特許第6553153号(P6553153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553153
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/173 20060101AFI20190722BHJP
   H02K 5/167 20060101ALI20190722BHJP
   F16C 35/07 20060101ALI20190722BHJP
   F16C 19/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H02K5/173 A
   H02K5/167 A
   F16C35/07
   F16C19/00
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-216423(P2017-216423)
(22)【出願日】2017年11月9日
(62)【分割の表示】特願2015-136243(P2015-136243)の分割
【原出願日】2015年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-38260(P2018-38260A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2017年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】亀山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】益田 久光男
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−39011(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101089413(CN,A)
【文献】 特開2015−195705(JP,A)
【文献】 特開2015−208082(JP,A)
【文献】 実開昭62−44669(JP,U)
【文献】 国際公開第2008/056749(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0001495(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
F16C 19/00
F16C 35/07
H02K 5/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを有するロータと、
前記シャフトの長手方向において、端部を有する軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジングの内側に設けられた軸受と、を備え、
前記軸受ハウジングの内周面には、前記シャフトに向けて突出した突起が設けられ、
前記軸受は前記シャフトを支持しており、
前記シャフトの長手方向において、前記軸受ハウジングの端部は、前記突起に対して前記軸受側の反対側に配置されており、
前記シャフトの長手方向において、前記突起の一部分は前記軸受に向けて突出しており、
前記シャフトの長手方向において、前記軸受に対向する前記突起の一部分の面は前記軸受に接触し、
径方向において、前記突起の内周面及び前記軸受ハウジングの端部の内周面は、前記シャフトから離れており、
前記軸受は、転がり軸受である、モータ。
【請求項2】
シャフトを有するロータと、
前記シャフトの長手方向において、端部を有する軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジングの内側に設けられた軸受と、を備え、
前記軸受ハウジングの内周面には、前記シャフトに向けて突出した突起が設けられ、
前記軸受は前記シャフトを支持しており、
前記シャフトの長手方向において、前記軸受ハウジングの端部は、前記突起に対して前記軸受側の反対側に配置されており、
前記シャフトの長手方向において、前記突起の一部分は前記軸受に向けて突出しており、
前記シャフトの長手方向において、前記軸受に対向する位置にある、前記突起の端部全体が前記軸受に接触し、
径方向において、前記突起の内周面及び前記軸受ハウジングの端部の内周面は、前記シャフトから離れている、モータ。
【請求項3】
シャフトを有するロータと、
前記シャフトの長手方向において、端部を有する軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジングの内側に設けられた軸受と、
前記軸受ハウジングの内周面に固定された抜止部と、
を備え、
前記軸受は前記シャフトを支持しており、
前記軸受ハウジングの端部全体が、径方向において、前記シャフトに向かって突出しており、
前記抜止部は、前記シャフトの長手方向において、前記軸受ハウジングの端部と前記軸受との間に配置されており、
前記シャフトの長手方向において、前記軸受ハウジングの端部は前記抜止部に接触し、
前記シャフトの長手方向において、前記抜止部は前記軸受に接触し、
径方向において、前記抜止部の内周面及び前記軸受ハウジングの端部の内周面は、前記シャフトから離れており、
前記軸受は、転がり軸受である、モータ。
【請求項4】
シャフトを有するロータと、
前記シャフトの長手方向において、端部を有する軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジングの内側に設けられた軸受と、
前記軸受ハウジングの内周面に固定された抜止部と、
を備え、
前記軸受は前記シャフトを支持しており、
前記軸受ハウジングの端部全体が、径方向において、前記シャフトに向かって突出しており、
前記抜止部は、前記シャフトの長手方向において、前記軸受ハウジングの端部と前記軸受との間に配置されており、
前記シャフトの長手方向において、前記軸受ハウジングの端部は前記抜止部に接触し、
前記シャフトの長手方向において前記軸受に対向する位置にある、前記抜止部の面全体が前記軸受に接触し、
径方向において、前記抜止部の内周面及び前記軸受ハウジングの端部の内周面は、前記シャフトから離れている、モータ。
【請求項5】
前記シャフトの長手方向において前記軸受に対向する位置にある、前記抜止部の面は平坦である、請求項又はに記載のモータ。
【請求項6】
前記軸受は、前記軸受ハウジングの内側において、圧入により固定されている、請求項のいずれかに記載のモータ。
【請求項7】
前記軸受は、前記軸受ハウジングの内周面に圧入により固定されている、請求項のいずれかに記載のモータ。
【請求項8】
前記抜止部は、前記軸受ハウジングとは別体である、請求項のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項9】
前記軸受ハウジングが有する収容部と、前記抜止部と、は同一材料を有する、請求項のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータに関し、より特定的には、コイルを含むステータと、コイルの外径側でコイルと対向するマグネットを含むロータとを備えたアウターロータ形のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、アウターロータ型のブラシレスモータは、軸受ハウジングと、軸受ハウジングの外周面に固定された環状のステータコアと、ステータコアを取り囲むように配置されたロータとを備えている。ステータコアは、複数の極歯が形成されたステータヨークを含んでおり、複数の極歯の各々にはコイルが巻回されている。ロータは、極性の異なる磁極が交互に周縁に沿って配置されたマグネットと、マグネットが固定されたシャフトとを含んでいる。シャフトは、軸受ハウジングの内周面に固定された軸受によって回転可能に支持されている。
【0003】
下記特許文献1には、軸受ハウジングの内周面に固定された軸受のずれを防止する軸受支持構造が開示されている。下記特許文献1の軸受支持構造は、開口と収容空間とを有するハウジングと、回転軸の一部を支持し、収容空間内に設置される軸受と、軸受の軸方向運動を制限する第2制限アセンブリとを備えている。第2制限アセンブリは、回転軸の外壁に嵌め込まれた弾性体と、開口をカバーして弾性材をとめるカバーとを含んでいる。カバーは回転軸に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−185209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のモータにおいては、シャフトの回転時に、軸受ハウジングの膨張などの影響により軸受ハウジングが軸受を保持する力が弱まり、軸受ハウジングに固定した軸受が軸方向にずれる(浮き上がる)という問題があった。軸受が含油軸受である場合、軸受と軸受ハウジングとの間の静止摩擦係数が油によって低い状態となり、軸受ハウジングが軸受を保持する力は弱くなる。その結果、軸受が含油軸受である場合には、シャフトの回転時に軸受が軸方向にずれやすくなっていた。また軸受は、軸受自身が含む油に起因して、軸受ハウジングに対して接着することが困難であった。
【0006】
特許文献1の技術では、軸受の軸方向運動を制限する第2制限アセンブリがシャフトに固定されている。シャフトは軸方向に移動する可能性があるため、第2制限アセンブリが軸受の軸方向運動を制限する効果は十分ではなかった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、軸受のずれを防止することのできるモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に従うモータは、シャフトを有するロータと、前記シャフトの長手方向において、端部を有する軸受ハウジングと、前記軸受ハウジングの内側に設けられた軸受と、を備え、前記軸受ハウジングの内周面には、前記シャフトに向けて突出した突起が設けられ、前記軸受は前記シャフトを支持しており、前記シャフトの長手方向において、前記軸受ハウジングの端部は、前記突起に対して前記軸受側の反対側に配置されており、前記シャフトの長手方向において、前記突起の一部分は前記軸受に向けて突出しており、前記シャフトの長手方向において、前記軸受に対向する前記突起の一部分の面は前記軸受に接触し、径方向において、前記突起の内周面及び前記軸受ハウジングの端部の内周面は、前記シャフトから離れており、前記軸受は、転がり軸受である、モータである。
本発明の他の局面に従うモータは、シャフトを有するロータと、前記シャフトの長手方向において、端部を有する軸受ハウジングと、前記軸受ハウジングの内側に設けられた軸受と、を備え、前記軸受ハウジングの内周面には、前記シャフトに向けて突出した突起が設けられ、前記軸受は前記シャフトを支持しており、前記シャフトの長手方向において、前記軸受ハウジングの端部は、前記突起に対して前記軸受側の反対側に配置されており、前記シャフトの長手方向において、前記突起の一部分は前記軸受に向けて突出しており、前記シャフトの長手方向において、前記軸受に対向する位置にある、前記突起の端部全体が前記軸受に接触し、径方向において、前記突起の内周面及び前記軸受ハウジングの端部の内周面は、前記シャフトから離れている、モータである。
本発明の他の局面に従うモータは、シャフトを有するロータと、前記シャフトの長手方向において、端部を有する軸受ハウジングと、前記軸受ハウジングの内側に設けられた軸受と、前記軸受ハウジングの内周面に固定された抜止部と、を備え、前記軸受は前記シャフトを支持しており、前記軸受ハウジングの端部全体が、径方向において、前記シャフトに向かって突出しており、前記抜止部は、前記シャフトの長手方向において、前記軸受ハウジングの端部と前記軸受との間に配置されており、前記シャフトの長手方向において、前記軸受ハウジングの端部は前記抜止部に接触し、前記シャフトの長手方向において、前記抜止部は前記軸受に接触し、径方向において、前記抜止部の内周面及び前記軸受ハウジングの端部の内周面は、前記シャフトから離れており、前記軸受は、転がり軸受である、モータである。
また、本発明の他の局面に従うモータは、シャフトを有するロータと、前記シャフトの長手方向において、端部を有する軸受ハウジングと、前記軸受ハウジングの内側に設けられた軸受と、前記軸受ハウジングの内周面に固定された抜止部と、を備え、前記軸受は前記シャフトを支持しており、前記軸受ハウジングの端部全体が、径方向において、前記シャフトに向かって突出しており、前記抜止部は、前記シャフトの長手方向において、前記軸受ハウジングの端部と前記軸受との間に配置されており、前記シャフトの長手方向において、前記軸受ハウジングの端部は前記抜止部に接触し、前記シャフトの長手方向において前記軸受に対向する位置にある、前記抜止部の面全体が前記軸受に接触し、径方向において、前記抜止部の内周面及び前記軸受ハウジングの端部の内周面は、前記シャフトから離れている、モータである。
上記モータにおいて好ましくは、前記シャフトの長手方向において前記軸受に対向する位置にある、前記抜止部の面は平坦である。
上記モータにおいて好ましくは、前記軸受は、前記軸受ハウジングの内側において、圧入により固定されている。
上記モータにおいて好ましくは、前記軸受は、前記軸受ハウジングの内周面に圧入により固定されている。
上記モータにおいて好ましくは、前記抜止部は、前記軸受ハウジングとは別体である。
上記モータにおいて好ましくは、前記軸受ハウジングが有する収容部と、前記抜止部と、は同一材料を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軸受のずれを防止することのできるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態におけるモータの構成を示す断面図である。
図2図1における収容部23a付近の拡大図である。
図3】抜け止めワッシャ41の構成の一例を示す斜視図である。
図4】抜け止めワッシャ41の構成の他の例を示す斜視図である。
図5】本発明の第1の変形例におけるモータの構成を示す断面図である。
図6図5における収容部23a付近の拡大図である。
図7】本発明の第2の変形例におけるモータの構成を示す断面図である。
図8図7における収容部23a付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態におけるモータの構成を示す断面図である。
【0013】
図1を参照して、本実施の形態におけるモータ100は、コイル22を含むステータ20と、コイル22の外径側でコイル22と対向するマグネット12を含むロータ10とを備えたアウターロータ形のブラシレスモータである。ロータ10はステータ20に対して回転可能である。
【0014】
ロータ10は、ロータヨーク11と、マグネット12と、シャフト13と、ワッシャ14とを含んでいる。
【0015】
ロータヨーク11は、ロータヨーク11内部からの磁界の漏れを防ぐものであり、たとえば磁性体よりなっている。ロータヨーク11は、ロータヨーク天井部11aと、ロータヨーク側壁部11bと、ロータヨーク固定部11cとを含んでいる。ロータヨーク天井部11aは、シャフト13の回転軸Rに対してたとえば垂直な方向(図1中横方向)に延在している。ロータヨーク天井部11aは平面的に見て円形状を有している。ロータヨーク側壁部11bは、ロータヨーク天井部11aの外径側端部から図1中下方向へ延在している。ロータヨーク側壁部11bは円筒形状を有している。ロータヨーク固定部11cは、ロータヨーク天井部11aの内径側端部から図1中下方向へ延在している。ロータヨーク固定部11cは円筒形状を有している。ロータヨーク固定部11cの内径側にはシャフト13を通すための孔61が設けられており、ロータヨーク11は孔61においてシャフト13に固定されている。
【0016】
マグネット12は、ロータヨーク側壁部11bの内周面に取り付けられている。マグネット12は環状を有しており、N極に着磁された領域と、S極に着磁された領域とが円周方向に沿って一定周期で交互に設けられている。マグネット12は、ステータ20と対向するようにロータヨーク11に取り付けられている。マグネット12は、ロータヨーク11を介してシャフト13に固定されている。
【0017】
シャフト13は、ロータヨーク11の中心部を貫くように回転軸R方向に延在している。シャフト13およびロータヨーク11は、回転軸Rを中心として一体的に回転する。
【0018】
ワッシャ14は、シャフト13の外周面に固定されている。ワッシャ14の下面は、ロータヨーク天井部11aの上面と接触している。ワッシャ14は、ロータヨーク11の図1中上方向への移動(ロータヨーク11の抜け)を規制する。
【0019】
ステータ20は、ステータコア21と、コイル22と、軸受ハウジング23と、電子基板24と、スラスト板25とを含んでいる。
【0020】
ステータコア21は、珪素鋼板等の積層からなっており、軸受ハウジング23の収容部23aに固定されている。ステータコア21は、内径側から外径側へ向かって放射状に延びるように形成される複数のティース部21aを含んでいる。
【0021】
コイル22は、複数のティース部21aの各々の周囲に巻回されている。ステータコア21とコイル22とは、絶縁体よりなるインシュレータ22aによって絶縁されている。
【0022】
軸受ハウジング23は、たとえばダイキャストで成形されたものであり、収容部23aと、外縁部23bとを含んでいる。収容部23aは、空間SPを構成しており、シャフト13の下端部13aおよびその付近を空間SP内に収容している。収容部23aは、シャフト13の下端部13a付近の側面を取り囲むように回転軸R方向に延在している。また収容部23aは、シャフト13の下端部13aを覆うように、モータの中央部において図1中横方向に延在している。収容部23aの外周面にはステータコア21が固定されている。外縁部23bは、収容部23aの外周面の下端部から外径方向に延在している。
【0023】
電子基板24は、外縁部23b上に固定されている。電子基板24上には銅箔などで導線が形成されており、電子部品24aがはんだ付けによって取り付けられている。
【0024】
スラスト板25は、収容部23aが構成する空間SPの底面に設けられている。スラスト板25は、シャフト13の下端部13aと接触しており、シャフト13のスラスト荷重を受ける。
【0025】
モータ100は、モータケース30と、軸受(メタル)31および32とをさらに備えている。またステータ20は、抜け止めワッシャ(メタル押え)41(抜止部の一例)をさらに含んでいる。
【0026】
モータケース30は、モータケース天井部30aと、モータケース側壁部30bと、モータケース固定部30cとを含んでいる。モータケース天井部30aは、シャフト13の回転軸Rに対してたとえば垂直な方向(図1中横方向)に延在している。モータケース天井部30aは平面的に見て円形状を有している。モータケース側壁部30bは、モータケース天井部30aの外径側端部から図1中下方向へ延在している。モータケース側壁部30bは円筒形状を有している。モータケース固定部30cは、モータケース天井部30aの内径側端部から図1中上方向へ延在している。モータケース固定部30cは円筒形状を有している。モータケース固定部30cの内径側にはシャフト13を通すための孔62が設けられている。
【0027】
軸受31は、収容部23aの内周面に固定されている。軸受31は、軸受ハウジング23に対してシャフト13を回転可能に支持している。軸受32は、モータケース固定部30cの内周面に固定されている。軸受32は、孔62内において、モータケース30に対してシャフト13を回転可能に支持している。シャフト13と、軸受31および32の各々との間には微小な隙間(たとえば数μm)が存在している。軸受31および32の各々は、転がり軸受であってもよいし、滑り軸受であってもよいが、構成の簡素化の観点で含油軸受であることが好ましい。含油軸受とは、多孔質材料(たとえば金属)よりなる本体に油が染みこんだ軸受であり、滑り軸受の一種である。
【0028】
抜け止めワッシャ41は、環状であり、収容部23aの内周面から内径方向(シャフト13方向)に突出している。抜け止めワッシャ41は、回転軸R方向において軸受31よりもシャフト13の下端部13aから遠い位置(つまり、軸受31よりも図1中上側の位置)に設けられている。
【0029】
図2は、図1における収容部23a付近の拡大図である。
【0030】
図2を参照して、収容部23aは、シャフト13の下端部13aおよびその付近を収容する第1の部分71と、第1の部分71の上側において第1の部分71と隣接する第2の部分72とを含んでいる。第1の部分71は、直径D1を有している。第2の部分72は、直径D2を有している。直径D2は直径D1よりも大きい。
【0031】
軸受31は、第1の部分71と第2の部分72との境界に形成された段差部分73に接触している。抜け止めワッシャ41は、収容部23aとは別体である。軸受31および抜け止めワッシャ41の各々は、収容部23aの第2の部分72の内周面に、圧入により固定されている。抜け止めワッシャ41の下面は、軸受31の上面と接触している。抜け止めワッシャ41は、シャフト13と径方向で間隔を隔てて配置されている。軸受31および抜け止めワッシャ41の各々が圧入される場合、圧入をスムーズに行うことを目的として、軸受31および抜け止めワッシャ41の各々の外周面と、上面または下面(先に収容部23a内に挿入される面)との境界の角部が面取りされていることが好ましい。
【0032】
図3は、抜け止めワッシャ41の構成の一例を示す斜視図である。図4は、抜け止めワッシャ41の構成の他の例を示す斜視図である。
【0033】
図3および図4を参照して、抜け止めワッシャ41は、図3に示すような平座金であってもよいし、図4に示すような歯付き座金であってもよい。平座金は、外周面全周が単一の円筒面で構成されたものである。歯付き座金は、その外周面に均等な角度で複数の突出部41aが設けられたものである。抜け止めワッシャ41が歯付き座金である場合、軸受ハウジング23への圧入力を低減することができ、軸受31の抜け止めの効果を大きくすることができる。
【0034】
抜け止めワッシャ41は、軸受ハウジング23(母材)と同一材料よりなっていることが好ましい。これにより、モータ100の回転により生じる熱により軸受ハウジング23が熱膨張した場合に、抜け止めワッシャ41が緩むことを抑止することができる。また抜け止めワッシャ41は、軸受31を均一に押さえるという観点で、軸受31と接触する下面が平坦である(回転軸R方向の法線を有する)ことが好ましい。
【0035】
なお、軸受ハウジング23への抜け止めワッシャ41の固定方法は、接着など圧入以外の方法であってもよい。
【0036】
[変形例]
【0037】
図5は、本発明の第1の変形例におけるモータの構成を示す断面図である。図6は、図5における収容部23a付近の拡大図である。
【0038】
図5および図6を参照して、抜け止めワッシャ41は、上述のように軸受ハウジング23と別体である場合の他、軸受ハウジング23と一体化していてもよい。本変形例では、抜け止めワッシャ41は、収容部23aの内周面から内径方向に突出した突起42で置き換えられる。軸受ハウジング23は回転軸R方向で2つに分かれた2体構造である。収容部23aは、ここでは第1の部分71と第2の部分72とが別体で構成されている。モータ100の製造時には、第1の部分71の無い状態で、軸受31が、突起42の下面と接触するように、図6中下側から第2の部分72に圧入される。その後、第1の部分71が、図6中下側から軸受31および第2の部分72の各々の下面に接触され、第2の部分72と嵌合部74で嵌合される。これにより、軸受31が収納部23a内に配置された構成を実現することができる。
【0039】
図7は、本発明の第2の変形例におけるモータの構成を示す断面図である。図8は、図5における収容部23a付近の拡大図である。
【0040】
図7および図8を参照して、本変形例は、図1に示すモータに対して、第1の変形例の収容部23aの構成を適用したものである。すなわち、軸受ハウジング23は回転軸R方向で2つに分かれた2体構造である。抜け止めワッシャ41は、収容部23aとは別体であり、収容部23aの第2の部分72の内周面に、圧入により固定されている。抜け止めワッシャ71の上部の収納部23aの内周面からはワッシャストッパ75が突出している。ワッシャストッパ75は、抜け止めワッシャ41の上方への移動を防止する。モータ100の製造時には、第1の部分71の無い状態で、軸受31および抜け止めワッシャ41の各々が、図8中下側から第2の部分72に圧入される。抜け止めワッシャ41の上面はワッシャストッパ75の下面に当接する。その後、第1の部分71が、図8中下側から軸受31および第2の部分72の各々の下面に接触され、第2の部分72と嵌合部74で嵌合される。これにより、軸受31が収納部23a内に配置された構成を実現することができる。
【0041】
なお、第1および第2の変形例の各々における上述以外の構成は、図1に示すモータの構成と同様であるため、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0042】
[実施の形態の効果]
【0043】
本実施の形態によれば、抜け止めワッシャ41または突起42が軸受押えの役割をし、軸受31に対して下端部13a方向(図1中下方向)の力を加える。これにより、シャフト13の回転時に軸受31が図1中上方向へのずれること(回転軸R方向への浮き上がり)を抑止することができ、軸受31が収容部23aから抜け落ちることを抑止することができる。
【0044】
また、抜け止めワッシャ41を軸受ハウジング23とは別体とすることで、軸受31を収容部23a内に圧入する際に抜け止めワッシャ41が障害にならなくなる。さらに、抜け止めワッシャ41を圧入により収納部23aの内周面に固定することで、軸受31および抜け止めワッシャ41を収納部23aの内周面に簡易な方法で固定することができる。
【0045】
[その他]
【0046】
モータは、DC(Direct−current)モータのようなブラシモータであってもよいし、ステッピングモータのようなブラシレスモータであってもよい。
【0047】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
10 ロータ
11 ロータヨーク
11a ロータヨーク天井部
11b ロータヨーク側壁部
11c ロータヨーク固定部
12 マグネット
13 シャフト
13a シャフト下端部
14 ワッシャ
20 ステータ
21 ステータコア
21a ティース部
22 コイル
22a インシュレータ
23 軸受ハウジング
23a 軸受ハウジングの収容部
23b 軸受ハウジングの外縁部
24 電子基板
24a 電子部品
25 スラスト板
30 モータケース
30a モータケース天井部
30b モータケース側壁部
30c モータケース固定部
31,32 軸受
41 抜け止めワッシャ
41a 抜け止めワッシャの突出部
42 突起
61,62 孔
71 収容部の第1の部分
72 収容部の第2の部分
73 収容部の段差部分
74 嵌合部
75 ワッシャストッパ
100 モータ
D1,D2 直径
R 回転軸
SP シャフトの下端部を収容する空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8