(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553294
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】無線通信システム、通信ユニット、端末及び通信システムにおけるチャネル推定の方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
H04B7/06 984
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-517813(P2018-517813)
(86)(22)【出願日】2016年9月22日
(65)【公表番号】特表2018-534849(P2018-534849A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】EP2016072484
(87)【国際公開番号】WO2017060093
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2018年5月29日
(31)【優先権主張番号】15306583.4
(32)【優先日】2015年10月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーゼマン,シュテファン
【審査官】
大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0219377(US,A1)
【文献】
特表2006−504336(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/204868(WO,A1)
【文献】
LI,Dan et al.,Pilot-Assisted Channel Estimation Method for OFDMA Systems over Time-Varying Channels,IEEE Communications Letters,2009年11月17日,Vol.13, No.11,pp.826-828
【文献】
WESEMANN,Stefan,Semi-Blind Estimation of FDD Massive MIMO Channels using Correlative Coded Analog Feedback,20th International ITG Workshop on Smart-Antennas,2016年 3月11日,pp.79-85
【文献】
LIM,Yeon-Geun at al.,Compressed Channel Feedback for Correlated Massive MIMO Systems,2014 IEEE International Conference on Communications Workshops(ICC),2014年 6月14日,pp.360-364
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ユニット及び1以上の端末を備える無線通信システムにおけるチャネル推定の方法であって、前記通信ユニットは複数のアンテナを備え、前記方法が、
前記複数のアンテナの各アンテナから前記1以上の端末にパイロット信号を送信するステップ、
前記送信されたパイロット信号に関して前記1以上の端末で相関符号化を実行して相関符号化されたパイロット信号を形成するステップであって、前記1以上の端末が2本以上のアンテナを備える場合に、前記相関符号化されたパイロット信号には端末固有の相関シグネチャ又はアンテナ固有の相関シグネチャが付与される、ステップ、
前記相関符号化されたパイロット信号を前記1以上の端末から前記複数のアンテナに再度送信するステップ、
前記1以上の端末と前記複数のアンテナの間のアップリンクチャネルを前記相関符号化されたパイロット信号に基づいて推定するステップ、及び
前記推定されたアップリンクチャネルに基づいて前記複数のアンテナと前記1以上の端末の間のダウンリンクチャネルの推定値を得るステップ
を備える方法。
【請求項2】
前記1以上の端末から前記複数のアンテナにデータ信号を送信するステップであって、各データ信号は該データ信号の発生源である送信元の識別に関連する情報を備える、ステップ、及び
送信元識別情報を用いてアップリンクチャネル及びダウンリンクチャネルを対応する端末にリンクするステップ
をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記送信元識別情報は、前記1以上の端末に単一アンテナが設けられる場合には端末固有の情報であり、又は前記1以上の端末に2本以上のアンテナが設けられる場合にはアンテナ固有の情報である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
相関符号化は、自己回帰モデル、好ましくは1次自己回帰モデルによって受信パイロット信号をフィルタリングするステップを備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
相関符号化は、前記パイロット信号について巡回畳み込み演算を実行するステップを備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1以上のユーザ端末と前記複数のアンテナの間のアップリンクチャネルを推定するステップは、2次ブラインド識別アルゴリズムを利用する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
通信システムにおいて1以上の端末(UE1−UE4;SC1−SC2)と通信する通信ユニット(10;50)であって、前記通信ユニットは、
複数のアンテナ(30−1、・・・、30−m;70−1、・・・、70−m)、及び
少なくとも1つのチャネル推定モジュール(20;60)
を備え、
前記通信ユニットは、
前記通信システムにおいてパイロット信号を前記複数のアンテナの各アンテナから前記1以上の端末に送信し、
前記1以上の端末が2本以上のアンテナを有する場合に端末固有の相関シグネチャ又はアンテナ固有の相関シグネチャが付与される相関符号化されたパイロット信号を前記1以上の端末から前記複数のアンテナで受信し、
前記相関符号化されたパイロット信号に基づいて前記少なくとも1つのチャネル推定モジュールによって前記1以上の端末と前記複数のアンテナの間のアップリンクチャネルを推定し、及び
前記推定されたアップリンクチャネルに基づいて前記少なくとも1つのチャネル推定モジュールによって前記複数のアンテナと前記1以上のユーザ端末の間のダウンリンクチャネルの推定値を得るように構成された通信ユニット。
【請求項8】
前記通信ユニットは、少なくとも1つの復号化モジュール(25;65)をさらに備え、前記通信ユニットは、
データ信号であって該データ信号の発生源である送信元の識別に関連する情報を備えるデータ信号を前記1以上の端末から前記複数のアンテナを介して受信し、
受信した送信元識別情報を用いて前記少なくとも1つのチャネル復号化モジュール(25;65)によってアップリンクチャネル及びダウンリンクチャネルを対応する端末にリンクするようにさらに構成された、請求項7に記載の通信ユニット。
【請求項9】
前記少なくとも1つのチャネル推定モジュールが、2次ブラインド同定アルゴリズムの使用によって前記アップリンクチャネルを推定するように構成された、請求項7又は8に記載の通信ユニット。
【請求項10】
通信システムにおいて複数のアンテナ(30−1、・・・、30−m;70−1、・・・、70−m)を有する通信ユニット(10;50)と通信する端末(UE1−UE4;SC1−SC4)であって、前記端末は、
それぞれ前記通信ユニットの前記複数のアンテナから信号を受信し及び前記通信ユニットの前記複数のアンテナに信号を送信する送受信機、及び
符号化部(40;90)
を備え、
前記端末は、
前記複数のアンテナの各アンテナから送信されたパイロット信号を受信し、
前記受信したパイロット信号に関して前記符号化部を用いて相関符号化を実行し、前記1以上の端末が2本以上のアンテナを備える場合に端末固有の相関シグネチャ又はアンテナ固有の相関シグネチャが付与される相関符号化されたパイロット信号を形成し、
前記相関符号化されたパイロット信号を前記複数のアンテナに再度送信することにより前記通信ユニットが前記符号化されたパイロット信号に基づいてアップリンクチャネルを推定すること及び前記推定されたアップリンクチャネルに基づいてダウンリンクチャネルを推定することを可能とするように構成された端末。
【請求項11】
前記複数のアンテナにデータ信号を送信するようにさらに構成され、前記データ信号は該データ信号の発生源である送信元の識別に関連する情報を含む、請求項10に記載の端末。
【請求項12】
前記符号化部によって実行される相関符号化は、受信パイロット信号を自己回帰モデルによってフィルタリングするステップを備える、請求項10又は11に記載の端末。
【請求項13】
前記端末がユーザ端末(UE1−UE4)である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の端末。
【請求項14】
前記端末が中継局(SC1−SC4)である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の端末。
【請求項15】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の通信ユニット及び請求項10〜14のいずれか一項に記載の1以上の端末を備える通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の実施形態は、通信ユニット及び1以上の端末を備える無線通信システムにおけるチャネル推定の方法に関する。発明の実施形態はさらに、通信システムにおける1以上の端末と通信するための通信ユニットに関する。発明の実施形態はさらに、通信システムにおける複数のアンテナを供給された通信システムと通信するための端末に関する。最後に、発明の実施形態は、通信ユニット及び1以上の端末を備える通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この章では、発明のより良い理解の促進に役立ち得る態様を紹介する。したがって、この章における記載はこの観点で読まれるものであり、当該技術分野で既知のものについて自認するものとして理解されるべきではない。
【0003】
大規模多入力多出力(MIMO)通信システムにおいて、大規模MIMO基地局ともいう大規模MIMO中央ノードには、空間多重化を用いて同じ時間/周波数リソース上で複数の例えばK個の端末にサービングするための複数の例えばM本のアンテナを備えるアンテナアレイが設けられる。大規模MIMO通信システムにおける多重化動作の動作を成功させる主要因は、十分に正確なチャネル状態情報(CSI)の取得に関係する。特に、大規模MIMO基地局は、M本のアンテナの各々とK個の端末の各々との間の伝搬チャネルの周波数応答の十分に正確な推定値を得る必要がある。
【0004】
そのようなCSIを得ることは、データ転送のアップリンク及びダウンリンクの両方で同じ周波数帯を使用する時分割複信(TDD)を採用する大規模MIMO通信システムについては比較的容易である。CSIは、K個の端末によるM本の基地局アンテナへの直交パイロットシーケンスの同時送信によって取得されてもよく、そこからM本の基地局アンテナの各々とK個の端末の間のアップリンク伝搬チャネル状態が推定される。相互作用により、アップリンクチャネルはダウンリンクチャネルと等しい。サンプル存続時間は基地局アンテナ数には依存せず、必要とされる伝搬チャネル状態推定値を得るためのトレーニングスキームの実行はK個の端末に対する処理全体がK個のリソースサンプルを必要とするので相対的に速く、典型的なMIMOシステムにおいて端末数は基地局アンテナ数に対して相対的に少ない。
【0005】
一方、欧州及び北米では、多くの無線通信システムは周波数分割複信(FDD)を用いて動作し、アップリンクチャネル及びダウンリンクチャネルは通常は個別の周波数帯に配置される。FDD下では、アップリンク直交パイロットシーケンスの送信は、MIMO基地局がアップリンク伝搬チャネルの状態を推定するのに依然として十分である。一方、MIMO基地局が一般的に時間のかかるダウンリンク伝搬チャネルの状態を十分正確に推定するためには更なるアプローチが必要である。
【0006】
M本の基地局アンテナとK個の単一アンテナ端末を有するシステムを考慮すると、ダウンリンクのCSIを取得する周知の方法はK個の端末がパイロット信号をM本の基地局アンテナに向けて送信することであり、MIMO基地局はアップリンクチャネルのCSIを取得することができる。さらに、ダウンリンクのCSIを得るために、M本の基地局アンテナはダウンリンク上で直交パイロットシーケンスを同時に送信し、K個の端末の各々は伝搬チャネルを介してパイロットの組合せを受信する。そして各端末は、リアルタイムで、アナログ合成受信パイロット信号をアップリンク上で基地局に向けて同時に送信して返す。そして、信号処理及びアップリンクチャネルに関する知識によって、基地局は、ダウンリンクチャネル状態を確実に推定し得る。処理全体は、最小2M+K個のリソースサンプルを必要とする。通常は大規模MIMOシステムにおいては基地局アンテナ数Mが端末数Kよりもはるかに多いので、FDDを採用するMIMOシステムにおけるアップリンク伝搬チャネル及びダウンリンク伝搬チャネルに対する確かなCSIを得ることは、TDDを採用するMIMOシステムにおけるそのようなCSIを得ることに比べるとはるかに煩雑である。
【0007】
関与する各ユーザに対する時間−周波数ブロックにおける線形モデルによる単一シンボル期間における周波数領域の伝達関数の時間変化の近似は、IEEE Communications Lettersの第13巻第11号、826〜828ページに、リー等により著された「Pilot−Assisted Channel Estimation Method for OFDMA Systems over Time−Varying Channels」と題された記事に記載される。
【0008】
米国特許出願公開第2014/0219377号には、隣接するアンテナ間の間隔がしきい値レベルより大きい空間相関係数を提供するように送信機が離隔された多数のアンテナを含むような非常に大規模なMIMOシステムに対するチャネル推定が記載されている。送信機は、パイロット基準信号を受信機に送信するように送信アンテナのサブセットを選択する。パイロット基準信号は、選択されたサブセットからのみ送信される。受信機は、受信されたパイロット基準信号及び送信アンテナ間の既知又は推定の空間相関を用いて全ての送信アンテナに対するチャネル推定を導出するように構成されたチャネル推定器を含む。
【0009】
FDDシステム、特に比較的多数の端末を有するMIMOシステムについては、CSIを得るための時間を短縮することが望ましい。
【発明の概要】
【0010】
本発明の実施形態の課題は、特に比較的多数の端末を有してFDDを採用するMIMOシステムについて、チャネル状態情報を得る時間を短縮することである。この目的のために、発明の実施形態は、通信ユニット及び1以上の端末を備える無線通信システムにおけるチャネル推定の方法に関し、その通信ユニットは複数のアンテナを備え、その方法は、複数のアンテナの各アンテナから1以上の端末にパイロット信号を送信するステップ、送信されたパイロット信号に関して1以上の端末において、1以上の端末が2本以上のアンテナを備える場合に端末固有の相関シグネチャ又はアンテナ固有の相関シグネチャが付与される相関符号化されたパイロット信号を形成するように相関符号化を実行するステップ、その相関符号化されたパイロット信号を1以上の端末から複数のアンテナに再度送信するステップ、相関符号化されたパイロット信号に基づいて1以上の端末と複数のアンテナの間のアップリンクチャネルを推定するステップ、及び推定されたアップリンクチャネルに基づいて複数のアンテナと1以上の端末の間のダウンリンクチャネルの推定値を得るステップを備える。M本のアンテナ及びK個の端末を備える通信システムにおいて、この推定方法は、最小2Mのリソースサンプルを必要とする。その結果、方法はKに依存しないため、通信ユニットによってサービングされるように構成された比較的多数の端末を含む通信システムにとって非常に魅力的である。
【0011】
上述の方法は、アップリンクチャネルの推定及び端末インデックスの(又は端末が2以上のアンテナを有する場合はアンテナインデックスに関しての)未知の順列まで十分に理解されたダウンリンクチャネルに対して得られる推定をもたらす。個々の端末に対する共役ビームフォーミングを伴うダウンリンクでのブロードキャスト送信などのシナリオには十分であるが、この曖昧さは、他の概要において問題を引き起こし得る。この目的のために、ある実施形態では、方法は、各々がデータ信号の発生源である送信元の識別に関連する情報を備えるデータ信号を1以上の端末から複数のアンテナに送信するステップ、並びにその送信元識別情報を用いてアップリンクチャネル及びダウンリンクチャネルを対応する端末にリンクするステップをさらに備える。送信元識別情報は、1以上の端末に単一アンテナが供給される場合には端末固有の情報であり、1以上の端末に2本以上のアンテナが供給される場合にはアンテナ固有の情報であり得る。
【0012】
ある実施形態では、相関符号化するステップは、自己回帰モデル、好ましくは1次自己回帰モデルによって受信パイロット信号をフィルタリングするステップを備える。そのような自己回帰モデル、特に1次自己回帰モデルは実現しやすい。これは、スペクトルダイバーシティの形成においては比較的簡単で効率的である。
【0013】
他のある実施形態では、相関符号化は、パイロット信号について巡回畳み込み演算を実行するステップを備える。パイロット信号について巡回畳み込み演算を実行するステップによって、共分散行列推定精度の向上が可能となり、それにより性能が向上し得る。
【0014】
ある実施形態では、1以上のユーザ端末と複数のアンテナの間のアップリンクチャネルを推定するステップは、2次ブラインド同定アルゴリズムを利用する。2次ブラインド同定アルゴリズムは、当技術分野では周知であるため比較的実現しやすい。
【0015】
さらに、発明の実施形態は、通信システムにおける1以上の端末と通信するための通信ユニットに関し、通信ユニットは複数のアンテナ及び少なくとも1つのチャネル推定モジュールを備え、その通信ユニットは、通信システムにおいてパイロット信号を複数のアンテナの各アンテナから1以上の端末に送信し、1以上の端末が2本以上のアンテナを有する場合に端末固有の相関シグネチャ又はアンテナ固有の相関シグネチャが付与される相関符号化されたパイロット信号を1以上の端末から複数のアンテナで受信し、その符号化されたパイロット信号に基づいて少なくとも1つのチャネル推定モジュールによって1以上の端末と複数のアンテナの間のアップリンクチャネルを推定し、その推定されたアップリンクチャネルに基づいて少なくとも1つのチャネル推定モジュールによって複数のアンテナと1以上のユーザ端末の間のダウンリンクチャネルの推定値を得るように、構成される。
【0016】
ある実施形態では、上記の理由により、通信ユニットは、復号化モジュールをさらに備え、データ信号を1以上の端末から複数のアンテナを介して受信するようにさらに構成されており、そのデータ信号はデータ信号の発生源である送信元の識別に関連する情報を備えており、受信した送信元識別情報を用いて少なくとも1つの復号化モジュールによってアップリンクチャネル及びダウンリンクチャネルを対応する端末にリンクする。
【0017】
ある実施形態では、少なくとも1つのチャネル推定モジュールは、2次ブラインド識別アルゴリズムの使用によってアップリンクチャネルを推定するように構成される。
【0018】
さらに、発明の実施形態では、通信システムにおいて複数のアンテナを供給される通信ユニットと通信するための端末に関し、その端末は、それぞれ通信ユニットの複数のアンテナから信号を受信又は通信ユニットの複数のアンテナに信号を送信するための送受信機及び符号化部を備え、その端末は、複数のアンテナの各アンテナから送信されたパイロット信号を受信し、受信したパイロット信号に関して符号化部を用いて、端末が2本以上のアンテナを備える場合は端末固有の相関シグネチャ又はアンテナ固有の相関シグネチャが付与される相関符号化されたパイロット信号を形成するように相関符号化を実行し、通信ユニットが符号化されたパイロット信号に基づいてアップリンクチャネルを推定すること及び推定されたアップリンクチャネルに基づいてダウンリンクチャネルの推定を取得することを可能とするようにその相関符号化されたパイロット信号を複数のアンテナに再度送信するように構成される。
【0019】
ある実施形態では、前述の理由により、端末は複数のアンテナにデータ信号を送信するようにさらに構成されていてもよく、そのデータ信号はデータ信号の発生源である送信元の識別に関連する情報を含む。
【0020】
ある実施形態では、符号化部によって実行される相関符号化するステップは、受信パイロット信号を自己回帰モデルによってフィルタリングするステップを備える。
【0021】
請求項10〜12のいずれかに一項に記載の端末において、前記端末はユーザ端末である。あるいは、端末は中継局であってもよい。
【0022】
最後に、発明の実施形態は、上述の通信ユニットの実施形態及び1以上の上述の端末の実施形態を備える通信システムに関する。
【0023】
本発明の実施形態を、ここで添付図面を参照してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、発明の実施形態が実施され得る通信ネットワークの例を概略的に示す。
【
図2】
図2は、発明の実施形態が実施され得る通信ネットワークの他の例を概略的に示す。
【
図3】
図3は、発明の実施形態による無線通信システムにおけるチャネル推定の方法のフローチャートを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
説明及び図面は、単に発明の原理を説明するものである。当業者には、ここに明示的に記載又は図示されないが、本発明の原理を具現化する種々の構成を考案できることが理解されるはずである。さらに、ここに示した全ての例は、主として、発明の原理を読者が理解することを助けることを明示的に意図したものであり、そのような具体的に示された例及び条件に限定されるものではないものとして構成されるべきである。また、発明の原理、態様及び実施形態を示すここにおける全ての記載は、その具体例と同様に、その均等物を含むことが意図されている。
【0026】
以下の説明では、例示的な実施形態は、実行された場合に特有のタスクを実行するか又は特定の抽象データ型を実現し、かつ既存のネットワーク要素で既存のハードウェアを用いて実現されることができるルーティン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構成などを含むプログラムモジュール又は機能的処理として実現され得る動作の作用及び象徴的表現を参照して(例えば、フローチャートの形式で)説明される。そのような既存のハードウェアは、1以上の中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、システムオンチップ(SOC)デバイス、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)コンピュータ又はプログラムされると特定の機械となる同様の機械を含み得る。少なくともある場合は、CPU、SOC、DSP、ASIC及びFPGAは、一般的に処理回路、プロセッサ及び/又はマイクロプロセッサともいう。
【0027】
したがって、ここに記載される種々のモジュールは、汎用プロセッサ、DSP、ASIC、FPGA若しくは他のプログラマブルロジックデバイス、個別のゲート若しくはトランジスタロジック、個別のハードウェアコンポーネント又はここに記載される機能を実行するように設定されたそれらの任意の組合せによって実施又は実行され得る。さらに、種々のモジュールの機能性は、ハードウェア、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュール又はその2つの組合せにおいて直接的に具現され得る。
【0028】
理解されるように、ここで記載される「端末」及び「基地局」はメモリもさらに含む。メモリは、例えばスタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)及びダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)などの揮発性メモリ、並びに/又は読出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラム可能ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク、光ディスク及び磁気テープなどの不揮発性メモリを含む、当該分野で周知の任意の非一時的なコンピュータ可読媒体を含み得る。
【0029】
ここで使用されるように、「端末」という用語は、クライアント、モバイルユニット、モバイル局、モバイルユーザ、ユーザ機器(UE)、加入者、ユーザ、遠隔局、アクセス端末、受信機、中継局、スモールセル、中継セルなどと同義であると考えられ、これ以降においてそのようにいうこともあり、無線通信ネットワークにおける無線リソースの遠隔ユーザを説明することができる。MIMOシステムでは、端末は、1本以上のアンテナを有し得る。
【0030】
同様に、ここで使用されるように、「基地局」という用語は、eNodeB(基地)送受信局(BTS)、中央ノードなどと同義であると考えられ、以降、そのようにいう場合もあり、無線通信ネットワークにおいてモバイルと通信し、無線リソースを供給する送受信機を説明することができる。ここで検討されるように、基地局は、ここで検討される方法を実行する能力に加えて従来の周知の基地局に全て機能的に関連していてもよい。
【0031】
図1に、「4G」としても知られる標準3GGP LTEによる通信ネットワークの例を概略的に示し、そこで発明の実施形態が実現され得る。通信ネットワークは、無線アクセスノード10、例えば基地局、ユーザ端末UE1、UE2、UE3、UE4、サービングゲートウェイSGW、パケットデータネットワークゲートウェイPDNGW及び移動管理エンティティMMEを備える。以下、無線アクセスノード10は、(大規模)多入力多出力(MIMO)基地局10ともいう。MIMO基地局10は、少なくとも1つのチャネル推定モジュール20、少なくとも1つの復号モジュール25を備え、複数のアンテナ30−1、・・・、30−mが設けられる。ユーザ端末UE1−UE4は、無線接続を介してMIMO基地局10に接続される。明確化のために単にUE1に関して示しているが、全てのユーザ端末UE1−UE4は、符号化部40を備える。MIMO基地局10は、サービングゲートウェイSGW及び移動管理エンティティMME、すなわちエボルブドパケットコア(EPC)に、いわゆるS1インターフェースを介して通信可能に接続される。サービングゲートウェイSGWは、パケットデータネットワークゲートウェイPDNGWに通信可能に接続され、その次に外部IPネットワークIPNに通信可能に接続される。
【0032】
S1インターフェースは、基地局すなわちこの例ではeNodeBとエボルブドパケットコア(EPC)の間の標準化されたインターフェースであり、2つのタイプを有する。第1に、S1−MMEは、MIMO基地局10と移動管理エンティティMMEの間のシグナリングメッセージを交換するインターフェースである。第2に、S1−Uは、MIMO基地局10とサービングゲートウェイSGWの間のユーザデータグラムを転送するインターフェースである。
【0033】
サービングゲートウェイSGWは、通信ネットワークにおける他の基地局(図示せず)と同様に、MIMO基地局10とパケットデータネットワークゲートウェイPDNGWの間のIPユーザデータのルーティングを実行するように構成される。さらに、サービングゲートウェイSGWは、異なる基地局間又は異なるアクセスネットワーク間のハンドオーバー中にモバイルアンカーポイントとして作用する。
【0034】
パケットデータネットワークゲートウェイPDNGWは、外部IPネットワークIPNへのインターフェースを表し、ユーザ端末とそのサービング基地局の間に確立されたいわゆるエボルブドパケットシステム(EPS)ベアラを終端する。
【0035】
移動管理エンティティMMEは、加入者管理及びセッション管理に関連するタスクを実行するように構成され、異なるアクセスネットワークの間のハンドオーバー中の移動管理も実行する。
【0036】
ダウンリンクにおいて、外部IPネットワークIPNから受信したIPデータは、サービングゲートウェイSGWを介してパケットデータネットワークゲートウェイPDNGWからMIMO基地局10にEPSベアラ上で送信される。そしてMIMO基地局10は、IPデータを処理し、そのIPデータを複数のアンテナ30−1、・・・、30−mを介してそれぞれのユーザ端末にエアインターフェースを介して送信する。アップリンクでは、データ送信は、ダウンリンクに関して上述したような類似の方法で、しかしユーザ端末から外部IPネットワークIPNへの逆方向で実行される。以下、MIMO基地局10とユーザ端末UE1−UE4の間のエアインターフェースに関してアップリンク及びダウンリンクを検討する。すなわち、ダウンリンクはMIMO基地局10からユーザ端末UE1−UE4への信号送信を示し、アップリンクはユーザ端末UE1−UE4からMIMO基地局10への信号送信を示す。
【0037】
図2に、大規模MIMO無線バックホールリンクを有するバックホールシステムアーキテクチャを伴う通信ネットワークの例を概略的に示し、そこで発明の実施形態が実現され得る。通信ネットワークは、(大規模)MIMO基地局ともいう(大規模)MIMO中央ノード50、無線アクセスネットワーク(RAN)サーバ80並びにユーザ端末にサービングする複数の中継セルSC1、SC2、SC3及びSC4を含む。中継セルSC1−SC4は、(リピータ)スモールセルSC1−SC4又は端末SC1−SC4ともいう。MIMO基地局50は、少なくとも1つのチャネル推定モジュール60、少なくとも1つの復号化モジュール65を備え、複数のアンテナ70−1、・・・、70−mが設けられる。端末SC1−SC4は、無線接続を介してMIMO基地局50に接続される。明確化のために単にSC1に関して表しており、そのSC1はユーザ機器UE5及びUR6にサービングするが、各端末SC1、SC2、SC3及びSC4が1以上のユーザ端末にサービングするように構成されていることが理解されるはずである。さらに、明確化のために単に端末SC1に関して示しているが、全ての端末SC1−SC4は、符号化部90を備える。MIMO基地局50は、RANサーバ80に通信可能にさらに接続される。
【0038】
図1におけるMIMO基地局10及び
図2におけるMIMO基地局50のような、大規模MIMO基地局において行われる多重化動作の動作を成功させる主要素は、十分に正確なチャネル状態情報(CSI)を取得することに関係する。特に、大規模MIMO基地局は、M本のアンテナの各々、すなわち
図1におけるアンテナ30−1、・・・、30−m及び
図2におけるアンテナ70−1、・・・、70−mと、サービングするK個の端末の各々、すなわち
図1におけるUE1−UE4及び
図2におけるSC1−SC4との間の伝搬チャネルの周波数レスポンスの十分に正確な推定値を得る必要があり、双方の例においてKは4となる。
【0039】
そのようなCSIを得ることは、データ転送のアップリンク及びダウンリンクの両方で同じ周波数帯を使用する時分割複信(TDD)を採用する大規模MIMO通信システムについては比較的容易である。CSIは、K個の端末によるM本の基地局アンテナへの直交パイロットシーケンスの同時送信によって取得されることができ、そこからM本の基地局アンテナの各々とK個の端末との間のアップリンク伝搬チャネル状態が推定される。相互関係により、アップリンクチャネルはダウンリンクチャネルと等しい。サンプル存続時間は基地局アンテナ数には依存せず、必要とされる伝搬チャネル状態推定値を得るためのトレーニングスキームの実行はK個の端末に対する処理全体がK個のリソースサンプルを必要とするので相対的に速く、標準的なMIMOシステムにおいて端末数は基地局アンテナ数に対して相対的に少ない。
【0040】
一方、欧州及び北米では、多くの無線通信システムは周波数分割複信(FDD)を用いて動作し、アップリンクチャネル及びダウンリンクチャネルは通常は個別の周波数帯に配置される。FDD下では、アップリンク直交パイロットシーケンスの送信は、MIMO基地局がアップリンク伝搬チャネルの状態を推定するのに依然として十分である。一方で、MIMO基地局が一般的に時間のかかるダウンリンク伝搬チャネルの状態を十分正確に推定するためには更なるアプローチが必要である。
【0041】
M本の基地局アンテナ及びK個の単一アンテナ端末を伴うシステムについて考えると、FDD大規模MIMO−システムにおけるアップリンク及びダウンリンク伝搬システムの双方に関するチャネル状態推定値を得る周知の方法は、直接のアップリンクパイロット及びダウンリンクパイロットに加えて(アナログの)フィードバックを使用する。以下に述べる処理の説明においては、アップリンクチャネル及びダウンリンクチャネルの周波数依存性は抑制されているものとする。さらに、後述するトレーニング信号及び対応する信号の処理は、伝搬チャネルが実質的に一定であると考えられる(サブバンドという)各周波数間隔内で行われることが理解されるべきである。
【0042】
この2段階処理の第1段階では、M本の基地局アンテナ及びK個の単一アンテナ端末を伴うシステムについて考えると、K個の端末は、アップリンクチャネル上で直交パイロットシーケンスをサンプル存続時間τ
uを伴ってまとめて送信し、τ
u×Kのユニタリ行列Ψ
uで表される。MIMO基地局のアンテナアレイはM×τ
u信号、すなわち、
【数1】
(1)
を受信し、ここで添え字「H」はエルミート転置を示し、行列G
uはアップリンク伝搬行列M×Kを示し、V
uは相加的受信機ノイズを示し、ρ
uはアップリンクチャネルの信号対雑音比(SNR)の測定値である。そして、M個のアンテナの各々は、その受信信号をK個のパイロットシーケンスの各々と相関させて、アップリンク行列値チャネルのノイズのあるバージョン、すなわち、
【数2】
(2)
を得る。そして、式(2)から得られるアップリンク行列値チャネルの適切にスケーリングされたバージョンは、アップリンクチャネルに関する最小平均二乗推定値を構成する。
【0043】
第2段階中に、M本の基地局アンテナは、ダウンリンクチャネル上でサンプル存続時間τ
dの直交パイロットシーケンスを送信し、τ
d×Mのユニタリ行列Ψ
dで表される。K個の端末は、K×τ
d信号、すなわち、
【数3】
(3)
をまとめて受信し、ここで行列G
dはダウンリンク伝搬行列M×Kを示し、V
dは相加的受信機ノイズを示し、ρ
dはダウンリンクチャネルの信号対雑音比(SNR)の測定値である。そして、受信信号はアップリンク上で再度送信され、必要に応じて電力制約に適合するようにスケーリングファクタαを使用する。そして基地局は、M×τ
d信号、すなわち、
【数4】
(4)
を受信する。ここで、M本の基地局アンテナの各々は、その受信信号にM個のパイロットシーケンスの各々を相関させて、M×M信号、すなわち、
【数5】
(5)
を得る。第1段階のアップリンクパイロットがアップリンクチャネルの推定値を既に供給しているので、基地局は、これに限定されるものではないが、例えばゼロ強制及び最小二乗誤差推定を含む技術によってダウンリンクチャネルをこの時点で推定することができる。
【0044】
上述の処理全体は、最小で2M+Kのリソースサンプルを必要とする。大規模MIMOシステムにおいては通常、基地局アンテナ数Mが端末数Kよりもはるかに大きいので、FDDを採用するMIMOシステムにおいてアップリンク伝搬チャネル及びダウンリンク伝搬チャネルに対する信頼できるCSIを得る方が、TDDを採用するMIMOシステムにおけるそのようなCSIを得ることよりもはるかに煩雑となる。
【0045】
図3に、発明の実施形態による大規模MIMOシステムを備える無線通信システムにおけるチャネル推定の方法のフロー図を概略的に示す。この通信システムにおける通信ユニットと1以上の端末の間の伝搬チャネルのチャネルを推定する方法においては、通信システムは複数のアンテナを備え、最初に、パイロット信号は複数のアンテナの各アンテナから1以上の端末に送信される(アクション101)。通常は、そのようなパイロット信号は、後述する実施形態の十分に正確なダウンリンク推定を確実にするように線形的に独立しており、直交していることが望ましい。
【0046】
1以上の端末によって受信されると、相関符号化されたパイロット信号を形成するように1以上の端末で受信パイロット信号に関して相関符号化が実行される(アクション103)。ここで、相関符号化とは、既知量の相関をパイロット信号に挿入することを指す。この目的のために、
図1及び
図2に示すように、端末には符号化部が設けられる。符号化部は、サブバンド数に依存して、時間領域又は周波数領域において信号に相関符号化を適用するように構成され得る。時間領域符号化部は、通信システムが1つのサブバンドだけを採用する場合に適用可能となる。その場合、符号化部は、受信パイロット信号に端末固有の相関シグネチャを提供して、例えば受信パイロット信号に既知の、好ましくはその正規化バージョンであって自己共分散ともいう自己相関を導入する有限インパルス応答(FIR)フィルタ又は無限インパルス応答(IIR)フィルタを適用することによって、相関符号化パイロット信号を形成するように構成される。端末に2本以上のアンテナが設けられる場合、符号化部は、受信パイロット信号にアンテナ固有及び/又は端末固有の相関シグネチャを供給するように構成され得る。複数のサブバンドの場合、周波数領域符号化部が採用され、サブバンド固有の受信パイロット信号にFIR又はIIRフィルタを適用することによってサブバンドワイズに動作する。このフィルタは、既知の端末固有及び/又はアンテナ固有の自己相関を受信パイロット信号に導入する。以下、簡略化のために、端末固有という用語を使用する。ただし、2本以上のアンテナを有する端末を使用する実施形態においては、この用語は、アンテナ固有という用語と置き換えられてもよいことが理解されるであろう。相関符号化は、端末固有の自己回帰モデル、好ましくは1次端末固有の自己回帰モデル(「AR1モデル」)による受信パイロット信号のフィルタリングを含み得る。AR1モデルは、スペクトルダイバーシティの作成において簡単及び効率的なため実現しやすい。
【0047】
なお、アップリンクチャネルの推定を可能とするためには、対応する端末によって採用された相関符号化に対して適用されたフィルタ(すなわち相関符号化部)は、基地局に既知である必要がある。
【0048】
そして、相関符号化されたパイロット信号は、1以上の端末から通信ユニットの複数のアンテナに再度送信される(アクション105)。
【0049】
通信ユニットには、相関符号化されたパイロット信号に基づいて、1以上の端末と複数のアンテナの間のアップリンクチャネルを推定する少なくとも1つのチャネル推定モジュールが設けられる(アクション107)。これを達成するための適切なアルゴリズムは、当業者には既知の2次ブラインド識別(SOBI)アルゴリズムである。SOBIアルゴリズムは空間的共分散行列を推定し、対応する推定誤差はMが大きくなるにつれてゼロに減少する。言い換えると、SOBIアルゴリズムが採用される場合、MIMO基地局アンテナ数がより大きいほど、アップリンクチャネルの推定が向上する。
【0050】
最後に、複数のアンテナと1以上の端末の間のダウンリンクチャネルの推定値は、アップリンクチャネルの推定に基づいて取得され得る(アクション109)。
【0051】
通信ユニット、特にMIMO基地局と1以上の端末の間の伝搬チャネルを推定する方法は、最小で2Mのリソースサンプルを必要とする。その結果、トレーニングスキームともいうこの推定スキームはKに依存しないので、本方法は、通信ユニットによってサービングされるように構成された比較的多数の端末を備える通信システムにとって非常に魅力的である。
【0052】
なお、フィルタが十分なスペクトルダイバーシティを導入して可逆である限り、AR1モデルの代わりに他のタイプのフィルタが使用されてもよい。例えば、線形畳み込みを使用するAR1モデルの代わりに、受信パイロット信号に対して巡回畳み込み演算を使用するフィルタを用いてもよい。受信(重畳)信号のブラインド分離によるアップリンクチャネルの推定(アクション107)は、別個の時間差に対する(空間的)共分散行列の推定に依存する。一方、パイロット信号長が有限のために、そのような推定は、有限のサンプルサポートに苛まされることもある。線形相関フィルタが単にある過渡的な挙動を示すに過ぎない場合は、巡回畳み込みの採用によりパイロット信号の第1のサンプルの間に相関を導入することが可能となる。結果として、有限のサンプルサポートに関して、共分散行列推定精度を向上させることができる。
【0053】
M本の基地局アンテナ及びK個の端末を備えるMIMO通信システムについて、
図3を参照して上述した実施形態の定量的な例を以下に示す。繰り返すが、アップリンクチャネル及びダウンリンクチャネルの周波数依存性は抑制されているものとする。同様に、トレーニング信号及び対応する信号の処理は、伝搬チャネルが実質的に一定であると考えられる各周波数間隔(すなわちサブバンド)内で行われることが理解されるべきである。
【0054】
まず、M本の基地局アンテナは、ダウンリンクチャネル上でサンプル存続時間τ
dの直交パイロットシーケンスを送信し、τ
d×Mのユニタリ行列Ψ
dで表される。k番目の端末、k∈{1、・・・、K}は、1×τ
d信号、すなわち、
【数6】
(6)
を受信し、ここで、g
dkはk番目の端末に関するダウンリンク伝搬ベクトルM×1を表し、ν
dkは相加的受信機ノイズを表す。ここで、アップリンクでの受信パイロット信号の即座の再度送信の代わりに、各端末kは、まず受信パイロットシーケンスx
dkに端末固有の自己相関を導入する相関フィルタを適用する。この明細書を通して、この演算を相関符号化といい、相関符号化を受けるパイロット信号を相関符号化されたパイロット信号という。詳細を以下に述べるが、端末固有の自己相関シグネチャを伴うパイロット信号を提供する、すなわち相関符号化されたパイロット信号を形成することで、基地局がアップリンクチャネルを推定することが可能となる。端末kによる相関符号化は、受信パイロット信号x
dkといわゆるテプリッツ行列C
kとの乗算、すなわち、
【数7】
(7)
によって示すことができ、ここで、テプリッツ行列Ckは、結果として得られるフィルタが線形畳み込みを実現するような原因となるフィルタとなるように下三角行列とする。あるいは、巡回畳み込みを実現するように、巡回行列としてC
kを選択することもできる。全てのk∈{1、・・・、K}に対する適切なテプリッツ行列C
kの可能な選択については後述する。なお、MIMO基地局でのダウンリンクチャネルの推定を可能とするためには、対応する端末によって採用されたフィルタ行列が基地局に既知である必要がある。
【0055】
好ましくは、全てのkに対して、ダウンリンクチャネルベクトルg
dkの成分は、全て独立かつ同一分布の(複素)ガウス確率変数であり、それはレイリーフェージングチャネルの場合である。そのような場合全てのkに対して、受信シーケンスx
dkは、独立かつ同一の(複素)ガウス要素と相互に無相関となる。そのようなシーケンスは、スペクトル的に白色であり、統計的ドメインの観点から区別し難い。シーケンスx
dkを程よく着色すること、すなわち端末での相関符号化によって別個のスペクトルパターンを割り当てることにより、MIMO基地局は、例えばSOBIアルゴリズムにより、アップリンクチャネルを特定し、端末の信号を分離することができる。
【0056】
そして、全てのK個の端末は、アップリンクにおいて同時に式(7)によって定義された相関符号化されたパイロット信号y
ukを再度送信することができ、必要に応じて電力制約に適合するように適切なスケーリングファクタα
kを使用する。そして基地局のアンテナアレイはM×τ
d信号、すなわち、
【数8】
(8)
を受信し、ここで、基地局は全てのアップリンクチャネル及び信号y
ukに対して、複素スケーリングファクタ及び端末インデックスの順列の双方までの推定値
【数9】
を算出することができる。前述のように、そのような算出は例えばSOBIアルゴリズムを適用してもよい。分離されたアップリンク信号y
ukに基づき、基地局は、(複素スケーリングファクタまでの)k番目のダウンリンクチャネルを以下のように推定することができ、
【数10】
(9)
それゆえ、全てのアップリンクチャネル及びダウンリンクチャネルの推定に必要とされるリソースサンプルの総数は2Mとなる。
【0057】
前述のように、端末での相関符号化に関して十分なスペクトルダイバーシティを得るような比較的簡単な方法は、各受信信号x
dkを1次自己回帰モデルによってフィルタリングすることであり、例えば程よく選択された係数、
【数11】
(10)
を用いて、ここで、ρ
kは、通常はk∈{1、・・・、K}の全てのkに関して同じ値をとるように選択され、そのため全てのkに関する係数α
kは、例えばr=0.95となる半径を持つ複素平面の円上にあり、つまり全てのkに関してρ
k=0.95となる。さらに、そのような複素円上でのα
kの均一分布の場合は、全てのkに関するパラメータθ
kは、以下のように算出できる。
【数12】
(11)
対応するフィルタ行列C
kは、ベクトル
【数13】
から構成される下三角テプリッツ行列である。M=4の場合、これは、
【数14】
(12)
という結果になる。複素平面の円の半径は(すなわちパラメータρ
k)は、全てのkに関して、信号y
ukのスペクトル重複を、(9)式で与えられるダウンリンクチャネル推定ステップ内で雑音増幅を指示する、いわゆる行列
【数15】
の条件数と交換するために修正されてもよい。
【0058】
完全なアナログ端末の場合、テプリッツ構造を有するフィルタ行列によって実現されるような(因果的な)線形畳み込みに頼る必要がある。さらに、線形畳み込みの使用は、使用されるパイロット信号が十分に狭い場合、すなわち信号帯域幅が転送されるチャネルのコヒーレンス帯域幅よりも小さい場合に特に有用である。これに対して、巡回畳み込み(すなわち巡回フィルタ行列)は、デジタル処理を必要とするが、一方で、特に短いパイロット長及び/又は少ないMIMO基地局アンテナ数に関しては、チャネル推定のためにMIMO基地局に採用されたブラインド分離アルゴリズムの性能を向上させる。
【0059】
総じて
図3を参照して示されるように、アップリンクチャネルの推定を実行し、ダウンリンクチャネルの推定値を取得したのち、定量的な例を用いて上記したように、アップリンクチャネルベクトル及びダウンリンクチャネルベクトルは端末インデックスの(又は端末が2本以上のアンテナを有する場合はアンテナインデックスに関して)未知の順列まで十分に既知となる。この曖昧さは、個々の端末に対する共役ビームフォーミングを伴うダウンリンクでのブロードキャスト送信のようなシナリオにおいては問題ない。しかしながら、他のシナリオにおいて問題を引き起こし得る。
【0060】
上述の曖昧さを克服するには、
図3を参照して示したチャネル推定方法は、MIMO基地局の複数のアンテナに対してのアップリンクにおけるデータ信号の送信をさらに含み、その各データ信号はデータ信号の発生源である送信元の識別に関連する情報を備える(アクション111)。送信元は端末自体として識別されてもよく、そこでは送信元識別情報は端末固有の情報を含む。あるいは、端末が2本以上のアンテナを有する場合は、データ信号を送信する固有のアンテナが送信元として識別されてもよい。したがって、そのような場合は、送信元識別情報はアンテナ固有の情報を含む。いずれの場合も、識別情報は、識別固有のスクランブリング及び/又は巡回冗長検査(CRC)検査合計を伴う符号化された信号の形態をとることができる。
【0061】
そして、MIMO基地局の復号化モジュールは、送信元識別情報を用いてアップリンクチャネル及びダウンリンクチャネルを対応する端末にリンクすることができる(アクション113)。「対応する端末」という表現は端末が単一アンテナを有する場合にはその端末自体に関連するが、それぞれの端末が2本以上のアンテナを有する場合には端末の固有のアンテナに関連してもよいことが理解されるであろう。特に、MIMO基地局は、例えばゼロ強制等化器の最小平均二乗誤差(MMSE)によって全ての端末の重畳されたアップリンク信号を分離するために、推定されたアップリンクチャネルベクトルを適用し得る。識別情報を用いて得られる個別の識別を単に試みるだけで、MIMO基地局は、これ以上チャネルの使用を増やす必要なく上記のインデックスの曖昧さを解決することができる。
【0062】
説明及び図面は、単に発明の原理を示すものである。したがって、当業者は、ここに明示的に記載又は図示されないが、本発明の原理を具体化する種々の構成を考案できるであろうことが理解されるはずである。さらに、ここに示した全ての例は、主として、当該技術を推進するために発明者(達)によって貢献された発明の原理及び概念を読者が理解することを助けるための教育目的を明示的に意図したものであり、そのような具体的に示された例及び条件に限定されるものではないと解釈されるべきである。また、本発明の原理、態様及び実施形態を表現するここに示す全ての記載は、その具体例と同様に、その均等物を含むことが意図されている。