特許第6553073号(P6553073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553073ブレード用保護エッジおよび前記エッジの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553073
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】ブレード用保護エッジおよび前記エッジの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/26 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   C25D11/26 302
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-553868(P2016-553868)
(86)(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公表番号】特表2017-509792(P2017-509792A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】FR2015050439
(87)【国際公開番号】WO2015128575
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2018年1月29日
(31)【優先権主張番号】1451482
(32)【優先日】2014年2月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コティノ,ジェレミー・クリスチャン・アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ビオラ,アラン
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0010663(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0058791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 11/00−11/38
F01D 1/00−11/24
F02C 1/00− 9/58
F23R 3/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極酸化可能な金属で形成された保護エッジ(30)が提供され、保護エッジが相互に反対側に位置する外面と内面とを有し、外面がブレードの空力表面を画定するように構成され、内面がブレードの本体上に接着されて、ブレードの前縁を形成するように構成され、
前記保護エッジ(30)は、保護エッジの内面と外面の両方に施されるマイクロアーク酸化電解処理を経る、ブレード用前縁を形成することが意図された保護エッジの製造方法。
【請求項2】
保護エッジ(30)が、ブレード(10)の空力表面を部分的に画定する外面(31)を有し、外面(31)がマイクロアーク酸化電解処理の後に研磨される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
保護エッジ(30)がブレード本体(9)に接着される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
マイクロアーク酸化電解処理には、
保護エッジ(30)を電解質バス(3)に浸すステップであって、保護エッジが第1の電極を形成する、ステップと、
第2の電極(4)を電解質バスに浸すステップと、
第1および第2の電極に電圧を印加するステップと、を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
電圧が印加されると、強度がパルスを有する電流が加えられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第2の電極(4)が、保護エッジの内面(32)に面した電解質バス(3)内に配置された、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
保護エッジ(30)がチタンまたはチタン合金で形成された、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ブレード本体(9)が有機マトリックス複合材料で形成された、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を使用して製造された保護エッジ。
【請求項10】
請求項9に記載の保護エッジと、有機マトリックス複合材料で形成された本体(9)を備え、保護エッジ(30)が接着により本体(9)に固定され、ブレード(10)の前縁(16)または後縁(18)を画定する、ブレード。
【請求項11】
ブレード(10)が航空学上のターボマシンのファンブレードである、請求項10に記載のブレード。
【請求項12】
請求項10に記載のブレード(10)を備えたターボマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレード用保護エッジおよび前記エッジの製造方法に関する。保護エッジは、具体的には、タービンエンジンブレード用保護エッジであってもよい。
【背景技術】
【0002】
航空学の分野、より具体的には、航空機のターボジェットエンジンの分野では、ターボジェットエンジンの構成要素の質量を低減することは、絶えざる関心事である。この関心事は、有機マトリックスを有する複合材料で形成されたファンまたは整流ブレードの開発に繋がってきた。これら複合材料のブレードは金属製のブレードよりも軽量である。
【0003】
複合材料のブレードの前縁は、通常、腐食および可能性のある衝撃(鳥、グリット、氷、砂など)の影響を非常に受けやすく、保護なしで使用することができない。したがって、金属またはプラスチックで形成され、ブレードの本体に接着された保護エッジの使用が一般的である。このため、この保護エッジは、ブレードの前縁を画定する。たとえば、特許文献国際公開第2013/021141号にそのような保護エッジが記載されている。
【0004】
保護エッジのブレードの本体上への接着は重要な態様である。この接着を向上させるために、既知の一方法によれば、特定の数の中間層、たとえばポリウレタンフィルムまたは接着プライマが、本体とブレードの強化縁部との間に配置される。別の方法によれば、接着される表面は、たとえば研磨またはスクラッチにより機械的に準備がされる。十分ではあるが、これら方法は製造にあまりに時間がかかり、複雑で、かつ/または費用がかかると考えられる。さらに、上述の中間層は、環境に対し有害であるとされ、国際機関(ヨーロッパのREACHシステムなど)による廃止の手続き中である特定の物質を含む場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/021141号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、効果的にブレードを保護する一方、ブレード本体への固定が容易である新しいタイプの保護エッジが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、陽極酸化可能な金属で形成された保護エッジが提供され、この保護エッジがマイクロアーク酸化電解処理を経る、ブレード用保護エッジの製造方法に関する。
【0008】
マイクロアーク酸化電解処理は、それ自体として知られる表面処理技術であり、基板を電解質バスに浸すことと、この基板を、処理の最初の時点で基板表面上に最初に形成された絶縁酸化物層の絶縁破壊電圧に達するために、高電圧で陽極酸化することとを含む。次いで、マイクロアークが開始され、基板の浸された表面にわたって移動する。この技術により、一方では基板の構成要素で形成される酸化物層の形成、他方では電解質バス内に最初に存在する化学種の酸化物層内の混入を通して、特定の構造および特定の物理化学的特性を有する、基板表面上のコーティングを形成することが可能になる。処理の終了時には、得られたコーティングは、コーティングの中心部に緻密で硬質な構造を有し、コーティングの表面に多孔構造を有する。この技術は、この文献では、「マイクロアークプラズマ酸化処理」、またはよりシンプルに「マイクロアーク酸化処理」とも呼ばれる。
【0009】
マイクロアーク酸化は、従来の陽極酸化処理方法とは大きく異なるものである。特に、酸化物層の絶縁破壊電圧に達するのに必要な大量のエネルギを伴う点で、マイクロアーク酸化は従来の陽極酸化処理方法と異なる。
【0010】
マイクロアーク酸化によって表面コーティングを生成することは、従来の陽極酸化処理によって得られるコーティングの微細構造とは全く異なる特定の微細構造を有する特定のコーティングの形成に繋がる。
【0011】
マイクロアーク酸化では、コーティングを形成するために金属を投入することは不要である。形成されたコーティングは、マイクロアーク酸化処理を経る基板表面上に存在する金属(または金属種)の酸化によって得られる。
【0012】
提案の用途では、保護エッジが基板として使用され、マイクロアーク酸化処理により、保護エッジの表面上に、一方では中心部が緻密かつ硬質であり、他方では表面が多孔質であるコーティングを形成することが可能になる。このコーティングの硬度により、ブレードを腐食またはあらゆる衝撃から効果的に保護することが可能になり、一方、コーティングの表面多孔性により、使用される接着剤の良好な食いつきを提供することで、特にコーティングが接着剤により固定される場合の、コーティングの固定が容易になるとともに向上される。
【0013】
この保護エッジは、具体的には、チタン、チタン合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金で形成され得る。保護エッジがチタンまたはチタン合金で形成される場合、保護エッジ上に形成されるコーティングは、主として酸化チタンで形成される。
【0014】
ブレードの保護を確実にするために、保護エッジは、保護エッジをブレード本体上に接着することが可能であり、それにより、ブレードの前縁または後縁を形成するように構成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、保護エッジは、相互に反対側に位置する外面と内面とを有し、外面は部分的にブレードの空力表面を画定し、内面はブレードの本体上に固定されるように構成されている。
【0016】
本発明に係る方法を実行する間、マイクロアーク酸化処理は通常、保護エッジの外部の表面全体、したがって、外面と内面との両方に施される。
【0017】
しかし、表面特性の観点での要請は、ブレードの保護エッジのこれら2つの表面では異なっている。
【0018】
外面では、ブレードの保護エッジは、好ましくは、空力上の理由から非常に平滑であることと、大気中に存在する粒子の衝撃に耐えるために高い耐摩耗性を有することとの両方を満たさなければならない。
【0019】
マイクロアーク酸化によって得られる表面コーティングは、概して一定の粗さを有する。したがって、そのようなコーティングは先天的に、ブレードの前縁または後縁を構成しなければならない表面には全く適するようには見えない。
【0020】
あるいは、少なくともこのコーティングが部品の接着を可能にするために必要な粗さを有する場合、この粗さは概して、コーティングを空力上の要求と矛盾させる傾向にあり、この空力上の要求は、それどころか、表面が特に平滑であることを要求する。
【0021】
したがって、一実施形態では、有利には、保護エッジの外面がマイクロアーク酸化処理の後に研磨される。したがって、この研磨により、外面が、一定のレベルの空力上の要求に合う粗さのレベルを達成することを可能にする。
【0022】
この研磨は特に、保護エッジの外面の粗さのレベルが2μm未満、好ましくは0.8μm未満であるように行われ得る。
【0023】
さらに、研磨の後に、表面上では、コーティングの表面が緻密で硬質な構造になる。有利には、コーティングのこの部分が特に高い耐摩耗性を有する。
【0024】
逆に、保護エッジの内面では、マイクロアーク酸化によって形成されたコーティングの表面層は、表面が多孔性であり、その表面のブレード上への接着にもっぱら適切な内面の粗さ特性を有する。したがって、この表面層は、ブレードの本体上への保護エッジの物理化学的接着(たとえば接着剤による接着)に好ましいものとするために保持され得る。具体的には、内面は、マイクロアーク酸化処理の後に研磨されない場合があることが好ましい。処理の間に使用される電解質バスの構成も、内面の多孔質表面が、物理化学的接着に好ましい特定の化学種を組み入れるように選択され得る。
【0025】
マイクロアーク酸化ステップの後に、任意選択的に研磨ステップが続き、保護エッジがブレード本体上に接着される。したがって、保護エッジはブレードの前縁または後縁を形成する。
【0026】
特定の実施形態では、マイクロアーク酸化電解処理は、
保護エッジを電解質バスに浸すステップであって、保護エッジが第1の電極を形成する、ステップと、
第2の電極(対電極とも呼ばれる)を電解質バスに浸すステップと、
第1および第2の電極に電圧を印加するステップと、を含む。
【0027】
好ましくは、この電圧を印加する際には電流が加えられる。換言すると、マイクロアーク酸化操作は具体的には、加えられる電流の強度を調整することによって制御される。
【0028】
好ましくは、印加される強度は、特に保護エッジがチタンまたはチタン合金で形成される場合に、パルスを有する。好ましくは、これらパルスの周波数は50ヘルツ未満である。
【0029】
第2の電極は、補強物の内面に面する電解質バス内に配置され得、概して外面よりも処理に好ましくない形状を有する内面の処理を促進するようになっている。通常は、補強物の内面は凹状になっており(すなわち空洞化されており)、一方外面は凸状になっている(すなわち、反っている)。
【0030】
補強物は、ブレードの本体をまたいで配置されるように、ほぼU状の断面を有し得る。この補強物は、保護エッジのもっとも厚い部分を構成するベースを有し得る。このベースの外面は、ブレードの前縁(または後縁)を画定し得る。このベースは、ブレードの圧力側と吸引側とにそれぞれ位置する2つの翼側に沿って延び得る。これら翼側の外面はそれぞれ部分的に、ブレードの圧力側面と吸引側面を画定する。断面では、これら翼側のプロファイルはベースから離れるにつれて薄くなっていく場合がある。保護エッジは、ブレード本体に全体が、またはその高さの一部が固定され得る。
【0031】
本発明は、上述の方法を使用して製造された保護エッジ、および、そのような保護エッジを備えたブレードにも関する。本ブレードは、(たとえば、航空機のターボジェットエンジンの)ターボマシンブレード、具体的には、航空学上のターボマシンファンブレードであってもよい。本ブレードはまた、プロペラブレードまたはベーンであってもよい。
【0032】
本ブレードは、有機マトリックス複合材料で形成された本体、または中心部分を備えてもよい。本ブレードは、たとえば、織物材料のドレープ形成によって得られた複合ブレードであってもよい。さらなる例としては、使用される複合材料は、織物カーボン/プラスチック繊維と、樹脂性マトリックス(たとえばエポキシ樹脂、ビスマレイミド、またはシアン酸エステル)のアセンブリで形成することができ、このアセンブリは、たとえばRTM(レジンインジェクション成型)タイプの真空樹脂注入方法を使用した成型によって形成される。
【0033】
保護エッジは、具体的には接着により、中心部に固定され得、ブレードの前縁または後縁を画定し得る。
【0034】
本発明の上述の特徴および利点、ならびの他の特徴および利点は、本発明の実施形態の以下の詳細な説明を読むことで明らかになる。この詳細な説明では、添付の図面を参照する。
【0035】
添付図面は概略的であり、縮尺は一定ではない。添付図面の主な目的は、本発明の原理を説明することである。
【0036】
これら図面では、1つの図から別の図にわたって、同様の要素(または要素の部分)は同じ参照符号を使用して識別されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、保護エッジを備えたブレードの側面図である。
図2図2は、断面切断平面A−Aに沿った断面図の、図1のブレードの一部分の図である。
図3図3は、マイクロアーク酸化電解処理設備の全体図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に適用される強度パルスを示す概略図である。
図5図5は、基板上のマイクロアーク酸化電解処理を使用して形成された例示的コーティングの構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1および図2は、ターボマシンエンジンブレード10を示している。このブレードは、航空機のターボジェットエンジンのファンブレードであってもよい。このブレード10は、ターボジェットエンジンを通って流れる流体流の中に配置されることが意図されている。上流と下流は、この流体の通常の流れ方向に対して定められる。
【0039】
ブレードの空力表面12は、上流から下流に、前縁16と後縁18の間を、シャンク22とアペックス24との間の長手方向20に沿って延びる。ブレード10は、そのシャンク22により、いくつかのブレードと共有する回転支持ディスクに固定されている。
【0040】
吸引面13と圧力面11は、前縁16を後縁18に接続するブレードの空力表面12の側面である。
【0041】
ブレード10は、接着により保護エッジ30が固定される本体9を備えている。この保護エッジ30は、ブレード10の空力表面12の高さ全体にわたって、長手方向20に沿って延びる。保護エッジ30は、相互に反対側に位置する外面31と内面32とを有する。保護エッジ30の外面31は、前縁16ならびに、吸引面13および圧力面11の一部を画定する。吸引面13および圧力面11の残りの部分ならびに後縁18は、ブレード9の本体によって画定される。保護エッジ30の内面32は、本体9と接触している。
【0042】
保護エッジ30は、ほぼU状の断面を有し、本体9のエッジをまたいで配置されている。この補強物は、補強物のもっとも厚い部分であり、前縁16を画定するベース39を有する。このベース39は、ブレード10の圧力面側と吸引面側とにそれぞれ位置する2つのサイド翼側35と37に沿って延びる。翼側35、37は、断面(図2参照)において、後縁18に向かって薄くなっていくプロファイルを有する。
【0043】
図3は、マイクロアーク酸化電解処理設備1の例を概略的に示している。この設備は、電解質バス3または電解質を含むタンク2備えている。たとえば、この電解質バスは、アルカリ金属(たとえば、カリウムまたはナトリウム)の水酸化物の水溶液、およびアルカリ金属の酸素酸塩で形成されている。金属または合金で形成され、一方では半導体特性を有し、他方では「対電極」と呼ばれる少なくとも1つの第2の電極4を有する、第1の電極を形成する基板5は、電解質バス3に浸される。この設備は、電流供給源6、電圧源7、および、処理シークエンスに応じた様々なパラメータを制御および監視する制御手段(たとえば、マイクロコンピュータ8)をも備えている。制御手段8は特に、電解質バスを通って流れる電流の強度Iを調整することを可能にする。この設備は、基板5を構成する金属を変質させることにより、その基板5上にコーティングを形成することを可能にする。 そのような設備の全体の操作および制御は、従来技術から既知であり、それらは本明細書にはさらに詳細には記載しない。
【0044】
提案の方法では、基板5は、保護エッジ30によって形成されている。たとえば、保護エッジ30は、チタンまたはチタン合金で形成されている。この保護エッジ30上にコーティングを形成するための設備1の使用レンジは、たとえば以下の通りである。
【0045】
電流密度:20から400A/dm
電圧:200から1000V、より具体的には400から800V
強度パルス周波数:1から500Hz、好ましくは10から500Hz
電荷比q/q:0.4から1.8(qは伝達される正電荷であり、qは伝達される負電荷である)
処理期間:10から90分
バスの温度:5から40℃、好ましくは10から40℃
バスのpH:6から14
バスの伝導性:100から1000mS/m
電解質バス3は、鉱物質が除去された水と、0.1から50g/lの組成の、水酸化物、ケイ酸塩、アルミン酸塩、リン酸塩、チオ硫酸塩、タングステン酸塩、チオシアン酸塩、またはバナジウム酸塩などの様々な形態のカリウムおよび/またはナトリウム塩の混合物を含み得る。
【0046】
保護エッジ30の内面32の処理を促進するために、第2の電極すなわち対電極4を、その内面32に面して配置することができ、具体的には、保護エッジ30の翼側35と翼側37との間に配置され、かつ/または第1の電極5と同様の形状を有し得る。図3の例では、2つの対電極4が使用され、保護エッジ30の両側に、保護エッジ30に非常に近接して配置されている。
【0047】
以下の手法が、マイクロアーク酸化処理の効果を増大させるために用いられる。
【0048】
一方では、処理を施している間、超音波が電解質バス3内に拡散される。
【0049】
他方では、基板5と電極4との間に適用される強度は直流の強度ではなく、可変交流の強度であり、期間Tの時間間隔で印加される周期パルスを有する。この期間Tは、20msより大であるように、たとえば30msに選択され、それにより、パルスの周波数は50Hz未満のままである。
【0050】
強度Iの時間tの関数としての変化量が図4に示されている。
【0051】
各パルスは両極性であり、
0から正の平坦強度I+に強度が上昇する期間T1の強度上昇傾斜部と、
強度がI+に等しいままの期間T2の平坦域と、I+から0に強度が低下する期間T3の強度減少傾斜部と、
強度が0に等しいままの期間T4の平坦域と、
0から負の平坦強度I−に強度が低下する期間T5の強度低下傾斜部と、
強度がI−に等しいままの期間T6の平坦域と、
I−から0に強度が上昇する期間T7の強度上昇傾斜部と、を含んでいる。
【0052】
1つのパルスが完了するとすぐに、新しいパルスが印加される。
【0053】
正の強度平坦域の強度I+と、負の強度平坦域の強度I−とは、必ずしも等しくはない。
【0054】
正の平坦域と負の平坦域とは、印加される強度がゼロである短時間の期間T4によって分けられている。
【0055】
図5は、概略的に断面図で、基板5上にマイクロアーク酸化電解処理を使用して形成された例示的コーティング50の構造を示している。この例では、コーティング50は、多孔性表面構造52と、多孔層52と基板5との間に配置された緻密層51とを有している。緻密層51は、多孔層52よりも緻密で硬質である。図示のように、多孔層52は比較的高い多孔性と、粗い外側表面53を有している。
【0056】
マイクロアークの電解処理の後に、具体的には、摩擦仕上げにより、または慣習的な研磨用の、1cmあたり80から4000粒に粒子サイズが小さくなる複数の炭化ケイ素ディスクにより、もしくはその均等物により、保護エッジ30の外面31が研磨され得る。たとえば、外面31の所望の粗さレベルは約0.6ミクロンである場合があり、これは空力上の要求の一定のレベルに対応する。この研磨ステップは、図4のコーティング50の場合、破線Dで図示するように、多孔層52を除去することに相当する。したがって、緻密層51は表面上にあるとともに露出している。
【0057】
一方、保護エッジの内面32は加工されていない場合がある。すなわち、研磨されていない場合がある。図4のコーティング50の場合、このことは、図示の複数層構造を保持することに相当する。
【0058】
したがって、保護エッジ30が図4に示すタイプのコーティング50を有する場合、保護エッジ30の外面31は破線Dによって画定された緻密層51の外面によって画定され、一方、保護エッジ30の内面32は多孔層52の外面53によって画定される。
【0059】
したがって、保護層30はブレード10の保護を向上させるとともに、空力上の要求の一定のレベルに対応する、硬質で平滑な外面31と、ブレード10の本体9への保護エッジ30の接着を促進させる、多孔性で粗い内面32とを有する。
【0060】
本明細書に記載の例または実施形態は、単に例として、非限定的に提供されたものであり、当業者であれば、この詳細な説明に照らして、これら実施形態または例を、本発明の範囲内にあるままで、容易に変更できるか、他の実施形態または例を検討することができる。
【0061】
さらに、これら例または実施形態の様々な特徴は、単独で、または相互に組み合わせて使用することができる。それらが組み合わせられる場合、これら特徴は上述のように、または別様に組み合わせられるが、本発明はこの詳細な説明に記載の特定の組合せに限定されない。特に、別様に指定されていない限り、1つの実施形態または例に関連して記載した特徴は、類似の方式で別の実施形態または例に適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5