【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、陽極酸化可能な金属で形成された保護エッジが提供され、この保護エッジがマイクロアーク酸化電解処理を経る、ブレード用保護エッジの製造方法に関する。
【0008】
マイクロアーク酸化電解処理は、それ自体として知られる表面処理技術であり、基板を電解質バスに浸すことと、この基板を、処理の最初の時点で基板表面上に最初に形成された絶縁酸化物層の絶縁破壊電圧に達するために、高電圧で陽極酸化することとを含む。次いで、マイクロアークが開始され、基板の浸された表面にわたって移動する。この技術により、一方では基板の構成要素で形成される酸化物層の形成、他方では電解質バス内に最初に存在する化学種の酸化物層内の混入を通して、特定の構造および特定の物理化学的特性を有する、基板表面上のコーティングを形成することが可能になる。処理の終了時には、得られたコーティングは、コーティングの中心部に緻密で硬質な構造を有し、コーティングの表面に多孔構造を有する。この技術は、この文献では、「マイクロアークプラズマ酸化処理」、またはよりシンプルに「マイクロアーク酸化処理」とも呼ばれる。
【0009】
マイクロアーク酸化は、従来の陽極酸化処理方法とは大きく異なるものである。特に、酸化物層の絶縁破壊電圧に達するのに必要な大量のエネルギを伴う点で、マイクロアーク酸化は従来の陽極酸化処理方法と異なる。
【0010】
マイクロアーク酸化によって表面コーティングを生成することは、従来の陽極酸化処理によって得られるコーティングの微細構造とは全く異なる特定の微細構造を有する特定のコーティングの形成に繋がる。
【0011】
マイクロアーク酸化では、コーティングを形成するために金属を投入することは不要である。形成されたコーティングは、マイクロアーク酸化処理を経る基板表面上に存在する金属(または金属種)の酸化によって得られる。
【0012】
提案の用途では、保護エッジが基板として使用され、マイクロアーク酸化処理により、保護エッジの表面上に、一方では中心部が緻密かつ硬質であり、他方では表面が多孔質であるコーティングを形成することが可能になる。このコーティングの硬度により、ブレードを腐食またはあらゆる衝撃から効果的に保護することが可能になり、一方、コーティングの表面多孔性により、使用される接着剤の良好な食いつきを提供することで、特にコーティングが接着剤により固定される場合の、コーティングの固定が容易になるとともに向上される。
【0013】
この保護エッジは、具体的には、チタン、チタン合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金で形成され得る。保護エッジがチタンまたはチタン合金で形成される場合、保護エッジ上に形成されるコーティングは、主として酸化チタンで形成される。
【0014】
ブレードの保護を確実にするために、保護エッジは、保護エッジをブレード本体上に接着することが可能であり、それにより、ブレードの前縁または後縁を形成するように構成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、保護エッジは、相互に反対側に位置する外面と内面とを有し、外面は部分的にブレードの空力表面を画定し、内面はブレードの本体上に固定されるように構成されている。
【0016】
本発明に係る方法を実行する間、マイクロアーク酸化処理は通常、保護エッジの外部の表面全体、したがって、外面と内面との両方に施される。
【0017】
しかし、表面特性の観点での要請は、ブレードの保護エッジのこれら2つの表面では異なっている。
【0018】
外面では、ブレードの保護エッジは、好ましくは、空力上の理由から非常に平滑であることと、大気中に存在する粒子の衝撃に耐えるために高い耐摩耗性を有することとの両方を満たさなければならない。
【0019】
マイクロアーク酸化によって得られる表面コーティングは、概して一定の粗さを有する。したがって、そのようなコーティングは先天的に、ブレードの前縁または後縁を構成しなければならない表面には全く適するようには見えない。
【0020】
あるいは、少なくともこのコーティングが部品の接着を可能にするために必要な粗さを有する場合、この粗さは概して、コーティングを空力上の要求と矛盾させる傾向にあり、この空力上の要求は、それどころか、表面が特に平滑であることを要求する。
【0021】
したがって、一実施形態では、有利には、保護エッジの外面がマイクロアーク酸化処理の後に研磨される。したがって、この研磨により、外面が、一定のレベルの空力上の要求に合う粗さのレベルを達成することを可能にする。
【0022】
この研磨は特に、保護エッジの外面の粗さのレベルが2μm未満、好ましくは0.8μm未満であるように行われ得る。
【0023】
さらに、研磨の後に、表面上では、コーティングの表面が緻密で硬質な構造になる。有利には、コーティングのこの部分が特に高い耐摩耗性を有する。
【0024】
逆に、保護エッジの内面では、マイクロアーク酸化によって形成されたコーティングの表面層は、表面が多孔性であり、その表面のブレード上への接着にもっぱら適切な内面の粗さ特性を有する。したがって、この表面層は、ブレードの本体上への保護エッジの物理化学的接着(たとえば接着剤による接着)に好ましいものとするために保持され得る。具体的には、内面は、マイクロアーク酸化処理の後に研磨されない場合があることが好ましい。処理の間に使用される電解質バスの構成も、内面の多孔質表面が、物理化学的接着に好ましい特定の化学種を組み入れるように選択され得る。
【0025】
マイクロアーク酸化ステップの後に、任意選択的に研磨ステップが続き、保護エッジがブレード本体上に接着される。したがって、保護エッジはブレードの前縁または後縁を形成する。
【0026】
特定の実施形態では、マイクロアーク酸化電解処理は、
保護エッジを電解質バスに浸すステップであって、保護エッジが第1の電極を形成する、ステップと、
第2の電極(対電極とも呼ばれる)を電解質バスに浸すステップと、
第1および第2の電極に電圧を印加するステップと、を含む。
【0027】
好ましくは、この電圧を印加する際には電流が加えられる。換言すると、マイクロアーク酸化操作は具体的には、加えられる電流の強度を調整することによって制御される。
【0028】
好ましくは、印加される強度は、特に保護エッジがチタンまたはチタン合金で形成される場合に、パルスを有する。好ましくは、これらパルスの周波数は50ヘルツ未満である。
【0029】
第2の電極は、補強物の内面に面する電解質バス内に配置され得、概して外面よりも処理に好ましくない形状を有する内面の処理を促進するようになっている。通常は、補強物の内面は凹状になっており(すなわち空洞化されており)、一方外面は凸状になっている(すなわち、反っている)。
【0030】
補強物は、ブレードの本体をまたいで配置されるように、ほぼU状の断面を有し得る。この補強物は、保護エッジのもっとも厚い部分を構成するベースを有し得る。このベースの外面は、ブレードの前縁(または後縁)を画定し得る。このベースは、ブレードの圧力側と吸引側とにそれぞれ位置する2つの翼側に沿って延び得る。これら翼側の外面はそれぞれ部分的に、ブレードの圧力側面と吸引側面を画定する。断面では、これら翼側のプロファイルはベースから離れるにつれて薄くなっていく場合がある。保護エッジは、ブレード本体に全体が、またはその高さの一部が固定され得る。
【0031】
本発明は、上述の方法を使用して製造された保護エッジ、および、そのような保護エッジを備えたブレードにも関する。本ブレードは、(たとえば、航空機のターボジェットエンジンの)ターボマシンブレード、具体的には、航空学上のターボマシンファンブレードであってもよい。本ブレードはまた、プロペラブレードまたはベーンであってもよい。
【0032】
本ブレードは、有機マトリックス複合材料で形成された本体、または中心部分を備えてもよい。本ブレードは、たとえば、織物材料のドレープ形成によって得られた複合ブレードであってもよい。さらなる例としては、使用される複合材料は、織物カーボン/プラスチック繊維と、樹脂性マトリックス(たとえばエポキシ樹脂、ビスマレイミド、またはシアン酸エステル)のアセンブリで形成することができ、このアセンブリは、たとえばRTM(レジンインジェクション成型)タイプの真空樹脂注入方法を使用した成型によって形成される。
【0033】
保護エッジは、具体的には接着により、中心部に固定され得、ブレードの前縁または後縁を画定し得る。
【0034】
本発明の上述の特徴および利点、ならびの他の特徴および利点は、本発明の実施形態の以下の詳細な説明を読むことで明らかになる。この詳細な説明では、添付の図面を参照する。
【0035】
添付図面は概略的であり、縮尺は一定ではない。添付図面の主な目的は、本発明の原理を説明することである。
【0036】
これら図面では、1つの図から別の図にわたって、同様の要素(または要素の部分)は同じ参照符号を使用して識別されている。