(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
線維性疾患、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、又はアレルギー・アトピー性疾患の治療のための医薬組成物であって、前記医薬組成物が(i)少なくとも2つのCCR3結合ケモカインに結合する単離多重特異性抗体、又はその任意の抗原結合断片、及び(ii)薬理学的に許容される担体を含み、前記単離多重特異性抗体が、
a)配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR1、
b)配列番号6で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR2、及び
c)配列番号7で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR3を含む重鎖可変領域、並びに
d)配列番号8で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR1、
e)配列番号9で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR2、及び
f)配列番号10で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR3を含む軽鎖可変領域
を含む完全ヒト化抗体であることを特徴とする医薬組成物。
線維性疾患、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、又はアレルギー・アトピー性疾患における、CCR3、CCR1、CCR2、及びCCR5を発現する細胞の遊走性を弱めるための医薬の製造における、請求項11に記載の前記抗体の使用。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明を理解し、それが実際にどのように実施されうるかを見るために、非限定的にすぎない例を挙げ、次の添付図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
図1A〜
図1Cは、酵素結合免疫吸着法(Elisa)で測定した、全身性強皮症患者におけるエオタキシン2(
図1A)、RANTES(
図1B)、及びエオタキシン1(
図1C)の全身循環レベルを示すグラフである。結果はミリリットル当たりのピコグラムで示されている。
【0011】
図2A及び
図2Bは、ブレオマイシン誘導強皮症マウスの予防モデルにおける、さまざまなパラメーターに対するCM101治療の効果を示すグラフである。
図2Aは、抗エオタキシン−2モノクローナル抗体(CM101、10、20、又は50μg)、IgG、及びPBSによる治療の真皮厚に対する効果(±標準誤差)を示すグラフである。
図2Bは、抗エオタキシン−2モノクローナル抗体(CM101、10、20、又は50μg)、IgG、及びPBSによる治療のコラーゲン濃度に対する効果(±標準誤差)を示すグラフであり、*はp≦0.05を示す。(溶媒−治療無し(PBS);BLM−ブレオマイシン)。
【0012】
図3A及び
図3Bは、ブレオマイシン誘導強皮症モデル(予防モード)における、抗エオタキシン−2モノクローナル抗体(CM101、10μg又は50μg)による治療のマウスの気管支肺胞液中のリンパ球(
図3A)及び好酸球(
図3B)に対する効果(±標準誤差)を示すグラフである。*はp<0.05を示す。(溶媒−治療無し(PBS);BLM−ブレオマイシン)。
【0013】
図4は、治療プロトコールにおける、抗エオタキシン−2モノクローナル抗体(CM101、50μg)及びPBS(溶媒)による治療のマウスの皮膚コラーゲン濃度に対する効果(±標準誤差)を示すグラフである。*p≦0.05。(溶媒−治療無し(PBS);BLM−ブレオマイシン)。
【0014】
図5A及び
図5Bは、治療モードにおける、抗エオタキシン−2モノクローナル抗体(CM101、50μg)及びPBS(溶媒)による治療のマウスの気管支肺胞液内の単核細胞(
図5A)及び白血球(WBC)(
図5B)浸潤に対する効果(±標準誤差)を示すグラフである。*p≦0.05。(溶媒−治療無し(PBS);BLM−ブレオマイシン)。
図5C〜
図5Fは代表的なFACS結果(フローサイトメトリーでの30秒細胞カウント)である:5C−PBS;5D−BLM 8日;5E−BLM 21日;5F−BLM+CM101。
【0015】
図6A〜
図6Dは、マウス皮膚の代表的な様子(ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色)を示す写真である。
図6A−PBS;
図6B−BLMベースライン;
図6C−BLM終了時;
図6D CM101で治療したマウス(CM101による治療は疾患が確立された後に開始)。
図6E〜
図6Hは、マウス皮膚の代表的な様子(マッソントリクローム染色)を示す写真である。
図6E−PBS;
図6F−BLMベースライン;
図6G−BLM終了時;
図6H CM101で治療したマウス(CM101による治療は実験的SScの確立時に開始)。
【0016】
図7A及び
図7Bは、hCM101で染色したIPF患者の肺病変の写真である。
【0017】
図8は、IPFの予防モードにおける、抗エオタキシン−2モノクローナル抗体(CM101、10、100μg)、IgG、及びPBS(溶媒)による治療のマウスコラーゲン濃度に対する効果(±標準誤差)を示すグラフである。*pv≦0.05。** *pv≦0.01。(BLM−ブレオマイシン)。
【0018】
図9は、IPFモデルの予防モードにおける、抗エオタキシン−2モノクローナル抗体(CM101、10、100μg)、IgG、及びPBS(溶媒)による治療のマウス気管支肺胞液内の単核細胞に対する効果(±標準誤差)を示すグラフである。*pv≦0.05。(BLM−ブレオマイシン)。
【0019】
図10は、IPFの予防モードにおける、CM101(10、100μg)のBAL液中のエオタキシン2のレベルに対する影響(±標準誤差)を示すグラフである。*pv≦0.05。(BLM−ブレオマイシン、溶媒−PBS)。
【0020】
図11は、IPFの治療モードにおける、抗エオタキシン−2モノクローナル抗体(CM101、50μg)、IgG、及びPBS(溶媒)による治療のマウス肺コラーゲン濃度に対する効果(±標準誤差)を示すグラフである。*pv≦0.05。**pv≦0.01。(BLM−ブレオマイシン)。
【0021】
図12A及び
図12Bは、IPFモデルの治療モードにおける、抗エオタキシン−2モノクローナル抗体(CM101、50μg)、IgG、及びPBS(溶媒)による治療のマウス気管支肺胞液内の単核細胞(
図12A)及び多形核細胞(
図12B)に対する効果(±標準誤差)を示すグラフである。*pv≦0.05。(BLM−ブレオマイシン)。
【0022】
図13A〜
図13Hは、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)(それぞれ、
図13D及び
図13A)又はマッソントリクローム染色(それぞれ、
図13H及び
図13E)で染色した、hCM101又はPBSで治療したマウスの肺病変の代表的な様子を示す写真である。H&Eで染色した、表示日数の期間ブレオマイシン(BLM)で治療したマウスの肺病変が
図13B及び
図13Cに示される。マッソントリクローム染色で染色した、表示日数の期間ブレオマイシン(BLM)で治療したマウスの肺病変が
図13F及び
図13Gに示される。
【0023】
図14は、IPFにおけるマウス肺コラーゲン濃度に対する、ピルフェニドン(100mg/kg/日)と比較したCM101(100μg)の効果(±標準誤差)を示すグラフである。*pv≦0.05。(BLM−ブレオマイシン)。
【0024】
図15A〜
図15Cは、IPFモデルにおける、マウス気管支肺胞液内の単核細胞(
図15A)、多形核細胞(
図15B)、及び白血球(
図15C)に対する、ピルフェニドン(100mg/kg/日)と比較したCM101(100μg)の効果(±標準誤差)を示すグラフである。*pv≦0.05。**pv≦0.01。(BLM−ブレオマイシン)。
【0025】
図16は、抗エオタキシン−2mAb(hCM101)のエオタキシン−2への結合を示すグラフである。結果は405nmでの光学密度(OD)測定値として表わされる(±標準誤差)。pv≦0.05。(BSA−ウシ血清アルブミン)。
【0026】
図17は、抗エオタキシン−2mAb(hCM101)のエオタキシン−1への結合を示すグラフである。結果は405nmでの光学密度(OD)測定値として表わされる(±標準誤差)。pv≦0.05。(BSA−ウシ血清アルブミン)。
【0027】
図18は、抗エオタキシン−2mAb(hCM101)のRANTESへの結合を示すグラフである。結果は405nmでの光学密度(OD)測定値(±標準誤差)として表わされる。pv≦0.05。(BSA−ウシ血清アルブミン)。
【0028】
図19は、抗エオタキシン−2mAb(hCM101)のMCP−3への結合を示すグラフである。結果は405nmでの光学密度(OD)測定値(±標準誤差)として表わされる。pv≦0.05。(BSA−ウシ血清アルブミン)。
【0029】
図20Aは、エオタキシン1、エオタキシン2、RANTES、及びMCP−3のN−ループ中のhCM101の結合部位を図示したものである(タンパク質の構造を重ね合わせている)。
図20Bは、4つのタンパク質すべての推定結合エピトープのアミノ酸配列比較を示す。
【0030】
図21A〜
図21Hは、それぞれ、エオタキシン2(
図21A及び
図21E)、エオタキシン1(
図21B及び
図21F)、RANTES(
図21C及び
図21G)、並びにMCP3(
図21D及び
図21H)に対するhCM101の類似結合部位を表わすエピトープマッピングのタンパク質表面及びリボンダイヤグラムを図示したものである。タンパク質表面は電荷に準じて円で囲まれ、太線は正電荷をもつ領域を示す。ターン部位を円で示し、N−ループ部位を楕円で示す。
【0031】
図22A及び
図22Bは、hCM101(5、10、及び50μg)による全身性強皮症血清の代表的なゲル(
図22A)並びにエオタキシン2レベルプルダウンのデンシトメトリー(
図22B)である。O.D.−光学密度。
【0032】
図23は、hCM101(2、1、0.5μg)によって検出されたエオタキシン1、RANTES、及びMCP−3の代表的なドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ゲル分析を示す。
【0033】
図24は、エオタキシン1及びエオタキシン2の方向への好酸球細胞系の遊走に対するhCM101(100、50、及び10nM)、IgG(50nM)、又はPBS(「0」)の効果(±標準誤差)を示すグラフである。*pv≦0.05。**pv≦0.01。
【0034】
図25は、MCP−3及びRANTESの方向への単球細胞系の遊走に対するhCM101(100、50、及び10nM)、IgG(50nM)、又はPBS(「0」)の効果(±標準誤差)を示すグラフである。*pv≦0.05。
【0035】
図26Aは、MCP−3及びRANTESの方向へのCD14+細胞(全身性強皮症患者から単離)の遊走に対するhCM101(100及び10nM)、IgG(50nM)、又はPBS(「0」)の効果(±標準誤差)を示すグラフである。*pv≦0.05。
【0036】
図26Bは、エオタキシン1、2、及びRANTESの方向へのCD14−細胞(全身性強皮症患者から単離)の遊走に対するhCM101(100及び10nM)、IgG(50nM)、又はPBS(「0」)の効果(±標準誤差)を示すグラフである。*pv≦0.05。**pv≦0.01。
【0037】
図27Aは、エオタキシン2の方向への線維芽細胞系の遊走に対するhCM101(100nM)又はPBS(EOX−2)の効果(±標準誤差)を示すグラフである。**pv≦0.01。
図27B〜
図27Dは、
図27Aに示した、対照(
図27B)、PBS処理(
図27C)、及びhCM101処理(
図27D)線維芽細胞の代表的な図写真である。
【0038】
図28Aは、エオタキシン1の方向への線維芽細胞系の遊走に対するhCM101(100nM)又はPBS(EOX−1)の効果(±標準誤差)を示すグラフである。*pv≦0.05。
図28B〜
図28Dは、
図28Aに示した、対照(
図28B)、PBS処理(
図28C)、及びhCM101処理(
図28D)線維芽細胞の代表的な写真である。
【0039】
図29A〜
図29Cは、筋線維芽細胞転換の指標としてのα−SMAの細胞内発現に対するhCM101の効果を示す代表的なFACS図である。pv≦0.05。
図29Aは硬皮症患者から得た血清中の44%のSMA陽性細胞を示し、
図29BはhCM101(10μg/ml)で治療した血硬皮症患者から得た血清中の22%のSMA陽性細胞を示し、及び
図29CはhCM101(5μg/ml)で治療した硬皮症患者から得た血清中の27%のSMA陽性細胞を示す。
【0040】
図30A及び
図30Bは、好酸球における、CM101(100、50、10、5、又は0nM)の影響下の時間分解カルシウム活性化指数(
図30A)及びCM101濃度に応じたエオタキシン2誘導カルシウムシグナルの変動(
図30B)を示すグラフである。pv≦0.05。
【0041】
図31は、hCM101とインキュベーションした後のT細胞の増殖を示すグラフである。結果は刺激指数で表わされている。
【0042】
図32は、エピスクリーン(Episcreen)における臨床的免疫原性(抗タンパク質治療用抗体反応)とT細胞増殖との間の相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の態様の1つによって、本発明は、線維性疾患、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、又はアレルギー・アトピー性疾患の治療で用いる少なくとも2つのCCR3結合ケモカインに結合する単離多重特異性抗体、又はそのいずれの抗原結合断片を提供する。
【0044】
幾つかの実施形態では、本発明による抗体はモノクローナル抗体である。その他の実施形態では、本発明によるモノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト化抗体である。
【0045】
さらなる実施形態では、本発明に従って使用される単離多重特異性抗体は、その抗原結合断片が、Fv、一本鎖Fv(scFv)、抗原に結合可能な重鎖可変領域、抗原に結合可能な軽鎖可変領域、Fab、F(ab)
2’、及びそれらのいずれの組み合わせからなる群より選択される。
【0046】
幾つかの実施形態では、本明細書において定義される線維性疾患は、硬皮症、特発性肺線維症(IPF)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、糸球体硬化症、肝硬変、及びメタボリックシンドロームからなる群より選択される。
【0047】
その他の実施形態では、本明細書において定義される自己免疫性炎症性疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、乾癬、大腸炎、ブドウ膜炎、多発性硬化症、及びタイプI糖尿病からなる群より選択される。
【0048】
さらなる実施形態では、本発明による単球関連疾患はアテローム性動脈硬化症である。
【0049】
よりさらなる実施形態では、本明細書において定義されるアレルギー・アトピー性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、及び過敏症反応からなる群より選択される。
【0050】
幾つかの実施形態では、本発明に従って使用される単離多重特異性抗体は、少なくとも2つのCCR3結合ケモカインが、エオタキシン1、エオタキシン−2、RANTES、及びMCP−3からなる群より選択される。
【0051】
その他の実施形態では、本発明に従って使用される単離多重特異性抗体は、エオタキシン1、エオタキシン−2、RANTES、及びMCP−3に結合する。
【0052】
さらなる実施形態では、本発明において定義されるように使用される単離多重特異性抗体は、CCR3、CCR1、CCR2、及びCCR5を発現する細胞の遊走性を弱める。
【0053】
幾つかの実施形態では、本明細書において定義される抗体は、
a)配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR1又はその変型、
b)配列番号6で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR2又はその変型、及び
c)配列番号7で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR3又はその変型を含む重鎖可変領域、並びに
d)配列番号8で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR1又はその変型、
e)配列番号9で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR2又はその変型、及び
f)配列番号10で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR3又はその変型を含む軽鎖可変領域
を含む完全ヒト化抗体である。
【0054】
その他の実施形態では、本発明による抗体は、配列番号3で表わされる重鎖可変領域又はその変型及び配列番号4で表わされる軽鎖可変領域又はその変型を含む完全ヒト化抗体である。
【0055】
別の1つの本発明の態様では、本発明は、CCR3−結合ケモカインのN−ループ領域の立体構造エピトープに結合する単離抗体を提供し、前記立体構造エピトープは、前記CCR3結合ケモカインのアミノ酸配列のアミノ酸位置14と24の間に位置する正電荷をもつアミノ酸残基の比較的高度な集中を特徴とする。
【0056】
幾つかの実施形態では、本明細書において定義される立体構造エピトープは、前記CCR3−結合ケモカインのアミノ酸配列のアミノ酸位置14と24の間に少なくとも3つの正電荷をもつアミノ酸残基を含む。
【0057】
その他の実施形態では、本明細書において定義される正電荷をもつアミノ酸残基は、Arg、Lys、及びHisからなる群より選択される。
【0058】
さらなる実施形態では、本明細書において定義される立体構造エピトープは、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、又は配列番号19で表わされるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0059】
さらに別の1つの本発明の態様では、本発明は、少なくとも2つのCCR3結合ケモカインに結合する単離多重特異性抗体又はそのいずれの抗原結合断片を提供し、前記抗体は、完全ヒト化抗体であり、
a)配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR1又はその変型、
b)配列番号6で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR2又はその変型、及び
c)配列番号7で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR3又はその変型を含む重鎖可変領域、並びに
d)配列番号8で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR1又はその変型、
e)配列番号9で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR2又はその変型、及び
f)配列番号10で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR3又はその変型を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0060】
本発明は、本明細書において定義される抗体をコードする核酸分子をさらに提供する。
【0061】
本発明の態様のさらに別の1つによって、本発明は、少なくとも2つのCCR3結合ケモカインに結合するヒト化抗体をコードする核酸分子を提供し、前記核酸分子は、配列番号1及び配列番号2で表わされる配列を含む。
【0062】
本発明は、本発明による核酸分子を含む発現ベクターをさらに提供する。
【0063】
本発明の態様のさらに別の1つによって、本発明は、本発明による核酸分子を含む宿主細胞を提供する。
【0064】
本発明は、本明細書において定義される抗体及び薬理学的に許容される担体を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0065】
幾つかの実施形態では、本発明による医薬組成物は、線維性疾患、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、又はアレルギー・アトピー性疾患の治療に用いられる。
【0066】
本発明は、本明細書において定義される抗体又は医薬組成物の治療上許容される量を、それを必要としている患者に投与することを含む、線維性疾患、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、又はアレルギー・アトピー性疾患を治療する方法をさらに提供する。
【0067】
本発明の態様のさらに別の1つによって、本発明は、線維性疾患、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、又はアレルギー・アトピー性疾患における、CCR3、CCR1、CCR2、及びCCR5を発現する細胞の遊走性を弱める方法を提供し、本明細書において定義される抗体又は医薬組成物の治療上許容される量を、前記疾患の1つを患う患者に投与することを含む方法。
【0068】
本発明は、少なくとも1つの、CCR3、CCR1、CCR2、又はCCR5を発現する細胞の遊走性を弱めることができる抗体をスクリーニング及び特定する方法をさらに提供し、前記方法は、
a.CCR3結合ケモカインに対する抗体を得ることと、
b.CCR3結合ケモカインのN−ループ領域の、前記CCR3結合ケモカインのアミノ酸配列のアミノ酸位置14と24の間に位置する正電荷をもつアミノ酸残基の比較的高度な集中を特徴とする立体構造エピトープへの前記抗体の結合を評価すること、
c.前記立体構造エピトープに結合する抗体を選択することを含み、
そこにおいて、前記立体構造エピトープに特異的に結合する抗体は、CCR3、CCR1、CCR2、及びCCR5を発現する細胞の遊走性を効率的に弱めることができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの、CCR3、CCR1、CCR2、又はCCR5を発現する細胞の遊走性を弱めることができる抗体をスクリーニング及び特定する方法は、前記立体構造エピトープが、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び配列番号19で表わされるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0070】
別の態様では、本発明は、立体構造エピトープを含むCCR3結合ケモカインの単離N−ループ領域を提供し、前記CCR3結合ケモカインに対する抗体を作り出すため、前記立体構造エピトープは、前記CCR3結合ケモカインのアミノ酸配列のアミノ酸位置14と24の間に位置する正電荷をもつアミノ酸残基の比較的高度な集中を特徴とする。
【0071】
ある実施形態では、前記単離N−ループ領域は、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び配列番号19で表わされるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0072】
本発明は、エオタキシン2(CCL24)ポリペプチドの立体構造エピトープに対する抗体が、エオタキシン2にも、さらなる化学誘引物質、炎症性CCR3結合ケモカインであるエオタキシン1、RANTES、及びMCP−3にも結合し、それらの活性を阻害するという驚くべき発見に基づく。よって、本発明は、細胞の走化性の原因となるケモカインの少なくとも1つを中和することによって、免疫細胞の遊走を防ぐことができる独特の完全ヒト化モノクローナル抗体(本明細書においてhCM101と呼ぶ)を提供する。抗体hCM101は、これらのCCR3−結合ケモカイン(幾つかはさらなる受容体に結合する)の、それぞれの受容体への結合を阻害し、CCR3、CCR1、CCR2、及びCCR5を発現する細胞(好酸球及び単球細胞系並びにヒト線維芽細胞)の遊走性を機能的に弱める。
【0073】
理論に拘束されるものではないが、これらの独特の、非常に優れた抗体の性質は、多重特異性であること、すなわち、数個のケモカインを標的にすること、抗体の有効性及びケモカイン機能の機能重複性を克服する潜在能力を説明しうる。したがって、本抗体は、アレルギー性疾患及び線維性疾患を含む、慢性の炎症に関連し、免疫細胞の遊走及び浸潤を特徴とする自己免疫疾患の治療に有用でありうる。
【0074】
よって、本発明は、線維性疾患、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、又はアレルギー・アトピー性疾患の治療で用いる少なくとも2つのCCR3結合ケモカインに結合する単離多重特異性抗体、又はそのいずれの抗原結合断片を提供する。
【0075】
本明細書で使用される「多重特異性の(polyspecific)(又は多重特異性の(poly−specific))抗体」という用語は、複数の抗原を認識できる多重反応性抗体を指し、具体的に本発明は、数個の異なる炎症性CCR3結合ケモカインを認識できる多重特異性抗体を包含する。本発明の抗体はエオタキシン2に対して作り出され、後になって、さらなるケモカイン(例えば、エオタキシン1、RANTES、及びMCP−3)に結合し、それらの活性を効果的に弱めることがわかった。ある実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、その多種ケモカインに同様の親和性で結合する。その他の実施形態では、抗体は、その多種ケモカインに対して異なる結合親和力をもつ。1つの特定の実施形態では、抗体は、他の試験したケモカインと比べてエオタキシン2に対してのほうが高い親和性で結合する。どうやら本発明の多重特異性抗体は、これらの炎症性CCR3結合ケモカインの交差反応性エピトープを認識するようである。
【0076】
CCR3(C−Cケモカイン受容体タイプ3)は、ヒトではCCR3遺伝子によってコードされるタンパク質である。最近、CCR3はCD193(CD分類193)に指定された。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、C−Cタイプケモカインの受容体である。その受容体は、好酸球並びにマクロファージ及び内皮細胞を含む幅広い細胞タイプによって発現される7回膜貫通Gタンパク質共役受容体である。この受容体は、エオタキシン(エオタキシン1又はCCL11とも呼ばれる)、エオタキシン−2(CCL24)、エオタキシン−3(CCL26)、MCP−3(CCL7)、MCP−4(CCL13)、及びRANTES(CCL5)を含む多様なケモカインと結合して反応する。
【0077】
本明細書で定義される「CCR3結合ケモカイン」という用語は、タンパク質CCR3に結合するいずれのケモカインを指し、例えば、エオタキシン1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、RANTES、MCP−3、及びMCP−4を包含するが、これらに限定されない。幾つかのCCR3結合ケモカインはさらなるケモカイン受容体、例えば、CCR1、CCR2、又はCCR5にも結合することが強調されるべきである。
【0078】
よって、幾つかの実施形態では、本発明に使用される単離多重特異性抗体は、少なくとも2つのCCR3結合ケモカインが、エオタキシン1、エオタキシン−2、RANTES、及びMCP−3からなる群より選択される。
【0079】
「エオタキシン2」(好酸球走化性タンパク質2)、「CCL24」(ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド24)、又は「MPIF−2」(骨髄球系前駆細胞阻止因子2)という用語は互換可能に使用され、ヒト染色体7に位置するヒトCCL24遺伝子によってコードされるCCケモカインファミリーに属するサイトカインを指す。CCL24はケモカイン受容体CCR3と相互作用する。CCL24活性としては、好酸球、好塩基球、Tリンパ球、及び好中球における走化性の誘導、並びに内皮細胞及び平滑筋細胞での血管新生反応及び遊走反応の誘導が挙げられる。エオタキシン2のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを含まない)は配列番号11で表わされる。
【0080】
上述のように、本発明に包含されるさらなるCCR3結合ケモカインは、ほんの数例を挙げれば、エオタキシン1、エオタキシン−3、RANTES、MCP−3、及びMCP−4である。
【0081】
本明細書で定義される「エオタキシン1」(C−Cモチーフケモカイン11及び好酸球走化性タンパク質としても知られる)という用語は、ヒトではCCL11遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。エオタキシン1は好酸球の走化性を誘導することによって好酸球を選択的に動員し、したがって、アレルギー反応に関係する。エオタキシン1の効果は、それが、CCR2、CCR3、及びCCR5を含むケモカイン受容体として知られるGタンパク質結合受容体に結合することによって媒介される。ヒトエオタキシン1のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを含まない)は、例えば、配列番号12で表わされる。
【0082】
本明細書で定義される「RANTES」(regulated on activation normal T cell expressed and secreted)という用語は、ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド5(CCL5)とも呼ばれ、ヒトではCCL5遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。RANTESはT細胞、好酸球、及び好塩基球の走化性サイトカイン又はケモカインに分類される8kDaタンパク質であり、白血球を炎症部位に動員するのに積極的な役割を担う。RANTESはまた、T細胞によって放出される特定のサイトカイン(すなわち、IL−2及びIFN−ガンマ)と協力して、ある種のナチュラルキラー(NK)細胞の増殖及び活性化を誘導してCHAK(CC−ケモカイン活性化キラー)細胞を形成する。RANTESは、中でもCCR3受容体に結合する。ヒトRANTESのアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを含まない)は、例えば、配列番号13で表わされる。
【0083】
本明細書で定義される「「MCP−3」(単球特異的ケモカイン3)という用語は、ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド7(CCL7)とも呼ばれ、CCケモカインとして知られるケモカインのサブファミリーに分類される。MCP−3は単球を特異的に誘引し、マクロファージ機能を調節する。MCP−3はある種の腫瘍細胞株及びマクロファージによって産生される。このケモカインはヒトでは染色体17、多くの他のCCケモカインを含む大きなクラスターに位置する。RANTESは、中でもCCR3受容体に結合する。ヒトMCP−3のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを含まない)は、例えば、配列番号14で表わされる。
【0084】
幾つかの実施形態では、本発明に使用される単離多重特異性抗体は、エオタキシン1、エオタキシン−2、RANTES、及びMCP−3に結合する。
【0085】
他の特定の実施形態では、本発明に使用される単離多重特異性抗体は、CCR3、CCR1、CCR2、及びCCR5を発現する細胞の遊走性を弱める。
【0086】
CCR3、CCR1、CCR2、及びCCR5を発現する細胞の「遊走性を弱める」という語によって、本発明の抗体が、走化性アッセイで測定できるように細胞遊走を減じることが意味される。そのような走化性アッセイは当該技術分野において周知である。例示的な走化性アッセイは下記の実施例の項に示される。遊走性を弱めることとは、未処理細胞と比較して、細胞遊走のいずれの統計的に有意な減少を意味する。例えば、遊走細胞の数の少なくとも50%の減少。
【0087】
下記の実施例の項に例示されるように、本発明の抗体は、数個の炎症性ケモカインに結合でき、細胞動員又は走化性(例えば、好酸球又は単球又は線維芽細胞の動員又は走化性)の阻害、線維芽細胞の筋芽細胞への転換の阻害、及び細胞活性化の減少などのその多様な活性を阻害できる。したがって、これらの抗体は、その有害な症状又は影響が少なくとも部分的に炎症性CCR3ケモカインによって媒介される疾患の治療に有用であることができる。
【0088】
具体的には、下記の例に示されるように、本発明の抗体は、線維性疾患に分類される特発性肺線維症(IPF)及び硬皮症のモデルの幾つかの特徴の著しい減少を引き起こした。
【0089】
線維化は、修復又は反応過程における臓器又は組織の過剰な線維性結合組織の形成である。これは、反応性、良性、又は病的状態でありうる。線維化は、線維組織の過剰な沈着の病的状態及び治癒中の結合組織沈着の過程を表わすのに用いられうる。よって本明細書では、「線維性疾患」という用語は、線維性結合組織が正常な平滑筋又は他の正常な器官組織に広がったり、取って代わったりする異常な状態に関する。線維化は心臓、肺、腹膜、皮膚、又は腎臓を冒しうる。線維性疾患の非限定的な例としては、硬皮症、特発性肺線維症(IPF)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、糸球体硬化症、肝硬変、及びメタボリックシンドロームが挙げられる。
【0090】
よって幾つかの実施形態では、線維性疾患は、硬皮症、特発性肺線維症(IPF)、非アルコール性脂肪性肝炎、糸球体硬化症、肝硬変、及びメタボリックシンドロームからなる群より選択される。
【0091】
本明細書で定義される「強皮症」という用語は、全身性強皮症としても知られ、皮膚(skin)(皮膚(derma))の硬化(hardening)(硬化(sclero))を特徴とする慢性の全身性自己免疫疾患を指す。より重症な型では、強皮症は内部臓器も侵す。強皮症は限局性強皮症であることがあり、主に手、腕、及び顔に影響を及ぼす皮膚兆候を含む。或いは強皮症はびまん性硬皮症であることがある。急速に進行し、皮膚の大部分並びに1つ以上の内部臓器、高い頻度で腎臓、食道、心臓、及び/又は肺に影響を及ぼす。この型の硬皮症は日常生活にかなり支障を来す可能性がある。硬皮症自体の治療はなく、器官系合併症が個別に治療される。
【0092】
「特発性肺線維症」(IPF)という用語は、進行性の呼吸困難及び致死の可能性の高い酸素欠乏又は右心不全を伴う肺胞壁の進行性線維症を指す。急性の型はハンマン・リッチ症候群と呼ばれる。
【0093】
本明細書で使用される「炎症」という用語は、病原体、(例えば、やけど、外傷、新生物に起因する)損傷細胞又は化学薬品、熱、若しくは低温などの刺激物などの有害な刺激に対する免疫系の複合的な生物学的反応を指す。「炎症性疾患(inflammatory disease)」又は「炎症性疾患(inflammatory disorder)」という用語は、炎症に関連する疾患を指し、例えば、自己免疫性炎症性疾患が挙げられるがこれに限定されない。
【0094】
本明細書で使用される自己免疫疾患という用語は、体内に正常に存在する物質及び組織に対する、体の過度に活動的な免疫反応から生じる病態を表わす。免疫系が病原体と体のある部分と誤り、それを攻撃する。これは、ある臓器に限られることもあり、肺と腎臓の両方の基底膜を侵しうる異なる箇所の特定の組織に関わることもある。自己免疫疾患としては、例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、セリアック病、1型糖尿病(IDDM)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、チャーグ・ストラウス症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、乾癬、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及びクローン病)、硬皮症、及び天疱瘡が挙げられる。
【0095】
本明細書で使用される「自己免疫性炎症性疾患」という用語は、炎症の増加も特徴する自分の体の組織を攻撃する免疫系に起因する障害に関する。自己免疫性炎症性疾患の非限定的な例としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、乾癬、大腸炎、ブドウ膜炎、多発性硬化症、及びタイプI糖尿病が挙げられる。
【0096】
したがって幾つかの実施形態では、本明細書で定義される自己免疫性炎症性疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、乾癬、大腸炎、ブドウ膜炎、多発性硬化症、及びタイプI糖尿病からなる群より選択される。
【0097】
本明細書で使用される「単球関連疾患」という用語は、単球及びマクロファージの機能を侵し、細胞内の残屑の蓄積を引き起こし、例えば、脂質蓄積症(ゴーシェ病及びニーマン・ピック病など)又はアテローム性動脈硬化症につながる遺伝子異常に関する。慢性の感染症、自己免疫障害、血液疾患、及びある種のがんに応答して、血液中の単球の増加(単球増加症)が起こる。組織でのマクロファージ増殖が、感染症、サルコイドーシス、及びランゲルハンス細胞組織球症に応答して起こりうる。
【0098】
さらなる実施形態では、本発明による単球関連疾患はアテローム性動脈硬化症である。
【0099】
本明細書で使用される「アテローム性動脈硬化症」(動脈硬化性血管疾患又はASVDとしても知られる)という用語は、コレステロールなどの脂肪質の蓄積の結果として動脈壁が厚くなる病態である。この過程は、主にマクロファージの蓄積に起因し、低密度リポタンパク質によって進められ、機能的な高密度リポタンパク質(HDL)によってマクロファージから脂肪及びコレステロールが充分に除去されることがない動脈の壁における慢性の炎症反応の結果である。この動脈の硬化及び閉塞は、動脈内の複数のプラークの形成によって引き起こされる。
【0100】
本明細書で使用される「アレルギー・アトピー性疾患」という用語は、ある種のアレルゲンに対する過感受性の遺伝的素因をもつ人を苦しませるアレルギーの型に関する。アレルギー・アトピー性疾患の非限定的な例としては、喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、蕁麻疹、及び過敏症反応が挙げられる。
【0101】
よって、よりさらなる実施形態では、本発明によるアレルギー・アトピー性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、及び過敏症反応からなる群より選択される。
【0102】
上述のように、本発明は、少なくとも2つの炎症性CCR3結合ケモカインに結合する単離多重特異性抗体を提供する。「抗体」という用語は、抗原、すなわち炎症性CCR3結合ケモカインに特異的に結合して認識する免疫グロブリン遺伝子によってコードされるポリペプチド又はその機能的断片を指す。具体的には、本発明の抗体は、少なくともエオタキシン2、エオタキシン1、RANTES、及びMCP−3に結合して認識する。
【0103】
好ましい実施形態では、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本明細書で定義される「モノクローナル抗体」、「モノクローナル抗体」、又は「mAb」という用語は、実質的に均質な抗体の集団を指し、すなわち、その集団を含むそれぞれの抗体は、少量で存在しうる自然に起こる可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は単一の抗原決定部位に対する。
【0104】
モノクローナル抗体は、いずれの当該技術分野において公知の方法で調製及び生成されうる。例えば、モノクローナル抗体は、免疫動物(例えば、ラット又はマウス)の脾臓又はリンパ節から取られたB細胞から、ハイブリッド細胞の成長に好ましい条件下で不死化B細胞と融合することによって調製されうる。
【0105】
マウスの免疫付与は、例えば、国際公開第2010/086854号に記載のように実施されうる。手短に、マウスの免疫付与は、例えば、完全フロイントアジュバントで乳化された所望の抗原、すなわち、CCR3結合ケモカイン、例えば、エオタキシン2、又はN−ループの立体構造エピトープを含むCCR3結合ケモカインの断片(例えば、50μg)を用いて皮下(s.c.)で一次免疫付与することによって実施されうる。次いで、不完全フロイントアジュバントで乳化された抗原(例えば、50μg)を用いた2回の皮下ブースター注射が2週毎に投与される。中和抗体価が最も高いマウスは、脾臓摘出前の4日、PBS中の抗原(例えば、5μg) のさらなる静脈内(i.v.)ブースト注射を受ける。
【0106】
最後のブースター注射の後、(例えば、4日)、中和抗体価が最も高いマウスの脾臓が摘出され、以前の記載(Kohler, G. and Milstein, C. (1975) Nature 256: 495−497)のように、脾細胞はポリエチレングリコールを用いてマウス骨髄腫細胞(例えば、NS0細胞)に融合される。融合した後、ハイブリドーマ細胞はHAT(ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン)培地中で培養することによって選択される。次に、細胞クローンは、例えば、下記のELISAアッセイを用いて特異的な抗体産生についてスクリーニングされる。
【0107】
モノクローナル抗体の精製は例えば、親和性クロマトグラフィー、すなわち、特異的エピトープが結合されたアフィニティーカラムを用いることに基づきうる。
【0108】
当該技術分野において公知であるように、例示的な抗体構造単位は四量体を含む。四量体は各々、2つのポリペプチド鎖の同一ペアから成り、各ペアは1つの「軽鎖」及び1つの「重鎖」をもつ。各鎖のN末端は、抗原(又はエピトープ)認識に主として関与する約100〜110又はそれより多いアミノ酸の可変領域を定義する。
【0109】
よって、「重鎖可変領域」(VH)及び「軽鎖可変領域」(VL)という用語はこれらの重鎖及び軽鎖をそれぞれ指す。より具体的に、可変領域は、超可変領域及びフレームワーク(FR)領域に細分される。超可変領域は、所与の位置において最も共通するアミノ酸に比較して、その位置における異なるアミノ酸の比率が高い。より安定なアミノ酸配列をもつ4つのFR領域は超可変領域を分割する。超可変領域は抗原の表面の部分に直接接触する。この理由のため、本明細書では、超可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」と呼ばれる。
【0110】
N末端からC末端に、軽鎖及び重鎖は両方とも領域FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。CDRは抗原の主としてエピトープへの結合に関与する。各鎖のCDRは典型的にCDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれ、N末端から順に番号がつけられ、通常特定のCDRが位置する鎖で識別される。
【0111】
よって、相補性決定領域CDRH1、CDRH2、及びCDRH3は、抗体の重鎖のN末端からの3つの相補性決定領域を指し、相補性決定領域CDRL1、CDRL2、及びCDRL3は、抗体の軽鎖のN末端からの3つの相補性決定領域を指す。
【0112】
幾つかの実施形態では、本発明による単離多重特異性モノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト化抗体である。
【0113】
本明細書で定義される「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種に由来し、一方で鎖の残部が別の種に由来する抗体、並びに同じ生体活性を示すそのような抗体の断片を指す。
【0114】
キメラ抗体は、例えば、下記のように、いずれの当該技術分野において公知の方法によって調製されうる。
【0115】
マウス−ヒトキメラ抗体は、抗体可変領域をコードするマウスV
H及びV
L遺伝子を増幅及びクローニングし、続いてマウス−ヒトキメラ抗体を発現することによって調製されうる。この目的のために、トータルRNAは所望の特徴をもつ抗体を分泌することが示されているマウス抗−エオタキシン2ハイブリドーマ細胞から単離され、cDNAは、オリゴ(dT)
15プライマー、M−MLV、及びAMV逆転写酵素を用いて合成される。重鎖及び軽鎖可変遺伝子(V
H及びV
L)の増幅は、基本的にBenhar and Reiter(Benhar, I. and Reiter, Y. (2002) Curr. Protoc. Immunol. Chapter 10: Unit 10 19B)に記載のように、各遺伝子のフレームワーク1の5’末端及び3’末端の定常領域(それぞれ、C
H1又はC
k)を対象にするプライマーのパネルを用いて実行されうる。
【0116】
次いで、可変遺伝子は、例えば、pCMVをベースとする抗体発現ベクターにクローニングするために両端に制限酵素認識部位を導入する非縮重プライマーを用いて再び増幅される。
【0117】
増幅された重鎖可変遺伝子及び軽鎖可変遺伝子は別個に精製され、切断され、適切な哺乳類の全長Ig発現ベクターにクローニングされて、各鎖に対応するシグナルペプチド及び定常遺伝子が与えられ、IgG1/kマウスヒトキメラ抗体発現をもたらす。
【0118】
大量の抗体を調製するために、細胞(例えば、CHO細胞)をキメラ抗体の重鎖及び軽鎖の両方を含有するIg発現ベクターでトランスフェクションすることによって抗体を発現する安定な細胞系が調製できる。次に、抗エオタキシン2(又は抗体の産生に使用されるいずれの他のCCR3−結合ケモカイン)抗体を高レベルで作るクローンが、いずれの当該技術分野において公知の方法によって、例えば本明細書において下記に詳説されるように、CCR3結合ケモカイン特異的ELISAアッセイによって試験されるように上清中の抗体レベルに基づいて選択及び拡張されうる。
【0119】
「ヒト化」抗体という用語は、CDR及び随意にさらなる関連位置に非ヒト免疫グロブリン由来する最小配列をもつヒト由来免疫グロブリンフレームワークを含有する非ヒト(例えば、マウス)抗体の形を伝統的に指す。通例、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性、及び活性をもつ、マウス、ラット、ウサギ、又はヒト以外の霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0120】
本明細書で使用される「完全ヒト化」抗体という用語は、ヒト配列のみをもつように設計された抗体に関する。本発明の完全ヒト化抗体は、患者における抗体の免疫原性を最小限にするComposite Human Antibodies(商標)技術を用いて調製された。このヒト化技術では、関係のないヒト抗体の可変(V)領域に由来する複数の配列断片が、開始抗体の相補性決定領域(CDR)用のアクセプターとして用いられる。ヒト配列断片を注意深く選択すること及びコンピュータツールを適用することを通して、CD4+T細胞エピトープが回避され、免疫原性のリスクが標準的なヒト化抗体と比較して低減される一方で抗体親和性及び特異性は維持される。そのような抗体はヒト配列のみを含み、よって「完全ヒト化」と定義される。
【0121】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒトによって作られる抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列をもち、及び/又は当該技術分野において公知であるヒト抗体を作る技法のいずれを用いて作られてきた抗体を指す。この定義は非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0122】
ヒト化抗体及びヒト抗体の調製は、当該技術分野において周知である。抗体はファージディスプレイを用いても調製されうる。当該技術分野において公知であるように、抗体ファージディスプレイ(APD)は、バクテリオファージの遺伝子工学及び抗原誘導選択とファージの増殖の循環過程の繰り返しに基づく。
【0123】
APDの過程は、選ばれた細胞源(例えば、末梢血単核細胞)から良質のRNAを調製することによって抗体ライブラリーを調製することで始まる。このRNAはcDNAに逆転写され、そのcDNAはコードされる抗体のVH鎖及びVL鎖のPCRに使用される。このステップの後に、可変重(VH)及び可変軽(VL)PCR産物がファージディスプレイベクターにライゲーションされ、最終段階としてmAbのクローンが解析される。
【0124】
1つの実施形態では、本発明は、配列番号5で表わされるNSGMNのアミノ酸配列を含むCDRH1又はその変型、配列番号6で表わされるアミノ酸配列WINTYNGEPTYTDDFKGを含むCDRH2又はその変型、及び配列番号7で表わされるアミノ酸配列HSYGSSYAMDNを含むCDRH3又はその変型を含む重鎖可変領域、並びに配列番号8で表わされるアミノ酸配列KASQSVDYDGDSYMNを含むCDRL1又はその変型、配列番号9で表わされるアミノ酸配列VASNLKSを含むCDRL2又はその変型、及び配列番号10で表わされるアミノ酸配列QQSNEEPWTを含むCDRL3又はその変型を含む軽鎖可変領域を含む単離完全ヒト化多重特異性モノクローナル抗体を提供する。
【0125】
言い換えれば、本発明は、少なくとも2つのCCR3−結合ケモカインに結合する単離多重特異性抗体又はそのいずれの抗原結合断片を提供し、該抗体は、完全ヒト化抗体であり、
a)配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR1又はその変型、
b)配列番号6で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR2又はその変型、及び
c)配列番号7で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR3又はその変型を含む重鎖可変領域、並びに
d)配列番号8で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR1又はその変型、
e)配列番号9で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR2又はその変型、及び
f)配列番号10で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR3又はその変型を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0126】
幾つかの実施形態では、本発明は、線維性疾患、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、又はアレルギー・アトピー性疾患の治療で用いる、少なくとも2つのCCR3−結合ケモカインに結合する単離多重特異性抗体又はそのいずれの抗原結合断片を提供し、前記抗体が、完全ヒト化抗体であり、
a)配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR1又はその変型、
b)配列番号6で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR2又はその変型、及び
c)配列番号7で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR3又はその変型を含む重鎖可変領域、並びに
d)配列番号8で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR1又はその変型、
e)配列番号9で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR2又はその変型、及び
f)配列番号10で表わされるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR3又はその変型を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0127】
配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10でそれぞれ表わされる上記CDR配列CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3は、そのそれぞれの重鎖及び軽鎖配列に照らしても示される。
【0128】
本明細書で例示される単離完全ヒト化多重特異性モノクローナル抗体の重鎖のアミノ酸配列は本明細書において配列番号3で表わされ、アミノ酸配列:
から成る。
【0129】
本明細書で例示される単離完全ヒト化多重特異性モノクローナル抗体の軽鎖のアミノ酸配列は本明細書において配列番号4で表わされ、アミノ酸配列:
から成る。
【0130】
したがって、さらなる実施形態では、本発明に従って使用される単離多重特異性抗体は、配列番号3で表わされる重鎖可変領域又はその変型及び配列番号4で表わされる軽鎖可変領域又はその変型を含む完全ヒト化抗体である。
【0131】
また、本発明は、重鎖及び軽鎖可変領域の変型も包含する。変型は、明細書に記載される抗体の活性を変えない重鎖及び軽鎖の相補性決定領域に又はフレームワーク領域に変異を含みうる。
【0132】
「変型」という用語によって、本明細書で具体的に特定される配列と異なるアミノ酸又はヌクレオチドの配列を意味され、その配列では1つ以上のアミノ酸残基又はヌクレオチドが削除、置換、又は付加される。
【0133】
本明細書で使用される「付加された」という用語によって、本明細書に記載される配列へのアミノ酸残基のいずれの付加を意味することが理解されるべきである。
【0134】
変型はさまざまなアミノ酸置換を包含する。アミノ酸「置換」は、ある1つのアミノ酸を、同一又は異なる構造的性質及び/又は化学的性質をもつ別のアミノ酸で置き換えた結果である。アミノ酸置換は、関与残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性における類似性に基づいて行われうる。
【0135】
典型的には、変型は、保存的アミノ酸置換を包含する。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は当該技術分野において周知である。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンが挙げられ、極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが挙げられ、正電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン、及びヒスチジンが挙げられ、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。
【0136】
次の8つの群は各々、相互に保存的置換である他の例示的なアミノ酸を含む。
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);及び
8)システイン(C)、メチオニン(M)
【0137】
保存的核酸置換は、上記に定義された保存的アミノ酸置換をもたらす核酸置換である。
【0138】
また、本発明による変型は、非極性アミノ酸から極性アミノ酸への置換及びその逆の置換も包含する。
【0139】
本明細書で使用される「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」という用語は、天然アミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。
【0140】
変型配列は、そのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列の、本明細書に記載されるアミノ酸配列又はヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載される抗体の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列)との同一性の%割合によって特徴付けられうるアミノ酸又は核酸配列を指す。
【0141】
幾つかの実施形態では、本明細書で定義される変型配列は、重鎖及び軽鎖可変領域をコードする核酸配列を指し、各々は、本明細書に記載される重鎖及び軽鎖可変領域の配列と比較して少なくとも70%又は75%の配列同一性、約80%又は85%の配列同一性、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性をもつヌクレオチドの配列を有する。
【0142】
幾つかの実施形態では、本発明による単離多重特異性ヒト化モノクローナル抗体は、その重鎖可変領域が、配列番号1で表わされる重鎖可変領域の核酸配列と少なくとも70%同一である核酸配列によってコードされ、その軽鎖可変領域が、配列番号2で表わされる軽鎖可変領域の核酸配列と少なくとも70%同一である核酸配列によってコードされる。
【0143】
「抗体の活性」という用語によって、少なくとも2つのCCR3結合ケモカインに結合し、好ましくはそのようなCCR3結合ケモカイよって媒介される生体機能を阻害する抗体の能力が意味される。
【0144】
そのような生体機能の非限定的な例は、細胞動員又は走化性(例えば、好酸球又は単球又は線維芽細胞の動員又は走化性)の阻害、線維芽細胞の筋芽細胞への転換の阻害、又は(例えば、Ca
+取り込みによって測定した)細胞活性化の減少である。該生体機能は当該技術分野において周知である方法を用いて生体内又はインビトロで測定できる。そのようなアッセイの幾つかを下記の実施例に記載する。
【0145】
本発明に従って調製される抗体の、その標的タンパク質に対する結合を決定するさらなるインビトロ実験としては、例えば、ELISAアッセイが挙げられる。
【0146】
さらに本発明は、本発明の単離多重特異性モノクローナル抗体のいずれの抗原結合断片も包含する。そのような抗原結合断片は、例えば、抗原に結合できるFab及びF(ab’)
2でありうる。そのような断片は、当該技術分野において公知のいずれの方法、例えば、パパイン(Fab断片を産出)又はペプシン(F(ab’)
2断片を産出)などの酵素を用いるタンパク質分解的切断によって作られうる。
【0147】
よって幾つかの実施形態では、本発明による単離多重特異性モノクローナル抗体は、抗体断片Fv、一本鎖Fv(scFv)、抗原に結合可能な重鎖可変領域、抗原に結合可能な軽鎖可変領域、Fab、F(ab)
2’、及びそれらのいずれの組み合わせからなる群より選択される。
【0148】
興味深いことに、エピトープマッピングを用いて、発明者らは、本発明の抗体(hCM101)に結合する、エオタキシン1、エオタキシン2、RANTES、及びMCP−3中の特異的エピトープを特定した。
【0149】
本発明の抗体(hCM101)が結合するエピトープは、エオタキシン−2では配列番号15で表わされるアミノ酸配列CMFFVSKRIPを含み、エオタキシン−1ではエピトープは配列番号16で表わされるアミノ酸配列CFNLANRKIPLQRLを含み、RANTESではエピトープは配列番号17で表わされるアミノ酸配列AYIARPLPRAHIKEYFY含み、MCP3ではエピトープは配列番号18で表わされるアミノ酸配列CCYRFINKKI(「N−ループの第1の部分」)及び配列番号19で表わされるアミノ酸配列SYRRTTSSH(「N−ループの第2の部分」)を含む。
【0150】
図20Bに示されるこれらのエピトープの配列アラインメントから明らかなように、これらのエピトープのアミノ酸配列は同一ではない。しかし、
図21A〜Dに模式的に示されるように、これらのエピトープはすべてCCR3結合ケモカイン内の同じ領域、すなわち、N−ループ領域に位置し、hCM101によって認識される独特の三次元構造を明らかに形成する。言い換えれば、本発明の抗体(hCM101)が結合する、エオタキシン1、エオタキシン2、RANTES、及びMCP−3のN−ループに共通する立体構造エピトープが存在する。
【0151】
本明細書で使用される「立体構造エピトープ」という用語は、抗原決定基、抗原のアミノ酸配列の連続又は不連続断片から構成される抗体によって認識される抗原の部分に関する。立体構造エピトープは、抗原の3D面特徴及び形状又は三次構造に基づいて、抗体の結合部位と相互作用する。場合によっては、そのようなエピトープは、直線配列、ポリペプチドの構造中のその相対的な位置、特定されるエピトープ内に見られる特徴的なアミノ酸によって部分的に特定されうる。
【0152】
「N−ループ領域」という用語によって、CCR3結合ケモカインのN末端に位置する最初のβストランドに関してN−ループ及びターン(turn)が意味される。例えば、
図21A(エオタキシン−2のタンパク質表面が示される)及び
図21E(エオタキシン−2のリボンダイヤグラム)に示されるように、CCR3結合ケモカインエオタキシン−2においてN−ループ領域は、配列番号15で表わされるアミノ酸配列CMFFVSKRIPを含む。
【0153】
したがって幾つかの実施形態では、本発明の単離抗体は、立体構造エピトープが、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、又は配列番号19で表わされるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0154】
興味深いことに、エオタキシン1、エオタキシン2、RANTES、及びMCP−3のN−ループ領域に見出される立体構造エピトープのバイオインフォマティクス解析から、上記で定義されたエピトープ連続アミノ酸配列部分内又はその近傍中のいずれかに位置する数個の正電荷をもつアミノ酸残基が明らかになった。そのエピトープは
図20及び
図21に模式的にされる。バイオインフォマティクス解析よれば、抗体は、N−ループ領域に形成される構造を含むCCR3−結合ケモカイン内の領域に結合し、エオタキシン2では位置Lys−14及びArg−15(配列番号15で表わされるエピトープ内に位置する)及びArg−20、エオタキシン1では位置Arg−16及びLys−17(配列番号16で表わされるエピトープ内に位置する)及びArg−22、RANTESでは位置Arg−17(配列番号17で表わされるエピトープ内に位置する)、His−23及びArg−21、並びにMCP3では位置Lys−18及びLys−19(配列番号18で表わされるエピトープ内に位置する)及びArg−24のアミノ酸残基が関与する。エオタキシン2、エオタキシン1、RANTES、及びMCP3のアミノ酸配列(N末端のシグナルペプチドを含まない)にそれぞれ対応する配列番号11〜14に示される通り、各ケモカイン配列内の特定アミノ酸位置はN末端のシグナルペプチドを含まないケモカイン配列に関連する。
【0155】
「位置」という用語によって、当該技術分野において公知であるように、「1位」はシグナルペプチドの後(すなわち、成熟ポリペプチドのアミノ酸配列)の最初のN端アミノ酸残基を示し、「2位」は、N端アミノ酸残基の下流にあるアミノ酸残基を示すなど、N末端からC末端への方向におけるアミノ酸配列内の位置が意味される。
【0156】
正電荷をもつアミノ酸残基の「比較的高度な集中」という用語によって、少なくとも3つの正電荷をもつアミノ酸残基、例えば3つの正電荷をもつアミノ酸残基が意味される。
【0157】
したがって、本発明の態様の別の1つによって、本発明は、CCR3結合ケモカインのN−ループ領域の立体構造エピトープに結合する単離抗体を提供し、前記立体構造エピトープは、前記CCR3結合ケモカインのアミノ酸配列のアミノ酸位置14と24の間に位置する正電荷をもつアミノ酸残基の比較的高度な集中を特徴とする。
【0158】
幾つかの特定の実施形態では、本発明の単離抗体は、立体構造エピトープが、前記CCR3結合ケモカインのアミノ酸配列のアミノ酸位置14と24の間に少なくとも3つの正電荷をもつアミノ酸残基を含む。
【0159】
他の特定の実施形態では、正電荷をもつアミノ酸残基は、Arg、Lys、及びHisからなる群より選択される。
【0160】
ある特定の実施形態では、本発明の単離抗体は、エオタキシン2では位置Lys−14、Arg−15、及びArg−20、エオタキシン1では位置Arg−16、Lys−17、及びArg−22、RANTESでは位置Arg−17、His−23、及びArg−21、並びにMCP3では位置Lys−18、Lys−19、及びArg−24のアミノ酸残基を含むエピトープに結合する。
【0161】
また、上記で定義される共通エピトープは、数個のCCR3結合ケモカインに対する多重特異性結合能を有するさらなる抗体スクリーニング及び特定にも役立ちうる。そのような抗体は、それらのケモカインによって媒介される細胞遊走を弱める活性がある可能性が高いと思われる。
【0162】
したがって、別の態様では、本発明は、少なくとも1つのCCR3、CCR1、CCR2、又はCCR5を発現する細胞の遊走性を効率的に弱めることができる抗体をスクリーニング及び特定する方法を提供する。
【0163】
1つの実施形態では、前記方法は、
a.CCR3結合ケモカインに対する抗体を得ることと、
b.CCR3結合ケモカインのN−ループ領域の、前記CCR3結合ケモカインのアミノ酸配列のアミノ酸位置14と24の間に位置する正電荷をもつアミノ酸残基の比較的高度な集中を特徴とする立体構造エピトープへの前記抗体の結合を評価すること、
c.前記立体構造エピトープに結合する抗体を選択することを含み、
そこにおいて、前記立体構造エピトープに特異的に結合する抗体は、CCR3、CCR1、CCR2、及びCCR5を発現する細胞の遊走性を効率的に弱めることができる。
【0164】
1つの実施形態では、前記立体構造エピトープは、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び配列番号19で表わされるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0165】
1つの特定の実施形態では、結合を評価する工程は、抗体を前記立体構造エピトープと接触させることによって、例えば、抗体をN−ループを含むケモカインの断片とインキュベーションすること、又は抗体を少なくとも1つの配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び配列番号19で表わされるアミノ酸配列とインキュベーションすることによって行われる。インキュベーションは、当該技術分野において公知の、抗原−抗体結合を評価するいずれの方法、例えば、ELISAによって、又は複数のアミノ酸断片を含有するチップを用いて行われうる。インキュベーションは結合バッファーの存在下で行われ、抗体結合は、例えば、検出可能に標識された二次抗体とさらにインキュベーションすることによって評価される。
【0166】
本明細書で使用される「スクリーニング及び特定すること」という用語は、抗体又は複数の抗体を上記で定義された本発明のエピトープに結合する能力について評価すること及びエピトープに結合することよってケモカインに結合した際にCCR−結合ケモカインの活性を弱めることが予想される抗体を選択することに関する。
【0167】
ある特定の実施形態では、前記立体構造エピトープは次の位置のアミノ酸残基を含む:エオタキシン2ではLys−14、Arg−15、及びArg−20(そのアミノ酸配列は配列番号11で表わされる)、エオタキシン1ではArg−16、Lys−17、及びArg−22(そのアミノ酸配列は配列番号12で表わされる)、RANTESではArg−17、His−23、及びArg−21(そのアミノ酸配列は配列番号13で表わされる)、並びにMCP3ではLys−18、Lys−19、及びArg−24(そのアミノ酸配列は配列番号14で表わされる)。
【0168】
また、本発明の特定立体構造エピトープは、少なくとも1つの、CCR3、CCR1、CCR2、又はCCR5を発現する細胞の遊走性を効率的に弱めることができる抗体を作製するための抗原として使用できる。したがって、別の態様では、本発明は、立体構造エピトープを含むCCR3結合ケモカインの単離N−ループ領域を提供し、前記CCR3結合ケモカインに対する抗体を作り出すため、前記立体構造エピトープは、前記CCR3結合ケモカインのアミノ酸配列のアミノ酸位置14と24の間に位置する正電荷をもつアミノ酸残基の比較的高度な集中を特徴とする。特定の実施形態では、前記単離N−ループ領域は、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び配列番号19で表わされるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0169】
ある実施形態では、本発明は、立体構造エピトープを含むCCR3−結合ケモカインの単離N−ループ領域を提供し、前記立体構造エピトープは、前記CCR3結合ケモカインに対する抗体を作り出す方法で用いる、前記CCR3結合ケモカインのアミノ酸配列のアミノ酸位置14と24の間に位置する正電荷をもつアミノ酸残基の比較的高度な集中を特徴とする。特定の実施形態では、前記単離N−ループ領域は、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び配列番号19で表わされるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0170】
よって、本発明は、本発明のエピトープを得ること及び当該技術分野において公知のいずれの方法を用いて前記エピトープに対する抗体を作製することを含む、少なくとも1つの、CCR3、CCR1、CCR2、又はCCR5を発現する細胞の遊走性を効率的に弱めることができる抗体を作り出す方法をさらに提供する。
【0171】
動物をワクチン接種し、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を作り出す方法は当該技術分野において周知である。
【0172】
本発明の態様の別の1つでは、本発明は、本発明による抗体又はそのいずれの抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を提供する。
【0173】
本明細書で定義される「核酸」又は「核酸分子」という用語は、一本鎖でも二本鎖でもよいデオキシリボ核酸(DNA)、及び適切な場合にはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドであるヌクレオチドのポリマーを指す。該用語は、同等のものとして、ヌクレオチド類似体から作られるRNA又はDNAのいずれかの類似体、及び記載されている実施形態に適用可能の場合、一本鎖(センス又はアンチセンスなどの)及び二本鎖ポリヌクレオチドを含むことが理解されるべきである。また、本明細書で使われるDNAという用語は、cDNA、すなわち、逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)に作用によってRNA鋳型から作製される相補的DNA又はコピーDNAも包含する。
【0174】
本発明は、本明細書で定義される単離核酸分子を含む発現ベクターをさらに提供する。
【0175】
本明細書で使用される、時として「発現媒体」又は「発現コンストラクト」と呼ばれる「発現ベクター」は、DNA断片の宿主ゲノムへの組み込みを可能にする、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、組込可能DNA断片、及び他の媒体などのベクターを包含する。典型的に発現ベクターは、所望の遺伝子又はその断片を含有する自己複製DNA又はRNAコンストラクトであり、適切な宿主細胞中で認識され、所望の遺伝子の発現をもたらす遺伝子制御エレメントに作動可能に連結される。これらの制御エレメントは適切な宿主での発現をもたらすことができる。本発明による発現ベクターは、ほんの数例を挙げれば、細菌、酵母、又は哺乳類宿主細菌での発現に適格でありうる。
【0176】
本発明の態様のさらに別の1つでは、本発明は、本発明による単離核酸分子又は本発明による発現ベクターでトランスフェクションされる宿主細胞を提供する。
【0177】
本明細書で使用される「宿主細菌」という用語は、本発明による単離核酸分子又は本発明による発現ベクターの導入を受けやすい細胞を指す。好ましくは、前記細胞は、哺乳類細胞、例えば、CHO細胞又はNS0細胞である。本発明による単離核酸分子又は発現ベクターの宿主細胞へのトランスフェクションは、当該技術分野において公知のいずれの方法で行われうる。
【0178】
本発明の態様のさらに別の1つでは、本発明は、本発明による抗体又はそのいずれの抗原結合断片を含む免疫複合体及びさらなる治療薬、例えば、抗炎症剤を提供する。
【0179】
本明細書で定義される「免疫複合体」という用語は、さらなる薬剤に複合(結合又は連結)する本発明による抗体又はそのいずれの抗原結合断片に指す。免疫複合体は、当業者に公知のいずれの方法、例えば、さらなる薬剤を本発明による抗体への架橋又は組み換えDNA法によって調製されうる。
【0180】
本発明の多重特異性抗体は、少なくとも1つのさらなる治療薬と併用して投与されうる。
【0181】
本明細書で使用される「さらなる治療薬」という用語は、線維性疾患、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、又はアレルギー・アトピー性疾患を治療するために使用されうるいずれの薬剤を指す。幾つかの実施形態では、さらなる治療薬は、さらなる抗炎症剤又は抗線維化薬である。ある実施形態においては、前記少なくとも1つのさらなる治療薬は、化学療法剤、サイトカイン、ペプチド、抗体、及び抗生物質からなる群から選択される。
【0182】
ある実施形態では、前記さらなる治療薬としては、メトトレキサート、ステロイド、シクロスポリン、NSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)、ステロイド、インターフェロンベータ、経静脈免疫グロブリン(IVIG)、ピルフェニドン、ニンテダニブ、ボセンタン、又はマシテンタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
ある実施形態では、さらなる治療薬は、さらなる抗体である。本明細書で定義される「さらなる抗体」という用語は、本発明による抗体ではない、本発明の抗体と併用して使用されうる抗体を指す。そのような抗体は、非限定的な例として、TNFα、TNF受容体、IL6受容体、又はCD20を対象にしうる。
【0184】
本発明は、本発明の単離多重特異性抗体、又は本明細書で定義されるそのいずれの抗原結合断片若しくは免疫複合体及び薬理学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を、活性成分として含む医薬組成物をさらに提供する。
【0185】
本発明の「医薬組成物」は、大体において、本明細書で定義される抗体又はそのいずれの抗原結合断片、並びに当該技術分野において公知であるように組成物並びに随意に1つ以上の薬理学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤の容積モル浸透圧濃度を調整する薬剤であるバッファーを含む。
【0186】
本明細書で使用される「薬理学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤」という用語は、当該技術分野において公知であるあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌性物質、及び抗真菌薬などを含む。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒でありうる。各担体は、他の成分と混合可能で、対象に有害ではないという意味で医薬的にも生理学的にも許容可能であるべきである。従来の媒質又は薬剤が活性成分と混合不能である場合を除き、治療用組成物におけるそのいずれの使用が企図される。
【0187】
その他の実施形態では、本発明による医薬組成物は、さらなる治療薬、例えば、抗炎症剤をさらに含んでなる。
【0188】
特定の実施形態では、本発明は、少なくとも2つの炎症性CCR3−結合ケモカインに結合する単離多重特異性ヒト化抗体、又はそのいずれの抗原結合断片を含む医薬組成物に関し、抗体は、配列番号3で表わされるアミノ酸配列の重鎖可変領域又はその変型及び配列番号4で表わされるアミノ酸配列の軽鎖可変領域又はその変型を含む。
【0189】
さらに提供されるのは、本発明による単離多重特異性抗体若しくはそのいずれの抗原結合断片又は医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、アレルギー・アトピー性疾患、又は線維性疾患を予防、治療、又は改善する方法である。
【0190】
幾つかの実施形態では、本発明は、少なくとも2つの炎症性CCR3結合ケモカインに結合する単離多重特異性ヒト化抗体、又はそのいずれの抗原結合断片の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、アレルギー・アトピー性疾患、又は線維性疾患を予防、治療、又は改善する方法を提供し、抗体は、配列番号3で表わされるアミノ酸配列の重鎖可変領域又はその変型及び配列番号4で表わされるアミノ酸配列の軽鎖可変領域又はその変型を含む。
【0191】
「対象」又は「患者」という用語は互換可能に使用され、哺乳類(例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、又はヒト)などの、本発明から利益を享受する可能性のある対象を指す。1つの特定の実施形態では、患者はヒトである。
【0192】
本明細書で定義される「予防」という用語によって、「予防的(preventive)治療」又は「予防的(prophylactic)治療」、すなわち、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、アレルギー・アトピー性疾患、又は線維性疾患、又はそのような疾患の発作を防御又は予防するのに保護的に作用することを提供することが意味される。
【0193】
本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」、「治療」、又はその形態という用語は、疾患若しくは病態の有害な影響を軽減すること、予防すること、治癒させること、回復に向かわせること、寛解させること、弱めること、緩和すること、最小限に抑えること、抑制すること、又は食い止めること、又は炎症性CCR3結合ケモカインの影響を受ける疾患の1つ以上の臨床的兆候の発症を遅らせることを意味することが理解されるべきである。そのような疾患としては、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、アレルギー・アトピー性疾患、又は線維性疾患が挙げられる。
【0194】
本明細書で使用される「治療」という用語は、エオタキシン2によって媒介される疾患又は病態の有害な影響を軽減すること、予防すること、治癒させること、回復に向かわせること、弱めること、緩和すること、最小限に抑えること、抑制すること、又は食い止めることを指す。
【0195】
本発明による投与は、次の経路のいずれかで行われうる:経口投与、静脈内、筋肉内、腹膜内、髄腔内若しくは皮下注射;直腸内投与;鼻腔内投与、点眼、又は局所投与。
【0196】
特定の実施形態では、本発明による投与は静脈内に行われうる。他の特定の実施形態では、投与は腹膜内に行われうる。他の特定の実施形態では、投与は吸入によって行われうる。
【0197】
本明細書で定義される抗体又は抗体断片、それを含むいずれの医薬組成物、又はそれらを含むいずれの複合体は、疾患の発症前に対象に投与してもよく、発症後に対象に投与してもよい。
【0198】
よって幾つかの実施形態では、本発明による、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、アレルギー・アトピー性疾患、又は線維性疾患を予防、治療、又は改善する方法は、本発明による前記単離ヒト化多重特異性抗体若しくはそのいずれの抗原結合断片又は本発明による医薬組成物が、疾患の発症前又は後に前記対象に投与される。
【0199】
本発明による単離モノクローナル抗体若しくはそのいずれの抗原結合断片又は本明細書に定義される目的のための本発明による医薬組成物の「治療有効量」は、医学的状態を治癒させる、進行を抑える、又は少なくとも緩和若しくは寛解させるために、当該技術分野において公知であるかかる考慮によって決定される。本発明の方法に使用されるいずれの調製物に関して、投与量又は治療有効量は、インビトロ細胞培養アッセイから、又は本明細書で詳述される動物モデルなどの動物モデルに基づいて、最初に推定できる。
【0200】
幾つかの実施形態では、本発明による治療有効量は0.01〜100mg/kgの範囲にある。
【0201】
その他の実施形態では、本発明による治療有効量は、0.01〜40mg/kg、0.1〜40mg/kg、又は1〜10mg/kgの範囲にある。
【0202】
その他の実施形態では、本発明による単離ヒト化多重特異性抗体又はそのいずれの抗原結合断片又は本発明による医薬組成物は、単回投与又は複数回投与として対象に投与される。
【0203】
本発明の文脈で「それを必要とする対象」という用語は、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、アレルギー・アトピー性疾患、又は線維性疾患を患う、例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、モルモット、霊長類、及びヒトなどの温血動物を意味する。
【0204】
本発明は、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、アレルギー・アトピー性疾患、又は線維性疾患を予防、治療、又は改善する方法で用いる本発明による単離ヒト化多重特異性抗体又はそのいずれの抗原結合断片又は本発明による医薬組成物をさらに提供する。
【0205】
特定の実施形態では、本発明は、少なくとも2つの炎症性CCR3結合ケモカインに結合する単離ヒト化多重特異性抗体、又はそのいずれの抗原結合断片を提供し、その抗体は、自己免疫性炎症性疾患、単球関連疾患、アレルギー・アトピー性疾患、又は線維性疾患を予防、治療、又は改善する方法で用いる、配列番号3で表わされるアミノ酸配列の重鎖可変領域又はその変型及び配列番号4で表わされるアミノ酸配列の軽鎖可変領域又はその変型を含む。
【0206】
「精製された」又は「単離された」という用語は、その自然環境から除去され、単離又は分離される、アミノ酸若しくは核酸配列、ペプチド、ポリペプチド、又は抗体などの分子を指すことが理解される。したがって、「単離抗体」は精製された抗体である。本明細書で使用される「精製された」又は「精製する」という用語は、混入物質を試料から除去することも指す。
【実施例】
【0207】
材料及び方法
特異性ELISA
CM101の特異性はELISAで評価する。プレートを次の抗原でコーティングした:エオタキシン1、エオタキシン2、単球化学誘引物質タンパク質−3(CCL7)、及びRANTES(CCL5)。いずれも、1μg ml−
1で4℃にて一晩コーティングした。洗浄(PBS+0.1% ツイーン20)した後、hCM101(5μg)をプレートに1時間加えた。再度洗浄した後、CM101を抗ヒト西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体(PBSで1:5000希釈して1時間インキュベーション)を用いて検出し、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質(シグマケミカル社、ジリンガム、英国)を用いて定量した。10分後に反応を硫酸(50μl、2M)で止め、光学密度を450nMで測定した。
【0208】
免疫組織化学:
ヒトエオタキシン2/CCR3に対する免疫組織化学染色を、硬皮症患者の皮膚/肺生検の5μm厚凍結切片で行った。メタノール及びアセトンで固定した後、切片を非免疫ウサギ及びヤギ血清でブロックし、続いてCASブロッキング試薬とインキュベーションした。その後、一次抗体(抗エオタキシン−2抗体又は抗CCR3抗体のいずれか)を室温で1時間加えた。洗浄した後、ビオチン標識したアフィニティー精製ヤギ抗マウス/ウサギ抗体(ジャクソン社)を加えた。次に、スライドを0.3% H
2O
2とインキュベーションした後、さらに洗浄し、ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ複合体(ジャクソン社)と室温で30分間インキュベーションした。スライドを3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(ダコ社)で15分間発色させ、ヘマトキシリンで対比染色した。皮膚及び肺切片の肺炎症及び線維症変化の分析にはH&E及びマッソントリクローム染色を用いた。
【0209】
プルダウンアッセイ
ダイナビーズプロトコール(ライフテクノロジー社)を用いるプルダウンを採用した。CM101の濃度を上げてさまざまな濃度で、磁気ビーズ(1mg)と室温で1.5時間インキュベーションした。次に、磁気分離を行った後、(全身性強皮症患者の)ヒト血清と一晩インキュベーションした。磁気分離及びビーズからのケモカインの溶出を行い、ニトロセルロース膜に移し、市販の抗Eox2抗体に曝した。また、エオタキシン1、RANTES、及びMCP−3に対するhCM101の結合能も、SDSゲル電気泳動を用いて評価した。
【0210】
走化性アッセイ
AML 14.3D10、CCR3を安定して発現する好酸性細胞系をPBSで洗浄し、アッセイバッファー(RPMI1640、1%エンドトキシンを含まないBSA、100U ml−
1ペニシリン、及び100μg ml−
1ストレプトマイシン)に10
7個の細胞 ml−
1で再懸濁した。異なる濃度(10−
7M〜10−
9M)のhCM101を5nMヒトエオタキシン−1及びエオタキシン−2又はMCP−3及びRANTES(30分、37℃)の組み合わせとインキュベーションし、5μmの細孔をもつ24ウェルのトランスウェルプレート(コスター社)の下部チャンバーに入れ、100μlの細胞(1×10
6個の細胞)を各トランスウェルプレート上部チャンバーに入れて、アッセイを37℃で4時間インキュベーションした(5%C0
2)。下部チャンバーに遊走する生細胞をフローサイトメーター(FACSキャリバー)、BDバイオサイエンス社、カウリー、英国)を用いて数えた。結果は対照(つまり、ケモカインによって誘導された)遊走の%割合として表わされる。
【0211】
また、CCR1、CCR3、及びCCR5を発現するU937単球細胞系でも実験を行った。その細胞の遊走を阻害するhCM101の能力を評価するために、hCM101を5nMMCP−3及びRANTESの混合物とインキュベーションし、5μmの細孔をもつ24ウェルのトランスウェルプレート(コスター社)の下部チャンバーに入れた。アッセイを上記のように行った。
【0212】
CD14陽性細胞に関して、我々は硬皮症患者の全血から単離したフィコールPBMCにMACS分離磁気ビーズ(ミルテニー)を使用した。CD14+細胞のMCP3及びRANESへの遊走を上記のように評価した。また、hCM101で処理した、エオタキシン1、2、及びRANTESに対するCD14−細胞の遊走を調べた。
【0213】
エオタキシン2に反応した付着細胞(線維芽細胞−NHDF)走化性を評価するために、我々は、フィブロネクチンでコーティングした細孔径が8μmのトランスウェル(コスター社)を使用した。エオタキシン2をhCM101と30分間インキュベーションした後、NHDF細胞(5×104個の細胞)を上部チャンバーに加え、37℃で4時間インキュベーションした。次に、非遊走細胞を綿棒でインサート膜から取り除いた。その膜を4%パラホルムアルデヒドで固定し、次に遊走した細胞をクマシーブルーで染色した。倒立顕微鏡を用いて無作為に選んだ3つの視野で遊走している細胞の数を数え、イメージプロソフトウェアを使用して解析した。
【0214】
カルシウム活性化アッセイ:
細胞(2×10
6個の細胞/mL)をカルシウムセンサー(Flou4−AM、インビトロジェン)を4μΜの最終濃度で含むPBS+/+(カルシウム マグネシウム ++)中で37
0にて30分間インキュベーションした。次に細胞を洗い、37
0にて500ulのPBS+/+中でさらに30分間インキュベーションした。細胞をフローサイトメーターを用いて30秒間(488レーザー、フィルター520)解析し、次に(hCM101とのプレインキュベーションをした後又はプレインキュベーションをせずに)、100ng/mlのエオタキシン2で刺激し、直ちにフローサイトメトリーの読み取りに進んだ。
【0215】
フローサイトメトリー細胞内染色:
線維芽細胞をCM101(10又は5μg/ml)及びヒト血清と24時間インキュベーションした。次に、細胞をトリプシン処理し、70% エタノールで固定し、細胞付き抗αSMA抗体(anti α SMA Ab with the cells)(バイオレジェンド社)と室温にて0.5時間インキュベーションした。次に細胞を洗浄し、二次抗体Cye3ロバαウサギIgG(PBS中1:300)に室温にて0.5時間供した。フローサイトメーターによって細胞を解析した。
【0216】
生体内硬皮症モデル
ブレオマイシン(シグマ社)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に100μg/mlで溶かした。
【0217】
予防モデル:
50μgのブレオマイシンを6週齢の雌C3Hマウスに21日間、毎日皮下注射して全身性硬化症を誘導した。ブレオマイシン注射の開始と同時に、CM−101(5μg、10μg、20μg、又は50μgの投与量)、免疫グロブリンG1(IgG1)、又はPBSを1日おきに注射した(1日目から開始)。
【0218】
治療モデル:
6週齢の雌C3Hマウスをブレオマイシン(1日当たり50μg)の皮下注射で20日間治療した。ブレオマイシンの連日投与の開始後8日から始めて、マウスを100μlの腹腔内注射中50μg/日のCM−101又はPBSで毎日治療し、21日目に犠牲にした。重大なことには、CM−101での治療の開始が疾患症状の発症後であった。
【0219】
次いでマウスを犠牲にし、全層6mmパンチ生検を注射部位から得た。パラフィン及び凍結ブロック用並びにコラーゲンアッセイ用の皮膚組織採取。くわえて、血液を眼窩静脈叢から集めた。そして最後に、肺を組織学的検査用に採取した。白血球の%割合を調べるために気管支肺胞洗浄(BAL)を(0.1% BSA及び0.05mM EDTAを含有するPBSで)行った。
【0220】
生体内IPFモデル:
予防モデル−
7週齢の雄C57BLマウスをイソフルレン麻酔下で気管内注射によってBLMの単回投与(60μg/マウス)で治療した。BLMはPBSに溶かした。注射後、マウスを立向き姿勢(vertical position)にして1分間回転した。ブレオマイシン注射の開始と同時に、CM−101(10μg、50μg、又は100μgの投与量)、免疫グロブリンG1(IgG1)、又はPBSを1日おきに注射した(1日目にから開始)。
【0221】
治療モデル:
7週齢の雄C57BLマウスをイソフルレン麻酔下で気管内注射によってBLMの単回投与(60μg/マウス)で治療することになる。BLMはPBSに溶かした。注射後、マウスを立向き姿勢にして1分間回転した。ブレオマイシン投与後9日、マウスを100μl腹腔内注射中10又は50μg/日のCM−101、IgG、又はPBSで毎日治療し、21日目に犠牲にした。重大なことには、CM−101での治療の開始が疾患症状の発症後であった。ブレオマイシン注射の9日後、ベースライン線維症及び炎症を評価するためにPBS群及びブレオマイシン群を犠牲にした。21日目に残りの群も犠牲にした。
【0222】
マウスを犠牲にし、肺を組織学的検査用及びコラーゲン測定(sircol)用に採取した。白血球の%割合を調べるために気管支肺胞洗浄(BAL)を(0.1% BSA及び0.05mM EDTAを含有するPBSで)行った。
【0223】
コラーゲン含有量の測定
可溶性コラーゲンはSircol可溶性コラーゲンアッセイ(Biocolor社、ベルファスト、英国)を用いて定量した。皮膚試料をCM101(5、20、又は100μg/ml)、IgG、又はPBSのいずれかで治療した強皮症マウスから得た。試料は酸・ペプシン溶液に抽出した。その試料を製造業者のプロトコールに従ってコラーゲン含有量について分析した。手短に言うと、100μlの試料を1mlの比色試薬(ピクリン酸中の色素SR)に加え、30分間撹拌した後、10,000gで10分間遠心分離した。アルカリ試薬(1N NaOH)を用いてSR色素をペレットから放出させ、マイクロプレートリーダー上で555nmにて分光光度の読み取りを行った。
【0224】
BALアッセイ:
BALアッセイを以前の記述(Komaiら、2010年)の通り行った。気管にカニューレを挿入し、肺を0.1% BSA及び0.05mM EDTA−2Naを含有する0.5mlのカルシウムもマグネシウムも含まないPBSで4時間洗浄した。この手順を3回繰り返した(合計体積:1.3ml、回収率>85%)。各動物からのBALをプラスチックチューブに集め、氷上で冷やし、4℃で10分間遠心分離した(150×g)。細胞ペレットを同じバッファー(0.5ml)に懸濁した。分画細胞カウントをフローサイトメトリーで行った。
【0225】
ケモカインレベル
エオタキシン−1、エオタキシン−2、及びRANTESレベルを、次の酵素結合免疫吸着法キットを製造業者のプロトコールに従って用いて硬皮症患者及び健康なドナーの血清中で決定した:QuantikineヒトCCL11/エオタキシン、CCL24/エオタキシン−2、及びCCL5/RANTES(R&D社)。
【0226】
エピトープマッピング
CHIP KMCを、pH7.0のTBSバッファー中の0.05% ツイーン−20、0.05% トリトンX−100で4℃にて一晩ブロックした。0.05% ツイーン−20及び0.05% トリトンX−100を含む1mLのpH7.0の1xTBSでCHIPを洗浄し、635nm及びPMT700にてスキャンした。次に、CM101のエピトープ結合を検出するために、CHIPを1mlの結合バッファーで4℃にて20分間で洗浄し、結合バッファー(pH7.4)中1μg/mlのhCM101と4℃で2時間インキュベーションした。インキュベーションに続いて、CHIPを洗浄し、結合バッファー(pH7.4)中の10ng/ml 抗ヒトIgG Alexa647複合体と4℃で1時間インキュベーションした。再度CHIPを洗い、635nm及びPMT700にてスキャンした。
【0227】
ビアコアアッセイ
hCM101又はマウスCM101の親和定数をビアコアT100を用いて評価した。この方法は表面プラズモン共鳴(SPR)電気光学現象を使用して、結合相手間の結合定数及びオン/オフレート(on/off rate)を測定する。エオタキシン2をCM−5チップの表面に共有結合的に固定し、CM101の溶液をその表面上に通した。SPR角の変化を測定し、KDを決定可能になった。
【0228】
エピスクリーン(Episcreen)経時変化T細胞増殖アッセイ
20名の健康なドナーのPBMCを解凍してカウントし、生存能力を評価した。各ドナーについて、1mlの増殖細胞ストックを24ウェルプレートの適切なウェルに加えたバルク培養を確立した。0.5mlの培養培地及び0.5mlの希釈したCM101の各々をPBMCに加えて、試料当たり50ug/mlの最終濃度を得た。各ドナーについて、再現性対照(100ug/ml KLH)及び培養培地のみのウェルも含んだ。培養を合計8日間、37℃にて5%CO2インキュベーションした。5、6、7、及び8日目に、各ウェルの細胞を100ulのAIM−V培養培地中の0.75uCi[3H]−チミジン(パーキンエルマー社、英国)でパルスし、TomTec Mach IIIを用いて収穫する前に18時間インキュベーションした。カウント毎分(cpm)をシンチレーション測定Meltilex(パーキンエルマー社、英国)で決定した。
【0229】
実施例1 マウスモデルにおいて抗エオタキシン2 mAb CM101での治療は強皮症の特徴を軽減する。
強皮症におけるCCR3結合ケモカインの関与の可能性を調べるために、硬皮症患者の血清中でエオタキシン1、2、及びRANTESのレベルを健康な対象と比較して評価した。それぞれ
図1A及び1Bに示されるように、結果は、エオタキシン2及びRANTESレベルの著しい増加(pv<0.05)を示した。くわえて、エオタキシン2及びその受容体であるCCR3の両方の著しく上昇した発現が硬皮症患者から取った皮膚生検で検出された(データ示さず)。よって、エオタキシン−2/CCR3経路の活性化が硬皮症において働いている可能性がある。
【0230】
エオタキシン2の硬皮症への関連性をCM101を用いてさらに評価した。CM101はエオタキシン2に対するマウスモノクローナル抗体である(国際公開第2010/086854号)。CM−101のマウスエオタキシン−2に対する親和定数(Kd)をビアコアで求め、7nMであることがわかった。硬皮症対するCM101での治療の効果を評価するために、ブレオマイシン誘導強皮症マウスモデルを使用した。50μgのブレオマイシンをC3Hマウスに21日間、連日注射して強皮症を誘導した。CM101(l0μg、20μg、若しくは50μg)、IgG、又はPBSを1日おきに腹膜内に注射した。ブレオマイシン注射の開始の21日後、皮膚及びBAL液試料をすべての群から得た。線維症及び気管支肺胞炎症を評価するためにマウスを犠牲にした。
【0231】
IgG1又はPBSで治療したマウスと比較して、CM−101で治療したマウスでは硬皮症関連特徴の重症度の著しい減少が観察された。
図2及び
図3に示されるように、CM−101は、試験したすべてのパラメーター(真皮厚、皮膚コラーゲン含有量、及び肺への白血球浸潤)の増加を防いだ。真皮厚テスト(
図2A)では、CM−101のすべての投与量で、PBS又は対照IgG1での治療と比較して統計的に有意な差(p<0.05)が得られた。また、投与量依存的な皮膚コラーゲン濃度の著しい減少(
図2Bに示されるように、CM−101の10μg、20μg、及び50μgの投与量レベルで、それぞれ30%、60%、及び84%の減少)からCM−101の予防効果は明らかであった。マウス気管支肺胞洗浄液中の異なる白血球サブセットの判定から、リンパ球及び好酸球%割合が投与量に応答して著しく減少することが明らかになった(それぞれ、
図3A及び3B)。
【0232】
治療モードでは、ブレオマイシン注射の8日後、皮膚及びBAL液試料を第1群(PBS)及び第2群(ブレオマイシンのみ)から得た。ブレオマイシン注射の開始の21日後、皮膚及びBAL液試料を第3群(ブレオマイシン)及び第4群(ブレオマイシン+CM101)から得た。線維症及び気管支肺胞炎症を評価するためにマウスを犠牲にした。ブレオマイシン21日間治療群と比較して、CM−101治療群では皮膚コラーゲン濃度は60%の著しい減少を来した(
図4)。
【0233】
また、フローサイトメトリー解析を用いて、BAL液を白血球の存在について試験した。
図5A及び
図5Bに示されるように、ブレオマイシン治療群と比較して、CM−101治療群では単核細胞及び白血球浸潤は著しく減少した(それぞれ、55%及び30%)。代表的なフローサイトメトリー図を
図5C〜
図5Fに示す。
【0234】
真皮厚を評価するために、皮膚病変においてヘマトキシリン・エオジン(H&E、
図6A〜D)及びマッソントリクローム(
図6E〜H)での組織病理学的染色を行った。まず最初に、
図6C及び
図6Gに見られるように、21日間のブレオマイシン治療後に真皮厚に著しい上昇が観察された。マウスを8日目からCM−101で治療した場合、この上昇は観察されなかった。くわえて、H&E及びマッソントリクローム染色から、BLM治療群と比較して、CM−101治療群の皮膚病変における炎症及び線維症が著しく弱まることが明らかになった(
図6D及び6H)。
【0235】
実施例2 マウスモデルにおける抗エオタキシン2 mAb CM101での治療はIPFを軽減する
特発性肺線維症(IPF)におけるエオタキシン2の関与の可能性を調べるために、エオタキシン−2のレベルをIPF患者の肺生検で評価した。IPF患者から取った皮膚生検においてエオタキシン−2の発現の著しい上昇が見られた(
図7に示す)。これらのデータは、エオタキシン−2経路がIPFで活性化されうるという考えを支持する。
【0236】
広く用いられているブレオマイシン誘導肺線維症モデルを使用して、CM101の有効性を評価した。1日目に、ブレオマイシン(マウス1頭当たり60μg)をC57/B1マウスに気管内注射した。予防プロトコールでは、1日目から14日目までCM101又はIgGをIP注射した。ブレオマイシン注射の14日後、すべての群から肺及びBAL液試料を得た。線維症及び気管支肺胞炎症を評価するためにマウスを犠牲にした。
【0237】
免疫グロブリン(IgG)又はPBSで治療したマウスと比較して、CM−101で治療したマウスではIPFに関連する特徴の著しい阻害が観察された。
図8及び
図9に示されるように、試験したすべてのパラメーター(コラーゲン濃度及び肺への白血球浸潤)でCM−101による阻害が明らかであった。投与量依存的なコラーゲン濃度の著しい減少からCM−101の阻害効果は明らかであった(
図8に示されるように、CM−101の10μg及び100μg投与量レベルで、それぞれ60%及び70%の減少)。マウス気管支肺胞洗浄(BAL)における単核細胞の測定から、CM101治療後の著しい減少(
図9)が明らかになった。BAL液内のエオタキシン2レベルの測定から、CM101治療群ではBAL液内のエオタキシン2が減少することを明らかになった(
図10)。
【0238】
疾患発症後のCM101有効性を評価するために、BLM気管内注射の僅か10日後、CM101を2週間、毎日投与する治療プロトコールを行った。肺コラーゲン評価から、50μgのCM101の連日治療後の著しい減少(75%)が明らかになった(
図11)。
【0239】
また、フローサイトメトリー分析を用いて白血球の存在についてBAL液を試験した。
図12A及び
図12Bに示されるように、ブレオマイシン治療群に比較して、CM−101治療群では単核細胞及び多形核細胞の浸潤が著しく減少した(それぞれ、55%及び65%)。病理染色を各群の肺切片で行い、
図13に示されるように、炎症(H&E染色)及びコラーゲン沈着(マッソントリクローム染色)の著しい減少が示された。
【0240】
実施した第3の生体内モデルでは、CM101を、最近認可されたIPF治療であるピルフェニドンと比較した。ピルフェニドン(5−メチル−1−フェニルピリジン−2[1H]−オン)はIPF患者での進行を遅くすることを明らかに示すことから、IPF治療にFDA及びEMAから認可されている、抗線維性及び幾分のヒドロキシルスカベンジャー特性をもつ低分子である。
【0241】
以前の実験で記載されているようにIPFを誘導した。BLM注射前に、マウスに100μgのCM101を注射するか、100mg kg/日のピルフェニドンとともに毎日に餌を与えた。抗体注射は週に3回、2週間行った。一方で、ピルフェニドン経口強制飼養を2週間、毎日行った。
【0242】
図14及び
図15に示されるように、試験したすべてのパラメーターにおいてCM101はピルフェニドンより優れていた。ピルフェニドン治療マウスと比較して、CM101治療マウスにおいて肺コラーゲン濃度は大きく減少した。くわえて、マウス気管支肺胞洗浄(BAL)中の単核細胞、白血球(WBC)、及び多形核細胞の測定から、ピルフェニドン治療群とは対照的なCM101治療群での著しい減少を明らかになった(
図15)。組織学的染色は、ピルフェニドン治療群と比較してCM101治療群から得られた肺病変において炎症及び線維症が少ないことを示すこれらの結果を支持する(データ示さず)。
【0243】
実施例3 ヒト化mAb hCM101の作製
マウス抗体CM101の可変(V)領域遺伝子をアンチトープ(Antitope)ベクターにクローニングして、ヒトIgG1重鎖定常領域及びκ軽鎖定常領域と併せてマウスV領域を含むキメラ抗体を作り出した。アンチトープのIgG1 VH及びVκ鎖発現ベクターにクローニングするための隣接制限酵素部位を導入したプライマーを用いて、マウスCM101抗体のVH及びVκ配列をPCR増幅した。VH領域はMluI及びHindIII部位を用いてクローニングし、Vκ領域はBssHII及びBamHI制限酵素認識部位を用いてクローニングした。両方のコンストラクトをDNAシークエンシングで確認した。くわえて、一連の4つのヒト化IgG1用VH領域及び4つのヒト化VK領域を設計し、Composite Human Antibody(商標)技術(アンチトープ社)を用いて構築した。
【0244】
キメラ抗体及びヒト化V領域遺伝子の組み合わせ(計16抗体)をNS0細胞に発現して精製し、競合ELISAアッセイでヒトエオタキシン−2への結合について試験した。結合データを用いて、キメラCM101抗体と比較してヒト化CM101変型をランク付けした。重鎖及び軽鎖バンドの質の有意な違いはSDS PAGEで検出されなかった(データ示さず)。
【0245】
結合データに基づいて、ヒト化変型VH1/VK3(hCM101)を機能アッセイで試験するリード化合物として選択した。
【0246】
VH1/VK3配列:
配列番号1:
【0247】
配列番号2:
*CDRヌクレオチド配列は太字で下線が引かれている。
【0248】
配列番号3:
【0249】
配列番号4:
【0250】
VH変型1の上記核酸配列(重鎖又はVH)は、本明細書において配列番号1として定義される。
【0251】
VK変型3の上記核酸配列(軽鎖)は、本明細書において配列番号2として定義される。
【0252】
VH変型1の上記アミノ酸配列(重鎖又はVH、113個のアミノ酸)は、本明細書において配列番号3として定義される。
【0253】
VK変型3の上記ミノ酸配列(軽鎖、107個のアミノ酸)は、本明細書において配列番号4として定義される。
【0254】
VH変型1(重鎖)は次の3つの相補性決定領域(CDR)を含む。
VH CDR1はアミノ酸配列NSGMN(配列番号5)をもつ。
VH CDR2はアミノ酸配列WINTYNGEPTYTDDFKG(配列番号6)をもつ。
VH CDR3はアミノ酸配列HSYGSSYAMDN(配列番号7)をもつ。
【0255】
VK変型3(軽鎖)は次の3つの相補性決定領域(CDR)を含む。
VK CDR1はアミノ酸配列KASQSVDYDGDSYMN(配列番号8)をもつ。
VK CDR2はアミノ酸配列VASNLKS(配列番号9)をもつ。
VK CDR3はアミノ酸配列QQSNEEPWT(配列番号10)をもつ。
【0256】
実施例4 hCM101の親和性及び結合特異性
hCM101のエオタキシン−2に対する結合親和力及び他の関連ケモカインに対する結合親和力を調べるために、幾つかの異なる方法:酵素結合免疫吸着法、ビアコア、及びCHIPによるエピトープマッピングを用いた。ビアコアによって、抗体のエオタキシン2に対する相当な結合が示され(
図16)、酵素結合免疫吸着法によって、親和定数が3×10−
9Mであることが明らかとなった。
【0257】
驚いたことには、hCM101が他の関連ケモカインにも中程度の親和性で結合することがわかった。酵素結合免疫吸着法によって示されるように、hCM101はエオタキシン1(
図17)、RANTES(
図18)、及びMCP3(
図19)に結合することがわかった。
【0258】
エピトープマッピング解析から、これらの4つのケモカインの共通する特徴が明らかになった。エオタキシン1、2、RANTES、及びMCP−3は、N−ループ内に位置するエピトープ部位を提示するようである(
図20)。この相互結合部位は、ほぼ同じ位置にある正電荷をもつ残基の高度な集中を特徴とする(
図21)。
【0259】
これらの結果は、酵素結合免疫吸着法によって明らかに示されるように、hCM101がエオタキシン2と高い親和性で結合し、他の関連ケモカインとも結合する多重特異性抗体であることを示唆する。理論に拘束されるものではないが、この特徴により、hCM101がケモカインの機能重複性を克服して有効性を実現することが可能になりうる。
【0260】
hCM101の結合特異性を生体外で評価するために、全身性強皮症患者の代表的な血清から、完全ヒト化CM101(hCM101)抗体を用いて循環エオタキシン2のプルダウンを行った。我々はhCM101によるエオタキシン2の投与量依存的な認識を見出した。
【0261】
この結果はhCM101の血清内エオタキシン2に対する高い特異性を示唆する(
図22)。
【0262】
くわえて、ニトロセルロース膜電気泳動アッセイを用いて、エオタキシン1、RANTES、及びMCP−3の濃度の濃度を上げてさまざまな濃度でhCM101に曝した。hCM101のこれらのケモカインへの結合を増加させる特有の投与量が見出しされた(
図23)。
【0263】
実施例5 hCM101を用いた機能アッセイ
エオタキシン1及びエオタキシン2は、CCR3と結合して活性化することを通して組織に好酸球を動員することに関与するケモカインである。
【0264】
hCM101の潜在的な抗遊走機能を調査するために、抗体をこれらのケモカインと30分間、37℃でインキュベーションし、好酸球走化性を調べた。結果は、hCM101の好酸球遊走に対する顕著な投与量依存的阻害効果示す。それぞれ、16%〜45%の細胞の遊走が10−
7〜10−
8M抗体治療において観察された(
図24)、pv≦0.05。
【0265】
RANTES及びMCP−3がCCR1、2、3、5受容体に結合することによって、単球系の細胞はそれらの一次標的であることが知られている。よって、U937単球細胞系の遊走に対するhCM101の効果はを、抗体をMCP−3及びRANTESとインキュベーションすることによって調べた。単球走化性は著しく弱まり、10−
7のhCM101濃度において僅か26%の遊走を示した(
図25)。
【0266】
また、インビトロ単球走化性アッセイを、単離したヒト単球及びその関連化学誘引物質を用いて行った。
【0267】
この目的のために、さまざまな投与量のhCM101の存在下又はhCM101の非存在下で、硬皮症患者から得たPBMCから分別したCD14+単球を、誘引物質としてのヒトMCP−3及びRANTESの方向に遊走させた。hCM101での処理により、単球走化性は著しく弱まり、高投与量では−55%であった(
図26A)。
【0268】
CD14陰性細胞(大部分がリンパ球)のエオタキシン1、エオタキシン2、及びRANTESへの方向への遊走について、同様の実験を行った。高抗体投与量ではhCM101が約90%の著しい減少を来たすことがわかった(
図26B)。
【0269】
強皮症及びIPFは線維芽細胞の増殖及び遊走を明確な特徴とする線維性疾患である。線維芽細胞の遊走に対するhCM101の効果を調べるために、hCM101の存在下又は非存在下でエオタキシン2の方向への走化性アッセイを行った。hCM101を加えた場合、遊走の著しい減少が観察され、対照と比較して僅か9%の細胞がトランスウェルに付着した(
図27)。hCM101のエオタキシン−1への効果を検討すると、線維芽細胞遊走の60%の阻害が示された(
図28)。
【0270】
線維芽細胞の筋線維芽細胞への転換は、平滑筋アクチンの発現の上昇に反映される。
【0271】
線維芽細胞の筋線維芽細胞への転換は、アルプァ−平滑筋アクチン(α−SMA)の発現を伴い、線維化における重要な過程である。その出現は、血清中のサイトカイン及びケモカインの存在に誘導されうる。線維芽細胞の筋線維芽細胞への転換に対するhCM−101の影響を評価するために、hCM−101をSSc患者の血清とインキュベーションし、次にこの血清をヒト線維芽細胞とインキュベーションして、α−SMAを誘導する能力を測定した。α−SMA発現をフローサイトメトリーで評価した。
図30(エラー!参照元が見当たらず)に明らかに示されるように、血清をhCM−101(10μg/ml)とインキュベーションしたとき、α−SMAの上昇は50%弱くなった。これらの結果は、CM−101は全身性強皮症(SSc)患者の血清によって刺激された線維芽細胞の筋線維芽細胞への転換を弱めることを示唆する。この転換はSScを特徴付ける細胞外マトリックス(ECM)の過剰な合成及びリモデリングに関与している。
【0272】
典型的にケモカインの活性化能は、細胞質基質へのカルシウム取り込みによって測定される。CCR3発現細胞のエオタキシン−2及びさまざまな濃度のhCM−101とのインキュベーションは、
図30に示されるように、カルシウム取り込み(細胞活性化を示す)の著しい減少を明らかに示した。
【0273】
実施例6 hCM101は、エピスクリーン(Episcreen)免疫原性試験で測定される免疫原性を示さない
免疫原性の相対的なリスクを決定するために、リード完全ヒト化抗エオタキシン−2抗体(hCM101)を、エピスクリーン(商標)経時変化T細胞アッセイを用いて20名の健康なドナーのコホートに対して試験した。試料は最終濃度50μg/mlのhCM101で試験した。これはこの飽和濃度が検出可能な抗体特異的T細胞応答を刺激するのに充分であることを示した以前の研究に基づいた。各試料の潜在的な免疫原性を評価するために、エピスクリーン(商標)経時変化T細胞アッセイを増殖の分析とともに使用してT細胞活性化を測定した。
【0274】
図31は全時間経過を通したhCM101に対するドナーSI反応を図示する。増殖アッセイにおいて、いずれのドナーでも完全ヒト化抗エオタキシン−2抗体は、SI≧2.0、p<0.05の閾値で陽性反応を誘導しなかった。
【0275】
さまざまな生物製剤を用いた以前のエピスクリーン(商標)経時変化T細胞アッセイ(
図32)は、エピスクリーン(商標)アッセイのドナーT細胞反応%割合と、臨床で見られる免疫原性のレベル(抗タンパク質治療用抗体反応)との間に明らかな相関を示している。キャンパスなどの免疫原性抗体についてのエピスクリーン(商標)アッセイでは高い頻度のドナー反応が観察された一方で、ゾレア及びハーセプチンなどの非免疫原性抗体に関しては相対的に低い頻度のドナー反応が観察された。一般的には、エピスクリーン(商標)アッセイにおいて<10%陽性反応を誘発するタンパク質治療薬は臨床での免疫原性リスクが低い。今回の試験は、エピスクリーン(商標)アッセイで試験した他のタンパク質治療薬(
図32)と比較して、完全ヒト化抗エオタキシン−2抗体hCM101はゾレア、ハーセプチン、及びアバスチンと同じ範囲に入り、免疫原性のリスクが低いとみなされると思われる。
【0276】
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