【実施例】
【0012】
本発明によるアームレスト格納型車両シート100の外観とその使用形態を
図1の作動説明図に示す。 アームレスト200は回動起立させてシートバックの側端部に設けた埋込み型の格納ポケットに納めることができるため、不使用時には邪魔にならず隣接するシート間のクリアランスも拡大してウォークスルー等も容易になる。
【0013】
アームレストの使用時にはアームレスト基部の回動軸線上の前端部に埋設されたプルハンドル210を二段階のスプリング力に抗して手前へ引くことによって、第一段階ではプルハンドルのみ第二段階ではプルハンドルと一体となってアームレストが格納ポケットから引き出される。 その状態でアームレストを下方回動させて所望の上下角度で前記プルハンドルを放すと、その奥に組み込まれたアームレスト支持回動機構内のアームレスト引込み格納用スプリングによる前記第二段階の引込み力によってアームレストの基部周辺をシートバックの側端面に圧接すると共に、下方回動拘束ラチェット機構のスプリングによる前記第一段階の引込み力によってラチェット機構がスライドして作動しアームレストの下方回動が拘束され上下角度が設定される。 この時、格納ポケット内に組み込まれた中蓋が格納ポケット底部との間に設けられたバネによって浮き上がり格納ポケットの入口開口部が閉止される。(
図1では中蓋は図示省略)
【0014】
アームレストの使用中にその上下角度を再調整する場合には、上方へはそのまま回動でき、下方へは前記のプルハンドルを再度引いて下方回動拘束ラチェット機構を解除しながら下方回動して再設定をする。 アームレストを使用しない場合は、そのまま上方へ回動起立させることにより前記のアームレスト支持回動機構内のアームレスト引込み格納用スプリングの伸展力によって格納ポケット内に引き込まれる。
【0015】
シートバック側端部へのアームレスト支持回動機構及びアームレスト等の装着形態の概要について
図2の取付説明図に示す。 シートバック側端部110にはアームレスト200を回動起立して格納する埋込み型のアームレスト格納ポケット110aを形成する。 この格納ポケットの底部に相当するシートバック側端フレーム部120に設けたアームレスト支持回動機構装着穴120a及びその奥の内腔にアームレスト支持回動機構300を挿入してそのフランジ部をアームレスト支持回動機構取付けボルト311で固定する。
【0016】
アームレスト支持回動機構300の前端面に露出したアームレスト支持回動スライドシリンダ320の前端面にその回動軸線を合わせてアームレスト200の基部をアームレスト取付けボルト201で固定しアームレストを装着する。 さらにアームレスト支持回動スライドシリンダ320の前端壁中央円孔部320bを嵌合貫通してアームレストの基部中心の開孔部を貫通した下方回動拘束ラチェットスリーブ前端側シャフト部350bの先端にアームレスト引出し兼下方回動拘束解除プルハンドル210を装着する。
【0017】
アームレストの使用時に格納ポケットの入口開口部を閉止するアームレスト格納ポケット浮動中蓋220を格納ポケット内に組み込み、格納ポケットの奥底部に設けた浮動中蓋押出しガイド板バネ230のスリット部と浮動中蓋側に設けたスライドガイドピン221との嵌合摺動によって浮動中蓋を格納ポケット入口の開口面まで押し出して閉止する。 アームレストの格納時はそれに押されて浮動中蓋は格納ポケットの奥へ押し込まれる。 バネ部の形態はこの実施例に限るものではなく、中蓋を省略した形態も可能である。 以上のようにアームレストを装着し格納した状態で前記のプルハンドルを含めてその外端面がシートバックの側端面とほぼ一致するように各部品を構成する。
【0018】
本発明の中核をなすアームレスト支持回動機構の構成を
図3の分解斜視図に示す。 アームレスト支持回動機構は、同芯状に4重に嵌合挿入される4つのシリンダないしシャフト部から構成される。 この内、その前端面にアームレストを装着固定するアームレスト支持回動スライドシリンダ320以外は回動できず、最外部のケーシングシリンダ310に対して回動拘束トルクシャフト370はそれを立設したケーシングシリンダ奥底盤380を介して固定され、下方回動拘束ラチェットスリーブ350はその内腔に回動拘束トルクシャフトとの間に設けた回動拘束手段を介して後者が嵌合挿入されるため後者に対してスライドはできるが回動はできない。
この回動拘束手段としては本実施例のキー溝とキーの嵌合による方式に限らず、スプライン結合方式や互いに外接内接する多角形断面を形成して嵌合する方式なども可能である。
【0019】
ケーシングシリンダ310の内周面とアームレスト支持回動スライドシリンダ320の本体部外周面、並びにアームレスト支持回動スライドシリンダの内周面と下方回動拘束ラチェットスリーブ350の本体部外周面の間隙には、それぞれコイル状のアームレスト引込み格納用スプリング340とこれより伸展力の小さな下方回動拘束ラチェットスプリング360が挿入され、各々のスプリング伸展力によってケーシングシリンダに対してアームレスト支持回動スライドシリンダをさらにはこのアームレスト支持回動スライドシリンダに対して下方回動拘束ラチェットスリーブをそれぞれの奥端側へスライドさせて押し込むように各部品が構成され組み込まれる。
【0020】
アームレスト支持回動スライドシリンダ320と下方回動拘束ラチェットスリーブ350はそれぞれ共通中心軸方向にスライドできる。 各々のスライド支持位置は、アームレスト支持回動スライドシリンダではその奥端部のフランジ外周面とケーシングシリンダ310の内周面、並びにケーシングシリンダ前端壁中央円孔部310bとこれに嵌合貫通するアームレスト支持回動スライドシリンダの前端側外周面の2か所であり、下方回動拘束ラチェットスリーブではその奥端部のフランジ外周面とアームレスト支持回動スライドシリンダの内周面、並びにアームレスト支持回動スライドシリンダ前端壁中央円孔部320bとこれに嵌合貫通する下方回動拘束ラチェットスリーブ前端側シャフト部350bの2か所である。 これらの支持位置でアームレスト支持回動スライドシリンダと下方回動拘束ラチェットスリーブの共通中心軸方向への各々の摺動と中心軸回りの回動がガイドされる。
【0021】
ケーシングシリンダ310に対してアームレストの下方回動を拘束する下方回動拘束ラチェットスリーブ350奥端部のフランジ部外端面には鋸歯状断面菊花状ラチェット歯列円環盤(B)350aが形成され、アームレスト支持回動スライドシリンダ320奥端部のフランジ部外端面に嵌合閉止され固定されるアームレスト支持回動スライドシリンダ奥底盤330の内端面に形成された鋸歯状断面菊花状ラチェット歯列円環盤(A) 330aと対向して噛合し、下方回動拘束ラチェットスプリング360によって押圧される。 これによってアームレストが下方回動する方向へのアームレスト支持回動スライドシリンダの回動を拘束する下方回動拘束ラチェット機構が構成される。
【0022】
下方回動拘束ラチェット機構部の概要を
図4の説明図に示す。 鋸歯状断面菊花状ラチェット歯列円環盤(A) 330aと鋸歯状断面菊花状ラチェット歯列円環盤(B)350aは対向して互いに噛合する同一の歯列からなる円環面を有する。 鋸歯状歯列の断面形状は、噛合時に互いに円周方向に略垂直面で接する歯面と斜面で接する歯面とが交互に菊花状かつ円環状に連続する。 略垂直面で接する両歯面を圧接する方向への相対回動は拘束されるが、その逆方向へは互いに斜面で接する歯面が下方回動拘束ラチェットスプリング360に抗して互いにその斜面を滑って鋸歯状断面菊花状ラチェット歯列円環盤(B)側の下方回動拘束ラチェットスリーブ350を押し返すことにより、アームレストが上方回動する方向へのアームレスト支持回動スライドシリンダの回動は可能とした。 アームレスト引出し兼下方回動拘束解除プルハンドルを引いて前記の両ラチェット歯列の噛合を解除した場合は、アームレスト支持回動スライドシリンダ及びアームレストの上下両方向の回動が可能となる。 本実施例の他、一方のラチェット歯列をラチェット爪方式とし、その先端部を対向する歯列の略垂直歯面にバネ力で押え付けて下方回動を拘束する方式のラチェット機構も可能である。 アームレスト支持回動機構の装着位置がシートバック側端部の左右ではラチェット機能の回動拘束方向が逆になるため前記の鋸歯状歯列の断面形状は逆になる。
【0023】
アームレスト支持回動機構の各構成部品の組立て状態と作動形態の詳細を
図5から
図7の断面図で示す。
図5はアームレストの格納状態における断面図を示す。 アームレスト支持回動機構はそのケーシングシリンダ310のフランジ部においてシートバック側端フレーム部120に固定される。 アームレスト200を装着したアームレスト支持回動スライドシリンダ320はアームレスト引込み格納用スプリング340によってケーシングシリンダの奥端側へ押し込まれて底突き状態にある。 この時、アームレストの外側端面はアームレスト格納ポケットの開口端面であるシートバック側端面とほぼ同一平面上に揃った状態になるように構成される。 また、下方回動拘束ラチェットスリーブ350も下方回動拘束ラチェットスプリング360によってアームレスト支持回動スライドシリンダの奥端側へ押し込まれて下方回動拘束ラチェット機構部の噛合部で底突き状態にある。 この時、下方回動拘束ラチェットスリーブ前端側シャフト部350bの先端部に装着されたアームレスト引出し兼下方回動拘束解除プルハンドル210の前端面もアームレストの外側端面とほぼ同一平面上に揃った状態になるように構成される。 ただし、アームレスト引出し兼下方回動拘束解除プルハンドルの形状は本実施例の形態に限るものではない。
【0024】
アームレストを格納ポケットから引出し、使用する上下角度へ下方回動する場合のアームレスト支持回動機構の作動形態を
図6の断面図で示す。 アームレスト引出し兼下方回動拘束解除プルハンドル210を手前に引くと下方回動拘束ラチェットスリーブ350が下方回動拘束ラチェットスプリング360に抗して手前へスライドすることにより下方回動拘束ラチェット機構部の噛合部が分離してアームレスト支持回動スライドシリンダ320の下方回動への拘束が解除される。 その直後に下方回動拘束ラチェットスリーブの本体部とこれより外径の小さな下方回動拘束ラチェットスリーブ前端側シャフト部350bとの段差部の下方回動拘束ラチェットスリーブ本体部側の端面がアームレスト支持回動スライドシリンダ前端壁中央円孔部320b周りの環状内端面に当接して底突き状態となる。 この底突き状態になるまでのスライドストロークは前記下方回動拘束ラチェット機構部の噛合部が分離して下方回動への拘束が解除されるための必要最小限の長さになるように構成される。 また、下方回動拘束ラチェットスプリングの前端面受け部は本実施例のように前記アームレスト支持回動スライドシリンダ前端壁の環状内端面に限らず、該シリンダ内周部に下方回動拘束ラチェットスプリング前端面受け部を別途形成して該ラチェットスプリングをより短縮化することも可能である。 前記下方回動拘束ラチェットスリーブの前端側への底突き後、さらにより大きな力でアームレスト引出し兼下方回動拘束解除プルハンドルを引き続けると前記の底付き部分から伝達される引張り力がアームレスト支持回動スライドシリンダをアームレスト引込み格納用スプリング340に抗して前端側へスライドさせ従動させる結果、アームレスト引出し兼下方回動拘束解除プルハンドルと一体となってアームレスト200がアームレスト格納ポケット110aから引き出される。 これに必要なスライドストロークが得られるようにアームレスト引込み格納用スプリング及びこれを組込むケーシングシリンダ310とアームレスト支持回動スライドシリンダの関係部位の諸元が設定される。 アームレスト引出し兼下方回動拘束解除プルハンドルを引出した状態では、下方回動拘束ラチェット機構部の噛合部が分離して下方回動の拘束が解除されているため、アームレストを所望の上下角度へ下方回動することができる。
【0025】
アームレストを格納ポケットから引出した後、使用する上下角度へ下方回動してアームレスト引出し兼下方回動拘束解除プルハンドル210を放した後のアームレスト使用状態におけるアームレスト支持回動機構の作動形態を
図7の断面図で示す。 下方回動拘束ラチェットスリーブ350が下方回動拘束ラチェットスプリング360によって押し戻され、アームレスト支持回動スライドシリンダ320の奥端側へスライドして下方回動拘束ラチェット機構部が再度噛合することによって底付き状態となる。 この時、アームレスト引出し兼下方回動拘束解除プルハンドルの前端面はアームレスト200の外側端面とほぼ同一平面上に揃った状態に戻る。 アームレスト支持回動スライドシリンダにはアームレスト引込み格納用スプリング340によってケーシングシリンダ310の奥端側へ押し戻される力が働くため、下方回動後のアームレストの基部周辺の内側端面がシートバック側端面に圧接された状態でアームレストは下方回動が拘束され上下角度が設定されて使用状態となる。 この場合、回動軸を挟んでアームレストの長手方向両側の内側端面でシートバック側端面に圧接保持されるようにその基部形状の外径を長手方向ではそれと直交する幅方向より大きくするとより安定する。
【0026】
アームレストの使用中にその上下角度を再調整する場合は、上方へはそのまま回動でき、下方へは
図6のように再度アームレスト引出し兼下方回動拘束解除プルハンドル210を引いて下方回動拘束ラチェット機構部を解除しながら下方回動して設定する。 アームレスト200を格納する場合は、そのまま上方回動起立させることでアームレスト引込み格納用スプリング340によってアームレスト格納ポケット浮動中蓋220も併せて押し込みながらアームレスト格納ポケット110aに引き込まれて格納される。 このように本発明におけるアームレスト支持回動機構によれば、比較的簡単な操作でアームレストのシートバック側端部への格納、引出しと上下角度の設定・調整が可能となる。