特許第6553199号(P6553199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553199
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20190722BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20190722BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   C08L23/04
   C08L23/10
   C08K5/01
【請求項の数】7
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2017-542164(P2017-542164)
(86)(22)【出願日】2015年3月9日
(65)【公表番号】特表2018-505284(P2018-505284A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】US2015019417
(87)【国際公開番号】WO2015138305
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2017年10月4日
(31)【優先権主張番号】62/114,221
(32)【優先日】2015年2月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン、ジョセフ・ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】トレノア、スコット・アール.
(72)【発明者】
【氏名】ダッタ、スチトラ
(72)【発明者】
【氏名】ソブチャク、アダム・ジェイ
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭46−005083(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02582004(FR,A1)
【文献】 米国特許第03376304(US,A)
【文献】 特開昭47−029439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L23
C08L101
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相であって、コモノマーはエチレンおよびC4〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択されるプロピレンポリマー相;
(b)エチレンホモポリマーおよびエチレンと1種以上のC3〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相;ならびに
(c)(V)または(X)の構造に従う化合物からなる群から選択される相溶化剤、
を含む異相ポリマー組成物。
【化1】
(ここでR、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基、および置換ヒドロカルビル基からなる群から選択され、ただし隣接するヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基は結合して該部分の環と融合した第2の環を形成してもよく;ただしR、R、RおよびRの少なくとも1つは水素であり;R、R、RおよびRは独立にハロゲンからなる群から選択され、11とR12は個々の置換基であって、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アミン基、置換アミン基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択され、または、R11とR12は共に、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択される単一の置換基を形成する。)
【請求項2】
、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択される、請求項1に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項3】
、R、RおよびRの少なくとも2つは水素である、請求項1に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項4】
相溶化剤が組成物中に、プロピレンポリマー相、エチレンポリマー相および相溶化剤の重量に基づいて約100ppm以上の量で存在する、請求項1に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項5】
、R、RおよびRはそれぞれ水素である、請求項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項6】
11およびR12はそれぞれフェニル基;
11およびR12はそれぞれ4−クロロフェニル基;
11およびR12はそれぞれ4−フルオロフェニル基;
11はメチル基であり、R12はフェニル;
11は水素であり、R12は2−チエニル基;
11は水素であり、R12は3−チエニル基;
11はメチル基であり、R12は2−フリル基;
11は水素であり、R12はジメチルアミノ基;
11とR12はそれぞれC〜Cアルキル基;または
11は水素であり、R12は2−フェニルエテニル基である、請求項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項7】
11およびR12はそれぞれフェニル基である、請求項に記載の異相ポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、フルベン部分またはフルベン由来部分を含む相溶化剤を含む、熱可塑性ポリマー組成物に関する。一連の態様において本発明は、増加した溶融強度を有する熱可塑性ポリマー組成物(例えばポリプロピレンポリマー組成物)を提供する。他の一連の態様において本発明は、増加したメルトフローレート(melt flow rate)のみならず、高い衝撃強度を有する異相性ポリオレフィン組成物を提供する。特に興味深いのは、改変されたポリプロピレンインパクトコポリマーである。
【背景】
【0002】
[0002] ポリマー樹脂のメルトフローレート(MFR)は、その分子量の関数である。一般的にメルトフローレートが増加すると、樹脂を低温で加工して、複雑な部分形状に充填することが許容される。メルトフローレートを増加させる種々の先行技術の方法は、過酸化物などのフリーラジカルの生成を可能とする化合物と共に押出し成形機中で樹脂を溶融混合することを含む。ポリマーの重量平均分子量は低下し、MFRは増加する。ポリオレフィンポリマーの分子量を減少させることによりメルトフローレートを増加させることは、しかしながら、多くの場合に改変されたポリマーの強度に有害な影響をもたらすことが見出された。例えばポリマーの分子量を低減させることは、そのポリマーの衝撃耐性を顕著に低下させることがある。そしてこの衝撃耐性の低下は、いくつかの適用または最終使用者にとって、そのポリマーの使用を不適切とすることがある。従って現存している技術が使用されたときに、メルトフローレートの増加とポリマーの望ましくない衝撃耐性の低下の間の妥協を打ち破らなければならない。この妥協はしばしば、望みのレベルまでメルトフローレートが増加しないことを意味し、より高い加工温度を必要とし、および/または、スループットが低下する結果となる。よってポリマーの衝撃耐性を保ち、または改善すら行いながら、増加したメルトフローレートを有するポリマー組成物を製造できる添加剤と製法の需要が未だにある。
【0003】
[0003] 他の重要なポリマー樹脂の物理的性質は、その溶融強度である。溶融強度は一般的に伸長に対するポリマー溶融の耐性として述べられる。ポリマーの溶融強度はある程度全ての押出し加工に影響するので重要である。例えばシートの押出しにおいて、ポリマーの溶融強度は、シートがダイからロールに移動するにつれて消耗とたわみに影響する。フィルムの吹き込み工程において、ポリマーの溶融強度は泡の安定性に影響し、如何にフィルムを延伸できるかを決定する。ブロー成形の工程において、ポリマーの溶融強度はパリゾンたわみに影響し、それは完成品における壁厚さを制御するために説明されなければならない。ポリマーの分子量分布や分子分岐など、ポリマーの溶融強度に影響するかもしれない多くの要因がある。これらの要因はポリマー毎に変化するから、溶融強度はポリマーの等級に亘って大きく変わることがある。従って押出し工程で特定のポリマーの使用を探究する者は、使用される特定のポリマーに特異な溶融強度を説明するために、しばしばかなりの量の資源を費やして特定の押出しプロセスに適応させる(例えば工程条件を変化させる、あるいは設備を改変または変える)。押出し工程におけるポリマーの溶融強度の重要性を考えると産業界には、既存のポリマーの溶融強度を改変(例えば増強)することができる添加物とプロセスに対する需要がある。特定のプロセス設計に適するように、そのような添加物を使用してポリマーの溶融強度を変えることが可能であり、それは特定のポリマーの溶融強度に適するためにプロセス設計を変える現在の実務とは対照的である。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 本発明は一般的に、熱可塑性ポリマーと、少なくとも1つのフルベン部分またはフルベン由来部分を含む相溶化剤を含んでいる熱可塑性ポリマ−組成物を提供する。一態様において本発明は、プロピレンポリマー相とエチレンポリマー相を含む、異相ポリマー組成物を提供する。組成物には相溶化剤も添加される。組成物へ相溶化剤を添加することにより、フリーラジカル発生剤の使用によりポリマー組成物のメルトフローレートが増加した時に、ポリマー組成物の衝撃耐性の維持、または改善さえも観察された。
【0005】
[0005] 第1の態様において本発明は、
(a)熱可塑性ポリマー;および
(b)熱可塑性ポリマーと相溶化剤の重量に基づいて約50ppm以上の相溶化剤、を含む熱可塑性ポリマ−組成物を提供し、相溶化剤は式(I)の構造に従う部分を含む化合物、式(III)の構造に従う部分を含む化合物、および式(V)の構造に従う部分を含む化合物からなる群から選択される。
【0006】
【化1】
【0007】
(ここでR、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基、および置換されたヒドロカルビル基からなる群から選択され、ただし隣接するヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基は結合して該部分の環と融合した第2の環を形成してもよく;ただしR、R、RおよびRの少なくとも1つは水素であり;R、R、RおよびRは独立にハロゲンからなる群から選択される。)
[0006] 第2の態様において本発明は、
(a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相であって、コモノマーはエチレンおよびC4〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択されるプロピレンポリマー相;
(b)エチレンホモポリマーおよびエチレンと1種以上のC3〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相;ならびに
(c)式(I)の構造に従う部分を含む化合物、式(III)の構造に従う部分を含む化合物、および式(V)の構造に従う部分を含む化合物からなる群から選択される相溶化剤、を含む異相ポリマー組成物を提供する。
【0008】
【化2】
【0009】
(ここでR、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基、および置換ヒドロカルビル基からなる群から選択され、ただし隣接するヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基は結合して該部分の環と融合した第2の環を形成してもよく;ただしR、R、RおよびRの少なくとも1つは水素であり;R、R、RおよびRは独立にハロゲンからなる群から選択される。)
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0007] 図1は、例1由来のサンプル1Aと1B並びにC.S1AとC.S1Bのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)曲線を示す。
【0011】
図2】[0008] 図2は、例4で述べられたサンプル4A、C.S4AとC.S4Bの、周波数(rad/s)に対してプロットされた損失角δ(度)を示す。
【0012】
図3】[0009] 図3は、例4で述べられたサンプル4A、C.S4AとC.S4Bの、0.1S-1のHencky伸張速度における伸長応力成長関数を示す。
【0013】
図4】[0010] 図4は、例4で述べられたサンプル4Aの、0.1S-1、0.1S-1、および1.0S-1のHencky伸張速度における歪み硬化を示す。
【発明の詳細な説明】
【0014】
[0011] 下記の定義を、本明細書中で使用される幾つか文言を定義をするために提供する。
【0015】
[0012] 本明細書において用語「ヒドロカルビル基」とは、炭化水素の炭素原子から水素原子を除去することにより、炭化水素から得られる一価官能基をいう。
【0016】
[0013] 本明細書において用語「置換ヒドロカルビル基」とは、置換炭化水素の炭素原子から水素原子を除去することにより、置換炭化水素から得られる一価の官能基をいう。本定義において用語「置換炭化水素」とは、非環式、単環式、および多環式の、分岐していない、および分岐した炭化水素から得られる化合物であって、(1)その炭化水素の1以上の水素原子が非水素原子(例えばハロゲン原子)または非ヒドロカルビル官能基(例えば水酸基またはヘテロアリ−ル基)により置き換えられているもの、および/または、(2)その炭化水素の炭素−炭素鎖に(例えばエ−テルにあるように)酸素原子、(例えばアミンにあるように)窒素原子、または(例えば硫化物にあるように)硫黄原子が割り込んでいるものをいう。
【0017】
[0014] 本明細書において用語「置換アルキル基」とは、アルカンの炭素原子から水素原子を除去することにより、置換アルカンから得られる一価の官能基をいう。本定義において用語「置換アルカン」とは、非環式の、分岐していない、および分岐した炭化水素から得られる化合物であって、(1)その炭化水素の1以上の水素原子が、非水素原子(例えばハロゲン原子)または非アルキル官能基(例えば水酸基、アリール基、またはヘテロアリ−ル基)により置き換えられているもの、および/または、(2)その炭化水素の炭素−炭素鎖に(例えばエ−テルにあるように)酸素原子、(例えばアミンにあるように)窒素原子、または(例えば硫化物にあるように)硫黄原子が割り込んでいるものをいう。
【0018】
[0015] 本明細書において用語「置換シクロアルキル基」とは、置換シクロアルカンから得られる一価の官能基であって、そのシクロアルカンの炭素原子から水素原子を除去することにより得られるものをいう。本定義において用語「置換シクロアルカン」とは、飽和単環式および多環式炭化水素(側鎖を有するか、あるいは有さない)から得られる化合物であって、(1)その炭化水素の1以上の水素原子が非水素原子(例えばハロゲン原子)または非アルキル官能基(例えば水酸基、アリール基、またはヘテロアリ−ル基)により置き換えられているもの、および/または、(2)その炭化水素の炭素−炭素鎖に酸素原子、窒素原子、または硫黄原子が割り込んでいるものをいう。
【0019】
[0016] 本明細書において用語「アルケニル基」とは、非環式の、分岐していない、および分岐したオレフィン(すなわち1以上の炭素−炭素二重結合を有している炭化水素)から、そのオレフィンの炭素原子から水素原子を除去することにより得られる一価の官能基をいう。
【0020】
[0017] 本明細書において用語「置換アルケニル基」とは、非環式の、置換オレフィンから、そのオレフィンの炭素原子から水素原子を除去することにより得られる一価の官能基をいう。本定義において用語「置換オレフィン」とは、1以上の炭素−炭素二重結合を有する、非環式の、分岐していない、および分岐した炭化水素から得られる化合物であって、(1)その炭化水素の1以上の水素原子が非水素原子(例えばハロゲン原子)または非アルキル官能基(例えば水酸基、アリール基、またはヘテロアリ−ル基)により置き換えられているもの、および/または、(2)その炭化水素の炭素−炭素鎖に(エ−テルにあるように)酸素原子、または(硫化物にあるように)硫黄原子が割り込んでいるものをいう。
【0021】
[0018] 本明細書において用語「置換アリール基」とは、環炭素原子から水素原子を除去することにより、置換アレーンから得られる一価官能基をいう。本定義において用語「置換アレーン」とは、単環式および多環式芳香族炭化水素から得られる化合物であって、その炭化水素の1以上の水素原子が非水素原子(例えばハロゲン原子)または非アルキル官能基(例えば水酸基)により置き換えられたものをいう。
【0022】
[0019] 本明細書において用語「置換ヘテロアリール基」とは、置換ヘテロアレーンから、環原子から水素原子を除去することにより得られる一価官能基をいう。本定義において用語「置換ヘテロアレーン」とは、単環式および多環式芳香族炭化水素から得られる化合物であって、(1)その炭化水素の1以上の水素原子が非水素原子(例えばハロゲン原子)または非アルキル官能基(例えば水酸基)により置き換えられているもの、および(2)その炭化水素の少なくとも1つのメチン基(−C=)が三価ヘテロ原子により置き換えられ、および/または、その炭化水素の少なくとも1つのビニリデン基(−CH=CH−)が二価ヘテロ原子により置き換えられたものをいう。
【0023】
[0020] 本明細書において用語「アルカンジイル基」とは、アルカンから2つの水素原子を除去することにより、アルカンから得られる二価官能基をいう。これらの水素原子は、(エタン−1,1−ジイルのように)アルカン上の同じ炭素原子、または(エタン−1,2−ジイルのように)異なった炭素原子から除去されることがある。
【0024】
[0021] 本明細書において用語「置換アルカンジイル基」とは、置換アルカンから得られる二価官能基であって、そのアルカンから2つの水素原子を除去することにより得られるものをいう。これらの水素原子は、(2−フルオロエタン−1,1−ジイルのように)置換アルカン上の同じ炭素原子、または(2−フルオロエタン−1,2−ジイルのように)異なった炭素原子から除去されることがある。本定義において用語「置換アルカン」は、置換アルキル基の定義において上記で述べたのと同じ意味を有する。
【0025】
[0022] 本明細書において用語「シクロアルカンジイル基」とは、シクロアルカンから2つの水素原子を除去することにより、シクロアルカンから得られる二価官能基をいう。これらの水素原子は、シクロアルカン上の同じ炭素原子、または異なった炭素原子から除去されることもある。
【0026】
[0023] 本明細書において用語「置換シクロアルカンジイル基」とは、置換シクロアルカンから得られる二価官能基であって、そのアルカンから2つの水素原子を除去することにより得られるものをいう。本定義において用語「置換シクロアルカン」は、置換シクロアルキル基の定義において上記で述べたのと同じ意味を有する。
【0027】
[0024] 本明細書において用語「アレーンジイル基」とは、アレーン(単環式および多環式芳香族炭化水素)から得られる二価官能基であって、環炭素原子から2つの水素原子を除去することにより得られるものをいう。
【0028】
[0025] 本明細書において用語「置換アレーンジイル基」とは、置換アレーンから得られる二価官能基であって、環炭素原子から2つの水素原子を除去することにより得られるものをいう。本定義において用語「置換アレーン」とは、単環式および多環式芳香族炭化水素から得られる化合物であって、その炭化水素の1以上の水素原子が非水素原子(例えばハロゲン原子)または非アルキル官能基(例えば水酸基)により置き換えられたものをいう。
【0029】
[0026] 本明細書において用語「ヘテロアレーンジイル基」とは、ヘテロアレーンから得られる二価官能基であって、環原子から2つの水素原子を除去することにより得られるものをいう。本定義において用語「ヘテロアレーン」とは、単環式および多環式芳香族炭化水素から得られる化合物であって、その炭化水素の少なくとも1つのメチン基(−C=)が三価ヘテロ原子により置き換えられ、および/または、その炭化水素の少なくとも1つのビニリデン基(−CH=CH−)が二価ヘテロ原子により置き換えられたものをいう。
【0030】
[0027] 本明細書において用語「置換ヘテロアレーンジイル基」とは、置換ヘテロアレーンから得られる二価官能基であって、環原子から2つの水素原子を除去することにより得られるものをいう。本定義において用語「置換ヘテロアレーン」は、置換ヘテロアリール基の定義において上記で述べたのと同じ意味を有する。
【0031】
[0028] 特に示さない限り条件は25℃であり、気圧は1気圧で50%の相対湿度であり、濃度は重量により、分子量は重量平均分子量に基づく。本明細書において用語「ポリマー」は、少なくとも5,000の重量平均分子量(M)を有する材料を示す。用語「コポリマー」は、ターポリマーなど、2以上の異なったモノマー単位を含んでいるポリマーを含むように広い意味で使用され、特に示さない限り、ランダム、ブロック、および統計コポリマーを含む。特定の相の中または異相組成物の中のエチレンまたはプロピレンの濃度は、それぞれ、如何なる充填剤または他の非ポリオレフィン添加物を除いた、その相または異相組成物中のポリオレフィンポリマーの総重量に対する、反応したエチレン単位またはプロピレン単位の重量に基づく。異種ポリマー組成物全般の中の各相の濃度は、如何なる充填剤または他の非ポリオレフィン添加物またはポリマーを除いた、異相組成物中のポリオレフィンポリマーの総重量に基づく。
【0032】
[0029] 第1の態様において本発明は、熱可塑性ポリマーと相溶化剤を含んでいるポリマ−組成物を提供する。本組成物中に存在する熱可塑性ポリマーは任意の適切な熱可塑性ポリマーであってもよい。好適な態様において熱可塑性ポリマーはポリオレフィンポリマーである。より特異的には熱可塑性ポリマーは、ポリプロピレン(例えばポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、およびそれらの混合物)、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレンポリマー、中密度ポリエチレンポリマー、低密度ポリエチレンポリマー、直鎖低密度ポリエチレンポリマー、およびそれらの混合物)、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリオレフィンポリマーであることが好適である。
【0033】
[0030] 相溶化剤はフルベン部分またはフルベン由来部分を含む、任意の有機化合物であってもよい。その部分は置換されていなくても置換されていてもよく、その部分の中の環上の水素、および/または、末端ビニル炭素原子は、非水素基により置き換えられていてもよいことを意味する。よって好適な態様において相溶化剤は、式(I)の構造に従う部分を含む化合物、式(III)の構造に従う部分を含む化合物、および式(V)の構造に従う部分を含む化合物からなる群から選択される。
【0034】
【化3】
【0035】
式(I)と式(III)の構造において、R、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基、および置換ヒドロカルビル基からなる群から選択され、ただし隣接するヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基は結合して該部分の環と融合した第2の環を形成してもよい。更にR、R、RおよびRの少なくとも1つは水素であり;好ましくはR、R、RおよびRの少なくとも2つは水素である。(式(I)と式(III)の両者における)末端ビニル炭素原子および(式(III)における)環の中の隣接する炭素原子に付した断ち切られた結合(すなわち波線により断ち切られた結合)は、相溶化剤の他の箇所との結合を表す。式(V)の構造において、R、R、RおよびRは独立にハロゲンからなる群から選択される。
【0036】
[0031] 好適な態様において、R、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択される。適切なアルキル基には、直鎖および分岐したC〜C18アルキル基が含まれるが、それらに限定されるものではない。適切な置換アルキル基には、ハロゲン、ヒドロキシ、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択される1つ以上の非水素基により置換された、直鎖および分岐したC〜C18アルキル基が含まれるが、それらに限定されるものではない。適切な芳香族基には、フェニルおよびナフチルなどの芳香族基が含まれるが、それらに限定されるものではない。適切な置換芳香族基には、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から選択される1つ以上の非水素基により置換された、単環式および多環式芳香族基が含まれるが、それらに限定されるものではない。適切なヘテロ芳香族基には、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、およびそのような基の芳香環化したアナログ(ベンズイミダゾリルなど)が含まれるが、それらに限定されるものではない。適切な置換ヘテロ芳香族基には、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から選択される1つ以上の非水素基により置換された、上記で述べたヘテロ芳香族基が含まれるが、それらに限定されるものではない。他の好適な態様においてR、R、RおよびRはそれぞれ水素である。
【0037】
[0032] より特定の態様において相溶化剤は、下記の式(X)の構造に従う化合物であってもよい。
【0038】
【化4】
【0039】
式(X)の構造において、R、R、RおよびRは、式(I)の構造において上記で述べた基から独立に選択され、R11とR12は、水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アミン基、置換アミン基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から独立に選択される個々の置換基であるか、または、R11とR12は共に芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択される単一の置換基を形成する。好ましくはR11とR12のわずか1個のみが水素であってもよい。
【0040】
[0033] 好適な態様においてR11とR12は、独立に、式(C)、式(CX)、および式(CXV)からなる群から選択される構造に従う基である。
【0041】
【化5】
【0042】
式(C)の構造において、R100、R101、およびR102は独立に、C(H)、C(R101)、および窒素原子からなる群から選択される。変数aは0から4の整数であるが、5−zに等しい値を超えることはなく、ここでzは環の中の窒素原子の数である。各R101は独立に、アルキル基(例えばC〜C10アルキル基)、置換アルキル基(例えばC〜C10置換アルキル基)、アリール基(例えばC〜C12アリール基)、置換アリール基(例えばC〜C12置換アリール基)、ヘテロアリール基(例えばC〜C12ヘテロアリール基)、置換ヘテロアリール基(例えばC〜C12置換ヘテロアリール基)、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えばC〜C10アルコシキ基)、アリールオキシ基(例えばC〜C12アリールオキシ基)、アルケニル基(例えばC〜C10アルケニル基)、アルキニル基(例えばC〜C10アルキニル基)、アルキルエステル基(例えばC〜C10アルキルエステル基)、およびアリールエステル基(例えばC〜C12アリールエステル基)からなる群から選択される。更に2つの隣接したR101基は多環式アリール基などの、連結して融合した環構造を形成してもよい。式(CX)の構造において、R110は酸素原子、硫黄原子、およびN(R115)からなる群から選択される。R115は水素、アルキル基(例えばC〜C10アルキル基)、置換アルキル基(例えばC〜C10置換アルキル基)、アリール基(例えばC〜C12アリール基)、および置換アリール基(例えばC〜C12置換アリール基)からなる群から選択される。R111はC(H)、C(R112)および窒素原子からなる群から選択される。R112はアルキル基(例えばC〜C10アルキル基)、置換アルキル基(例えばC〜C10置換アルキル基)、アリール基(例えばC〜C12アリール基)、置換アリ−ル基(例えばC〜C12置換アリール基)、ヘテロアリ−ル基(例えばC〜C12ヘテロアリール基)、置換ヘテロアリ−ル基(例えばC〜C12置換ヘテロアリール基)、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えばC〜C10アルコキシ基)、アリールオキシ基(例えばC〜C12アリールオキシ基)、アルケニル基(例えばC〜C10アルケニル基)、アルキニル基(例えばC〜C10アルキニル基)、アルキルエステル基(例えばC〜C10アルキルエステル基)、およびアリールエステル基(例えばC〜C12アリールエステル基)からなる群から選択される。更に2つの隣接したR112基は多環式アリール基などの、連結して融合した環構造を形成してもよい。変数bは0から2の整数である。式(CXV)の構造において、R110とR112は式(CX)について上記で述べたのと同じ基から選択され、変数cは0から3の整数である。
【0043】
[0034] 好適な態様において、R、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、R11およびR12はそれぞれフェニル基である。他の好適な態様において、R、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、R11およびR12はそれぞれ4−クロロフェニル基である。他の好適な態様において、R、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、R11およびR12はそれぞれ4−フルオロフェニル基である。他の好適な態様において、R、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、R11はメチル基であり、R12はフェニルである。他の好適な態様において、R、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、R11は水素であり、R12は2−チエニル基である。他の好適な態様において、R、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、R11は水素であり、R12は3−チエニル基である。他の好適な態様において、R、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、R11はメチル基であり、R12は2−フリル基である。他の好適な態様において、R、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、R11は水素であり、R12はジメチルアミノ基である。他の好適な態様において、R、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、R11とR12はそれぞれC〜Cアルキル基であり、好ましくはプロピル基である。他の好適な態様において、R、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、R11は水素であり、R12は2−フェニルエテニル基である。
【0044】
[0035] 相溶化剤は複数のフルベン部分を含んでもよい。例えば、相溶化剤は2つのフルベン部分を含み、下記の式(XX)の構造に従ってもよい。
【0045】
【化6】
【0046】
式(XX)の構造において、R、R、RおよびRはそれぞれ式(I)の構造において上記で述べた基から独立に選択され、R11はそれぞれ式(X)の構造において上記で述べた基から独立に選択され、R21はアルカンジイル基、置換アルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択される。好適な態様において、R、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、R11は芳香族基であり、R21はアレーンジイル基である。より特異的には、そのような好適な態様において、R、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、R11はそれぞれフェニル基であり、R21はフェン(phen)−1,4−ジイル基である。他の好適な態様において、R、R、R、RおよびR11はそれぞれ水素であり、R21はアレーンジイル基であり、好ましくはフェン(phen)−1,4−ジイル基である。
【0047】
[0036] 場合によっては、相溶化剤は自己ディールス・アルダー反応を介して二量体化またはオリゴマー化を受けてもよい。そのような自己ディールス・アルダー反応において、相溶化剤の1分子中のシクロペンタジエニル部分はジエンとして作用し、相溶化剤の他の分子のシクロペンタジエニル部分中の二重結合はジエノフィルとして作用する。式(I)の構造に従うフルベン部分がディールス・アルダー反応におけるジエノフィルであるときには、そのフルベン部分は上記の式(III)の構造に従う部分に変換される。上記の式(III)の構造において、環の中の隣接する炭素原子に付した断ち切られた結合は、ジエンとの反応から生じる環式部分の一部を形成する結合を表す。よって上記の式(III)の構造に従う部分を含む相溶化剤のより特異的な例においては、相溶化剤は下記の式(IIIA)の構造に従う部分を含んでもよい。
【0048】
【化7】
【0049】
式(IIIA)の構造において、R、R、RおよびRは上記で述べた基から選択され、Rは二価環状部分(例えば二価シクロペンテニル部分)など、少なくとも1つの二重結合を含む近接二価部分である。Rが二価環状部分(例えば二価シクロペンテニル部分)であるときには、相溶化剤は環状部分の中の隣接する炭素原子との結合により形成される二環式部分を含む。
【0050】
[0037] 上記の式(X)の構造に従う相溶化剤の自己ディールス・アルダー反応から生じる二量体は、下記の式(XA)の構造に従うであろう。
【0051】
【化8】
【0052】
式(XA)の構造において、R、R、R、R、R11およびR12は、式(X)の構造に従う化合物について上記で開示した基から選択される。二量体はエンドまたはエキソ異性体のいずれであってもよい。更に式(XA)の構造を有する二量体は、続いてのディールス・アルダー反応においてジエノフィルとして作用してもよく、後続のそのような反応は種々のオリゴマー種をもたらす。如何なる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、上記で述べた二量体とオリゴマー種は逆ディールス・アルダー反応を受け、二量体とオリゴマー種はもともとそれから生成された、フルベン含有化合物をもたらすと信じられている。この逆ディールス・アルダー反応は、二量体またはオリゴマー種を含有するポリマー組成物が処理の間に加熱される(ポリマー組成物が押出されるときに起こる加熱など)ときに起こると信じられている。
【0053】
[0038] この相溶化剤は任意の適切な分子量を有してもよい。当業者に理解されるように化合物の分子量は、他の要因との組み合わせにより、化合物の融点と沸点に影響する。よって高いモル質量を有する化合物は、通常高い融点と沸点を有する。如何なる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、相溶化剤の融点と沸点は、本発明の組成物中の相溶化剤の効力に影響することがあると信じられている。例えば比較的に低いモル質量と低い沸点(例えばポリマー組成物が押出される温度よりもずっと低い沸点)を有する相溶化剤は、押出しプロセスの間にかなりの程度が揮発すると信じられており、そのためにポリマー組成物の性質を改変する相溶化剤が少なくなってしまう。よって相溶化剤が、ポリマー組成物が押出される温度よりも高い沸点を示すのに十分な程に高いモル質量を有することは好適である。一連の好適な態様において相溶化剤は、約130g/mol以上、約140g/mol以上、約150g/mol以上、または約160g/mol以上のモル質量を有することが好ましい。また、比較的高い融点(例えばポリマー組成物が押出される温度よりも高い融点)を有する相溶化剤は、押出しプロセスの間に溶融ポリマー中によく分散しない、または少なくとも押出し温度よりも低い融点を有する相溶化剤と同様には分散しない、と信じられている。そして相溶化剤の分散が乏しいことは、分散が良好である相溶化剤と比較して、達成できる物理的性質の改善に負の影響を及ぼすであろう。よって一連の好適な態様において、相溶化剤は約230℃以下、約220℃以下、約210℃以下、または約200℃以下の融点を有する。
【0054】
[0039] 相溶化剤はポリマー組成物中に任意の適切な量で存在することができる。例えば相溶化剤はポリマー組成物中に、熱可塑性ポリマーと相溶化剤の重量に基づいて、約10ppm以上、約25ppm以上、約50ppm以上、約100ppm以上、約150ppm以上、約200ppm以上、または約250ppm以上の量で存在することができる。
【0055】
[0040] 上記で述べた相溶化剤は、ポリプロピレンホモポリマーなどの熱可塑性ポリマーの溶融強度を増加させるために使用できると信じられている。例えばポリマー(例えばポリプロピレンホモポリマー)を、上記で述べた相溶化剤および下記に述べる有機過酸化物と共に押出すことにより、これを達成することができる。上記で述べた相溶化剤は全て、そのようなプロセスにおいてポリマーの溶融強度を増加させるであろうと信じられているが、2つ以上のフルベン部分を含んでいる相溶化剤(例えば式(XX)の構造に従う相溶化剤)は、ポリマーの溶融強度に最大の影響を及ぼすであろうと信じられている。
【0056】
[0041] 第2の態様において本発明は、上記で述べた相溶化剤を含む異相ポリマー組成物を提供する。本発明の態様に従って有利に改変してもよい本発明の異相ポリマー組成物は、少なくとも2つの異なった相:ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4〜C10α−オレフィンのコポリマーから選択されるプロピレンポリマーを含むポリプロピレンポリマー相、ならびに、エチレンホモポリマーおよびエチレンとC3〜C10α−オレフィンのコポリマーから選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相、によって特徴付けられる。エチレンポリマー相のエチレン含量は少なくとも8重量%である。エチレン相がエチレンとC3〜C10α−オレフィンとのコポリマーであるときには、エチレン相のエチレン含量は8から90重量%の範囲でもよい。本発明の1態様においてエチレン相のエチレン含量は少なくとも50重量%である。プロピレンポリマー相またはエチレンポリマー相のいずれかが連続相を形成してもよく、他は離散または分散相を形成するであろう。例えばエチレンポリマー相は不連続であってもよく、ポリプロピレンポリマー相は連続相であってもよい。本発明の1態様において、プロピレンポリマー相のプロピレン含量はエチレンポリマー相のプロピレン含量よりも大きい。
【0057】
[0042] プロピレンポリマー相とエチレンポリマー相の相対濃度は、広範囲に亘って変化してもよい。例としてエチレンポリマー相は、組成物中のプロピレンポリマーとエチレンポリマーの合計の5から80重量%を含んでもよく、プロピレンポリマー相は、組成物中のプロピレンポリマーとエチレンポリマーの合計の20から95重量%を含んでもよい。
【0058】
[0043] 本発明の種々の態様において、(i)異相組成物中のプロピレンポリマーとエチレンポリマーの含量の合計に基づいて、エチレン含量は5から75重量%、または5から60重量%にすら及んでもよく、(ii)エチレンポリマー相はエチレン−プロピレンまたはエチレン−オクテンエラストマーであってもよく、および/または、(iii)プロピレンポリマー相のプロピレン含量は80重量%以上であってもよい。
【0059】
[0044] 本発明は特にポリプロピレン衝撃コポリマーの改変に有用である。衝撃コポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4〜C10α−オレフィンのコポリマーから選択されるポリプロピレンポリマーを含む連続相、ならびに、エチレン/C3〜C10α−オレフィンモノマーから選択される弾性エチレンポリマーを含む不連続相によって特徴づけられ、エチレンポリマーは8から90重量%のエチレン含量を有してもよい。
【0060】
[0045] プロピレン衝撃コポリマーを対象とする本発明の種々の態様において、(i)不連続相のエチレン含量は8から80重量%であってもよく、(ii)異相組成物のエチレン含量は、組成物中のプロピレンポリマーとエチレンポリマーの合計に基づいて、5から30重量%であってもよく、(iii)連続相のプロピレン含量は80重量%以上であってもよく、および/または、(iv)不連続相は、組成物中のプロピレンポリマーとエチレンポリマーの合計の5から35重量%であってもよい。
【0061】
[0046] 改変されてもよい異相ポリオレフィンポリマーの例は、比較的に固いポリプロピレンホモポリマーマトリックス(連続相)とエチレンプロピレンゴム(EPR)粒子の微細分散相によって特徴付けられる衝撃コポリマーである。ポリプロピレン衝撃コポリマーは2段階工程によって作製されてもよく、ここで最初にポリプロピレンホモポリマーが重合化され、第二段階でエチレン−プロピレンゴムが重合化する。代わりに衝撃コポリマーは本技術分野で知られているように、3つ以上の段階で作製されてもよい。適切な工程は下記の参照文献:US5,639,822およびUS7,649,052B2の中に見出される。ポリプロピレン衝撃コポリマーを作製するための適切なプロセスの例は、Spheripol(登録商標)、Unipol(登録商標)、ミツイプロセス、ノボレンプロセス、Spherizone(登録商標)、Catalloy(登録商標)、チッソプロセス、Innovene(登録商標)、Borstar(登録商標)およびシノペックプロセスである。これらのプロセスは重合化を達成するために、不均一系または均一系のチーグラー・ナッタまたはメタロセン触媒を使用してもよい。
【0062】
[0047] 異相ポリオレフィンポリマー組成物は、固体の状態で少なくとも2つの異なった相を形成する、2つ以上のポリマー組成物を溶融混合することによって形成されてもよい。一例として異相ポリオレフィン組成物は3つの異なった相を含んでいてもよい。異相ポリオレフィンポリマー組成物は、2つ以上の型の再生(recycled)ポリオレフィン組成物の溶融混合に由来してもよい。従って本明細書において使用される「異相ポリオレフィンポリマー組成物を供給する」という語句は、プロセスにおいて既に異相性であるポリオレフィンポリマー組成物を採用することのみならず、プロセスの間に2つ以上のポリオレフィンポリマー組成物を溶融混合することを含み、ここで2つ以上のポリオレフィンポリマー組成物は異相性の系を形成する。例えば異相ポリオレフィンポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーとエチレン/α−オレフィンコポリマー(例えばエチレン/ブテンエラストマー)を溶融混合することによって作製してもよい。適切なコポリマーの例は、Engage(商標)、Exact(登録商標)、Vistamaxx(登録商標)、Versify(商標)、INFUSE(商標)、Nordel(商標)、Vistalon(登録商標)、Exxelor(商標)およびAffinity(登録商標)であろう。更に組成物を異相系の中の連続相の融点以上に加熱したときには、系を形成するポリオレフィンポリマー成分の混和性が変化するかもしれないが、それでもその系を冷却して固化させたときには2つ以上の相を形成することを理解できる。異相ポリオレフィンポリマー組成物の例は、US8,207,272B2およびEP1 391 482B1の中に見出される。
【0063】
[0048] 本発明の1態様において、改変されるべき異相ポリオレフィンポリマーは、不飽和結合を有する如何なるポリオレフィン成分も有さず、特に、プロピレン相中のプロピレンポリマーとエチレン相中のエチレンポリマーは両者とも、不飽和結合を有さない。
【0064】
[0049] 本発明の他の態様において、プロピレンポリマーとエチレンポリマーの成分に加えて、異相系は、エラストマー性エチレンコポリマー、エラストマー性プロピレンコポリマーなどのエラストマー、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)およびスチレン−イソプレン−スチレン(SIS)などのスチレンブロックコポリマー、プラストマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、LLDEP、LDPE、VLDPE、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、および非晶質ポリオレフィンを含んでもよい。コムは未使用のものでも、再生したものでもよい。
【0065】
[0050] 異相ポリオレフィンポリマー組成物は、ポリマー組成物を、その組成物中で生成したフリーラジカルの存在下で相溶化剤と混合することにより改変される。
【0066】
[0051] 本発明の1態様において異相ポリオレフィンポリマー組成物は、ポリマー組成物を、その組成物中で生成したフリーラジカルの存在下で相溶化剤と溶融混合することにより改変される。溶融混合工程は、組成物の主要なポリオレフィン成分の融解温度以上に組成物が加熱されるような条件下で行われ、融解した状態の間に混合される。適切な溶融混合プロセスの例は、例えば押出し機の中で溶融配合し、射出成形し、およびバンバリーミキサーまたは混練機中で混合することを含む。一例として、混合物を160℃から300℃の温度で溶融混合してもよい。特にプロピレン衝撃コポリマーを、180℃から290℃の温度で溶融混合してもよい。ポリマー組成物(プロピレンポリマー相とエチレンポリマー相)、相溶化剤および有機過酸化物を押出し機の中で、組成物中の全てのポリオレフィンポリマーの融解温度以上の温度で溶融配合してもよい。
【0067】
[0052] 本発明の他の態様において、ポリマーを溶媒中に溶解してポリマー溶液中に相溶化剤を添加してもよく、溶液中にラジカルを生成させる。本発明の他の態様において、相溶化剤を固体状態でポリマーと組み合わせてもよく、Macromolecules「Ester Functionalization of Polypropylene via Controlled Decomposition of Benzoyl Peroxide during Solid-State Shear Pulverization」(vol.46, pp.7834-7844 (2013))に記載されているように、固体状態でのせん断粉砕の間にフリーラジカルを生成させてもよい。
【0068】
[0053] プロピレンポリマー、エチレンポリマーおよび相溶化剤を共に単一工程で、混合物に添加された(有機過酸化物など)、あるいは、せん断、紫外線光などイン・サイチュで生成したフリーラジカルの存在下で混合するのに、従来の処理装置を用いてもよい。それにもかかわらず、様々な組み合わせの成分を複数の工程で且つ様々な順序で混合し、そして続いて混合物を、本明細書中で述べられたような相溶化剤がポリオレフィンポリマーと反応する条件にさらすことも可能である。
【0069】
[0054] 例えば相溶化剤および/またはフリーラジカル生成剤(化学的化合物が使用されたとき)をポリマーに、1以上のマスターバッチ組成物の形で添加することができる。適切なマスターバッチ組成物は担体樹脂中に、相溶化剤および/またはフリーラジカル生成剤を含むことができる。相溶化剤および/またはフリ−ラジカル生成剤はマスターバッチ組成物中に、該組成物の総重量に基づいて、約1重量%から約80重量%の量で存在することができる。任意の適切な熱可塑性ポリマーなど、任意の適切な担体樹脂をマスターバッチ組成物の中で使用することができる。例えばマスターバッチ組成物のための担体樹脂は、ポリプロピレン衝撃コポリマー、ポリオレフィンコポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマー、ポリエチレンホモポリマー、直鎖状の低密度ポリエチレンポリマー、ポリオレフィンワックス、またはそのようなポリマーの混合物などのポリオレフィンポリマーであってもよい。担体樹脂はプロピレンポリマーまたはエチレンポリマーであって、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に存在するプロピレンポリマーまたはエチレンポリマーと同じであるかまたは類似したものであってもよい。そのようなマスターバッチ組成物により最終使用者は、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に存在するエチレンポリマーに対するプロピレンポリマーの比率を操作することができるであろう。これは、最終使用者が所望する性質のセット(例えば衝撃と剛性のバランス)を達成するために、市販樹脂グレードのエチレンに対するプロピレンの比率を改変する必要があるときに好適であろう。
【0070】
[0055] 本発明の第二の態様(すなわち改変された異相ポリマー組成物)で使用される相溶化剤は、本発明の第一の態様と関連して上記で述べた相溶化剤の何れであってもよい。そのような相溶化剤は単独で、または互いに組み合わせて使用することができる。
【0071】
[0056] 組成物中の相溶化剤の濃度を、最終使用者の目的に従うように変えることができる。例えばポリマーの強度(特に衝撃強度)の減少を最小(あるいは潜在的に増加さえも)にして、ポリマー組成物のMFRの所望の増加を達成するために、その濃度を変えることができる。好適な態様において相溶化剤は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、約10ppm以上、約50ppm以上、約100ppm以上、約150ppm以上、または約200ppm以上の量で存在することができる。他の好適な態様において相溶化剤は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、約5重量%(50,000ppm)以下、約4重量%(40,000ppm)以下、約3重量%(30,000ppm)以下、約2重量%(20,000ppm)以下、約1重量%(10,000ppm)以下、または約0.5重量%(5,000ppm)以下の量で存在することができる。よって特定の好適な態様において相溶化剤は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、約10から約50,000ppm、約100から約10,000ppm、または約200から約5,000ppmの量で存在することができる。
【0072】
[0057] (下記で議論するように)化学的なフリ−ラジカル生成剤を採用するときに、ポリマー組成物中の相溶化剤の濃度を、相溶化剤の量と化学的なフリ−ラジカル生成剤の量の間の比率の観点から、追加してまたは代わりに表すことができる。相溶化剤の分子量と化学的なフリ−ラジカル生成剤中の過酸化物結合の数の差についてこの比率を正規化するために、この比率は通常、化学的なフリ−ラジカル生成剤の添加により存在する過酸化物結合(O−O結合)のモル当量に対する、組成物中に存在する相溶化剤のモル数の比率として表される。好ましくはその比率(すなわち過酸化物結合のモル当量に対する相溶化剤のモルの比率)は、約1:10以上、約1:5以上、約3:10以上、約2:5以上、約1:2以上、約3:5以上、約7:10以上、約4:5以上、約9:10以上、または約1:1以上である。他の好適な態様においてこの比率は、約10:1以下、約5:1以下、約10:3以下、約5:2以下、約2:1以下、約5:3以下、約10:7以下、約5:4以下、約10:9以下、または約1:1以下である。よって一連の好適な態様において相溶化剤は組成物中に、過酸化物結合のモル当量に対する相溶化剤のモルの比率が、約1:10から約10:1、約1:5から約5:1、約1:4から約4:1、約3:10から約10:3、約2:5から約5:2、または約1:2から約2:1で存在することができる。
【0073】
[0058] 本発明においてフリーラジカル生成剤はポリマー鎖の切断を引き起こすために採用され、それによって異相ポリオレフィンポリマー組成物のMFRに正に影響し、一方、十分なフリーラジカルを生成して組成物中のポリオレフィンポリマーの相溶化剤との反応を助長する。フリーラジカル生成剤は、有機過酸化物またはビス−アゾ化合物などの化学的化合物であってもよく、またはフリーラジカルは、超音波、せん断、電子ビーム(例えばβ線)、光(例えば紫外光)、熱および放射線(例えばγ線とX線)反応系に適用することにより生成してもよく、または前述の組み合わせであってもよい。
【0074】
[0059] 1つ以上のO−O官能基性を有する有機過酸化物は本発明において特に有用である。そのような有機過酸化物の例には、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3,3,6,6,9,9−ペンタメチル−3−(エチルアセテート)−1,2,4,5−テトラオキシシクロノナン、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシ・イソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルジペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド;t−ブチルヒドロキシエチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシドおよび2,5−ジメチルヘキセン−2,5−ジペルイソノナン酸、アセチルシクロヘキサンスルフォニル・ペルオキシド、ジイソプロピル・ペルオキシジカーボネート、tert−アミルペルネオデカン酸、tert−ブチル−ペルネオデカン酸、tert−ブチルペルピバル酸、tert−アミルペルピバル酸、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(2−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジスクシノイルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサン酸、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペルマレイン酸、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルペルオキシイソプロピル・カーボネート、tert−ブチルペルイソノナン酸、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジベンゾエート、tert−ブチルペルアセテート、tert−アミルペルベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)プロパン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシド、3−tert−ブチルペルオキシ−3−フェニルフタリド、ジ−tert−アミルペルオキシド、α,α’−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,5−ジメチル−1,2−ジオキソラン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキシン2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシド、3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン、p−メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼン・モノ−α−ヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、またはtert−ブチルヒドロペルオキシドが含まれる。
【0075】
[0060] 有機過酸化物はポリマー組成物中に任意の適切な量で存在することができる。有機過酸化物の適切な量は、その組成物中で使用された特定のポリマー、ポリマーの出発MFR、およびポリマーのMFRの望ましい変化など、幾つかの因子に依存するであろう。好適な態様において有機過酸化物はポリマー組成物中に、ポリマー組成物の総重量に基づいて、約10ppm以上、約50ppm以上、または約100ppm以上の量で存在することができる。他の好適な態様において有機過酸化物はポリマー組成物中に、ポリマー組成物の総重量に基づいて、約2重量%(20,000ppm)以下、約1重量%(10,000ppm)以下、約0.5重量%(5,000ppm)以下、約0.4重量%(4,000ppm)以下、約0.3重量%(3,000ppm)以下、約0.2重量%(2,000ppm)以下、または約0.1重量%(1,000ppm)以下の量で存在することができる。よって一連の好適な態様において、有機過酸化物はポリマー組成物中に、ポリマー組成物の総重量に基づいて、約10から約20,000ppm、約50から約5,000ppm、約100から約2,000ppm、または約100から約1,000ppmの量で存在することができる。有機過酸化物の量は上記で述べられたように、相溶化剤と過酸化物結合のモル比率の観点からも表すことができる。
【0076】
[0061] 適切なビスアゾ化合物をフリーラジカルの起源として採用してもよい。そのようなアゾ化合物は、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、遊離塩基または塩酸塩としての2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、遊離塩基または塩酸塩としての2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、または2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}である。
【0077】
[0062] フリーラジカル開始剤として有用な他の化学的化合物には、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンおよび立体障害型ヒドロキシルアミンエステルが含まれる。
【0078】
[0063] 種々のラジカル生成剤を単独でまたは組み合わせて採用することができる。
【0079】
[0064] 本発明の異相ポリオレフィン組成物は、熱可塑性組成物の中で通常使用される種々の型の添加剤に適合し、それには、安定剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、酸化防止剤、難燃剤、酸中和剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、擦傷防止剤(antiscratch agent)、加工助剤、発泡剤、着色剤、乳白剤、透明化剤、および/または核生成剤が含まれる。更なる例として本組成物は充填剤、例えば、炭酸カルシウム、タルク、ガラスファイバー、ガラス球、ミリケンケミカル(米国)から入手可能なHyperform(登録商標)HPR−803iなどの無機ウィスカー、オキシ硫酸マクネシウムウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、雲母、珪灰石、モンモリロナイトなどのクレイ、および生物起源または天然の充填剤を含んでもよい。添加剤は改変された異相ポリオレフィン組成物の中の全成分の最大75重量%を構成してもよい。
【0080】
[0065] 本発明の異相ポリオレフィン組成物を、従来のポリマー処理用途において使用してもよく、限定されるものではないがそれには、射出成形、薄肉(thin-wall)射出成形、単軸スクリュー配合、二軸スクリュー配合、バンバリー混合、コニーダー混合、二本ロールミリング、シート押出し、繊維(fiber)押出し、フィルム押出し、パイプ押出し、異形押出し、押出しコーティング、押出しブロー成形、射出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、圧縮成形、押出し圧縮成形、圧縮ブロー成形、圧縮延伸ブロー成形、熱成形、および回転成形が含まれる。本発明の熱可塑性ポリマー組成物を使用して作製された熱可塑性ポリマー物品は、1または任意の適切な数の複数の層が本発明の熱可塑性ポリマー組成物を含んでいる、複数の層から構成されていてもよい。例として、典型的な最終的に使用される製品には、容器、パーッケージ、自動車部品、ボトル、膨張したまたは発泡した物品、アプリケーション部分(application parts)、囲い(closures)、カップ、家具、家庭用品、電槽、枠箱(crates)、パレット(pallets)、フィルム、シート、ファイバー、パイプ、および回転成形された部品が含まれる。
【0081】
[0066] 下記の例は上記で述べた対象の更なる例示を描くものであるが、当然に、如何なる意味でもその範囲を限定するものと解釈されるべきではない。下記の方法は、特に述べられた場合以外には、下記の例で述べられる性質を測定するために使用されたものである。
【0082】
[0067] 各組成物を密閉容器中で約1分間、成分を混ぜ合わせることによって配合した。組成物をその後、16mmのスクリュー直径と25:1の長さ/直径比を有する、プリズムTSE−16−TC共回転完全噛み合い平行二軸スクリュー押出機上で溶融配合した。押出機のバレル温度を約195℃から約215℃に上昇させ、スクリュー速度を約500rpmに設定した。各ポリプロピレンコポリマーの押出物(ストランドの形態)を水浴中で冷却し、続いてペレット化した。
【0083】
[0068] 次いでペレット化した組成物を用いて、直径14mmのスクリューを有するニッセイHM7 7トン射出成形機上で射出成形することにより、棒(bar)を形成した。射出成形機のバレル温度は約215℃から230℃であり、成形温度は約25℃であった。得られた棒を測定したところ、長さは約80mm、幅は約10mm、厚さは約4.0mmであった。
【0084】
[0069] ポリプロピレンについて2.16kg搭載し、(ASTM D1238)に従って230℃で、ペレット化された組成物についてメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0085】
[0070] ノッチ付きアイゾット衝撃強度を、ISO法180/Aに従って測定した。+23℃または−30℃のいずれかに調整された棒について、ノッチ付きアイゾット衝撃強度を23℃で測定した。棒の曲げ弾性率強度は、ISO法178に従って測定した。ピークTを測定するために、示差走査熱量測定法をASTM E794に従って行った。
【0086】
[0071] 分子量分布(MWD)のみならず、前記分布の重量平均(M)も、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ともいう)を用いて測定した。全ての測定は、(3)300×7.5mmPLゲル 10μm Mixed B LS、屈折率検出器、粘度計、および15°と90°の光散乱検出器(160℃で)を含んでいるAgilent PL−GPC220 GPC/SECシステムを使用して、移動相として125ppmのブチルヒドロキシトルエンにより抑制した(inhibited)トリクロロベンゼン、160℃のカラム温度、および約1mg/mlのサンプル濃度を用いて行なわれた。下記で列挙された例では15°の光散乱検出器を選択して濃度を測定した。ゲル浸透クロマトグラフィーは分子が、流体力学な分子体積またはサイズに基づいて分子を分離する分離技術である。適切なカラムキャリブレーションまたは分子量感受性検出器(光散乱検出器または粘度測定器など)を使用することにより、分子量分布と統計学的な分子量平均が得られた。ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて分子はカラムを通過し、それはカラム内でのビーズ間の移動と共に、ビーズ内に入って通り抜ける移動の組み合わせを介する。分子がカラムを通過するのに必要な時間は、分子量が増加すると減少する。任意の所定の時間においてカラムから抜け出るポリマーの量は、種々の検出器で測定される。器具と検出器のより詳細な記述は、Ron Clavire (2008)による「Characterization and Analysis of Polymers」の中の「Composition, Molar Mass and Molar Mass Distribution」というタイトルの章において見出される。
【0087】
[0072] 線形粘弾性挙動は、TAインストルメンツにより製造されたARES−G2流量計を用いて測定され、「Effect of Molecular Structure on the Linear Viscoelastic Behavior of Polyethylene」 Macromolecules, 33 (20), 7489-7499 (2000)と「Similarities between Gelation and Long Chain Branching Viscoelastic Behavior」 Macromolecules, 34 (10), 3115-3117 (2001)(これらは全体として参照することにより本明細書に援用される)の中で述べられているように、長鎖分岐の基準として使用した。160℃の温度での周波数掃引実験は、約1mmの間隙(gap)を有する配置の平行板(直径25mm)の中、窒素雰囲気下で、0.0628と628.319rad*s−1の間で作動した。線形粘弾性挙動実験のためのサンプルは、直径38mm、厚さ1.27mm(50ミル)のプラークを、直径14mmのスクリューを有する、ニッセイHM7 7トン射出成形機上で射出成形することにより調製した。射出成形機のバレル温度は約215から230℃であり、型温は約25℃であった。
【0088】
[0073] 一軸伸長レオロジーは、TAインストルメンツにより製造されたARES−G2流量計の中で、伸長粘度器具(EVF)を用いて測定された。過渡的一軸伸長粘度測定の一般的な記載は、例えば、米国特許番号6,578,413と6,691,569、「Stain Hardening of Various Polyolefins in Uniaxial Elongation Flow」 Journal of Rheology, (47)3, 619-630 (2003)と「Measuring the Transient Extensional Rheology of Polyethylene Melts Using the SER Universal Testing platform」 Journal of Rheology, 49(3), 585-606 (2005)において提供され、これらは全体として参照することにより本明細書に援用される。つまりEVFは、ポリエチレン溶融物などの高粘度材料の伸長粘度を測定するための伸長粘度器具である。EVFは溶融ポリマーサンプルに、一定のひずみ速度で一軸引張変形を適用する。その器具は、サンプルを一定のHencky速度で引き上げる固定された回転ドラムから構成され、その間に温度が制御されたオーブンの中でサンプルに生成した力を測定する。170℃の温度における定常歪み速度実験は、0.01と1.0s−1の間の伸長速度で運転した。一軸伸長実験のためのサンプルは、230℃の温度でのポリマーの圧縮成形と、続いてのストレスフリーのサンプルを作製するための遅い冷却速度により調製した。
【0089】
[0074] キシレン可溶物は改変されたASTM D5402−10により測定され、異相ポリプロピレンコポリマー中に存在するゴムの量の基準である。約0.6gのポリマーを量り分け、撹拌子と共に丸底フラスコに置いた。50mLのキシレンをフラスコ中のポリマーに添加した。ポリマーキシレン混合物を激しく攪拌しながら、還流温度へ加熱した。一旦還流温度に到達したら溶液を更に30分間攪拌し、その後室温に冷却した。得られたポリマー/キシレン混合物を穏やかに撹拌して如何なる沈殿したポリマーゲルも壊し、その後No.4の濾紙を通して流し込み、可溶性画分を含んでいる濾液と不溶性画分の両者を収集した。10mLアリコートの濾液をクラスAのピペットで採取し、秤量された蒸発皿に移動した。濾液を含んでいる蒸発皿をその後、温度を155℃に維持している温度制御されたホットプレートに置いてキシレンを蒸発させた。一旦キシレンの大部分が蒸発したら、蒸発皿を80±10℃の温度に設定した真空オーブンに移した。気圧を13.3kPa未満に低減し、約2時間または一定の重量が達成されるまでサンプルを乾燥した。その後蒸発皿の質量が差し引かれ、残余の可溶性ポリマーの質量が与えられた。当初サンプル中の可溶性ポリマーのパーセンテージは以下により計算された:
【0090】
【数1】
【0091】
ここで:Sはサンプルの可溶性画分(%)であり;Vb0は溶液の当初容量(mL)であり;Vb1は可溶物測定に使用されたアリコートの容量(mL)であり;Wは蒸発皿と可溶物の質量(g)であり;Wは蒸発皿の質量(g)であり;Wは当初サンプルの質量(g)である。
【実施例】
【0092】
例1
[0075] 以下の例は、本発明の方法に従って達成された、異相ポリオレフィン組成物の変性および性能強化を示す。
【0093】
[0076] 4つの異相ポリマー組成物を製造した。比較サンプル1A(C.S.1A)は、非変性ポリプロピレンコポリマーであった。比較サンプル1B(C.S.1B)を、過酸化物を使用して粘性破壊された同様のポリプロピレンコポリマーで作製した。サンプル1Aおよび1Bを、相溶化剤としてジフェニルフルベンと混和した、同様の粘性破壊ポリプロピレンコポリマーで作製した。これらのサンプルの一般的な配合を表1に記載する。
【0094】
【表1】
【0095】
[0077] 表2に挙げられた各組成物を、上記手順に従って、混合し、押し出し、射出成形した。次いで、その棒に、上述のメルトフローレートおよびアイゾット衝撃試験を行い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による試験中に15°光散乱検出器シグナルを使用して評価した。
【0096】
【表2】
【0097】
[0078] 驚くべきことに、サンプル1Aにおいて示されるように、792ppm充填量でジフェニルフルベンを添加するとき、23℃のアイゾット衝撃強度は依然として出発樹脂と同一であるが、メルトフローレートは依然として高い。ジフェニルフルベンが1584ppm充填量で添加された本発明のサンプル1Bは、望ましい非破壊挙動および出発樹脂よりも高いMFRに達する。
【0098】
[0079] 結果として生じる、各組成物のポリマー分子量の変化を図1に示す。過酸化物をポリプロピレンに添加するとき、より長い保持時間へのピークシフトによって示されるように、分子量は減少し、約16分未満の保持時間でシグナルは相対的に減少する。本発明の組成物(サンプル1Aおよび1B)はより短い保持時間(より高い分子量)へのシフトバックを示し、かつ約16分の保持時間において、非変性または過酸化物変性異相樹脂では観察されない明確な肩を示した。この肩は、非変性または過酸化物変性の異相樹脂のいずれのものよりも高い分子量を有する変性ポリマーの形成を示す。
【0099】
例2
[0080] 以下の例は、上述のようないくつかの異相ポリオレフィン組成物の製造を示し、かつ上述のような相溶化剤を組み込むことによって達成される性能強化を研究する。
【0100】
[0081] 本発明による相溶化剤および比較化合物は、表3に記載される一般的な配合に従って、異なるバッチの異相ポリプロピレンコポリマー組成物中にそれぞれ融解混合した。表4は、各組成物に使用された相溶化剤または比較化合物の、構造、充填量、および性能を示す。
【0101】
【表3】
【0102】
[0082] 各異相ポリプロピレンコポリマー組成物を、上述の手順に従って、混合し、押し出し、射出成形した。組成物のメルトフローレートおよび(23℃の)アイゾット衝撃値を測定した。各組成物のメルトフローレートおよびアイゾット衝撃値の百分率変化(非変性、バージン樹脂との比較として)を下記の表4に報告する。本発明による相溶化剤を含むいくつかの試験組成物は、アイゾット衝撃試験中に完全に破砕されなかった。これらの組成物は表4において「非破壊」および「部分的」として報告されている。これらの「非破壊」および「部分的」破壊サンプルは完全に破砕されないため、そのサンプルのアイゾット衝撃値はこの試験を用いて定量することはできなかった。言い換えれば、これらのサンプルの衝撃強度は試験の限界を上回っていた。さらに、「非破壊」および「部分的」破壊サンプルの衝撃強度は、非変性ポリプロピレンコポリマー(すなわち、相溶化剤を含まない粘性破壊コポリマー)と同様の試験を用いて定量することができなかったため、アイゾット衝撃値の百分率変化を計算することができなかった。それにもかかわらず、サンプルが、試験中は完全に破砕されないという事実により、ポリマーの衝撃強度が著しく増加したことが明らかになる。
【0103】
【表4-1】
【0104】
【表4-2】
【0105】
【表4-3】
【0106】
【表4-4】
【0107】
【表4-5】
【0108】
[0083] 表4に記載された結果は、本発明による相溶化剤を含む組成物が、バージン、非粘性破壊樹脂と比較して、メルトフローレートの著しい増加を達成できることを示す。これらの結果は、本発明による相溶化剤を含む組成物が、ポリマーのアイゾット衝撃強度における測定可能な(かつ、多くの場合に著しい)増加を達成できることも示す。増加の有意性は相溶化剤の充填量により変化し得るが、本発明による各相溶化剤は、試験充填量のうちの1つで、予想されるアイゾット衝撃値を上回り少なくとも5%の増加を達成することができた。このことは製品化の視点から著しい増加であると考えられる。相溶化剤の多くが、予想されるアイゾット衝撃値を上回り15%を超える増加をもたらすことが可能であった。さらに、化合物Ful−10、化合物Ful−16、および化合物Ful−20のデータを比較することによって、構造的に類似する化合物(すなわち、本発明の相溶化剤と構造的に類似するが、定義された特徴のすべてを有するとは限らない化合物)は、予想されるアイゾット衝撃値を上回る著しい増加をもたらさないことが示される。
【0109】
例3
[0084] 以下の例は、ポリプロピレンホモポリマー、ポリオレフィンエラストマー、有機過酸化物、および本発明の相溶化剤を融解混合することによって作製された、変性異相ポリオレフィン組成物の製造を示す。
【0110】
[0085] 特に、2dg/分のポリプロピレンホモポリマー(Total Petrochemicals 3276)、20w/w%のポリオレフィンエラストマー(Engage(商標)7467、The Dow Chemical Company製)、有機過酸化物(Varox DBPH、R.T.Vanderbilt Companyから入手可能)、およびジフェニルフルベンを融解混合し、試験を行った。結果を、過酸化物のみが存在するときおよび過酸化物も相溶化剤も存在しないときに作製された異相ポリオレフィン組成物と比較した。
【0111】
[0086] 過酸化物およびジフェニルフルベンの充填量を表5に挙げる。各ポリマーブレンド組成物を、上記手順に従って、混合し、押し出し、射出成形した。次いで、その棒に、上述のように、メルトフローレートおよびアイゾット衝撃試験を行った。
【0112】
【表5】
【0113】
[0087] 過酸化物も相溶化剤も含まないポリプロピレンホモポリマーおよびポリオレフィンエラストマーのブレンド(C.S.3A)は、23℃で非破壊アイゾット衝撃挙動を示すが、望ましくない低メルトフローレートを有する。過酸化物をブレンドに添加するとき(C.S.3B)、メルトフローレートは実質的に増加するが、23℃のアイゾット衝撃強度は非破壊から76J/mに望ましくないことに減少する。驚くべきことに、サンプル3Aに示すように、ジフェニルフルベンを2379ppm充填量で添加するとき、メルトフローレートは依然として高く、23℃のアイゾット衝撃強度は非破壊挙動を示し、かつ−30℃のアイゾット衝撃強度は実質的に増加する。本発明のサンプル3Aは、高メルトフローレートと、23℃と−30℃の両方における高アイゾット衝撃強度性能との望ましいバランスを達成する。
【0114】
例4
[0088] 以下の例は、ホモポリマーポリプロピレン、有機過酸化物、およびここで記述されるような相溶化剤を融解混合することによって作製された、分枝ホモポリマーポリプロピレン組成物の製造を示す。
【0115】
[0089] 特に、Total Petrochemicals 3276の名称でTotal Petrochemicalsより販売されている、メルトフローレートが2dg/分のホモポリマーポリプロピレン、有機過酸化物(Varox DBPH、R.T.Vanderbilt Companyから入手可能)、およびFul−13を融解混合し、表6および表7に挙げられる配合を用いて試験を行った。結果を、過酸化物のみが存在するときおよび過酸化物も相溶化剤も存在しないときに作製されたホモポリマーポリオレフィン組成物と比較した。
【0116】
【表6】
【0117】
[0090] 各ポリマーブレンド組成物を、上記手順に従って、混合し、押し出し、射出成形した。次いで、その棒に、上述のように、メルトフローレート、熱分析、および曲げ弾性率試験を行った。一軸伸長レオロジーのサンプルを、ペレット化された押し出しポリマーストランドから圧縮成形し、上述のように試験を行った。
【0118】
【表7】
【0119】
[0091] 予想された通り、過酸化物と反応させたポリプロリレンホモポリマーのMFRは著しく増加する。驚くべきことに、サンプル4Aに示すように、Ful−13を5268ppm充填量で添加するとき、メルトフローレートは減少し、出発樹脂のC.S.4Aのメルトフローレート未満となる。さらに、ピークTcおよび1%割線係数は上昇し、サンプル4Aにおいて新たに形成された分枝構造由来の自己核形成を示す。
【0120】
[0092] 図2は、C.S.4A、C.S.4B、およびサンプル4Aの、周波数rad/sに対してプロットされた損失角(δ)を示す。損失角は、LCBの存在についての感度が高い指標である。C.S.4Aを例示する損失角の単調な減少は、直鎖状高分子ポリマーに対して予想された通りである。過酸化物が単独で添加されるとき(C.S.4B)、分子量および分子量分布は減少する。C.S.4Bに対してプロットされた曲線は、δ=90°である末端流動領域を示すため、低分子量ポリマーを示す。分枝材料であるサンプル4Aの曲線は、40〜50°の損失角におけるプラトーによって示されるように、完全に異なる。このプラトーは、「Effect of Molecular Structure on the Linear Viscoelastic Behavior of Polyethylene」、Macromolecules、33(20)、7489−7499(2000)および「Similarities between Gelation and Long Chain Branching Viscoelastic Behavior」、Macromolecules、34(10)、3115−3117(2001)に記載されているように、長鎖分枝を示す。
【0121】
[0093] 長鎖分枝を識別するための他の方法は、伸長レオロジーである。C.S.4A、C.S.4B、およびサンプル4Aに関する、0.1s-1のHencky伸長速度における伸長応力成長関数
【0122】
【数2】
【0123】
を、図3に示す。時間のプロットに対する過渡的伸長粘度において、伸長粘度の急激な上昇として歪み硬化が観察される。Ful−13が存在するサンプル4Aにおいて歪み硬化は明らかである。歪み硬化はC.S.4AおよびC.S.4Bでは測定されず、C.S.4Bは粘度が低すぎて正確に測定できない。1,000ppmの過酸化物とともに、Ful−13を5268ppmで添加するとき、本発明のサンプル4Aが得られ、歪み硬化が観察される。歪み硬化が、ポリマー中の長鎖分枝を実証することは、「Strain Hardening of Various Polyolefins in Uniaxial Elongational Flow」、Journal of Rheology、47(3)、619−630(2003)、「Measuring the Transient Extensional Rheology of Polyethylene Melts Using the SER Universal Testing Platform」、Journal of Rheology,49(3)、585−606(2005)、および「Rheological behavior of blends from a linear and a long−chain branched polypropylene」、Journal of Rheology、49、1059−1079(2005)に記載されているように、当業者には周知である。図4は、さらに0.01、0.1、および1.0s-1のHencky伸長速度における
【0124】
【数3】
【0125】
によるサンプル4Aの歪み硬化を示す。
【0126】
[0094] したがって、本発明のサンプル4Aは、ホモポリマーポリプロピレンへの長鎖分枝(LCB)の望ましい組み込みを示すことが当業者であれば明らかである。
【0127】
例5
[0095] 以下の例は、組成物の製造、および本発明による相溶化剤を高衝撃異相ポリプロピレンコポリマーに組み込むことによって達成された性能強化を示す。
【0128】
[0096] これらのサンプルに使用された樹脂は、18MFR高衝撃異相ポリプロピレンコポリマー、Pro−Fax SG702(LyondellBasell Industries)であり、約25%のキシレン可溶分を有していた。組成物は表8に挙げられる成分からなっていた。
【0129】
【表8】
【0130】
[0097] 各ポリマーブレンド組成物を、上記手順に従って、混合し、押し出し、射出成形した。次いで、その棒に、上述のメルトフローレートおよびアイゾット衝撃試験を行った。
【0131】
【表9】
【0132】
[0098] 500ppmの有機過酸化物のみの添加によって生じる組成物(C.S.5B)は、過酸化物を高衝撃ポリプロピレンコポリマーに添加したために、メルトフローレートは著しく増加するが、23℃および−30℃のアイゾット衝撃は望ましくないことに減少することを示す。サンプル5Aに示されるジフェニルフルベンの500ppmの過酸化物との添加は、メルトフローレートの所望の増加を示すと同時に、23℃のアイゾット衝撃挙動はきわめて望ましい非破壊挙動を示し、−30℃のアイゾット衝撃性能は維持される。
【0133】
例6
[0100] 以下の例は、本発明による異相ポリマー組成物の製造を示す。
【0134】
[0101] この例で使用される異相ポリマー組成物は、ポリプロピレンホモポリマーが少ない構成成分であるブレンドであった。言い換えれば、ポリプロピレンホモポリマーは異相ポリマー組成物の非連続相であった。本発明のポリマーブレンドは、ポリオレフィンエラストマー(Engage(商標)8842、The Dow Chemical Company製)および2dg/分のポリプロピレンホモポリマー(Total Petrochemicals 3276)から3:1w/wの比でなっていた。1,000ppmの有機過酸化物(Varox DBPH R.T.Vanderbilt Companyから入手可能)およびジフェニルフルベンをこのポリマーブレンドに添加した。過酸化物およびジフェニルフルベンの充填量を、ポリオレフィンエラストマーおよびポリプロピレンホモポリマーであるブレンドの残部とともに、表10に挙げる。結果を、過酸化物のみが存在したとき(C.S.6B)および過酸化物も相溶化剤も存在しなかったとき(C.S.6A)に作製された異相ポリオレフィン組成物と比較した。
【0135】
[0102] 各組成物を、構成成分を密閉された容器中で約1分にわたってブレンドすることにより、混和した。次いで、組成物を、スクリュー径が16mmかつ長さ/直径比が25:1のPrism TSE−16−TC共回転完全噛み合い平行二軸スクリュー押出機(co-rotating, fully intermeshing, parallel, twin-screw extruder)で融解混和した。押出機のバレル温度を約195℃から約215℃に上昇させ、スクリュー速度を約500rpmに設定した。各ポリオレフィンブレンド組成物の押出物(ストランドの形態)を水浴中で冷却し、続いてペレット化した。次いで、ペレット化された組成物を、230℃のプレート温度および約6トンの保持圧力の12トンCarver Pressで約4分にわたって圧縮成形し、約6インチ幅、6インチ長さ、および0.047インチ厚さのシートにした。次いでASTM Type IVドッグボーン試料を、これらの圧縮成形シートから打抜いた。ASTM Type IVドッグボーンの引張特性を、ASTM法D638に従って、MTS Q−Test−5を用いて、クロスヘッド速度20.0in/分で測定した。
【0136】
【表10】
【0137】
[0103] 過酸化物のみを含む(相溶化剤なし)組成物は、過酸化物を、3:1w/wの比のポリオレフィンエラストマー対ポリプロピレンホモポリマーを含むポリオレフィンブレンドに添加するときに、引張降伏強度がわずかに減少することを示す。ジフェニルフルベンをこのブレンドに添加するときに、サンプル6A〜6Cに示されるように、降伏時の引張強度は著しく増加する。
【0138】
例7
[0104] 以下の例は、組成物の製造、および本発明による相溶化剤を再生使用済みポリプロピレン樹脂に組み込むことによって達成された性能強化を示す。
【0139】
[0105] これらのサンプルに使用する樹脂は、11MFRポリプロピレンコポリマー再生使用済み樹脂KW622(KW PLASTICS)であった。組成物は表11に挙げられる成分からなっていた。
【0140】
【表11】
【0141】
[0106] 各ポリマーブレンド組成物を、上記手順に従って、混合し、押し出し、射出成形した。次いで、その棒に、上述のメルトフローレートおよびアイゾット衝撃試験を行った。
【0142】
【表12】
【0143】
[0107] 1,000ppmの有機過酸化物のみの添加によって生じる組成物(C.S.7B)は、過酸化物がポリプロピレンコポリマー使用済み樹脂に添加されるために、メルトフローレートは著しく増加するが、23℃のアイゾット衝撃は望ましくないことに減少することを示す。サンプル7Aに示されるジフェニルフルベンの1,000ppmの過酸化物との使用は、メルトフローレートの所望の増加を示すと同時に、23℃のアイゾット衝撃挙動はきわめて望ましい非破壊挙動を示し、−30℃のアイゾット衝撃性能は増加する。
【0144】
例8
[0108] 以下の例は、本発明の方法による、異相ポリオレフィン組成物の改良、および達成された性能強化を示す。
【0145】
[0109] 4つの異相ポリマー組成物を製造した。比較サンプル8A(C.S.8A)は非変性ポリプロピレンコポリマー(約19%キシレン可溶分を含むExxonMobil(商標)PP7414)であった。比較サンプル8B(C.S.8B)を、過酸化物を使用して粘性破壊された同様のポリプロピレンコポリマーで作製した。サンプル8Aおよび8Bを、相溶化剤としてのジフェニルフルベンまたはジフェニルフルベンの二量体と混和した、同様の粘性破壊ポリプロピレンコポリマーで作製した。これらのサンプルの一般的な配合を表13に記載する。
【0146】
【表13】
【0147】
[0110] 過酸化物および相溶化剤の充填量を表14に挙げる。各ポリマーブレンド組成物を、上記手順に従って、混合し、押し出し、射出成形した。次いで、その棒に、上述のメルトフローレートおよびアイゾット衝撃試験を行った。
【0148】
【表14】
【0149】
[0111] 過酸化物を異相ポリプロピレンコポリマーに添加するとき(C.S.8B)、メルトフローレートは実質的に増加するが、23℃のアイゾット衝撃強度は106.3J/mから66.1J/mに望ましくないことに減少する。驚くべきことに、サンプル8Aに示すように、ジフェニルフルベンを1584ppm充填量で添加するとき、メルトフローレートは依然として高く、23℃のアイゾット衝撃強度は112.4J/mに増加する。ジフェニルフルベンの二量体を3168ppm充填量で添加するとき(サンプル8B)、メルトフローレートは非変性ポリプロピレンコポリマー(C.S.8A)より高く、23℃のアイゾット衝撃は140.6J/mに増加する。本発明のサンプル8Aおよび8Bは、高メルトフローレートと、23℃の高アイゾット衝撃強度性能との望ましいバランスを達成する。
【0150】
例9
[0112] 以下の例は、上述のような変性マスターバッチ組成物の製造、およびこのような変性マスターバッチ組成物を異相ポリオレフィン組成物に添加することによって達成することができる物理的特性の改善を示す。
【0151】
[0113] 3つの変性マスターバッチ組成物を製造した。比較サンプル9−MB(C.S.9−MB)を、ポリプロピレンコポリマーを粘度破壊剤としての過酸化物とともに溶融混和することによって作製した。サンプル9A−MBおよび9B−MBを、同様のポリプロピレンコポリマーを粘度破壊剤としての過酸化物および相溶化剤としてのジフェニルフルベンとともに溶融混和することによって作製した。これらのサンプルの一般的な配合を表15に記載する。
【0152】
【表15】
【0153】
[0114] 表15に挙げられた各組成物を、上記手順に従って、混合し、押し出した。
【0154】
【表16】
【0155】
[0115] 3つの異相ポリマー組成物を、上述の変性マスターバッチ組成物をポリプロピレンコポリマーに添加することによって製造した。比較サンプル9A(C.S.9A)は、非変性ポリプロピレンコポリマーであった。比較サンプル9B(C.S.9B)は、非変性ポリプロピレンコポリマーを比較サンプル9−MB(C.S.9−MB)と混和することによって作製した。サンプル9Aを、同様の非変性ポリプロピレンコポリマーをサンプル9A−MBと混和することによって作製し、サンプル9Bを、同様の非変性ポリプロピレンコポリマーをサンプル9B−MBと混和することによって作製した。これらのサンプルの一般的な配合を表17および18に記載する。
【0156】
【表17】
【0157】
[0116] 表18に挙げられた各組成物を、上記手順に従って、混合し、押し出し、射出成形した。次いで、得られた棒に、上述のように、メルトフローレートおよびアイゾット衝撃試験を行った。
【0158】
【表18】
【0159】
[0117] 表18に記載されたデータは、本発明による変性マスターバッチ(すなわち、異相ポリマーを粘度破壊剤および相溶化剤とともに溶融混和することによって作製した変性マスターバッチ)は非変性異相ポリマーに融解混和することができ、それによって、異相ポリマーの衝撃強度が著しく改善されることを示す。たとえば、C.S.9Bのデータは、粘性破壊マスターバッチC.S.9−MBを非変性異相ポリマーに融解混和しても、ポリマーの衝撃強度にそれほど影響を与えないことを示す。対照的に、サンプル9Aおよび9Bのデータは、非変性異相ポリマーを変性マスターバッチ組成物サンプル9A−MBおよびサンプル9B−MBと溶融混和すると、ポリマーの衝撃強度を40%ほど増加させることを示す。このことは、改善された異相ポリマー組成物は、粘性破壊剤および/または相溶化剤を標的の異相ポリマーに直接添加することなく製造できることを示しているため、特に価値がある。このような添加剤の直接添加は、特定の状況、たとえば混和設備および射出成形設備では困難であり得る。しかし、このような設備はマスターバッチ組成物を日常的に利用する。したがって、このような設備は、上述のような変性マスターバッチ組成物の使用により、ここで記載されている物理的特性の改善を容易に達成するであろう。
【0160】
[0118] ここで引用された、刊行物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが個々におよび具体的に示され、その全体がここに記載されていた場合と同程度に、参照によりここに組み込まれるもとする。
【0161】
[0119] 本出願の主題を記述する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)、「ある(a)」および「ある(an)」および「その(the)」という用語および同様の指示語の使用は、ここで特に指示がない限りまたは明らかに文脈と矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含するように解釈するべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」という用語は、特に指摘がない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、限定されない」の意味)として解釈されるべきである。ここでの値の範囲の列挙は、ここで特に指示がない限り、単に範囲内にあるそれぞれ別の値を個々に参照する簡単な方法として機能するように意図されており、それぞれ別の値は、ここに個々に記載された場合と同じように明細書に組み込まれているものとする。ここに記述されたすべての方法は、ここで特に指示がないかまたは明らかに文脈と矛盾しない限り、任意の好適な順番で行うことができる。ここで提供された任意およびすべての例、または例示的な言い回し(たとえば、「たとえば(such as)」)の使用は、本出願の主題をより良好に明らかにするように単に意図されており、特に主張されない限り主題の範囲を限定するものではない。明細書中のいかなる言い回しも、ここに記述されている主題の実施に不可欠なものとして、任意の主張されていない要素を示すと解釈されるべきでない。
【0162】
[0120] 主張された主題を実施するための本発明者らが既知の最良の様式を含め、本出願の主題の好ましい態様がここで記述されている。それらの好ましい態様の変形形態は、前述の説明を読むことにより、当業者には明らかになるであろう。本発明者らは当業者がこのような変形形態を適宜使用することを予想し、また本明者らはここに具体的に記述されている以外の方法で、ここで記述されている主題が実施されることを意図している。したがって、本開示は、適用法令によって許される限り、これに添付された特許請求の範囲に記載されている主題のすべての変形形態および均等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形形態における上述の要素の任意の組合せは、ここで特に指示がないまたは明らかに文脈と矛盾しない限り、本開示によって包含される。
以下に、本発明の実施態様を付記する。
1. (a)熱可塑性ポリマー;および
(b)熱可塑性ポリマーと相溶化剤の重量に基づいて約50ppm以上の相溶化剤、を含む熱可塑性ポリマ−組成物であって、相溶化剤は、式(I)の構造に従う部分を含む化合物、式(III)の構造に従う部分を含む化合物、および式(V)の構造に従う部分を含む化合物からなる群から選択される、熱可塑性ポリマ−組成物。
【化a】
(ここでR、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基、および置換されたヒドロカルビル基からなる群から選択され、ただし隣接するヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基は結合して該部分の環と融合した第2の環を形成してもよく;ただしR、R、RおよびRの少なくとも1つは水素であり;R、R、RおよびRは独立にハロゲンからなる群から選択される。)
2. R、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択される、1に記載の熱可塑性ポリマ−組成物。
3. R、R、RおよびRの少なくとも2つは水素である、1に記載の熱可塑性ポリマ−組成物。
4. 熱可塑性ポリマ−がポリオレフィンポリマーである、1に記載の熱可塑性ポリマ−組成物。
5. 熱可塑性ポリマ−が、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、4に記載の熱可塑性ポリマ−組成物。
6. 相溶化剤が組成物中に、熱可塑性ポリマーと相溶化剤の重量に基づいて約100ppm以上の量で存在する、1に記載の熱可塑性ポリマ−組成物。
7. 相溶化剤が下記の式(X)の構造に従う化合物である、1に記載の熱可塑性ポリマ−組成物。
【化b】
(ここでR11とR12は個々の置換基であって、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アミン基、置換アミン基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択され、または、R11とR12は共に芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択される単一の置換基を形成する)
8. R、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択される、7に記載の熱可塑性ポリマ−組成物。
9. 相溶加剤は式(XX)の構造に従う化合物である、1に記載の熱可塑性ポリマ−組成物。
【化c】
(ここで各R11は独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アミン基、置換アミン基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択され、R21はアルカンジイル基、置換アルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基なる群から選択される。)
10. R、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択される、9に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
11. (a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相であって、コモノマーはエチレンおよびC4〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択されるプロピレンポリマー相;
(b)エチレンホモポリマーおよびエチレンと1種以上のC3〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相;ならびに
(c)式(I)の構造に従う部分を含む化合物、式(III)の構造に従う部分を含む化合物、および式(V)の構造に従う部分を含む化合物からなる群から選択される相溶化剤、
を含む異相ポリマー組成物。
【化d】
(ここでR、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基、および置換ヒドロカルビル基からなる群から選択され、ただし隣接するヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基は結合して該部分の環と融合した第2の環を形成してもよく;ただしR、R、RおよびRの少なくとも1つは水素であり;R、R、RおよびRは独立にハロゲンからなる群から選択される。)
12. R、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択される、11に記載の異相ポリマー組成物。
13. R、R、RおよびRの少なくとも2つは水素である、11に記載の異相ポリマー組成物。
14. 相溶化剤が組成物中に、プロピレンポリマー相、エチレンポリマー相および相溶化剤の重量に基づいて約100ppm以上の量で存在する、11に記載の異相ポリマー組成物。
15. 相溶化剤が下記の式(X)の構造に従う化合物である、11に記載の異相ポリマー組成物。
【化e】
(ここでR11とR12は個々の置換基であって、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アミン基、置換アミン基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択され、または、R11とR12は共に、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択される単一の置換基を形成する。)
16. R、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択される、15に記載の異相ポリマー組成物。
17. R11とR12は独立に、式(C)、式(CX)、または式(CXV)に従う基からなる群から選択される、15に記載の異相ポリマー組成物。
【化f】
(ここでR100、R101、およびR102は独立に、C(H)、C(R101)、および窒素原子からなる群から選択され;変数aは0から4の整数であるが、5−zに等しい値を超えることはなく、ここでzは環の中の窒素原子の数であり;各R101は独立に、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルエステル、およびアリールエステル基からなる群から選択され、ただし2つの隣接するR101基は結合して融合した環構造を形成してもよい。)
【化g】
(ここでR110は酸素原子、硫黄原子、およびN(R115)からなる群から選択され;R115は水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、および置換アリール基からなる群から選択され;R111はC(H)、C(R112)および窒素原子からなる群から選択され;R112はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリ−ル基、ヘテロアリ−ル基、置換ヘテロアリ−ル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルエステル基、およびアリールエステル基からなる群から選択され、ただし2つの隣接するR112基は結合して融合した環構造を形成してもよく;変数bは0から2の整数である。)
【化h】
(ここでR110とR112は式(CX)の構造について上記で述べたのと同じ群から選択され、変数cは0から3の整数である。)
18. 相溶化剤が式(XX)の構造に従う化合物である、11に記載の異相ポリマー組成物。
【化i】
(ここで各R11は独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アミン基、置換アミン基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択され、R21はアルカンジイル基、置換アルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基なる群から選択される。)
19. R、R、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から選択される、18に記載の異相ポリマー組成物。
図1
図2
図3
図4