【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態はターボ機械向けの環状燃焼チャンバを提供するが、燃焼チャンバは、軸方向、径方向、および方位方向を呈し、第一環状壁および第二環状壁を備え、各壁は環状燃焼チャンバの容積の少なくとも一部を画定し、第一および第二壁は相補的取付要素を持ち、第一壁は少なくとも1つの第一貫通穴を持ち、その一方で第二壁は少なくとも1つの第二貫通穴を持ち、燃焼チャンバはまた、第一穴および第二穴を備える1対の穴の中にはめ込まれる少なくとも1つのピンを備え、前記ピンは第一および第二壁の取付具を係止する。
【0006】
第一環状壁は第一取付要素を有する一方で第二環状壁は第二取付要素を有し、第一および第二取付要素は、燃焼チャンバの軸方向および/または方位方向への取付けによって協働できるように互いにそれぞれ補完的であることは、理解される。言い換えると、第一および第二取付要素は、燃焼チャンバの軸方向および/または方位方向に沿って互いに対してこれらを移動させることによって、取付けまたは互いに係合される。
【0007】
燃焼チャンバは2つ以上の環状壁を有してもよい。2つ以上の壁があると、複数の環状壁のアセンブリはピンによって係止されることが可能である。たとえば、単一のピンで、少なくとも3つ(またはそれ以上)の異なる壁のアセンブリを互いに係止することができる。別の例では、ピンは2つの壁、すなわち第一壁および第二壁のアセンブリを互いに係止してもよく、その一方で別のピンは第一または第二壁と第三壁とのアセンブリを互いに係止する。
【0008】
第一壁は1つ以上の第一穴を持ち、第二壁は2つ以上の第二穴を持つことが、理解される。当然ながら、変形例において、第二穴と同じ数の第一穴があってもよく、各第一穴は第二穴と対になっている(またはその逆も可)。以下、および反対に指定されない限り、用語「第一穴」および「第二穴」は、1つの第一穴のみまたはすべての第一穴、あるいは1つの第二穴のみまたはすべての第二穴の、いずれかを意味する。
【0009】
燃焼チャンバは1つ以上のピンを有する。以下、および反対に指定されない限り、用語「ピン」は、1つのピンのみまたはすべてのピンを意味するために使用される。一例として、ピンは、1対の穴を形成する第一穴および第二穴の中に同時にはめ込まれるように構成された、ロッドまたはクリップであってもよい。ピンは、第一穴および第二穴を備える対の中に、間隙を伴ってまたは伴わずにはめ込まれる。このようなピンは、たとえば並進的におよび/または燃焼チャンバの軸方向の周りで回転的に、1つ以上の自由度に対して第一および第二壁をともに結合するように、そうは言ってもすべての自由度を妨げるものではないが、1対の穴の中に取り付けるかまたはこれと係合することによってのみ協働する。このようなピンは、従来のボルトの使用と比較して、クラックが生じるリスクを回避するか、またはこれを著しく低減することを、可能にする。このため、このようなピンは、従来技術の燃焼チャンバで行われるように、2つの壁を互いに溶接および/または圧着する必要性を全く伴わずに、燃焼チャンバの壁が組み立てられることを可能にする。
【0010】
当然ながら、燃焼チャンバが複数対の第一および第二穴を持つとき、前記燃焼チャンバは複数のピンを持ってもよく、各ピンは1対の穴の中にはめ込まれる。変形例において、ピンが1対の穴の中に設けられるとき、この対の穴は単一のピンを受容する。変形例において、第一および第二穴の対と同じ数のピンがある。変形例において、ピンは類似である。
【0011】
ピンは、第一および第二壁の間の軸方向および/または方位方向の相対運動を妨げる。このため、ピンが対の穴の中にはめ込まれるとき、第一および第二壁の間の取付具は係止される。したがって、第一および第二壁を互いに分離するためには、これは第一および第二穴対からピンを引き抜くことによって開始する必要がある。
【0012】
このため、燃焼チャンバは、従来技術の燃焼チャンバと比較して容易に、迅速に、および低コストで、そして溶接作業を必要とせずに、組み立てられることが可能である。さらに、このような燃焼チャンバは非常に容易に分解されることが可能であり、これにより保守作業を容易にする。
【0013】
いくつかの実施形態において、1対の穴の第一穴および第二穴は、実質的に互いに対向して設けられている。
【0014】
用語「対向」は、第一穴が第二穴と軸方向および方位方向において一致しており、同じ角度位置を呈することを意味するために用いられることもまた、理解される。言い換えると、1対の穴の第一および第二穴は、全く正反対なわけではない。このような対向構成は、単純なピンの使用を可能にし、組み立てを容易かつ有効にすることができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、ピンはインジェクターによって形成されている。
【0016】
当然ながら、燃焼チャンバは、その他の要素によって形成されたその他のピンを持ってもよい。変形例において、燃焼チャンバは複数のピンを持ってもよく、各ピンはインジェクターによって形成されている。
【0017】
インジェクターをピンとして使用することで燃焼チャンバの重量削減をもたらすが、ここで重量削減は、航空分野で使用されるターボ機械における主要な関心事である。これはまた、燃焼チャンバの構造も簡素化し、これは組み立ておよび/または分解を容易にするのに貢献することもできる。さらに、インジェクターをピンとして使用することにより、燃焼チャンバをこうして直接的にターボ機械の中に固定および位置決めすることも可能である。
【0018】
いくつかの実施形態において、ピンは実質的に径方向に延在する。
【0019】
用語「実質的に径方向」は、径方向平面と平行で、燃焼チャンバの軸に対して60°から120°の範囲内の角度を形成する方向を意味するために、使用される。
【0020】
ピンのこのような配向は、燃焼チャンバの組み立てを容易にするのに役立ち、取付具の係止ははるかに満足のいくものである。
【0021】
いくつかの実施形態において、相補的取付要素は、第一および第二壁のうちの1つの壁から延在する複数の軸方向の舌部と、第一および第二壁のうちの他方の壁に設けられた複数の開口と、を備える、前記開口は舌部を受容する。このような状況下で、相補的取付要素は、軸方向取付けのための相補的要素を形成する。
【0022】
第一壁および/または第二壁が1つ以上の舌部を有することは、理解される。このため、第二壁がいかなる舌部も持たないときは第一壁は舌部を持ってもよく、第二壁が舌部を持つときは第一壁は舌部を持たなくてもよく、あるいは第二壁が複数の第二舌部を持つときは、実際に第一壁は複数の第一舌部を持ってもよい。
【0023】
他方の壁は、舌部を受容し、軸方向取付けによってこれらと協働することが可能なように、舌部に対向して配置された開口を有する。このため、第一壁のみが舌部を持つ場合には、第二壁は開口を持ち、第二壁のみが舌部を持つ場合には、第一壁は開口を持ち、その一方で第一壁が第二舌部を持って第二壁が第二舌部を持つ場合には、第一壁は第二舌部を受容するための第一開口を持ち、第二壁は第一舌部を受容するための第二開口を持つ。
【0024】
変形例において、舌部および開口は、方位方向に規則的に分布(または離間)している。このため、隣り合う舌部および隣り合う開口の間の角度間隔が等しいことは、理解される。このような分布は、相補的取付要素の回転対称度を取得可能とし、これにより、壁同士の取付けおよびひいては燃焼チャンバの組み立ての作業を容易にする。
【0025】
いくつかの実施形態において、第一および第二壁のうちの壁の1つの穴は、突起ブレードに設けられている。
【0026】
穴が第一穴である場合にはブレードは第一壁から突起する部分であること、および穴が第二穴である場合にはブレードは第二壁から突起する部分であることは、理解される。このような構成は、ブレードの近傍の燃焼チャンバの全体的なサイズを縮小しながら、壁の重量を低減することを可能にする。さらに、このような構成は、穴の位置を燃焼チャンバ内で十分に制御される特定の位置に制限することを可能にし、これにより漏れのいかなるリスクも低減するが、このような漏れは、燃焼チャンバの性能の観点から見て不利である。
【0027】
いくつかの実施形態において、第一穴および第二穴のうちの別の穴の近傍に配置された突起は、スナップ嵌めによってブレードと協働するように、前記他方の穴の軸と実質的に平行に延在する。
【0028】
たとえば、穴の近傍は、穴の直径(または最大寸法)の3倍を超えて穴の周りに延在する壁の環状部分を含む。たとえば、突起は、たとえばダイスタンプ法によって、または壁に固定された個別の部品によってなど、壁上に直接加工された突起によって形成されている。
【0029】
スナップ嵌め(または圧着)は、相互嵌合および弾性変形(一般的には、たとえばブレードの、またはアセンブリに包含されるすべての部品を変形させることによる、局所的な変形)によって、2つの部分を互いに組み付ける技術である。2つの部分がスナップ嵌め位置で嵌合されると、これらは一般的に初期形状に戻り、もはや弾性変形を示さない(またはより軽度の弾性変形を示す)。2つの部分がスナップ嵌め位置で嵌合されると、これらは分離方向(嵌合方向の反対の方向)への前記部品間の相互運動に対抗するように、または実際に妨げるように、互いに協働する。スナップ嵌め位置において、2つの部分はまた、スナップ嵌め位置を超えて嵌合を延在させるための方向へのこれらの間の相互運動に対抗するかまたは実際に妨げるようなやり方で協働することも、可能である。
【0030】
このようなスナップ嵌め位置は、ピンを使用することによる取付具の係止に先立って、第一および第二壁が取付位置に保持されることを可能にする。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記他方の穴の境界は、スナップ嵌めによってブレードと協働するように、前記他方の穴の軸と実質的に平行に延在する突起を形成する。
【0032】
いくつかの実施形態において、第一壁および第二壁のうちの壁の1つは、第一壁および第二壁のうちの他方の壁と当接して協働する軸方向環状ショルダを持つ。
【0033】
このようなショルダは、第一および第二壁の間に接合面を形成することを可能にし、これにより、燃焼チャンバの中からの漏れは最小化されるかまたはゼロまで減少する。
【0034】
いくつかの実施形態において、燃焼チャンバは、燃焼チャンバの容積を画定する2つの環状壁のみ、すなわち第一環状壁および第二環状壁を有する。
【0035】
このため第一および第二壁は、燃焼チャンバの容積をこれらだけで画定するのに十分である。このような燃焼チャンバは、特に少ない数の壁を持ち、これにより、はるかに容易に、迅速に、および安価に組み立てることができるようにする。さらに、保守目的音ための分解作業もまた容易になる。さらに、このように少数の壁を持つ燃焼チャンバは、様々な壁の間の接合部の近傍で、特に低い漏れのリスクを呈する。
【0036】
一実施形態は、本明細書に記載される実施形態のいずれかによる燃焼チャンバを含む、ターボ機械を提供する。
【0037】
本発明およびその利点は、非限定例として提示される本発明の様々な実施形態の以下の詳細な説明を読むと、より良く理解されることが可能である。説明は、以下の添付図面を参照する。