(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香族アルデヒドが、1,2−ベンゼンジカルボキシアルデヒド、1,3−ベンゼンジカルボキシアルデヒド、1,4−ベンゼンジカルボキシアルデヒド、2−ヒドロキシベンゼン−1,3,5−トリカルボアルデヒドおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項4記載の被覆鋼補強要素。
前記ポリフェノールが、フロログルシノール、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルスルフィドおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項記載の被覆鋼補強要素。
接着層で少なくとも1部被覆された鋼補強要素の製造方法であって、前記鋼補強要素の少なくとも1部を前記接着層で被覆する段階を含み、前記接着剤層が下記の成分を含む水性接着組成物を含み:
・少なくとも1種の不飽和エラストマーラテックス;および、
・少なくとも下記の成分をベースとする少なくとも1種のフェノール/アルデヒド樹脂:
‐少なくとも1個のアルデヒド官能基を担持し、少なくとも1個の芳香核を含む少なくとも1種の芳香族アルデヒド;および
‐1個以上の芳香核を含む少なくとも1種のポリフェノール、そして、
・1個のみの芳香核の場合、その芳香核は、2個または3個のヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位置において担持し、その芳香核の残余部は置換されておらず:
・複数個の芳香核の場合、それらの芳香核のうちの少なくとも2個は、2個または3個のヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位置において担持し、これらのヒドロキシル官能基の少なくとも1個に対する2つのオルト位置は置換されていない、
かつ
前記水性接着組成物の水分含有量が、60質量%と90質量%の間である、
上記鋼補強要素の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本説明においては、特に明確に断らない限り、示す全てのパーセント(%)は、質量%である。
【0016】
“ジエン”エラストマー(または、区別することなくゴム)は、ジエンモノマー(2個の共役型または非共役型炭素・炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも部分的に由来するエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解されたい。“イソプレンエラストマー”は、イソプレンホモポリマーまたはコポリマー、換言すれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、各種イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0017】
さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに至る値の範囲を示し(即ち、限界値aとbは除外する)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに至る値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを包含する)。
【0018】
I. 被覆鋼補強要素
“ベースとする組成物”なる表現は、勿論、この組成物において使用する各種基本構成成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物を意味するものと理解すべきである;これら基本構成成分のある種のものは、上記組成物、上記補強要素または上記複合体もしくは最終物品の種々の製造段階において、特に、硬化段階において少なくとも部分的に互いにまたはそれら基本構成成分の中間化学周辺物と反応するように意図し得或いは反応し得る。
【0019】
本発明に従う被覆鋼補強要素は、1つの実施態様においては、1本のスレッド状補強要素を含み得る。もう1つの実施態様においては、本発明に従う被覆鋼補強要素は、例えば編み加工または撚り加工によって一緒に集合させた複数本のスレッド状補強要素を含む。複数本のスレッド状補強要素を含む被覆鋼補強要素のうちでは、例えば、層型コードおよびマルチストランドコードが挙げられる。各スレッド状補強要素は単一体である、即ち、各スレッド状補強要素の構成成分は互いに非分離性である。
【0020】
用語“スレッド状補強要素”は、その形状が、例えば、円形、楕円形長方形または正方形或いは平坦形のいずれであれ、その断面に対比して大きい長さを有する細長い要素を意味するものと理解されたい;このスレッド状要素は、線状であり得或いは、線状ではなく、例えば、撚り合せもしくは波形であり得る。円形の場合、各スレッド状補強要素の直径は、好ましくは5mm未満、より好ましくは0.1〜0.5mmの範囲内である。また、その厚さに対比して大きい長さを示すストリップまたはバンドも挙げられる。
【0021】
好ましい実施態様においては、上記被覆補強要素は、各々が鋼コアを含む1本以上のスレッド状補強要素を含む。鋼コアは、一体性である、即ち、鋼コアは、例えば、ワンピースとして製造されまたは成型される。
【0022】
上記接着層は、上記または各スレッド状補強要素の少なくとも1部をコーティングする。即ち、上記接着層は、上記または各スレッド状補強要素を部分的にまたは完全にコーティングし得る。即ち、上記被覆鋼補強要素が1本のスレッド状補強要素を含む実施態様においては、上記接着層は、この要素のある1部分またはこの要素の全体をコーティングし得る。上記被覆鋼補強要素が複数本のスレッド状補強要素を含む実施態様においては、上記接着層は、数本のスレッド状要素をコーティングし得しるがこれら要素の他はコーティングせず、或いは上記スレッド状要素の数本かまたは全部のある部分のみをコーティングし得る。
【0023】
上記鋼は、パーライト状、フェライト状、オーステナイト状、ベイナイト状またはマルテンサイト状ミクロ構造またはこれらのミクロ構造の混合物に由来するミクロ構造を示し得る。
【0024】
好ましくは、上記鋼は、0.2質量%〜1質量%、より好ましくは0.3質量%〜0.7質量%の範囲の炭素分を含む。好ましくは、上記鋼は、0.3質量%〜0.7質量%の範囲のマンガン分、0.1質量%〜0.3質量%の範囲のケイ素分、多くとも0.045質量%までの範囲のリン分 (限界値を包含する)、多くとも0.045質量%までの範囲のイオウ分 (限界値を包含する)、および多くとも0.008質量%までの範囲の窒素分 (限界値を包含する)含む。必要に応じて、上記鋼は、多くとも、0.1質量% (限界値を包含する)、好ましくは0.05質量% (限界値を包含する)、より好ましくは0.02質量% (限界値を包含する)のバナジウムおよび/またはモリブデンを含む。
【0025】
1つの実施態様においては、使用する鋼は、0.5質量%未満、好ましくは多くとも0.05質量% (限界値を包含する)、より好ましくは多くとも0.02質量% (限界値を包含する)のクロムを含む。
【0026】
“ステンレス”スチールを使用するもう1つの実施態様においては、このスチールは、少なくとも0.5質量% (限界値を包含する)、好ましくは少なくとも5質量% (限界値を包含する)、より好ましくは少なくとも15質量% (限界値を包含する)のクロムを含む。
【0027】
好ましくは、上記スチールは、少なくとも2質量% (限界値を包含する)、好ましくは少なくとも4質量% (限界値を包含する)、より好ましくは少なくとも6質量%のニッケルを含む。
【0028】
もう1つの実施態様においては、上記接着層は、上記または各スレッド状補強要素の鋼コアの少なくとも1部を直接コーティングしている金属コーティングの層を直接コーティングする。上記金属コーティングの層の金属は、鋼以外の金属製である。
【0029】
好ましくは、上記または各スレッド状補強要素の鋼コアの少なくとも1部を直接コーティングしている上記金属コーティングの層の金属は、亜鉛、銅およびこれらの金属の合金から選ばれる。これらの金属の豪気の例としては、黄銅が挙げられる。
【0030】
もう1つの実施態様においては、上記接着層は、上記または各スレッド状補強要素の鋼コアの少なくとも1部をコーティングしている非金属中間接着層を直接コーティングする。この実施態様の別の形態においては、上記非金属中間接着層は、上記または各スレッド状補強要素の鋼コアの少なくとも1部を直接コーティングしている上記金属コーティングの層の少なくとも1部を直接コーティングする。上記非金属中間層は、一般に接着プライマーとして知られており、上記接着組成物を含む接着層と共同して、上記被覆鋼補強要素のゴムマトリックスへの接着を改良するのを可能にする。そのような接着プライマーは、ある種の織物繊維(ポリエステル、例えばPET,アラミドまたはアラミド/ナイロンの各繊維)のプレサイジングにおいて当業者が一般的に使用しているプライマーである。例えば、エポキシ系プライマー、特に、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルをベースとするプライマーを使用し得る。また、ブロックトイソシアネートをベースとするプライマーも使用し得る。
【0031】
対象物を“直接”コーティングする層または対象物を“直接”コーティングするコーティングとは、上記層または上記コーティングが、何ら他の対象物、特に、もう1つの層またはもう12つのコーティングが上記2者の間に挿入されないで、上記対照物と接触していることを意味するものと理解されたい。
【0032】
上記接着組成物は、上記したように、少なくとも1種(即ち、1種以上)の芳香族アルデヒドと少なくとも1種(即ち、1種以上)のポリフェノールとをベースとする少なくとも1種(即ち、1種以上)のフェノール/アルデヒド樹脂、および少なくとも1種(即ち、1種以上)の不飽和エラストマーラテックスを含む;これらの構成成分を、以下で詳細に説明する。
【0033】
I. 1. 芳香族アルデヒド
上記フェノール/アルデヒド樹脂の第1の構成成分は、少なくとも1個のアルデヒド官能基を担持し、少なくとも1個の芳香核を含む芳香族アルデヒドである。
【0034】
好ましい実施態様によれば、上記芳香核は、アルデヒド官能基を担持する。
好ましくは、上記芳香族アルデヒドは、少なくとも2個のアルデヒド官能基を担持する。好ましくは、上記芳香族アルデヒドの芳香核は、2個のアルデヒド官能基を担持する;2個のアルデヒド官能基は、上記芳香核上のオルソ、メタまたはパラ位置に存在し得る。
【0035】
好ましくは、上記芳香族アルデヒドの芳香核はベンゼン核である、幾つかの実施態様においては、この芳香族アルデヒドは、1,2−ベンゼンジカルボキサルデヒド、1,3−ベンゼンジカルボキサルデヒド、1,4−ベンゼンジカルボキサルデヒド、2−ヒドロキシベンゼン−1,3,5−トリカルボアルデヒドおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。
【0036】
さらにより好ましくは、使用する芳香族アルデヒドは、テレフタルデヒドとも称し、注記すれば、下記の拡大化学式を有する1,4−ベンゼンジカルボキサルデヒドである:
【化1】
(I)
【0037】
他の実施態様においては、上記芳香族アルデヒドは、下記の式(A)を示す:
【化2】
(A)
(式中、Xは、N、SまたはOを含み;Rは、−Hまたは−CHOを示す)。
【0038】
そのような芳香族アルデヒドは、再生可能資源に由来し、石油には由来しない。上記芳香族アルデヒドは、例えば、バイオ系資源またはバイオ系資源の形質転換生成物に由来する。
【0039】
好ましくは、上記芳香族アルデヒドは、下記の式(A’)を有する:
【化3】
(A’)
好ましい実施態様によれば、XはOを示す。
【0040】
一般式(A)の芳香族アルデヒドの別の形態においては、XはOを示し、Rは−Hを示す。使用する芳香族アルデヒドは、その場合、下記の式(B1)を有する:
【化4】
(B1)
【0041】
一般式(A’)の芳香族アルデヒドの別の形態においては、XはOを示し、Rは−Hを示す。使用する芳香族アルデヒドは、その場合、フルフルアルデヒドであり、下記の式(B’1)を有する:
【化5】
(B'1)
【0042】
一般式(A)の芳香族アルデヒドのもう1つの別の形態においては、XはOを示し、Rは−CHOを示す。使用する芳香族アルデヒドは、その場合、下記の式(B2)を有する:
【化6】
(B2)
【0043】
一般式(A’)の芳香族アルデヒドのもう1つの別の形態においては、XはOを示し、Rは−CHOを示す。使用する芳香族アルデヒドは、その場合、2,5−フランジカルボキサルデヒドであり、下記の式(B’2)を有する:
【化7】
(B'2)
もう1つの実施態様においては、XはNを示す。
【0044】
一般式(A)の芳香族アルデヒドの別の形態においては、XはNHを示す。使用する芳香族アルデヒドは、下記の式(C1)を有する:
【化8】
(C1)
【0045】
一般式(A’)の芳香族アルデヒドの別の形態においては、XはNHを示す。使用する芳香族アルデヒドは、下記の式(C’1)を有する:
【化9】
(C'1)
【0046】
好ましくは、Rは、式(C’1)の芳香族アルデヒドのもう1つ別の形態においては、−CHOを示し;得られる芳香族アルデヒドは、その場合、2,5−1H−ピロールジカルボキサルデヒドである。
【0047】
一般式(A)の芳香族アルデヒドの別の形態においては、XはNR1を示し、R1はアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリールまたはシクロアルキル基を示す。使用する芳香族アルデヒドは、下記の式(C2)を有する:
【化10】
(C2)
もう1つの実施態様においては、XはSを含む。
【0048】
一般式(A)の芳香族アルデヒドの別の形態においては、XはSを示す。使用する芳香族アルデヒドは、下記の式(D1)を有する:
【化11】
(D1)
【0049】
一般式(A’)の芳香族アルデヒドの別の形態においては、XはSを示す。使用する芳香族アルデヒドは、下記の式(D’1)を有する:
【化12】
(D'1)
【0050】
好ましくは、Rは、式(D’1)の芳香族アルデヒドのもう1つ別の形態においては、−CHOを示し、その場合、2,5−チオフェンジカルボキサルデヒドである。
【0051】
一般式(A)の芳香族アルデヒドのもう1つ別の形態においては、XはSR2を示し、R2はアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリールまたはシクロアルキル基を示す。使用する芳香族アルデヒドは、下記の式(D2)を有する:
【化13】
(D2)
【0052】
一般式(A)の芳香族アルデヒドのさらにもう1つの別の形態においては、XはR3−S−R2を示し、R2およびR3はアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリールまたはシクロアルキル基を示す。使用する芳香族アルデヒドは、下記の式(D3)を有する:
【化14】
(D3)
【0053】
一般式(A)の芳香族アルデヒドのさらにもう1つの別の形態においては、XはS=Oを示す。使用する芳香族アルデヒドは、下記の式(D4)を示す:
【化15】
(D4)
【0054】
一般式(A)の芳香族アルデヒドのさらにもう1つの別の形態においては、XはO=S=Oを示す。使用する芳香族アルデヒドは、下記の式(D5)を有する:
【化16】
(D5)
【0055】
上述した種々の実施態様のうちでは、XがNH、SまたはOを示す実施態様および別の形態が好ましい。これらの実施態様および別の形態においては、−Hまたは−CHOを示すR、好ましくは−CHOを示すRを有することが可能である。これらの実施態様および別の形態においては、Rは、好ましくは、5位置に存在し、−CHO基は、好ましくは、上記芳香核の2位置に存在する(一般式(A’))。
【0056】
上記フェノール/アルデヒド樹脂は、上記で示した化合物の混合物、特に、フルフルアルデヒドと2,5−フランジカルボキサルデヒドの混合物を含み得る。
好ましくは、上記フェノール/アルデヒド樹脂が1個の芳香族アルデヒドをベースとする場合、上記組成物は、ホルムアルデヒドを含まない。
【0057】
上記フェノール/アルデヒド樹脂が複数のアルデヒドをベースとする場合、そのうちの少なくとも1個は芳香族アルデヒドであり、各アルデヒドは、好ましくは、ホルムアルデヒドと異なる。上記組成物は、その場合も、好ましくはホルムアルデヒドを含まない。
【0058】
換言すれば、また、好ましくは、上記フェノール/アルデヒド樹脂の上記または各アルデヒドは、ホルムアルデヒドと異なる。
用語“ホルムアルデヒドを含まない”とは、1種以上のアルデヒドの総質量に基づくホルムアルデヒドの質量含有量が厳格に1%未満であることを意味するものと理解されたい。
【0059】
幾つかの実施態様においては、上記組成物は、ホルムアルデヒドを含み得る。好ましくは、上記組成物は、1種以上のアルデヒドの総質量に基づき、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下の含有量のホルムアルデヒドを含む。
【0060】
I. 2. ポリフェノール
上記フェノール/アルデヒド樹脂の第2の構成成分は、1個以上の芳香核を含むポリフェノールである。
【0061】
1個のみの芳香核を含むポリフェノールの場合、その芳香核は、2個または3個のヒドロキシル官能基を互いに対して(2個の官能基の場合)またはそれぞれに対して(3個の官能基の場合)メタ位置において担持し、その芳香核の残余部は、定義すれば、置換されていない:このことは、上記芳香核の残余の他の炭素原子(ヒドロキシル官能基を担持する炭素原子以外の炭素原子)が1個の水素原子を担持していること意味するものと理解されたい。
【0062】
1個のみの芳香核を含むポリフェノールの好ましい例としては、注記すれば、下記の拡大式を有するレゾルシノールを挙げることができる:
【化17】
(II)
【0063】
1個のみの芳香核を含むさらにより好ましい例としては、注記すれば、下記の拡大式を有するフロログルシノールを挙げることができる:
【化18】
(III)
【0064】
複数個(2個以上)の芳香核を含むポリフェノールの場合、それらの芳香核のうちの少なくとも2つは、各々、2個または3個のヒドロキシル官能基を互いに対して(2個の官能基の場合)またはそれぞれに対して(3個の官能基の場合)メタ位置において担持しており、これらのヒドロキシル官能基の少なくとも1個に対する2つの位置オルソは置換されていないと理解されたい;このことは、ヒドロキシル化されている炭素原子(即ち、ヒドロキシル官能基を担持する)の両側に位置する2個の炭素原子は1個の水素原子を担持していることを意味するものと理解されたい。
【0065】
好ましい例としては、上記ポリフェノール分子が複数個の芳香核を含む場合、これらの芳香核の少なくとも2個は、同一または異なるものであって、下記の一般式のものから選択する:
【化19】
(式中、Z
1およびZ
2符号は、同一または異なるものであって、Z
1およびZ
2符号が同じ芳香核上に複数存在する場合、原子(例えば、炭素、イオウまたは酸素)または定義すれば少なくとも2価の、少なくともこれら2個の芳香核をポリフェノール分子の残余部に結合させる結合基を示す)。
【0066】
本発明の特定の好ましい実施態様によれば、上記ポリフェノールは、例えば、注記すれば、15個の炭素原子をベースとし、3個の炭素原子によって結合した2個のベンゼン環によって形成された構造に特徴を有するフラボノイドである。さらに詳細には、使用するフラボノイドは、“モリン”とも称し、下記の式(V)を有する2’,4’,3,5,7−ペンタヒドロキシフラボンである:
【化20】
(V)
【0067】
この化合物は、2個の芳香核(それぞれ上記の式IV−cおよびIV−dを有する)を含むポリフェノールであり、これら芳香核の各々が、実際に、2個のヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位置に担持し、これら2個のヒドロキシル官能基の少なくとも1個に対する2つの位置オルソは置換されていないことに注目されたい。
【0068】
本発明のもう1つの特定の好ましい実施態様によれば、上記ポリフェノールは、例えば、2,4,6,3’,5’−ビフェニルペントールとも称し、下記の拡大式を有するフロログルシドである:
【化21】
(VI)
【0069】
この化合物は、2個の芳香核(それぞれ上記の式IV−aおよびIV−bを有する)を含むポリフェノールであり、これら芳香核の各々が、実際に、2個のヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位置に担持し(適切な場合は、一方が2個担持し、他方が3個担持する)、これら2個のヒドロキシル官能基の少なくとも1個に対する2つの位置オルソは置換されていないことに注目されたい。
【0070】
本発明のさらにもう1つの特定の好ましい実施態様によれば、上記ポリフェノールは、例えば、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルスルフィドであり、下記の拡大式を有する:
【化22】
(VII)
【0071】
好ましい実施態様においては、上記ポリフェノールは、フロログルシノール(III)、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルスルフィド(VII)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。
【0072】
I. 3. 不飽和エラストマーラテックス
ラテックスは、水溶液中懸濁液中のエラストマー(1種以上)の微小粒子の安定な分散体であることを思い起こすべきである。
【0073】
不飽和(即ち、炭素・炭素二重結合を担持する)エラストマーラテックス、特に、ジエンエラストマーラテックスは、当業者にとって周知である。
【0074】
本発明によれば、上記接着組成物は、少なくとも1種(即ち、1種以上)の不飽和エラストマーラテックスを含む。このラテックスの不飽和エラストマーは、好ましくはジエンエラストマー、さらに好ましくはポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、ポリイソプレン、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーである。上記不飽和エラストマーは、さらにより好ましくは、ブタジエンコポリマー、ビニルピリジン/スチレン/ブタジエンターポリマー、天然ゴムおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。
【0075】
そのような不飽和エラストマーラテックスは、上記樹脂中に分散されて、イオウとの定着点(anchoring points)を形成し、そのようにして、上記補強要素が埋込まれるようにする上記接着層とゴムマトリックス間の良好な結合をもたらす。また、そのようなラテックスは、比較的柔軟で且つ可撓性であるという利点を示し、上記接着層が分裂することなく、上記補強要素の変形を伴うことも可能である。従って、上記複合体の製造中、上記接着組成物によってコーティングした補強要素は上記マトリックスに接着し、被覆補強要素の周りで滑り落ちることはない。
【0076】
I. 4. 添加剤 (接着組成物の製造)
上記接着組成物および/またはそのフェノール/アルデヒド樹脂および/またはその出発不飽和エラストマーラテックスは、勿論、接着組成物用の通常の添加剤、例えば、通常のRFL接着剤において使用する添加剤の全部または1部を含み得る;例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化アンモニウムのような塩基類;着色剤;カーボンブラックまたはシリカのような充填剤;酸化防止剤または他の安定剤が挙げられる。
【0077】
典型的には、最初の製造段階において、樹脂自体を、上記ポリフェノールおよび上記芳香族アルデヒドを好ましくは9と13の間、より好ましくは10と12の間のpHを有する水酸化ナトリウム水溶液のような塩基性溶媒中に徐々に混合することによって調製する。混ぜ合せた構成成分を、使用温度および目標とする特定の組成によって変動し得る時間、例えば、1分と6時間の間で変動し得る時間、15℃と90℃の間、好ましくは20℃と60℃の間の温度で攪拌しながら混合する。
【0078】
そのようにして事前縮合させたフェノール/アルデヒド樹脂は、一般に、水で希釈して水性接着組成物を得る。その後、不飽和エラストマーの1種または複数種(複数存在する場合)のラテックスを添加して、RFL接着剤分野の技術の当業者にとっては周知である一般的手順に従い水性接着組成物を調製する。
【0079】
例えば、上記接着組成物の各構成成分を次の順序で添加する:水、存在し得る場合の水溶性添加剤(例えば、アンモニア水)、1種または複数種のラテックス(任意の順序)、および上記フェノール/アルデヒド樹脂(希釈物)。混ぜ合せ物を、攪拌により、1〜30分間、例えば23℃で混合する。
【0080】
最終製造段階においては、上記接着組成物は、一般に、最終的に使用する前に、周囲温度(23℃)で典型的には1〜数時間で、実際には数日間でさえ変動し得る成熟時間の間保存する。
【0081】
そのようにして調製した最終接着組成物においては、乾燥物としてのフェノール/アルデヒド樹脂の含有量は、上記接着組成物乾燥物の、好ましくは5質量%と60質量%の間、より好ましくは10質量%と30質量%の間の量である。
【0082】
一方、不飽和エラストマー(即ち、1種または数種のラテックス乾燥物)の含有量は、上記接着組成物乾燥物の、好ましくは40質量%と95質量%の間、より好ましくは70質量%と90質量%の間の量である。
【0083】
ポリフェノール対芳香族アルデヒドの質量比は、好ましくは0.1と3の間、より好ましくは0.25と2の間の比である。
上記樹脂乾燥物対上記ラテックス乾燥物の質量比は、好ましくは0.1と2.0の間、より好ましくは0.15と1.0の間の比である。
上記接着剤の水分含有量は、好ましくは60%と90%の間、より好ましくは60%と85%の間である。
【0084】
有利には、上記接着組成物は、ゼラチンを含む。ゼラチンは、上記スレッド状補強要素の脱湿(dewetting)を遅らせ、ひいては青銅処理鋼補強要素とゴムマトリックス間のより良好な接着剤を確保するのを可能にする。用語“ゼラチン”は、コラーゲンの完全または部分的加水分解からの生成物を含むタンパク質の任意の混合物を意味するものと理解されたい。
【0085】
II. 被覆補強要素の製造方法
上記の方法においては、上記鋼補強要素の少なくとも1部を、上述した接着組成物を含む接着層でコーティングする。
【0086】
このコーティング段階は、任意の適切な方法に従って、特に、例えば、スプレー塗布、浸漬による含浸、浴中での前進法または薄膜または超薄膜の付着ための他の等価の方法或いはこれらの方法の1種以上の組合せのような任意の既知のコーティング方法によって実施し得る。
【0087】
1キログラムの未被覆スレッド状鋼補強要素上に付着させる上記接着組成物の乾燥物の質量は、好ましくは2gと100gの間、より好ましくは2gと50gの間、さらにより好ましくは3gと15gの間の量である。
【0088】
上記鋼補強要素を上記接着組成物でコーティングする上記段階の後、被覆した青銅処理鋼補強要素を、あり得る溶媒または水を除去する目的の、好ましくは110℃と260℃の間、より好ましくは130℃と250℃の間の温度での第1の加熱処理に、例えば、典型的には数メートルの長さを有するトンネル炉、例えば、繊維材料をRFL接着剤でサイジングした後の加熱処理に一般的に使用するトンネル炉に通すことによって供する。
【0089】
そのようにして得られた無水被覆鋼補強要素を、その後、第2の加熱処理に供して、好ましくは上記のようなトンネル炉内で空気中にて実施する上記接着組成物の架橋を終わらせる。処理温度は、好ましくは150℃と350℃の間の温度である。処理時間は、状況に応じて、数秒から数分まで(例えば、10秒と10分の間の時間)である。
【0090】
当業者であれば、適切な場合、上記の加熱処理の温度と時間を、本発明の実施のための特定の条件、特に、上記接着組成物の正確な性質または鋼の性質に応じて、如何にして調整するかは承知しているであろう。特に、当業者であれば、上記処理温度と時間を走査して、連続近似法により、本発明の各特定の実施態様において、最良の接着結果をもたらす操作条件を探索する利点を有しているであろう。
【0091】
各スレッド状補強要素をコーティングする上記接着組成物からなる層の厚さは、5〜100μm、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜35μmの範囲の値の間隔内である。
【0092】
上記接着組成物を含む接着層によって上記鋼補強要素をコーティングする段階の前に、各スレッド状補強要素は、複数の処理段階、例えば、スケール除去、湿式または乾式延伸または加熱処理の段階に供し得る。これらの処理段階の例は、特に文献US20100170624号、US5 535 612号またはJP2000219938号に記載されている。
【0093】
III. 複合体
上述したように、本発明は、上記の接着組成物の、上記鋼補強要素をゴムマトリックスに接着させるための、本発明のもう1つの主題を構成するそのような要素で補強したゴム複合体の形成のための使用にも関する。
【0094】
このゴム複合体は、少なくとも下記の段階を含む方法に従って製造し得る:
・第1段階において、本発明に従う上記被覆鋼補強要素の少なくとも1部をゴムマトリックス(即ち、エラストマー、これら2つの用語は同義である)と結合させて上記被覆青銅処理鋼補強要素で補強したゴム複合体を形成する;
・その後、第2段階において、そのようにして形成した複合体を好ましくは圧力下に硬化させることによって架橋する。
【0095】
そのように、本発明は、上記の方法によって得ることができ、上記鋼補強要素に上記接着組成物をベースとする接着界面によって結合させたゴムマトリックス、特に、ジエンエラストマーマトリックスを含む任意のタイプのゴム複合体に該当する。
【0096】
上記複合体のジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエン/スチレンコポリマー (SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー (BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー (SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー (SBIR)およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。好ましい実施態様は、“イソプレン”エラストマー、即ち、イソプレンホモポリマーまたはコポリマー、換言すれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、イソプレンの各種コポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーを使用することからなる。イソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴムまたはシス−1,4タイプの合成ポリイソプレンである。
【0097】
IV. タイヤ
上記で説明している被覆鋼補強要素および複合体は、全てのタイプの車両、特に、乗用車または産業用車両、例えば、大型車両用のタイヤを補強するのに有利に使用し得る。
【0098】
例えば、一葉の添付図面は、大型タイプの車両用の本発明に従うタイヤの半径断面を極めて図式的に(具体的な縮尺に従っていない)示している。
【0099】
このタイヤ1は、クラウン補強材即ちベルト6によって補強されたクラウン2、2枚の側壁3および2本のビード4を含み、これらのビード4の各々は、ビードスレッド5によって補強されている。クラウン2は、この略図においては示していないトレッドが取付けられている。カーカス補強材7は、532各ビード4内の2本のビードスレッド5の周りに巻付けられており、この補強材7の上返し8は、例えば、タイヤ1の外側に向って位置しており、この場合、その車輪リム9上に取付けて示している。カーカス補強材7は、それ自体知られている通り、例えば金属の“ラジアル”コードによって補強されている少なくとも1枚のプライからなる、即ち、これらのコードは、実質的に互いに平行に配置されて一方のビードから他方のビードに延びて円周正中面(2本のビード4の中間に位置しクラウン補強材6の中央を通るタイヤの回転軸に対して垂直の面)と80°と90°の間の角度をなしている。
【0100】
本発明のこのタイヤ1は、例えば、少なくともクラウン補強材6および/またはそのカーカス補強材7が本発明に従う被覆鋼補強要素または複合体を含むことに特徴を有する。本発明のもう1つの実施可能な実施例によれば、その例は、例えば、全体または1部において、本発明に従う被覆鋼補強要素からなり得るビードスレッド5である。
【0101】
勿論、本発明は、上記で説明した物体、即ち、生状態(硬化または加硫前)および硬化状態(硬化後)双方の、上記被覆鋼補強要素およびこの補強要素を含むタイヤのようなゴム複合体に関する。
【実施例】
【0102】
V. 本発明の実施例および比較試験
これらの試験は、下記のことを実証する:
・本発明に従う接着組成物でコーティングした鋼補強要素のゴムマトリックスに対する接着が、通常のRFL接着剤でコーティングしたこれら同じ鋼補強要素と比較して大いに改良されていること;および、
・上記接着組成物は、鋼補強要素の任意のゴムマトリックス、特に、非アクリル系ゴムマトリックスに対する接着を、ハロゲン化ポリマーまたは金属酸化物を使用することなく可能にすること(EP2 006 341号に反して)。
【0103】
このために、以下でC−1.1〜C−1.7で示す7通りの接着組成物を上記で説明したようにして調製した。これら組成物の配合(質量パーセントとして表す)は、下記の表1に示している。この表に記載した量は、接着組成物(即ち、構成成分+水)の総計100質量部に対する乾燥状態の構成成分の量である。
【0104】
各接着組成物C−1.1〜C−1.7は芳香族アルデヒドをベースとし、このアルデヒドの核は2個のアルデヒド官能基を担持する。
【0105】
組成物C−1.1〜C−1.6のアルデヒドは、1,2−ベンゼンジカルボキサルデヒド、1,3−ベンゼンジカルボキサルデヒド、1,4−ベンゼンジカルボキサルデヒド、2−ヒドロキシベンゼン−1,3,5−トリカルボアルデヒドおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選択している。適切な場合、上記アルデヒドは、1,2−ベンゼンジカルボキサルデヒド、1,3−ベンゼンジカルボキサルデヒドおよび1,4−ベンゼンジカルボキサルデヒドからなる群から選択している。
【0106】
組成物C−1.7のアルデヒドは、フルフルアルデヒド、2,5−フランジカルボキサルデヒドおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選択する。適切な場合、上記アルデヒドは、2,5−フランジカルボキサルデヒドである。
【0107】
組成物C−1.1〜C−1.7のポリフェノールは、1個以上の芳香核を含み、以下のことを理解されたい:
・1個のみの芳香核の場合(フロログルシノールおよびレゾルシノールの場合)、その芳香核は、2個または3個のヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位置において担持し、その芳香核の残余部は置換されてなく:
・複数個の芳香核の場合(2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルスルフィド、フロログルシドおよびモリンの場合)、それらの芳香核のうちの少なくとも2個は、2個または3個のヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位置において担持し、これらのヒドロキシル官能基の少なくとも1個に対する2つの位置オルソは置換されていないと理解されたい。
【0108】
これらの接着組成物C−1.1〜C−1.7は、少なくとも1種の不飽和エラストマーラテックス、この場合は、複数種エラストマーラテックス:天然ゴム(NR)ラテックス、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)ラテックスおよびビニルピリジン/スチレン/ブタジエン(VP−SBR)ラテックスのブレンドである。
さらに、各組成物C−1.1〜C−1.7は、ゼラチンを含む。
【0109】
これらの接着組成物を、ホルムアルデヒドとレゾルシノール(事前縮合樹脂SFR1524の形の)を含む最新技術の既知の組成物C−1.0と比較した。
【0110】
上記ゴムマトリックスと鋼補強要素環の結合の質を、1.75mmに等しい直径を有する1本のスレッド状補強要素からなる青銅処理鋼補強要素を加硫ゴムマトリックスから引抜くのに必要な力を測定する試験によって判定する。
【0111】
スレッド状補強要素のコアの鋼を金属コーティングで直接コーティングしている鋼補強要素を比較する。使用する鋼は、0.5質量%未満のクロムと2質量%未満のニッケルを含む標準鋼である。上記金属コーティング層の金属は、亜鉛、銅およびこれら金属の合金から選ばれる。この場合、試験する金属コーティングの金属は、亜鉛および黄銅である。50質量%と75質量%の間の動と25質量%と50質量%の亜鉛を含む。適切な場合、使用する黄銅は、63質量%の動と37質量%の亜鉛を含む。
この場合、試験する各スレッド状補強要素は、非金属中間接着層を含まない。
【0112】
上記ゴムマトリックスのゴム組成物は、タイヤの金属プライのカレンダー加工において使用することができ、天然ゴム、カーボンブラックおよび標準添加剤をベースとする通常の組成物である。適切な場合、上記ゴム組成物は、100phrの天然ゴム、70phrのシリーズ300カーボンブラック、1.5phrのN−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、1phrのコバルト塩、0.9phrのステアリン酸、6phrの不溶性分子状イオウ、0.8phrのN−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルファミドファミドおよび7.5phrのZnOを含む。
【0113】
上記スレッド状補強要素を、試験する各接着組成物でコーティングした。さらに詳細には、上記金属コーティング層を、試験する各接着組成物で直接コーティングし、次いで、そのようにしてコーティングした鋼補強要素を180℃の乾燥炉内で30秒間乾燥させた。その後、接着組成物を、上記被覆黄銅処理鋼補強要素を240℃の処理炉に30秒間通すことによって架橋させた。その後、集合体をゴムマトリックスと一緒に加硫加熱処理によって硬化させることにより一体化して、下記で説明するような複合体の試験標本を作成した。
【0114】
さらに詳細には、上記加硫ゴムマトリックスは、200mm×12.5mmを計測し7mmの厚さを有し、硬化前に互いに対して貼り合せた2枚のシートからなるゴムブロックである(得られるブロックの厚さはその場合14mmである)。このブロックの製作においては、上記被覆鋼補強要素(合計15片)を生状態の上記2枚のシート間に等間隔で離れて且つこれらシートの両側で突出させたまま捉え込む;上記被覆鋼補強要素の末端は、その後の引張り試験のためには十分な長さを有する。上記被覆鋼補強要素を含むブロックを、その後、適切なモールド内に入れ、次いで、圧力下に硬化させる。硬化温度および硬化時間は、意図する試験条件に合せ、当業者の裁量に委ねる;例えば、本件の場合、上記ブロックは、160℃で20分間硬化させる。
【0115】
硬化を終えると、そのように加硫ブロックと15片の被覆鋼補強要素からなる試験標本を適切な引張試験装置の顎間に入れて、各断片を個々に所定の速度および所定の温度で試験することを可能にする(例えば、本件においては、100mm/分および23℃で)。
【0116】
接着レベルは、上記被覆鋼補強要素を試験標本から引抜くための“引抜き”力(F
maxで示す)を測定することによって特性決定する。対照試験標本T (通常のRFL接着剤の使用に相当する)の任意に100に設定した値よりも高い値が改良された結果、即ち、対照試験標本T引抜き力よりも高い引抜き力を示す。各試験標本において実施した試験結果は、下記の表1に要約している。試験を実施しなかった場合は、試験しなかったための記号“TN”で示している。
【0117】
接着組成物C−1.1〜C−1.7でコーティングした各鋼補強要素は特に高く且つ当業者にとって予期に反する引抜き力F
maxを示すことが、その引抜き力F
maxが、組成物C−1.0 (特定のゴム、ハロゲン化ポリマーおよび金属酸化物のマトリックスは使用していないが)の通常のRFL接着剤と対比して極めてはるかに増強されていることから判明している。
【0118】
本発明に関連する他の利点のうちでは、上記接着組成物は、ホルムアルデヒドを含ませないことが可能であることに注目すべきである;その使用は、接着組成物においては、このタイプの化合物に関するヨーロッパ法規の最近の変更のために、削減すること、実際には最終的に排除することが望ましい。さらに、ホルムアルデヒドは石油に由来する化合物であり、その使用は枯渇性が増大していることからできる限り回避することが望ましい。
【0119】
本発明は、上述した実施態様に限定されない。
また、各々が鋼コアを含む複数本のスレッド状補強要素をコーティングすること想定することも可能である。1つの実施態様においては、上記スレッド状補強要素を一緒に集合させ、その後、上記スレッド状補強要素の鋼コアを上記接着組成物で集合的にコーティングする。もう1つの実施態様においては、各スレッド状補強要素の鋼コアを上記接着組成物で個々にコーティングして、その後、これらスレッド状補強要素を一緒に集合させる。
【0120】
また、上記スレッド状補強要素の鋼コアまたは上記金属コーティング層を直接コーティングしている非金属中間接着層を含む被覆鋼補強要素を使用することを想定することも可能であり、上記接着組成物の総跛、その場合、この非金属中間接着層または上記金属コーティング層を直接コーティングする。
【0121】
表1
(1) 1,2−ベンゼンジカルボキサルデヒド (ABCR社から;純度 98%);
(2) 1,3−ベンゼンジカルボキサルデヒド (ABCR社から;純度 98%);
(3) 1,4−ベンゼンジカルボキサルデヒド (ABCR社から;純度 98%);
(4) 2,5−フランジカルボキサルデヒド (Aldrich社から;純度 97%);
(5) ホルムアルデヒド (Caldic社から;36%に希釈);
(6) フロログルシノール (Alfa Aesar社から;純度 99%);
(7) 2,2',4,4'−テトラヒドロキシジフェニルスルフィド (Alfa Aesar社から;純度 98%);
(8) フロログルシド (Alfa Aesar社から;純度 95%);
(9) モリン (Fluka社から);
(10) レゾルシノール (Sumitomo社から;純度 99.5%);
(11) 事前縮合樹脂SRF 1524 (Schenectady社から;75%に希釈);
(12) NRラテックス (Bee tec社からの"Trang Latex";61質量%に希釈);
(13) SBRラテックス (Jubilant社からの"Encord-201";41質量%に希釈);
(14) ビニルピリジン/スチレン/ブタジエンラテックス (Eliokem社からの"VP 106S";41%に希釈);
(15) 水酸化ナトリウム (Aldrich社から;30%に希釈);
(16) ゼラチン (Aldrich社からの牛皮由来のゼラチン);
(17) アンモニア水 (Aldrich社から;21%に希釈)。