(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭化水素と水が原料として供給されると共に、炭化水素と水蒸気からなる混合気を水蒸気改質することにより水素を主成分とする一次改質ガスを生成し、前記一次改質ガスから一酸化炭素を削減した二次改質ガスを生成する多重筒型改質器であって、
一端側から供給された炭化水素と水が加熱されて混合ガスとされる予熱部と、前記予熱部の下流側に形成され、前記混合ガスが水蒸気改質されることによって水素と一酸化炭素とを含む一次改質ガスが生成される改質部と、を有する原料流路と、
前記原料流路の内側に隣接して配設され、燃料ガスを燃焼させた燃焼排ガスを流す排ガス流路と、
前記原料流路の外側に隣接して配設され、前記予熱部の外側全域に配置され前記一次改質ガスに含まれる水と一酸化炭素を水性シフト反応で二酸化炭素と水素に変換して前記二次改質ガスを生成するシフト反応部のみが設けられた一酸化炭素除去流路と、
を備える多重筒型改質器。
前記多重筒型改質器の前記排ガス流路の内側には、前記燃料ガスを燃焼させるバーナーが配設された燃焼室が形成されており、前記バーナーのノズルの先端が前記改質部の内側に位置している請求項1記載の多重筒型改質器。
【背景技術】
【0002】
従来、水素を得るための水素製造装置としては、原料炭化水素を水蒸気改質装置で改質ガスに改質した後、PSA(Pressure Swing Adsorption)装置(水素精製器)へ供給するものが知られている。
【0003】
ところで、水蒸気改質装置として多重筒型改質器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この多重筒型改質器では、同心円状の筒状壁が多重に配置され、隣接して配置された筒状壁間あるいは一番内側の筒状壁の内部が流路として用いられる。
【0004】
具体的には、2番目と3番目の筒状壁の間が、一端から供給された原料である炭化水素ガスと水が予熱されると共に混合されて混合ガスとされる予熱流路と、予熱流路の下流側に混合ガスが水蒸気改質される改質触媒層とされている。この内側、すなわち、1番目と2番目の筒状壁の間が、燃焼室から排出された燃焼排ガスが流される燃焼排ガス流路とされている。一方、この外側、すなわち、3番目と4番目の筒状壁の間が、改質触媒層で改質された一次改質ガスから一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去流路とされ、予熱流路の外側に一次改質ガス中の一酸化炭素を水性シフト反応で二酸化炭素に変換するシフト反応部と、一次改質ガス中の一酸化炭素を酸化反応で二酸化炭素にする酸化部と、が配設されている。
【0005】
このように構成されることにより、予熱流路に供給された炭化水素ガスと水は、燃焼排ガス流路を流れる燃焼排ガスと熱交換(排ガスによって加熱)されると共に、一酸化炭素除去通路のシフト反応部で水性シフト反応している改質ガスや酸化部で酸化反応している改質ガスと熱交換されることによって加熱され、効率的に混合ガスとされる。
【0006】
また、この水素製造装置では、改質器において、水性シフト反応と酸化反応で一次改質ガスから一酸化炭素を確実に除去(二酸化炭素に変換)して二次改質ガスを生成することによって、水素精製器での除去が困難な一酸化炭素を一次改質ガスから除去(低減)し、製品水素の水素純度を向上させることができるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載される従来技術では、シフト反応部で一次改質ガスに水性シフト反応を生じさせることで一次改質ガス中の一酸化炭素を低減させ、さらに酸化部で空気と一次改質ガスを反応させて一酸化炭素を酸化させ二酸化炭素とすることで、一次改質ガス中の一酸化炭素を一層低減させていた。
【0009】
これは、一次改質ガス中の一酸化炭素を除去する点では優れているが、一酸化炭素を酸化させるために酸化部で空気を導入しているため、空気中に含まれるアルゴンが二次改質ガスに混入する。下流側の水素精製器で、このアルゴンを二次改質ガスから除去することが容易でないため、製造される水素純度が低下してしまうという問題がある。
【0010】
一方、多重筒型改質器において、一酸化炭素除去流路から酸化部を除去するだけでは、予熱部に対する加熱量が低下するという問題がある。
【0011】
本発明の課題は、予熱部に対する加熱量を確保しつつ改質ガスに対するアルゴンの混入を防止は又は抑制した多重筒型改質器、及び製品水素の水素純度を向上させた水素製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の多重筒型改質器は、炭化水素と水が原料として供給されると共に、炭化水素と水蒸気からなる混合気を水蒸気改質することにより水素を主成分とする一次改質ガスを生成し、前記一次改質ガスから一酸化炭素を削減した二次改質ガスを生成する多重筒型改質器であって、一端側から供給された炭化水素と水が加熱されて混合ガスとされる予熱部と、前記予熱部の下流側に形成され、前記混合ガスが水蒸気改質されることによって水素と一酸化炭素とを含む一次改質ガスが生成される改質部と、を有する原料流路と、前記原料流路の内側に隣接して配設され、燃料ガスを燃焼させた燃焼排ガスを流す排ガス流路と、前記原料流路の外側に隣接して配設され、前記予熱部の外側全域に配置され前記一次改質ガスに含まれる水と一酸化炭素を水性シフト反応で二酸化炭素と水素に変換して前記二次改質ガスを生成するシフト反応部のみが設けられた一酸化炭素除去流路と、を備える。
【0013】
この多重筒型改質器では、原料である炭化水素と水が供給される。多重筒型改質器の予熱部では炭化水素と水が加熱されることにより混合ガスとされ、改質部で混合ガスが水蒸気改質され、水素を主成分とする一次改質ガスが生成される。
【0014】
改質部で水蒸気改質された一次改質ガスは、一酸化炭素除去流路のシフト反応部で含有される水と一酸化炭素が水性シフト反応により水素と二酸化炭素に変換される。すなわち、シフト反応部で一次改質ガスから一酸化炭素が低減された二次改質ガスが生成される。
【0015】
ところで、一酸化炭素除去流路には、シフト反応部のみが設けられている。すなわち、一次改質ガスから一酸化炭素を除去(低減)する際、水性シフト反応のみを用いているため、二次改質ガスに空気が混入することがない。すなわち、多重筒型改質器では、アルゴンの混入が防止された二次改質ガスを生成することができる。
【0016】
したがって、この多重筒型改質器を水素製造装置に組み込み、多重筒型改質器で生成された二次改質ガスを水素精製器で精製することにより水素を製造する場合には、水素精製器で除去しにくい空気中のアルゴンの混入が防止された二次改質ガスが水素精製器に供給されるため、製品水素の水素純度を向上させることができる。
【0017】
一方、多重筒型改質器では、原料流路の外側に位置する一酸化炭素除去流路のうち、予熱部の外側全域にシフト反応部を設けたため、予熱部の内側の排ガス流路を流れる燃焼排ガスの熱と、予熱部の外側全域に設けられたシフト反応部での水性シフト反応による反応熱とによって原料の水が十分に加熱されて水蒸気となり良好に混合ガスが生成され、多重筒型改質器における水蒸気改質反応が促進される。
【0018】
請求項2記載の多重筒型改質器では、請求項1記載の多重筒型改質器において、前記多重筒型改質器の前記排ガス流路の内側には、前記燃料ガスを燃焼させるバーナーが配設された燃焼室が形成されており、前記バーナーのノズルの先端が前記改質部の内側に位置している。
【0019】
多重筒型改質器の燃焼室に配置されたバーナーのノズル先端が、改質部の内側に位置している。したがって、バーナーに燃料ガスを供給することによりノズル先端から火炎を形成すると、多重筒型改質器の改質部の内側にバーナーの火炎が位置することになる。この結果、改質部に対する熱供給量が増大し、改質部における吸熱反応である水蒸気改質反応が一層促進される。
【0020】
請求項3記載の水素製造装置は、請求項1又は2記載の多重筒型改質器と、前記多重筒型改質器と接続され、前記二次改質ガスを製品水素と不純物とに分離して製品水素を精製する水素精製器と、を備える。
【0021】
この水素製造装置では、原料である炭化水素と水が多重筒型改質器に供給される。多重筒型改質器の予熱部では炭化水素と水が加熱されることにより混合ガスとされ、改質部で混合ガスが水蒸気改質され、水素を主成分とする一次改質ガスが生成される。
【0022】
改質部で水蒸気改質された一次改質ガスは、一酸化炭素除去流路のシフト反応部で含有される水と一酸化炭素が水性シフト反応により水素と二酸化炭素に変換される。すなわち、シフト反応部で一次改質ガスから一酸化炭素が低減された二次改質ガスが生成される。
【0023】
ところで、一酸化炭素除去流路には、シフト反応部のみが設けられている。すなわち、一次改質ガスから一酸化炭素を除去(低減)する際、水性シフト反応のみを用いているため、二次改質ガスに空気が混入することがない。したがって、水素精製器で除去しにくい空気中のアルゴンの混入が防止された二次改質ガスが水素精製器に供給されるため、製品水素の水素純度を向上させることができる。
【0024】
一方、多重筒型改質器では、原料流路の外側に位置する一酸化炭素除去流路のうち、予熱部の外側全域にシフト反応部を設けたため、予熱部の内側の排ガス流路を流れる燃焼排ガスの熱と、予熱部の外側全域に設けられたシフト反応部での水性シフト反応による反応熱とによって原料の水が十分に加熱されて水蒸気となり良好に混合ガスが生成され、多重筒型改質器における水蒸気改質反応が促進される。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明に係る多重筒型改質器は、上記構成としたので、改質器の予熱部に対する加熱量を確保しつつ、二次改質ガスにアルゴンが混入することを防止できる。
【0026】
請求項2記載の発明に係る多重筒型改質器は、上記構成としたので、改質部に対する熱供給量が増大し、改質部における水蒸気改質反応が一層促進される。
【0027】
請求項3記載の発明に係る水素製造装置は、上記構成としたので、改質器の予熱部に対する加熱量を確保しつつ、製品水素の水素純度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る多重筒型改質器及び水素製造装置の一例を
図1及び
図2を参照して説明する。
【0030】
〈水素製造装置〉
水素製造装置10は、
図1に示すように、炭化水素(都市ガス)から水蒸気改質した改質ガスを生成する多重筒型改質器(以下、「改質器」という場合がある)12と、改質ガスを圧縮する圧縮機80と、圧縮された改質ガスから不純物を除去して水素ガスを精製する水素精製器90と、を備えている。また、水素製造装置10は、圧縮機80の上流側、下流側でそれぞれ改質ガスから水分を分離・除去する昇圧前水分離部50、昇圧後水分離部60と、改質器12の後述する燃焼排ガスから水分を分離・除去する燃焼排ガス水分離部70と、を備えている。
【0031】
なお、この水素製造装置10は、炭化水素原料から水素を製造するものであり、本実施形態では、炭化水素原料の一例としてメタンを主成分とする都市ガスが用いられる場合について説明する。
【0032】
(多重筒型改質器)
多重筒型改質器12は、
図2に示すように、多重に配置された複数の筒状壁21、22、23、24(以下、「筒状壁21〜24」という場合がある)を有している。複数の筒状壁21〜24は、例えば円筒状や楕円筒状に形成される。複数の筒状壁21〜24のうち内側から一番目の筒状壁21の内部には、燃焼室25が形成されており、この燃焼室25の上部には、バーナー26が下向きに配置されている。
【0033】
さらに、この燃焼室25の上端部には、外部から燃焼用空気を供給するための空気供給管40が接続されている。バーナー26には、さらに都市ガスを供給するための原料供給管33から分岐された原料分岐管33Aが接続されている。原料分岐管33Aには、空気供給管40から分岐された空気分岐管40Aが接続されている。また。バーナー26には、オフガス還流管100が接続されている。したがって、バーナー26には、都市ガスに空気が混合された気体又はオフガスが、供給される構成である。なお、都市ガスに空気が混合された気体又はオフガスが「燃料ガス」に相当する。
【0034】
一番目の筒状壁21と二番目の筒状壁22との間には、燃焼排ガス流路27が形成されている。燃焼排ガス流路27の下端部は、燃焼室25と連通されており、燃焼排ガス流路27の上端部には、ガスを排出するためのガス排出管28が接続されている。燃焼室25から排出された燃焼排ガスは、燃焼排ガス流路27を下側から上側に流れ、ガス排出管28を通じて燃焼排ガス水分離部70へ送出される構成である。なお、燃焼排ガス流路27が「排ガス流路」に相当する。
【0035】
また、二番目の筒状壁22と三番目の筒状壁23との間には、第1流路31が形成されている。この第1流路31の上部は、予熱流路32として形成されており、この予熱流路32の上端部には、都市ガスを供給するための原料供給管33と、改質用水を供給するための改質用水供給管34とが接続されている。さらに、二番目の筒状壁22と三番目の筒状壁23との間には、螺旋部材35が設けられており、この螺旋部材35により、予熱流路32は、螺旋状に形成されている。なお、第1流路31が「原料流路」に相当する。また、予熱流路32が「予熱部」に相当する。
【0036】
なお、燃焼排ガス流路27、予熱流路32は、多重筒型改質器12の周方向において全周に亘って形成されており、その軸方向範囲A(
図2参照)は、改質触媒層36の上端から第1流路31の上端までの範囲である。
【0037】
予熱流路32には、都市ガスが原料供給管33から供給可能とされ、さらに、改質用水が改質用水供給管34から供給可能とされている。都市ガス及び改質用水は、予熱流路32を上側から下側に流れ、二番目の筒状壁22を介して燃焼排ガスと熱交換されると共に、三番目の筒状壁23を介して後述するCO変成触媒層45において水性シフト反応している改質ガスG0と熱交換され、水が気化される構成である。この予熱流路32では、都市ガス及び気相の改質用水(水蒸気)が混合されることにより、混合ガスが生成される構成である。
【0038】
また、第1流路31における予熱流路32の下側には、改質触媒層36が設けられており、予熱流路32にて生成された混合ガスは、改質触媒層36へ供給される構成である。改質触媒層36では、燃焼排ガス流路27を流れる燃焼排ガスからの熱を受け、混合ガスが吸熱反応である水蒸気改質反応することによって、水素を主成分とする改質ガスG0が生成される構成である。なお、改質触媒層36が「改質部」に相当する。また、改質ガスG0が「一次改質ガス」に相当する。
【0039】
さらに、三番目の筒状壁23と四番目の筒状壁24との間には、第2流路42が形成されている。第2流路42の下端部は、第1流路31の下端部と連通されている。第2流路42の下部は、改質ガス流路43として形成されており、第2流路42の上端部には、改質ガス排出管44が接続されている。なお、第2流路42が「一酸化炭素除去流路」に相当する。
【0040】
また、第2流路42における改質ガス流路43よりも上側には、CO変成触媒層45が設けられており、改質触媒層36にて生成された改質ガスG0は、改質ガス流路43を通過した後、CO変成触媒層45へ供給される構成である。CO変成触媒層45では、改質ガスG0に含まれる一酸化炭素と水蒸気が水性シフト反応により水素と二酸化炭素に変換され、改質ガスG0の一酸化炭素が低減(削減)可能とされている。
【0041】
すなわち、第2流路42には、改質ガスG0から一酸化炭素を低減する手段として、CO変成触媒層45のみが配設されている。
【0042】
CO変成触媒層45で一酸化炭素が低減された改質ガスG1は、改質ガス排出管44を通じて排出される構成である。なお、改質ガスG1が「二次改質ガス」に相当する。
【0043】
なお、このCO変成触媒層45は、多重筒型改質器12の周方向で全周に亘って配設されており、軸方向(
図2、矢印X方向参照)で予熱流路32の外側全域(軸方向範囲B)に配置されている。
【0044】
ここで、「CO変成触媒層45が予熱流路32の外側全域に配置」とは、筒状壁23に占める予熱流路32の表面積(軸方向範囲A)に対する筒状壁23に占めるCO変成触媒層45の表面積(軸方向範囲B)の割合が70%以上であることを意味する。
【0045】
多重筒型改質器12において生成された改質ガスG1は、
図1に示すように、昇圧前水分離部50、圧縮機80、昇圧後水分離部60、及び水素精製器90をこの順番で流れる。つまり、ガスの流れ方向において、上流側から下流側に、多重筒型改質器12、昇圧前水分離部50、圧縮機80、昇圧後水分離部60、及び水素精製器90がこの順番で配置されている。
【0046】
(昇圧前水分離部)
昇圧前水分離部50には、多重筒型改質器12から改質ガスG1を流入させる改質ガス排出管44の下流端が接続されている。昇圧前水分離部50の底部には水回収管59が接続され、昇圧前水分離部50の上部には連絡流路管56が接続されている。改質ガスG1は、昇圧前水分離部50の上流の改質ガス排出管44に配置された熱交換器HE1において、冷却水との熱交換による冷却により水が凝縮されて分離され、昇圧前水分離部50の下部に水(液相)が貯留可能とされている。当該水(液相)は、水回収管59へ送出される構成である。水が凝縮された後の改質ガスG2は、連絡流路管56へ送出される構成である。
【0047】
(圧縮機)
圧縮機80には、昇圧前水分離部50からの改質ガスG2が流れる連絡流路管56と、昇圧後水分離部60へ供給される改質ガスG2が流れる連絡流路管66とが接続されている。圧縮機80は、昇圧前水分離部50から供給された改質ガスG2を圧縮し、昇圧後水分離部60へ供給可能とされている。
【0048】
(昇圧後水分離部)
昇圧後水分離部60には、圧縮機80から改質ガスG2を流入させる連絡流路管66の下流端が接続されている。昇圧後水分離部60の底部には水回収管69が接続され、昇圧後水分離部60の上部には連絡流路管68が接続されている。改質ガスG2は、昇圧後水分離部60の上流の連絡流路管66に配置された熱交換器HE2において、冷却水との熱交換による冷却により水が凝縮されて分離され、昇圧後水分離部60の下部に水(液相)が貯留可能されている。当該水(液相)は、水回収管69へ送出される構成である。水が凝縮された後の改質ガスG3は、連絡流路管68へ送出される構成である。
【0049】
(水素精製器)
水素精製器90には、昇圧後水分離部60からの改質ガスG3が流れる連絡流路管68の下流端と、水素精製器90のオフガスが流れるオフガス還流管100の上流端とが接続されている。
【0050】
水素精製器90は、一例として、PSA装置が使用されている。この水素精製器90では、一対の吸着槽を備え、一方の吸着槽で吸着剤に不純物を吸着させる吸着工程を行い、他方の吸着槽で吸着剤に吸着した不純物を脱着させる脱着工程を行い、次に一方の吸着槽で脱着工程、他方の吸着槽で吸着工程を行う。これを周期的に繰り返すことで、改質ガスG3を水素と一酸化炭素を含む不純物(オフガスOG)とに連続的に分離して、水素が精製される構成である。精製された水素は、水素供給管92へ送出され、不図示のタンクへ貯留されたり、水素供給ラインへ送出可能とされている。
【0051】
水素精製器90のオフガスは、オフガス還流管100を介して改質器12のバーナー26に供給可能とされている。
【0052】
(オフガスタンク)
水素精製器90から改質器12の燃焼室25のバーナー26に連通するオフガス還流管100の途中には、オフガスタンク102が設けられている。水素精製器90から送出されたオフガスはオフガスタンク102に一旦貯留され、平準化されてバーナー26に供給される構成である。
【0053】
(燃焼排ガス水分離部)
燃焼排ガス水分離部70には、改質器12の燃焼排ガス流路27から燃焼排ガスを導くガス排出管28の下流端が接続されている。燃焼排ガス水分離部70の底部には水回収管78が接続され、燃焼排ガス水分離部70の上部にはガス排出管76が接続されている。燃焼室25から排出される燃焼排ガスは、燃焼排ガス水分離部70の上流のガス排出管28に配置された熱交換器HE3において、冷却水との熱交換による冷却により水が凝縮されて分離され、燃焼排ガス水分離部70の下部に水(液相)が貯留可能とされている。当該水(液相)は、水回収管78へ送出される構成である。水が凝縮された後の燃焼排ガスは、ガス排出管76から外気中へ排出される構成である。
【0054】
水回収管59、69、78の各々の下流端は、改質用水供給管34に接続されている。改質用水供給管34には、溶存イオン成分を除去するための水処理器(イオン交換樹脂)34Aが設けられている。また、改質用水供給管34には、外部水供給部17が接続されている。外部水供給部17から改質用水供給管34に、例えば純水または市水が供給される構成である。
【0055】
さらに、改質用水供給管34には、ポンプP1が設けられている。昇圧前水分離部50、昇圧後水分離部60、燃焼排ガス水分離部70で分離された水、又は外部水供給部17から供給された水は、ポンプP1によって多重筒型改質器12へ供給される構成である。
【0056】
(作用)
次に、水素製造装置10(多重筒型改質器12)の作用について説明する。
【0057】
都市ガスが、原料供給管33から多重筒型改質器12に供給される。
図2に示すように、多重筒型改質器12へ供給された都市ガスは、多重筒型改質器12の予熱流路32で改質用の水と混合されつつ、予熱流路32の内側の燃焼排ガス流路27を通過する燃焼排ガスと熱交換されると共に、予熱流路32の外側の第2流路42に配置されたCO変成触媒層45で水性シフト反応(発熱反応)している改質ガスと熱交換される。すなわち、都市ガスと改質用水が混合されつつ加熱され、改質触媒層36へ供給される。
【0058】
改質触媒層36では、混合ガスが燃焼排ガス流路27を流れる燃焼排ガスの熱を受けて吸熱反応である水蒸気改質反応を生じ、水素を主成分とする改質ガスG0が生成される。この改質ガスG0は、改質ガス流路43を通ってCO変成触媒層45へ供給される。CO変成触媒層45では、改質ガスG0に含まれる一酸化炭素と水蒸気が反応して水素と二酸化炭素に変換され(水性シフト反応)、一酸化炭素が低減される。
【0059】
このように、CO変成触媒層45で一酸化炭素が低減された改質ガスG1は、改質ガス排出管44へ送出される。
【0060】
この際、多重筒型改質器12の燃焼室25では、原料分岐管33Aと空気分岐管40Aから供給された都市ガスと空気とが混合された気体、又はオフガス還流管100から供給されたオフガスがバーナー26によって燃焼される。燃焼排ガスは、燃焼室25から燃焼排ガス流路27、ガス排出管28を介して燃焼排ガス水分離部70へ供給される。
図1に示すように、燃焼排ガスに含まれる水は、熱交換器HE3での熱交換により冷却されて凝縮され、燃焼排ガス水分離部70に貯留され、水回収管78へ送出される。水が分離された燃焼排ガスは、ガス排出管76から外気中へ排出される。
【0061】
一方、
図1に示すように、改質ガスG1は、改質ガス排出管44を経て、昇圧前水分離部50へ供給される。昇圧前水分離部50では、熱交換器HE1での熱交換による冷却により凝縮された水が貯留され、水回収管59へ送出される。水が分離された改質ガスG2は、連絡流路管56から圧縮機80へ供給され、圧縮機80によって圧縮される。
【0062】
圧縮された改質ガスG2は、連絡流路管66から昇圧後水分離部60へ供給される。昇圧後水分離部60では、熱交換器HE2での熱交換による冷却により凝縮された水が貯留され、水回収管69へ送出される。水が分離された改質ガスG3は、連絡流路管68から水素精製器90へ供給される。
【0063】
なお、昇圧前水分離部50、昇圧後水分離部60、燃焼排ガス水分離部70からそれぞれ水回収管59、69、78に送出された水は、改質用水供給管34に戻される。ポンプP1の駆動により、改質用水供給管34から多重筒型改質器12に改質用水として供給される。
【0064】
水素精製器90では、圧力スイング方式が採用されており、一対の吸着槽の一方では吸着剤に水素以外の不純物が吸着され、他方の吸着槽では吸着剤に吸着された不純物が脱着されている。水素精製器90では、この吸着工程と脱着工程をそれぞれの吸着槽で一定の周期で繰り返すことにより、改質ガスG3から連続的に水素と不純物が分離されて水素が精製される。
【0065】
水素精製器90で精製された製品としての水素は水素供給管92へ送出され、不図示のタンクへ貯留されたり、水素供給ラインへ送られたりする。
【0066】
一方、水素精製器90から排出されたオフガスOGは、オフガス還流管100の途中に設けられたオフガスタンク102に一旦貯留された後、流量や組成が平準化されて改質器12のバーナー26に供給される。なお、このオフガスOGには、改質器12で除去しきれなかった一酸化炭素と水素精製器90で分離しきれなかった水素が含有されている。
【0067】
このように、水素製造装置10では、改質器12で改質触媒層36で水蒸気改質された改質ガスG0から一酸化炭素を除去するのに、CO変成触媒層45(水性シフト反応)のみを用いている。すなわち、改質器12では、空気を用いない反応のみで改質ガスG0から一酸化炭素を除去しているため、改質器12から送出される改質ガスG1にアルゴンが含有されることが防止される。
【0068】
したがって、改質ガスG1(G3)に水素精製器90で除去しにくいアルゴンが含まれていないため、水素精製器90で精製された製品水素の純度を向上させることができる。あるいは、水素精製器90でアルゴンを除去するために、水素精製器90の負荷が増大することが防止される。
【0069】
一方、改質器12においては、予熱流路32の外側全域にCO変成触媒層45が配設されている。ここで、筒状壁23に占める予熱流路32の表面積(軸方向範囲A)に対する筒状壁23に占めるCO変成触媒層45の表面積(軸方向範囲B)の割合が70%以上とされている。したがって、発熱反応である水性シフト反応が行われているCO変成触媒層45から予熱流路32を流れる水(水蒸気)と炭化水素に十分な熱量を与える(十分に加熱する)ことができる。すなわち、CO変成触媒層45は、燃焼排ガス流路27を流れる燃焼排ガスと共に、予熱流路32を流れる水(水蒸気)と炭化水素に十分な熱量を供給できるので、予熱流路32で炭化水素と水から混合ガスを良好に生成することができる。
【0070】
また、改質器12では、改質ガスG0中の一酸化炭素の除去(一酸化炭素から二酸化炭素への変換)を全てCO変成触媒層45(水性シフト反応)で行う。したがって、水性シフト反応と酸化反応を用いていたものとの比較において、酸化反応部分もCO変成触媒層45(水性シフト反応部分)に置換したため、製品水素の生産量が増加する。
【0071】
さらに、第2流路42のうち、予熱流路32の外側全域にCO変成触媒層45が設けられたため、CO変成触媒層45の軸方向長さ(容積)が十分に確保され、空間速度(SV)が低減され、CO変成触媒層45の負荷が低減される。
【0072】
また、改質器12において、改質ガスG0から一酸化炭素を削減する手段としてCO変成触媒層45のみを用いているため、改質器12の構造が簡略化される。
【0073】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る多重筒型改質器及び水素製造装置の一例を
図1及び
図3を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と異なるのは、多重筒型改質器におけるバーナーの位置のみなので、該当部分のみ説明し、他の説明は省略する。
【0074】
(構成)
図3に示すように、水素製造装置200の多重筒型改質器202では、燃焼室25に配設されたバーナー204の軸方向長さが第1実施形態のバーナー26と比較して長くされている。すなわち、バーナー204のノズル206の先端206Aが改質触媒層36の内側に位置するように、バーナー204が燃焼室25に配設されている。
【0075】
(作用)
このように構成された水素製造装置200では、第1実施形態の水素製造装置10と同様の作用を奏する。
【0076】
また、多重筒型改質器202のバーナー204に都市ガスに空気が混合された気体又はオフガスが供給されることにより、バーナー204で燃焼される。
【0077】
ここで、
図3に示すように、多重筒型改質器202の燃焼室25においてバーナー204のノズル206は下向きに開口している。また、バーナー204のノズル206の先端206Aは、改質触媒層36の内側に位置している。
【0078】
したがって、
図3に示すように、バーナー204のノズル206の先端206Aに形成される火炎Fは下向きに形成され、改質触媒層36の内側に位置する。
【0079】
ところで、多重筒型改質器202では、都市ガスと改質用水から生成された混合ガスが改質触媒層36に供給されることによって水蒸気改質されるが、この水蒸気改質反応は吸熱反応である。したがって、燃焼室25においてバーナー26で形成される火炎Fが改質触媒層36の内側に位置することにより、改質触媒層36に対する熱供給量が増大し、改質触媒層36における水蒸気改質が一層促進される。
【0080】
[その他]
一実施形態に係る水素製造装置10では、水素精製器90がPSA装置である場合について説明したが、改質ガスG3から水素を精製できるものであれば、これに限定するものではない。
【解決手段】この水素製造装置では、多重筒型改質器12の第2流路42にCO変成触媒層45のみが配設されている。したがって、改質触媒層36で水蒸気改質された改質ガスG0からCO変成触媒層45で一酸化炭素が削減されて、二酸化炭素に変換された改質ガスG1を製造することができる。このように、改質ガスG0から一酸化炭素を削減する際、水性シフト反応のみを用いているため、空気を用いることがない。したがって、水素精製器で除去しにくい空気中のアルゴンが改質ガスG1中に混入することが防止され、製品水素の水素純度を向上させることができる。