特許第6553276号(P6553276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6553276
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】歯科用テーブルシート
(51)【国際特許分類】
   A61G 15/14 20060101AFI20190722BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   A61G15/14
   A61C19/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-228885(P2018-228885)
(22)【出願日】2018年12月6日
【審査請求日】2018年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2018-77334(P2018-77334)
(32)【優先日】2018年4月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 敦
(72)【発明者】
【氏名】細井 貴洋
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−015452(JP,A)
【文献】 実開平02−085134(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3072767(JP,U)
【文献】 特開2006−115989(JP,A)
【文献】 特開平09−206317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 15/14
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用テーブルに被せられ、裏面の全面に予め合成樹脂層を有する繊維製のテーブル側シート部と、
前記合成樹脂層の裏面の端部に重ねられて接着部を介して接着され、前記端部から伸びて前記歯科用テーブルの操作パネルに被せられる透明の合成樹脂であるパネル側シート部と、を有し、
前記接着部が、前記端部の長さ方向に渡って連続し、
前記合成樹脂層の裏面において、前記パネル側シート部の端縁が、前記接着部よりも、前記歯科用テーブルに対して前記操作パネルと反対側である奥側に張出し、
前記端部近傍が、前記テーブル側シート部の前記繊維及び前記合成樹脂層と、前記パネル側シート部の前記合成樹脂層との三層構造を成し、かつ、前記奥側に張出した前記端縁が前記接着部において歪むことで、隆起した、
ことを特徴とする歯科用テーブルシート。
【請求項2】
歯科用テーブルに被せられ、裏面の全面に予め合成樹脂層を有する繊維製のテーブル側シート部と、
前記合成樹脂層の裏面に重ねられて端部において接着部を介して接着され、前記歯科用テーブルに対して前記操作パネルと反対側である奥側に張出して予め前記合成樹脂層の裏面に重ねられた部分が、前記接着部で折り返されることで前記端部から伸びて前記歯科用テーブルの操作パネルに被せられる透明の合成樹脂であるパネル側シート部と、を有し、
前記接着部が、前記端部の長さ方向に渡って連続した、
ことを特徴とする歯科用テーブルシート。
【請求項3】
前記テーブル側シート部が、前記奥側に向けて、前記歯科用テーブルよりも張り出して伸びると共に垂れ下がる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された歯科用テーブルシート。
【請求項4】
前記合成樹脂層の裏面に粘着層を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載された歯科用テーブルシート。
【請求項5】
前記パネル側シート部の裏面に粘着層を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された歯科用テーブルシート。
【請求項6】
裏面に静電気を有している、
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載された歯科用テーブルシート。
【請求項7】
前記パネル側シート部に、前記歯科用テーブルの把持部を覆うための把持部用シート片を形成する切込み部を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載された歯科用テーブルシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科医院の歯科診療装置に備えられた歯科用テーブルに用いられる歯科用テーブルシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科医院に設置された歯科診療装置は、例えば、患者のカルテ、診療に用いられる各種の施術用器具、歯への詰め物、金属容器または薬品容器などの診療道具が置かれるテーブルが備えられている。診療道具は、患部への接触や血液の付着によって感染する可能性があり、また、歯科医師や歯科衛生士など(以下、「歯科医師等」と記す。)の手も診療によって感染する可能性がある。これらの診療道具が置かれ、また、歯科医師等が触れたテーブルは、不衛生であるため、テーブルの衛生を保つために、歯科医師等は、使い捨てのシートをテーブルに被せ、患者ごとにシートを交換し、また、消毒や滅菌の処理を施している。このような事情において、テーブルの衛生を保つための発明として、例えば、下記特許文献1に記載されたカバー部材がある。
【0003】
このカバー部材は、テーブルに倣ったほぼ箱型の形状であり、テーブルの上面と側面を覆うことで衛生を保つものである。操作パネルを有するテーブルに用いる場合は、透明のカバー部材が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−115989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したカバー部材は、テーブルの上面と側面を覆う箱型のものであるため、テーブルへの着脱が必ずしも簡便ではない。特に、透明のカバー部材は、一般的に液体を透過しない性質であるため、仮に液体がカバー部材に付着していた場合、カバー部材がテーブルから取り外される際、液体がこぼれる場合がある。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、液体を吸収し、かつ、操作パネルの視認性を維持しつつ、歯科用テーブルの衛生を保つことができる歯科用テーブルシートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る歯科用テーブルシートは、歯科用テーブルに被せられ、裏面の全面に予め合成樹脂層を有する繊維製のテーブル側シート部と、前記合成樹脂層の裏面の端部に重ねられて接着部を介して接着され、前記端部から伸びて前記歯科用テーブルの操作パネルに被せられる透明の合成樹脂であるパネル側シート部と、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、前記テーブル側シート部が、前記歯科用テーブルに対して前記操作パネルと反対側である奥側に向けて、前記歯科用テーブルよりも張り出して伸びた、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、前記合成樹脂層の裏面に粘着層を有する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、前記パネル側シート部の裏面に粘着層を有する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、前記粘着層に剥離シートを有する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、裏面に静電気を有している、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、前記端部から張り出す側の前記パネル側シート部が、予め前記合成樹脂層の裏面に重ねられた、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、前記パネル側シート部に、前記歯科用テーブルの把持部を覆うための把持部用シート片を形成する切込み部を有する、ことを特徴とする。
【0015】
なお、本発明は、以下の構成であってもよい。歯科用テーブルシートは、歯科用テーブルに被せられる繊維製のテーブル側シート部と、このテーブル側シート部の端部から伸びて前記歯科用テーブルの操作パネルに被せられる透明のパネル側シート部と、を有する。
【0016】
歯科用テーブルシートは、前記テーブル側シート部の裏面に、合成樹脂層を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、歯科用テーブルに被せられ、裏面の全面に予め合成樹脂層を有する繊維製のテーブル側シート部と、合成樹脂層の裏面の端部に重ねられて接着部を介して接着され、端部から伸びて歯科用テーブルの操作パネルに被せられる透明の合成樹脂であるパネル側シート部とを有している。この構成により、歯科用テーブルの衛生を保つことができる。仮に歯科用テーブル上で液体がこぼれた場合であっても、繊維製のテーブル側シート部に浸透する。また、透明のパネル側シート部を通して操作パネルが透けるため、操作パネルの視認性が維持される。
【0018】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、テーブル側シート部の裏面に、合成樹脂層を有していることから、歯科用テーブル上でこぼれた液体は、繊維製のテーブル側シート部に浸透し、合成樹脂層で遮水される。すなわち、液体が歯科用テーブルシートを透過することを防ぐことができる。また、合成樹脂の方が、繊維と比較して、歯科用テーブルに密着しやすいため、歯科用テーブルに対して滑り止めの効果がある。さらに、合成樹脂層の方が、繊維と比較して、透明のパネル側シート部が接着しやすいため、製造が簡便である。
【0019】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、端部において、テーブル側シート部の繊維および合成樹脂層と、パネル側シート部の合成樹脂とで、繊維層および二層の合成樹脂層の三層構造である。すなわち、三層構造の端部近傍は、繊維と合成樹脂層との二層構造と比較して厚く、歯科用テーブルシートが歯科用テーブルに被せられた状態において、端部が僅かに隆起し、他と比較して端部近傍が僅かに高い。仮に歯科用テーブル上でこぼれた液体が、繊維に浸透しきれない量であった場合や、繊維に浸透するよりも早い勢いで流れた場合であっても、隆起した端部近傍において液体が端部を超え難く、パネル側シート部が浸水し難い。したがって、歯科用テーブルの衛生を保つことができる。
【0020】
また、こぼれた液体が繊維に浸透して合成樹脂層に至った場合、液体が操作パネルに向けて滲み出る可能性があるが、本発明に係る歯科用テーブルシートは、パネル側シート部がテーブル側シート部の裏面に接着されているため、仮に歯科用テーブルシート部の合成樹脂層とパネル側シート部とが連続した一体のシートであった場合と比較して、液体がパネル側シート部に侵食することが抑止される。
【0021】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、端部において接着部を有していることから、接着手段によっては、接着部が僅かに歪むことで厚みが生じる。すなわち、歯科用テーブルシートが歯科用テーブルに被せられた状態において、端部が僅かに隆起し、他と比較して端部近傍が僅かに高いため、パネル側シート部が浸水し難い。したがって、歯科用テーブルの衛生を保つことができる。
【0022】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、テーブル側シート部が、歯科用テーブルに対して操作パネルと反対側である奥側に向けて、歯科用テーブルよりも張り出して伸びている。すなわち、テーブル側シート部が、歯科用テーブルに対して奥側に向けて張り出して伸び、かつ、パネル側シート部が、操作パネルに向けて張り出して伸びているため、歯科用テーブルシートは、歯科用テーブルの前後の端から張り出して垂れ下がる。したがって、前後にバランスが取れた状態で、歯科用テーブルシートを、歯科用テーブルに安定して被せることができる。
【0023】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、合成樹脂層の裏面に粘着層を有している。この構成により、粘着力でテーブル側シート部が歯科用テーブルに貼り付き、歯科用テーブルに対して滑り止めの効果がある。
【0024】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、パネル側シート部の裏面に粘着層を有している。この構成により、粘着力でパネル側シート部が操作パネルに貼り付き、操作パネルに対して滑り止めの効果がある。
【0025】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、粘着層に剥離シートを有している。この構成により、剥離シートが剥がされることで、歯科用テーブルまたは/および操作パネルに歯科用テーブルシートが貼り付けられ、再び剥離シートが貼り付けられることで粘着層が保護される。
【0026】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、裏面に静電気を有している。この構成により、静電気でテーブル側シート部が歯科用テーブルに貼り付き、および/または、パネル側シート部が操作パネルに貼り付き、歯科用テーブルに対して滑り止めの効果がある。
【0027】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、端部から張り出す側のパネル側シート部が、予め合成樹脂層の裏面に重ねられている。すなわち、歯科用テーブルシートは、未使用時において、パネル側シート部がテーブル側シート部の裏面に予め重なっており、使用時に、パネル側シート部が合成樹脂層から剥がされて端部において折り返される。端部においてパネル側シート部に折目が形成されるため、歯科用テーブルシートが歯科用テーブルに被せられた状態において、端部が僅かに隆起し、他と比較して端部近傍が僅かに高い。そのため、パネル側シート部が浸水し難い。したがって、歯科用テーブルの衛生を保つことができる。また、未使用時において、パネル側シート部における張り出す側がテーブル側シート部の裏面に収められているため、嵩張らずに保管することができる。
【0028】
本発明に係る歯科用テーブルシートは、パネル側シート部に、歯科用テーブルの把持部を覆うための把持部用シート片を形成する切込み部を有している。すなわち、切込み部を介して切り離された把持部用シート片で把持部が覆われることによって、把持部の衛生が維持される。
【0029】
切込み部は、例えばミシン目のように、切られた部分と切られていない部分とから構成されている。すなわち、把持部用シート片は、切り離される前において、切られていない部分を介してパネル側シート部と同一面上に形成されている。したがって、歯科医師等が、容易に歯科用テーブルシートを歯科用テーブルに被せることができる。なお、仮に、把持部用シート片が、予め切り離されていた場合、把持部用シート片は、パネル側シート部にぶら下がり、不本意にパネル側シート部に貼り付いたり、歯科用テーブルの不本意な位置に載せられたりする場合がある。
【0030】
また、未使用の歯科用テーブルシートを複数枚重ねて保管することができる。なお、仮に、把持部用シート片が、予め切り離されていた場合、歯科用テーブルシートが複数枚重なると、把持部用シート片や、この把持部用シート片の後に形成された孔が、積層された歯科用テーブルシート同士で干渉する場合がある。
【0031】
また、把持部用シート片は、一部がパネル側シート部から独立しているため、歯科医師等が把持部用シート片の上から把持部を把持した場合であっても、このことによってテーブル側シート部が引っ張られない。なお、仮に、把持部用シート片が存在しない場合、歯科医師等が把持部を把持すると、パネル側シート部が把持部に巻き付けられると同時にテーブル側シート部が引っ張られる。そのため、歯科用テーブルシートが歯科用テーブルからずれ、また、歯科用テーブルシートの上に置かれていた診療道具が落下する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る歯科用テーブルシートの使用状態が示された使用状態斜視図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る歯科用テーブルシートの外観が示され、(a)は、歯科用テーブルシートの表面が示された平面図、(b)は、歯科用テーブルシートの裏面が示された底面図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係る歯科用テーブルシートの断面拡大概略図である。
図4図4は、本発明の第二実施形態に係る歯科用テーブルシートの底面図である。
図5図5は、本発明の第二実施形態に係る歯科用テーブルシートの概略が示され、(a)は、未使用時の断面拡大概略図であり、(b)は、使用時の断面拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の第一実施形態に係る歯科用テーブルシートを図面に基づいて説明する。図1は、歯科用テーブルシート10の使用状態が示されている。図2は、歯科用テーブルシート10の外観が示されている。
【0034】
図1に示されているとおり、歯科用テーブルシート10は、歯科診療装置(図示省略)の歯科用テーブル1の全体に被せられるものであり、歯科用テーブル1に被せられる繊維製のテーブル側シート部11と、このテーブル側シート部11の手前側端部から伸びて歯科用テーブル1の操作パネル2に被せられる透明のパネル側シート部12とを有している。パネル側シート部12は、歯科用テーブル1の把持部3を覆うための把持部用シート片15を形成する切込み部16が形成されている。テーブル側シート部11は、歯科用テーブル1の上面の面積よりもやや大きく、また、パネル側シート部12も、操作パネル2の上面の全体および把持部3を覆う程度に操作パネル2の上面の面積よりもやや大きく形成されている。
【0035】
詳説すれば、歯科用テーブルシート10は、テーブル側シート部11が、歯科用テーブル1に対して操作パネル2と反対側である奥側に向けて、歯科用テーブル1よりも張り出して伸び、かつ、パネル側シート部12が、操作パネル2に向けて張り出して伸びている。したがって、歯科用テーブルシート10は、歯科用テーブル1の奥側および手前側の端から張り出して垂れ下がっている。
【0036】
なお、歯科用テーブル1が備えられた歯科診療装置は、例えば、患者が横たわる診療シートと、患者が口内に含んだ水を吐き出すためのスピットンと、患者の口元を照らすデンタルライトと、種々のインスツルメント4が保持されたインスツルメント保持装置5などを有している。歯科用テーブル1とインスツルメント保持装置5とが一体となっている場合もある。操作パネル2は、ハンドピースの回転数、ライト付ハンドピースのライトのON/OFF、デンタルライトのON/OFF、診療シートのコントロール、スピットンの洗浄、給水などの操作スイッチが備えられている。操作パネル2は、手前側に把持部3が備えられている。把持部3の形状は、例えば“U”字状であるが、大きさや形状は任意である。
【0037】
図2に示されているとおり、歯科用テーブルシート10は、四角形であり、テーブル側シート部11の手前側端部にパネル側シート部12が接着されたものである。テーブル側シート部11は、二層構造であり、表側層が、例えば、不織布などであり、裏側層が、合成樹脂層13である。
【0038】
付言すれば、テーブル側シート部11は、裏面の全面に予め合成樹脂層13を有している。
【0039】
不織布は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどの熱可塑性樹脂の合成繊維に親水処理を施したもの、その他、天然繊維がスパンボンド法などによって加工されたものが含まれる。また、テーブル側シート部11は、モスリン、正絹、麻、木綿などであってもよい。合成樹脂層13は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンポリ塩化ビニルなどのプラスチック製である。歯科用テーブル1と接触する側である合成樹脂層13は、パネル側シート部12と比較して、荒く形成されている。すなわち、合成樹脂層13の手触りは若干ザラザラし、なめらかではない。
【0040】
パネル側シート部12は、例えば、透明、または操作パネル2の視認性に影響がない程度の半透明な合成樹脂であり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンポリ塩化ビニルなどのプラスチック製である。パネル側シート部12は、テーブル側シート部11において、裏面の合成樹脂層13に接着部14を介して接着している。接着部14は、例えば液体接着剤による接着の他、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波などの溶着である。パネル側シート部12の重量は、テーブル側シート部11の重量と比較して軽量である。
【0041】
付言すれば、パネル側シート部12は、合成樹脂層13の裏面における手前側端部に重ねられている。すなわち、図3に示されているとおり、歯科用テーブルシート10は、手前側端部において、テーブル側シート部11の繊維および合成樹脂層13と、パネル側シート部12の合成樹脂とで、繊維層および二層の合成樹脂層による三層構造である。三層構造である手前側端部近傍は、繊維と合成樹脂層13との二層構造と比較して厚い。
【0042】
図2に示されているとおり、把持部用シート片15は、パネル側シート部12の一部であって、切込み部16によって区切られたことで形成され、パネル側シート部12のほぼ中央に配置されている。切込み部16は、歯科用テーブル1の把持部3に適応させた形状であり、例えば、表面(図1における操作パネル2の正面)から視して、逆“U”字状である。切込み部16は、切られた部分と、切られていない部分である連接部17とから構成され、切込み部16におけるパネル側シート部12と把持部用シート片15との連接の状態は、一か所または数か所の連接部17で連接されている。そのため、連接部17が切り離されることで、把持部用シート片15が、基部18を起点とした自由端となる。なお、切込み部16は、無数の孔によって形成されたミシン目であってもよく、ミシン目の粗密は任意である。また、切込み部16の形状は、歯科用テーブル1の把持部3に応じて任意であり、また、複数種類の把持部3の形状に合わせて、複数種類の切込み部16が形成されていてもよい。
【0043】
なお、把持部用シート片15の有無は任意である。
【0044】
以上のとおり、歯科用テーブルシート10が構成されている。次に、歯科用テーブルシート10の効果を説明する。
【0045】
上記したとおり、歯科用テーブルシート10は、歯科用テーブル1に被せられる不織布であるテーブル側シート部11と、このテーブル側シート部11の手前側端部に溶着して歯科用テーブル1の操作パネル2に被せられる透明のパネル側シート部12とを有している(図1参照)。この構成により、歯科医師等は、歯科用テーブルシート10を歯科用テーブル1に被せることで患者ごとに歯科用テーブルシート10を容易に交換し、使い捨てることができ、また、歯科用テーブル1の衛生を保つことができる。仮にテーブル側シート部11上で液体がこぼれた場合であっても、不織布のテーブル側シート部11に浸透する。また、透明のパネル側シート部12を通して操作パネル2が透けるため、操作パネル2の視認性が維持される。
【0046】
歯科用テーブルシート10は、テーブル側シート部11が二層構造であり、表側層の不織布と、裏側層の合成樹脂層13とを有している(図2参照)。この構成により、液体は、表側層の不織布に浸透し、合成樹脂層13で遮水される。すなわち、合成樹脂層13は、液体が歯科用テーブルシート10を透過することを防ぎ、防液コートとして機能する。また、合成樹脂層13の方が、不織布と比較して、歯科用テーブル1に密着しやすいため、歯科用テーブル1に対して滑り止めの効果がある。特に、合成樹脂層13は、パネル側シート部12と比較して、荒く形成されているため、歯科用テーブル1に密着して滑り止めとなる。さらに、合成樹脂層13の方が、不織布と比較して、パネル側シート部12が溶着しやすいため、製造が簡便である。
【0047】
歯科用テーブルシート10は、手前側端部において、テーブル側シート部11の繊維および合成樹脂層13と、パネル側シート部12の合成樹脂とで、繊維層および二層の合成樹脂層による三層構造である。三層構造である手前側端部近傍は、繊維と合成樹脂層13との二層構造と比較して厚く、歯科用テーブルシート10が歯科用テーブル1に被せられた状態において、手前側端部が僅かに隆起し、他と比較して手前側端部近傍が僅かに高い。仮に歯科用テーブル1上でこぼれた液体が、繊維に浸透しきれない量であった場合や、繊維に浸透するよりも早い勢いで流れた場合であっても、隆起した手前側端部近傍において液体が手前側端部を超え難く、パネル側シート部12が浸水し難い。したがって、歯科用テーブル1の衛生を保つことができる。
【0048】
歯科用テーブルシート10は、手前側端部において接着部14を有していることから、接着手段によっては、接着部14が僅かに歪むことで厚みが生じる。すなわち、歯科用テーブルシート10が歯科用テーブル1に被せられた状態において、手前側端部が僅かに隆起し、他と比較して手前側端部近傍が僅かに高いため、パネル側シート部12が浸水し難い。したがって、歯科用テーブル1の衛生を保つことができる。
【0049】
歯科用テーブルシート10のパネル側シート部12は、テーブル側シート部11において、裏面の合成樹脂層13に接着している。仮に、テーブル側シート部11の表面にパネル側シート部12が接着された場合、パネル側シート部12が重なった分、テーブル側シート部11の表面に露出する面積が減るが、この場合と比較して、本実施形態では、パネル側シート部12において表面に露出する面積が、十分に確保できる。したがって、こぼれた液体を吸収する面積を広くとることができる。
【0050】
また、仮に、テーブル側シート部11の表面にパネル側シート部12が接着され、接着手段が、例えば溶着であった場合、溶着により接着部14が僅かに歪むことでパネル側シート部12の奥側の端部が立ち上がり、そこに施術者の腕や白衣の袖が引っ掛かる場合がある。しかし、本実施形態では、パネル側シート部12が、テーブル側シート部11の裏面に接着しているため、溶着により接着部14が歪んだ場合であっても、パネル側シート部12の奥側の端部が表側に立ち上がることがない。したがって、施術の妨げにならず、円滑に施術を行うことができる。
【0051】
また、例えば、パネル側シート部12が、テーブル側シート部11の裏面に折り返され、接着部14の近傍において、パネル側シート部12に折目が形成された場合、パネル側シート部12を広げたとき、折目を歯科用テーブル1と操作パネル2との境界の角に合わせることで、この角に折目が係止され、歯科用テーブルシート10が位置決めされる。したがって、パネル側シート部12が操作パネル2に沿った形状に、歯科用テーブルシート10を変形させ、安定させて歯科用テーブル1に取り付けることができる。なお、仮に、テーブル側シート部11の表面にパネル側シート部12が接着され、パネル側シート部12がテーブル側シート部11の表面に折り返されて、パネル側シート部12の表面に折目が形成された場合、パネル側シート部12を広げたとき、折目を歯科用テーブル1と操作パネル2との境界の角に係止することができない。
【0052】
歯科用テーブルシート10は、テーブル側シート部11が、歯科用テーブル1に対して操作パネル2と反対側である奥側に向けて、歯科用テーブル1よりも張り出して伸び、かつ、パネル側シート部12が、操作パネル2に向けて張り出して伸びている。したがって、歯科用テーブルシート10は、歯科用テーブル1の奥側および手前側の端から張り出して垂れ下がることで、前後にバランスが取れた状態で、歯科用テーブル1に安定して被せられる。
【0053】
歯科用テーブルシート10は、パネル側シート部12に、歯科用テーブル1の把持部3を覆うための把持部用シート片15を形成する切込み部16を有している(図2参照)。すなわち、切込み部16を介して切り離された把持部用シート片15で把持部3が覆われることによって、把持部3の衛生が維持される(図1参照)。また、把持部用シート片15は、一部がパネル側シート部12から独立しているため、歯科医師等が把持部用シート片15の上から把持部3を把持した場合であっても、このことによってテーブル側シート部11が引っ張られない。したがって、歯科用テーブル1に歯科用テーブルシート10を取り付けたまま、歯科医師等は、把持部3を把持して歯科用テーブル1を移動させることができる。
【0054】
歯科用テーブルシート10の切込み部16は、切られた部分と、切られていない部分である連接部17とから構成され、把持部用シート片15は、切り離される前において、連接部17を介してパネル側シート部12と同一面上に形成されている。すなわち、把持部用シート片15は、予め切り離されていない。したがって、歯科医師等が、容易に歯科用テーブルシート10を歯科用テーブル1に被せることができる。また、未使用の歯科用テーブルシート10を複数枚重ねて保管することができる。
【0055】
次に、本発明の第二実施形態に係る歯科用テーブルシートを図面に基づいて説明する。図4および図5は、第二実施形態に係る歯科用テーブルシート20が示されている。なお、以下では、第一実施形態に係る歯科用テーブルシート1と異なる構成が主に説明され、同様の構成は説明が適宜省略されている。
【0056】
図4に示されているとおり、歯科用テーブルシート20は、パネル側シート部12のうち、手前側端部から張り出す側21が、予めテーブル側シート部11における合成樹脂層13の裏面に重ねられている。詳説すれば、テーブル側シート部11とパネル側シート部12とは、手前側端部において揃えられ、パネル側シート部12の全面がテーブル側シート部11の範囲に収まっている。
【0057】
すなわち、図5(a)に示されているとおり、歯科用テーブルシート10は、未使用時において、張り出す側21が合成樹脂層13に予め重なっている。一方で、図5(b)使用時では、パネル側シート部12が合成樹脂層13から剥がされ、手前側端部において、接着部14を境に折り返される。換言すれば、未使用時におけるパネル側シート部12の裏面が、使用時において表面となる。手前側端部においてパネル側シート部12に折目が形成されるため、歯科用テーブルシート10が歯科用テーブル1に被せられた状態において、手前側端部が僅かに隆起し、他と比較して手前側端部近傍が高い。そのため、仮に歯科用テーブル1上で液体がこぼれた場合であっても、パネル側シート部12が浸水し辛い。したがって、歯科用テーブル1の衛生を保つことができる。また、未使用時において、パネル側シート部12がテーブル側シート部11の裏面に収められているため、嵩張らずに保管することができる。
【0058】
なお、張り出す側21の一部がテーブル側シート部11から張り出していてもよい。すなわち、パネル側シート部12をテーブル側シート部11から剥がしやすくするために把持されるつまみ部(図示省略。)を任意の位置に有していてもよい。
【0059】
本発明の他の実施形態(図示省略。)は、合成樹脂層13の裏面に粘着層を有している。粘着層は、合成樹脂層13の裏面の全面、または、部分的に形成されている。粘度は、歯科用テーブル1に対して滑り止めとなり、かつ、粘性が歯科用テーブル1に移らず着脱自在であれば任意である。第二実施形態に係る歯科用テーブルシート20の場合、粘着層を介することで、パネル側シート部12がテーブル側シート部11の合成樹脂層13の裏面に貼り付く。
【0060】
本発明の他の実施形態(図示省略。)は、パネル側シート部12の裏面に粘着層を有している。粘着層は、パネル側シート部12の裏面の全面、または、部分的に形成されている。粘度は、操作パネル2に対して滑り止めとなり、かつ、粘性が操作パネル2に移らず着脱自在であれば任意である。第二実施形態に係る歯科用テーブルシート20の場合、粘着層を介することで、テーブル側シート部11の合成樹脂層13がパネル側シート部12に貼り付く。
【0061】
本発明の他の実施形態(図示省略。)は、合成樹脂層13の裏面およびパネル側シート部12の裏面に粘着層を有している。
【0062】
本発明の他の実施形態(図示省略。)は、粘着層に、予め剥離シートが貼り付けられている。剥離シートは、例えば、紙製、合成樹脂製などであり、粘着層に着脱自在である。したがって、剥離シートは、粘着層から一度剥離された後、再び粘着層に貼り付けることが可能である。合成樹脂層13の裏面にのみ粘着層を有しているのであれば、剥離シートは、合成樹脂層13の裏面にのみ貼り付けられ、パネル側シート部12の裏面にのみ粘着層を有しているのであれば、剥離シートは、パネル側シート部12の裏面にのみ貼り付けられ、
合成樹脂層13の裏面およびパネル側シート部12の裏面に粘着層を有しているのであれば、剥離シートは、合成樹脂層13の裏面およびパネル側シート部12の裏面に貼り付けられている。
【0063】
本発明の他の実施形態(図示省略。)は、テーブル側シート部11の合成樹脂層13および/またはパネル側シート部12が予め帯電し、静電気を有している。静電気によって、テーブル側シート部11が歯科用テーブル1に貼り付き、または/および、パネル側シート部12が操作パネル2に貼り付く。
【0064】
上記した本発明の他の実施形態はいずれも、歯科用テーブル1(操作パネル2)に対して滑り止めの効果がある。
【0065】
なお、本発明の参考例は、テーブル側シート部11の合成樹脂層13と、パネル側シート部12とが一体である。すなわち、他の実施形態に係る歯科用テーブルシート10は、合成樹脂層13が、表側層よりも手前側に向けて長く形成され、表側層よりも長く形成された部分が、パネル側シート部12である。したがって、合成樹脂層13とパネル側シート部12とが一体である。
【0066】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 歯科用テーブル
2 操作パネル
3 把持部
4 インスツルメント
5 インスツルメント保持装置
10、20 歯科用テーブルシート
11 テーブル側シート部
12 パネル側シート部
13 合成樹脂層
14 接着部
15 把持部用シート片
16 切込み部
17 連接部
18 基部
21 張り出す側
【要約】
【課題】液体を吸収し、かつ、操作パネルの視認性を維持しつつ、歯科用テーブルの衛生を保つことができる歯科用テーブルシートを提供する。
【解決手段】歯科用テーブルシート10は、歯科用テーブル1に被せられる不織布であるテーブル側シート部11と、このテーブル側シート部11の手前側端部に溶着して歯科用テーブル1の操作パネル2に被せられる透明のパネル側シート部12とを有している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5