(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド、クラウン補強材を含むクラウン、2枚の側壁、2本のビード、これら2本のビードに固定され且つ一方の側壁から他方の側壁へ延びているカーカス補強材を含むタイヤであって、
前記トレッドがエラストマーを含み、
前記エラストマーが、少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含み、且つ、任意に非熱可塑性エラストマーを含んでいてもよく、
前記熱可塑性エラストマーが、水素化されていてもよいブタジエン/スチレンランダムコポリマータイプの少なくとも1個のエラストマーブロックと、スチレンタイプの少なくとも1個の熱可塑性ブロックとを含むブロックコポリマーであり、熱可塑性エラストマーの総含有量が、前記熱可塑性エラストマー及び前記非熱可塑性エラストマーを含む全エラストマー100質量部に対して、65〜100質量部の範囲内であり、且つ
前記トレッドが、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位を含む熱可塑性樹脂をさらに含む、前記タイヤ。
前記SBRエラストマーブロックが、4モル%〜75モル%の範囲内のブタジエン部の1,2−結合含有量および20モル%〜96モル%の範囲内の1,4−結合含有量を有する、請求項1又は2記載のタイヤ。
前記SBRエラストマーブロックが、ブタジエン部における二重結合の25モル%〜100モル%の割合が水素化されるように水素化されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本説明においては、特に明確に断らない限り、示す全てのパーセント(%)は、質量パーセント(%)である。
さらにまた、用語“phr”は、本特許出願の意義の範囲内において、エラストマー、即ち、熱可塑性エラストマーおよび一緒に混合した非熱可塑性エラストマーの100質量部当りの質量部を意味する。本発明の意義の範囲内において、熱可塑性エラストマー(TPE)は、エラストマーのうちに包含される。
【0014】
さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに至る値の範囲を示し(即ち、限界値aとbは除外する)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに至る値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを包含する)。
【0015】
1. トレッドの組成物
本発明に従うタイヤの本質的特徴は、本発明に従うタイヤが、トレッド、クラウン補強材を含むクラウン、2枚の側壁、2本のビード、これら2本のビードに固定され且つ一方の側壁から他方の側壁へ延びているカーカス補強材を含み;上記トレッドが少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含み、該熱可塑性エラストマーが、水素化されていてもよいブタジエン/スチレンランダムコポリマータイプの少なくとも1個のエラストマーブロックとスチレンタイプの少なくとも1個の熱可塑性ブロックを含むブロックコポリマーであり;そして、熱可塑性エラストマーの総含有量が65〜100phr (エラストマー100質量部当りの質量部)の範囲内にあることである。
【0016】
1. 1. SBRブロックおよびPSブロックを含む特定の熱可塑性エラストマー(TPE)
一般に、熱可塑性エラストマー(“TPE”と略記する)は、エラストマーと熱可塑性ポリマーの中間の構造を有する。これらの熱可塑性エラストマーは、可撓質エラストマーブロックによって連結された硬質熱可塑性ブロックからなる。
【0017】
本発明の前提条件において、上記特定の熱可塑性エラストマーは、少なくとも1個の水素化されていてもよいブタジエン/スチレンランダムコポリマータイプ(SBR)のエラストマーブロックと少なくとも1個のスチレンコポリマータイプ(PS)の熱可塑性ブロックを含むブロックコポリマーである。従って、以下の説明においては、SBRブロックに言及する場合、このブロックは、ブタジエン/スチレンランダムコポリマーから主として(即ち、50質量%よりも多く、好ましくは80質量%よりも多くまで)なるエラストマーブロックであり、このコポリマーは、水素化されていてもまたはされてなくてもよく;そして、スチレンブロックに言及する場合は、このブロックは、ポリスチレンのようなスチレンポリマーから主として(即ち、50質量%よりも多く、好ましくは80質量%よりも多くまで)なるブロックである。
【0018】
1. 1. 1. SBRブロックおよびPSブロックを含む上記TPEの構造
SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEの分子量(M
nで示す)は、好ましくは30 000g/モルと500 000g/モルの間、より好ましくは40 000g/モルと400 000g/モルの間である。上記の最低値よりも低いと、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEのSBRエラストマー鎖間の凝集力が、特にその希釈可能性(増量剤オイルの存在において)のために、影響を受けるリスクが存在する;さらにまた、“高温”性能の低下の結果によって、機械的性質、特に、破断点諸性質に影響を与える加工温度上昇のリスクが存在する。さらにまた、過度に高い分子量M
nは、加工にとって有害であり得る。従って、50 000〜300 000g/モル、さらにより良好には60 000〜150 000g/モルの範囲内にある値が、特にタイヤトレッド組成物におけるSBRブロックとPSブロックを含むTPEの使用にとって特に良好に適していることを観察している。
【0019】
SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEの数平均分子量(M
n)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、既知の方法で測定する。例えば、熱可塑性スチレンエラストマーの場合、サンプルを、前もって、約1g/lの濃度でテトラヒドロフラン中に溶解し、その後、溶液を、0.45μmの有孔度を有するフィルター上で、注入前に濾過する。使用する装置は、Waters Allianceクロマトグラフ系である。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は0.7ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は90分である。商品名Styragel (HMW7、HMW6Eおよび2本のHT6E)を有する直列の4本のWatersカラムセットを使用する。ポリマーサンプル溶液の注入容量は、100μlである。検出器は、Waters 2410示差屈折計であり、クロマトグラフデータを処理するその関連ソフトウェアは、Waters Millenniumシステムである。算出した平均モル質量を、ポリスチレン標準によって得られた較正曲線と対比する。条件は、当業者であれば、調整し得ることである。
【0020】
SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEの多分散性指数I
p (注:I
p = M
w/M
n、M
w:質量平均分子量、Mn:数平均分子量)は、好ましくは3よりも低く、より好ましくは2よりも低く、さらにより好ましくは1.5よりも低い。
【0021】
知られている通り、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEは、2つのガラス転移温度(T
g、ASTM D3418従って測定)を有し、最低温度はSBRブロックとPSブロックを含む上記TPEのSBRエラストマー成分に関連し、最高温度はSBRブロックとPSブロックを含む上記TPEの熱可塑性PS成分に関連する。即ち、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEの可撓質SBRブロックは、周囲温度(25℃)よりも低いT
gに特徴を有し、一方、硬質PSブロックは、80℃よりも高いT
gを有する。
【0022】
本出願においては、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEのガラス転移温度に言及する場合、そのガラス転移温度は、SBRエラストマーブロックに関するT
gである。SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEは、好ましくは、好ましくは25℃以下、より好ましくは10℃以下のガラス転移温度(“T
g”)を有する。これらの最低値よりも高いT
g値は、極めて低温において使用するときのトレッドの性能を低下し得る;そのような使用においては、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEのT
gは、さらにより好ましくは、−10℃以下である。同様に好ましくは、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEのT
gは、−100℃よりも高い。
【0023】
SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEは、少数のブロック(5個未満、典型的には2個または3個)を有するコポリマーであり得、その場合、これらのブロックは、好ましくは、15 000g/モルよりも高い高分子量を有する。SBRブロックとPSブロックを含むこれらのTPEは、例えば、1個の熱可塑性ブロックと1個のエラストマーブロックを含むジブロックコポリマーであり得る。また、これらのTPEは、多くの場合、1個の可撓質セグメントによって連結された2個の硬質セグメントを有するトリブロックエラストマーでもある。硬質および可撓質の各セグメントは、線状に、または星型もしくは枝分れ形状に配置し得る。典型的には、これらのセグメントまたはブロックの各々は、多くの場合、少なくとも、5個よりも多い、一般的には10個よりも多い基本単位(例えば、スチレン/SBR/スチレンブロックコポリマーにおけるスチレン単位およびブタジエン/スチレン単位)を含有する。
【0024】
また、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEは、多数のより細かいブロック(30個よりも多い、典型的には50〜500個)を含み得、この場合、これらのブロックは、好ましくは、例えば500〜5000g/モルの比較的低い分子量を有する;従って、SBRブロックとPSブロックを含むこれらのTPEは、SBRブロックとPSブロックを含むマルチブロックTPEと称し、エラストマーブロック/熱可塑性ブロック連続物である。
【0025】
第1の変形によれば、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEは、線状形である。例えば、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEは、ジブロックコポリマーである:PSブロック/SBRブロック。また、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEは、トリブロックコポリマーでもあり得る:PSブロック/SBRブロック/PSブロック、即ち、1個の中央エラストマーブロックとこのエラストマーブロックの2つの末端の各々における2個の末端熱可塑性ブロック。同様に、SBRブロックとPSブロックを含むマルチブロックTPEは、SBRエラストマーブロック/熱可塑性PSブロックの線状連続物であり得る。
【0026】
本発明のもう1つの変形によれば、本発明の前提条件において使用するSBRブロックとPSブロックを含む上記TPEは、少なくとも3本の分岐を含む星型枝分れ形である。例えば、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEは、その場合、少なくとも3本の分岐を含む星型枝分れSBRエラストマーブロックと、このSBRエラストマーブロックの各分岐末端に位置する熱可塑性PSブロックとからなり得る。中央エラストマーの分岐数は、例えば、3〜12本、好ましくは3〜6本の範囲であり得る。
【0027】
本発明のもう1つの変形によれば、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEは、枝分れまたはデンドリマー形で供給される。SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEは、枝分れまたはデンドリマーSBRエラストマーブロックとデンドリマーエラストマーブロックの分岐末端に位置する熱可塑性PSブロックとからなり得る。
【0028】
1. 1. 2. エラストマーブロックの性質
本発明の前提条件において、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEのエラストマーブロックは、全て、当業者にとって既知のブタジエン/スチレンランダムコポリマータイプ(SBR)のエラストマーであり得る。
【0029】
SBRブロックとPSブロックを含む上記TPE中のSBRエラストマーブロックの画分は、30%〜95%、好ましくは40%〜92%、より好ましくは50%〜90%の範囲内である。
【0030】
これらのSBRブロックは、好ましくは、25℃よりも低い、好ましくは10℃よりも低い、より好ましくは0℃よりも低い、極めて好ましくは−10℃よりも低い、規格ASTM D3418、1999年に従うDSCによって測定したT
g (ガラス転移温度)を有する。同様に好ましくは、上記SBRブロックのT
gは、−100℃よりも高い。20℃と−70℃の間、より好ましくは0℃と−50℃の間のT
gを有するSBRブロックは、特に適している。
【0031】
知られている通り、SBRブロックは、スチレン成分、ブタジエン部の1,2−結合成分およびブタジエン部の1,4−結合成分を含み、上記1,4−結合成分は、ブタジエン部が水素化されていない場合、トランス−1,4−結合成分およびシス−1,4−結合成分からなる。
【0032】
好ましくは、例えば10質量%〜60質量%、好ましくは20質量%〜50質量%の範囲内のスチレン含有量を、そして、ブタジエンについては、4%〜75%(モル%)の範囲内の1,2−結合含有量および20%〜96%(モル%)の1,4−結合含有量を有するSBRを特に使用する。
【0033】
SBRブロックの水素化の度合に応じて、SBRブロックのブタジエン部における二重結合の含有量は、完全水素化SBRブロックにおける0モル%の含有量まで低下し得る。好ましくは、本発明の前提条件において使用するSBRブロックとPSブロックを含む上記TPEにおいては、上記SBRエラストマーブロックを、ブタジエン部における二重結合の25モル%〜100モル%の範囲の割合が水素化されるように水素化する。さらに好ましくは、ブタジエン部における二重結合の50モル%~100モル%、極めて好ましくは80モル%〜100モル%を水素化する。
【0034】
本発明の意義の範囲内において、上記SBRブロックのスチレン成分は、スチレンモノマーから選ばれる、特に、非置換スチレン、置換スチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるスチレンモノマーからなり得る。置換スチレンのうちでは、好ましくは、メチルスチレン(好ましくは、o−メチルスチレン、m−メチルスチレンおよびp−メチルスチレン;アルファ−メチルスチレン、アルファ、2−ジメチルスチレン、アルファ、4−ジメチルスチレンおよびジフェニルエチレン)、パラ−tert−ブチルスチレン、クロロスチレン(好ましくは、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン)、ブロモスチレン(好ましくは、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、2,6−ジブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン)、フルオロスチレン(o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジフルオロスチレン、2,4,6−トリフルオロスチレン)、パラ−ヒドロキシスチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる置換スチレンを選択する。
【0035】
本発明の好ましい実施態様によれば、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEのエラストマーブロックは、全体で、25 000g/モル〜350 000g/モル、好ましくは35 000g/モル〜250 000g/モルの範囲の数平均分子量(“M
n”)を有して、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEに、タイヤトレッドとしての使用に適応し得る良好な弾力特性と十分な機械的性質を付与する。
また、上記エラストマーブロックは、上記で定義したような複数種のエラストマーブロックからもなり得る。
【0036】
1. 1. 3. 熱可塑性ブロックの性質
熱可塑性ブロックの定義に関しては、上記硬質熱可塑性ブロックのガラス転移温度(T
g)特性を使用する。この特性は、当業者にとって周知である。この特性は、特に、工業的加工(変換)温度の選定を可能にする。非晶質ポリマー(またはポリマーブロック)の場合、加工温度は上記T
gよりも実質的に高くあるように選定する。半結晶性ポリマー(またはポリマーブロック)の特定の場合、その場合ガラス転移温度よりも高い融点が観察され得る。この場合は、むしろ、該当するポリマー(またはポリマーブロック)の加工温度の選定を可能にするのは、融点(M.p.)である。従って、これ以降で、“T
g (または必要に応じてM.p.)に言及する場合、これが加工温度を選定するのに使用する温度であることを考慮する必要がある。
【0037】
本発明の前提条件において、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEは、好ましくは80℃以上のT
g (または必要に応じてのM.p.)を且つ重合スチレン(PS)モノマーからなる1個以上の熱可塑性ブロックを含む。好ましくはこの熱可塑性ブロックは、80℃〜250℃の範囲内のT
g (または必要に応じてのM.p.)を有する。好ましくはこの熱可塑性ブロックのT
g (または必要に応じてのM.p.)は、好ましくは80℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃である。
【0038】
SBRブロックとPSブロックを含む上記TPE中のPS熱可塑性ブロックの画分は、5%〜70%、好ましくは8%〜60%、より好ましくは10%〜50%の範囲内である。
【0039】
SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEの熱可塑性ブロックは、ポリスチレンブロックである。好ましいポリスチレンは、非置換スチレン、置換スチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるスチレンモノマーから得られる。置換スチレンのうちでは、好ましくは、メチルスチレン(好ましくは、o−メチルスチレン、m−メチルスチレンおよびp−メチルスチレン;アルファ−メチルスチレン、アルファ、2−ジメチルスチレン、アルファ、4−ジメチルスチレンおよびジフェニルエチレン)、パラ−tert−ブチルスチレン、クロロスチレン(好ましくは、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン)、ブロモスチレン(好ましくは、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、2,6−ジブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン)、フルオロスチレン(o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、2,4−ジフルオロスチレン、2,6−ジフルオロスチレン、2,4,6−トリフルオロスチレン)、パラ−ヒドロキシスチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる置換スチレンを選択する。
【0040】
極めて好ましくは、SBRブロックを含む上記TPEの熱可塑性ブロックは、非置換ポリスチレンから得られるブロックである。
本発明の変形によれば、上記で定義したようなポリスチレンブロックは、少なくとも1腫の他のモノマーと共重合させて、上記定義したようなT
g (または必要に応じてのM.p.)を有する熱可塑性ブロックを形成し得る。
【0041】
例えば、上記重合モノマーと共重合させ得るこの他のモノマーは、ジエンモノマー、特に、4〜14個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーおよび8〜20個の炭素原子を有するビニル芳香族タイプのモノマーから選択し得る。
【0042】
本発明によれば、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEの熱可塑性ブロックは、全体的に、5000g/モル〜150 000g/モルの範囲の数平均分子量(“M
n”)を有して、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEに、タイヤトレッドとしての使用に適合し得る良好な弾力特性および十分な機械的強度を付与する。
また、上記熱可塑性ブロックは、上記で定義したような複数種の熱可塑性ブロックからなり得る。
【0043】
1. 1. 4. SBRブロックとPSブロックを含むTPEの例
商業的に入手可能なSBRブロックとPSブロックを含むTPEの例としては、Asahi Kasei社から品名SOE S1611、SOE L605またはSOE L606として販売されているSOEタイプのエラストマーを挙げることができる。
【0044】
1. 1. 5. SBRブロックとPSブロックを含むTPEの量
任意構成成分としての他の(非熱可塑性)エラストマーを上記組成物において使用する場合、SBRブロックとPSブロックを含むTPEエラストマー(1種以上)は、主要質量画分を構成する;これらのTPEエラストマーは、その場合、上記エラストマー組成物中に存在するエラストマー全体の少なくとも65質量%、好ましくは少なくとも70質量%、さらに好ましくは少なくとも75質量%を示す。同様に好ましくは、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEエラストマー(1種以上)は、上記エラストマー組成物中に存在するエラストマー全体の少なくとも95質量%(特に100質量%)を示す。
【0045】
従って、SBRブロックとPSブロックを含むTPEエラストマーの量は、65〜100phr、好ましくは70〜100phr、特に75〜100phrの範囲内である。同様に好ましくは、上記組成物は、95〜100phrのSBRブロックとPSブロックを含むTPEエラストマーを含有する。SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEエラストマー(1種以上)は、好ましくは、上記トレッドの唯一のエラストマー(1種以上)である。
【0046】
1. 2. 非熱可塑性エラストマー
上記熱可塑性エラストマー(1種以上)は、それ自体で、本発明に従うトレッドが有用であるためには十分である。
本発明に従うトレッドの組成物は、少なくとも1種(即ち、1種以上)のジエンエラストマーを非熱可塑性エラストマーとして含み得る;このジエンゴムは、単独で或いは少なくとも1種(即ち、1種以上)の他の非熱可塑性ゴムまたはエラストマーとのブレンドとして使用することが可能である。
【0047】
任意構成成分としての非熱可塑性エラストマーの総含有量は、0〜35phr、好ましくは0〜30phr、より好ましくは0〜25phr、さらにより好ましくは0〜5phrの範囲内である。従って、上記トレッドが非熱可塑性エラストマーを含有する場合、非熱可塑性エラストマーは、多くとも35phr、好ましくは多くとも30phr、より好ましくは多くとも25phr、極めて好ましくは多くとも5phrを示す。同様に極めて好ましくは、本発明に従うタイヤのトレッドは、非熱可塑性エラストマーを含有しない。
【0048】
用語“ジエン”エラストマーまたはゴムは、知られている通り、ジエンモノマー(2個の共役型または非共役型炭素・炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも部分的に由来する1種以上のエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきである。
【0049】
これらのジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”または“本質的に飽和”に分類し得る。
“本質的に不飽和”とは、一般に、15%(モル%)よりも多いジエン由来の単位(共役ジエン)含有量を有する共役ジエンモノマーに少なくとも部分的に由来するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。“本質的に不飽和”のジエンエラストマーのカテゴリーにおいては、“高不飽和”ジエンエラストマーは、特に、50%よりも多いジエン由来の単位(共役ジエン)含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0050】
従って、ある種のブチルゴムまたはEPDMタイプのジエンとα‐オレフィンとのコポリマーのようなジエンエラストマーは、上記の定義に属さず、特に、“本質的に飽和”のジエンエラストマー(低いまたは極めて低い、常に15%よりも低いジエン由来の単位含有量)として説明し得る。
【0051】
これらの定義を考慮すれば、本発明に従う組成物において使用することのできるジエンエラストマーは、上記のカテゴリーにかかわらず、下記を意味するものと理解されたい:
(a) 4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー;
(b) 1種以上の共役ジエンを他のジエンまたは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物と共重合させることによって得られる任意のコポリマー;
(c) エチレンおよび3〜6個の炭素原子を含有するα‐オレフィンを、6〜12個の炭素原子を含有する非共役ジエンモノマーと共重合させることによって得られる3成分コポリマー、例えば、上記タイプの非共役ジエンモノマー、例えば、特に1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンと一緒のエチレンおよびプロピレンから得られるエラストマーのような;
(d) イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、特に、塩素化または臭素化形。
【0052】
任意のタイプのジエンエラストマーを、本発明においては使用し得る。上記組成物が加硫系を含有する場合、好ましくは、特に上記タイプ(a)または(b)の本質的に不飽和のジエンエラストマーを、本発明に従うタイヤのトレッドの製造において使用する。
【0053】
以下は、特に、共役ジエンとして適している:1,3−ブタジエン;2−メチル−1,3−ブタジエン;例えば、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−,3−ブタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエンまたは2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエンのような2,3−ジ(C
1〜C
5アルキル)−1,3−ブタジエン;アリール−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン。以下は、例えば、ビニル芳香族化合物として適している:スチレン;オルソ−、メタ−およびパラ−メチルスチレン;“ビニルトルエン”市販混合物;パラ−(tert−ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレン。
【0054】
上記コポリマーは、99質量%と20質量%の間の量のジエン単位と1質量%と80質量%の間の量のビニル芳香族単位を含有し得る。これらのエラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。これらのエラストマーは、分散液中または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤或いは官能化剤によってカップリングしおよび/または星型枝分れ化し或いは官能化し得る。カーボンブラックにカップリングさせるには、例えば、C‐Sn結合を含む官能基または例えばベンゾフェノンのようなアミノ化官能基を挙げることができる;シリカのような補強用無機充填剤とカップリングさせるには、例えば、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778号またはUS 6 013 718号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882号またはUS 5 977 238号に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、WO 01/92402号またはUS 6 815 473号、WO 2004/096865号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)或いはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909号またはUS 6 503 973号に記載されているような)を挙げることができる。また、官能化エラストマーの他の例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)を挙げることができる。
【0055】
1. 3. PPE樹脂
上記で説明した熱可塑性エラストマー(1種以上)は、それ自体で、本発明に従うトレッドが有用であるために十分である。
【0056】
好ましくは、本発明に従う組成物は、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする熱可塑性樹脂(“PPE樹脂”と略記する)も含む。このタイプの化合物は、例えば、百科事典"Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry" published by VCH, vol. A 21, pages 605-614, 5
th edition, 1992に記載されている。
【0057】
本発明の前提条件において有用である上記PPE樹脂は、好ましくは、0〜215℃、好ましくは5〜200℃、さらに好ましくは5〜185℃の範囲内の、規格ASTM D3418、1999年に従いDSCによって測定したガラス転移温度(T
g)を有する。0℃よりも低いと、上記PPE樹脂は、この樹脂を含む組成物内でのT
gの十分なシフトを不可能にし、215℃よりも高いと、特に均質な混合物を取得することに関しての製造問題に直面し得る。
【0058】
好ましくは、上記PPE樹脂は、下記の一般式(I)のポリフェニレン単位を主として含む化合物である:
【化2】
(I)
(式中、
・R
1、R
2、R
3およびR
4は、互いに個々に、水素;ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノもしくはジアルキルアミノの各基;ヘテロ原子によって遮断されていてもよく且つ置換されていてもよい少なくとも2個の炭素原子を含む炭化水素系の基から選ばれた同一または異なる基を示し;一方のR
1およびR
3、並びに他方のR
2およびR
4は、これらが結合している炭素原子と一緒に、式(I)の化合物のベンゼン環に融合した1個以上の環を形成し得;
・nは、3〜300の範囲内の整数である)。
【0059】
好ましくは、R
1、R
2、R
3およびR
4は、互いに個々に、下記から選ばれる同一または異なる基を示す:
・水素;
・ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノの各基;
・1〜25個(好ましくは2〜18個)の炭素原子を含み、窒素、酸素およびイオウから選ばれたヘテロ原子によって遮断されていてもよく且つヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはハロゲンの各基によって置換されていてもよい線状、枝分れまたは環状のアルキル基;
・6〜18個(好ましくは6〜12個)の炭素原子を含み、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルまたはハロゲンの各基によって置換されていてもよいアリール基。
【0060】
さらに好ましくは、R
1、R
2、R
3およびR
4は、互いに個々に、下記から選ばれる同一または異なる基を示す:
・水素;
・ヒドロキシル基、1〜6個の炭素原子を含むアルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、1〜6個の炭素原子を含むアルキルアミノ基、または2〜12個の炭素原子を含むジアルキルアミノ基;
・1〜12個(好ましくは2〜6個)の炭素原子を含み、ヘテロ原子によって遮断されていてもよく且つヒドロキシル基、1〜6個の炭素原子を含むアルコキシ基、アミノ基、1〜6個の炭素原子を含むアルキルアミノ基、2〜12個の炭素原子を含むジアルキルアミノ基、またはハロゲン基によって置換されていてもよい線状、枝分れまたは環状のアルキル基;
・6〜18個(好ましくは6〜12個)の炭素原子を含み、ヒドロキシル基、1〜6個の炭素原子を含むアルコキシ基、アミノ基、1〜6個の炭素原子を含むアルキルアミノ基、2〜12個の炭素原子を含むジアルキルアミノ基、1〜12個の炭素原子を含むアルキル基、またはハロゲン基によって置換されていてもよいアリール基。
【0061】
さらにより好ましくは、R
1およびR
2は、アルキル基、特にメチル基を示し;R
3およびR
4は、水素原子を示す。この場合、上記PPE樹脂は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
同様に好ましくは、nは、3〜50、さらに好ましくは5〜30、好ましくは6〜20の範囲内の整数である。
【0062】
好ましくは、上記PPE樹脂は、80質量%よりも多い、さらにより好ましくは95質量%よりも多い一般式(I)のポリフェニレン単位を含む化合物である。
例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、特に、Sabic社からのNoryl SA 120またはAsahi Kasei社からのXyron S202を挙げることができる。
【0063】
知られている通り、PPE樹脂は、例えばまた好ましくは、殆どの場合15 000〜30 000g/モルで変動し得る数平均分子量(M
n)を有する;これらのような高い分子量の場合、M
nは、当業者とって既知の方法において、SEC (文献US 4 588 806号におけるようにGPCとも称する、カラム8)によって測定する。本発明の前提条件において、通常遭遇する分子量よりも低い、特に、6000g/モルよりも低い、好ましくは3500g/モルよりも低い分子量M
n、特に、700〜2500g/モルの範囲内のM
nを有するPPE樹脂を、同様にまた好ましくは、本発明の組成物においては使用する。6000g/モルよりも低い分子量を有するPPEの数平均分子量(M
n)は、通常のSEC測定が十分に正確ではないので、NMRによって測定する。このNMR測定は、当業者にとって既知の方法において、例えば、"Application of NMR spectroscopy in molecular weight determination of polymers" by Subhash C.Shit and Sukumar Maiti in "European Polymer Journal" vol.22, no.12, pages 1001 to 1008 (1986)において説明されているように、鎖末端官能性を分析するかまたは重合開始剤を分析するかのいずれかによって実施する。
【0064】
上記PPEの多分散性指数PI (注釈すれば、PI = M
w/M
n;M
wは質量平均分子量、M
nは数平均分子量)の値は、好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下、さらに撚り好ましくは2以下である。
【0065】
上記組成物中のPPE樹脂の含有量は、好ましくは1〜90phr、さらに好ましくは2〜80phr、さらにより好ましくは3〜60phr、極めて好ましくは5〜60phrの範囲内である。
【0066】
1. 4. ナノメートル即ち補強用充填剤
上記で説明した熱可塑性エラストマー(1種以上)は、それ自体で、本発明に従うトレッドが有用であるために十分である。好ましくは、本発明に従う組成物は、補強用充填剤も含み得る。
【0067】
補強用充填剤を使用する場合、タイヤの製造において通常使用する任意のタイプの充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような無機充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特に、カーボンブラックとシリカとのブレンドを使用する。
【0068】
タイヤにおいて通常使用する全てのカーボンブラック類(“タイヤ級”ブラック類)が、カーボンブラックとして適している。さらに詳細には、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラック類のような100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)、或いは、目標とする用途次第では、より高級シリーズのブラック類(例えば、N660、N683またはN772)が、実際にはN990さえもが挙げられる。
【0069】
“補強用無機充填剤”とは、本出願においては、定義によれば、カーボンブラックと対比して、“白色充填剤”、“透明充填剤”としても、または“非黒色充填剤”としてさえも知られており、それ自体で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、その補強役割において、通常のタイヤ級カーボンブラックと置換り得る、任意の無機または鉱質充填剤(その色合およびその由来:天然または合成の如何にかかわらない)を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(−OH)基の存在に特徴を有する。
【0070】
補強用無機充填剤を供給する物理的状態は、粉末、微細真珠様物、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な高密度化形のいずれの形状であれ重要ではない。勿論、用語“補強用無機充填剤”は、種々の補強用無機充填剤、特に、下記で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物を意味することも理解されたい。
【0071】
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO
2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特にアルミナ(Al
2O
3)は、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m
2/g未満、好ましくは30〜400m
2/gであるBET比表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降またはヒュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(“HDS”)としては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia 社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;または、出願 WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
【0072】
補強用無機充填剤を上記エラストマーにカップリングさせるためには、例えば、知られている通り、上記無機充填剤(その粒子表面)と上記エラストマー間に化学的および/または物理的性質の満足し得る結合をもたらすことを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)、特に、二官能性オルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用する。
【0073】
上記組成物中の任意構成成分としての補強用充填剤(カーボンブラックおよび/またはシリカのような補強用無機充填剤)の容量による含有量は、無可塑剤組成物における0〜50phrに相当する0%〜20%の範囲内である。好ましくは、上記組成物は、30phr未満、より好ましくは10phr未満の補強用充填剤を含む。本発明の好ましい変形によれば、上記トレッドの組成物は、補強用充填剤を含まない。
【0074】
1, 5. 各種添加剤
上記で説明した熱可塑性エラストマー(1種以上)は、それ自体で、本発明に従うトレッドが有用であるためには十分である。
【0075】
にもかかわらず、本発明の1つの好ましい実施態様によれば、上記で説明したエラストマー組成物は、オイル(即ち、可塑化用または増量剤オイル)または可塑化用樹脂のような可塑剤も含み得る;可塑剤の役割は、トレッドの加工性、特に、トレッドのタイヤ中への組込みをそのモジュラスを低下させ且つ粘着付与力を増大させることによって容易にすることである。
【0076】
好ましくは弱極性を有し、エラストマー、特に、熱可塑性エラストマーを増量または可塑化し得る任意のオイルを使用し得る。周囲温度(23℃)において、これらのオイルは、多かれまたは少なかれ、粘稠であり、本来固体である特に樹脂またはゴムとは対照的に、液体(即ち、注釈すれば、その容器の形を最終的には取る能力を有する物質)である。また、当業者にとって既知の任意のタイプの可塑化用樹脂も使用し得る。
【0077】
当業者であれば、以下の説明および典型的な実施態様に照らして、使用するSBRブロックとPSブロックを含む上記TPE (上記で示したような)および上記トレッドを備えたタイヤの特定の使用条件の関数として、特に、使用することを意図する空気式物品の関数として、可塑剤の量を如何にして調整するかは承知しているであろう。
【0078】
使用する場合、増量剤オイルの含有量は、トレッドにおいて目標とするT
gおよびモジュラスに応じて、0〜80phr、好ましくは0〜50phrより好ましくは5〜50phrの範囲内であることが好ましい。
【0079】
上記で説明したトレッドは、さらにまた、当業者にとって既知のトレッド中に通常存在する各種添加剤も含み得る。例えば、酸化防止剤またはオゾン劣化防止剤のような保護剤、UV安定剤、各種加工助剤または他の安定剤、或いは空気式物品構造体の残余への接着を促進し得る促進剤を選択する。好ましくは、上記トレッドはこれらの添加剤の全てを同時に含有することはなく、さらに好ましくは、上記トレッドはこれらの添加剤のいずれも含有しない。
【0080】
同様にまた必要に応じて、本発明のトレッドの組成物は、当業者にとって既知の架橋系を含有し得る。好ましくは、上記組成物は、架橋系を含有しない。同様に、本発明のトレッドの組成物は、板状充填剤のような当業、当業者にとって既知の1種以上の不活性マイクロメートル充填剤を含み得る。好ましくは、上記組成物は、マイクロメートル充填剤を含有しない。
【0081】
2. 製造
SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEエラストマーは、TPEにとって通常の方法で、例えば、ビーズまたは顆粒の形で入手し得る出発材料を使用しての押出または成形法によって加工し得る。
【0082】
本発明に従うタイヤ用のトレッドは、通常の方法で、例えば各種成分をツインスクリュー押出機内で混和することによって製造してマトリックスを溶融し且つ全ての成分を混和するようにし、その後、ダイを使用して形状要素の製造を可能にする。その後、トレッドパターンをタイヤ切断用モールド内で施す。
【0083】
SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEのエラストマーブロックが完全水素化SBRブロックである場合、タイヤは、トレッドのパターン化部分の下に、SBRブロックとPSブロックを含み且つ完成タイヤの上記トレッドと隣接層(例えば、クラウン補強材即ちベルト)間の接着を促進するための不飽和エラストマーブロックを含むTPEを含有する下地層または接着層を含むことが必要であり得る。
【0084】
このトレッドは、タイヤ上に、通常の方法で取付けることができ、このタイヤは、本発明に従うトレッド以外に、クラウン、2枚の側壁および2本のビード、上記2本のビードに固定したカーカス補強材およびクラウン補強材を含む。必要に応じて、また、上述したように、本発明に従うタイヤは、トレッドのパターン化部分とクラウン補強材の間に下地層または接着層も含み得る。
【0085】
本発明の典型的な実施態様
本発明のタイヤ用のトレッド組成物を、上記で示したようにして製造した。
その後、本発明に従うタイヤを、通常の方法に従い、当業者にとって既知の通常の構成要素、即ち、クラウン、2枚の側壁および2本のビード、2本のビードに固定したカーカス補強材、クラウン補強材およびトレッドでもって製造した;トレッドは、本発明の前提条件において説明したトレッドである。
【0086】
本発明に従うタイヤの性質は、タイヤにおいて実施した試験により或いは下記に示すようなトレッド組成物サンプルにおける試験から評価し得る。
【0087】
動的特性(硬化後)
動的特性G*およびtan(δ)maxは、規格ASTM D 5992−96に従い、粘度アナライザー(Metravib VA4000)において測定する。単純な交互正弦波剪断応力に、10Hzの周波数および40℃の温度で、規格ASTM D 1349−99に従って供した所望組成物のサンプル(厚さ2mmおよび78.5mm
2の断面積を有する円筒状試験標本)の応答を記録する。頂点間歪み振幅掃引を0.1%から50%まで(外向きサイクル)、次いで、50%から0.1%まで(戻りサイクル)で実施する。使用する結果は、複素動的剪断モジュラス(G*)および損失係数(ΔG*) である。観察されたtanδの最高値(tan(δ)max)および0.1%と50%歪み間での複素モジュラスの差(ΔG*) (パイネ効果)は、戻りサイクルにおいて示される。より高い可読性のために、結果を、性能に関して、基本点100で示す;値100は、対照に対して与える。従って、(tanδ)の測定において、100よりも高い結果は、より良好な性能、ひいては懸念する値の低下を示し、逆に、100よりも低い結果は、より貧弱な性能、ひいては懸念する値の上昇を示す。
【0088】
E”の測定
E”の測定方法を、PET10003000B圧迫プレートを備えたDMA METRAVIB 450+装置を使用して実施する。実施する試験は、10mmの直径および15mmの高さを有する円筒状サンプルに対する動的圧迫試験である。
【0089】
選択したTPE配合物即ち生エラストマー混合物を、先ず、シートに成形する(例えば、TPEに対しての圧縮下で且つエラストマー混合物用のオープンミルにおいて)。その後、10mmの直径を有する小ディスクを、中空ポンチを使用して切取る。これらのディスクを、少なくとも15mmの高さが得られるまで重ね合せる。
【0090】
引続き、これらの重ね合せディスクを、内部寸法が10mmの直径および15mmの高さであるモールド内に入れる。組立体をプレス内に通して非架橋性混合物を溶融し或いは架橋性混合物を硬化させて、10mmの直径および15mmの高さを有する円筒状サンプルを構築する。
【0091】
典型的には、この硬化(架橋性混合物における)または成形(非架橋性混合物における)加熱処理は、16バール下に170℃で17分間である。成型し、必要に応じて硬化させた後、得られた円筒状サンプルを、接着剤 Loctite 406を使用して、各圧迫プレートと一体化する。この接着剤の液滴を、先ず、下部プレートの中心に付着させる。円筒状サンプルをこの液滴上に置き、第2の液滴を円筒状サンプルの上部に付着する。その後、上記Metravibの横木を下げて、サンプルを押しつぶさないように注意して(実質的に力ゼロで)、上部プレートをサンプル上部に接着接合させる。
【0092】
接着剤を数分間乾燥させた後、正弦波応力を、この円筒状サンプルに、10%の静的変形度および1Hzで0.1%の動的変形度で加える。E“モジュラスの温度の関数としての変化を、40℃から200℃までの範囲において、1℃/分の変温速度で観察する。
【0093】
典型的には、その後、E”モジュラスの温度の関数としての変化のプロットを得る。この曲線から、最高E”に相応する温度値を得ることが可能である。この最高温度は、熱可塑系組成物において、その組成物のガラス転移性を代表し、その耐熱性を証明する。より高い可読性のためには、結果を性能に関して基本点100で示し、値100は対照に対し与える。100よりも低い結果は懸念する性能の低下を示し、逆に、100よりも高い結果は懸念する性能の上昇を示す。
【実施例】
【0094】
本発明に従う3通りのタイヤトレッド組成物(A3、A4、A5)を、上記で示したようにして製造し、2通りの対照、即ち、低い転がり抵抗性を有する“グリーンタイヤ”タイプの対照タイヤトレッド組成物(A1)および文献WO 2,012/152686号に記載されているようなトレッド組成物(A2)と比較した。これらのトレッドの各組成物は、下記の表1に示している。
【0095】
表1
(1) 溶液 SSBR (乾燥SBRとして表す含有量:41%のスチレン、24%の1,2−ブタジエン単位および51%のトランス−1,4−ブタジエン単位 (Tg = −25℃));
(2) 溶液 SSBR (乾燥SBRとして表す含有量:29%のスチレン、5%の1,2−ブタジエン単位および80%のトランス−1,4−ブタジエン単位 (Tg = −56℃));
(3) SIS熱可塑性エラストマー、Kuraray社からのHybrar 5125;
(4) SOE熱可塑性エラストマー、Asahi Kasei社からのSOE L606;
(5) シリカ (Rhodia社からのZeosil 1165MP);
(6) TESTPカップリング剤 (Degussa社からのSi69);
(7) カーボンブラック N234;
(8) TDAEオイル、Hansen & Rosenthal社からのVivatec 500;
(9) パラフィンオイル、Repsol社からのExtensoil 51 24TまたはKlaus Dehleke社からのTudalen 1968;
(10) C
5/C
9樹脂、STS社からのCray Valley Wingtack;
(11) PPE樹脂 1 ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル):Sabic社からのNoryl SA120、M
n = 2350g/モル;
(12) PPE樹脂 2 ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル):Asahi Kasei社からのXyron S201 A、M
n = 19 000g/モル;
(13) N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−パラ−フェニレンジアミン (Flexsys社からのSantoflex 6−PPD;
(14) DPG = ジフェニルグアニジン (Flexsys社からのPerkacit DPG);
(15) 酸化亜鉛 (工業級、Umicore社);
(16) Stearin (Uniqema社からのPristerene 4931);
(17) N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド (Flexsys社からのSantocure CBS)。
【0096】
これらの組成物においては、トレッド組成物におけるSBRブロックとPSブロックを含むTPEエラストマーの使用に関して手段における多大な省力が特筆され得る。
【0097】
引続き、本発明の組成物の性能特性を、そのヒステリシスおよび耐熱性に関して評価した。結果は、下記の表2に示している。
表2
【0098】
表2に示す結果は、本発明に従う組成物A3、A4およびA5のトレッドが転がり抵抗性能を代表するヒステリシス性能の特筆すべき改良を可能にしていることを実証している。さらにまた、極めて驚くべきことに、従来技術に照らして、SBRブロックとPSブロックを含む上記TPEとPPE樹脂とは、ヒステリシス性能特性が、通常のジエントレッドと比較して、さらにまた、文献WO 2012/152686号に記載されているようなTPEトレッドと比較して、この程度まで改良されているトレッドを得るのに十分である。
【0099】
さらにまた、上記結果は、特に組成物A4およびA5においては、組成物A3と比較して、特筆すべき耐熱性の改良も示している。
また、以下の態様も好ましい。
〔1〕トレッド、クラウン補強材を含むクラウン、2枚の側壁、2本のビード、これら2本のビードに固定され且つ一方の側壁から他方の側壁へ延びているカーカス補強材を含むタイヤであって、前記トレッドが少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含み、該熱可塑性エラストマーが、水素化されていてもよいブタジエン/スチレンランダムコポリマータイプの少なくとも1個のエラストマーブロックと、スチレンタイプの少なくとも1個の熱可塑性ブロックとを含むブロックコポリマーであり、且つ、熱可塑性エラストマーの総含有量が65〜100phr (エラストマー100質量部当りの質量部)の範囲内であることを特徴とする前記タイヤ。
〔2〕 前記熱可塑性エラストマーの数平均分子量が、30,000g/モルと500,000g/モルの間である、〔1〕記載のタイヤ。
〔3〕 前記ブロックコポリマーのエラストマーブロックが、25℃よりも低いガラス転移温度を有するエラストマーから選らばれる、〔1〕および〔2〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔4〕 前記SBRエラストマーブロックが、10%〜60%の範囲内のスチレン含有量を有する、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔5〕 前記SBRエラストマーブロックが、4モル%〜75モル%の範囲内のブタジエン部の1,2−結合含有量および20モル%〜96モル%の範囲内の1,4−結合含有量を有する、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔6〕 前記SBRエラストマーブロックが、ブタジエン部における二重結合の25モル%〜100モル%の割合が水素化されるように水素化されている、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔7〕 前記SBRエラストマーブロックが、ブタジエン部における二重結合の50モル%〜100モル%、好ましくは80モル%〜100モル%の割合が水素化されるように水素化されている、〔6〕記載のタイヤ。
〔8〕 前記ブロックコポリマーの熱可塑性スチレンブロックが、80℃よりも高いガラス転移温度を有するポリマー、及び半結晶性熱可塑性の場合は80℃よりも高い融点を有するポリマーから選ばれる、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔9〕 前記ブロックコポリマー中の熱可塑性スチレンブロックの画分が、5%〜70%の範囲内である、〔1〕〜〔8〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔10〕 前記ブロックコポリマーの熱可塑性ブロックが、ポリスチレンから選ばれる、〔1〕〜〔9〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔11〕 前記ブロックコポリマーの熱可塑性ブロックが、非置換スチレン、置換スチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるスチレンモノマーから得られるポリスチレンから選ばれる、〔1〕〜〔10〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔12〕 前記ブロックコポリマーの熱可塑性ブロックが、非置換スチレン、メチルスチレン、パラ−tert−ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン、パラ−ヒドロキシスチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるスチレンモノマーから得られるポリスチレンから選ばれる、〔1〕〜〔11〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔13〕 前記ブロックコポリマーの熱可塑性ブロックが、非置換スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アルファ−メチルスチレン、アルファ,2−ジメチルスチレン、アルファ,4−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、パラ−tert−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、2,6−ジブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、2,4−ジフルオロスチレン、2,6−ジフルオロスチレン、2,4,6−トリフルオロスチレン、パラ−ヒドロキシスチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるスチレンモノマーから得られるポリスチレンから選ばれる、〔1〕〜〔12〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔14〕 前記ブロックコポリマーの熱可塑性ブロックが、非置換ポリスチレンから得られる、〔1〕〜〔13〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔15〕 前記熱可塑性エラストマーが、前記トレッドの唯一のエラストマーである、〔1〕〜〔14〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔16〕 前記トレッドが、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位を含む熱可塑性樹脂をさらに含む、〔1〕〜〔15〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔17〕 置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする前記熱可塑性樹脂が、0〜215℃の範囲内の、規格ASTM D3418(1999年)に従いDSCによって測定したガラス転移温度(Tg)を有する、〔16〕記載のタイヤ。
〔18〕 置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする前記熱可塑性樹脂が、下記の一般式(I)のポリフェニレン単位を主として含む化合物である、〔16〕又は〔17〕記載のタイヤ:
(I)
(式中、
・R1、R2、R3およびR4は、互いに独立に、水素、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノもしくはジアルキルアミノの各基、またはヘテロ原子によって遮断されていてもよく且つ置換されていてもよい少なくとも2個の炭素原子を含む炭化水素系の基から選ばれた同一または異なる基を示し;一方のR1およびR3、並びに他方のR2およびR4は、これらが結合している炭素原子と一緒に、式(I)の化合物のベンゼン環に融合した1個以上の環を形成し得;
・nは、3〜300の範囲内の整数である)。
〔19〕 R1およびR2が、アルキル基、特にメチル基を示し;R3およびR4が、水素原子を示す、〔18〕記載のタイヤ。
〔20〕 置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする前記熱可塑性樹脂の含有量が、1〜90phr、好ましくは2〜80phrの範囲内である、〔16〕〜〔19〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔21〕 置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする前記熱可塑性樹脂の含有量が、3〜60phr、好ましくは5〜60phrの範囲内である、〔16〕〜〔20〕のいずれか1項記載のタイヤ。