特許第6553058号(P6553058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553058
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】創外固定器の適用のための細長ピン
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/86 20060101AFI20190722BHJP
   A61B 17/60 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   A61B17/86
   A61B17/60
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-548304(P2016-548304)
(86)(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公表番号】特表2017-503618(P2017-503618A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2015000118
(87)【国際公開番号】WO2015110266
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2017年12月18日
(31)【優先権主張番号】MI2014A000094
(32)【優先日】2014年1月24日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516023685
【氏名又は名称】オーソフィックス エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】べントゥリーニ、 ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】オットボーニ、 アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ザンドナ エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】コアティ、 ミケーレ
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−194308(JP,A)
【文献】 特開2003−305049(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/015942(WO,A1)
【文献】 特開2006−101896(JP,A)
【文献】 特開2008−245730(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/139031(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/86
A61B 17/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨折を治療するため及び2つ以上の骨片を互いに接続するための、一時的な又は恒久的な固定用途向けの創外固定器のための細長ピン(1)であって、長手方向軸(X)に沿って延在する細長い円筒形のステム(2)を備え、
記ステム(2)は、
雄ネジ山を有する円筒形端領域(4)と、
前記ステム(2)の長さのほとんどに沿って延在するネジ山無し領域と、
前記ステム(2)の前記円筒形端領域(4)に隣接して延在すると共に前記細長ピン(1)を骨の中に挿入するための先端及び雄ネジ山を備える円錐形端部(3)と、
を備え、
先端を備える前記円錐形端部(3)は、前記長手方向軸(X)に沿って測定される全長であって、前記ステム(2)の直径(d)±前記直径(d)の20%に等しい全長を有すること、及び、
前記ステム(2)のネジ状の前記円筒形端領域(4)は、前記長手方向軸(X)に沿って測定される長さであって、前記ステム(2)の前記直径(d)±前記直径(d)の25%に等しい長さを有することを特徴とする、細長ピン(1)。
【請求項2】
先端を有する前記円錐形端部(3)は、前記長手方向軸に沿って測定される全長であって、前記ステム(2)の前記直径(d)±前記直径(d)の10%に等しい全長にわたって延在する、請求項1に記載の細長ピン(1)。
【請求項3】
ジ状の前記円錐形端部(3)の前記長さと前記ステム(2)の前記直径(d)との間の比率は、1と1.2との間である、請求項1又は請求項2に記載の細長ピン(1)。
【請求項4】
前記ステム(2)のネジ状の前記円筒形端領域(4)の前記長さと前記ステム(2)の前記直径(d)との間の比率は、1と1.25との間である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の細長ピン(1)。
【請求項5】
前記円錐形端部(3)はセルフドリリング及びセルフタッピングである、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の細長ピン(1)。
【請求項6】
前記円錐形端部(3)上のネジ山と前記ステム(2)の前記円筒形端領域(4)上のネジ山とは中断なしに連続している、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の細長ピン(1)。
【請求項7】
前記細長ピンの前記ステム(2)の前記直径(d)は3mmと6mmとの間である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の細長ピン(1)。
【請求項8】
前記ステム(2)は、先端を有する前記円錐形端部(3)とは反対側の端(5)であって、ネジ締めツールと取り外し可能な様態で結合できるように形成された端(5)を備える、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の細長ピン(1)。
【請求項9】
ネジ状の前記円錐形端部(3)の前記先端は切欠部を有する、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の細長ピン(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノコーティカルピン(monocortical pin)の機能を有する、創外固定器のための細長ピンに関する。
【背景技術】
【0002】
創外固定システムは、骨折を治療するため、及び2つ以上の骨片を一緒に接続するために広く使用されている。骨片を動かさずに保ちそれにより恒久的な治癒を可能にする剛構造を、創外固定器を用いて、あるいは随内プレート又は釘などの内部安定化システムを用いて確実にするために、既知のシステムは、骨の内部に挿入されると共に固定クランプ、固定バー、又は環状バーなどの創外構造要素を用いる骨ネジ、ネジ、及び/又はワイヤを使用する。
【0003】
いくつかのタイプの治療では、骨折ゾーン内の特定の局所的条件によって恒久的固定器の使用が場合によっては妨げられる可能性があり、又は骨折が、恒久的な内部固定システムを使用できるようになる前にかなり長期の外科的治療を必要とする損傷による他の骨折と共に存在する可能性がある。
【0004】
このような場合でも、一部又は全ての骨折は、例えば本出願人と同じ名義の欧州特許出願公開第2,319,436号明細書に記載された、一時的な固定のために特別に設計された、従って一時的なシステムとみなされてもよい創外固定システムを用いて治療することが可能である。
【0005】
いずれの場合も、治療の最後に各骨折が安定した様態で囲まれることが非常に重要である。
【0006】
この技術部門では、本出願人と同じ名義の欧州特許出願公開第1,284,666号明細書に記載されたシステムなどの、骨折の治癒を可能にするための恒久的な固定システムとして主に使用される多くの固定システムも存在する。
【0007】
一般に、一時的な固定システムは、既知の恒久的な創外固定システムに比較してより軽量かつより単純であるが、安定性もより低い。その上、一時的な創外固定システムと恒久的な創外固定システムとは、それぞれのクランプの形態及び構造に関して異なることが多い。
【0008】
引き続き一般的に述べると、恒久的な創外固定システムは、治療中の横曲げ力及び捻りトルクに対処するための高い剛性及び安定性を提供する。
【0009】
そのような剛性及び安定性は、一部は治療される骨の長手方向軸に沿った固定器のバーの位置合わせに由来し、一部はシステムの固有の剛性に由来し、一部は使用されるネジの数に由来する。
【0010】
一時的な固定システムの単純及び軽量という特性を恒久的な固定システムの堅牢及び安定特性と組み合わせた創外固定器であって、最終的な内部及び外部安定化に悪影響を及ぼさないように骨構造をできるだけ損傷しない創外固定器を使用できることが非常に望ましいが、これまでのところ、既知の解決法から知られている全ての方法は満足な結果をもたらしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2,319,436号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1,284,666号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の技術的な課題は、骨片の安定した堅牢な固定を確実にすることが可能であり、かつ後続の感染及び安定化の問題を避けるために骨構造にできるだけ影響を及ぼさず、同時に、システム全体を極めて軽量に維持し、外科医にとっての容易な適用も確実にする、創外固定器のための細長ピンを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、従来の骨ネジを使用せずに骨の中に挿入されることが可能であり、一定の厚さの皮質骨が存在するゾーンにおいて、骨折した骨の皮質部のみに把持作用が限定されることを可能にし、同時に、海綿骨においても良好な把持を確実にすることが可能な、固定システムのための細長ピンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、本発明の請求項1による創外固定器のための細長ピンによって達成される。
【0015】
従属請求項は、本発明による細長ピンの好ましい及び特に有利な実施形態を規定する。
【0016】
更なる特徴及び利点は、非限定的な例として提供される添付の図面を参照して以下に示す、本発明の好ましいが排他的ではない実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による創外固定器のための細長ピンの先端の図を示す。
図2】本発明による創外固定器のための細長ピンの先端の図を示す。
図3】本発明による創外固定器のための細長ピンの先端の図を示す。
図4】細長ピンの斜視図を示す。
図5図4による細長ピンの平面図を示す。
図6図4によるピンの先端の詳細図を示す。
図7図4によるピンの先端の詳細図を示す。
図8】本発明の好ましい実施形態によるピンの先端のある角度を用いてピンを詳細に示す。
図9】本発明の好ましい実施形態によるピンの先端の異なる角度を用いてピンを詳細に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照すると、参照番号1は、長手方向軸Xに沿って延在する細長い円筒形ステム2と、ピン1を骨の中に挿入するための先端及び雄ネジ山を有する円錐形端部3とを含む細長ピンの全体を示す。
【0019】
本発明によれば、先端を有する前記円錐形端部3は、長手方向軸Xに沿って測定される全長であって、ステムの直径d±前記直径dの20%に等しい全長を有する。好ましくは、ピン1の円錐形先端端部3の長さは、ステムの直径の長さ±前記直径の10%に等しく、より好ましくは、ステムの直径の長さ±前記直径の5%に等しい。
【0020】
本質的に、ピンの円錐形ネジ状端部3の長さは、髄腔内に貫入することのない、骨の皮質部内のみへのその挿入を可能にするための、より小さな距離にわたって延在する。
【0021】
言い換えると、細長ピン1は「モノコーティカルピン(monocortical pin)」として規定されてもよい。
【0022】
本発明によれば、ステム2は、円錐形部分3に隣接して延在する円筒形端領域4を有する。ステムのこの円筒形端領域は、長手方向軸Xに沿って測定される長さであって、ステムの直径d±前記直径dの25%に等しい長さにわたって延在する雄ネジ山を有する。
【0023】
好ましくは、ネジ状円筒形端領域4の長さは、ステムの直径の長さ±前記直径の長さの20%に等しく、より好ましくは、ステムの直径の長さ±前記直径の10%に等しい。
【0024】
本質的に、ステムは、円錐形部分3のネジ山に続く雄ネジ山を端ゾーン4において有する。円錐形部分3のネジ山に隣接するステム2上のこのネジ山により、海綿骨においても良好な把持を達成することが可能になる。
【0025】
本発明によるピンは、ステムに沿って部分的に延在するネジ山を有するモノコーティカルピンであるとして規定されてもよい。
【0026】
海綿骨は、皮質骨とは異なり、円錐形端のみを用いて安定化を可能にするだけの十分な強度を有さず、従って、皮質骨における把持作用に匹敵する必要な安定性を確実にするためには、より大きな把持量を必要とする。
【0027】
この安定性は、骨材料を除去することなしに海綿骨内に入るモノコーティカル先端の圧迫及び外形を十分に活用することによって得られる。
【0028】
海綿骨は、後続の釘又はプレートの適用のために、過度に侵襲的でないような長さにわたって圧迫される。
【0029】
本発明による細長ピン1の把持性能は、本発明によるピンで使用されることが可能なネジ状領域の長さより5〜10mmだけ大きなネジ状領域の長さを用いて海綿骨内に挿入される、バイコーティカルピン(bicortical pin)に等しい安定性を確実にするのに十分である。
【0030】
ピンのより良好な貫入を保証するために、好ましくは、円錐形端部3上のネジ山とステム2の円筒形端領域4上のネジ山とは連続的に形成され、ネジ山頂部における中断は基本的に存在しない。
【0031】
ステム2の直径は、用途に応じて3mmと6.0mmとの間であってもよい。ステムの好ましい直径は3mm、4mm、5mm、及び6mmである。
【0032】
細長ピン1の長さは、その特定の用途の要件とシャンクの寸法とに応じて、50mmから180mmの範囲であってもよい。
【0033】
図を参照すると、ピンの長さは115mmに等しく、ネジ状円錐形端部3の長さは7mmに等しく、ステムの直径dは6mmであり、ステムのネジ状端領域4の長さは8mmに等しい。
【0034】
従って、ステム2の端領域4と円錐形部分3との全ネジ山は15mmに等しい。
【0035】
図5及び図7に示された数値は、ミリメートル単位であると理解されるべきである。
【0036】
明らかなように、本発明による細長ピン1は、より小さな直径の結果として、特に細い外観を有する。
【0037】
好ましくは、ピン1は、比較的高い弾性率を有するステンレス鋼で作られ、それにより、所定の剛性を有するステム2が提供され、同時に、良好な強度を有するネジ状円錐形端3も提供される。
【0038】
ネジ状円錐形端部3は、セルフドリリング及びセルフタッピングタイプのものである。
【0039】
ピン1のより良好な取り扱いを可能にするために、ステム先端とは反対側の端5の外形は、スパナの係合を可能にするように、又は骨の穿孔を可能にするためにドリル内に挿入されるように成形される。
【0040】
先端が皮質骨と容易かつ正確に係合することを可能にするために、ネジ状円錐形端3の先端は、図8及び図9において明確にわかるように、切欠部、すなわちアンダーカット6を有する。
【0041】
基本的に、(先端端における)ネジ山の第1の部分は、先端におけるアンダーカット6によって除去され、これにより先端は、ミリメートルの最初の10分の1のための心立てポンチとして働く。従って、皮質骨のより硬い(外側の)部分は取り除かれ、ネジ山の係合が可能になる。
【0042】
結論として、本発明の細長ピンは、
ステムのネジ状円錐形端部3の長さとステムの直径dとの間の、0.8と1.2との間の、好ましくは1と1.2との間の範囲の、より好ましくは1に等しい比率を有し、
ステム2の円筒形ネジ状端領域4の長さとステムの直径dとの間の、0.8と1.25との間の、好ましくは1と1.2との間の範囲の、より好ましくは1.1に等しい比率を有する。
【0043】
示された特定の構成の結果として、本発明による細長ピン1は、髄腔内に入ることなしに皮質骨上に固定され得、従って感染の危険が減る。
【0044】
その上、円錐形先端端3に近いステム2の領域4上のネジ山の結果として、好適な厚さの皮質骨がない場合でさえ、海綿骨においてもピン1は良好な把持を確実にすることが可能である。
【0045】
上記の説明から理解できるように、本発明による細長ピンは、本明細書の導入部分において従来技術に関して上述した要求を満たし、欠点を克服することが可能である。
【0046】
明らかに当業者は、発生する可能性のある任意の特定の要求を満たすために、上述の発明に対して多くの修正及び変形を行ってもよく、それらの修正及び変形の全ては、特許請求の範囲によって規定される本発明の保護範囲内に加えて含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9