(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のリアクトル及び複合リアクトルについて説明する。
【0013】
[1.第1の実施形態]
[1−1.構成]
図1は、第1の実施形態に係る複合リアクトルの全体斜視図である。
図2は、第1の実施形態に係るリアクトルの全体斜視図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の複合リアクトルは、同一の構成の扁平なリアクトル1を複数(ここでは4つ)備え、1つのリアクトル1が他のリアクトル1に隣接して組み合わせられることにより、環状形状を成している。環状の外形は、ここでは、平面視概略八角形状であり、複合リアクトルは全体として扁平である。
【0014】
この複合リアクトルは、環状の中心孔の軸が設置平面に対して垂直になるように、金属製のケースなどの設置対象に設置され、固定される。本実施形態では、複合リアクトルは、不図示の金属製のケースに収容され、後述の固定部221によって当該ケースに固定されるとともに、当該ケース内の隙間に充填材が充填され、固化されることで、複合リアクトルが当該ケースに固定される。充填材には、リアクトル1の放熱性能の確保及びリアクトル1からケースへの振動伝搬の軽減のため、比較的柔らかく熱伝導性の高い樹脂が適している。また、充填材は絶縁性を有することが好ましい。
【0015】
図3は、第1の実施形態に係るリアクトル1の分解斜視図である。
図2及び
図3に示すように、リアクトル1は、全体が扁平であり、コア11及びコイル12を有するリアクトル本体10と、リアクトル本体10を収容する樹脂ケース20と、端子30a、30bと、を備える。
【0016】
なお、本明細書において、図面に示すz軸方向を「上」側、その逆方向を「下」側とする。各部材の構成を説明するのに、「下」は「底」や「裏」とも称する。「上」や「下」とは、リアクトルの各構成の位置関係をいうものであり、リアクトル1が設置対象の実機に搭載された際の位置関係や方向を指すものではない。z軸方向を高さ方向、x、y軸方向を水平方向と称する場合もある。
【0017】
コア11は、環状又は柱状の磁性体である。コア11を構成する磁性体としては、フェライトコア、圧粉磁心、積層鋼板、巻き鉄心などを用いることができる。ここではコア11は、圧粉磁心であり、環状形状を成す。
【0018】
具体的には、コア11は、複数のコア部材11a、11bから成る。コア部材11aはI字形状を有し、コイル12が装着される中脚である。コア部材11aのz軸方向の断面形状は、コイル12の空芯部の外形と略同一の略矩形状を成す。コア部材11bは、概略O字形状を有し、空芯軸を共通にして3つ隣接して設けられる。コア11は、コア部材11aがコア部材11bの中心に挿入され、全体形状がθ形状を成し、金属製のケースなどの複合リアクトルの設置対象面に対して、θ形状のコア11を横に寝かせ、長手方向を水平にして配置される。そのため、コア11は全体として扁平である。
【0019】
コイル12は、導電部材により構成される。本実施形態では、コイル12は、銅箔を、絶縁紙や絶縁フィルムなどの絶縁材を介して巻き回してなる。すなわち、コイル12は、銅箔間に絶縁材が介在してなる。但し、コイル12の線材や巻き方は、本実施形態の構成に限定されず、他の形態であっても良い。
【0020】
コイル12は、巻軸方向の長さが、当該巻軸方向と直交する何れの方向(x軸方向、y軸方向)の長さよりも短く、全体として扁平である。コイル12は、巻軸をz軸方向に沿って配置され、中脚となるコア部材11aに絶縁フィルムなどの絶縁部材を介して装着され、コア部材11bの内部に挿入されている。コイル12の周囲は、絶縁フィルムなどの絶縁部材13が巻かれており、コイル12とコア部材11bとが絶縁されている。
【0021】
コイル12は、その端部12a、12bが上方に引き出されており、端子30a、30bとハンダを含む接続部14を介して電気的に接続される。
【0022】
図4は、樹脂ケースの上面側斜視図である。
図5は、樹脂ケースの底面側斜視図である。
図4及び
図5に示すように、樹脂ケース20は、樹脂から成るケースである。樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等の樹脂を用いることができる。
【0023】
樹脂ケース20は、内部にリアクトル本体10を収容する収容部21と、収容部21より外側に突出した突出部22とを有する。本実施形態では、収容部21は、平面視四角形状であり、突出部22は、平面視概略三角形状である。突出部22は、収容部21の対向する二辺の両側に設けられ、樹脂ケース20は平面視すると概略六角形状を成す。
【0024】
収容部21は、リアクトル本体10の周囲を覆う。また、収容部21には、収容部21の内部空間と連通する開口21a〜21cが設けられている。すなわち、収容部21には、リアクトル本体10を収容する開口21aと、リアクトル本体10が露出する開口21b、21cとが樹脂ケース20の側部と底部に設けられている。
【0025】
具体的には、開口21aは、環状を成す複合リアクトルの外側の側部となる位置に設けられ、リアクトル本体1を出し入れ可能な程度の大きさを有する。開口21bは、開口21aと対向するように、複合リアクトルの内側の側部となる位置に設けられており、開口21aより若干小さく、リアクトル本体1は出し入れ不能な程度の大きさを有する。開口21cは、樹脂ケース20の底部に設けられている。リアクトル本体10は、コイル12の巻軸と直交する長辺を、環状の複合リアクトルの中心に向けて開口21aから収容部21に収容されており、この状態で、開口21b、21cからリアクトル本体10が露出する。
【0026】
突出部22は、リアクトル1を設置対象に固定するとともに、他のリアクトル1と接合する部位である。本実施形態では、突出部22は、単体のリアクトル1につき、収容部21の両側に突出部22a、22bが設けられている。また、突出部22には、他のリアクトル1と接合される箇所である接合部220を有する。ここでは、突出部22a、22bの接合部220は、他のリアクトル1の突出部22b、22aの接合部220と接合される。突出部22aには、固定部221が設けられ、突出部22bには、凹部222が設けられている。
【0027】
固定部221は、リアクトル1を金属製のケースなどの設置対象に固定する。固定部221は、リアクトル1単体につき、ここでは1つ設けられている。固定部221は、筒形状を有する。ここでは、固定部221は、突出部22aから突出した部分が部分円筒形状を有する。部分円筒形状とは、z軸方向と直交する断面が円の一部を構成し、z軸方向に延びる形状である。ここでは、固定部221は、リアクトル本体10又は収容部21の外側に高さ方向に延びて設けられ、平面視概略三角形状の突出部22aから更に平面視半円分外側に出っ張っており、本実施形態で固定部221の突出部22aから突出した部分は、半円筒形状である。固定部221には、ネジ穴221aが設けられており、当該ネジ穴221aにネジ等の固定部材が差し込まれ、ネジ締結等により、リアクトル1が設置対象に固定される。
【0028】
凹部222は、他のリアクトル1の固定部221の外形と同一の部分円筒形状の凹みを有し、他のリアクトル1の固定部221が嵌め込まれる。ここでは、凹部222の凹みは、半円筒形状である。
【0029】
このように固定部221が他のリアクトル1の凹部222に嵌め込まれることで、固定部221及び凹部222の外面は、他のリアクトル1と接合される接合部220の一部を構成する。接合部220は、ここでは、平面視概略三角形状の突出部22a、22bの一辺を含む面である。なお、リアクトル1同士を組み合わせる際、異なるリアクトル1の接合部220同士を接着剤で接合しても良い。
【0030】
接合部220には、リアクトル本体10又は収容部21の外側に突出した突起223と、他のリアクトル1の突起223が嵌め込まれる凹部224とが設けられている。具体的には、突出部22a及び突出部22bの接合部220にそれぞれ一対の突起223、凹部224が設けられている。突出部22aにおいては、突起223が、接合部220の下端に設けられ、凹部224が、この突起223とは反対側の上端に設けられている。突出部22bにおいては、突起223が、接合部220の上端に設けられ、凹部224が、この突起223とは反対側の下端に設けられている。ここでは、突起223及び凹部224は、水平方向(xy平面)に延びている。
【0031】
また、突出部22bには、他のリアクトル1に引っかけるスナップ片225が設けられ、突出部22aには、他のリアクトル1のスナップ片225が引っかけられる凹部226が設けられている。スナップ片225は、根元より先端が厚い板状体であり、凹部222に隣接して外方に延びて設けられており、肉薄部分で弾性を有する。凹部226は、他のリアクトル1のスナップ片225が嵌まる凹みを有し、固定部220の周囲に設けられている。ここでは、スナップ片225及び凹部226は、高さ方向の中央部分に、水平方向と直交するように設けられている。スナップ片225は、他のリアクトル1の凹部226に弾性を利用して嵌まり込む。
【0032】
樹脂ケース20の上面、より具体的には収容部21の上面には、端子30a、30bが設置される端子台227、228が設けられている。端子30a、30bは、階段状に二段に屈折した金属板であり、一端に外部機器と接続されるネジ穴31が設けられている。端子台227、228は、端子30a、30bのネジ穴31を有する平板部を載置する台229と、平板部から続く長板部を把持する把持部230とを有する。把持部230は、断面L字状の一対の突条を有し、突条間に端子30a、30bが嵌め合わされる。端子30a、30bは、把持部230で把持されるように端子台227、228に載置され、端子30a、30bは、ネジ穴31とは反対側の端部がコイル12の端部12a、12bとハンダを含む接続部14を介して電気的に接続される。
【0033】
各部221〜230は、樹脂ケース20を構成する樹脂で樹脂ケース20の樹脂と一続きに形成されている。すなわち、樹脂ケース20及び各部221〜230は射出成形により一体に構成することができる。
【0034】
[1−2.作用・効果]
(1)本実施形態のリアクトル1は、扁平なリアクトルであって、コア11及びコイル12を有するリアクトル本体10と、リアクトル本体10を収容する樹脂ケース20と、を備えるようにした。樹脂ケース20は、内部にリアクトル本体10を収容する収容部21と、収容部21より外側に突出した突出部22と、を有する。そして、突出部22には、突出部22から更に突出して設けられ、リアクトル1を設置対象に固定する固定部221と、他のリアクトル1の固定部221が嵌め込まれる凹部222と、を設けるようにした。
【0035】
これにより、本リアクトル1を複数隣接して配置してなる複合リアクトルを小型化することができる。
【0036】
すなわち、本実施形態のリアクトル1は全体形状が扁平であるため、複合リアクトルを低背化することができる。一方、突出部22a、22bを設け、当該突出部22a、22bにおいて固定部221及び凹部222を設け、設置対象に対するリアクトル1の固定と、他のリアクトル1との結合とでスペースを共用するようにしたので、水平方向における設置面積を縮小することができる。
【0037】
すなわち、従来のリアクトルはリアクトル本体の外側にそれぞれ固定構造を有しており、例えば2つのリアクトルを隣接して配置した場合、各リアクトル間には、2つの固定構造が隣接することから、設置面積が増大していたが、本実施形態では、固定部221と凹部222とで嵌め合わせる構成を採用したことで、省スペース化が可能となるとともに、他のリアクトル1と結合する構造を別に設けることなく、他のリアクトル1との結合を強化できる。
【0038】
また、本実施形態のリアクトル1を複数組み合わせることで複合リアクトルを構成できるので、複合リアクトルを作製するための大型化かつ複雑化した金型を用意する必要がなく、金型構造を簡略化できる結果、製造コストを削減することができる。
【0039】
このように、本リアクトル1によれば、固定部221が、他のリアクトル1の凹部222に嵌め込まれ、リアクトル1同士が隣接配置されてなる複合リアクトルを構成することができ、また、固定部221が、他のリアクトル1の凹部222に嵌め込まれることで、全体形状が環状形状を成す複合リアクトルを得ることができる。
【0040】
(2)突出部22には、突出部22から更に突出した突起223と、他のリアクトル1の突起223が嵌め込まれる凹部224と、を設けるようにした。これにより、リアクトル1同士の結合関係を強化することができる。ここでは、突起223及び凹部224は、水平方向に延びているので、リアクトル1同士が高さ方向にずれるのを防止することができ、高さ方向の結合関係を強化することができる。
【0041】
また、突起223及び凹部224は、他のリアクトル1と接合される接合部220に一対備え、突起223を、接合部220の上端又は下端に設け、凹部224は、接合部220の突起223とは反対側の下端又は上端に設けるようにした。これにより、突起223と凹部224の距離を高さ方向に離すことができるので、高さ方向の結合関係を安定化させることができる。
【0042】
(3)突出部22には、先端が根元より厚く、他のリアクトル1に引っかけるスナップ片225と、他のリアクトル1のスナップ片225が引っかけられる凹部226と、を設けるようにした。これにより、リアクトル同士の結合関係、特に水平方向の結合関係を強化することができる。
【0043】
(4)固定部221は、円筒形状を有し、凹部222は、円筒形状の凹みを有するようにした。ここでは、固定部221及び凹部222は、高さ方向に延びているので、水平方向の結合関係を安定化させることができる。
【0044】
なお、本実施形態のように、リアクトル1単体につき、固定部221は1つしか設けていない場合、十分な固定力を有するものの、固定部221を複数設ける場合と比べて設置対象への固定力は低下する。しかし、固定部221が凹部222に嵌まることにより、他のリアクトル1と結合され、他のリアクトル1においても固定部221により固定力を有するから、リアクトル1単体としては固定部221の1つ分超の固定力を得ることができる。また、突起223、凹部224、スナップ片225、凹部226は、固定部221の1つ分超の固定力を得ることができる構造ということもできる。
【0045】
(5)樹脂ケース20には、収容部21の内部空間と連通する開口21a〜21cを、側部又は底部に設けるようにした。これにより、開口21a〜21c自身によって、リアクトル本体10の熱を外部に逃がすことが可能である。また、開口21a〜21cから充填材を収容部21の内部に入り込ませることができ、コア11やコイル12が充填材を介して金属製のケースと一続きに接続することができる。つまり、充填材によって、リアクトル本体10が発する熱を、金属製のケースまで放熱する経路を形成することができる。このように、開口21a〜21cの少なくとも何れかにより、放熱性を向上させることができる。
【0046】
(6)コイル12の端部12a、12bと電気的に接続される端子30a、30bを備え、樹脂ケース20の上面に、端子30a、30bを配置する端子台227、228を、樹脂ケース20を構成する樹脂で樹脂ケース20の樹脂と一続きに形成するようにした。これにより、コイル12の端部12a、12bから配線を引き出す必要がなくなり、リアクトル1全体を小型化することができる。また、端子台227、228が射出成形により形成可能であるため、端子台を別途設ける場合と比較して、製造工数を削減することができる。
【0047】
[2.他の実施形態]
本発明は、第1の実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、第1の実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。尚、下記の他の実施形態は、第1の実施形態と異なる部分を説明し、第1の実施形態と同じ部分については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
(1)第1の実施形態では、固定部221の突出部22aから突出した部分形状を半円筒形状としたが、角筒形状の一部を突出部22aから突出させた形状としても良い。この場合、凹部222の凹みの形状も固定部221に倣った形状とする。
【0049】
(2)第1の実施形態では、突起223及び凹部224を水平方向に延びるように設けたが、高さ方向に延びるように設けても良い。これにより、リアクトル1が水平方向にずれるのを防止することができる。
【0050】
(3)第1の実施形態では、コア11の形状を略θ形状としたが、環状であれば良く、また、環状のコア11を形成できれば、コア部材11a、11bの形状も特に限定されない。例えば、コア部材11a、11bは、I字形状、C字形状、U字形状、E字形状、J字形状などであっても良い。
【0051】
(4)第1の実施形態では、複合リアクトルを環状形状としたが、これに限定されない。例えば、
図6に示すように、ジグザグ形状にしても良い。限られたスペースに合うように複合リアクトルの形状を合わせることができる。
【0052】
(5)第1の実施形態では、突出部22を収容部21の両側に設けるようにしたが、環状の孔に向けて突出するように突出部22を設けるようにしても良い。この場合、突出部22は、1つの樹脂ケース20につき、1つで済む。例えば、
図7(a)に示すように3つのリアクトル1で複合リアクトルを構成する場合、三角形を3つの三角領域に分け、各領域に突出部22を設け、当該突出部22に固定部221、凹部222、突起223、凹部224を設けるようにしても良い。
図7(b)に示すように4つのリアクトル1で複合リアクトルを構成する場合、四角形を4つの三角領域に分け、各領域に突出部22を設け、当該突出部22に固定部221、凹部222、突起223、凹部224を設けるようにしても良い。リアクトル1がいくつであっても同様である。
【0053】
(6)第1の実施形態の複合リアクトルは次のように捉えることもできる。すなわち、リアクトル1は、第1の実施形態と同様であり、中央の平面視正多角形の各辺に扁平なリアクトル1を配置し、突出部22を、リアクトル本体1の間に設けた複合リアクトルと捉えることもできる。つまり、
図8(a)〜(c)に示すように、環状に配置したリアクトル本体10の間の隙間Sに、突出部22を設け、この突出部22に固定部221及び凹部222を設けるようにしても良い。環状に配置したリアクトル本体10の間に固定部221及び凹部222による固定と結合とを兼ねる構造を設けるようにしたので、全体として小型化することができる。