(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553086
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】新奇なヒドロゲル組織拡張器
(51)【国際特許分類】
A61L 27/16 20060101AFI20190722BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20190722BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20190722BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20190722BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20190722BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20190722BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20190722BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20190722BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20190722BHJP
C08F 299/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
A61L27/16
A61L27/52
A61L27/18
A61K9/06
A61K47/32
A61K47/34
A61K45/00
A61P1/02
A61P17/04
C08F299/00
【請求項の数】15
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-563121(P2016-563121)
(86)(22)【出願日】2015年4月13日
(65)【公表番号】特表2017-513598(P2017-513598A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】US2015025556
(87)【国際公開番号】WO2015160699
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】61/979,080
(32)【優先日】2014年4月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516307585
【氏名又は名称】アキナ・インコーポレイテッド(アン・インディアナ(ユーエス)コーポレイション)
【氏名又は名称原語表記】AKINA, INC.(AN INDIANA(US)CORP)
(73)【特許権者】
【識別番号】503286251
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ ガバメント アズ レプリゼンテッド バイ ザ デパートメント オブ ベテランズ アフェアーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】パク・キナム
(72)【発明者】
【氏名】バルコ・クラーク・トビアス
(72)【発明者】
【氏名】パク・ヘスン
(72)【発明者】
【氏名】フ・ヨウロン
(72)【発明者】
【氏名】ガーナー・ジョン・ソロモン
【審査官】
榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0031499(US,A1)
【文献】
米国特許第08211959(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/14−27/26
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
C08F 299/04
C08F 283/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル‐アクリレート結合により化学的に架橋したヒドロゲルにおいて、
1,000〜50,000Daの分子量を有するトリブロック(PLGA)x‐(PEG)y‐(PLGA)zコポリマーを含み、
前記トリブロック(PLGA)x‐(PEG)y‐(PLGA)zコポリマーの((総PLGAの分子量)/(総コポリマーの分子量)×100%)のパーセント比は60%超であり、
x、y、zはそれぞれ、独立して、1〜500の整数であり、
前記ヒドロゲルの架橋密度(3重結合した鎖/mg)は、1.0〜3.0であり、
全体的な疎水性(直接水不溶の含有量/水溶含有量)は、35%〜90%である、ヒドロゲル。
【請求項2】
請求項1に記載のヒドロゲルにおいて、
前記トリブロック(PLGA)x‐(PEG)y‐(PLGA)zコポリマーは、2,000〜40,000Daの分子量を有する、ヒドロゲル。
【請求項3】
請求項1に記載のヒドロゲルにおいて、
前記トリブロック(PLGA)x‐(PEG)y‐(PLGA)zコポリマーの((総PLGAの分子量)/(総コポリマーの分子量)×100%)のパーセント比は、95%〜75%である、ヒドロゲル。
【請求項4】
請求項1に記載のヒドロゲルにおいて、
前記トリブロック(PLGA)x‐(PEG)y‐(PLGA)zコポリマーは、前記ヒドロゲルの1%(w/w)〜80%(w/w)を構成する、ヒドロゲル。
【請求項5】
請求項1に記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)x中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50〜約99:1の範囲である、ヒドロゲル。
【請求項6】
請求項1に記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)xは、約1000〜約7000Daであり、前記(PEG)yは、約200〜約2000Daであり、前記(PLGA)zは、約1000〜約7000Daである、ヒドロゲル。
【請求項7】
請求項1に記載のヒドロゲルにおいて、
x=zである、ヒドロゲル。
【請求項8】
請求項1に記載のヒドロゲルにおいて、
1,000〜200,000Daの分子量を有する、(PLGA)‐ジアクリレートまたは(PLA)‐ジアクリレートをさらに含む、ヒドロゲル。
【請求項9】
請求項8に記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)‐ジアクリレートまたは前記(PLA)‐ジアクリレートの濃度は、前記ヒドロゲルの1%(w/w)〜30%(w/w)である、ヒドロゲル。
【請求項10】
請求項8に記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)‐ジアクリレート中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50〜約99:1の範囲である、ヒドロゲル。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のヒドロゲルにおいて、
100〜10,000Daの分子量を有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレートをさらに含む、ヒドロゲル。
【請求項12】
請求項11に記載のヒドロゲルにおいて、
前記ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートの濃度は、前記ヒドロゲルの5%(w/w)〜70%(w/w)である、ヒドロゲル。
【請求項13】
請求項1に記載のヒドロゲルにおいて、
架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレートをさらに含む、ヒドロゲル。
【請求項14】
請求項13に記載のヒドロゲルにおいて、
前記エチレングリコールジメタクリレートは、前記ヒドロゲルの1%(w/w)〜30%(w/w)の濃度を有する、ヒドロゲル。
【請求項15】
請求項1に記載のヒドロゲルにおいて、
前記ヒドロゲルは、成長因子、抗生物質、鎮痛薬、血液凝固緩和剤、および免疫反応緩和剤から選択される、1つまたは2つ以上の薬剤が含浸されている、ヒドロゲル。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、組織拡張器として有用である、新奇な生物分解性の架橋ヒドロゲルに関する。これらのヒドロゲルは、生体適合性があり、自己膨張性であり、膜がない。これらは、ゆっくりと膨張し、最小限の組織反応を誘発する一方で、据え付け時に医師が容易に操作することを可能にする。
【0002】
〔発明の背景〕
この特許で報告される調査は、国立衛生研究所の国立一般医学研究所によって、裁定番号(Award Number)R44GM106735で、部分的に裏付けられている。この内容は、もっぱら発明者らの責任であり、必ずしも、国立衛生研究所の公式見解を表すわけではない。
【0003】
本発明は、本発明においてある権利を有する、米国政府機関である復員軍人省との共同研究開発契約を履行する上で、行われた。
【0004】
組織拡張器は、再建手術の重要かつ不可欠な部分である。これらは、皮膚または粘膜を拡張および拡大して、最終的に、外科医が欠損組織を再建することができるようにするために使用される。S. R. Baker, “Fundamentals of expanded tissue,” Head Neck, (1991) 13(4): 327-33。組織拡張器は、頭、顔、首(H. Jhuma, et al., “Repair of a cheek defect with the tissue expander method: A case report,” Bull. Tokyo Dent. Coll., (1997) 38(4): pp. 311-316; O. Antonyshyn, et al., “Tissue expansion in head and neck reconstruction.” Plast. Reconstr. Surg., (1988) 82(1): pp. 58-68; J. B. Wieslander, “Tissue expansion in the head and neck: A 6-year review,” Scand. J. Plast. Reconstr. Surg., (1991) 25(1): pp. 47-56; J. T. Chun and R. J. Rohrich, “Versatility of tissue expansion in head and neck burn reconstruction,” Ann. Plast. Surg., (1998) 41(1): pp. 11-16;およびS.E. MacLennan, et al., “Tissue expansion in head and neck burn reconstruction,” Clin. Plast. Surg., (2000) 27(1): pp. 121-132)、胸壁(R. Newman and D. C. Cleveland, “Three-dimensional reconstruction of ultrafast chest CT for diagnosis and operative planning in a child with right pneumonectomy syndrome,” Chest, (1994) 106(3): pp. 973-974)、肩甲骨、肩、前腕(V. I. Sharobaro, et al., “First experience of endoscopic implantation of tissue expanders in plastic and reconstructive surgery,” Surg. Endosc., (2004) 17(12) p.513-517)、耳(B. S. Bauer, “The role of tissue expansion in reconstruction of the ear,” Clin. Plast. Surg., (1990) 17(2): pp. 319-325)、指(R. L. Simpson and M. E. Flaherty, “The burned small finger,” Clin. Plast. Surg., (1992) 19(3): pp. 673-682)、生え際(R. Silfen, et al., “Tissue expansion for frontal hairline restoration in severe alopecia in a child,” Burns, (2000) 26(3): pp. 294-297)、腰仙、会陰(T. O. Acarturk, et al., “Reconstruction of difficult wounds with tissue-expanded free flaps,” Ann. Plast. Surg., (2004) 52(5): pp. 493-499; discussion p. 500)、足(P. Rosselli, et al., “Use of a soft tissue expander before surgical treatment of clubfoot in children and adolescents,” J. Pediatr. Orthop., (2005) 25(3): pp. 353-356)、ならびにふくらはぎ領域(V. I. Sharobaro, et al., “First experience of endoscopic implantation of tissue expanders in plastic and reconstructive surgery,” Surg. Endosc., (2004) 17(12) p. 513-517)で使用されてきた。
【0005】
ヒドロゲル組織拡張器は、再吸収された歯槽堤、口蓋裂(K. F. Kobus, “Cleft palate repair with the use of osmotic expanders: A preliminary report,” Journal of Plastic, Reconstructive & Aesthetic Surgery, (2007) 60: pp. 414-421)、および口腔の外側(S. J. Berge, et al., “Tissue expansion using osmotically active hydrogel systems for direct closure of the donor defect of the radial forearm flap,” Plast. Reconstr. Surg., (2001) 108(1): pp. 1-5, discussion pp. 6-7)で使用されるように開発されてきた。
【0006】
組織拡張器は、再吸収された上顎および下顎の歯槽堤の付着粘膜を拡張させるのに使用されてきた。D. Lew, et al., “Use of a soft tissue expander in alveolar ridge augmentation: A preliminary report,” J. Oral Maxillofac.Surg., (1986) 44(7): pp. 516-519; T. M. Hassan, “Mandibular alveolar ridge augmentation using a soft tissue expander: Report of case,” J. Conn. State Dent. Assoc., (1988) 62(3): pp. 130-134; D. Lew, et al., “An open procedure for placement of a tissue expander over the atrophic alveolar ridge,” J. Oral Maxillofac. Surg., (1988) 46(2): pp. 161-166; A. R. Wittkampf, “Short-term experience with the subperiosteal tissue expander in reconstruction of the mandibular alveolar ridge,” J. Oral Maxillofac. Surg., (1989) 47(5): pp. 469-474; A. A. Quayle, et al., “Alveolar ridge augmentation using a new design of inflatable tissue expander: Surgical technique and preliminary results,” Br. J. Oral Maxillofac. Surg., (1990) 28(6): pp. 375-382; H. C. Schwartz and R. J. Relle, “Extraoral placement of a subperiosteal tissue expander for reconstruction with hydroxylapatite of the severely atrophic mandibular alveolar ridge,” J. Oral Maxillofac. Surg., (1990) 48(2): pp. 157-161; D. Lew, et al., “Use of subperiosteal implants with distal filling ports in the correction of the atrophic alveolar ridge,” Int. J. Oral Maxillofac.Surg., (1991) 20(1): pp. 15-17; D. J. Zeiter, et al., “The use of a soft tissue expander in an alveolar bone ridge augmentation for implant placement,” Int. J. Periodontics Restorative Dent., (1998) 18(4): pp. 403-409;およびJ. M. Vlassis, et al., “Controlled subperiosteal tissue expansion to facilitate GBR for the placement of endosseous dental implants,” Int. J. Periodontics Restorative Dent., (1999) 19(3): pp. 289-297。
【0007】
動物実験がこれらの臨床報告を裏付けている。K. Tominaga, et al., “An animal model for subperiosteal tissue expansion,” J. Oral Maxillofac. Surg., (1993) 51(11): pp. 1244-1249;およびM. B. Hurzeler, et al., “Guided bone regeneration around dental implants in the atrophic alveolar ridge using a bioresorbable barrier: An experimental study in the monkey,” Clin. Oral Implants Res., (1997) 8(4): pp. 323-331。しかしながら、これらのヒドロゲルのいずれも、外科的挿入のときに外科医により成形されることはできない。
【0008】
統合戦域外傷レジストリ(JTTR)は、近年、2003年1月から2011年5月までのアフガニスタン(不朽の自由作戦[OEF])およびイラク(イラクの自由作戦[OIF])による、アメリカ軍の負傷のデータについて問い合わせを受けた。B. A. Feldt, et al., “The joint facial and invasive neck trauma (J-FAINT) project, Iraq and Afghanistan 2003-2011,” Otolaryngol. Head Neck Surg., (2013) 148(3): pp. 403-408。負傷した7177人の軍人に生じた37,523件の別々の顔および貫通性頸部損傷のうち、骨折部位は、上顎(25%)および下顎(21%)で生じている。これらの損傷の多くは、歯科修復処置を必要とし、この処置は、歯科インプラントおよび口内骨移植片を含む歯科修復を含む。
【0009】
金属インプラントは、外傷または疾患により失われた顎、歯、耳、鼻、および顔の他の部分を置換するための標準的な治療である。金属インプラントの設置には、安定性および最終的な骨統合(osseo-integration)のための骨が必要である。歯が失われると、下顎および上顎歯槽骨が再吸収する。これは、ほぼすべての患者で見られる自然な現象である。下顎または上顎が再吸収すると、インプラントの必要な安定性のための十分な骨がない場合が多い。しばしば、骨移植片は、インプラントが設置され得る前に、欠損した骨を置換するのに使用されなければならない。任意の骨移植片、例えば自家移植片、同種移植片、アロプラストなどの外科的設置に関する一般的な問題は、骨移植片材料の大部分にわたって閉じるための不十分な軟組織である。
【0010】
現在、標準的治療では、シリコーン「バルーン」タイプの組織拡張器を使用する。このタイプの組織拡張器は、このシリコーンタイプの組織拡張器の容積を増大させるために、自己シール弁に流体(通常は無菌食塩水)を定期的に注入することを必要とする。弁を備えたステムが、組織拡張器が置かれる手術部位から皮膚または粘膜を通じて利用可能とならなければならない。しばしば、組織拡張器は、組織が所望のサイズへと拡張されるまで、数週間から数カ月にわたって定位置にとどまらなければならない。
【0011】
より新しいデザインが、組織拡張器に伴う合併症を減少させてきた(R. H. Schuster, et al., “The use of tissue expanders in immediate breast reconstruction following mastectomy for cancer,” Br. J. Plast. Surg., (1990) 43(4): pp. 413-418; S. L. Spear and A. Majidian, “Immediate breast reconstruction in two stages using textured, integrated-valve tissue expanders and breast implants: A retrospective review of 171 consecutive breast reconstructions from 1989 to 1996,” Plast. Reconstr. Surg., (1998) 101(1): pp. 53-63;およびJ. J. Disa, et al., “The premature removal of tissue expanders in breast reconstruction,” Plast. Reconstr. Surg., (1999) 104(6): pp. 1662-1665)が、このタイプの組織拡張器でよく見られる合併症は、露出した手術エリア周辺の感染症である(E. K. Manders, et al., “Soft-tissue expansion: Concepts and complications,” Plast. Reconstr. Surg., (1984) 74(4): pp. 493-507; J. B. McCraw, et al., “An early appraisal of the methods of tissue expansion and the transverse rectus abdominis musculocutaneous flap in reconstruction of the breast following mastectomy,” Ann. Plast. Surg., (1987) 18(2): pp. 93-113; J. Gibney, “The long-term results of tissue expansion for breast reconstruction,” Clin. Plast. Surg., (1987) 14(3): pp. 509-518; J. D. Holmes, “Capsular contracture after breast reconstruction with tissue expansion,” Br. J. Plast. Surg., (1989) 42(5): pp. 591-594; R. H. Schuster, et al., “The use of tissue expanders in immediate breast reconstruction following mastectomy for cancer,” Br. J. Plast. Surg., (1990) 43(4): pp. 413-418;およびG. P. Pisarski, et al., “Tissue expander complications in the pediatric burn patient,” Plast. Reconstr. Surg., (1998) 102(4): pp. 1008-1012)。さらに、組織拡張器による手術部位からの出血および破裂の危険性に適応するために、外科的技術はしばしば修正される。V. I. Sharobaro, et al., “First experience of endoscopic implantation of tissue expanders in plastic and reconstructive surgery,” Surg. Endosc., (2004) 17(12): p. 513-517。
【0012】
骨移植片を効果的に覆うための、組織拡張器に代わるものは、骨移植片を覆う軟組織弁(soft-tissue flap)の壊死を避ける、外科的技術である。骨膜の緊張解放、組織弁(flap)において筋肉を回避すること、および、それほどではないにせよ、垂直解放切開(vertical releasing incisions)は、臨床診療で使用される主な技術である。G. Greenstein, et al., “Flap advancement: practical techniques to attain tension-free primary closure,” J. Periodontol, (2009) 80(1): pp. 4-15。しばしば、骨移植片を外科的に覆うために使用される口腔粘膜は、その周辺が死んで、移植片を口腔のすべての細菌にさらし、その結果、しばしば移植片が欠損または部分欠損する。W. Mormann and S. G. Ciancio, “Blood supply of human gingiva following periodontal surgery. A fluorescein angiographic study,” J. Periodontol, (1977) 48(11): pp. 681-692;およびT. N. McLean, et al., “Vascular changes following mucoperiosteal flap surgery: A fluorescein angiography study in dogs,” J. Periodontol, (1995) 66(3): pp. 205-210。任意の移植片材料を覆うために組織拡張器によって作られた余分の軟組織(皮膚もしくは粘膜)が、臨床治療における著しい改善をもたらすであろう。
【0013】
「Readily shapeable xerogels having controllably delayed swelling properties」の名称のWO 2007016371 A3は、機械的に柔軟な特性を有する、再成形可能なキセロゲルを記載している。しかしながら、本出願の出願人は、それに続くインビトロおよびインビボでの実験に基づくテクノロジーへと実質的に前進を果たしている。本発明の新奇なヒドロゲルインプラントは、先行するデザインに伴ういくつかの問題に対応している。例えば、それらのデザインは:
a.膜がなく、自己膨張性である;
b.毒性のない生体適合性成分で構成されている;
c.据え付け後に治癒していない切開部を破裂させないよう、遅延型の膨張を示す;
d.バラバラになることなく、従来のヒドロゲルより小さい最大サイズまで、制御された膨張を示す;
e.乾燥しているときは弾性であり、組織を損傷する場合がある鋭いエッジのない、滑らかな形状へと、医師によって成型されることができる;かつ
組織拡張処置全体にわたり、無傷のままであるよう十分に丈夫である。
【0014】
〔発明の概要〕
本発明は、乾燥状態では弾性である、生物分解性の、化学的に架橋したヒドロゲルを含む、組織拡張器を提供する。これらの生体適合性組織拡張器は、自己膨張性であり、膜がない。これらは、ゆっくりと膨張し、最小限の否定的な組織反応を誘発すると共に、据え付け時に外科医が迅速かつ容易に操作することを可能にする。
【0015】
第1の態様では、本発明は、エステル‐アクリレート結合により化学的に架橋したヒドロゲルを提供し、これは、1,000〜50,000Daの分子量を有するトリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーを含み、
コポリマーの((総PLGAの分子量)/(総コポリマーの分子量)×100%)のパーセント比は60%超であり、
x、y、zはそれぞれ、独立して、1〜500の整数である。
【0016】
第1の実施形態では、トリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーは、2,000〜40,000Daの分子量を有する。
【0017】
好適な実施形態では、トリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーは、5,000〜20,000Daの分子量を有する。
【0018】
第2の実施形態では、コポリマーの((総PLGAの分子量)/(総コポリマーの分子量)×100%)のパーセント比は、95%〜75%である。
【0019】
好適な実施形態では、コポリマーの((総PLGAの分子量)/(総コポリマーの分子量)×100%)のパーセント比は、95%〜85%である。
【0020】
第3の実施形態では、トリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーは、ヒドロゲルの1%(w/w)〜80%(w/w)を構成する。
【0021】
好適な実施形態では、トリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーは、ヒドロゲルの20%(w/w)〜70%(w/w)を構成する。
【0022】
さらに好適な実施形態では、トリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーは、ヒドロゲルの30(w/w)%〜60%(w/w)を構成する。
【0023】
第4の実施形態では、ヒドロゲルは、1,000〜200,000Daの分子量を有する、(PLGA)‐または(PLA)‐ジアクリレートをさらに含む。
【0024】
好適な実施形態では、(PLGA)‐または(PLA)‐ジアクリレートは、2,500〜150,000Daの分子量を有する。
【0025】
さらに好適な実施形態では、(PLGA)‐または(PLA)‐ジアクリレートは、5,000〜100,000Daの分子量を有する。
【0026】
別の好適な実施形態では、(PLGA)‐または(PLA)‐ジアクリレートの濃度は、ヒドロゲルの1%(w/w)〜30%(w/w)である。
【0027】
さらに好適な実施形態では、(PLGA)‐または(PLA)‐ジアクリレートの濃度は、ヒドロゲルの2%(w/w)〜25%(w/w)である。
【0028】
最も好適な実施形態では、(PLGA)‐または(PLA)‐ジアクリレートの濃度は、ヒドロゲルの3%(w/w)〜20%(w/w)である。
【0029】
別の好適な実施形態では、(PLGA)‐ジアクリレートコポリマー中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50〜約99:1の範囲である。
【0030】
さらに好適な実施形態では、(PLGA)‐ジアクリレートコポリマー中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50である。
【0031】
第5の実施形態では、ヒドロゲルは、100〜10,000Daの分子量を有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレートをさらに含む。
【0032】
好適な実施形態では、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートは、300〜5,000Daの分子量を有する。
【0033】
さらに好適な実施形態では、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートは、500〜1,000Daの分子量を有する。
【0034】
別の好適な実施形態では、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートの濃度は、ヒドロゲルの5%(w/w)〜70%(w/w)である。
【0035】
さらに好適な実施形態では、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートの濃度は、ヒドロゲルの10%(w/w)〜60%(w/w)である。
【0036】
最も好適な実施形態では、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートの濃度は、ヒドロゲルの15%(w/w)〜55%(w/w)である。
【0037】
第6の実施形態では、ヒドロゲルは、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレートをさらに含む。
【0038】
好適な実施形態では、エチレングリコールジメタクリレートは、ヒドロゲルの1%(w/w)〜30%(w/w)の濃度を有する。
【0039】
さらに好適な実施形態では、エチレングリコールジメタクリレートは、ヒドロゲルの3%(w/w)〜20%(w/w)の濃度を有する。
【0040】
最も好適な実施形態では、エチレングリコールジメタクリレートは、ヒドロゲルの5%(w/w)〜20%(w/w)の濃度を有する。
【0041】
第7の実施形態では、ヒドロゲルの架橋密度(3重結合した鎖/mg(trilinked chains/mg))は、0.1〜5.0である。
【0042】
好適な実施形態では、架橋密度は、0.5〜4.0である。
【0043】
さらに好適な実施形態では、架橋密度は、1.0〜3.0である。
【0044】
第8の実施形態では、ヒドロゲルの全体的な疎水性(直接水不溶の含有量/水溶含有量)は、20%〜100%である。
【0045】
好適な実施形態では、全体的な疎水性は、30%〜95%である。
【0046】
さらに好適な実施形態では、全体的な疎水性は、40%〜90%である。
【0047】
第9の実施形態では、(PLGA)
xは、約1000〜約7000Daであり、(PEG)
yは、約200〜約2000Daであり、(PLGA)
zは、約1000〜約7000Daである。
【0048】
好適な実施形態では、(PLGA)
xは、約3000〜約5500Daである。
【0049】
別の好適な実施形態では、(PLGA)
zは、約3000〜約5500Daである。
【0050】
別の好適な実施形態では、(PEG)
yは、約500〜約1500Daである。
【0051】
別の好適な実施形態では、x=zである。
【0052】
第10の実施形態では、(PLGA)
xコポリマー中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50〜約99:1の範囲である。
【0053】
好適な実施形態では、(PLGA)
xコポリマー中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50である。
【0054】
第11の実施形態では、(PLGA)
zコポリマー中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50〜約99:1の範囲である。
【0055】
好適な実施形態では、(PLGA)
zコポリマー中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50である。
【0056】
第12の実施形態では、ヒドロゲルは、成長因子、抗生物質、鎮痛薬、血液凝固緩和剤(blood-coagulation modifying agent)、および免疫反応緩和剤(immune-response modifying agent)から選択される、1つまたは2つ以上の薬剤が含浸される。
【0057】
好適な実施形態では、成長因子は、骨形態形成タンパク質、上皮成長因子、形質転換成長因子、肝細胞成長因子、血管内皮成長因子、血小板由来成長因子、線維芽細胞成長因子、ケラチノサイト成長因子、またはサイトカインである。
【0058】
別の好適な実施形態では、抗生物質は、テトラサイクリン、ベータラクタマーゼ阻害剤、ペニシリン、またはセファロスポリンである。
【0059】
別の好適な実施形態では、鎮痛薬は、アミノアミドクラスもしくはアミノエステルクラスの麻酔薬、非ステロイド系抗炎症薬、またはステロイド系抗炎症薬である。
【0060】
さらに好適な実施形態では、鎮痛薬は、リドカインまたはベンゾカインである。
【0061】
別の好適な実施形態では、血液凝固緩和剤は、ワーファリン、ヘパリン、またはトロンビンである。
【0062】
別の好適な実施形態では、免疫反応緩和剤は、エベロリムス、非ステロイド系抗炎症薬、またはステロイド系抗炎症薬である。
【0063】
第2の態様では、本発明は、軟組織、皮膚、もしくは粘膜組織の拡張を促進する方法を提供し、この方法は、
a)拡張することが求められている軟組織、皮膚、もしくは粘膜組織の標的位置の下に組織拡張器を植え込む工程であって、組織拡張器は、エステル‐アクリレート結合によって化学的に架橋したヒドロゲルを含み、ヒドロゲルは、1,000〜50,000Daの分子量を有するトリブロック(PLGA)
x-(PEG)
y-(PLGA)
zコポリマーを含み、コポリマーの((総PLGAの分子量)/(総コポリマーの分子量)×100%)のパーセント比は、60%超であり、x、y、zはそれぞれ、独立して1〜500の整数である、工程と、
b)組織の下で組織拡張器を自然に拡張させる工程と、
を含む。
【0064】
第1の実施形態では、ヒドロゲルの1日の膨張比(1日目のWt/Wd)は、100%〜500%である。
【0065】
好適な実施形態では、1日の膨張比は、100%〜300%である。
【0066】
さらに好適な実施形態では、1日の膨張比は、100%〜200%である。
【0067】
第2の実施形態では、ヒドロゲルの最終膨張比(40日超でのWt/Wd)は、100%〜700%である。
【0068】
好適な実施形態では、最終膨張比は、150%〜500%である。
【0069】
さらに好適な実施形態では、最終膨張比は、200%〜400%である。
【0070】
第3の実施形態では、ヒドロゲルの弾性係数は、0.1〜100kPaである。
【0071】
好適な実施形態では、弾性係数は、0.5〜50kPaである。
【0072】
さらに好適な実施形態では、弾性係数は、1〜25kPaである。
【0073】
第4の実施形態では、ヒドロゲルは、臨床的な植え込みを助けるように、丸い先端部を備えた半円筒形の形状を有する。
【0074】
第5の実施形態では、粘膜組織の拡張は、歯肉増大(ridge augmentation)、口蓋裂修復、および子宮内口蓋裂修復から選択される。
【0075】
第6の実施形態では、歯肉増大は、抜歯後の顎または骨再吸収の外傷に応えるものである。
【0076】
第7の実施形態では、口蓋裂修復は、先天的欠陥に応えるものであり、この修復は、オプションとして、分娩後に、または子宮内で行われる。
【0077】
第8の実施形態では、皮膚拡張の適用は、植毛術、または外傷性損傷、やけど、先天的欠陥、もしくは外科的処置による皮膚移植適用に応えるものである。
【0078】
第9の実施形態では、皮膚拡張の適用は、豊胸術またはトランスジェンダー処置の美的要件に応えるものである。
【0079】
第10の実施形態では、拡張の適用は、再建手術に適用される。
【0080】
第11の実施形態では、この方法は、(工程a)と工程b)との間に)切開部を閉じる工程をさらに含む。
【0081】
第12の実施形態では、この方法は、c)組織拡張器を外科的に取り除く工程をさらに含む。
【0082】
第13の実施形態では、この方法は、c)組織拡張器をインビボで自然に分解させる工程をさらに含む。
【0083】
例示目的で、本発明のヒドロゲルは、戦争に関連した創傷により顔への外傷を受けた退役軍人に適用される、組織拡張器として使用され得る。歯肉増大は、口元の美しさおよび機能性を回復するために永続的な歯のインプラントを植え込むことを可能にするよう、利用され得る。
【0084】
第3の態様では、本発明は、1,000〜50,000Daの分子量を有するトリブロック(PLGA)
x-(PEG)
y-(PLGA)
zコポリマーを提供し、コポリマーの((総PLGAの分子量)/(総コポリマーの分子量)×100%)のパーセント比は、60%超であり、x、y、zはそれぞれ、独立して1〜500の整数である。
【0085】
前述した態様/実施形態、ならびに本明細書の他の部分に開示される他の態様/実施形態の、すべての許容可能な組み合わせが、本発明の追加の態様/実施形態として企図されることが、理解されるであろう。
【0086】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、外科的植え込み後の粘膜または皮膚の制御された拡張を引き出す、新奇なヒドロゲルを含む組織拡張器を提供する。これらの拡張器は、遅延拡張の特徴を失わずに、植え込み前に外科医によって再成形され得る。歯科用の目的で、これらのヒドロゲル組織拡張器は、典型的には、再吸収された歯槽堤に設置される。
図1は、下顎後方エリアでの組織拡張器の使用を示しているが、前方エリアおよび上顎歯槽エリアで使用されることもできる。口腔の外側において、装置は、さまざまな場所で皮膚を拡張するのに使用され得る。
【0087】
本発明のヒドロゲル拡張器は、組織拡張器に非常に有用な特徴を付け加える。それは、インプラントのサイズおよび形状を変更する能力である。これらの装置は、再建手術の多くの分野で有用である。それは、これらが、大きいものから非常に小さいものまで、広範なサイズおよび形状をとることができるためである。口内および形成外科的処置以外に、これらの装置は、脊椎破裂(spinae bifida)(T. Kohl, “Minimally invasive fetoscopic interventions: An overview in 2010,” Surg. Endosc., (2010) 24(8): pp. 2056-2067; N. S. Adzick, et al., “A randomized trial of prenatal versus postnatal repair of myelomeningocele,” N. Engl. J. Med., (2011) 364(11): pp. 993-1004;およびM. A. Fichter, et al., “Fetal spina bifida repair--current trends and prospects of intrauterine neurosurgery,” Fetal Diagn. Ther., (2008) 23(4): pp. 271-286)、特に従来手術および胎児内視鏡手術(conventional and feto-endoscopic surgery)を用いる、口唇裂および口蓋裂(N. A. Papadopulos, et al., “Foetal surgery and cleft lip and palate: Current status and new perspectives,” Br. J. Plast. Surg., (2005) 58(5): pp. 593-607)、ならびに他の子宮内外科処置(T. Kohl, “Minimally invasive fetoscopic interventions: An overview in 2010,” Surg. Endosc., (2010) 24(8): pp. 2056-2067)などの状態の子宮閉鎖にも使用され得る。
【0088】
本明細書で使用される場合、
「AIBN」は、アゾビスイソブチロニトリルを意味し;
「‐DA」は、材料がジアクリレート化されていることを示し;
「DCM」は、ジクロロメタンを意味し;
「DCS」は、示差走査熱量測定を意味し;
「‐DMA」は、材料のメタクリル化(methacrylation)を示し;
「DMSO」は、ジメチルスルホキシドを意味し;
「EGDMA」は、エチレングリコールジメタクリレートを意味し;
「Ether」は、ジエチルエーテルを意味し;
「ETO」は、エチレンオキシドを意味し;
「MW」は、分子量を意味し;
「PEG」は、ポリエチレングリコールを意味し;
「PLA」は、ポリ乳酸を意味し;
「PLGA」は、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)を意味し;
「RG503−DA」は、商業的に入手したPLGAのアクリル化形態(acrylated form)を示し;
「RT」は、室温を意味し;
「TEA」は、トリエチルアミンを意味する。
【0089】
以下の調合剤、実施例、および試験は、本発明の特定の実施形態をどのように作り、使用するかを示すものであり、発明の範囲を制限することは意図していない。
【0090】
調合剤:
トリブロックコポリマーの合成:
(PLGA)
x-(PEG)
y-(PLGA)
zトリブロックコポリマーは、PEGジオールを開始剤として使用して、開環反応によって合成される。所望のブロックサイズのPEG‐ジオールが、商業的に購入され、DCM中での溶解およびエーテル中での沈殿により精製される。その後、特定の量が、2首丸底フラスコの中で3時間、深い真空下で150℃まで加熱することによって、乾燥させられる。商業的に購入されたラクチドおよびグリコリドモノマーは、さらに精製するため、酢酸エチル中で2回再結晶化される。使用前に、第一スズオクトアート(Sn(OCt)
2)が、残りの水を除去するため真空蒸留されて、乾燥剤の上で保管される。所定のモル量のこれらのモノマーが、トルエン(10%w/v)中に溶解したSn(OCt)
2触媒およびPEGに加えられる。これらは、0.5時間にわたり深い真空下に置かれ、その後、8時間にわたって、150℃まで加熱される。合成後、(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zトリブロックポリマーは、少量のDCMに溶かされ、濾過されて、エーテル中に再沈殿する。
【0091】
典型的なPLGAの合成では、Sn(OCt)
2と共に少量の水が存在することにより、開環反応が始まる。この反応では、Sn(OCt)
2触媒は、ポリエチレングリコールのアルコールエンドキャップを、活性化‐RO−Sn+形態に変換し、これによって、これらの部位は、PLGA鎖の開始に役立ち、そのため、ブロックコポリマーがもたらされる。
【0092】
表1は、トリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーのいくつかの実施例について示している。これらのトリブロックコポリマーは、記載した分子量では市販されていないので、あつらえて合成される(custom synthesized)。これらのトリブロックのうち、TB05は、特に、オリジナルのPEGブロックより分子量が実質的に高い生物分解性のブロック長を有する(PLGA:PEGが10:1の比率)。これにより、マクロマーは、架橋前であっても本質的に水不溶性になる。このマクロマー、およびこれに似た他のものを、ヒドロゲルの生成に適用することは、結果として得られるゲル特性の驚くべき変化に役立つ。
【表1】
【0093】
トリブロックコポリマーのアクリル化(acrylation):
トリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーの合成および精製の後、結果として得られるポリマーは、架橋を可能にするため、アクリレートエンドキャップで活性化される。2首フラスコが、乾燥窒素で20〜30分間パージされる。トリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーは、30mLのベンゼンまたはDCMに溶かされる。TEAおよび塩化アクリロイルが、(‐OH)基の3倍のモル比で反応フラスコに加えられ、反応混合物は、80℃で3時間、還流条件下で撹拌される。反応混合物はその後、濾過されて、トリエチルアミン塩酸塩を除去し、濾過液は、余分のn‐ヘキサン中に落とされて、DA‐(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
z‐DA生成物を沈殿させる。
【0094】
その後、この生成物は、約20%w/vの濃度になるまでDMSOに再び溶かされて、エタノール中に再沈殿する。この二次的プロセスにより、塩化アクリロイル副反応により形成される余分なアクリル酸(acylic acid)が排除される。あるいは、生成物は、酢酸エチルに溶かされ、24時間、活性炭と混合され、その後、濾過、回転蒸発(酢酸エチルを除去するため)、DCMへの再溶解、およびエーテルもしくはヘキサン:エタノール(80:20)混合物中での沈殿が続く。最後に、沈殿した生成物は、減圧下で24時間、室温にて乾燥させられる。
【0095】
図2は、概略的な化学反応プロセスを示す。
図3は、TB05−DAについて、HNMRの特徴づけ結果を示し、示されたピーク指定は、トリブロック合成およびジアクリル化(diacrylation)の成功を確認するものである。アクリレート基を加えると、ポリマーがビニル基的に活性(vinylically-active)となり、ラジカル連鎖、架橋反応に関係することができ、このため、この材料が「マクロマー」へ変換される。
【0096】
PLGA/PLAアクリル化:
トリブロックコポリマーについて説明したのと同様のプロセスを用いて、PLGAをアクリル化する。このプロセスのためには、商業的に供給されるPLGAが使用されてよく(例えば、Resomer RG503H MW 〜25,000Da、Mn 〜12,000Da 酸でエンドキャップされている)、これによりシングルエンドのアクリル化(single-end acrylation)を生じるか、または、あつらえて合成したPLGA/PLA‐ジアクリレートを生成することができる。PLGA/PLA‐ジアクリレートの合成のために、ポリエステルは、前駆物質として1,10‐デカンジオールを用いて合成される。1,10‐デカンジオールは、あらゆる表面水分を除去するために深い真空下においてRTで一時的にパージされ、所定のモル量のラクチド、グリコリドおよびSn(OCt)
2開始剤が、デカンジオールに加えられ、その後、8時間にわたり、真空パージおよび150℃での加熱が行われる。
【0097】
アクリル化の前に、ポリエステルは、ジクロロメタンに溶かされ、ヘキサン中に再沈殿して、これを精製する。こうして形成されたPLGAまたはPLAは、ジアルコール(di-alcohol)でエンドキャップされており、ポリエステルの両末端にアクリレート単位が付着することを可能にする。精製後、ポリエステルは、前述したように、DCMに再び溶けて、3x(−OH)モル当量のTEAおよび塩化アクリロイルと反応し、精製される。
【0098】
あつらえて合成された材料については、組成物は、以下の例に見られるように命名される:「PLGA(1:1、10,000Da)‐DA」。ジアルコールでエンドキャップされたポリエステルにより、続いて起こるジアクリレート化ポリエステルが2つの鎖を互いに共役させることができるので、分子の追加的な疎水性だけでなく、架橋も可能となる。
【0099】
メタクリル化:
メタクリル化のプロセスは、塩化アクリロイルの代わりに塩化メタクリロイルが反応中に使用されることを除き、アクリル化について説明したものと同じである。
【0100】
ヒドロゲル形成:
成分(PLGA)
x-(PEG)
y-(PLGA)
zジアクリレート、PLGAジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、および商業的に購入したPEGジアクリレート、ならびに市販のモノマーおよび架橋剤を含む他の添加物は、DMSO(無水)溶媒中で組み合わせられて、総濃度が、10%w/v〜30%w/v固体/DMSOとなる。AIBNは、使用前にメタノールから再結晶化し、その他の成分は、受け取ったときのまま、または生成されたときのまま、使用される。AIBNは、〜0.35%w/w固体の濃度でDMSOに加えられ、この溶液は、不活性ガスで一時的にかきまぜられて、溶解した酸素を除去する。次に、この溶液は、65℃のオーブンに一晩入れられる。T. H. Tran, et al., "Biodegradable Elastic Hydrogels for Tissue Expander Application," Handbook of Biodegradable Polymers, (2011) 9: p. 2。
【0101】
この溶液は、ラジカル架橋反応を受けて、3次元のヒドロゲルネットワークを形成する。これは、溶液が架橋によって固まるので、オーブンから取り出した時に視覚的に確認される。結果として得られたヒドロゲルは、エタノールおよび酢酸エチルの溶液に交互に浸漬されて、1〜2週間にわたって未反応の残渣およびDMSOを除去する。ヒドロゲルは、その後、24時間超にわたり、真空オーブン中で乾燥させられる。
【0102】
ヒドロゲルの合成の成功は、FTIRによりさらに確認される。トリブロック形成時、エステルカルボニル結合(C=O)の形成に対応して、PEG前駆物質のスペクトルに加えて、ピークが、1750cm
−1の周りに生じる。アクリル化の後、比較的弱いピークが、=C−Hの変角により〜650cm
−1で観察される。ヒドロゲルが形成されると、このピークは消え、これは、反応の一環としてアルケン結合を消費する、ラジカル連鎖重合を示している。
【0103】
さらなる確認が、DSCによって得られる。PEG前駆物質は、典型的には50〜60℃の範囲で、融解吸熱(melting endotherm)を示し、結果として得られたトリブロックは、ブロック共重合により、オリジナルのPEGブロックよりわずかに低い融解吸熱を示す。架橋後、100℃(最高試験温度)未満では、融解吸熱は観察されず、このことは、熱硬化され、温度の上昇時に溶けない、架橋ポリマーがうまく形成されたことを示す。以下に挙げる実施例は、この方法により形成されたヒドロゲルである。
図4は、この架橋反応の概略的な例を示している。
【0104】
ヒドロゲルのインビトロ分析
機構:
形成されたヒドロゲルの円筒形部分が切断され、それらの断面積が測定される。これらのヒドロゲル部分は、次に、機械的試験装置(イリノイ州アルゴキンのTexture Technologies Corp.のTA.XTPlus Texture Analyzer)上に載せられ、12.7mm(1/2インチ)半径のダクロン先端具によって、0.5mm/秒のクロスヘッド速度で20%のひずみまで圧縮され、先端具が引き抜かれるまでそこで60秒間保たれる。2%のひずみでの応力・ひずみ曲線の傾きが、「弾性係数」として測定される。60秒間保たれた後の、20%のひずみでの圧縮力は、20%のひずみでの初期圧縮力で分られ、パーセントに変換されて、「応力緩和」をもたらす。
【0105】
分解されたヒドロゲルの分解後の機械的強度は、6.35mm(1/4インチ)の鋼球によって、0.5mm/秒のクロスヘッド速度でサンプルを圧縮することによって決定される。ヒドロゲルがつぶれる(fails)力は、ヒドロゲルの高さで割られ、N/mm単位の「機械的強度」を得る。この数が高いほど、分解後のヒドロゲルが強くなる。
【0106】
膨張速度:
膨張の実験は、乾燥ゲルの重量(W
d)で割った、膨張したゲルの重量(W
s)である、「膨張比率」を測定することによって行われる。サンプルのヒドロゲルは、リン酸緩衝生理食塩水の中に入れられ、水中での膨張による重量の増加が、KIMWIPE(登録商標)ペーパーで余分な水分を除去した後の、所定の時点で測定される。
【0107】
膨張圧力:
ヒドロゲルの膨張圧力は、特別に改変されたステージを備えた機械的試験テクスチャ分析器(mechanical-testing texture analyzer)の中に円筒形サンプルを入れることにより、測定される。標準的なテクスチャ分析器のベースが、37℃の加熱板(hot plate)と取り換えられて、測定中のインキュベーションが可能となる。22mLのシンチレーションバイアルが、ベースの上に置かれて、乾燥ヒドロゲルが、このバイアルの中に導入される。テクスチャ分析器の先端具(12.7mm(1/2インチ)のダクロン)は、ヒドロゲルに触れるまで、下げられる。この先端具は、0.154Mの塩酸(HCl)が10mL、このバイアルに加えられる間、この位置で静止して保持され、先端具は、ヒドロゲルが膨張させられる間、24時間にわたり、所定の場所で保持される。HClは、体液と同じイオン濃度で使用され、PLGAの分解は、膨張特性に対する影響を最小限にして、促進され得る。この時間中にヒドロゲルにより及ぼされる最大の力(全てのサンプルについて、これは、24時間より前に起こる)が記録され、膨張したヒドロゲルの接触面積で割られる。これは、ヒドロゲルがそれら自体の膨張力によって生成し得る、可能な最大の力を示している。
【0108】
実施例1〜19:
表2は、ヒドロゲルの実施例1〜16の組成を列挙している。処方は、DMSO中の%w/vとして列挙された成分を含む。別段指定のない限り、PEG‐DAは、700Daの分子量を有し、反応は、0.35%(w/w固体)のAIBNで開始される。
【表2】
【0109】
実施例1〜16は、前述のとおりに分析され、それらの特性が表3に列挙されている。縦の欄は、示すような値を示すものである:
(1)「初期膨張」は、最初の24時間のインキュベーション後の膨張比である。
(2)「最大膨張」は、実験全体(典型的には60日)にわたり得られた最も高い膨張比である。
(3)「最大時間」は、最大膨張に到達するのにかかった時間を日数で表したものである。
(4)乾燥ヒドロゲルの「弾性」および「応力緩和」は、乾燥ヒドロゲルが再成形される能力を示す。
(5)「膨張圧力」は、mm Hg単位であり、先に示したように試験される。
(6)「事後状態(Post condition)」は、ヒドロゲルの形態を説明するものであり、破損強度がN/mm単位で括弧内に列挙されている。「ND」は、このカテゴリーでは、サンプルについていかなるデータも利用することができないことを示す。
【表3】
【0110】
この一連の試験は、いくつかの共通した結果を示している。概して、これらの方法および材料を用いて準備されたヒドロゲルは、一般的な鋭い外科器具を用いて再成形される能力を有している。また、これらのヒドロゲルは、組織を拡張させるのに十分な圧力を有している。これまでの研究員は、必要な圧力が3333〜31330Pa(25〜235mm Hg)の範囲であることを示唆している。S. J. Berge, et al., “Tissue expansion using osmotically active hydrogel systems for direct closure of the donor defect of the radial forearm flap,” Plast. Reconstr. Surg. (2001) 108(1): pp. 1-5, discussion pp. 6-7; K. G. Wiese, “Tissue expander inflating due to osmotic driving forces of a shaped body of hydrogel and an aqueous solution,”米国特許第5,496,368号;ならびに、H. S. Z. Min and P. Svedman, “On expander pressure and skin blood flow during tissue expansion in the pig,” Annals of Plastic Surgery (1988) 21(2): p. 6。本発明のヒドロゲルの拡張は、圧力ではなく時間で制御されるので、この範囲内で得ることができる最大限の圧力を有することは、問題ではない。最大圧力を測定することの重要な点は、ヒドロゲルが皮膚を拡張させるのに十分な圧力を有することを確実にすることである。処方(recipe)を調節すると、拡張が完了したときに、拡張器の膨張プロファイルおよび材料の強度に、最も劇的な影響が及ぼされる。この情報により、実施例17〜19において、改善された装置材料の調合剤がもたらされた。
【0111】
実施例17
このヒドロゲルは、10%のTB05−DA、5%のPEGDA、および0.75%のRG503−DA(w/v)の溶液をDMSO中で反応させることにより、準備される。
【0112】
実施例18
このヒドロゲルは、10%のTB05−DA、5%のPEGDA、0.75%のRG503−DA(w/v)、および0.15%のエチレングリコールジメタクリレートの溶液をDMSO中で反応させることにより、準備される。
【0113】
実施例19
このヒドロゲルは、10%のTB05−DA、5%のPEGDA、および1.5%のRG503−DA(w/v)の溶液をDMSO中で反応させることにより、準備される。
【0114】
実施例17〜19の分析は、作られたとき、および、16時間のサイクルにわたる54℃でのエチレンオキシドによる滅菌後の、これらのヒドロゲルの膨張プロファイルに重点が置かれている。ETOによる滅菌は、恐らくは、PLGA鎖の何らかの損傷により、拡張の速度を増大させる。これは、一般的にETOは損傷が最小の滅菌法の1つとして認識されているという事実にもかかわらず、である。S. E. Moioli, et al., “Sustained release of TGFbeta3 from PLGA microspheres and its effect on early osteogenic differentiation of human mesenchymal stem cells,” Tissue Engineering (2006) 12(3): pp. 537-546。PLGAを加えることにより、拡張が、妥当な速度まで落ちる。
【0115】
図5は、驚くべき結果を強調するため、2つの例示的な拡張プロファイルを示している。水溶性トリブロックの使用により、極端に速い膨張および溶解の前に本質的な遅延時間(built-in-delay time)を有するヒドロゲルが作られる(333−1500−333 PLGA‐PEG‐PLGA-ジアクリレートおよび示した比率のPEG‐ジアクリレート(700Da)から合成されるヒドロゲルについては、
図5Aを参照のこと)。縦軸の目盛は、拡張比率を100代で(in 100’s)示したものである。この結果は、水溶性成分で完全に構成されるヒドロゲルが、全期間中に拡張するよう、過度の圧力下にあるという事実によるものである。分解の際、鎖は、急速に拡張するよう自由になる。概して、この特性は、急速で比較的大きい拡張が必要とされる状況に、十分に適している。しかしながら、組織拡張の適用では、これは、必ずしも望ましいことではない。
【0116】
水不溶性のトリブロックコポリマー(例えば、PLGAブロックサイズがPEGブロックサイズより実質的に大きい、PLGA‐PEG‐PLGA)の使用により、より低い初期膨張、ならびにほぼゼロ次の連続的な膨張を有する、拡張器が作られる。これは、分解により疎水性のPLGA成分が除去される際に拡張器全体の親水性が穏やかに増大するためである。この特徴は、現在の食塩水が注入可能な拡張器の段階的な方法ではなく、連続的な拡張を可能にするので、組織拡張器の適用に有益である。連続的な拡張により、圧力がほぼ一定のレベルに保たれるので、組織に生じる外傷が少なくなる。
【0117】
インビボ試験:ラットモデル
本発明のヒドロゲルを、インビボ環境で試験した。すべての動物実験は、インディアナ大学医学部(Indiana University Medical School)(IUMed)の実験動物資源センター(Laboratory Animal Resource Center)(LARC)で、この大学の動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)に従って行われた。すべての処置は、動物および処置に適切な麻酔下で行われた。
【0118】
前述したインビトロの結果に基づいて、実施例20〜24が準備され、動物実験で使用された。以下の調合剤については、DMSO中の〜20〜25%w/vの濃度のマクロマーが固定される。したがって、調合は、%w/wの構成要素として記載される。
【0119】
実施例20
このヒドロゲルは、70.2%のTB05−DA、3.5%のRG503 Ac、および26.3%のPEGDA(%w/w)の成分を含有する、(〜20%w/v固体)DMSO溶液を反応させることによって、準備される。
【0120】
実施例21
このヒドロゲルは、45.1%のTB05−DA、6.4%のRG503 Ac、48.4%のPEGDA、および0.1%のEGDiMAC(%w/w)の成分を含有する、(〜20%w/v固体)DMSO溶液を反応させることによって、準備される。
【0121】
実施例22
このヒドロゲルは、60.5%のTB05−DA、9.1%のRG503 Ac、30.3%のPEGDA、および0.1%のEGDiMAC(%w/w)の成分を含有する、(〜20%w/v固体)DMSO溶液を反応させることによって、準備される。
【0122】
実施例23
このヒドロゲルは、63.2%のTB05−DA、4.8%のRG503DA、31.6%のPEGDA、および0.5%のEGDiMAC(%w/w)の成分を含有する、(〜20%w/v固体)DMSO溶液を反応させることによって、準備される。
【0123】
実施例24
このヒドロゲルは、実施例17と同じ調合を有するが、ヒドロゲルをPVPの水溶液に一時的に浸し、乾燥させることにより、PVP(55kDa)でコーティングされている。
【0124】
動物実験用のすべてのヒドロゲルは、動物モデルで使用される前に、ETOで滅菌され、無菌で取り扱われた。予備動物実験をラットに対して行った。手短に言えば、ラットの頭蓋上の組織片をわきに寄せ、インプラントをその組織の下に置いて、創傷を縫合して再び閉じた。ラットは、その後、3D表面スキャニングFaroArm(登録商標)レーザー装置でスキャンされ、1週間当たり3回、拡張面積および容積を正確に計算した。ラットは、組織反応の何らかの兆候についても観察された。最初の18匹のラットの予備実験は、6つのプロトタイプに対して行われ、壊死または裂開といった組織反応は何も観察されなかった。1匹のラットは、ケージの上部で頭をこすったことによって生じた軽い潰瘍形成を示し、これは、ケージの底に餌を置くことで改善された。6週間の拡張後、ラットは殺され、組織診が、採取した組織片に対して行われた。表5は、予備実験による、初期拡張の結果を示している。ヒドロゲルのうちのいくつかは、うまく拡張したが、不十分な疎水性内容物および架橋により、除去の際に砕けた。
【表4】
【0125】
このラットの予備実験は、膨張比率と、より高い密度の永続的架橋とが適切に組み合わせられたヒドロゲルが、除去性を高めていることを示す。これは、完全な膨張後の、より高い強度によるものであろう。この情報に基づき、追加の5つのヒドロゲルが準備され、各拡張器につき6匹のラットで試験された。4週間後に3匹のラットが殺され、残りは6週間後に殺された。対照として、3つの商業的に購入されたOSMED(登録商標)拡張器が、同じように植え込まれ、試験された。実施例25〜29の組成は、表6に記載するとおりである。
【表5】
【0126】
結果として得られた、拡張器による容積比の変化(容積(t)/容積(i))は、Faroarmスキャナを用いて目的の領域を分析することにより測定された。表7は、〜3〜4日目(初期バースト)および〜13〜19日目(遅延相)に結果として生じた容積の膨張を示している。1日に取り扱う動物の数に限りがあるので、タイムラインは正確に一致していないが、互いに非常に近いものである。
【表6】
【0127】
拡張器の周りの組織を、統計分析により組織学的に調べた。カイ二乗検定を行い、水疱、慢性炎症、または急性炎症について、グループ間で有意差があるかどうか判定した。順序づけられたカテゴリー反応(ordered categorical responses)に関するマンテル‐ヘンツェル検定を行い、線維性被膜、脈管質、または泡沫細胞のスコアについて、グループ間で有意差があるかどうか判定した。
【0128】
結果は、水疱(p=0.17)、線維性被膜(p=0.30)、慢性炎症(p=0.30)、泡沫細胞(p=0.06)、または急性炎症(p=1.00)について、グループ間で統計的に有意な差はなかったことを示している。実施例29は、大部分の他のグループより脈管質スコアが著しく高い。完全な組織学スコアを表8に示す。拡張が遅い、初期拡張の減少という観点で最も良かったのは、実施例29であった。この拡張器は、挿入および除去のしやすさという点でも、良好な臨床的挙動を示しており、また、他の拡張器プロトタイプより、砕けることが著しく少なかった。表6の最後の列に示すとおり、実施例29は、総濃度が最も高い非分解性架橋剤(55.0%のPEGDA+EGDMA)を有する。よって、実施例29は、イヌでの実験にふさわしい候補として特定された。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【0129】
インビボ試験:イヌモデル
この最初の実験のために、2頭のビーグル犬の両方から上顎および下顎部分両方の大臼歯を採取し、ヒトにおける骨の再吸収の自然なプロセスをモデル化するため、隆起部(ridge)を磨滅させた。3か月の治癒の後、これらのイヌは、顎の左または右の下顎または上顎部分に、ランダムなブロックパターンで、6つの実施例29による拡張器、および2つのOSMED(登録商標)
gmbh対照拡張器を外科的に置かれた。実施例29による拡張器は、据え付け時に外科医により再成形された。OSMED(登録商標)タイプの400〜1070拡張器は、製造業者の指示に従い、骨に取り付けられるねじによって、挿入された。
【0130】
拡張器は、4週間、または組織拡張器が自動除去される(「ポップアウトする(popping out)」)二次的な終点まで、粘膜組織内で拡張させられた。所定の時点で、歯の印象および模型(casts)が、拡張組織上に作られ、拡張をアッセイする際に、将来的に使用されるよう、除去された。4週間の時間枠の後、拡張粘膜の生検材料が採取され、粘膜が再び縫合されて、イヌを死なせることなく、治癒させた。
【0131】
OSMED(登録商標)対照拡張器はいずれも、据え付けから12日以内に粘膜から自動で除去された。これは、直接粘膜を通る駆出により生じた。実施例29のヒドロゲルのうちの1つも、据え付けから19日後に、非常に似たパターンで、駆出を受けた。いずれの場合も、駆出は、縫合された地点ではなく、直接組織を通って生じており、これは、縫合による治癒までの時間(time to suture healing)が、粘膜を通ってこれらの拡張器が失われることになる、メカニズム/問題ではなかったことを示している。実験の終わりに残っていた5つ拡張器プロトタイプのうち、2つのみが、イヌのうち1頭の上顎で見つかり、回収された。残りの3つは、壊れて、回収することはできなかった。除去され得た拡張器のうち、すべてが破砕しているのが観察されたが、十分大きな破片で残っており、鉗子および従来の外科ツールを用いて、昔からの外科的除去を行うことができた。
【0132】
イヌでの実験の最初の結果は驚くべきものである。粘膜組織の拡張は、実施例29のデザインと比べて、実質的に変化したヒドロゲルを明らかに必要としている。これは、ヒドロゲルの特性とインビボでの結果との関係に対するさらなる理解を必要とする。拡張器の駆出は、組織が耐え得るよりも高い拡張圧力を示し、破砕した拡張器は、拡張したヒドロゲルの弱い/脆い性質を示している。
【0133】
拡張器の可視化および追跡を助けるため、蛍光フルオレセインジアクリレート染料が、ヒドロゲル構造内に組み込まれた。新たな1組の拡張器プロトタイプが合成された。生成された80を超える新しいプロトタイプのうち、2つのフルオレセイン標識バージョン(実施例30および実施例31)が、イヌ実験のインビトロ特性に基づいて、選択された。さらに、実施例32は、同様の拡張特性を有するが、実質的に改善された最終強度(end strength)を有するプロトタイプとして選択された(表9を参照)。
【表8】
【0134】
ヒドロゲルのインビトロ特性を改変するのに加え、拡張器の初期形状が、実質的に「半月」型に調節された。これは、組織を拡張器の角または鋭いエッジにさらすことなく拡張する能力に基づけば、臨床的に有益である。さらに、円筒形状の拡張器の半月型断面は、植え込みを助けるよう、末端に丸い部分を有する。これは、
図6に示すような、半円筒の型において反応を行うことにより、達成された。
【0135】
実施例30による6つの拡張器が、右の上顎および下顎の位置に置かれ、実施例31が6つ、左の上顎および下顎の位置に置かれた。拡張器は、既に半円筒形なので、据え付け時における拡張器の再成形は、挿入のためにヒドロゲルの長さを調節することに限られた。拡張器は、粘膜組織において、約6週間拡張させられた。結果は、実施例30の拡張器のうち4つが、剖検日(necropsy day)(植え込みから44日後)までに排出され、実施例31の拡張器すべてが、植え込み部位に無傷でとどまったことを示した。このデータは、実施例31の拡張器が実施例30の拡張器よりも良い性能であったことを、明らかに示している。さらに、実施例31の拡張器は、6週間の拡張後、組織の、臨床的に有用な弁を生じることが観察され、また、イヌから回収された後も、無傷のままであった。
【0136】
挿入された拡張器のインビボ拡張は、3DスキャニングFaro−arm装置を用いて測定された。
図7は、実施例31の拡張動態を示す。拡張エリアの容積の増大は、新しい組織の形成と一致する。
図7の動的データは、拡張が約4〜6週間でプラトーに達することを示している。
【0137】
動物実験から確認された組織構造および臨床的な記録は、本発明の新奇なヒドロゲル拡張器材料が、非常に生体適合性があり、毒性がなく、かつ実施例32の生体適合性試験によりさらに調査されることを、示している。このヒドロゲルは、実施例31に化学的に似ているが、追跡目的のみ意図されていて臨床材料に含まれることは意図していないフルオレセインジアクリレートを含有していないので、選択された。実施例32の細胞毒性および生体適合性試験が、Toxikon Corporation(マサチューセッツ州ベッドフォード)によって行われた。行われた試験/規制番号は、以下を含む:L929−MEM溶出/ISO10993−5、皮内注射/ISO10993−10、全身注射/ISO10993−11、ウサギの発熱性物質試験/ISO10993−11、筋肉インプラント 7日/USP 34、NF−29、復帰突然変異アッセイ/ISO10993−3、および光を暗くすること(light obscuration)による粒子状物質/USP34,NF−29。試験の結果は、細胞毒性も、皮内毒性も、系の毒性(system toxicity)も、発熱反応の兆候も、著しい生物学的反応もなく、陰性対照と比べて同じコロニーがあり、平均が18.9個の粒子/mL(>10μm)および3.7個の粒子/mL(>25μm)であることを示している。全体として、これらの試験は、生物学的毒性が最小限の、非常に良好な耐性のある材料を示している。よって、この材料は、非常に生体適合性があると考えられる。
【0138】
インビボのイヌモデルで、いくつかの実施例が成功しているにもかかわらず、状況によっては、故障が依然として生じる。よって、実施例33は、インビボのイヌ実験のために準備された。
【0139】
実施例33
このヒドロゲルは、前述したとおりに合成されたもので、(%w/w)で37.6%のPLGA‐PEG‐PLGA、37.6%のPEGDA(600)、11.6%のエチレングリコールジメタクリレート、および13.2%のPLA‐ジアクリレート(8.7kDa)を含有し、DMSO中、総濃度w/v固体は27%であった。この実施例の最初の第1日目の膨張は171%であり、最終的な膨張は242%であった。
【0140】
実施例32および33は、前述したように、イヌの顎骨モデルにおいて試験された。試験した4つの拡張器のうち、実施例32は、剖検時に見つからなかったものが2つあり、砕けた破片として除去されたものが2つであった。実施例33は、1つの部分として除去されたものが2つあり、砕けた破片として除去されたものが2つであり、このことは、この実施例が、実施例32と比べて改善されていることを示している。
【0141】
実施例34〜39は、フルオレセインジアクリレートを加えずに、実施例30および31の必要なインビトロ特性を満たす材料を検証するために準備された。これは、フルオレセインジアクリレートが、規制の観点から望ましくないためである。この作業では、DMSO中の%w/v溶媒は、表10に示すように変化した。
【表9】
【0142】
実施例34〜39は、前述したように、インビトロで分析され、結果として得られた特徴を表11に示す。
【表10】
【0143】
PLGA‐PEG‐PLGAトリブロックの代わりにPLA−PEG−PLAトリブロックを使用したことを除き、組成が実施例31と似ている実施例34は、好ましくない初期膨張を有した。同様に、疎水化物質ラウリルメタクリレート(hydrophobicizing-agent laural methacrylate)の添加と似ている、実施例35もまた、好ましくない初期膨張を有した。これらの結果は、より疎水性の高いPLA鎖およびラウリルメタクリレートの添加が、より低い初期膨張を論理的にはもたらすはずなので、プロトタイプの拡張器の望ましい組成が明白ではないことを表している。PLA−PEG−PLAを含む組成物は、不透明で濁っていることが観察されており、これは、マトリックス内での相転移を示している。この結果は、拡張器の医療的な使用について、PLGA‐PEG‐PLGAポリマーが望ましいことを示している。実施例36〜39は、優れたインビトロ特性を持つ拡張器が、ラウリルメタクリレートと共に、またはそれなしで、PLGA‐PEG‐PLGA(TB10)を用いることで得られることを示している。
【0144】
実施例40は、ヒドロゲル特性の明白でない性質をさらに表している。これは、PEG(600Da)ジアクリレートではなく、エチレングリコールジメタクリレートおよびPEG(256Da)ジアクリレートがわずかに多いことを除き、実施例38と似ている。
【0145】
実施例40
このヒドロゲルは、55.6%のTB11−DA、5.6%のP(DL)La−DA(70,000)、27.8%のPEG−DA(256Da)、および11.1%のエチレングリコールジメタクリレート(21%w/v固体)を用いて、前述したように合成される。
【0146】
特に、実施例40は、手触りがチョークに似て、固く結晶質であることが観察されている。成分がわずかに変化したにもかかわらず、このプロトタイプは、その脆い性質によって、切断されたり、変化したりすることはできなかった。同様に、実施例41は、架橋があまりに低いことに関連した問題を示している。このヒドロゲルは、20%w/vのTB11DAを直接反応させることにより、合成される。観察されたゲル化は、一貫しておらず、不適切な量の固体が得られ、材料の大部分は、実質的に液体のままである。
【0147】
本明細書に記載する新奇なヒドロゲルの性質は、それらの機械的特性および膨張特性がさまざまな成分の複雑な相互作用によって決まることである。主にモノマーと比較的少量の架橋剤との混合物である、典型的なヒドロゲルとは異なり、本発明のヒドロゲルは、実質的に架橋剤成分で構成されている。これらの新しいヒドロゲルの架橋密度は、マルチビニル成分とモノマー単位とのモル比によってはあまり制御されず、むしろ、マルチビニル単位(multivinyl units)の分子量によって制御される。この理由から、架橋密度(すなわち、架橋剤のモル数/モノマーのモル数)を計算する、従来の方法は、これらのヒドロゲルの架橋を説明するのに適していない。代わりに、架橋密度は、マクロマーの鎖長と比べた場合のビニル単位の相対的な数に基づいて考慮され得る。1モル当たりで、TB05−DAは、〜11kDaのポリマー鎖当たり2つのビニル活性単位(vinyl active units)を含有し、これは0.18VI/kDa(ビニル単位の数/マクロマーのキロダルトン)に等しい。他の架橋剤が、それぞれ、表12に示すように、それらの相対的なVI/kDaでランク付けされ得た。
【表11】
【0148】
モノマーが架橋密度に寄与していないことに注目されたい。実施例によるヒドロゲルの成分の質量(%)含有率に、それぞれのVI/kDaを掛けると、架橋密度への、各マクロマーの相対的なモル寄与度(relative molar contribution)が得られる。これらを足し合わせると、架橋密度が一般的に呼ばれる、「Q」または架橋の数(#cross-links)/mgとして、実施例の架橋密度が得られる。
【0149】
相対的な架橋密度は、表13において、一連の実施例について示されている。架橋密度は、膨張ならびに機械的特性を制御するのに重要である。架橋密度が高すぎる状況では、材料は脆く、切断されたり、適切に据え付けられたりすることができない。架橋密度が低すぎると、結果として得られる材料は、柔らかすぎて、大きなサイズまで急速に膨張する。
【表12】
【0150】
架橋密度に加え、ヒドロゲルの拡張特性は、さまざまな成分の相対的な疎水性寄与度/親水性寄与度(relative hydrophobic/hydrophilic contributions)によって制御される。これは複雑なシステムであり、また疎水性/親水性は、相対的な用語であるが、一般的に、通常は水溶性ではないポリエステル鎖が、ポリ(エチレングリコール)鎖およびポリアクリレート主鎖よりかなり疎水性であることを、理解することができる。
【0151】
さらに、ラウリルメタクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレートなどの添加物は、エチレングリコールジメタクリレートが架橋に対して大きな影響を及ぼしても、全体的な疎水性を増大させる。トリブロックコポリマーでは、疎水性寄与度/親水性寄与度は、それらのPLGA総分子量とそれらの総分子量との比率として計算され得る。例えば、TB05−DAは、10,000Da(PLGA)/11,000Da(合計)=0.91の疎水性寄与度を有するものと、計算され得る。
【0152】
純粋に疎水性の成分(PLGAジアクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレート)は、1xだけ疎水性に寄与すると考えることができ、親水性のアイテム(PEGジアクリレート)は、1xだけ親水性に寄与すると考えることができる。各成分の疎水性寄与度(PEGDA=0)に、拡張器内の含有量(%w/w)を掛けると、拡張器の全体的な疎水性を、疎水性(%)の単位で計算することができる。表14は、選択された実施例の初期疎水性を示している。実施例1は、実質的に適切でない初期疎水性を持つ拡張器を示すために含まれている。
【表13】
【0153】
架橋密度および疎水性寄与度/親水性寄与度はすべて、ヒドロゲルの膨張を定める上で役割を果たしていることに注目されたい。しかしながら、この量は動的である。それは、加水分解時に、例えばPEGおよびポリアクリル酸など、加水分解で安定した親水性成分に対するPLGA/PLA含量の減少によって、材料の全体的な疎水性が減少し、かつ架橋が切断され、それによって、膨張が増大するためである。
【0154】
材料の機械的特性は、組織拡張器にとっても重要である。これらは、拡張器があるサイズまで刈り込まれて、トンネル形成または同様の外科技術により組織の下に置かれることを可能にするものでなければならない。この理由から、材料は、固すぎても、柔らかすぎてもいけない。植え込みに関して良好な機械的特性を示す一連のプロトタイプを、表15に示す。
【表14】
【0155】
〔実施の態様〕
(1) エステル‐アクリレート結合により化学的に架橋したヒドロゲルにおいて、
1,000〜50,000Daの分子量を有するトリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーを含み、
前記コポリマーの((総PLGAの分子量)/(総コポリマーの分子量)×100%)のパーセント比は60%超であり、
x、y、zはそれぞれ、独立して、1〜500の整数である、ヒドロゲル。
(2) 実施態様1に記載のヒドロゲルにおいて、
前記トリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーは、2,000〜40,000Daの分子量を有する、ヒドロゲル。
(3) 実施態様2に記載のヒドロゲルにおいて、
前記トリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーは、5,000〜20,000Daの分子量を有する、ヒドロゲル。
(4) 実施態様1〜3のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
前記コポリマーの((総PLGAの分子量)/(総コポリマーの分子量)×100%)のパーセント比は、95%〜75%である、ヒドロゲル。
(5) 実施態様4に記載のヒドロゲルにおいて、
前記コポリマーの((総PLGAの分子量)/(総コポリマーの分子量)×100%)のパーセント比は、95%〜85%である、ヒドロゲル。
【0156】
(6) 実施態様1〜5のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
前記トリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーは、前記ヒドロゲルの1%(w/w)〜80%(w/w)を構成する、ヒドロゲル。
(7) 実施態様6に記載のヒドロゲルにおいて、
前記トリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーは、前記ヒドロゲルの20%(w/w)〜70%(w/w)を構成する、ヒドロゲル。
(8) 実施態様7に記載のヒドロゲルにおいて、
前記トリブロック(PLGA)
x‐(PEG)
y‐(PLGA)
zコポリマーは、前記ヒドロゲルの30(w/w)%〜60%(w/w)を構成する、ヒドロゲル。
(9) 実施態様1〜8のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)
xコポリマー中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50〜約99:1の範囲である、ヒドロゲル。
(10) 実施態様9に記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)
xコポリマー中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50である、ヒドロゲル。
【0157】
(11) 実施態様1〜10のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)
zコポリマー中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50〜約99:1の範囲である、ヒドロゲル。
(12) 実施態様11に記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)
zコポリマー中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50である、ヒドロゲル。
(13) 実施態様1〜12のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
(PLGA)
xは、約1000〜約7000Daであり、(PEG)
yは、約200〜約2000Daであり、(PLGA)
zは、約1000〜約7000Daである、ヒドロゲル。
(14) 実施態様1〜13のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
(PLGA)
xは、約3000〜約5500Daである、ヒドロゲル。
(15) 実施態様1〜14のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
(PLGA)
zは、約3000〜約5500Daである、ヒドロゲル。
【0158】
(16) 実施態様1〜15のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
(PEG)
yは、約500〜約1500Daである、ヒドロゲル。
(17) 実施態様1〜16のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
x=zである、ヒドロゲル。
(18) 実施態様1〜17のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
1,000〜200,000Daの分子量を有する、(PLGA)‐または(PLA)‐ジアクリレートをさらに含む、ヒドロゲル。
(19) 実施態様18に記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)‐または(PLA)‐ジアクリレートは、2,500〜150,000Daの分子量を有する、ヒドロゲル。
(20) 実施態様19に記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)‐または(PLA)‐ジアクリレートは、5,000〜100,000Daの分子量を有する、ヒドロゲル。
【0159】
(21) 実施態様18〜20のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)‐または(PLA)‐ジアクリレートの濃度は、前記ヒドロゲルの1%(w/w)〜30%(w/w)である、ヒドロゲル。
(22) 実施態様21に記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)‐または(PLA)‐ジアクリレートの濃度は、前記ヒドロゲルの2%(w/w)〜25%(w/w)である、ヒドロゲル。
(23) 実施態様22に記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)‐または(PLA)‐ジアクリレートの濃度は、前記ヒドロゲルの3%(w/w)〜20%(w/w)である、ヒドロゲル。
(24) 実施態様18〜23のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)‐ジアクリレートコポリマー中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50〜約99:1の範囲である、ヒドロゲル。
(25) 実施態様18〜24のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
前記(PLGA)‐ジアクリレートコポリマー中のラクチド:グリコリドの比率は、約50:50である、ヒドロゲル。
【0160】
(26) 実施態様1〜25のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
100〜10,000Daの分子量を有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレートをさらに含む、ヒドロゲル。
(27) 実施態様26に記載のヒドロゲルにおいて、
前記ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートは、300〜5,000Daの分子量を有する、ヒドロゲル。
(28) 実施態様27に記載のヒドロゲルにおいて、
前記ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートは、500〜1,000Daの分子量を有する、ヒドロゲル。
(29) 実施態様26〜28のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
前記ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートの濃度は、前記ヒドロゲルの5%(w/w)〜70%(w/w)である、ヒドロゲル。
(30) 実施態様29に記載のヒドロゲルにおいて、
前記ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートの濃度は、前記ヒドロゲルの10%(w/w)〜60%(w/w)である、ヒドロゲル。
【0161】
(31) 実施態様30に記載のヒドロゲルにおいて、
前記ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートの濃度は、前記ヒドロゲルの15%(w/w)〜55%(w/w)である、ヒドロゲル。
(32) 実施態様1〜31のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレートをさらに含む、ヒドロゲル。
(33) 実施態様32に記載のヒドロゲルにおいて、
前記エチレングリコールジメタクリレートは、前記ヒドロゲルの1%(w/w)〜30%(w/w)の濃度を有する、ヒドロゲル。
(34) 実施態様33に記載のヒドロゲルにおいて、
前記エチレングリコールジメタクリレートは、前記ヒドロゲルの3%(w/w)〜20%(w/w)の濃度を有する、ヒドロゲル。
(35) 実施態様34に記載のヒドロゲルにおいて、
前記エチレングリコールジメタクリレートは、前記ヒドロゲルの5%(w/w)〜20%(w/w)の濃度を有する、ヒドロゲル。
【0162】
(36) 実施態様1〜35のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
架橋密度(3重結合した鎖/mg)は、0.1〜5.0である、ヒドロゲル。
(37) 実施態様36に記載のヒドロゲルにおいて、
前記架橋密度は、0.5〜4.0である、ヒドロゲル。
(38) 実施態様37に記載のヒドロゲルにおいて、
前記架橋密度は、1.0〜3.0である、ヒドロゲル。
(39) 実施態様1〜38のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
全体的な疎水性(直接水不溶の含有量(directly water insoluble content)/水溶含有量(water soluble content))は、35%〜90%である、ヒドロゲル。
(40) 実施態様39に記載のヒドロゲルにおいて、
前記全体的な疎水性は、40%〜85%である、ヒドロゲル。
【0163】
(41) 実施態様40に記載のヒドロゲルにおいて、
前記全体的な疎水性は、50%〜80%である、ヒドロゲル。
(42) 実施態様1〜41のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
前記ヒドロゲルは、成長因子、抗生物質、鎮痛薬、血液凝固緩和剤、および免疫反応緩和剤から選択される、1つまたは2つ以上の薬剤が含浸されている、ヒドロゲル。
(43) 実施態様42に記載のヒドロゲルにおいて、
前記成長因子は、骨形態形成タンパク質、上皮成長因子、形質転換成長因子、肝細胞成長因子、血管内皮成長因子、血小板由来成長因子、線維芽細胞成長因子、ケラチノサイト成長因子、またはサイトカインである、ヒドロゲル。
(44) 実施態様42または43に記載のヒドロゲルにおいて、
前記抗生物質は、テトラサイクリン、ベータラクタマーゼ阻害剤、ペニシリン、またはセファロスポリンである、ヒドロゲル。
(45) 実施態様42〜44のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
前記鎮痛薬は、アミノアミドクラスもしくはアミノエステルクラスの麻酔薬、非ステロイド系抗炎症薬、またはステロイド系抗炎症薬である、ヒドロゲル。
【0164】
(46) 実施態様45に記載のヒドロゲルにおいて、
前記鎮痛薬は、リドカインまたはベンゾカインである、ヒドロゲル。
(47) 実施態様42〜46のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
前記血液凝固緩和剤は、ワーファリン、ヘパリン、またはトロンビンである、ヒドロゲル。
(48) 実施態様42〜47のいずれかに記載のヒドロゲルにおいて、
前記免疫反応緩和剤は、エベロリムス、非ステロイド系抗炎症薬、またはステロイド系抗炎症薬である、ヒドロゲル。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【
図1】下顎後方エリアでの組織拡張器の使用を示しているが、これは、前方エリアおよび上顎歯槽エリアで使用されることもできる。
【
図3】TB05−DAについて、HNMR特徴づけ結果を示しており、示されたピーク指定は、トリブロック合成およびジアクリル化の成功を確認するものである。