特許第6553244号(P6553244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553244負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6553244
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/68 20060101AFI20190722BHJP
   A62C 37/00 20060101ALI20190722BHJP
   F16K 31/143 20060101ALI20190722BHJP
   F16K 15/18 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   A62C35/68
   A62C37/00
   F16K31/143
   F16K15/18 B
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-86905(P2018-86905)
(22)【出願日】2018年4月27日
【審査請求日】2018年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】川尻 朋之
(72)【発明者】
【氏名】牧野 徹
(72)【発明者】
【氏名】福岡 悠里
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−201746(JP,A)
【文献】 特開2011−045557(JP,A)
【文献】 特開2006−296918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00
F16K 15/18
F16K 31/143
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予作動式流水検知装置と該予作動式流水検知装置の一次側に設けられ、基端側に給水手段が接続される一次側配管と、
該予作動式流水検知装置の二次側に設けられ、スプリンクラーヘッドが接続された二次側配管と、該二次側配管を負圧とする真空ポンプと該二次側配管と真空ポンプを接続する吸気管と、
前記二次側配管と前記吸気管との接続部に設けられ、
前記二次側配管から前記吸気管に流入する空気と水が通過する本体部と、該本体部内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部と、該ピストン部を後退移動方向に付勢するコイルバネとによって構成され、前記本体部は、シリンダ部と、該シリンダ部の一端側に装着されるカバー部とからなる負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁において、
前記カバー部の閉塞部分の中心部の外側面に、前記シリンダ部内において前記コイルバネの付勢力に抗して前記ピストン部をその最前進位置まで押し出す点検棒を備えてなることを特徴とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【請求項2】
前記シリンダ部は、その一端部が閉塞された円筒状をなし閉塞部分の中心部に、流出口と、該流出口の内側に連成された該流出口より小径の開口を設けてなり、前記カバー部は、一端部が閉塞された円筒状をなし、閉塞部分に、流入口を設けてなり、前記ピストン部は、一端部が閉塞された円筒状をなし、他端部に外径が前記シリンダ部の内径と等しいフランジ部を形成し、閉塞部分の中心部に前記シリンダ部における閉塞部分の開口より小径の開口を設けると共に、円筒状部分に該小径の開口より大径の開口を設けてなる請求項1記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【請求項3】
ピストン部に設ける大径の開口と小径の開口とを、大径の開口のみとしてなる請求項記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【請求項4】
点検棒の先端部に、点検時においてピストン部の閉塞部分に設けた小径の開口内の汚れ除去するための突起を設けてなる請求項記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【請求項5】
点検棒の先端面に、点検時において該点検棒がピストン部の閉塞部分に設けた小径の開口部への接触を防止するための凹部又は溝部を設けてなる請求項記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【請求項6】
点検棒を操作開始位置に復帰させるバネを設けてなる請求項1から5のいずれか1項に記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【請求項7】
点検棒におけるカバー部から突出する後端部に、該点検棒の先端部の突起がピストン部の閉塞部分に設けた小径の開口内に挿入されたことと、ピストン部がシリンダ部内において最前進位置まで移動したこととを確認するための目印を設けてなる請求項1から6のいずれか1項に記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【請求項8】
カバー部の閉塞部分の中心部の外面側に、点検棒のカバー部から突出する後端部を覆う、該点検棒の誤操作防止用のキャップ状カバーを設けてなる請求項1から7のいずれか1項に記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【請求項9】
カバー部の閉塞部分の中心部の外面側に、点検棒を、その後端側を摺動自在に貫挿した、摘みを有する所要の外径の柱状体と、該柱状体を抜脱自在に嵌め込む柱状体受容孔とをもって構成する保守用分解部を設けてなる請求項1から8のいずれか1項に記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次側配管内に水が充填され且つ火災発生時以外においては負圧状態とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における消火設備として、スプリンクラーヘッドの破損等が生じた場合に漏水を防止し、且つ火災発生時に速やかに放水する機能を有する、二次側配管内に水が充填され且つ火災発生時以外においては負圧状態とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備がある。
【0003】
図12は斯かる負圧湿式予作動スプリンクラー設備の概略構成図である。該図において100は負圧湿式予作動スプリンクラー設備である。
【0004】
101は消火水槽102から送水ポンプ103を介して立ち上がって配管された一次側配管である。104は前記一次側配管101に接続され、スプリンクラーヘッド105まで配管された二次側配管である。
【0005】
106は前記一次側配管101と二次側配管104との間に設置され、火災発生時以外では閉状態が維持される予作動式流水検知装置である。107は天井部に設置された、火災を感知して火災信号を送出する火災感知器である。
【0006】
108は前記二次側配管104に一端側108Aを接続すると共に、他端側108Bを、真空ポンプ109から立ち上がって配管された吸気管110と、下端が前記消火水槽102まで垂下した排水管111とに接続された吸引管である。
【0007】
112は前記吸引管108の途中部に設置された、前記二次側配管104内の負圧の状態の正常時には少量の、異常時には多量の流通量とする流量制御弁である。また、該流量制御弁112は、オリフィス付き自動弁であり、口径40Aの直動式電磁弁のものがある。そしてまた一例として、その定格はDC24ボルト、1,580mAのものがある。
【0008】
また、図12において113は前記吸引管108の途中部における前記流量制御弁112より二次側配管104側の位置に設置された、二次側配管104内の圧力を検出する真空スイッチである。
【0009】
114は火災発生時に前記火災感知器107からの火災信号を受信し、後記制御盤に該信号を送信する信号受信盤である。
【0010】
115は前記信号受信盤114からの信号を受信し、前記予作動式流水検知装置106を開状態として前記一次側配管101と二次側配管104とを連通状態とすると共に、前記送水ポンプ103を作動させる制御盤である。尚、その他図中116は前記吸気管110の前記吸引管108への接続部分に設置した気水分離器、117は前記吸引管108の前記吸気管110と排水管111との接続部分に設置した逆止弁である。
【0011】
そして、火災発生時以外のときには一次側配管101と二次側配管104のいずれにも水が充填されており、且つ二次側配管104内を、吸引管108及び吸気管110を介して真空ポンプ109で負圧状態とするものである。
【0012】
また、火災発生時には、火災感知器107が火災を感知して火災信号を信号受信盤114に送信し、そして該信号受信盤114から該信号を制御盤115に送信する。該信号を受信した制御盤115は予作動式流水検知装置106を開状態とすると共に送水ポンプ103を作動させる。これによりスプリンクラーヘッド105から放水が連続して行われるものである。
【0013】
従来における負圧湿式予作動スプリンクラー設備は上記の通りである。しかし、斯かる設備には二次側配管内の負圧の状態を適正に保持する構成において問題がある。それは、吸引管108の途中部に設置された流量制御弁112としてオリフィス付き自動弁を用いていることによるものである。
【0014】
而して、斯かるオリフィス付き自動弁は電磁弁であり、そして、斯かる電磁弁は、無通電時には閉止し、通電時に開放するなど制御方法がシンプルであるというメリットがある一方、消費電流が大きく、且つ弁体の開放中は通電し続けなければならず、大きな電源が必要となる。そして、上記の如く、従来の設備に用いられていたオリフィス付き自動弁は、口径40Aの直動式電磁弁のものがあり、そして一例として、その定格はDC24ボルト、1,580mAのものがあり、消費電流も大きく且つ弁体の開放に大きな電源が必要であった。
【0015】
また、従来用いられていた電磁弁は、上記の通り消費電流も大きく且つ弁体の開放に大きな電源が必要であることから、停電時における問題もある。即ち、停電時において、二次側配管の破損等で二次側配管内の圧力が急上昇する事態が起き、弁を開放させる必要が生じることがあるが、その場合に備えて容量の大きい蓄電池を設けるか、非常電源設備による給電を行うなどの対策が必要であった。しかし、容量の大きい蓄電池を設ける場合には、蓄電池自体の大きさだけでなく、それを収納する制御盤の大きさも大きくなり、コストも増えることになる。また、非常電源設備による給電を行う場合には、予め非常電源設備の設計の際に電源容量を見込む必要があり、設備のリニューアルに対応できない等の問題があった。
【0016】
そこで、本発明者らは、二次側配管内の圧力の適正保持用の流量制御弁として、電力消費の大きい従来のオリフィス付き自動弁に替えて電力不要の流量制御弁を用いることにより、上記従来の問題点を悉く解消することができるようになした負圧湿式予作動スプリンクラー設備を、先に案出した。
【0017】
そしてまた、本発明者らが先に案出した斯かる負圧湿式予作動スプリンクラー設備は、図8に示す通りの構成であり、図9乃至図11に示した流量制御弁の点を除いて、その他の構成は前記図12に示した構成と同様であるから、同一の部材には同一の符号を付して再度の説明は省略する。
【0018】
而して、図8に示す負圧湿式予作動スプリンクラー設備100′において用いる流量制御弁1は、図9及び図10の示す如き、二次側配管から吸引管に流入する空気と水が通過する本体部2と、該本体部2内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部9と、該ピストン部9を後退移動方向に付勢するコイルバネ13とによって構成され、前記本体部2は、シリンダ部2Aと、該シリンダ部2Aの一端側に装着されるカバー部2Bとからなり、前記シリンダ部2Aは、その一端部が閉塞された円筒状をなし、閉塞部分2A′の中心部に、流出口3と、該流出口3の内側に連成された該流出口3より小径の開口4を設けてなり、前記カバー部2Bは、一端部が閉塞された円筒状をなし、閉塞部分2B′に、流入口7を設けてなり、前記ピストン部9は、一端部が閉塞9′された円筒状をなし、他端部に外径が前記シリンダ部2Aの内径と等しいフランジ部10を形成し、閉塞部分9′の中心部に前記シリンダ部2Aにおける閉塞部分2A′の開口4より小径の開口11を設けると共に、円筒状部分に該開口11より大径の開口12を設けてなり、流入する水の圧力によって前記コイルバネ13の付勢力に抗して最前進位置まで移動することによりその閉塞部分9′が前記シリンダ部2Aの閉塞部分2A′の内側面に密接するようになされた流量制御弁である。
【0019】
尚、前記シリンダ部2Aの他端側の外周面には雄ネジ5が刻設され、これに対応して内周面に雌ネジ6が刻設されたカバー部2Bを螺合装着するようになされている。
【0020】
また、前記シリンダ部2Aの他端側の端面と前記カバー部2Bの閉塞部分2B′との間にはOリング8が介装され、シリンダ部2Aとカバー部2Bとの間の水密性が保たれている。
【0021】
また、前記コイルバネ13は、前記シリンダ部2A内において、ピストン部9を挿入させた状態でそのフランジ部10に当接し、該ピストン部9をカバー部2Bの流入口7側に押圧付勢している。したがって、カバー部2Bの流入口7から水が流入し、その圧力が該コイルバネ13の付勢力を超えている状態でピストン部9は前進移動が行われることになる。
【0022】
そして、該コイルバネ13の弾発力(バネ定数)は、火災発生時において二次側配管104内に一次側配管101から水が供給され、該水の一部が吸引管108内に流入したときの圧力によってのみ縮小する程度であることを要する。
【0023】
また、上記流量制御弁1の作用は、次の通りである。
火災発生時以外のときにおける二次側配管の温度変化による体積膨張や流量制御管等からの微少な空気流入等による緩慢な圧力上昇があるときは、図9に示す如く、ピストン部9は後退位置にあり、カバー部2Bの流入口7から流入した空気と水は、ピストン部9の小径の開口11と大径の開口12を通って合流し、シリンダ部2Aの開口4と流出口3から流出する。
【0024】
また、スプリンクラーヘッド等が破損して二次側配管内の圧力が急速に上昇したときには、ピストン部9は図9と同じ後退位置にあって、真空ポンプ109が作動する。そして、この吸引によって漏水が防止される。尚、その際において真空ポンプ109の吸引力はコイルバネ13の弾発力より低いためピストン部9は移動しない。
【0025】
また、火災発生時において一次側配管101から二次側配管104に水が供給され、その水の一部が吸引管108内に流入すると、図10に示す如く、その水の圧力によってコイルバネ13の付勢力に抗してピストン部9が最前進位置まで移動し、その閉塞部分9′がシリンダ部2Aの閉塞部分2A′の内側面に密接する。また、このときにおいては真空ポンプ109は作動しない。そして、これにより水はピストン部9の小径の開口11を通じて少量しか流れず、スプリンクラーヘッド105からの充分な放水が確保される。尚、ピストン部9の小径の開口11から引き続き水が流出するが、該開口11の径は小さいことから流出の影響は少ない。
【0026】
そして、消火完了後、予作動式流水検知装置106が閉止すると、ピストン部9の小径の開口11から水が流出することで二次側配管104内の圧力が減少し、ピストン部9はコイルバネ13によって再び後退位置に戻される。
【0027】
以上の如く、上記流量制御弁1は、電力を要することなく作動するものである。
【0028】
また、上記流量制御弁1は、図9及び図10に示した例においては、ピストン部9に大径の開口12と小径の開口11とを設けているが、図11に示した例における如く、大径の開口12のみとしてもよいものである。尚、図11に示した例は、予作動式流水検知装置に連通する配水管に設置された排水弁等から排水することで二次側配管内の圧力を減少させることができる場合に用いるものである。
【0029】
而して、図8乃至図11に示した本発明者らが先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備100′においては、二次側配管内の圧力の適正保持用の流量制御弁として、電力消費の大きい従来のオリフィス付き自動弁に替えて電力不要の流量制御弁1を用いるものであるから、従来の問題点を悉く解消することができるものである。また、非常電源設備からの給電を検討する必要もないものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明者らが先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備100′は、上記の通りの優れた作用、効果を奏するものである。そしてまた、その作用、効果をより持続的に確実なものとすべく、本発明者らは更に鋭意研究を重ねた。
【0031】
本発明者らが先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備100′において用いる流量制御弁1は、上記の如き構成、作用であり、ピストン部9は、カバー部2Bの流入口7から流入する水の圧力によりコイルバネ13の付勢力に抗して最前進位置まで移動するが、監視状態にある平常時においては該ピストン部9は、図9に示す如き後退位置にある。そして、ピストン部9が後退位置にあって、カバー部2Bの流入口7から空気と水が流入し、これらが該ピストン部の大径の開口12と小径の開口11を通って合流してシリンダ部2Aの開口4と流出口3から流出する状態が長期間にわたって継続すると、ピストン部9の周囲やシリンダ部2Aの内面において水に含まれるカルシウムや不純物が析出したり、ゴミが付着し、実際の火災発生時においてピストン部が正常に動作しない事態が起こる虞がある。
【0032】
そこで、定期的に点検し、加圧水を流入させることなくピストン部の動作を確認することができるようにした構成を付加することにより、上記流量制御弁1の作用、効果をより持続的に確実なものとすることができることを見出し、本発明の完成をみるに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
而して、本発明の要旨とするところは、
予作動式流水検知装置と該予作動式流水検知装置の一次側に設けられ、基端側に給水手段が接続される一次側配管と、
該予作動式流水検知装置の二次側に設けられ、スプリンクラーヘッドが接続された二次側配管と、該二次側配管を負圧とする真空ポンプと該二次側配管と真空ポンプを接続する吸気管と、
前記二次側配管と前記吸気管との接続部に設けられ、
前記二次側配管から前記吸気管に流入する空気と水が通過する本体部と、該本体部内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部と、該ピストン部を後退移動方向に付勢するコイルバネとによって構成され、前記本体部は、シリンダ部と、該シリンダ部の一端側に装着されるカバー部とからなる負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁において、
前記カバー部の閉塞部分の中心部の外側面に、前記シリンダ部内において前記コイルバネの付勢力に抗して前記ピストン部をその最前進位置まで押し出す点検棒を備えてなることを特徴とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁にある。また、前記シリンダ部は、その一端部が閉塞された円筒状をなし閉塞部分の中心部に、流出口と、該流出口の内側に連成された該流出口より小径の開口を設けてなり、前記カバー部は、一端部が閉塞された円筒状をなし、閉塞部分に、流入口を設けてなり、前記ピストン部は、一端部が閉塞された円筒状をなし、他端部に外径が前記シリンダ部の内径と等しいフランジ部を形成し、閉塞部分の中心部に前記シリンダ部における閉塞部分の開口より小径の開口を設けると共に、円筒状部分に該小径の開口より大径の開口を設けてなるものである。
【0034】
また、上記構成において、ピストン部に設ける大径の開口と小径の開口とを、大径の開口のみとしてもよい。
【0035】
また、上記構成において、点検棒の先端部に、点検時においてピストン部の閉塞部分に設けた小径の開口内の汚れを除去するための突起を設けるようにしてもよい。
【0036】
また、上記構成において、点検棒の先端面に、点検時において該点検棒がピストン部の閉塞部分に設けた小径の開口部への接触を防止するための凹部又は溝部を設けるようにしてもよい。
【0037】
また、上記構成において、点検棒を操作開始位置に復帰させるバネを設けるようにしてもよい。
【0038】
また、上記構成において、点検棒におけるカバー部から突出する後端部に、該点検棒の先端部の突起がピストン部の閉塞部分に設けた小径の開口内に挿入されたことと、ピストン部がシリンダ部内において最前進位置まで移動したこととを確認するための目印を設けるようにしてもよい。
【0039】
また、上記構成において、カバー部の閉塞部分の中心部の外面側に、点検棒のカバー部から突出する後端部を覆う、該点検棒の誤操作防止用のキャップ状カバーを設けるようにしてもよい。
【0040】
また、上記構成において、カバー部の閉塞部分の中心部の外面側に、点検棒を、その後端側を摺動自在に貫挿した、摘みを有する所要の外径の柱状体と、該柱状体を抜脱自在に嵌め込む柱状体受容孔とをもって構成する保守用分解部を設けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明は上記の如き構成であり、用いる流量制御弁として、本発明者らが先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備において用いる流量制御弁に、ピストン部を押し出す点検棒を備えることにより、定期的に点検し、加圧水を流入させることなくピストン部の動作を確認することができるようにした構成を付加したものであるから、流量制御弁の作用効果をより持続的に確実なものとすることができるものである。そして、延いてはこれを用いた負圧湿式予作動スプリンクラー設備の保守、管理の面においても有益な効果をもたらすことができるものである。
【0042】
また、点検棒の先端部に、点検時においてピストン部の閉塞部分に設けた小径の開口内の汚れを除去するための突起を設けてなる場合には、点検の都度ピストン部の閉塞部分に設けた小径の開口内の汚れを押し出して除去することができるものである。
【0043】
また、点検棒の先端面に、点検時において該点検棒がピストン部の閉塞部分に設けた小径の開口に接触することによる該小径の開口への汚れの付着を防止するための凹部又は溝部を設けてなる場合には、点検時において点検棒がピストン部の閉塞部分に設けた小径の開口に接触することによる該小径の開口への汚れの付着を防止することができるものである。
【0044】
また、点検棒を操作開始位置に復帰させるバネを設けてなる場合には、点検時における点検棒の元の位置への戻し忘れを防止することができるものである。
【0045】
また、点検棒におけるカバー部から突出する後端部に、該点検棒の先端部の突起がピストン部の閉塞部分に設けた小径の開口内に挿入されたことと、ピストン部がシリンダ部内において最前進位置まで移動したこととを確認するための目印を設けてなる場合には、流量制御弁の外部において点検棒の押し出し位置を目視により確認することができ、点検棒による確実な操作を確保することができるものである。
【0046】
また、カバー部の閉塞部分の中心部の外面側に、点検棒のカバー部から突出する後端部を覆う、該点検棒の誤操作防止用のキャップ状カバーを設けてなる場合には、非点検時において点検棒を誤操作することを防止することができるものである。
【0047】
また、カバー部の閉塞部分の中心部の外面側に、点検棒を、その後端側を摺動自在に貫挿した、摘みを有する所要の外径の柱状体と、該柱状体を抜脱自在に嵌め込む柱状体受容孔とをもって構成する保守用分解部を設けてなる場合には、点検時において点検棒を取り外して内部を目視で点検することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備の概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の断面図であり、火災発生時の状態を示すものである。
図3】本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の断面図であり、点検時における点検棒を途中位置まで押し込んだ状態を示すものである。
図4】本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の断面図であり、点検時における点検棒をピストン部が最前進位置に移動するまで押し込んだ状態を示すものである。
図5】本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の変形例の断面図であり、平常時の状態を示すものである。
図6】本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の変形例の断面図であり、点検時における点検棒をピストン部が最前進位置に移動するまで押し込んだ状態を示すものである。
図7】本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の他の変形例の断面図であり、平常時の状態を示すものである。
図8】本発明者らが先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備の概略構成図である。
図9】本発明者らが先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の断面図であり、平常時の状態を示すものである。
図10】本発明者らが先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の断面図であり、火災発生時の状態を示すものである。
図11】本発明者らが先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の変形例の断面図であり、平常時の状態を示すものである。
図12】従来の負圧湿式予作動スプリンクラー設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0050】
図1は本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備100″の概略構成図である。尚、吸引管の途中部に設置された、二次側配管内の圧力の状態を適正に保持する流量制御弁の点のみが異なり、その他の構成は図8に示した本発明者らが先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備100′と同様であるから、同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
而して、本実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備100″は、吸引管108の途中部に設置された、二次側配管104内の圧力の適正保持用の流量制御弁として、電力不要とした本発明者らが先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備100′における流量制御弁1に、ピストン部を押し出す点検棒を備えることにより、定期的に点検し、加圧水を流入させることなくピストン部の動作を確認することができるようになした構成を付加してなる流量制御弁1′を用いることにおいて本発明者らが案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備100′と相違するものである。
【0052】
また、該流量制御弁1′は、本発明者らが先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備100′で用いる流量制御弁1におけるカバー部2Bの閉塞部分2B′に設けた流入口7を、一端側7Aが閉塞部分2B′の側面側に開口し、他端側7Bが閉塞部分2B′の中心部の内側面に開口するようになすと共に、カバー部2Bの閉塞部分2B′の中心部の外側面に、シリンダ部2A内においてコイルバネ13の付勢力に抗してピストン部9をその最前進位置まで押し出す点検棒14を備えてなるものである。
【0053】
また、該点検棒14は、本実施形態においては後記保守用分解部の柱状体に後端部を摺動自在に貫挿し、軸方向の中央部はカバー部2Bの閉塞部分2B′における流入口7B内に設けた支承体15によって摺動自在に支承されている。
【0054】
また、本実施形態においては、該点検棒14の先端部に、点検時においてピストン部9の閉塞部分9′に設けた小径の開口11内の汚れを除去するための突起14Aを設けている。
【0055】
また、上記点検棒14は、図5及び図6に示す如く、その先端面に、点検時において該点検棒14がピストン部9の閉塞部分9′に設けた小径の開口11に接触することによる該小径の開口11への汚れの付着を防止するための凹部又は溝部14Bを設けるようにしてもよい。
【0056】
また、本実施形態においては、該点検棒14を操作開始位置に復帰させるバネ16を設けている。尚、該バネ16は、点検棒14の後端部に設けたバネ受け体17とカバー部2Bの閉塞部分2B′との間に縮設したコイルバネであり、本実施形態においてはバネ受け体17と後記保守用分解部の柱状体との間に設けている。
【0057】
また、本実施形態においては、該点検棒14におけるカバー部2Bから突出する後端部に、該点検棒14の先端部の突起14Aがピストン部9の閉塞部分9′に設けた小径の開口11内に挿入されたことと、ピストン部9がシリンダ部2A内において最前進位置まで移動したことを確認するための目印18、19を設けている。
【0058】
また、本実施形態においては、カバー部2Bの閉塞部分2B′の中心部の外面側に、該点検棒14のカバー部2Bから突出する後端部を覆う、該点検棒14の誤操作防止用のキャップ状カバー20を設けている。
【0059】
また、本実施形態においては、カバー部2Bの閉塞部分2B′の中心部の外面側に、該点検棒14を、その後端側を摺動自在に貫挿した、摘み21Aを有する所要の外径の柱状体21と、該柱状体21を抜脱自在に嵌め込む柱状体受容孔22とをもって構成する保守用分解部23を設けている。
【0060】
次に、図7に示した上記実施形態における流量制御弁1′の変形例について説明する。
該変形例は、前記実施形態において、ピストン部9に大径の開口12と小径の開口11とを設けているのに対して、大径の開口12のみとしている点において相違している。尚、その他の構成においては前記実施形態と同様であるから、同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
次に、上記実施形態の作用について説明する。
流量制御弁1′を定期的に点検するときには、先ず、キャップ状カバー20を取り外し、そして図3に示す如く、点検棒14を、その後端側から目印18が保守用分解部23における柱状体21の摘み21Aの外面に一致する位置まで押し込むものである。これにより点検棒14の突起14Aがピストン部9の閉塞部分9′に設けた小径の開口11内に挿入され、その内部の汚れを除去すると共に、目印18をもってこれが確実に行われたことを確認することができるものである。
【0062】
そして、更に点検棒14を、図4に示す如く、その目印19が保守用分解部23における柱状体21の摘み21Aの外面に一致する位置まで押し込むものである。これにより、ピストン部9は加圧水を用いることなく、コイルバネ13の付勢力に抗して最前進位置まで移動させられることになる。そしてまた、これは目印19をもって確認することができるものである。そして、これによりピストン部9の正常な動作を確認することができると共に正常な動作を確保することができるものである。
【0063】
そして、以上の操作が終了したら点検棒14の加圧を解くが、このときバネ16の作用により該点検棒14は操作開始位置まで自動的に復帰せしめられ、もって点検棒14の元の位置へ戻し忘れを防止することができるものである。
【0064】
また、点検棒14のカバー部2Bから突出する後端部はキャップ状カバー20によって覆われているから、非点検時において点検棒14を誤操作することを防止することができるものである。
【0065】
また、カバー部2Bの閉塞部分2B′の中心部の外面側に保守用分解部23を設けているから、点検時において点検棒14を取り外して内部を目視で点検することができるものである。
【0066】
本発明は以上の通りであり、用いる流量制御弁1′として本発明者らが先に案出した流量制御弁1に、ピストン部9を押し出す点検棒14を備えることにより、定期的に点検し、加圧水を流入させることなくピストン部9の動作を確認することができるようにした構成を付加したものであるから、流量制御弁1′の作用効果を、より持続的に確実なものとすることができるものである。そして、延いてはこれを用いた負圧湿式予作動スプリンクラー設備100″の保守、管理の面においても有益な効果をもたらすことができるものである。
【符号の説明】
【0067】
1、1′ 流量制御弁
2 本体部
2A シリンダ部
2A′ 閉塞部分
2B カバー部
2B′ 閉塞部分
3 流出口
4 開口
7 流入口
7A 流入口の一端側
7B 流入口の他端側
9 ピストン部
9′ 閉塞部分
10 フランジ部
11 小径の開口
12 大径の開口
13 コイルバネ
14 点検棒
14A 突起
14B 凹部又は溝部
16 バネ
18、19 目印
20 キャップ状カバー
21 柱状体
22 柱状体受容孔
23 保守用分解部
100″ 負圧湿式予作動スプリンクラー設備
100′ 本発明者らが先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備
100 従来の負圧湿式予作動スプリンクラー設備
101 一次側配管
102 消火水槽
103 送水ポンプ
104 二次側配管
105 スプリンクラーヘッド
106 予作動式流水検知装置
107 火災感知器
108 吸引管
109 真空ポンプ
110 吸気管
111 排水管
113 真空スイッチ
114 信号受信盤
115 制御盤
【要約】      (修正有)
【課題】従来のオリフィス付き自動弁の有する問題点を解消すると共に、加圧水を流入させることなくピストン部の動作を確認できる流量制御弁を提供する。
【解決手段】吸引管の途中部に設置される流量制御弁1′を、シリンダ部2Aとカバー部2Bとからなる本体部2と、本体部2内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部9と、ピストン部9を後退移動方向に付勢するコイルバネ13とをもって構成する。シリンダ部2Aは、一端部が閉塞された円筒状で、閉塞部分2A′の中心部に、流出口3と、該流出口3の内側に連成された該流出口3より小径の開口4を設ける。カバー部2Bは、一端部が閉塞された円筒状をなし、閉塞部分2B′に流入口7を設ける。カバー部2Bの閉塞部分2B′の中心部の外側面に、シリンダ部2A内においてコイルバネ13の付勢力に抗してピストン部9をその最前進位置まで押し出す点検棒14を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12