーに関して、以下で使用される。
【0233】
ベースコート材料(b.2.1)は、好ましくは、バインダーとして、コポリマー(CP)、反応生成物(R)、及びポリウレタン樹脂(X)以外の少なくとも1種のポリマー、特にポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、及び/又は上記ポリマーのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマー、特にポリウレタンポリアクリレートをさらに含む。コポリマー(CP)以外の好ましいポリウレタンポリアクリレートコポリマー(アクリル化ポリウレタン)、及びそれらの調製は、例えば、WO91/15528A1、3頁21行〜20頁33行、及びDE4437535A1、2頁27行〜6頁22行に記載される。バインダーとして記載される前記ポリマーは、好ましくはヒドロキシ官能性である。好ましくは、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種のコポリマー(CP)、少なくとも1種の反応生成物(R)、及び少なくとも1種のポリウレタン樹脂(X)と同様に、コポリマー(CP)以外の少なくとも1種のポリウレタンポリアクリレートコポリマーを含む。
【0234】
バインダーとしての前記さらなるポリマーの、好ましくはコポリマー(CP)以外の前記少なくとも1種のポリウレタンポリアクリレートコポリマーの比率は、いずれの場合にも水性ベースコート材料(b.2.1)の総質量に基づいて、好ましくは0.5〜20.0質量%、さらに好ましくは1.0〜15.0質量%、特に好ましくは1.5〜10.0質量%の範囲である。
【0235】
さらに、ベースコート材料(b.2.1)は、好ましくは、少なくとも1種のそれ自体公知の典型的な架橋剤を含む。それは、好ましくは、架橋剤として、ス訓買うとも1種のアミノプラスト樹脂、及び/又はブロック化ポリイソシアネート、好ましくは、アミノプラスト樹脂を含む。アミノプラスト樹脂の中で、特にメラミン樹脂が好ましい。
【0236】
前記架橋剤の、特にアミノプラスト樹脂、及び/又はブロック化ポリイソシアネートの、さらに好ましくはアミノプラスト樹脂の、これらの中で好ましくはメラミン樹脂の比率は、いずれの場合にも水性ベースコート材料(b.2.1)の総質量に基づいて、好ましくは0.5〜20.0質量%、さらに好ましくは1.0〜15.0質量%、特に好ましくは1.5〜10.0質量%の範囲である。
【0237】
好ましくは、ベースコート材料(b.2.1)は、さらに、少なくとも1種の増粘剤を含む。適切な増粘剤は、層状ケイ酸塩(sheet silicate)の群からの無機増粘剤である。リチウム−アルミニウム−マグネシウムケイ酸塩は特に適切である。しかしながら、前記無機増粘剤と同様に、1種以上の有機増粘剤を使用することも可能である。これらは、好ましくは、例えば、市販製品Rheovis AS S130(BASF社製)等の(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤から、及び例えば、市販製品Rheovis PU 1250(BASF社製)等のポリウレタン増粘剤からなる群から選択される。使用される前記増粘剤は、上記ポリマー、例えば好ましいバインダーとは異なる。層状ケイ酸塩の群からの無機増粘剤が好ましい。
【0238】
前記増粘剤の比率は、いずれの場合にも水性ベースコート材料(b.2.1)の総質量に基づいて、好ましくは0.01〜5.0質量%、好ましくは0.02〜4質量%、さらに好ましくは0.05〜3.0質量%の範囲である。
【0239】
さらに、水性ベースコート材料(b.2.1)はまた、少なくとも1種の添加剤を含んでもよい。そのような添加剤の例は、残渣なしに、又は実質的に残渣なしに熱的に分解され得る塩、物理的、熱的に、及び/又は化学線で硬化性であり、既に記載されたポリマーと異なるバインダーとしての樹脂、さらなる架橋剤、有機溶媒、反応性希釈剤、透明顔料、フィラー、分子分散系中に可溶な染料、ナノ粒子、光安定剤、酸化防止剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合禁止剤、フリーラジカル重合の開始剤、接着促進剤、流れ調整剤(flow control agent)、膜形成助剤(film-forming assistant)、垂れ調整剤(sag control agent)(SCAs)、難燃剤、腐食防止剤、ワックス、乾燥剤、殺生物剤、及び艶消し剤(flatting agent)である。
【0240】
上述の種類の適切な添加剤は、例えば、
・ドイツ特許出願DE19948004A1、14頁4行〜17頁5行、
・ドイツ特許DE10043405C1、5欄、段落[0031]〜[0033]から公知である。
【0241】
それらは、慣例の公知の量で使用される。例えば、それらの比率は、いずれの場合にも水性ベースコート材料(b.2.1)の総質量に基づいて、1.0〜20.0質量%の範囲である。
【0242】
前記ベースコート材料の固形分は、個々の場合の要求に従って、変化し得る。固形分は、主に、施与のために、さらに具体的にはスプレー施与のために要求される粘度によって導かれ、当業者の一般的技術知識に基づいて、任意に少しの予備的な試験の助けを受けて当業者によって調整され得る。
【0243】
ベースコート材料(b.2.1)の固形分は、好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは8〜60質量%、最も好ましくは12〜55質量%である。
【0244】
固形分(不揮発性画分)は、特定条件下での蒸発における残渣として残る画分を意味する。本明細書において、固形分は、DIN EN ISO3251に従って測定される。これは、前記ベースコート材料を、130℃で、60分間で蒸発することによって行う。
【0245】
特に記載の無い限り、この試験方法は、例えば、前記ベースコート材料の種々の成分の、例えば、ポリウレタン樹脂、コポリマー(CP)、又は架橋剤の、前記ベースコート材料の総質量における比率を、見出すか、又は事前測定するために、同様に使用される。したがって、前記ベースコート材料に添加されるポリウレタン樹脂、コポリマー(CP)、又は架橋剤の分散系の固形分が測定される。前記分散系の固形分、及び前記ベースコート材料に使用される分散系の量を考慮することにより、次いで、全体の組成物における前記成分の比率を解明するか、又は見出すことが可能である。
【0246】
ベースコート材料(b.2.1)は、水性である。表現「水性」は、これに関連して、当業者に公知である。前記表現は、原則として、専ら有機溶媒に基づいていない、すなわち、その溶媒として、専ら有機系溶媒を含有していないが、その代わり、対照的に、溶媒として大幅な画分の水を含むベースコート材料に言及する。本発明の目的のため、「水性」は、好ましくは、問題になっているコーティング組成物、さらに具体的には、前記ベースコート材料が、水の画分を、いずれの場合にも存在する溶媒(すなわち、水、及び有機溶媒)の総量に対して、少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも45質量%、非常に好ましくは50質量%有することを意味すると理解されるべきである。次に好ましくは、前記水の画分は、いずれの場合にも存在する溶媒の総量に対して、40〜95質量%、さらに具体的には45〜90質量%、非常に好ましくは50〜85質量%である。
【0247】
「水性」の同様な規定は、当然に、本発明との関連で記載される全てのさらなる系にも、例えば、電気塗装材料(e.1)の水性の性質、又はコポリマー(CP)の水性分散液の水性の性質等にも適用する。
【0248】
本発明に従って使用されるベースコート材料(b.2.1)は、慣例で、且つベースコート材料の製造用に公知である混合アセンブリ(mixing assembly)、及び混合技術を用いて製造され得る。
【0249】
本発明の方法において使用される少なくとも1種のベースコート材料(b.2.2.x)は、ベースコート材料(b.2.1)のために記載された本発明に必須な機能を有する。ベースコート材料(b.2.1)の説明において記載された、全ての好ましい実施形態、及び機能は、ベースコート材料(b.2.2.x)の少なくとも1種に、優先的に適用する。
【0250】
上記の本発明の方法の段階(2.2)の好ましい変形(a)において、使用される2種のベースコート材料(b.2.2.x)は同一であり、両方のベースコート材料(b.2.2.x)は、明らかに、前記ベースコート材料(b.2.1)のために記載された本発明に必須の機能を有する。この変形において、ベースコート材料(b.2.2.x)は、好ましくは、上記の効果顔料、特に層状アルミニウム顔料を含む。好ましい比率は、いずれの場合にも前記ベースコート材料の総質量に基づいて、2〜10質量%、好ましくは3〜8質量%である。しかしながら、それは、さらなる顔料、すなわち、特に有彩顔料を含んでもよい。
【0251】
上記の本発明の方法の段階(2.2)の好ましい変形(b)において、第一ベースコート材料(b.2.2.a)は、好ましくは第一に施与され、着色準備(color-preparatory)ベースコート材料とも称され得る。それは、その後、次に続くベースコート膜のためのプライマーとして役立ち、着色、及び/又は効果を付与するその機能を最適に果たし得る。
【0252】
変形(b)の第一の特定の実施形態において、この種の着色準備ベースコート材料は、本質的に、有彩顔料、及び効果顔料を含まない。さらに具体的には、この種のベースコート材料(b.2.2.a)は、いずれの場合にも前記水性ベースコート材料の総質量に基づいて、2質量%未満、好ましくは1質量%未満の有彩顔料及び効果顔料を含有する。それは、好ましくは、そのような顔料を含まない。この実施形態において、着色準備ベースコート材料は、好ましくは黒色、及び/又は白色顔料、特に好ましくは、これら顔料の両方の種類を含む。好ましくは、それは、いずれの場合にも前記ベースコート材料の総質量に基づいて、5〜20質量%、好ましくは8〜12質量%の白色顔料、及び0.05〜1質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%の黒色顔料を含有する。それらに由来し、白色及び黒色顔料の比によって、種々の明度レベルで設定され得る灰色は、その後に続く、ベースコートの積層のための、個々に調節できるベースを構成し、これにより後に続く前記ベースコート材料の積層によって付与される着色、及び/又は効果が、最適に示され得る。前記顔料は、当業者に公知であり、上記にも説明される。ここで、好ましい白色顔料は、二酸化チタンであり、好ましい黒色顔料は、カーボンブラックである。
【0253】
変形(b)のこの実施形態において、第二ベースコート用の、又は第二及び第三ベースコート用のベースコート材料のため、変形(a)で記載されたベースコート材料(b.2.2.x)のために説明した同様なことが好ましく適用される。さらに具体的には、それは、好ましくは効果顔料を含む。着色準備ベースコート材料(b.2.2.x)のため、及び好ましくは効果顔料を含む第二ベースコート材料(b.2.2.x)のための両方で、ベースコート材料(b.2.1)のために記載された本発明に必須の機能が果たされなければならない。当然に、両方のベースコート材料(b.2.2.x)も、これらの機能を果たし得る。
【0254】
本発明の第二の特定の実施形態において、着色準備ベースコート材料(b.2.2.a)が、有彩顔料を含むことも可能である。この変形は、特に、結果として得られるマルチコート塗装系が、高度に有彩の色相(chromatic hue)、例えば、非常に深い赤色又は黄色を有する場合の選択肢である。その場合、着色準備ベースコート材料(b.2.2.a)は、例えば、2〜6質量%の有彩顔料、特に赤色顔料、及び/又は黄色顔料を、好ましくは、3〜15質量%、好ましくは4〜10質量%の白色顔料と組み合わせて含有する。次に、その後続いて施与される、少なくとも1種のさらなるベースコート材料は、ベースコート材料(b.2.2.a)が、再度、着色準備の役割を果たすように、当然、同様に前記有彩顔料を含む。この実施形態においても、任意の個々のベースコート材料(b.2.2.x)、それらの複数、又はそれぞれは、ベースコート材料(b.2.1)のために記載された本発明に必須の機能を果たすものであり得る。
【0255】
本発明の方法の段階(2.2)の上記の好ましい変形(c)においても、任意の個々のベースコート材料(b.2.2.x)、それらの複数、又はそれぞれは、ベースコート材料(b.2.1)のために記載された本発明に必須の機能を果たすものであり得る。
【0256】
本発明の方法は、別々の硬化工程なしで、マルチコート塗装系の製造を可能とする。これにも係わらず、本発明に従う方法の使用は、優れた耐衝撃性、特にストーンチップ抵抗性を有する、マルチコート塗装系をもたらす。
【0257】
上記の方法は、原則として、非金属基板、例えば、プラスチック基板上のマルチコート塗装系の製造のためにも使用され得る。その場合、ベースコート材料(b.2.1)、又は第一ベースコート材料(b.2.2.a)は、任意に前処理されたプラスチック基板に、好ましくは直接、任意に前処理されたプラスチック基板に施与される。
【0258】
以下に、本発明を実施例によって説明する。
【実施例】
【0259】
A)コポリマー(CP)、又は前記ポリマーを含む水性分散液の調製
a)α−メチルスチリル含有ポリウレタンの分散液を、トリメチロールプロパンの付加的な使用、及び結果として得られる分散系の固形分が、35.1質量%ではなく、29質量%であること以外は、特許DE19948004B4、27頁、実施例1「Herstellung eines erfindungsgemasen Polyurethans(B)」[本発明のポリウレタン(B)の調製]に基づいて調製した。特許DE19948004B4、調製例1に記載された付加物(B2)に基づいて、付加物を、ジエタノールアミンではなく、モノエタノールアミンで調製した。
【0260】
この目的のため、まず、撹拌器、内部温度計、還流冷却器、及び電熱器を備える反応容器に、窒素下で、200.0質量部のメチルエチルケトン、800.0質量部のN−メチルピロリドン、及び221.3質量部のモノエタノールアミン(BASF SE社製)を、20℃で充填した。この混合物に、778.7質量部の1−(1−イソシアナト−1−メチルエチル)−3−(1−メチルエテニル)ベンゼン(TMI(登録商標)(META)不飽和脂肪族イソシアネート(Cytec社製))(20.4質量%のイソシアネート含有量を有する)を、反応温度が40℃を超えないように、1時間半にわたって滴下して加えた。結果として得られた反応混合物を、もはや遊離のイソシアネート基が検出されなくなるまで撹拌した。その後、反応混合物を、200ppmのヒドロキノンで安定化した。
【0261】
このように調製した前記付加物の溶液の理論固形分は、50質量%である。
【0262】
次に、撹拌器、内部温度計、還流冷却器、及び電熱器を備えるさらなる反応容器中に、431.7質量部の直鎖ポリエステルポリオール、及び69.7質量部のジメチロールプロピオン酸(GEO Specialty Chemicals社製)を、355.8質量部のメチルエチルケトン、及び61.6質量部のN−メチルピロリドンに、窒素下で溶解した。直鎖ポリエステルポリオールは、二量体化脂肪酸(Pripol (登録商標)1012(Uniqema社製))、イソフタル酸(BP Chemicals社製)、及びヘキサン−1,6−ジオール(BASF SE社製)(出発物質の質量比:二量体脂肪酸:イソフタル酸:ヘキサン−1,6−ジオール=54.00:30.02:15.98)から、事前に調製しており、73mgKOH/g固形分のヒドロキシル価、及び1379g/molの数平均分子量を有していた。前記結果として得られた溶液に、288.6質量部のイソホロンジイソシアネート(Basonat(登録商標)I( BASF SE社製))(37.75質量%のイソシアネート含有量を有する)を、45℃で添加した。発熱反応が、弱まった後、前記反応混合物を、撹拌しながら徐々に80℃に加熱した。前記溶液のイソシアネート含有量が、3.2質量%で一定になるまで、この温度で撹拌を続けた。その後、反応混合物を65℃に冷却し、85.2質量部の前記付加物を、21.8質量部のトリメチロールプロパン(BASF SE社製)と共に添加した。結果として得られた反応混合物を、前記溶液のイソシアネート含有量が1.0質量%に低下するまで、65℃で撹拌した。そこで、22.2質量%のジエタノールアミン(BASF SE社製)を添加し、もはや遊離のイソシアネート基が検出されなくなるまで、イソシアネート基の含有量を監視した。結果として得られた溶解ポリウレタンを、139.7質量部のメトキシプロパノール、及び43.3質量部のトリエチルアミン(BASF SE社製)と混合した。アミンの添加後30分で、前記溶液の温度は、60℃に低下し、その後、1981質量部の脱イオン水を、撹拌しながら30分間にわたって添加した。結果として得られた分散系から、60℃、減圧下で、メチルエチルケトンを留去した。その後、溶媒及び水の任意の損失を補正した。
【0263】
このように得られたα−メチルスチリル含有ポリウレタンの分散系は、29.0質量%の固形分を有し、酸価は、34.0mgKOH/g固形分であり、pHは7.0(23℃で測定した)であった。
【0264】
b)本発明のコポリマー(CP)の水性一次分散系を調製するため、窒素雰囲気下で、1961.2質量部のa)に従うα−メチルスチリル含有ポリウレタン分散系を、40.0質量部のメトキシプロパノール(ポリウレタンに基づいて0.07%)、及び686.5質量部の脱イオン水で希釈し、80度に加熱した。反応器内容物が80℃に加熱された後、35.7質量部の脱イオン水に溶解した0.6質量部のペルオキソ二硫酸アンモニウムを、標準圧力で反応器に導入した。続いて、撹拌を続けて、301.6質量部のメチルメタクリレート、261.6質量部のn−ブチルアクリレート、5.6質量部のアリルメタクリレート(総ビニルモノマーに基づいて0.87mol%)、及び134.9質量部のN−メチルピロリドンの混合物を、5時間にわたって、均一に添加した。モノマー混合物の添加の開始とともに、71.3質量部の脱イオン水中の1.1質量部のペルオキソ二硫酸アンモニウムの溶液も同様に5時間以内に添加した。
【0265】
フリーラジカル重合の間、30分毎に、フリーモノマーをガスクロマトグラフィー(GC)法(GC:ポリエチレングリコール相を有する50mシリカキャピラリーカラムの場合、及びポリジメチルシロキサン相を有する50mシリカキャピラリーカラムの場合、キャリアガス:ヘリウム、スプリットインジェクター150℃、オーブン温度40〜220℃、フレームイオン化検出器、検出器温度275℃、内部標準:イソブチルアクリレート)によって測定し、分散系に基づいて、30分後に0.5質量%の最も高い総モノマー含有量が分かった(重合に使用されるオレフィン性不飽和モノマーの総量に対して、3.1質量%)。計量されたモノマー、及び開始剤の添加の同時終了の後、結果として得られた反応混合物を、80℃で、さらに1時間撹拌し、その後、室温に冷却した。
【0266】
結果として得られた前記コポリマーの一次分散系は、非常に良好な貯蔵安定性を有していた。その固形分は32.5質量%であり、酸価は18.8mgKOH/g固形分であり、及びそのpHは7.0であった。光子相関分光法による、その粒径(z平均)は、96nmであった、ガスクロマトグラフィー法(GC:ポリエチレングリコール相を有する50mシリカキャピラリーカラムの場合、及びポリジメチルシロキサン相を有する50mシリカキャピラリーカラムの場合、キャリアガス:ヘリウム、スプリットインジェクター250℃、オーブン温度40〜220℃、フレームイオン化検出器、検出器温度275℃、内部標準:n−プロピルグリコール)によって、2.7質量%のメトキシプロパノール、及び5.7質量%のN−メチルピロリドンの含有量が分かった。
【0267】
テトラヒドロフランによる凍結乾燥されたポリマーの抽出後、ゲル含有量は、重量測定で、80.3質量%であることが分かった。この目的のために、前記分散系を凍結乾燥し、凍結乾燥されたポリマーの質量を測定し、及びその後、前記ポリマーを、過剰のテトラヒドロフラン中で(テトラヒドロフランの、凍結乾燥されたポリマーに対する比=300:1)、25℃で、24時間抽出した。不溶物分(ゲル分)を分離し、空気循環オーブン中、50℃で4時間乾燥し、再度、秤量した。
【0268】
B)反応生成物(R)の調製
アンカー撹拌器(anchor stirrer)、温度計、冷却器、頭上温度(overhead temperature)測定用の温度計、及び水分離器を備える4Lステンレス鋼反応器中で、2000.0gの直鎖ジオール性ポリTHF1000(linear diolic PolyTHF1000)(2mol)、579.3gの二量体脂肪酸(1mol)、及び51gのシクロヘキサンを、2.1gのジ−n−ジブチル錫オキシド(Axion(登録商標)CS2455(Chemtura社製))の存在下で、100℃に加熱した。縮合の開始まで、加熱を穏やかに続けた。その後、85℃の最大頭上温度で、加熱を、220℃へ強化した。反応の進行を、酸価の測定を介して監視した。≦3mgKOH/gの酸価に達したとき、まだ存在するシクロヘキサンを真空蒸留によって除去した。粘性樹脂を得た。
【0269】
凝縮物(水)の量:34.9g
酸価:2.7mgKOH/g
固形分(130℃で、60分):100.0%
分子量(蒸気圧浸透):
Mn:2200g/mol
粘度:5549mPas、
(23℃で、回転式粘度計(Brookfield社製、model CAP 2000+、スピンドル3、せん断速度(shear rate):1333s
-1)
【0270】
1.本発明ではない水性ベースコート材料1の製造
表Aにおいて、「水性相」の下にリストされた成分を、規定された順に一緒に撹拌し、水性混合物を形成した。その後、組み合わせた混合物を10分間撹拌し、脱イオン水、及びジメチルエタノールアミンを使用して、pH8に、且つ回転式粘度計(Rheomat RM 180 instrument(Mettler−Toledo社製))で、23℃で測定して、1000s
-1のせん断荷重下で、58mPasのスプレー粘度に調整した。
【0271】
【表A】
【0272】
カーボンブラックペーストの製造:
前記カーボンブラックペーストを、国際特許出願WO91/15528、バインダー分散系Aのように生成した25質量部のアクリル化ポリウレタン分散系、10質量部のカーボンブラック、0.1質量部のメチルイソブチルケトン、1.36質量部のジメチルエタノールアミン(脱塩水中10%)、2質量部の市販ポリエーテル(Pluriol(登録商標)P900(BASF SE社製))、及び61.45質量部の脱イオン水から製造した。
【0273】
白色ペーストの製造:
前記白色ペーストを、国際特許出願WO91/15528、バインダー分散系Aのように生成した43質量部のアクリル化ポリウレタン分散系、50質量部のチタンルチル2310、3質量部の1−プロポキシ−2−プロパノール、及び4質量部の脱イオン水から製造した。
【0274】
2.本発明ではない水性ベースコート材料2の調製
表Bにおいて、「水性相」の下にリストされた成分を、規定された順に一緒に撹拌し、水性混合物を形成した。次の工程において、有機混合物を、「有機相」の下にリストされた成分から調製した。前記有機混合物を、水性混合物に添加した。その後、組み合わせた混合物を10分間撹拌し、脱イオン水、及びジメチルエタノールアミンを使用して、pH8に、且つ回転式粘度計(Rheomat RM 180 instrument(Mettler−Toledo社製))で、23℃で測定して、1000s
-1のせん断荷重下で、58mPasのスプレー粘度に調整した。
【0275】
【表B】
【0276】
青色ペーストの製造:
前記青色ペーストを、国際特許出願WO91/15528、バインダー分散系Aのように生成した69.8質量部のアクリル化ポリウレタン分散系、12.5質量部のPaliogen(登録商標)Blue L6482、1.5質量部のジメチルエタノールアミン(脱塩水中10%)、1.2質量部の市販ポリエーテル(Pluriol(登録商標)P900(BASF SE社製))、及び15質量部の脱イオン水から製造した。
【0277】
カーボンブラックペーストの製造:
前記カーボンブラックペーストを、国際特許出願WO91/15528、バインダー分散系Aのように生成した25質量部のアクリル化ポリウレタン分散系、10質量部のカーボンブラック、0.1質量部のメチルイソブチルケトン、1.36質量部のジメチルエタノールアミン(脱塩水中10%)、2質量部の市販ポリエーテル(Pluriol(登録商標)P900(BASF SE社製))、及び61.45質量部の脱イオン水から製造した。
【0278】
3.本発明ではない水性ベースコート材料3の調製
水性ベースコート材料3を、DE19948004−B4 (27頁、実施例2)と同様に調製したポリウレタン系グラフトコポリマーの分散系ではなく、A)に記載されたコポリマー(CP)の分散系を使用した以外は、表Bと同様に製造した。
【0279】
4.本発明ではない水性ベースコート材料4の調製
水性ベースコート材料4を、DE−A−4009858の16欄、37〜59行の実施例Dのように調製したポリエステルではなく、A)に記載された反応生成物(R)を使用した以外は、水性ベースコート材料3と同様に製造した。DE−A−4009858からのポリエステル、及び反応生成物Rの分散液の異なる固形分に由来する、水性ベースコート材料4中のブチルグリコールの異なる量は、 ブチルグリコールの適切な添加によって補正した。
【0280】
5.本発明の水性ベースコート材料I1の製造
水性ベースコートI1を、水性相において、24.1質量%のコポリマー(CP)の分散系ではなく、16.5質量%のみを使用した以外は、水性ベースコート材料4と同様に製造した。さらに、9.1質量%のポリウレタン樹脂(X)を使用した。ポリウレタン樹脂(X)の調製は、WO92/15405、14頁13行〜15頁13行に従う。前記樹脂は、25mgKOH/gの酸価、及び12000g/molの数平均分子量を有する。
【0281】
水性ベースコート材料2〜4、及びI1の比較:
ストーンチップ抵抗性/ストーンチップ安定性を特定するため、マルチコート塗装系を以下の一般的方法によって製造した:
陰極電気塗装した寸法10×20cmの鋼製シートを、基板として提供した。まず最初に、水性ベースコート材料1を、このシートに18〜22μmの膜厚で、圧縮空気式で施与した。前記ベースコート材料を室温で4分間フラッシュオフした後、水性ベースコート材料2〜4、又はI1を施与し、その後、室温で4分間フラッシュオフし、空気循環オーブン中で、70℃で10分間中間乾燥した。慣例の二成分クリアコート材料を、前記中間乾燥した水性ベースコートに35〜45μmの膜厚で、圧縮空気式で施与した。結果として得られたクリアコートを、室温で20分間フラッシュオフした。その後、前記水性ベースコート、及び前記クリアコートを、空気循環オーブン中で、160℃で30分間硬化した。
【0282】
このようにして得られた前記マルチコート塗装系について、ストーンチップ抵抗性を試験した。この目的のため、ストーンチップテストを、DIN55966−1に従って実施した。ストーンチップテストの結果の評価は、DIN EN ISO20567−1に従って実施した。結果は表1に認められる。
【0283】
【表1】
【0284】
前記結果は、本発明に従って使用されるベースコート材料(b.2.2.x)の使用が、水性ベースコート材料2〜4と比較して、ストーンチップ抵抗性を明らかに向上させることを示す。
【0285】
6.本発明ではない水性ベースコート材料5の調製
表Cにおいて、「水性相」の下にリストされた成分を、規定された順に一緒に撹拌し、水性混合物を形成した。次の工程において、有機混合物を、「有機相」の下にリストされた成分から調製した。前記有機混合物を、水性混合物に添加した。その後、組み合わせた混合物を10分間撹拌し、脱イオン水、及びジメチルエタノールアミンを使用して、pH8に、且つ回転式粘度計(Rheomat RM 180 instrument(Mettler−Toledo社製))で、23℃で測定して、1000s
-1のせん断荷重下で、58mPasのスプレー粘度に調整した。
【0286】
【表C】
【0287】
青色ペーストの製造:
前記青色ペーストを、国際特許出願WO91/15528、バインダー分散系Aのように生成した69.8質量部のアクリル化ポリウレタン分散系、12.5質量部のPaliogen(登録商標)Blue L6482、1.5質量部のジメチルエタノールアミン(脱塩水中10%)、1.2質量部の市販ポリエーテル(Pluriol(登録商標)P900(BASF SE社製))、及び15質量部の脱イオン水から製造した。
【0288】
カーボンブラックペーストの製造:
前記カーボンブラックペーストを、国際特許出願WO91/15528、バインダー分散系Aのように生成した25質量部のアクリル化ポリウレタン分散系、10質量部のカーボンブラック、0.1質量部のメチルイソブチルケトン、1.36質量部のジメチルエタノールアミン(脱塩水中10%)、2質量部の市販ポリエーテル(Pluriol(登録商標)P900(BASF SE社製))、及び61.45質量部の脱イオン水から製造した。
【0289】
マイカ分散系の製造:
前記マイカ分散系を、DE19948004−B4 (27頁、実施例2)と同様に調製し、水で固形分を32.5質量%に調整した1.5質量部のポリウレタン系グラフトコポリマー、及び1.3質量部の市販マイカMearlin Ext.Fine Violet539V(Merck社製)を、撹拌ユニットを用いて混合することによって製造した。
【0290】
7.本発明ではない水性ベースコート材料6の製造
水性ベースコート材料6を、DE19948004−B4 (27頁、実施例2)と同様に調製したポリウレタン系グラフトコポリマーの分散系ではなく、A)に記載されたコポリマー(CP)の分散系を使用した以外は、表Cと同様に製造した。
【0291】
8.本発明ではない水性ベースコート材料7の製造
水性ベースコート材料7を、DE−A−4009858の16欄、37〜59行の実施例Dのように調製したポリエステルではなく、A)に記載された反応生成物(R)を使用した以外は、水性ベースコート材料6と同様に製造した。DE−A−4009858からのポリエステル、及び反応生成物Rの分散液の異なる固形分に由来する、水性ベースコート材料7中のブチルグリコールの異なる量は、 ブチルグリコールの適切な添加によって補正した。
【0292】
9.本発明の水性ベースコート材料I2の製造
水性ベースコートI2を、水性相において、24.1質量%のコポリマー(CP)の分散系ではなく、20.0質量%のみを使用した以外は、水性ベースコート材料7と同様に製造した。さらに、6.5質量%のポリウレタン樹脂(X)を使用した。ポリウレタン樹脂(X)の調製は、WO92/15405、14頁13行〜15頁13行に従う。前記樹脂は、25mgKOH/gの酸価、及び12000g/molの数平均分子量を有する。
【0293】
水性ベースコート材料5〜7、及びI2の比較:
ストーンチップ抵抗性/ストーンチップ安定性を特定するため、マルチコート塗装系を以下の一般的方法によって製造した:
陰極電気塗装した寸法10×20cmの鋼製シートを、基板として提供した。まず最初に、個別のベースコート材料を、このシートに20〜24μmの膜厚で、圧縮空気式で施与した。前記ベースコート材料を室温で1分間フラッシュオフした後、空気循環オーブン中で、70℃で10分間中間乾燥した。慣例の二成分クリアコート材料を、前記中間乾燥した水性ベースコートに35〜45μmの膜厚で、圧縮空気式で施与した。結果として得られたクリアコートを、室温で20分間フラッシュオフした。その後、前記水性ベースコート、及び前記クリアコートを、空気循環オーブン中で、160℃で30分間硬化した。
【0294】
このようにして得られた前記マルチコート塗装系について、ストーンチップ抵抗性を試験した。この目的のため、ストーンチップテストを、DIN55966−1に従って実施した。ストーンチップテストの結果の評価は、DIN EN ISO20567−1に従って実施した。結果は表2に認められる。
【0295】
【表2】
【0296】
前記結果は、ベースコート材料(b.2.1)の使用が、水性ベースコート材料5〜7と比較して、ストーンチップ抵抗性を明らかに向上させることを示す。