(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)水に溶解させたときに塩基性を示し、沸点が48℃以上である含窒素化合物(ここで、前記窒素含有化合物は、ポリビニルアミン、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリ(アリルアミン−co−ジアリルアミン)、およびポリエチレンイミン)からなる群から選択される)と、
(B)スルホ基またはカルボキシル基を有するアニオン性界面活性剤(ここで、前記アニオン性界面活性剤は、ヘキサデシルスルホン酸、ラウリルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホン酸、ラウリン酸、およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩、またはトリエタノールアミン塩からなる群から選択される)と、
(C)水と
を含んでなることを特徴とする、レジストパターン処理用組成物であって、
前記アニオン性界面活性剤の含有率が、組成物の全質量を基準として50〜100,000ppmである、レジストパターン処理用組成物。
前記含窒素化合物が、ポリビニルアミン、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、およびポリ(アリルアミン−co−ジアリルアミン)からなる群から選択される、請求項1に記載のレジストパターン処理用組成物。
前記添加剤が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、およびテトラメチルアンモニウムからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
前記添加剤が、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、アルキルセロソルブアセテート、プロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、およびテトラヒドロフランからなる群から選択される有機溶媒である、請求項6に記載の組成物。
殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、防カビ剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化学物質をさらに含んでなり、前記化学物質の含有率が、組成物の全質量を基準として、1質量%以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、防カビ剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化学物質をさらに含んでなり、前記化学物質の含有率が、組成物の全質量を基準として、0.001質量%以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について詳細に説明すると以下の通りである。
【0011】
[レジストパターン処理用組成物]
本発明によるレジストパターン処理用組成物は、特定の含窒素化合物と、スルホ基またはカルボキシル基を有するアニオン性界面活性剤と、水とを含んでなるものである。この組成物は、フォトリソグラフィー技術によって形成されたパターンを有するレジスト、特に乾燥後のレジストに適用して、その表面粗さを改良することができるものである。この組成物に含まれる各成分について説明すると以下の通りである。
【0012】
(A)含窒素化合物
本発明において用いられる含窒素化合物は、水に溶解させたときに塩基性を示し、かつ沸点が48℃以上であるという特徴を有している。
【0013】
本発明における含窒素化合物において、そこに含まれる窒素は塩基性基であるアミノ基やアンモニウム基の一部を構成することが多い。したがって、その化合物がその他に強酸基を含まない場合には、含窒素化合物は塩基性化合物となる場合が多い。したがって、含窒素化合物は塩基性を打ち消すような強酸基、例えばスルホ基などを含まないことが好ましい。なお、本発明において「水に溶解させたときに塩基性を示す」というのは、具体的には、22℃における水溶液のpHが7を超えることを意味する。
【0014】
また、本発明における含窒素化合物は、その沸点が48℃以上である。沸点が低いと処理液を用いた処理を行う際に、例えば塗布工程などで含窒素化合物が揮発してしまい、十分な効果が発揮されない。含窒素化合物の沸点は、50℃以上であることが好ましく、53℃以上であることがより好ましい。
【0015】
本発明において用いられる含窒素化合物は、塩基性であることおよび一定以上の沸点を有するものであれば特に限定されない。そのうち、好ましいものは下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるものである。
【0016】
【化1】
(式中、R
1、R
2、およびR
3はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜10の飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、ここで、前記炭化水素鎖を構成する炭素原子に結合した水素が、−OH、−F、=Oまたは−NH
2に置換されていてもよく、前記炭化水素鎖の途中に、−(CO)−、−(COO)−、−(CONH)−、−O−、−NH−、または−N=を含んでいてもよく、
R
1、R
2、およびR
3のうちの二つが結合して環状構造を形成していてもよく、 R
1、R
2、およびR
3のうちの一つの末端が、炭素数20,000以下の重合体主鎖に結合していてもよく、
ただし、R
1、R
2、およびR
3に含まれる炭素数の合計が3以上である)、
【0017】
【化2】
(式中、R
4、R
5、R
6、およびR
7はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜10、好ましくは1〜4の飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、ここで、前記炭化水素鎖を構成する炭素原子に結合した水素が、−OH、−F、=Oまたは−NH
2に置換されていてもよく、前記炭化水素鎖の途中に、−(CO)−、−(COO)−、−(CONH)−、−O−、−NH−、または−N=を含んでいてもよく、
R
4、R
5、R
6、およびR
7のうちの二つが結合して環状構造を形成していてもよく、
R
4、R
5、R
6、およびR
7のすべては同時に水素ではないことが好ましく、R
4、R
5、R
6、およびR
7のうち3個以上が炭化水素鎖であることがより好ましく、R
4、R
5、R
6、およびR
7のすべてが炭化水素鎖であることが最も好ましく、 Lは炭素数1〜10、好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4の炭化水素鎖である)、
および
【化3】
(式中、R
8、R
9、R
10、およびR
11はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜10の飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、ここで、前記炭化水素鎖を構成する炭素原子に結合した水素が、−OH、−F、=Oまたは−NH
2に置換されていてもよく、前記炭化水素鎖の途中に、−(CO)−、−(COO)−、−(CONH)−、−O−、−NH−、または−N=を含んでいてもよく、
R
8、R
9、R
10、およびR
11のうちの二つが結合して環状構造を形成していてもよく、
ただし、R
8、R
9、R
10、およびR
11のすべては同時に水素ではなく、 L
’は炭素数1〜10、好ましくは1〜5の炭化水素鎖であり、
mは1〜1000、好ましくは1〜50の繰り返し数を表す数である)
【0018】
また、一般式(1)〜(3)のそれぞれにおいて、一つの分子中に含まれる、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、およびR
11うちのいずれか2つが結合して環状構造を形成していてもよい。すなわち、例えばピペラジン環、ピペリジン環、ピリジン環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、ピロリン環、またはモルホリン環などを形成していてもよい。
【0019】
また、一般式(1)においてR
1、R
2、およびR
3のうちの一つの末端が、重合体主鎖に結合していてもよい。この場合には、一般式(1)の含窒素化合物が重合体主鎖に結合した側鎖を構成する。重合体主鎖の構造は特に限定されず、ビニル基の付加重合、酸アミド結合による縮重合、酸基の脱水縮合など、一般的な方法で重合させた重合体を用いることができる。このとき、重合体主鎖が過剰に長く、疎水性が高い場合には水溶性が劣ってパターン表面に残留物が残ったりすることがあるので、重合体主鎖の炭素数が20,000以下であることが好ましく、10,000以下であることがより好ましく、1,000以下であることが最も好ましい。
【0020】
なお、各式において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、およびR
11のすべては同時に水素ではないことが好ましい。すなわち、各式におけるR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、およびR
11のうち、少なくとも一つは前記した炭化水素鎖であることが好ましく、すべてが炭化水素鎖であることがより好ましい。
【0021】
前記一般式(1)で表される含窒素化合物のうち、含窒素化合物のうち、好ましい含窒素化合物として、以下のものを挙げることができる。
(i)モノアルキルアミン、例えばn−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、i−ペンチルアミン、2−メチル−n−ブチルアミン、2−メチル−i−ブチルアミン、2−メチル−t−ブチルアミン、およびn−ヘキシルアミン、
(ii)ジアルキルアミン、例えばジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、メチル−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、
およびジ−i−ブチルアミン
、
(iii)トリアルキルアミン、例えばトリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン
、トリ−i−プロピルアミン、
ジエチルメチルアミン、ジメチル−n−プロピルアミン、およびジメチル−i−プロピルアミン、
(iv)アルカノールアミン、例えばモノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノ−n−
プロパノールアミン、モノ−i−プロパノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−ブチルエタノールアミン、ジ−i−ブチルエタノールアミン、ジ−t−ブチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、n−ブチルエタノールアミン、i−ブチルエタノールアミン、t−ブチルジエタノールアミン、ジエチルイソプロパノールアミン、トリメタノールアミン、およびトリエタノールアミン、ならびに
(v)環状アルキルアミン、例えばシクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、およびシクロヘキシルエタノールアミン
【0022】
また、一般式(2)で表される含窒素化合物のうち、好ましい含窒素化合物として、以下のものを挙げることができる。
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラプロピルエチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトライソプロピルエチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラブチルエチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトライソブチルエチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−プロピレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラエチル−1,2−プロピレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラプロピル−1,2−プロピレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトライソプロピル−1,2−プロピレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラブチル−1,2−プロピレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトライソブチル−1,2−プロピレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロピレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラエチル−1,3−プロピレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラプロピル−1,3−プロピレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトライソプロピル−1,3−プロピレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラブチル−1,3−プロピレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトライソブチル−1,3−プロピレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラエチル−1,2−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラプロピル−1,2−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトライソプロピル−1,2−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラブチル−1,2−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトライソブチル−1,2−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラエチル−1,3−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラプロピル−1,3−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトライソプロピル−1,3−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラブチル−1,3−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトライソブチル−1,3−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラエチル−1,4−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラプロピル−1,4−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトライソプロピル−1,4−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラブチル−1,4−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトライソブチル−1,4−ブチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,5−ペンチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラエチル−1,5−ペンチレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキシレンジアミン、および
N,N,N’,N’−テトラエチル−1,6−ヘキシレンジアミン
N,N−ジメチルアミノエチルアミン、
N,N−ジエチルアミノエチルアミン、
N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、
N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、
N−メチルアミノエチルアミン、
N−エチルアミノエチルアミン、
1,2−ジアミノプロパン、および
1,3−ジアミノプロパン
【0023】
本発明による組成物に好ましく用いられる含窒素化合物として、下記一般式(a1)〜(a6)で表されるものも挙げられる。
【化4】
式中、それぞれのR’は独立に、水素、炭素数1〜10の飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、ここで、前記炭化水素鎖を構成する炭素原子に結合した水素が、−OH、−F、=Oまたは−NH
2に置換されていてもよい。R’は、好ましくはメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメチル基などである。
【0024】
また、xは環に結合する置換基の数であり、nは1または2である。すなわち、一般式(a4)または(a5)に示される環状構造は、5員環または6員環である。また、xの最小値は0であり、最大値は環の大きさおよびその他の置換基により決まる数である。
【0025】
これらの式により示される含窒素化合物のうち、ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン、メチルピペラジン、ジメチルピペラジン、エチルピペラジン、イミダゾール、モルホリン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、アミノエチルモルホリン、ピロリジン、アミノピロリジン、アミノメチルピロリジン、アミノエチルピロリジン、アミノプロピルピロリジン、ヒドロキシピロリジン、ヒドロキシメチルピロリジン、ピペリジン、アミノメチルピペリジン、アミノエチルピペリジン、アミノピペリジン、ヒドロキシピペリジン、メチルピペリジン、ジメチルピペリジン、ピペリジンメタノール、およびピペリジンエタノールなどが好ましいものとして挙げられる。
【0026】
また、その他の好ましい含窒素化合物として、下記一般式(b1)〜(b4)で表されるものも挙げられる。
【化5】
式中、R’、x、およびnは前記したとおりであり、
pは0〜2であり、
qは1〜10,000であり、好ましくは1〜1,000である。
【0027】
これらの一般式(b1)〜(b4)で示される含窒素化合物は、前記一般式(1)で示される含窒素化合物を炭素鎖の側鎖として有する重合体である。これらのうち、ポリビニルアミン、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、およびポリ(アリルアミン−co−ジアリルアミン)は入手の容易性などの観点から好ましいものである。
【0028】
また、一般式(3)で表される含窒素化合物のうち、好ましいものとしてポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0029】
これらの含窒素化合物は、必要に応じて2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0030】
本発明による組成物において、含窒素化合物の含有率は、パターン形状を良好に維持しながらレジストの表面粗さの改良効果を最大に発揮させるために、組成物の全質量を基準として50〜100,000ppmとされることが好ましく、50〜50,000ppmであることがより好ましく、50〜20,000ppmであることが最も好ましい。また、含窒素化合物の含有量の範囲がこのような範囲内にあることで、レジストパターンが太り、結果的にレジストパターンの微細化も可能となる。
【0031】
なお、これらの含窒素化合物は、塩基性を有することが好ましい。すなわち、これらの含窒素化合物を純水に溶解させたとき、その溶液が塩基性となることが好ましい。純水に溶解させたときに酸性を示す含窒素化合物では、LERの改善効果が小さくなることがあるので、本発明による組成物に用いる場合には注意が必要である。
【0032】
(B)アニオン性界面活性剤
本発明において用いられるアニオン性界面活性剤は、スルホ基またはカルボキシル基を有するものである。この界面活性剤は、スルホ基またはカルボキシル基を有しているのであれば、それ以外のアニオン性の親水性基を有していてもよい。なお、本発明においてスルホ基とは、−SO
3H基の他に、スルホナト基−SO
3−基も包含するものである。また、カルボキシル基とは、−COOH基の他にカルボキシレート基−COO
−基も包含するものである。すなわち、界面活性剤に含まれる−SO
3H基または−COOH基が金属などの塩基と反応した場合であっても、その界面活性剤はスルホ基またはカルボキシル基を含有するものである。
【0033】
スルホ基またはカルボキシル基を有するアニオン性界面活性剤は、種々のものが知られており、本発明においては、そのいずれを用いることができる。具体的には、アルキルスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸、アルキルカルボン酸、およびアルキルアリールカルボン酸ならびにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、およびアミン塩が挙げられる。これらの界面活性剤は、一分子中に二つ以上のスルホ基またはカルボキシル基を含んでいてもよい。また、これらの界面活性剤に含まれるアルキル基は界面活性剤の疎水性基として機能すれば、置換基を含んでいてもよい。例えばアルキル基に含まれるメチレン基の一部がエーテル結合に置き換えられていてもよいし、ビニル基のような不飽和結合を含む基を有していてもよい。また、アルキル基に含まれる水素の一部またはすべてが、フッ素などのハロゲン原子に置換されていてもよい。このようなアニオン界面活性剤の具体例としては、ヘキサデシルスルホン酸、ラウリルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホン酸、ラウリン酸、およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩、またはトリエタノールアミン塩が挙げられる。これらのうち、スルホ基を有する活性剤を用いた場合に本発明の効果が顕著に表れる傾向
があるので好ましい。
【0034】
これらの界面活性剤は、必要に応じて2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
市販のアニオン性界面活性剤には、混合物として市販されているものもあり、それらをそのまま用いることもできる。このような界面活性剤としては、アルキルスルホン酸の混合物、アルキルベンゼンスルホン酸の混合物、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムの混合物、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムの混合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの混合物、アルカンスルホン酸ナトリウムの混合物、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムの混合物などが挙げられる。
【0035】
また、本発明において用いられる界面活性剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、スルホ基以外のアニオン性基、例えばホスフェート基をさらに有していてもよい。
【0036】
本発明による組成物において、界面活性剤の含有率は、レジストの表面粗さの改良効果を最大に発揮させるために、組成物の全質量を基準として50〜100,000ppmとされることが好ましく、50〜50,000ppmであることがより好ましく、50〜20,000ppmであることが最も好ましい。
【0037】
(C)水
本発明による組成物は、前記したスルホン酸および界面活性剤のほかに溶媒として水を含んでなる。用いられる水としては、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理等により、有機不純物、金属イオン等が除去されたもの、特に純水が好ましい。
【0038】
(D)その他の添加剤
本発明による組成物は、必要に応じてさらなる添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、例えば、酸、塩基、または有機溶剤等が挙げられる。
【0039】
酸または塩基は、処理液のpHを調整したり、各成分の溶解性を改良するために用いられる。用いられる酸または塩基は本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択できるが、例えばカルボン酸、アミン類、アンモニウム塩が挙げられる。これらには、脂肪酸、芳香族カルボン酸、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、アンモニウム化合物類が包含され、これらは任意の置換基により置換されていてもよい。より具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、テトラメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0040】
また、水以外の有機溶媒を共溶媒として用いることもできる。有機溶剤は組成物の表面張力を調整する作用を有し、またレジスト表面への濡れ性を改良することができる場合がある。このような場合に用いることのできる有機溶媒は、水に可溶な有機溶媒から選ばれる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、およびt−ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールおよびジエチレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、アルキルセロソルブアセテート、プロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、テトラヒドロフラン等の溶媒が挙げられる。
【0041】
しかしながら、これらの有機溶媒はパターンを構成するレジストを溶解したり、変性させることがあるため、使用する場合には少量に限定される。具体的には、有機溶媒の含有量は組成物の全質量を基準として通常50%以下であり、好ましくは5%以下であり、より好ましくは0.1%以下である。ただし、レジストの溶解または変性を防止する目的のためには、有機溶媒は全く用いないことが好ましい。
【0042】
本発明による組成物は、さらに殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、および/または防カビ剤を含んでもよい。これらの薬剤はバクテリアまたは菌類が経時した組成物中で繁殖するのを防ぐために用いられる。これらの例には、フェノキシエタノール、イソチアゾロン等のアルコールが包含される。日本曹達株式会社から市販されているベストサイド(商品名)は特に有効な防腐剤、防カビ剤、および殺菌剤である。典型的には、これらの薬剤は組成物の性能には影響を与えないものであり、通常組成物の全質量を基準として1%以下、好ましくは0.1%以下、また好ましくは0.001%以下の含有量とされる。
【0043】
[パターン形成方法]
次に、本発明によるパターンの形成方法について説明する。本発明のパターン形成方法におけるリソグラフィー工程は、公知のポジ型の感光性樹脂組成物、ネガ型の感光性樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成する方法として知られた何れのものであってもよい。本発明の組成物が適用される代表的なパターン形成方法をあげると、次のような方法が挙げられる。
【0044】
まず、必要に応じて前処理された、シリコン基板、ガラス基板等の基板の表面に、感光性樹脂組成物をスピンコート法など従来から公知の塗布法により塗布して、感光性樹脂組成物層を形成させる。感光性樹脂組成物の塗布に先立ち、感光性樹脂組成物層の下層に反射防止膜が塗布形成されてもよい。このような反射防止膜により断面形状および露光マージンを改善することができる。このような反射防止膜は、感光性樹脂組成物層の形成後、その上層に設けることもできる。
【0045】
本発明のパターン形成方法には、従来知られている何れの感光性樹脂組成物を用いることもできる。本発明のパターン形成方法に用いることができる感光性樹脂組成物の代表的なものを例示すると、ポジ型では、例えば、キノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とからなるもの、化学増幅型感光性樹脂組成物などが、ネガ型では、例えば、ポリケイ皮酸ビニル等の感光性基を有する高分子化合物を含むもの、芳香族アジド化合物を含有するもの或いは環化ゴムとビスアジド化合物からなるようなアジド化合物を含有するもの、ジアゾ樹脂を含むもの、付加重合性不飽和化合物を含む光重合性組成物、化学増幅型ネガ型感光性樹脂組成物などが挙げられる。
【0046】
ここでキノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とからなるポジ型感光性樹脂組成物において用いられるキノンジアジド系感光剤の例としては、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸、これらのスルホン酸のエステル或いはアミドなどが、またアルカリ可溶性樹脂の例としては、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、アクリル酸或はメタクリル酸の共重合体などが挙げられる。ノボラック樹脂としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール等のフェノール類の1種又は2種以上と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒド類の1種以上から製造されるものが好ましいものとして挙げられる。
【0047】
また、化学増幅型の感光性樹脂組成物は、ポジ型およびネガ型のいずれであっても本発明のパターン形成方法に用いることができる。化学増幅型レジストは、放射線照射により酸を発生させ、この酸の触媒作用による化学変化により放射線照射部分の現像液に対する溶解性を変化させてパターンを形成するもので、例えば、放射線照射により酸を発生させる酸発生化合物と、酸の存在下に分解しフェノール性水酸基或いはカルボキシル基のようなアルカリ可溶性基が生成される酸感応性基含有樹脂からなるもの、アルカリ可溶樹脂と架橋剤、酸発生剤からなるものが挙げられる。
【0048】
基板上に形成された感光性樹脂組成物層は、例えばホットプレート上でプリベークされて感光性樹脂組成物中の溶剤が除去され、厚さが通常0.03〜1.0ミクロン程度のフォトレジスト膜とされる。プリベーク温度は、用いる溶剤或いは感光性樹脂組成物により異なるが、通常20〜200℃、好ましくは50〜150℃程度の温度で行われる。
【0049】
フォトレジスト膜はその後、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、KrFエキシマレーザー
装置、ArFエキシマレーザー
装置、軟X線照射装置、電子線描画装置など公知の照射装置を用い、必要に応じマスクを介して露光が行われる。
【0050】
露光後、必要に応じベーキングを行った後、例えばパドル現像などの方法で現像が行われ、レジストパターンが形成される。レジストの現像は、通常アルカリ性現像液を用いて行われる。アルカリ性現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などの水溶液或いは水性溶液が用いられる。現像処理後、リンス液を用いてレジストパターンのリンス(洗浄)が行われる。なお、形成されたレジストパターンは、エッチング、メッキ、イオン拡散、染色処理などのレジストとして用いられ、その後必要に応じ剥離される。
【0051】
本発明によるパターン形成方法は、特に、微細で、アスペクト比の高いレジストパターンに対しても有効にパターン倒れおよびメルティングを改善することができるものである。ここで、アスペクト比とはレジストパターンの幅に対する高さの比である。したがって、本発明によるパターン形成方法は、このような微細なレジストパターンが形成されるリソグラフィー工程、すなわち、露光光源として、KrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザー、更にはX線、電子線などを用いる、250nm以下の露光波長での露光を含むリソグラフィー工程を組み合わせることが好ましい。さらに、レジストパターンのパターン寸法でみると、ライン・アンド・スペース・パターンにおける線幅、またはコンタクトホール・パターンにおける孔径が300nm以下、特に50nm以下のレジストパターンを形成するリソグラフィー工程を含むものが好ましい。
【0052】
本発明によるパターン形成方法においては、レジストパターンを現像後、必要に応じてリソグラフィー用リンス液で処理することができる。リンス液をレジストパターンに接触させる時間、すなわち処理時間は特に制限されないが、一般に処理時間を1秒以上とすることで本発明の効果が発現する。リンス液をレジストパターンに接触させる方法も任意であり、例えばレジストパターンをリンス液に浸漬したり、回転しているレジストパターン表面にリンス液を滴下、噴霧または吹き付けにより供給することにより行うことができる。
【0053】
本発明によるパターン形成方法においては、現像後、リンス液により処理する前に、および/またはリンス液による処理を行った後に、純水により洗浄処理を行うことができる。前者の洗浄処理は、レジストパターンに付着した現像液を洗浄するために行われるものであり、後者の洗浄処理はリンス液を洗浄するために行われるものである。純水による洗浄処理の方法は任意の方法により行うことができ、例えばレジスト基板を純水に浸漬したり、回転しているレジストパターン表面に純水を滴下、噴霧または吹き付けにより供給することにより行うことができる。これらの純水による洗浄処理はどちらか一方だけ、あるいは両方行うことができる。
【0054】
現像後、必要に応じてリンス液処理または純水洗浄されたレジストパターンは、乾燥される。乾燥は、スピンコーターによって高速回転させることにより行うほか、ホットプレートなどによる加熱、真空中や大気中に放置することにより行われる。
【0055】
次いで、乾燥されたレジストパターンの表面を本発明によるレジストパターン処理用組成物で処理する。この処理は、前記の組成物を、レジストパターン表面に接触させ、乾燥させることにより行われる。組成物の塗布方法は、前記したリンス液と同様の方法により行うことができる。組成物で処理されたレジストパターンは必要に応じて乾燥される。
【0056】
ここで、本発明によるレジストパターン処理用組成物は、一般に乾燥されたレジストパターンに対して適用されるものである。従って、現像処理後の濡れた状態のレジストパターンに適用されるリンス液とは異なるものである。リンス液には、レジストパターン倒れなどの問題を起こさずに現像液を除去できることが要求されるが、レジストパターン処理用組成物においては、一般にリンス液処理または純水洗浄され、乾燥された後のレジストパターンに用いられるのでレジストパターン倒れの問題は起こりにくい。本発明によるレジストパターン処理用組成物やレジストパターン形成方法によれば、パターンの形状を損なうことなく処理後のレジストパターンの表面粗さを改良することができ、好ましくは、パターンの微細化も可能となる。
【0057】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。なお、本発明の態様はこれらの例に限定されるものではない。
【0058】
[比較例A01]
スピンコーター(東京エレクトロン株式会社製)を用いて、感極紫外線性樹脂組成物を、予めヘキサメチレンジシラザン処理を施したシリコンウェハーに塗布し、130℃60秒間ホットプレート上で乾燥させて、膜厚50nmのレジスト膜を得た。極紫外線露光装置を用いて、露光波長=13.5nm、開口数NA=0.3の条件で、露光マスク(ライン/スペース=1/1)を介して前記のレジスト膜を露光した。露光後、ホットプレート上で100℃60秒間加熱した後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキド水溶液を用い、30秒間パドル法により現像した。現像後、さらに純水で洗浄し、乾燥して、線幅30nmの1:1ラインアンドスペースパターンのレジストパターンを得た。このレジストパターンを比較例A01とした。この比較例A01のパターンを高分解能測長装置(CD−SEM CG4000(商品名)、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により観察し、LERを評価した。なお、この例では、処理前のLERに対する、処理によるLERの改善量の比率である、LER改善率により評価をしている。このLER改善率が5%以上であると、十分な
LER改善があるということができる。
【0059】
またパターンの断面を電界放射型操作電子顕微鏡(S−5500(商品名)、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により観察して、パターン形状を評価した。処理によってパターン断面の形状が大きく変化した場合に、パターン形状が不良であると判断した。
【0060】
[実施例A01〜A03]
ヘキサデシルスルホン酸とi−ブチルアミンとを表1に記載したとおりの濃度で純水に溶解させて、レジストパターン処理用組成物を調製した。この組成物を比較例A01のパターン表面に、スピンコーターを用いて塗布し、90℃60秒加熱した。得られたパターンのライン幅を前記高分解能測長装置により測定し、比較例A01のパターンにおけるライン寸法からの増加量を算出した。また、比較例A01の場合と同様に、LERおよびパターン形状を評価した。得られた結果は表1に示すとおりであった。
【0061】
【表1】
表中:
*1: ヘキサデシルスルホン酸
【0062】
[比較例B01〜B07および実施例B01〜B04]
実施例A02に対して、界面活性剤の種類を表2に示すとおり変更したほかは同様にして、比較例B01〜B07および実施例B01〜B04を行った。得られた結果は表2に示すとおりであった。なお、比較例B03〜B07のパターン形状は、パターン上部に欠落が認められた。
【0063】
【表2】
表中:
*2:下記式で表される非イオン性界面活性剤
【化6】
式中、r1、s1、r2、およびs2は、r1+r2=5、s1+s2=2をそれぞれ満たす整数である。
*3:炭素数12〜18の飽和脂肪族スルホン酸の混合物であるアルキルスルホン酸混合物。
*4:ドデシルベンゼンスルホン酸
*5:炭素数12〜18のアルキルベンゼンスルホン酸の混合物であるアルキルベンゼンス
ルホン酸混合物。
*6:ラウリン酸トリエタノールアミン塩
【0064】
[比較例C01〜C03および実施例C01〜C15]
実施例A01に対して、アミンの種類を表2に示すとおり変更したほかは同様にして、比較例C01〜C03および実施例C01〜C15を行った。得られた結果は表3に示すとおりであった。
【0066】
[比較例D01および実施例D01〜D02]
実施例A01に対して、アミンの種類および添加量を表4に示すとおり変更してレジストパターン処理用組成物を調製した。この組成物をパターン表面に、スピンコーターを用いて塗布し、110℃60秒加熱し、純水で洗浄した後乾燥させた。得られたパターンについて、実施例A01と同様に評価した。得られた結果は表4に示すとおりであった。