特許第6553113号(P6553113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553113照明用途のためのエレクトロルミネッセンスデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553113
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】照明用途のためのエレクトロルミネッセンスデバイス
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20190722BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190722BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   H05B33/12 C
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-74266(P2017-74266)
(22)【出願日】2017年4月4日
(62)【分割の表示】特願2014-220075(P2014-220075)の分割
【原出願日】2010年11月9日
(65)【公開番号】特開2017-120795(P2017-120795A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2017年5月2日
(31)【優先権主張番号】12/913,443
(32)【優先日】2010年10月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/296,680
(32)【優先日】2010年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】クワン・オク・チョン
(72)【発明者】
【氏名】マイク・インバセカラン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー・ジェイ・ブラウン
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/113106(WO,A1)
【文献】 特開2008−159367(JP,A)
【文献】 特開2009−021343(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/119420(WO,A1)
【文献】 特開2004−079535(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/150694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H05B 33/12
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a.第一の電極を準備する工程;
b.以下の、
一の有機層の有機ホスト物質;
前記第一の有機層の第一の有機発光物質;及び
前記第一の有機層の第二の有機発光物質、
を含む第一の溶液を準備する工程;
c.前記第一の溶液を用いて、溶液加工法によって前記第一の電極の上に第一の有機層を堆積させる工程
(ここで、前記第一の有機層が、
i. 前記第一の有機層の有機ホスト物質;
ii. 前記第一の有機層の第一の有機発光物質;
iii. 前記第一の有機層の第二の有機発光物質、
を含み、前記第一及び第二の有機発光物質は前記有機ホスト物質中に共堆積され;
前記第一の有機層の前記第一の有機発光物質が、0.01〜5質量%の濃度で前記第一の有機層中に存在し;
前記第一の有機層に含まれる第一の有機発光物質の量の目標値からの、前記第一の有機層の第一の有機発光物質の量の変動が、5%未満である);
d.前記第一の有機層と直接接触させ且つその上に第二の有機層を堆積させる工程であって、さらに前記第二の有機層が、前記第二の有機層の有機発光物質を含む工程;
e.前記第二の有機層の上に第二の電極を堆積させる工程、
を含む、有機発光デバイスの製造方法であって、
a.前記第一の有機層の前記第一の有機発光物質が590〜700nmの可視スペクトル中にピーク発光波長を有し、
b.前記第一の有機層の前記第二の有機発光物質が、その可視スペクトル中、500〜590nmにピーク発光波長を有し、かつ
c.前記第二の有機層の前記有機発光物質が400〜500nmの可視スペクトル中にピーク発光波長を有しており、
さらに、
前記第二の有機層が、第二の有機層の有機ホスト及び有機発光物質を含み、且つ、前記第二の有機層が蒸着によって堆積され、前記第二の有機層の有機ホスト及び前記第二の有機層の有機発光物質が共堆積される、製造方法。
【請求項2】
前記第一の有機層の前記第二の有機発光物質が、前記第一の有機発光物質の濃度の1.1〜500倍の濃度で前記第一の有機層中に存在し、且つ40質量%以下の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一の有機層の前記第一の有機発光物質が0.2〜4質量%の濃度で前記第一の有機層中に存在し;
前記第一の有機層の前記第二の有機発光物質が、前記第一の有機発光物質の濃度の2〜200倍の濃度で前記第一の有機層中に存在する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の有機層の第一の有機発光物質、前記第一の有機層の第二の有機発光物質、及び前記第二の有機層の有機発光物質が全て小分子物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の有機層を堆積させる前に、以下の工程:
a.溶液加工によって、前記第一の電極の上に、第三の有機層の有機物質を含む第三の有機層を堆積させる工程;
b.溶液加工によって、前記第三の有機層の上に、第四の有機層の有機物質を含む第四の有機層を堆積させる工程、
をさらに含み、
前記第四の有機層を堆積させるときに前記第三の有機層が溶解せず、且つ、前記第一の有機層を堆積させるときに前記第四の有機層が溶解しない、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有機発光デバイスが、0.15〜0.65の範囲のx座標及び0.1〜0.7の範囲のy座標のCIE座標を有する光を発するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機発光デバイスが、0.25〜0.5の範囲のx座標及び0.2〜0.5の範囲のy座標のCIE座標を有する光を発するものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の有機層が、前記第一の有機層の第三の有機発光物質をさらに含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第一の有機層に含まれる第一の有機発光物質の量の目標値からの、第一の有機層の第一の有機発光物質の量の変動が、1%未満である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年1月20日に出願した米国仮出願番号No.61/296,680号に対する優先権を主張し、その出願の開示はその全体を参照により本明細書に明確に援用する。
【0002】
特許請求の範囲に記載した発明は、共同の大学・企業研究契約に関わる1つ以上の以下の団体:ミシガン大学評議員会、プリンストン大学、サザン・カリフォルニア大学、及びユニバーサル・ディスプレイ・コーポレーションにより、1つ以上の団体によって、1つ以上の団体のために、及び/又は1つ以上の団体と関係して行われた。上記契約は、特許請求の範囲に記載された発明がなされた日及びそれ以前に発効しており、特許請求の範囲に記載された発明は、前記契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0003】
本発明は、有機発光デバイス、より特に、溶液から堆積された発光層を含む有機発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
有機発光デバイス(OLED)は、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの物質と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0005】
OLEDデバイスの色はCIE座標を用いて測定することができ、これは当分野で周知である。別段の規定がない限り、本明細書で用いられるCIE座標は、1931CIE座標をいう。
【0006】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができるポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又は燐光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0007】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0008】
本明細書で用いるように、「溶液加工可能(solution processible)」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。「溶液加工された(solution processed)」層とは、液体媒体を用いて堆積された層をいう。溶液堆積手法の例には、スピンコーティング、ディップコーティング、スロット・ダイ・コーティング、ロール・トゥー・ロール・コーティング、及びインクジェット印刷が含まれる。
【0009】
OLEDについてのさらなる詳細及び上述した定義は、米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、その全体を参照により本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998
【非特許文献2】Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
[本発明のまとめ]
有機発光デバイスの作製方法を提供する。第一の電極を準備し、その上にデバイスの残りの部分を作製する。第一の有機層を、溶液加工によってその第一の電極の上に堆積させる。第一の有機層は以下のものを含む:
i. 第一の有機層の有機ホスト物質;
ii. その第一の有機層の第一の有機発光物質;
iii. その第一の有機層の第二の有機発光物質。
第二の有機層を、その第一の有機層と直接接触させて且つその上に堆積させる。第二の有機層は、第二の有機層の有機発光物質を含む。次に、第二の電極をその第二の有機層の上に堆積させる。このデバイスは、その他の層を含んでいてもよい。
【0013】
好ましくは、第一の有機層の第一の有機発光物質は590〜700nmの可視スペクトル中にピーク発光波長を有し、第一の有機層の第二の有機発光物質は500〜590nmの可視スペクトル中にピーク発光波長を有し、且つ、第二の有機層の有機発光物質は400〜500nmの可視スペクトル中にピーク発光波長を有する。
【0014】
好ましくは、第一の有機層の第一の有機発光物質は、第一の有機層中に0.01〜5質量%の濃度で存在し、且つ第一の有機層の第二の有機発光物質は、第一の有機層中に、第一の有機発光物質の濃度の1.1〜500倍の濃度で存在する。加えて、第一の有機層の第二の有機発光物質は、40質量%以下の量で存在する。質量%割合は、作製後の有機層の質量%として与えられ、堆積される様々な物質の溶液中の相対的質量パーセント割合を用いることによって一般に決定することができ、なぜなら溶媒は蒸発するからである。
【0015】
より好ましくは、第一の有機層の第一の有機発光物質は、第一の有機層中に、0.2〜4質量%の濃度で存在し、且つ第一の有機層の第二の有機発光物質は、第一の有機層中に、第一の有機発光物質の濃度の2〜200倍の濃度で存在する。加えて、第一の有機層の第二の有機発光物質は、40質量%以下の量で存在する。
【0016】
好ましくは、第一の有機層の第一の有機発光物質、第一の有機層の第二の有機発光物質、及び第二の有機層の有機発光物質は全て小分子物質である。
【0017】
好ましくは、第二の有機層は、第二の有機層の有機発光物質と有機ホストとを含む。好ましくは、第二の有機層は蒸着によって堆積され、第二の有機層の有機ホストと第二の有機層の有機発光物質とは共蒸着される。蒸着には、気相熱蒸発(vapor thermal evaporation, VTE)、有機気相堆積(organic vapor phase deposition, OVPD)、及び有機気相ジェット印刷(organic vapor jet printing, OVJP)が含まれる。
【0018】
好ましくは、本方法は、第一の有機層を堆積させる前に、以下の工程:
溶液加工によって、第一の電極の上に、第三の有機層の有機物質を含む第三の有機層を堆積させる工程;及び
溶液加工によって、第三の有機層の上に、第四の有機層の有機物質を含む第四の有機層を堆積させる工程、
をも含む。
【0019】
好ましくは、上記有機発光デバイスは、0.15〜0.65の範囲のx座標及び0.1〜0.7の範囲のy座標のCIE座標を有する光を発する。より好ましくは、この有機発光デバイスは、0.25〜0.5の範囲のx座標及び0.2〜0.5の範囲のy座標のCIE座標を有する光を発する。
【0020】
上記層は、特定したもの以外の材料を含んでいてもよい。例えば、第一の有機層は、第一の有機層の第三の有機発光物質をさらに含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は有機発光デバイスを示す。
図2図2は、別個の電子輸送層をもたない倒置型有機発光デバイスを示す。
図3図3は、共ドープされた発光物質を含む溶液堆積された発光層を有する有機発光デバイスを示す。
図4図4は、共ドープされた発光物質を含む溶液堆積された発光層を有する有機発光デバイスを、図3よりもさらに詳細に示す。
図5図5は、共ドープされた発光物質を含む蒸着された発光層を含む有機発光デバイスを示す。
図6図6は、溶液堆積による共ドープされた発光層を有する白色デバイスについてのCIE座標を図示する1931CIE図表を示す。
図7図7は、図6のCIE座標を生成した白色デバイスについての発光スペクトルを示す。
図8図8は、蒸着法を用いて作製されたデバイスのCIE図表における分散を図示した1931CIE図表を示す。
図9図9は、図8の1931CIE図表の拡大部分を示す。
図10図10は、蒸着法を用いて作製したデバイスについてのスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[詳細な説明]
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され且つそれらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、有機層(1又は複数)にアノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子はそれぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。電子と正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在化された電子−正孔対である「励起子」が形成される。励起子が発光機構によって緩和するときに光が発せられる。いくつかの場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在化されうる。非放射機構、例えば、熱緩和も起こりうるが、通常は好ましくないと考えられる。
【0023】
初期のOLEDは、一重項状態から光を発する(「蛍光」)発光性分子を用いており、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(この全体を参照により援用する)に記載されているとおりである。蛍光発光は、一般に、10ナノ秒よりも短いタイムフレームで起こる。
【0024】
より最近、三重項状態から光を発する(「燐光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999) (“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。燐光は、米国特許第7,279,704号明細書の第5〜6欄に、より詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0025】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含み得る。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0026】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材−アノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F−TCNQでドープしたm−MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報に、より詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0027】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0028】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省くことができる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、または、より一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0029】
具体的には説明していない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号明細書(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号明細書(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0030】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号明細書および米国特許第6,087,196号明細書(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号明細書(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号明細書(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての蒸着、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号明細書および米国特許第6,468,819号明細書(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0031】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0032】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0033】
有機発光デバイスの作製方法を提供する。第一の電極を準備し、その上にデバイスの残りの部分を作製する。第一の有機層を溶液加工によってその第一の電極の上に堆積させる。その第一の有機層は、
i. 第一の有機層の有機ホスト物質;
ii. その第一の有機層の第一の有機発光物質;
iii. その第一の有機層の第二の有機発光物質、
を含む。
第二の有機層をその第一の有機層と直接接触させ且つその上に堆積させる。その第二の有機層は、その第二の有機層の有機発光物質を含む。次に第二の電極をその第二の有機層の上に堆積させる。このデバイスはその他の層を含んでいてもよい。
【0034】
図3は、記載した方法を用いて作製したデバイス例300を示す。このデバイスは基板310の上に作製されている。このデバイスは、第一の電極320、第一の電極320の上に配置された発光層330、及びその発光層330の上に配置された第二の電極340を含む。発光層330は、第一の有機層332及び第二の有機層334を含む。第一の電極320は好ましくはアノードであり、第二の電極340は好ましくはカソードであるが、その他の構成も用いることができる。
【0035】
第一の電極320は、任意の好適な方法によって準備でき、それにはインジウム錫オキシド(ITO)又はその他の電極物質でプレコートされた市販されている基板を購入することも含まれる。第一の有機層332は、第一の電極320の上に溶液堆積によって堆積される。第一の有機層332を堆積させるために用いられる溶液は、溶媒、第一の有機層の有機ホスト物質、第一の有機層の第一の有機発光物質、及び第一の有機層の第二の有機発光物質を含む。その他の物質を含んでいてもよい。第二の有機層334は第一の有機層332と直接接触して且つその上に堆積される。第二の有機層334は、第二の有機層の有機発光物質を含む。第二の電極340が、任意の好適な手法によって第二の有機層334の上に次に堆積される。
【0036】
図示したデバイス300は、任意選択による層を含んでもよい。第三の有機層350及び第四の有機層360は、発光層330及び第一の電極320の間に配置されている。第一の電極320がアノードである場合には、第三の有機層350は正孔注入層であってよく、第四の有機層は正孔輸送層であってよい。第五の有機層370は、発光層330及び第二の電極340の間に配置されている。第二の電極340がカソードである場合には、第四の有機層370は、正孔阻止層及び電子輸送層を含んでいてもよい。第三、第四、及び第五の有機層350、360、及び370は、副層(sublayers)を含んでいてもよく、様々なOLED構造に有用なその他の層を含んでいてもよく、その多くは図1及び2と関連して説明されている。
【0037】
好ましくは、第一の有機層332の第一の有機発光物質は590〜700nmの可視スペクトル中にピーク発光波長を有し、第一の有機層332の第二の有機発光物質は、その可視スペクトル中、500〜590nmにピーク発光波長を有し、且つ第二の有機層334の有機発光物質は400〜500nmの可視スペクトル中にピーク発光波長を有する。これらのピーク波長は、おおよそ、赤、緑、及び青の発光体に対応し、白色光を発するデバイスを得るために有用であり、白色光は、例えば、一般的な照明目的に有用である。
【0038】
好ましくは、第一の有機層332の第一の有機発光物質は、0.01〜5質量%の濃度で第一の有機層332中に存在し、且つ、第一の有機層332の第二の有機発光物質は、その第一の有機発光物質の濃度の1.1〜500倍の濃度で第一の有機層中に存在する。加えて、第一の有機層332の第二の有機発光物質は、40質量%以下の量で存在する。パーセント割合は、作製後の有機層の質量パーセントとして示し、これは一般に、堆積される様々な物質の溶液中の相対的質量パーセント割合を用いて決定することができ、なぜなら溶媒は蒸発するからである。より好ましくは、第一の有機層332の第一の有機発光物質は0.2〜4質量%の濃度で第一の有機層332中に存在し、且つ、第一の有機層332の第二の有機発光物質は、第一の有機発光物質の濃度の2〜200倍の濃度で第一の有機層332中に存在する。さらに、第一の有機層332の第二の有機発光物質は、好ましくは、40質量%以下の量で存在する。
【0039】
好ましくは、第一の有機層332の第一の有機発光物質、第一の有機層332の第二の有機発光物質、及び第二の有機層334の有機発光物質は、全て、小分子物質である。多くの小分子物質は溶液堆積のために適しており、あるいは、嵩高い置換基の付加を含めた公知の手法を用いて、小分子物質を溶液堆積に適したものにするために容易に修飾することができる。
【0040】
好ましくは、第二の有機層334は、第二の有機層334の有機ホスト及び有機発光物質を含む。好ましくは、第二の有機層334は蒸着によって堆積され、第二の有機層334の有機ホスト及び第二の有機層334の有機発光物質は共堆積(co-deposit)される。蒸着には、気相熱蒸発(vapor thermal evaporation, VTE)、有機気相蒸着(organic vapor phase deposition, OVPD)、及び有機気相ジェット印刷(organic vapor jet printing, OVJP)が含まれる。蒸着が好ましく、なぜなら、下の層(例えば、第一の有機層332)を台無しにする処理がしばしば工程に含まれ、それが発光物質に対して有害になりうるからである。しかし、一つの発光層を別のものの上に溶液堆積させるための手法が存在する場合は、それらの手法を用いて、第一の有機層332の上に第二の有機層334を堆積させてもよい。
【0041】
第三及び第四の有機層350及び360はそれが存在する場合には、溶液堆積法によって堆積されることが好ましい。これらの有機層は発光物質を含まないので、次の層を堆積させるために用いられる溶媒にそれらの層を不溶性にする物質及び加工法の選択は容易にできる。一つのそのような方法の選択肢は、物質を焼成して架橋し、それに不溶性を付与することである。
【0042】
この有機発光デバイスは0.15〜0.65の範囲のx座標及び0.1〜0.7の範囲のy座標のCIE座標を有する光を発することが好ましい。この有機発光デバイスは、0.25〜0.5の範囲のx座標及び0.2〜0.5の範囲のy座標のCIE座標を有する光を発することがさらに好ましい。これらのCIE座標は、そのデバイスの発光物質について上記の好ましいピーク波長を選択することによって容易に得ることができる。
【0043】
本発明者が特定し且つ解決した一つの課題は、第一の有機層に関連する。上記の好ましいパーセント割合が、白色光を発光するデバイスを作製するために有用である。しかし、第一の有機層332の第一及び第二の発光物質に対して上記の好ましい波長及び量を用いることは、第一の有機層332が少量の赤色ドーパントと多量の緑色ドーパントを含むことを意味する。デバイス全体からの白色発光を達成するためには、赤色ドーパントの量は、一般に、絶対的に且つ緑色ドーパントの量に対して相対的に少なくなる。これは、赤色ドーパントが緑色ドーパントとともに共ドープ(co-doped)される場合、赤色ドーパントのより低いエネルギーのため、励起子は好ましくは赤色ドーパントへと動き、あるいは緑色ドーパントから赤色ドーパントに移動しうるからである。赤色ドーパントからのこの優先的な発光のため、赤色ドーパント及び緑色ドーパントが別個の層にある場合よりも、顕著により少ない量の赤色ドーパント及びより多量の緑色ドーパントが必要とされる。加えて、緑色ドーパントに対する赤色ドーパントからの発光量は、それらのドーパントの濃度のわずかな変化に非常に敏感であり、これも赤色ドーパントからの優先的発光によるものである。
【0044】
蒸着法、例えば、VTEによって堆積させられるドーパントの量を制御することには、一般に、温度、開口部の大きさ(aperture size)、及び物質の相対的流量が関与する。一つの運転から別の運転で堆積されるドーパントの量の変動は、典型的には約5%である。したがって、1質量%の赤色ドーパントを有する層を堆積させることが望まれる場合、赤色ドーパントの実際の量は約0.95質量%〜1.05質量%となるだろう。デバイスが共ドープされた赤色及び緑色ドーパントを有する層を含む場合(緑色ドーパントも5%の変動を有することが予測される)、この変動はデバイスのCIE座標を有意に変えるのに充分大きい。
【0045】
しかし、溶液加工法に関してドーパント量を制御することには、注意深く制御した量で、様々な物質を秤量し且つそれらを溶媒に添加することが一般には含まれる。本発明者の研究室においては、0.001gの赤色ドーパントという少ない量を、(プラスマイナス)0.00001gの正確さをもつミクロ天秤を使用して、溶液に用いるために測定することができる。この場合、変動は1%である。この変動の低減は、最終的に得られるデバイスのCIE座標の再現性を顕著に向上させることが予測される。
【0046】
赤色及び緑色ドーパントのみを含む層のために特に好ましい濃度は、赤色ドーパントについては約1質量%、及び緑色ドーパントについては約12質量%である。ドーパントのその他の組み合わせ、及びその他の濃度を用いることもできる。溶液加工された発光層は、3つ以上の発光物質を含むこともできる。白色発光デバイスのためのこの有用な例は、72質量%のホスト、20質量%の緑色発光物質、5質量%の黄色発光物質、及び3質量%の赤色発光物質を含む層である。別の例は、68.9質量%のホスト、30質量%の緑色発光物質、1質量%の赤色発光物質1、及び0.1質量%の赤色発光物質2であり、ここで赤色発光物質1及び赤色発光物質2は異なる赤色発光物質である。
【0047】
その他の種類のドーパントを用いることもでき、具体的に記載したものに加えてドーパントを用いてもよい。例えば、第一の有機層は、第一の有機層の第三の有機発光物質をさらに含んでいてもよい。第三の有機ドーパントは、例えば、追加の発光色を加えてデバイスの全体の発光を微調整するため、導電性を調節するため、又はその他の用途のために有用でありうる。
【0048】
発光「ドーパント」には、燐光発光有機物質あるいは蛍光有機発光物質が含まれうる。
【0049】
好ましいデバイス構造が図4に図示されている。デバイス400は、デバイス300の好ましい具体的な構造である。デバイス400は基板410の上に作製され、順に、アノード420、溶液加工された有機正孔注入層452、溶液加工された有機正孔輸送層454、溶液加工された有機発光層432、VTEで堆積された有機発光層434、VTEで堆積された有機阻止層462、VTEで堆積された有機電子輸送層464、及びカソード440を含む。溶液加工された有機発光層432はホスト並びに赤色及び緑色発光ドーパントを含み、VTEで堆積された有機発光層434はホスト及び青色発光ドーパントを含む。
【0050】
図5は、複数の発光ドーパントを有する溶液堆積された層を含まない比較例を示す。デバイス500は基板510の上に作製され、順に、アノード520、VTEで堆積された有機正孔注入層552、VTEで堆積された有機正孔輸送層554、VTEで堆積された有機発光層532、VTEで堆積された有機発光層534、VTEで堆積された有機阻止層562、VTEで堆積された有機電子輸送層464、及びカソード440を含む。VTEで堆積された有機発光層532は、ホスト並びに赤色及び緑色発光ドーパントを含み、VTEで堆積された有機発光層534はホスト及び青色発光ドーパントを含む。
【0051】
図6はCIE図表を示す。星印は、白色発光に望ましい、標的とするCIE座標に位置している。その星印がその上にのっている曲線は、周知の黒体輻射曲線であり、これはその上に降り注ぐ全ての電磁波を吸収する物体(黒体)からの熱輻射の色を示している。図7は、例1の赤、緑、及び青色発光物質の発光スペクトルを用いて計算した、目標とするスペクトルを示している。
【0052】
[物質]
以下の物質を例で用いた。
【化1】
【化2】
【0053】
LG101及びLG201は、韓国ソウルのLG化学社から購入して入手でき、NS60は日本国東京の新日鉄化学社から購入して入手できる。
【実施例】
【0054】
[例1]全てVTEの白色デバイス(比較例)
【0055】
比較例として、デバイス全体を作製するために、標準的な真空熱蒸着(VTE)法を用いて白色OLEDを作製した。これらのデバイスは、図5に示した構造を有していた。その層の物質及び厚さは以下のとおりだった。
ITO(80nm)/LG101(10nm)/NPD(45nm)、NS−60:緑色ドーパント:赤色ドーパント−1(69:30:1;20nm)/ホスト−2:青色ドーパント−1(80:20;7.5nm)/ホスト−2(5nm)/LG201(45nm)/LiF/Al。
7つのVTE白色デバイスを別バッチで作製した。これらのデバイスの発光を測定し、そのデバイスのCIE座標を図8及び9にプロットした。7つのデバイス全ては、構造、組成、及び厚さが同じになるように注意深く作製した。しかし、その色は、異なるバッチによって全く異なる。7バッチの平均のCIE座標は(0.424±0.007,0.413±0.014)である。
【0056】
異なるデバイスの間の色の違いは、マックアダム楕円(MacAdam Ellipses)によって記述することができ、これは色を識別する人間の能力に周知の指標である。マックアダム楕円は、CIE図表の上のある領域であって、その中では特定数の人が複数色の間を区別できない領域である。標的となるCIE座標から1ステップ離れた距離では、68%の人が色の違いを知覚できる。68%は釣鐘型曲線上で1標準偏差内に入るパーセント割合である。2ステップの距離では、95%の人が色の違いを知覚でき、ここで95%とは釣鐘型曲線上で2標準偏差内に入るパーセント割合である。照明産業は通常、照明に用いられる光の色が3又は4ステップのマックアダム楕円内に再現可能であることを望んでいる。色の再現性が低すぎる場合は、2つの照明源を見ている観察者は顕著な違いを知覚するだろう。例えば、天井照明の異なるパネルが異なる色を有するように見えるかもしれず、あるいは、あるパネル内で有意に知覚可能な変動があるかもしれず、これは望ましくない。
【0057】
図8は、図5に示された構造を有する7つのデバイスのCIE座標を示している。図9は、図8と同じデータを示しているが、図表のうちの関連する領域が拡大されている。図10は、その7つのデバイスについて測定されたスペクトルを示している。異なるデバイスのCIE座標に顕著な広がりがあり、それらは全てが7つのデバイスのCIE座標の平均値(0.424,0.413)付近を中心とする3ステップのマックアダム楕円のかなり外側にあることがわかる。7ステップのマックアダム楕円はかろうじて7つのデバイスの色を取り囲むことができるが、これは工業基準の許容範囲規格の外である。このことは、色の再現性を達成するために注意が払われたにもかかわらず、色の再現性はVTEデバイスについてはあてにならないことを意味する。本発明者は、色のこの変動を、赤色ドーパントのパーセント割合に対する、共ドープされた緑及び赤色発光層の敏感さ、及びVTE堆積法に伴って生じるこのパーセント割合の比較的高い変動の結果であると考えている。
【0058】
[例2.ハイブリッド白色デバイス]
【0059】
図4に示された構造を有するデバイスを作製した。正孔注入物質HIL−1(ホスト物質として)を導電性ドーパント−1とともにシクロヘキサノンに溶かして溶液にした。この溶液中の導電性ドーパント−1の量は、ホスト物質HIL−1に対して10質量%だった。HIL−1及び導電性ドーパント−1の合計濃度は、シクロヘキサノン中に0.5質量%だった。正孔注入層(HIL)を形成するために、この溶液を4000rpmで60秒間、パターン形成したインジウム錫オキシド(ITO)電極の上にスピンコーティングした。得られた膜を30分間、250℃でベーク(bake)した。この膜はベーキング(baking)後、不溶性になった。
【0060】
このHILの上に、正孔輸送層(HTL)及び次に発光層(EML)もスピンコーティングによって形成させた。HTLはトルエン中の正孔輸送物質HTL−1の1質量%溶液を、4000rpmで60秒間スピンコーティングすることによって作成した。HTL膜を200℃で30分間ベークした。ベーキングの後、HTLは不溶性の膜になった。
【0061】
赤色及び緑色EMLは、ホスト物質(ホスト−1)と、発光物質としての赤及び緑色燐光性ドーパント(赤色ドーパント−1及び緑色ドーパント−1)から構成した。EMLを形成させるため、87:12:1のホスト−1:緑色ドーパント−1:赤色ドーパント−1の割合で、(合計で0.75質量%の)ホスト−1、緑色ドーパント−1、及び赤色ドーパントを含むトルエン溶液を、上記の不溶性のHTLの上に、1000rpmで60秒間スピンコーティングし、次に100℃で60分間ベークした。
【0062】
青色EMLを、熱蒸着を用いて堆積させた。10nmの青色ホスト(ホスト−2)及び青色ドーパント−1を、90:10の割合で共蒸着させた。青色EMLの上に、5nmの添加物なしのホスト−2を蒸着させて阻止層(BL)を形成させた。電子輸送層(Alqを含む)、電子注入層(LiFを含む)、及びアルミニウム電極を順に真空蒸着した。
【0063】
完成されたときには、例2のデバイスは以下の構造をもっていた。
ITO(120nm)/HIL−1:導電性ドーパント−1(90:10;5nm)/HTL−1(10nm)/ホスト−1:緑色ドーパント−1:赤色ドーパント−1(87:12:1;25nm)/ホスト−2:青色ドーパント−1(90:10;10nm)/ホスト−2(5nm)/Alq(40nm)/LiF/Al。
【0064】
例2のハイブリッド白色デバイスのCIE座標及びスペクトルは、図6及び7にそれぞれ示している。デバイス性能は表1に記載している。1000cd/mにおいて、電力効率は11lm/Wであり演色評価数(CRI)78をもち、その白色に対応する相関色温度(CCT)は2800°Kだった。
【0065】
【表1】
【0066】
本明細書に記載した様々な態様は例示のみの目的であり、本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解される。例えば、本明細書に記載した物質及び構造の多くは、本発明の精神から離れることなく、別の物質と構造で置換されることができる。請求項に係る本発明は、したがって、当業者に明らかであるように、本明細書に記載した特定の例及び好ましい態様からの変形を含むことができる。本発明が何故機能するかについての様々な理論は限定することを意図していないことが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10