特許第6553168号(P6553168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553168乱反射材料、乱反射層、波長変換装置及び光源システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553168
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】乱反射材料、乱反射層、波長変換装置及び光源システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20190722BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20190722BHJP
   F21V 29/502 20150101ALI20190722BHJP
   F21V 29/70 20150101ALI20190722BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20190722BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20190722BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20190722BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20190722BHJP
【FI】
   G02B5/08 Z
   F21S2/00 375
   F21V29/502 100
   F21V29/70
   F21S2/00 310
   G02B5/02 C
   G02B1/00
   G02B5/20
   F21Y115:30
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-508614(P2017-508614)
(86)(22)【出願日】2015年12月2日
(65)【公表番号】特表2017-527847(P2017-527847A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】CN2015096219
(87)【国際公開番号】WO2016091107
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2017年2月15日
(31)【優先権主張番号】201410766308.7
(32)【優先日】2014年12月11日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514090979
【氏名又は名称】深▲せん▼光峰科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】APPOTRONICS CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】田 梓峰
(72)【発明者】
【氏名】徐 虎
(72)【発明者】
【氏名】李 乾
【審査官】 藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−120278(JP,A)
【文献】 特開2007−308360(JP,A)
【文献】 特開2008−145942(JP,A)
【文献】 特開2011−129354(JP,A)
【文献】 特開2013−079157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/08
F21S 2/00
C01B 21/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色散乱粒子と接着剤とを含む乱反射材料であって、前記白色散乱粒子は白色度が85より大きく、且つ、前記白色散乱粒子は、白色度が90より大きい高反射散乱粒子と、屈折率が2.0以上である高屈折散乱粒子と、高熱伝導散乱粒子とを含み、前記高熱伝導散乱粒子は窒化ホウ素及び/又は窒化アルミニウムであり、前記高熱伝導散乱粒子の顆粒の形状は棒状又は扁平状であり、
前記白色散乱粒子は重量部として、前記接着剤1部に対して、前記白色度が90より大きい高反射散乱粒子0.08〜0.15部と、前記高屈折散乱粒子0.5〜0.7部と、前記高熱伝導散乱粒子0.3〜0.5部とを含み、
前記白色度が90より大きい高反射散乱粒子は酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及び硫酸バリウムのうちの1種又は複数種であり、前記高屈折散乱粒子は二酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化亜鉛のうちの1種又は複数種である、
ことを特徴とする乱反射材料。
【請求項2】
前記白色散乱粒子と前記接着剤の重量比が0.88〜1.15:1であることを特徴とする、請求項1に記載の乱反射材料。
【請求項3】
前記白色度が90より大きい高反射散乱粒子と前記高屈折散乱粒子は球状であり、好ましくは、前記白色度が90より大きい高反射散乱粒子と前記高屈折散乱粒子の半径は0.2〜0.5μmであることを特徴とする、請求項1に記載の乱反射材料。
【請求項4】
前記高熱伝導散乱粒子が扁平状である場合、前記高熱伝導散乱粒子の扁平方向での長さは0.7〜7μmであり、厚さ方向での長さは0.02〜0.25μmであり、前記高熱伝導散乱粒子が棒状である場合、前記高熱伝導散乱粒子の長手方向での長さは0.7〜7μmであり、円周方向での直径は0.02〜0.25μmであることを特徴とする、請求項1又は3に記載の乱反射材料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の乱反射材料で製造されることを特徴とする乱反射層。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の乱反射材料を有機担体と混合して混合材料を形成するステップと、
前記混合材料を基材の表面に塗布し、焼結して乱反射層を形成するステップと、
を備えることを特徴とする乱反射層の製造方法。
【請求項7】
前記混合材料を基材の表面に塗布するステップにおいて、ナイフ塗布、スピン塗布又はスクリーン印刷で塗布を行うことを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記混合材料を基材の表面に塗布し、焼結して前記乱反射層を形成するステップは、
前記混合材料を基材の表面に塗布し、焼結して第一サブ乱反射層を形成するステップと、
前記混合材料を第一サブ乱反射層の表面に塗布し、焼結して第二サブ乱反射層を形成するステップと、
前記塗布と前記焼結を繰り返し、複数層のサブ乱反射層を形成し、さらに前記乱反射層を形成するステップと、
を備えることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
高熱伝導基板(1)と、前記高熱伝導基板(1)に設けられた蛍光層(3)と、前記高熱伝導基板(1)と前記蛍光層(3)との間に位置する乱反射層(2)とを備える波長変換装置であって、前記乱反射層(2)が請求項5に記載の乱反射層であることを特徴とする波長変換装置。
【請求項10】
前記乱反射層(2)の厚さは30〜100μmであり、前記乱反射層(2)の反射率は90%より高いことを特徴とする、請求項9に記載の波長変換装置。
【請求項11】
波長変換装置を備える光源システムであって、前記波長変換装置は請求項9又は10に記載の波長変換装置であることを特徴とする光源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学エネルギーの分野に関し、具体的には、乱反射材料、乱反射層、波長変換装置及び光源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、青色の光のレーザ光により高速で回転しているカラーホイールを励起させることで、蛍光粉の熱消光の問題を効果的に解決することができ、これにより、高効率且つ低コストのレーザ表示が実現できるようになり、レーザ光源技術の主流の一つとなってきている。このような解決手段では、光源は励起光源と波長変換装置を備え、そのうち、波長変換装置は反射基体と、反射基体に塗布された蛍光粉シートと、反射基体を回転させるように駆動するモータとを備え、これにより、励起光源からの励起光により蛍光粉シートにおいて形成されたライトスポットが円形の経路に沿ってこの蛍光粉シートに作用するようになっている。
【0003】
従来の波長変換装置では、反射基体に鏡面アルミニウムが採用されている。このような鏡面アルミニウムにおける高反射層には、高純度アルミニウム又は高純度銀が採用されている。レーザ光源の出力の向上に伴い、鏡面銀/アルミニウムでの高温で酸化し黒化する問題がますます深刻になってきていた。この問題を解決するために、銀/アルミニウムメッキ金属反射層の代わりに白色乱反射粒子を接着剤で接着して形成された乱反射層又は多孔質反射セラミックスを採用するのは一般的であり、反射層の高温での反射率の低下の問題を一定の程度回避することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような乱反射層の反射メカニズムは、特定の光波に対する散乱粒子による複数回の散乱・反射であり、乱反射層に高い乱反射率を持たせようとすれば、そのコーティング層が高い厚さを有さなければならず、一般的に200μm以上の厚さが必要となるが、このような厚さは鏡面銀表面の媒体保護層が有する数百ナノメートルの厚さに対し、蛍光層により生成された熱の伝導経路を長くし、高い熱抵抗を持たせ、これは波長変換装置の発光の熱安定性にとっては不利なものである。どのように波長変換装置の光効率と熱安定性を両立させることは、研究開発者の新しい課題となっている。
【0005】
現在、高反射粒子であるサブミクロン級の酸化アルミニウム及び被覆力の強い補助粒子である二酸化チタンを採用することにより、薄い厚さで高い反射率を実現できるが、このような材料から形成された波長変換装置は、高出力密度のレーザによる励起では発光の安定性がよくない。このため、既存の波長変換装置を改良し、その光効率と熱安定性を向上させることは依然として必要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、乱反射材料の反射率を向上させ、波長変換装置の熱安定性を向上させるために、乱反射材料、乱反射層、波長変換装置及び光源システムを提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を実現するために、本発明の一つの態様によれば、乱反射材料が提供され、当該乱反射材料は白色散乱粒子と接着剤を含み、白色散乱粒子は白色度が85より大きく、且つ、白色散乱粒子は、白色度が90より大きい高反射散乱粒子と、屈折率が2.0以上である高屈折散乱粒子と、高熱伝導散乱粒子とを含み、高熱伝導散乱粒子は窒化ホウ素及び/又は窒化アルミニウムであり、高熱伝導散乱粒子の顆粒の形状は棒状又は扁平状である。
【0008】
前記扁平状はシート状、板状又は長尺状を含み、好ましくはシート状である。
【0009】
さらに、白色散乱粒子は重量部として、白色度が90より大きい高反射散乱粒子0.08〜0.15部と、高屈折散乱粒子0.5〜0.7部と、高熱伝導散乱粒子0.3〜0.5部とを含む。
【0010】
さらに、白色散乱粒子と接着剤の重量比は0.88〜1.15:1である。
【0011】
さらに、白色度が90より大きい高反射散乱粒子と高屈折散乱粒子は球状であり、白色度が90より大きい高反射散乱粒子と高屈折散乱粒子の半径が0.2〜0.5μmであることが好ましい。
【0012】
さらに、白色度が90より大きい高反射散乱粒子は酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及び硫酸バリウムのうちの1種又は複数種であり、高屈折散乱粒子は二酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化亜鉛のうちの1種又は複数種であり、高熱伝導散乱粒子が扁平状である場合、高熱伝導散乱粒子の扁平方向での長さは0.7〜7μmであり、厚さ方向での長さは0.02〜0.25μmであり、高熱伝導散乱粒子が棒状である場合、高熱伝導散乱粒子の長手方向での長さは0.7〜7μmであり、円周方向での直径は0.02〜0.25μmである。
【0013】
本発明のもう一つの態様によれば、乱反射層が提供され、当該乱反射層は上記いずれか一つの乱反射材料で製造される。
【0014】
本発明のさらにもう一つの態様によれば、乱反射層の製造方法が提供され、当該乱反射層の製造方法は、上記いずれか1つの乱反射材料を有機担体と混合して混合材料を形成するステップと、混合材料を基材の表面に塗布し、焼結して乱反射層を形成するステップとを備える。
【0015】
さらに、混合材料を基材の表面に塗布するステップにおいては、ナイフ塗布、スピン塗布又はスクリーン印刷で塗布を行う。
【0016】
さらに、混合材料を基材の表面に塗布し、焼結して乱反射層を形成するステップは、混合材料を基材の表面に塗布し、焼結して第一サブ乱反射層を形成するステップと、混合材料を第一サブ乱反射層の表面に塗布し、焼結して第二サブ乱反射層を形成するステップと、塗布と焼結を繰り返し、複数層のサブ乱反射層を形成し、さらに乱反射層を形成するステップとを備える。
【0017】
本発明の一つの態様によれば、波長変換装置が提供され、当該波長変換装置は、高熱伝導基板と、高熱伝導基板に設けられた蛍光層と、高熱伝導基板と蛍光層との間に位置する乱反射層とを備え、乱反射層は上記いずれか一つの乱反射層である。
【0018】
さらに、乱反射層の厚さは30〜100μmであり、乱反射層の反射率は90%より高い。
【0019】
本発明のもう一つの態様によれば、光源システムが提供され、当該光源システムは波長変換装置を備え、波長変換装置は上記の波長変換装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る乱反射材料、乱反射層、波長変換装置及び光源システムを応用する。白色度が90より大きい高反射散乱粒子、高屈折散乱粒子及び高熱伝導散乱粒子を原料とし、三者の共同作用で、すなわち、高屈折散乱粒子が主に発揮する反射層を薄くする作用と、高熱伝導散乱粒子が主に発揮する乱反射層の熱伝導性を増強する作用とを用いることにより、乱反射層の厚さを薄くすると共に、乱反射層の乱反射率を保持することに有利であり、波長変換装置の光効率と熱安定性の両立が実現され、波長変換装置の高出力レーザによる励起での発光の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本願の一部を構成する明細書と図面は、本発明に対するさらなる理解を提供するためのものであり、本発明の模式的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するためのものであり、本発明を不適当に限定するものではない。
【0022】
図1】本発明に係る一つの典型的な実施形態における波長変換装置の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
なお、矛盾がない限り、本願の実施例及び実施例における特徴は互いに組み合わせることができる。以下、図面を参照しながら、実施例に合わせて本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明において、用語「白色度」とは表面の白色の度合いを指し、白色含有量の百分率として表されるものであり、通常、酸化マグネシウムを標準白色度100とし、それを標準反射率100%と定めており、青色の光で酸化マグネシウム標準板の表面を照射する場合の反射率の百分率でサンプルの青色の光の白色度を表し、赤色、緑色、青色の三つのカラーフィルター又は三つの光源を用いて、三つの数値を測定し、その平均値は三色の光の白色度となり、主に光電白色度計により計測される。
【0025】
本発明において、用語「屈折率」とは光の真空での速度と光のこの材料での速度との比率を指し、最小偏角法により測定されたものである。
【0026】
本発明において、用語「反射率」とは入射される光線に対する物体の受光面の反射能力を指し、鉱物の反射力と称されており、硫酸バリウム乱反射白板を基準とし、積分球でサンプルの乱反射光パワーを比較テストして得られたものである。
【0027】
本発明において、「扁平状」はシート状、長尺状又は板状等のよく見られる形状を含む。
【0028】
背景技術に説明したように、従来技術において、波長変換装置の光効率と熱安定性を両立させることが困難である技術的課題が存在している。この問題を改善するために、本発明は乱反射材料を提供する。このような乱反射材料は白色散乱粒子と接着剤を含み、ここで、白色散乱粒子は白色度が85より大きく、且つ、白色散乱粒子は、白色度が90より大きい高反射散乱粒子と、屈折率が2.0以上である高屈折散乱粒子と、高熱伝導散乱粒子とを含み、高熱伝導散乱粒子は窒化ホウ素及び/又は窒化アルミニウム粒子であり、その粒子の顆粒の形状は棒状又は扁平状である。
【0029】
上記乱反射材料から製造された乱反射層は、実際の操作過程では、可視光光子が白色散乱粒子を通る時、一部の光が反射機能を有する反射粒子によりそのまま界面に反射し戻され、他の一部の光は、屈折機能を有する屈折粒子及び熱伝導機能を有する熱伝導粒子による作用で、引き続き前に散乱し屈折していく。一定の長さの光路を経て、最終的に複数回の屈折・反射をして界面に戻る。この光路の長さは屈折率に関係し、一般的には、媒体に対する屈折率が高いほど、光路が短く、光路が短いほど、吸収される確率が低下し反射率が高くなり、このため、同じ反射率を達成する場合、高い屈折率を有する屈折粒子を含む乱反射層は厚さが薄くなり、薄い乱反射層がその熱抵抗の低下、及び波長変換装置の高出力レーザによる励起での安定性の向上に有利である。本発明において、屈折率が2.0以上である高屈折散乱粒子を用いることが好ましい。好ましくは、上記高屈折散乱粒子は二酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化亜鉛のうちの1種又は複数種を含むが、それらに限定されるものではない。
【0030】
さらに、上記乱反射材料から製造された乱反射層では、可視光領域における長波長の赤色光光子の前方散乱能力が高いため、同様な場合において、その乱反射層における屈折・反射光学経路の光路長は緑色光光子や青色光光子よりも長く、このため、屈折率が比較的高い反射粒子を加えることは、赤色光光子に対する白色散乱粒子の反射率が低いという問題を軽減することに有利であり、さらに可視領域全体に対する乱反射層の反射率を向上させる。本発明において、白色度が90より大きい高反射散乱粒子を用いることが好ましい。好ましくは、上記の白色度が90より大きい高反射散乱粒子は酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及び硫酸バリウムのうちの1種又は複数種を含むが、それらに限定されない。上記粒子から製造された乱反射層の反射率が高く、90%より大きくすることができる。
【0031】
さらに、上記乱反射材料から製造された乱反射層では、熱伝導機能を有する熱伝導粒子が、主に乱反射層の熱伝導性を増強する作用を発揮する。熱伝導粒子が有する熱伝導性能がよいほど、光反射の過程において生成する熱の移転により有利である。本発明において、高熱伝導散乱粒子を用いることが好ましい。好ましくは、上記高熱伝導散乱粒子は窒化ホウ素及び/又は窒化アルミニウム粒子である。高熱伝導散乱粒子の顆粒の形状を棒状又は扁平状とすることにより、散乱粒子間の接触面積をさらに増大させ、熱伝導ネットワークを形成し、乱反射層の熱伝導率の向上に有利であり、上記乱反射層を有する波長変換装置の高出力レーザによる励起での発光の熱安定性を向上させることに有利である。
【0032】
また、上述した白色度が90より大きい高反射散乱粒子、高屈折散乱粒子及び高熱伝導散乱粒子の白色度をいずれも85以上にすることにより、可視領域の光子に対する散乱粒子の吸収率の低下に有利であり、これにより、上記材料から製造された乱反射層を備える波長変換装置の発光性能を最適化する。
【0033】
本発明に係る上記乱反射材料では、いずれも白色であり、且つ白色度が90より大きい高反射散乱粒子、高屈折散乱粒子及び高熱伝導散乱粒子の三者の共同作用で、高屈折機能を有する高屈折散乱粒子が主に発揮する反射層を薄くする作用と、高熱伝導機能を有する高熱伝導散乱粒子が主に発揮する乱反射層の熱伝導性を増強する作用を用いる。高熱伝導散乱粒子の顆粒の形状を棒状又は扁平状とすることにより、熱伝導ネットワークを形成し、乱反射層の熱伝導率を向上させ、これにより、波長変換装置の高出力レーザによる励起での発光の熱安定性を向上させることに有利である。さらに、乱反射層の厚さを薄くすると共に、乱反射層の乱反射率を保持することに有利であり、これにより、波長変換装置の光効率と熱安定性の両立が実現され、波長変換装置の高出力レーザによる励起での発光の安定性を向上させることができる。
【0034】
本発明に係る上記乱反射材料には、白色度が90より大きい高反射散乱粒子、高屈折散乱粒子及び高熱伝導散乱粒子を同時に含んでいれば、乱反射層の厚さを薄くすると共に、乱反射層の乱反射率を保持することができる。本発明の一つの好ましい実施形態において、上記散乱粒子は重量部として、白色度が90より大きい高反射散乱粒子0.08〜0.15部と、高屈折散乱粒子0.5〜0.7部と、高熱伝導散乱粒子0.3〜0.5部とを含む。好ましくは、上記乱反射材料では、白色散乱粒子と接着剤の重量比が0.88〜1.15:1である。上記配合比で上記散乱粒子を混合すれば、白色散乱粒子の反射、屈折及び熱伝導機能をよりうまく調和させることができ、これにより、波長変換装置の光効率と熱安定性をよりうまく両立させることができ、波長変換装置の高出力レーザによる励起での発光の安定性を向上させることができる。
【0035】
本発明に使用可能な接着剤は無機接着剤であり、ガラス粉、水ガラス又はガラス釉薬を含むことが好ましく、それらに限定されず、ホウケイ酸塩ガラスがより好ましい。上記材料を接着剤として用いると、耐熱性がよいという利点を有し、ホウケイ酸塩ガラスを接着剤として用いると、構造強度が高く、比較的熱伝導性能が比較的により良い。本発明の一つのより好ましい実施例において、上記接着剤はB2O3の質量百分率が10〜20%で、酸化ケイ素の質量百分率が70〜90%であるホウケイ酸塩ガラスであり、上記含有量範囲にあるホウケイ酸塩ガラスはより高い耐熱衝撃性を有する。
【0036】
本発明に係る上記乱反射材料では、好ましくは、上記高熱伝導散乱粒子は扁平状又は棒状のものである。扁平状又は棒状の熱伝導粒子は、その扁平方向での長さがその厚さ方向での長さよりもはるかに大きく、又はその長手方向での長さがその円周方向での直径の長さよりもはるかに大きいため、各熱伝導粒子間の接触面積を大きくし、散乱粒子間の接触面積の増加に有利であり、熱伝導ネットワークをよりうまく形成することができる。より好ましくは、高熱伝導散乱粒子が扁平状である場合、高熱伝導散乱粒子の扁平方向での長さが0.7〜7μmであり、厚さ方向での長さが0.02〜0.25μmであり、高熱伝導散乱粒子が棒状である場合、高熱伝導散乱粒子の長手方向での長さが0.7〜7μmであり、円周方向での直径の長さが0.02〜0.25μmである。本発明に用いられる上記高熱伝導散乱粒子の上記方向での長さは上記範囲に限られないが、上記高熱伝導散乱粒子の上記各方向での長さが上記範囲を超えると、高い熱伝導率を保持すると共に、薄い反射層を形成することが困難になる。上記高熱伝導散乱粒子をその形状に応じて上記範囲とすれば、塗布しやすい利点及び熱伝導率が高い利点を兼ね備えることができる。
【0037】
好ましくは、上述した白色度が90より大きい高反射散乱粒子と高屈折散乱粒子が球状である。球状の散乱粒子を選択的に用いると、ガラス粉の溶融状態での流動性の向上に有利であり、さらに、球状の散乱粒子は各方向における曲率半径が一致しているため、各方向でのガラス粉との焼結応力の大きさが近く、焼結後の接着強度を容易に向上させることができ、散乱粒子との焼結緻密性を向上させる。白色度が90より大きい高反射散乱粒子と高屈折散乱粒子の半径が0.2〜0.5μmであることが好ましい。この範囲にある白色散乱粒子は可視領域に対する反射率が最も高く、上記材料から製造された乱反射層を備える波長変換装置の発光性能を向上させることに有利である。
【0038】
より好ましくは、上記乱反射材料では、白色度が90より大きい高反射散乱粒子と高屈折散乱粒子は球状であり、高熱伝導散乱粒子はシート状であり、球状の粒子とシート状の粒子の質量比は2.25:1以下である。球状の粒子とシート状の粒子の比を制御することにより、両者の使用量を調整し、より優れた放熱効果を得ることに有利である。さらに好ましくは、上記乱反射材料では、白色度が90より大きい高反射散乱粒子は酸化アルミニウムであり、高屈折散乱粒子は二酸化チタンであり、高熱伝導散乱粒子は窒化ホウ素である。ここで、二酸化チタンは高い屈折率を有し、散乱や屈折光学経路の光路長を短縮し、吸収を低減できるため、薄い厚さで高い反射率を実現することができ、薄い厚さにより熱抵抗をさらに低下させる。このため、シート状の窒化ホウ素、球状の酸化アルミニウム及び二酸化チタンによる複合乱反射層は、薄い厚さで高い反射率と低い熱抵抗を実現することができ、波長変換装置全体の高出力密度レーザによる励起での発光の光効率と安定性の向上に有利である。
【0039】
なお、本発明は、上記乱反射材料から製造された乱反射層をさらに提供する。このような乱反射層は上記乱反射材料から製造されたため、厚さが30〜100μmより低い場合でも、このような乱反射層の反射率を90%より高くすることができる。
【0040】
上記乱反射層は従来のプロセスにより製造さればよく、本発明の一つの好ましい実施形態において、上記乱反射層の製造方法は、白色度が90より大きい高反射散乱粒子、高屈折散乱粒子、高熱伝導散乱粒子及び接着剤を有機担体と混合して混合材料を形成するステップと、混合材料を基材の表面に塗布し、焼結して乱反射層を形成するステップとを備える。好ましくは、上記塗布のステップにナイフ塗布、スピン塗布又はスクリーン印刷の方式を採用し、ここで、ナイフ塗布の方式を採用することが好ましい。ナイフ塗布の方式は、シート状の散乱粒子の配向度を向上させることに有利であり、これにより、粒子間の接触面積を向上させ、さらに熱伝導率を向上させる。好ましくは、本発明における上記焼結ステップでは、500−1000℃で焼結すれば、乱反射層を形成することができる。
【0041】
本発明に使用可能な有機担体は、フェニル基シリコーンオイル,メチルシリコーンオイル等の各系のシリコーンオイル、エタノール、エチレングリコール、キシレン、エチルセルロース、クエン酸アセチルトリブチル、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、PVA、PVB、PAA、PEGのうちの一つの又は複数の混合物を含むが、それらに限定されない。本発明においては、シリコーンオイル又はエチルセルロース+テルピネオール+ブチルカルビトールアセテートの混合液が好ましく、このような有機担体は360−420℃で完全に分解除去することができ、これにより、その乱反射層に対する影響を低減させる。有機担体の量については、組成に応じて適当な粘度を得られるように設定してもよく、あるいは、製造プロセスに応じて適宜調整してもよい。ナイフ塗布、スピン塗布又はスクリーン印刷プロセスについて、粘度に対する要求が異なっており、ナイフ塗布としては、有機担体の質量分率の範囲が30〜70%である。
【0042】
より好ましくは、上述した混合材料を基材の表面に塗布し、焼結して前記乱反射層を形成するステップは、混合材料を基材の表面に塗布し、焼結して第一サブ乱反射層を形成するステップと、混合材料を第一サブ乱反射層に塗布し、焼結して第二サブ乱反射層を形成するステップと、塗布と焼結のステップを繰り返し、複数層のサブ乱反射層を形成し、さらに前記乱反射層を形成するステップとを備える。このような複数層を塗布焼結する方式は、棒状又は扁平状の散乱粒子の配向度を向上させ、その熱伝導率を向上させることに有利である。
【0043】
なお、本発明は波長変換装置をさらに提供する。図1に示すように、このような波長変換装置は、高熱伝導基板1と、高熱伝導基板1に設けられ、暗面S1と感光面S2とを備える蛍光層3と、高熱伝導基板1と蛍光層3との間に位置し、上記乱反射材料から製造された乱反射層2とを備える。上記乱反射材料から乱反射層2を製造し、上記乱反射層を用いることにより、薄い厚さで高い乱反射率を保持することができ、波長変換装置の光効率と熱安定性を両立させることができ、波長変換装置の高出力レーザによる励起での発光の安定性を向上させることができる。より好ましくは、上記波長変換装置における乱反射層2は厚さが30〜100μmであり、且つその乱反射層の反射率が90%より高い。
【0044】
また、本発明は、上記波長変換装置を備える光源システムをさらに提供する。上記波長変換装置を用いることにより、光源システムの発光の安定性を向上させることができる。実際の応用において、投影システムには、上記光源システムを用いることができ、これにより、投影システムの発光の安定性、特に高出力レーザによる励起での発光の安定性を増強させることができる。
【0045】
以下、実施例及び比較例に合わせて本発明による有益な効果をさらに説明する。
【0046】
一.以下の各実施例に使用される原料の選択
【0047】
酸化アルミニウム:白色度98、上海超微納米科技有限公司から購入
【0048】
硫酸バリウム:白色度98、佛山市安億納米材料有限公司から購入
【0049】
酸化マグネシウム:白色度98、上海超微納米科技有限公司から購入
【0050】
酸化カルシウム:白色度92、建徳市奥邦カルシウム製品有限公司
【0051】
二酸化チタン:ルチル型、屈折率2.7、上海超微納米科技有限公司から購入
【0052】
酸化ジルコニウム:屈折率2.1、上海超微納米科技有限公司から購入
【0053】
酸化亜鉛:屈折率2.0、上海超微納米科技有限公司から購入
【0054】
酸化ランタン、屈折率2.01、カン州科明鋭有色金属材料有限公司
【0055】
窒化ホウ素:上海超微納米科技有限公司から購入
【0056】
窒化アルミニウム:上海超微納米科技有限公司から購入
【0057】
上記原料の白色度はいずれも85より大きい。
【0058】
接着剤はB2O3の含有量が10〜20%で、酸化ケイ素の含有量が70〜90%であるホウケイ酸塩ガラスである。このホウケイ酸塩ガラスはドイツのショットグループから購入されるものである。
【0059】
基材:窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム。
【0060】
二.実施例及びデータ
【0061】
(1)実施例1乃至5及び比較例1
【0062】
<実施例1>
【0063】
原料:酸化アルミニウム(球状、粒径0.2μm)0.1g、酸化チタン(球状、粒径0.2μm)0.6g、窒化ホウ素(扁平状、扁平方向での長さ0.7μm、厚さ方向での長さ0.02μm)0.4g、ガラス粉1g。
【0064】
製造方法:酸化アルミニウム、二酸化チタン、窒化ホウ素及びガラス粉を1gの有機担体(有機担体がテルピネオール、ブチルカルビトールアセテト、エチルセルロースである)と混合して混合材料を形成し、混合材料を窒化アルミニウム基材の表面にナイフ塗布し、800℃で焼結し、ナイフ塗布と焼結を繰り返し、厚さ30μmの乱反射層を形成し、この乱反射層の反射率が92.4%であると測定した。
【0065】
<実施例2>
【0066】
原料:酸化マグネシウム(球状、粒径0.3μm)0.08g、酸化ジルコニウム(球状、粒径0.3μm)0.7g、窒化アルミニウム(棒状、長手方向での長さ1.0μm、円周方向での直径の長さ0.02μm)0.3g、ガラス粉1g。
【0067】
製造方法:上記酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム及びガラス粉を1gの有機担体(有機担体がPVAの水溶液である)と混合して混合材料を形成し、混合材料を窒化ケイ素基材の表面にナイフ塗布し、600℃で焼結し、ナイフ塗布と焼結を繰り返し、厚さ30μmの乱反射層を形成し、この乱反射層の反射率が90.8%であると測定した。
【0068】
<実施例3>
【0069】
原料:硫酸バリウム(球状、粒径0.5μm)0.08g、酸化亜鉛(球状、粒径0.5μm)0.5g、窒化アルミニウム(扁平状、扁平方向での長さ2.5μm、厚さ方向での長さ0.1μm)0.3g、ガラス粉1g。
【0070】
製造方法:上記硫酸バリウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム及びガラス粉を2.5gの有機担体(有機担体がエチルセルロースをテルピネオールとクエン酸アセチルトリブチルの混合溶媒に溶解し、形成されたものである)と混合して混合材料を形成し、混合材料を窒化ホウ素基材の表面にナイフ塗布し、1000℃で焼結し、ナイフ塗布と焼結を繰り返し、厚さ30μmの乱反射層を形成し、この乱反射層の反射率が91.3%であると測定した。
【0071】
<実施例4>
【0072】
原料:酸化アルミニウム(球状、粒径0.4μm)0.15g、酸化チタン(球状、粒径0.5μm)0.6g、窒化ホウ素(扁平状、扁平方向での長さ7μm、厚さ方向での長さ0.25μm)0.3g、ガラス粉1g。
【0073】
製造方法:上記酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化ホウ素及びガラス粉を5.4gの有機担体(有機担体がPVBをエタノールとエチレングリコールの混合溶媒に溶解し、形成されたものである)と混合して混合材料を形成し、混合材料を炭化ケイ素基材の表面にナイフ塗布し、900℃で焼結し、ナイフ塗布と焼結を繰り返し、厚さ30μmの乱反射層を形成し、この乱反射層の反射率が92.6%であると測定した。
【0074】
<実施例5>
【0075】
原料:酸化マグネシウム(球状、粒径0.6μm)0.15g、酸化チタン(球状、粒径0.2μm)0.5g、窒化アルミニウム(棒状、長手方向での長さ0.7μm、円周方向での直径の長さ0.05μm)0.45g、ガラス粉1g。
【0076】
製造方法:上記酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素及びガラス粉を5.8gの有機担体(有機担体がPVAの水溶液である)と混合して混合材料を形成し、混合材料を酸化ベリリウム基材の表面にナイフ塗布し、500℃で焼結し、ナイフ塗布と焼結を繰り返し、厚さ30μmの乱反射層を形成し、この乱反射層の反射率が91.6%であると測定した。
【0077】
<実施例1’>
【0078】
原料:酸化カルシウム(球状、粒径0.5μm)0.1g、酸化ランタン(球状、粒径0.2μm)0.6g、窒化ホウ素(棒状、長手方向での長さ7μm、円周方向での直径の長さ0.25μm)0.4g、ガラス粉1g。
【0079】
製造方法:酸化カルシウム、酸化ランタン、窒化ホウ素及びガラス粉を1gの有機担体(有機担体がテルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルセルロースである)と混合して混合材料を形成し、混合材料を窒化アルミニウム基材の表面にナイフ塗布し、800℃で焼結し、ナイフ塗布と焼結を繰り返し、厚さ30μmの乱反射層を形成し、この乱反射層の反射率が90.2%であると測定した。
【0080】
比較例1
【0081】
原料:酸化アルミニウム(球状、粒径0.25μm)0.2g、二酸化チタン(球状、粒径0.2μm)1.0g、ガラス粉1g。
【0082】
製造方法:酸化アルミニウム、二酸化チタン及びガラス粉を1gの有機担体(有機担体がテルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルセルロースである)と混合して混合材料を形成し、混合材料を窒化アルミニウム基材の表面にナイフ塗布し、800℃で焼結し、ナイフ塗布と焼結を繰り返し、厚さ30μmの乱反射層を形成し、この乱反射層の反射率が92.9%であると測定した。
【0083】
上記実施例1〜5、実施例1’及び比較例から分かるように、比較例に係る2種の散乱粒子から製造された乱反射層の反射率に比べ、本発明に係る白色度が90より大きい高反射散乱粒子、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム又は酸化カルシウムと、高屈折率粒子、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛又は酸化ランタンと、高熱伝導粒子、例えば、窒化ホウ素や窒化アルミニウム粒子とを原料として製造された乱反射層の反射率は顕著に変化せず、いずれも比較的高いものである。これにより分かるように、酸化アルミニウム(酸化マグネシウム又は硫酸バリウム)と酸化チタン(酸化ジルコニウム又は酸化亜鉛)粒子の共同作用で、製造された乱反射層が低い厚さでも高い反射率を実現できるようにする。一方、酸化カルシウムを反射粒子として用いて、酸化ランタンを高屈折粒子として用いて、窒化ホウ素と組み合わせて形成された乱反射層の反射率は比較的低いものであるが、反射率が90%以上にも達することができる。
【0084】
さらに、発明者は実施例1−5、1’及び比較例1に製造された乱反射層により波長変換装置を製造し、また、製造された波長変換装置における乱反射層と発光層が同じ厚さである場合に、波長変換装置の発光光束がレーザ電流に従って変化する状況を測定した。
【0085】
測定方法:上記実施例において製造された波長変換装置をレーザ光源によるライトスポットの位置に固定し、積分球で出射光を収集し、光ファイバ分光器で発射スペクトルを測定する。
【0086】
波長変換装置の光束については、光ファイバ分光器で測定したスペクトルをソフトウェアにより記録し、そして、その光束を計算する。
【0087】
ここで、一定の出力の青色の光のレーザ光で波長変換装置を励起させた光束により、その光効率性能を評価し、サンプルの光束が青色の光の出力の増加に従って変化する線形性を測定することにより、その熱安定性の性能を評価する。
【0088】
測定結果は表1に示されている。
表1には、異なる乱反射層による発光光束がレーザ電流に従って変化する状況が示されている。
【0089】
【表1】
【0090】
上記表1のデータにより分かるように、実施例1−5と1’において、本発明に係る原料から製造された乱反射層により形成された波長変換装置を用いており、レーザ駆動電流が0.12−1.2Aの範囲にあると、駆動電流の増加に従って、波長変換装置の光束が徐々に増加し、且つ各実施例において、増加の幅がいずれも大きい。なお、駆動電流が1.08Aより高くなると、実施例1〜5において、光束が依然として増加する傾向にある一方で、実施例1’と比較例1において、光束が減少し始め、但し、実施例1’における低下の幅が比較的小さいものである。駆動電流が1.2Aより高くなると、実施例1’と比較例1において、光束がひどく減衰したが、実施例1〜5において、依然として高い光束を保持することができる。これにより分かるように、高熱伝導窒化ホウ素/窒化アルミニウム粒子が乱反射層に対し、強い熱伝導作用を発揮し、これにより、波長変換装置の臨界駆動レーザ電流を大きくし、輝度の向上に寄与することができる。このため、本発明に係る乱反射材料における各成分の共同作用で、製造された乱反射層が高い反射率を有するようにするだけでなく、熱安定性の面でも予測できない技術的効果を奏し、1.3Aの高い駆動電流強度では、発光装置の輝度がさらに向上することが可能である。
【0091】
(2)実施例6−34
【0092】
窒化ホウ素(シート状)、二酸化チタン(球状)及び酸化アルミニウム(球状)を原料として乱反射層を製造し、各原料の使用量と粒径及び乱反射層の厚さを変更することにより、乱反射層の反射率と粉体の接着状況との関係を分析する。
【0093】
原料の粒径の範囲と部数は表2に示されている。
【0094】
製造方法:窒化ホウ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム及びガラス粉を0.5〜5.4gの有機担体(有機担体がエチルセルロースをテルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート及びクエン酸アセチルトリブチルの混合溶媒に溶解したものである)と混合して混合材料を形成し、混合材料をセラミックス基材の表面にナイフ塗布し、800℃で焼結して乱反射層を形成する。
【0095】
各実施例に係る乱反射層の性能について、以下の測定1を行い、測定1の結果が表2に示されている。
【0096】
粉体の接着性能:粘着テープを乱反射層に粘着し、そして、剥離し、粘着テープに粉体が残っているか否かを観察することにより、粉体の接着性能を判断する。ここで、「接着がよい」とは粘着テープに粉末が残っていないことを指し、「接着がよくない」とは粘着テープに粉末が残っていることを指す。
【0097】
反射率:硫酸バリウム乱反射白板を基準とし、積分球でサンプルの乱反射光パワーを比較テストする。
【0098】
表2は以下の通りである。
【0099】
【表2】
【0100】
表2により分かるように、実施例6乃至14は実施例15乃至34の比較例とされており、単一の原料、即ち、窒化ホウ素又は2種の原料、即ち、窒化ホウ素と酸化アルミニウムから製造された乱反射層は反射率が比較的に低く、90%より低いものである一方で、本発明に係る上記3種の原料から製造された乱反射層は同じ厚さでの反射率がいずれも90%より高いものである。
【0101】
具体的には、実施例6−9のデータにより分かるように、窒化ホウ素(シート状方向での長さ5〜7μm)の添加量が0.25部から0.4部まで増加すると、その反射率が76%から87%に向上したが、その粒子形状がシート状であるため、そのガラス粉末への添加量を高くしすぎてはいけず、さらに分かるように、窒化ホウ素(5〜7μm)の添加量が0.25部から0.3に、ひいては0.4部に増加すると、その基板での接着性能がますます低くなり、窒化ホウ素の含有量をさらに増加させると、窒化ホウ素(シート状方向での長さ5〜7μm)の粉末脱落現象が発生してしまう。例えば、実施例9のように、小粒径の窒化ホウ素(シート状方向での長さ0.7μm)についても同様であり、これは、シート状の粒子はクランピングピースブリッジング構造を形成しやすく、互いに支持され、材料の収縮を妨害しているためである。このため、本発明の上記実施例において、窒化ホウ素を特定の含有量範囲内にコントロールすることにより、シート状の散乱粒子がガラスと緻密構造を形成しにくい欠陥及び長手方向と厚さ方向での焼結応力の不一致による焼結後の低い接着強度の欠陥を回避することができる。
【0102】
さらに、表2における実施例6−14により分かるように、単一の原料又は2種の原料のみを用いる場合、窒化ホウ素とガラス粉を焼結して形成された乱反射層、及び、窒化ホウ素と酸化アルミニウムの混合粒子とガラス粉を焼結して形成された乱反射層の反射率は、厚さに強く依存しており、つまり、厚さが薄い場合、反射率が低く、例えば、厚さが52μmより低い場合、反射率が90%未満である。本発明に係る原料を用いた実施例15〜34では、二酸化チタンを加えると、二酸化チタンと酸化アルミニウム及び窒化ホウ素との共同作用により、製造された乱反射層の反射率が厚さに対する依存性を顕著に低下させ、厚さが90μmから30μmに薄くなると、反射率が顕著に低下せず、また、厚さが薄くなり、50μmより小さい場合ても、反射率が90%より高いという予測できない効果を奏することができる。
【0103】
さらに、小粒径の球状の酸化アルミニウム粒子又は二酸化チタンを加えることにより、シート状の窒化ホウ素粒子のガラス粉における接着性能を改善することができ、実施例8に示されるような単一の窒化ホウ素0.4部で、良好な接着を実現することができず、実施例14において、窒化ホウ素0.4質量部と酸化アルミニウム0.2質量部とから形成された乱反射層も接着性がよくなく、実施例20と21において、0.7重量部より大きい二酸化チタンを用いても、接着性能も比較的に良くない。実施例15乃至18、22、25、28及び実施例31により分かるように、窒化ホウ素粉0.4〜0.5質量部に酸化アルミニウム0.1〜0.15部と二酸化チタン粉0.5〜0.6部を加えると、セラミックス基板との良好な接着を実現でき、即ち、接着安定性を有するだけでなく、高い反射率をも実現できるとともに、反射率が厚さに対する依存性も低下し、薄い厚さでも高い反射率を保持することを実現することが可能である。
【0104】
さらに、表2における実施例11〜14と8のデータを比較することにより分かるように、窒化ホウ素に少量の酸化アルミニウムを加えると、その反射率が顕著に向上し、酸化アルミニウムの高反射粒子としての作用が反映されている。さらに、表2における実施例6〜14と実施例15〜34のデータを比較することにより分かるように、球状の酸化アルミニウムと球状の二酸化チタンを加えると、窒化ホウ素の接着性能を改善することができ、これは主に小粒径の球状の酸化アルミニウムと二酸化チタンがガラス粉の溶融状態での流動性を改善でき、その接着性能を改善できるためであり、これにより、それらから製造された波長変換装置が高い熱安定性を有するようにする。
【0105】
<測定2>
【0106】
比較例1と実施例16、21、20、25及び34を例として、波長変換装置を製作する。乱反射層(厚さ30〜40μm)と発光層が同じ厚さである場合、波長変換装置の発光光束がレーザ電流に従って変化する状況を測定し、波長変換装置の光束の測定結果が表3に示されている。
【0107】
表3におけるデータにより分かるように、波長変換装置における乱反射層(厚さ30〜40μm)と発光層を同じ厚さにする場合、酸化アルミニウムと二酸化チタンに窒化ホウ素を加えると、製作された波長変換装置の高出力レーザによる励起での発光強度が顕著に増強した。これにより分かるように、窒化ホウ素原料を加えることにより、三者間に共同作用が生成し、これにより、製造された乱反射層の熱伝導率を顕著に増強させ、波長変換装置の高出力レーザによる励起での発光強度を増強させる。
【0108】
表3には、異なる乱反射層による発光光束がレーザ電流に従って変化する状況が示されている。
【0109】
【表3】
【0110】
さらに、表2と表3におけるデータに合わせて、実施例12と14、19と20、33と34を比較することにより分かるように、酸化アルミニウム含有量の向上が反射率の向上に有利であるが、高すぎる酸化アルミニウムの含有量、例えば、酸化アルミニウムの含有量が0.2になると、その乱反射層の焼結緻密性が劣るようになる。表3の実施例20と34に示されるように、レーザ電流の上昇に伴い、光束1.2Aでは減衰がひどくなり、これは、ガラスネットワークの中間体としての酸化アルミニウムが、ガラス粉の焼結過程において、ガラスの高温溶融状態での粘度を増加させ、緻密な焼結の実現に不利であるためである。従って、窒化ホウ素と酸化チタンが存在する場合、酸化アルミニウムの含有量が0.15部を超えてはいけず、また、実施例16、19、20、21を比較することにより分かるように、酸化チタンの含有量の向上が高反射率乱反射層の厚さの低下に有利であり、焼結緻密性の向上にも有利であるが、酸化チタンの含有量が高すぎると、乱反射粒子の含有量が高くなりすぎ、焼結にも不利であるため、ガラス粉の質量部に対して酸化チタンの質量部が0.7を超え、例えば、表3における実施例21に示されるように、0.8部になる場合、レーザ電流が上昇することに伴い、駆動電流が1.2Aになると、光束がひどく減衰してしまう、また、乱反射粒子と接着剤の重量比が1.15:1を超えてはいけない。
【0111】
上記データにより分かるように、本発明は、従来の波長変換装置の乱反射層が厚いため、熱伝導率が低く、その高出力密度レーザによる励起での発光の安定性に影響を与える問題に対して、シート状の窒化ホウ素散乱粒子を添加し、シート状の窒化ホウ素散乱粒子が高い熱伝導率を有し、且つ、シート状の構造が粒子同士を重ね接続させて熱伝導ネットワークを形成することに有利であるため、乱反射層全体の熱伝導率を向上させることができ、また、シート状の散乱粒子とガラス粉を緻密に焼結しにくいという問題に対して、球状の散乱粒子を選択的に用いることが、ガラス粉の溶融状態での流動性の向上に有利であり、さらに、球状の散乱粒子の各方向における曲率半径が一致するため、各方向でのガラス粉との焼結応力の大きさが近く、焼結後の接着強度を容易に向上させ、これにより、散乱粒子との焼結緻密性を向上させることができる。さらに、ガラス粉の高温焼結での流動性への影響が小さい球状散乱粒子である二酸化チタンを使用することが好ましく、球状の散乱粒子とシート状の散乱粒子の質量比が2.25:1以下であり、それが高すぎると、優れた放熱効果を奏することができない。さらに、高屈折率散乱粒子である二酸化チタンを選択的に用いると、散乱や屈折光学経路の光路長を短縮し、吸収を低減させることができる。このため、薄い厚さで高い反射率を実現することができ、薄い厚さにより、熱抵抗をさらに低下させることができる。このため、シート状の窒化ホウ素と球状の酸化アルミニウム及び二酸化チタンとによる複合乱反射層は、薄い厚さで高い反射率と低い熱抵抗を実現することができ、波長変換装置全体の高出力密度レーザによる励起での発光の安定性の向上に有利である。
【0112】
上記説明は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するためのものではなく、当業者にとっては、本発明について様々な変更や変形を行うことが可能である。本発明の精神と原則の範囲においてなされたあらゆる変更、等価取替、改良等は、本発明の保護範囲に含まれる。
図1