【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
本発明の第一の態様は、被炊飯物を収容する炊飯鍋と、該炊飯鍋を取り出し可能に収容する鍋収容凹所を有する炊飯器本体と、該鍋収容凹所の底壁部に設けられて前記炊飯鍋を加熱する電気ヒータと、該炊飯器本体内に設けられた送風ファンと、該電気ヒータと該送風ファンを制御する制御部と、を備えた電気炊飯器において、前記炊飯鍋が、前記被炊飯物を収容する陶器製の鍋本体と該鍋本体の開口部を覆蓋する蓋体から構成されていると共に、前記炊飯器本体の前記鍋収容凹所に前記炊飯鍋が収容された状態で、該鍋収容凹所の上方開口部において前記蓋体が外部に露呈されている一方、該鍋収容凹所の周壁部と該炊飯鍋の該鍋本体との間に周方向および上下方向に広がる送風路が形成されていると共に、前記送風路の上端開口部が、前記鍋収容凹所の前記上方開口部において外部に直接連通されている一方、前記送風路の下端開口部が前記炊飯器本体内に連通されており、前記制御部が、炊飯の蒸らし工程において前記送風ファンを駆動して、前記送風路の前記下端開口部から導入された外気を、前記送風路内に滞留させることなく前記上端開口部から連続的に排出させるようになって
おり、前記制御部が、前記蒸らし工程以外の工程において、前記送風ファンを駆動しないようになっていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、炊飯器本体の鍋収容凹所の底壁部に電気ヒータを設置すると共に、かかる鍋収容凹所に陶器製の鍋本体を収容して、鍋本体を電気ヒータで直接加熱する構造が採用されている。これにより、昔ながらの釜戸と同様に、陶器製の鍋本体が直接加熱される場合の鍋本体の緩やかな温度上昇性や温度上昇時における均熱化、さらに加熱後の蓄熱性の高さを巧く利用することにより、お米を美味しく炊き上げることができるのである。しかも、熱源は電気ヒータを利用していることから、制御部によって電気ヒータのオン・オフを制御することができ、予約炊飯など電気炊飯器の利便性もそのまま保持することができる。
【0011】
さらに、炊飯鍋の陶器製鍋本体の開口部を覆蓋する蓋体が、炊飯器本体の鍋収容凹所に炊飯鍋が収容された状態で、鍋収容凹所の上方開口部において外部に露呈されている。これにより、蓄熱性の高い材料で構成された炊飯鍋の上方への放熱性が安定して確保され、陶器製鍋本体の蓄熱性の高さに起因する不必要なお米の焦げ付きなどを有利かつ簡便に防止することができる。
【0012】
加えて、鍋収容凹所の周壁部と炊飯鍋の鍋本体との間に形成される周方向および上下方向に広がる送風路は、その上端開口部が、鍋収容凹所の上方開口部において外部に直接連通されている。このような構造の送風路に対して、制御部が、炊飯の蒸らし工程において、送風ファンを駆動して送風路の下端開口部から導入された外気を、送風路内に滞留させることなく上端開口部から連続的に排出させるようになっている。したがって、陶器製の鍋本体の蓄熱性が問題となる蒸らし工程において、送風ファンを駆動するだけで、送風路に外気を連続して通過させることができ、鍋本体の全体の冷却を促進することが可能となっている。特に、送風路の上端開口部が外部に直接連通していることから、送風路からの速やかな空気の排出が実現でき、空気の滞留を防止して鍋本体の速やかな冷却に寄与することができる。
【0013】
なお、炊飯鍋において、蓋体は必ずしも陶器製である必要はなく、陶器製の他、鋳物製やガラス製など任意の材料を用いることができる。また、陶器製の鍋本体は、高い蓄熱性を保持するために、JIS A 1509により測定したかさ密度が、1.5g/cm
3 〜2.3g/cm
3 、好ましくは2.0g/cm
3 〜2.1g/cm
3 とされている。加えて、陶器製の鍋本体のJIS A 1509により測定した吸水率が、6〜12%、好ましくは8〜10%とされている。
本態様は、前記制御部が、前記蒸らし工程以外の工程において、前記送風ファンを駆動しないようになっている構成を採用している。
本態様によれば、蒸らし工程以外の工程において、送風ファンが駆動しないようになっていることから、送風路を通過する外気による陶器製の鍋本体の放熱が防止されており、陶器製の鍋本体の蓄熱性を利用した炊飯を有利に実現することができる。
【0014】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記制御部が、前記蒸らし工程の冒頭から該蒸らし工程の全期間の7割以上の期間に亘って、連続して前記送風ファンを駆動して該送風路に外気を連続して通過させると共に、前記電気ヒータをオフにしているものである。
【0015】
本態様によれば、陶器製の鍋本体の蓄熱性が問題となる蒸らし工程において、冒頭から全期間の7割以上の期間に亘って、電気ヒータがオフにされると共に連続して送風路に外気が導入され続け、鍋本体の放熱を速やかに実行することができ、蒸らし工程に適した鍋本体の温度を維持することができ、ふっくらとした美味しい御飯を炊き上げることができる。なお、本態様の送風ファンの連続駆動と電気ヒータのオフの状態は、蒸らし工程の冒頭から7割以上の期間で実施されていればよく、炊飯の内容によっては、蒸らし工程の最後に送風ファンを駆動せず電気ヒータをオフにして余分な水分を飛ばす工程を組み入れたり、蒸らし工程の全期間において送風ファンの連続駆動と電気ヒータのオフの状態を維持するようにしてもよい。
【0018】
本発明の第
三の態様は、前記第一
または第
二の態様に記載のものにおいて、前記送風路が、前記鍋収容凹所の前記周壁部と前記鍋本体との間の全周に亘って広がる環形状を呈しており、前記送風路の前記上端開口部が、前記周壁部の上端縁部と該鍋本体の上端縁部の間に形成された上側環状隙間によって構成されている一方、前記送風路の前記下端開口部が前記周壁部と前記底壁部の間に設けられた下側環状隙間によって構成されているものである。
【0019】
本態様によれば、送風路が、鍋収容凹所の周壁部と鍋本体との間の全周に亘って広がる環形状を呈し、かつ送風路の上端開口部と下端開口部が共に、全周に亘って開口する環形状を呈している。これにより、送風路を通過する外気の挿通が妨げられることがなく、一層速やかな外気の挿通とそれによる鍋本体の冷却を実現することができる。
【0020】
本発明の第
四の態様は、前記第一乃至第
三の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記送風路における前記周壁部と前記鍋本体の間の隙間寸法が、
前記上端開口部に向かって拡大しているものである。
【0021】
本態様によれば、送風路の隙間寸法が上端開口部に向かって拡大していることから、送風路内への外気の滞留を一層確実に回避して、より速やかな外気の挿通およびそれによる鍋本体の冷却が可能となる。
【0022】
本発明の第
五の態様は、前記第一乃至第
四の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記炊飯器本体の前記上方開口部側には、
上方に開口する環状凹溝部が前記周壁部の外周側に連接して設けられて
おり、該環状凹溝部の底壁が前記周壁部の先端部よりも下方に位置するように設けられている一方、前記炊飯鍋の前記鍋本体の上端縁部には、外周側に広がるフランジ部が設けられ、該フランジ部の外周端面が前記環状凹溝部の直上に位置するように設けられており、該フランジ部の底面には、外周側に向かうにしたがって前記環状凹溝部の前記底壁に接近する下方傾斜がつけられているものである。
【0023】
本態様によれば、鍋本体の上端縁部に設けられたフランジ部の外周端面が、その下方に設けられた炊飯器本体の環状凹溝部の直上に位置するようになっている。これにより、炊飯時の吹きこぼれなどが、フランジ部を伝って外部に漏れた場合でも、環状凹溝部に収容することができ、使用後の清掃等を簡便に行うことが可能となる。しかも、フランジ部の底面には、外周側に向かうにしたがって環状凹溝部の底壁に接近する下方傾斜がつけられていることから、フランジ部の底面を伝って吹きこぼれが鍋収容凹所側に入り込むことが未然に防止されている。
【0024】
本発明の第
六の態様は、前記第一乃至第
五の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記炊飯鍋の前記蓋体が、前記鍋本体の開口部を覆蓋して平坦に広がる内蓋と、該内蓋の上方に設置されて該内蓋との間に蒸気収納空間を形成する外蓋とを含んでおり、該内蓋に肉厚寸法が該外蓋の肉厚寸法よりも大きくされているものである。
【0025】
本態様によれば、炊飯鍋の蓋体が、内蓋と外蓋の二重部蓋構造とされており、内蓋と外蓋の間に蒸気収納空間が形成されていることから、炊飯時の鍋本体内部の加圧状態や均熱化を安定して保持することができる。さらに、内蓋が、鍋本体の開口部を覆蓋して平坦に広がると共に、外蓋よりも厚肉に形成されていることから、内蓋の重量によって炊飯時の鍋本体内部の加圧を一層確実に保持することができ、良好な炊飯を実現することができる。
【0026】
本発明の第
七の態様は、前記第一乃至第
六の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記電気ヒータが、前記鍋本体の底部中央が載置される第一シーズヒータと、前記鍋本体の底部周縁が載置される第二シーズヒータを含んで構成されているものである。
【0027】
本態様によれば、第一シーズヒータと第二シーズヒータを、炊飯の工程に合わせてそれぞれのオン/オフや出力制御をすることが可能となる。これにより、炊飯時の鍋本体の温度分布をより有利に調整することができる。
【0028】
本発明の第
八の態様は、前記第
七の態様に記載のものにおいて、前記制御部が、炊飯の昇温工程において、前記第一シーズヒータと前記第二シーズヒータの両方を使用する一方、その後の炊上工程では、
前記第一シーズヒータのみを使用するようになっているものである。
【0029】
本態様によれば、陶器製の鍋本体の蓄熱性を利用して、炊上工程では、鍋本体の底部中央が載置される第一シーズヒータのみの使用とすることができる。これにより、陶器製の鍋本体の蓄熱性を利用した省電力な炊飯が可能となる。
【0030】
本発明の第
九の態様は、前記第
七または第
八の態様に記載のものにおいて、前記第一および第二シーズヒータの前記昇温工程における出力値が、前記昇温工程の冒頭において、吸水工程の出力値よりも下げられているものである。
【0031】
本態様によれば、加温に時間を要する陶器製の鍋本体を吸水工程の時間を巧く利用して加温を行い、昇温工程の冒頭から所望の鍋本体内の温度を実現することができる。さらに、一旦昇温工程の冒頭でヒータの出力を落とすことにより、鍋本体内の温度を炊飯に最適な状態に保つことができる。
【0032】
本発明の第
十の態様は、前記第一乃至第
九の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記制御部が、被炊飯物を収容しない前記鍋本体が前記鍋収容凹所に収容された状態で、前記電気ヒータと前記送風ファンを駆動させて前記鍋本体の乾燥を促進する乾燥モードを含んでいるものである。
【0033】
本態様によれば、使用後の陶器製の鍋本体を鍋収容凹所に収容した状態で鍋本体の乾燥工程を行うことできる。これにより、わすれがちな使用後の鍋本体の乾燥を使用者に確実に実行させることができ、鍋本体の製品状態の維持や耐久性の向上を図ることができる。
【0034】
本発明の第
十一の態様は、前記第一乃至第
十の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記鍋収容凹所の底壁部中央には、温度センサのセンサ部が配設されている一方、前記鍋本体の底面には、該底面の一部を構成すると共に前記センサ部が当接される検温板が配設されており、前記検温板が、前記陶器よりも熱伝達率の高い素材で構成されているものである。
【0035】
本態様によれば、温度センサのセンサ部が圧接される検温部が、陶器よりも熱伝達率の高い素材で構成されていることから、検温板の内表面が接する鍋本体内の温度が、温度センサのセンサ部に速やかに伝達され、陶器表面に圧接されたセンサ部により検知する場合に比して、鍋本体内の温度をより正確に検温することができる。なお、温度センサのセンサ部が弾性部材によって上方に付勢された状態で配設することにより、炊飯鍋の有無を検知する機構を有利に兼ね備えることができる。また、検温板の素材としては、陶器よりも熱伝達率の高い素材であれば何れでもよいが、好ましくは、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属製や、カーボン製のものを採用することができる。
【0036】
本発明の第
十二の態様は、前記第
十一の態様に記載のものにおいて、前記検温板が、前記鍋本体の内周面を画成する内表面側に比して、前記鍋本体の外周面を画成する外表面側の径寸法が小さい段付き円柱形状とされており、前記検温板の前記外表面の中央部には前記センサ部を収容する収容凹所が設けられているものである。
【0037】
本態様によれば、検温板が段付き円柱形状とされていることから、鍋本体の底面に対して段差部分で確実に保持されることができ、検温板を安定して鍋本体の底面に配設することができる。しかも、外表面の中央部には、収容凹所が設けられていることから、センサ部を安定して位置決め保持することができる。また、収容凹所を設けることで検温板部のセンサ部が当接される部位の板厚を薄くすることができ、一層確実かつ速やかに鍋本体の内部の温度を検知することができる。
【0038】
本発明の第
十三の態様は、前記第
十二の態様に記載のものにおいて、前記検温板の大径部と小径部の間の段差面が、内周側に行くに従って下降する下方傾斜面とされている一方、前記収容凹所の周壁部が下方に行くにしたがって径方向外方に広がるテーパ面形状を有しているものである。
【0039】
本態様によれば、小径部と大径部の間の段差面が下方傾斜面とされていることから、検温板の鍋本体の底壁部への係止部分において局所的な応力の集中を解消することができる。さらに、収容凹所が下方に向かって径方向外方に広がるテーパ面形状とされていることから、センサ部をセンタリングしつつ収容することができ、検温板とセンサ部の位置決めを一層スムーズに行うことができる。