特許第6553296号(P6553296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553296ZT DFT−s−OFDMのためのチャンネル推定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553296
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】ZT DFT−s−OFDMのためのチャンネル推定
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20190722BHJP
   H04J 13/22 20110101ALI20190722BHJP
【FI】
   H04L27/26 412
   H04L27/26 114
   H04J13/22
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-521102(P2018-521102)
(86)(22)【出願日】2016年7月20日
(65)【公表番号】特表2018-535598(P2018-535598A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】EP2016067311
(87)【国際公開番号】WO2018014949
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2018年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】513311642
【氏名又は名称】ノキア ソリューションズ アンド ネットワークス オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ベラルディネリ ジルベルト
(72)【発明者】
【氏名】フレデリクセン フランク
(72)【発明者】
【氏名】ペデルセン クラウス インゲマン
(72)【発明者】
【氏名】パユコスキ カリ ペッカ
【審査官】 大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−524348(JP,A)
【文献】 特開2004−266814(JP,A)
【文献】 QUALCOMM INCORPORATED,Waveform Candidates[online],3GPP TSG-RAN WG1#84b,Internet<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_84b/Docs/R1-162199.zip>,2016年 4月 2日,R1-162199
【文献】 Gilberto Berardinelli et al.,On the Potential of Zero-Tail DFT-Spread-OFDM in 5G Networks,2014 IEEE 80th Vehicular Technology Conference,2014年12月 4日,Date of Conference: 14-17 Sept. 2014, Date Added to IEEE Xplore: 04 December 2014,URL,https://ieeexplore.ieee.org/document/6966089
【文献】 Gilberto Berardinelli et al.,Reference sequence design for zero-tail DFT-spread-OFDM,2016 IEEE Wireless Communications and Networking Conference,2016年 4月 6日,Date of Conference: 3-6 April 2016, Date Added to IEEE Xplore: 15 September 2016,URL,https://ieeexplore.ieee.org/document/7564980
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04J 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼロテイル離散的フーリエ変換拡散直交周波数分割多重化(ZT DFT−s−OFDM)により変調された信号を、チャンネルを経て、受信し、
前記信号を、N個のサンプルを含む第1シーケンスへとダウンサンプリングし、
最初のNh個のサンプル及び最後のNt個のサンプルを第1シーケンスから除去して、長さN−Nh−Ntの第2シーケンスを得、
前記第2シーケンスを、長さN−Nh−Ntの基準シーケンスと相関させ、及び
その相関結果に基づいてチャンネルの周波数応答を推定する、
ことを含む方法。
【請求項2】
前記第1シーケンスから少なくともNt個のサンプルを、前記第2シーケンスの最初のNt個のサンプルに追加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ダウンサンプリングは、
前記受信した信号を周波数ドメインへ変換して、変換信号を得、
前記変換信号にサブキャリアデマッピングを遂行して、N個のサンプルを含むデマップ信号を得、Nは、使用するサブキャリアの数に対応し、
前記デマップ信号を時間ドメインへ変換して、N個のサンプルを含む第1シーケンスを得る、
ことを含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記推定することは、
前記相関から多数のチャンネル応答の推定を取得し、それらは、同じ基準シーケンスの繰り返しシフトから得られるものであり、
有用なエネルギーを与えるサンプルを収集し、そして残りのサンプルをゼロに置き換えて、長さN−Nt−Nhの第3シーケンスを得、
前記第3シーケンスを周波数ドメインへ変換して、長さN−Nt−Nhの第4シーケンスを得、及び
前記第4シーケンスを長さNのベクトルに対して補間して、N個の使用されるサブキャリアにわたり周波数応答の推定を得る、
ことを含む請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基準シーケンスは、次の基準シーケンスファミリー、即ち、Zadoff−Chuシーケンス及びm−シーケンスの1つに属する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
求項1から5のいずれかに記載の方法処理装置に遂行させるためのコンピュータプログラ
【請求項7】
ンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶された、請求項6に記載のコンピュータプログラ
【請求項8】
記処理装置の内部メモリに直接ロードできる、請求項6に記載のコンピュータプログラ
【請求項9】
少なくとも1つのプロセッサ、及びコンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリを備えた装置において、少なくとも1つのメモリ及びコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサとで、装置が、少なくとも、
ゼロテイル離散的フーリエ変換拡散直交周波数分割多重化(ZT DFT−s−OFDM)により変調された信号を、チャンネルを経て、受信し、
前記信号を、N個のサンプルを含む第1シーケンスへとダウンサンプリングし、
最初のNh個のサンプル及び最後のNt個のサンプルを第1シーケンスから除去して、長さN−Nh−Ntの第2シーケンスを得、
前記第2シーケンスを、長さN−Nh−Ntの基準シーケンスと相関させ、及び
その相関結果に基づいてチャンネルの周波数応答を推定する、
ことを遂行するようにさせるよう構成された装置。
【請求項10】
少なくとも1つのメモリ及びコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサとで、装置が、更に、少なくともNt個のサンプルを、前記第2シーケンスの最初のNt個のサンプルに追加することを遂行するようにさせるよう構成された、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも1つのメモリ及びコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサとで、装置が、
前記受信した信号を周波数ドメインへ変換して、変換信号を得、
前記変換信号にサブキャリアデマッピングを遂行して、N個のサンプルを含むデマップ信号を得、Nは、使用するサブキャリアの数に対応し、
前記デマップ信号を時間ドメインへ変換して、N個のサンプルを含む第1シーケンスを得る、
ことを遂行するようにさせるよう構成された、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つのメモリ及びコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサとで、装置が、
前記相関から多数のチャンネル応答の推定を取得し、それらは、同じ基準シーケンスの繰り返しシフトから得られるものであり、
有用なエネルギーを与えるサンプルを収集し、そして残りのサンプルをゼロに置き換えて、長さN−Nt−Nhの第3シーケンスを得、
前記第3シーケンスを周波数ドメインへ変換して、長さN−Nt−Nhの第4シーケンスを得、及び
前記第4シーケンスを長さNのベクトルに対して補間して、N個の使用されるサブキャリアにわたり周波数応答の推定を得る、
ことを遂行するようにさせるよう構成された、請求項9から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
ゼロテイル離散的フーリエ変換拡散直交周波数分割多重化(ZT DFT−s−OFDM)により変調された信号を、チャンネルを経て、受信するための受信手段、
前記信号を、N個のサンプルを含む第1シーケンスへとダウンサンプリングするためのダウンサンプリング手段、
最初のNh個のサンプル及び最後のNt個のサンプルを第1シーケンスから除去して、長さN−Nh−Ntの第2シーケンスを得るための除去手段、
前記第2シーケンスを、長さN−Nh−Ntの基準シーケンスと相関させるための相関手段、及び
その相関結果に基づいてチャンネルの周波数応答を推定するための推定手段、
を備えた装置。
【請求項14】
少なくともNt個のサンプルを、前記第2シーケンスの最初のNt個のサンプルに追加するための追加手段を更に備えた、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記ダウンサンプリング手段は、
前記受信した信号を周波数ドメインへ変換して、変換信号を得るための第1変換手段、
前記変換信号にサブキャリアデマッピングを遂行して、N個のサンプルを含むデマップ信号を得るためのもので、Nは使用するサブキャリアの数に対応するデマッピング手段、及び
前記デマップ信号を時間ドメインへ変換して、N個のサンプルを含む第1シーケンスを得るための第2変換手段、
を備えた請求項13又は14に記載の装置。
【請求項16】
前記推定手段は、
前記相関から多数のチャンネル応答の推定を取得するためのもので、それらは同じ基準シーケンスの繰り返しシフトから得られる取得手段、
有用なエネルギーを与えるサンプルを収集し、そして残りのサンプルをゼロに置き換えて、長さN−Nt−Nhの第3シーケンスを得るための収集及び置き換え手段、
前記第3シーケンスを周波数ドメインへ変換して、長さN−Nt−Nhの第4シーケンスを得るための第3変換手段、及び
前記第4シーケンスを長さNのベクトルに対して補間して、N個の使用されるサブキャリアにわたり周波数応答の推定を得るための補間手段、
を備えた請求項13から15のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、来るべき第5世代(5G)のワイヤレスシステムのための波形設計の分野に関する。特に、本発明は、ゼロテイルDFT−拡散−OFDM(zero-tail discrete Fourier transform spread orthogonal frequency division multiplexing,ZT DFT−s−OFDM)変調のためのチャンネル推定に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に使用する略語には次の意味を適用する。
5G:第5世代
BS:ベースステーション
CP:繰り返しプレフィックス
DFT:離散的フーリエ変換
DMRS:復調基準信号
GP:保護周期
IFFT:逆高速フーリエ変換
LTE:長期進化
MSE:平均2乗エラー
OFDM:直交周波数分割多重化
PAPR:ピーク・対・平均電力比
RACH:ランダムアクセスチャンネル
RF:拒絶ファクタ
UE:ユーザ装置
ZC:Zadoff−Chu
ZT:ゼロテイル
【0003】
ZT DFT−s−OFDM信号は、従来のOFDM及びDFT−s−OFDM波形の改善として近年提案されており、CP(繰り返しプレフィックス)が低電力テイルに置き換えられたものである。そのようなテイルは、CPの場合のように生成されたタイム記号に添付されるのではなく逆高速フーリエ変換(IFFT)の自然出力として得られる。CPを採用する波形とは異なり、ZT DFT−s−OFDMでは、低電力テイルの巾を、フレーム数秘術で定義する必要はなく、チャンネルの推定遅延拡散に従って動的にセットすることができる。これは、無線数秘術をチャンネル特性から減結合するので、システム設計を簡単にし、又、隣接セル間の共存性を改善する。更に、ハードコードCPの上述した非効率性の克服も許す。
【0004】
又、ZT DFT−s−OFDM信号は、短い低電力ヘッドも特徴とする。低電力テイルは、チャンネルの測定遅延拡散に対抗することが意図されるが、IFFT演算の繰り返し性によるテイルの最後のサンプルにおける電力再成長を回避するために低電力ヘッドが挿入される。
【0005】
ZT DFT−s−OFDMの別の顕著な効果は、OFDM/DFT−s−OFDMに対するスペクトル封じ込めの改善である。低電力ヘッド及びテイルの両方が存在することは、実際上、隣接するタイム記号間の移行の円滑化を許し、アウトオブバンド(OOB)放射を大幅に減少する。
【0006】
DFT−s−OFDMの簡単な改善であるため、ZT DFT−s−OFDMは、サブキャリアレベルの処理、多入力多出力(MIMO)アンテナ技術への簡単な拡張、並びに低いピーク・対・平均電力比(PAPR)から利益が得られる。しかしながら、従来のDFT−s−OFDMと同様に、ZT DFT−s−OFDMは、ノイズの改善で悩まされており、OFDMに関するBLER(ブロックエラー率)のペナルティを招く。それにも関わらず、受信ダイバーシティの場合、特に、4受信アンテナでは、性能ギャップが消滅する傾向がある。
【0007】
ZT DFT−s−OFDMの最も有望な使用ケースの1つは、図1に示したように、ZT DFT−s−OFDM技術を使用することにより、タイム記号の最後の部分にGPが含まれるPRACHである。GPは、異なる距離に位置するUEにより送信される信号を受信ウインドウ内に時間整列させることができる。LTEに比して、ZT DFT−s−OFDMは、CPを低電力サンプルに置き換えることができるので、CPの電力ロスを回避する。更に、ZT DFT−s−OFDMは、スペクトルの封じ込めが良好であるためデータチャンネルに対する干渉を減少する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の観点によれば、送信器及び受信器の両方に知られた基準シーケンスの使用に基づいてZT DFT−s−OFDMにおける効率的なチャンネル推定を可能にする方法が提案される。
【0009】
本発明の観点によれば、ゼロテイル離散的フーリエ変換拡散直交周波数分割多重化(ZT DFT−s−OFDM)により変調された信号がチャンネルを経て受信される。この信号は、N個のサンプルを含む第1シーケンスへとダウンサンプリングされ、Nは、使用するサブキャリアの数に対応する。最初のNh個のサンプル及び最後のNt個のサンプルが第1シーケンスから除去され、これにより、N−Nh−Ntの長さの第2シーケンスを得る。この第2シーケンスは、長さN−Nh−Ntの基準シーケンスと相関され、そしてその相関結果に基づきN個の使用サブキャリアにわたってチャンネルの周波数応答が推定される。
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】100kmのセル範囲に対するRACHプリアンブルフォーマットを示す図である。
図2】基準シーケンスとしてZT DFT−s−OFDM送信チェーンを示す概略ブロック図である。
図3】ZT DFT−s−OFDMチャンネル推定器を示す概略ブロック図である。
図4】従来のZT DFT−s−OFDM送信器チェーンで発生されるZT DFT−s−OFDM基準シーケンスの周波数応答を示す図であり、非フラットな周波数応答は、オリジナル基準シーケンスの特性に影響する前DFTゼロパディング動作によるものである。
図5】本発明の実施形態によるチャンネル推定器を示す概略ブロック図である。
図6】ブロック畳み込みにおけるオーバーラップ及び加算の原理を示す図である。
図7】異なるチャンネル推定器のMSE性能を示す図である。
図8】本発明の規範的実施形態を具現化できる制御ユニットの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を説明する前に、図2から4を参照して、チャンネル推定目的で使用する基準シーケンスのセットに対する望ましい特性を説明する。
【0013】
チャンネル推定目的で使用する基準シーケンスのセットに対する望ましい特性を以下に挙げる。
【0014】
−低い自己相関性。シーケンスをそれ自身に対して相関させるとき、相関器の出力は、ゼロオフセットに対応して電力ピークを返送し、そして非ゼロオフセットの場合には非常に限定された出力電力を返送しなければならない。これは、受信器においてチャンネルインパルス応答の位置を明確に識別し、従って、その正しい推定を行うことができる。
【0015】
−限定された相互相関性。シーケンスを、同じセットに属する異なるシーケンスに対して相関させるとき、相関器の出力電力を限定しなければならない。これは、望ましいチャンネルの応答を識別し、従って、同時に送信される他の基準シーケンスによる汚染を制限できるようにする。
【0016】
−フラットな周波数応答。フラットな周波数応答と共に基準シーケンスを使用する利益が倍増される。先ず、フラットな周波数応答は、時間ドメインにゼロの自己相関を有するのに必要且つ充分な状態である。更に、適切な周波数ドメインイコライゼーションを可能にする。基準シーケンスの選択的周波数応答は、周波数の特定部分にわたりノイズ電力の選択的増大を招き、従って、推定の悪化及び不充分なイコライゼーション性能を招く。
【0017】
−低いピーク・対・平均電力比(PAPR)。電力振幅変動を制限したシーケンスをもつことは、アナログ電力増幅器に低い入力バックオフを使用するのを許し、送信電力効率に関して利益が得られる。
【0018】
−大きなカーディナリティ。同じ魅力的特性をフィーチャーする基準シーケンスの大きなセットをもつことは、特に、装置が望ましいリンクのチャンネル応答を多数の干渉リンクから区別する必要がある高密度のセル配備の場合に、極めて重要である。多数のアンテナと共にMIMO技術を使用することは、例えば、大量のMIMOアプリケーションに対して基準シーケンスの大きなセットの必要性を更に激化させる。
【0019】
Zadoff−Chu(ZC)シーケンスは、全ての前記特性を満足する複雑なシーケンスのファミリーである。それらは、ゼロの自己相関、及び√Lに制限された一定の相互相関をフィーチャーし、ここで、Lは、シーケンスの長さである。更に、ZCシーケンスは、時間ドメイン及び周波数ドメインの両方にわたって一定の振幅を有する。ZCシーケンスの長さLが素数である場合には、前記特性を満足するシーケンスのセットは、L−1に等しいカーディナリティを有する。
【0020】
ゼロの自己相関特性の結果として、各送信器によりシーケンスの異なる繰り返しシフトが使用されていれば、同じ周波数にわたって動作する多数の送信器により同じシーケンスを同時に使用することができる。繰り返しシフトは、チャンネルの遅延拡散より大きくなければならない。受信器に単一の相関器を使用して、同じベースシーケンスの異なる繰り返しシフトを採用する多数の送信器のチャンネル状態情報を検索することができる。
【0021】
図2は、ZT DFT−s−OFDMが使用されるときの基準シーケンスに対する送信器チェーンを示す。長さN0のオリジナルシーケンスが典型的に周波数ドメインにおいて発生され、そしてサイズN0のIDFTにより時間ドメインに変換される。ZCシーケンスが使用される場合には、送信器特有の繰り返しシフトを適用することができる。長さNh及びNtを各々有するゼロヘッド及びゼロテイルは、シーケンスのヘッド及びテイルに追加され、N=N0+Nt+Nhサンプルの長さをもつゼロパディングされた基準シーケンスを招く。このシーケンスは、次いで、サイズNのDFTにより周波数ドメインへ再び変換された後に、サブキャリアマッピング及びIFFTを受ける。
【0022】
DFT−s−OFDMから直接変換されるチャンネル推定のための従来の受信器構造が図3に示されている。受信信号は、従来のDFT−s−OFDM処理と同様に、FFT、サブキャリアデマッピング及びIDFTを受ける。次いで、シーケンスがゼロパディングされた基準シーケンスのコピーに対して相関される。相関器の出力において、有用なエネルギーを収集するサンプルだけが収集され、残りのサンプルがゼロに置き換えられる。得られた推定は、DFTにより周波数ドメインに変換される。
【0023】
この受信器構造は、チャンネル推定を外挿するためにゼロパディングされた基準シーケンスを利用する。しかしながら、ゼロパディングされたシーケンスは、オリジナルシーケンスの同じ特性の利益が得られない。
【0024】
例えば、オリジナル基準シーケンスがZCシーケンスである場合に、ゼロパディングの動作は、その周波数応答の特性を犠牲にする。ゼロパディングされたZCシーケンスの周波数応答が図4に示されている。そのような周波数選択性応答の結果として、ある周波数サブキャリアにおけるノイズが強調され、又、自己相関特性も否定的影響を受ける。これは、チャンネル推定の質を著しく低下させる。
【0025】
更に、最終的な繰り返しシフトをゼロパディングの前に適用する必要があるので、同じベースシーケンスの異なる繰り返しシフトで得られるシーケンスは、それ以上繰り返さないシーケンスへと変換される。例えば、D1がD2と異なるようなシフト値D1及びD2が与えられると、ゼロ挿入前のシーケンスは繰り返し的であるが、それがゼロパディングされたシーケンスに対して保持されない。それ故、例えば、従来のDFT−s−OFDMでLTEアップリンクにおいて行われたように、独特の相関器で多数のチャンネル応答を正しく検索することは不可能である。受信信号は、送信器に適用された特定の繰り返しシフトから得られるシーケンスに対して相関されねばならない。
【0026】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、ゼロパディングされた形態ではなくオリジナル基準シーケンスの特性を利用できるようにするZT DFT−s−OFDMのためのチャンネル推定器を開示する。チャンネル推定器は、ゼロ挿入動作が基準シーケンスの特性に否定的に影響するが、そのような特性は、ゼロサンプルが受信器においてシーケンスから除去される場合に依然保持されることを観察することに依存する。本発明の実施形態によれば、相関は、ゼロパディングされたシーケンスではなく、オリジナルの、即ち非ゼロパディングの基準シーケンスに対して遂行される。チャンネル推定器の構造が図5に示されており、以下に説明する。
【0027】
基準シーケンスのファミリーは、ZCシーケンスに限定されず、そして本発明は、基準シーケンス、例えば、m−シーケンスのファミリーに対しても一般化できることに注意されたい。
【0028】
受信器において実施される図5に示す基本帯域チャンネル推定器、例えば、通信システムへのワイヤレスアクセスを与えるベースステーション、アクセスノード又はeNodeBは、チャンネル、例えば、RACHを経てZT DFT−s−OFDM信号を受信する。
【0029】
受信した信号は、N個のサンプルより成る第1シーケンスへダウンサンプリングされ、Nは、使用するサブキャリアの数に対応する。換言すれば、受信した信号は、先ず、FFTにより周波数ドメインへ変換される。次いで、未使用のサブキャリアが除去され、即ちサブキャリアデマッピングが遂行される。N個のサンプルより成る得られたシーケンスは、次いで、NサイズのIDFTで、IDFT処理される。この段階で得られたシーケンス(第1シーケンス)は、FFT入力における受信信号のダウンサンプリングされた形態に対応する。その結果、第1シーケンスの最後のNT個のサンプル(例えば、サンプル#N−Ntから#N)は、チャンネルの遅延拡散によるエネルギーを含む。
【0030】
第1シーケンスの最後のNt個のサンプルが一時的に蓄積される。最初のNh個のサンプル(例えば、サンプル#1から#Nh)及び最後のNt個のサンプルが第1シーケンスから除去される。それにより生じるシーケンス(第2シーケンス)は、N−Nt−Nhの長さを有する。一時的に蓄積された最後のNt個のサンプルは、第2シーケンスの最初のNt個のサンプル(例えば、サンプル#1から#Nt)に追加される。この動作は、第2シーケンスにおける繰り返しフェージングをエミュレートすることを意味する。この原理は、ブロック畳み込みにおけるオーバーラップ及び追加として知られており、図6に示されている。
【0031】
上述したようにNt個のサンプルが追加された第2シーケンスは、図5に示す相関器により、長さN−Nt−Nhを有する非ゼロパディングの(即ち、「オリジナル」の)基準シーケンスに対して相関される。
【0032】
相関器の出力において、有用なエネルギーを収集するサンプルだけが収集され、そして残りのサンプルがゼロに置き換えられ、それにより、長さN−Nt−Nhの第3シーケンスを得る。この第3シーケンスは、サイズN−Nt−NhのDFTにより周波数ドメインへ再び変換され、それにより、長さN−Nt−Nhの第4シーケンスを得る。次いで、長さNのベクトルに対して周波数ドメインシーケンス、即ち、第4シーケンスを補間することにより、N個の使用サブキャリアにわたるチャンネル周波数応答の推定が得られる。
【0033】
相関は、「オリジナル」即ち非ゼロパディングの基準シーケンスに対して実行されるので、それらの特性が保存される。更に、独特の相関器で、同じシーケンスの多数の繰り返しシフト形態からチャンネル応答を検索できるようになる。
【0034】
本発明の規範的実施形態において、図5に示す本発明の実施形態によるチャンネル推定器の性能を査定するために次の設定が考えられる。
−サブキャリアの数N=600、
−FFTサイズNf=1024、
−前DFTゼロヘッドサンプル(Nh):4、
−前DFTゼロテイルサンプル(Nt):42、
−サブキャリア間隔:15KHz、
−チャンネルモデル:典型的な都市、ほぼ〜2.2μsの過剰遅延。
【0035】
無線通信(over-the-air)ゼロテイルの長さは、LTEにおけるCP期間にほぼ等しい。基本的な基準シーケンスとして、長さN−Nt−Nh=554の繰り返し拡張ZCシーケンスが使用される。
【0036】
初期の解決策に比しての本発明の実施形態の性能は、チャンネル推定の平均2乗エラー(MSE)に関して評価される。次の3つのオプションが調査される。
−オプションA:無線送信される基準シーケンスが、図2に示すように生成され、そしてチャンネル周波数応答が、図3に示すチャンネル推定器構造で推定される。
−オプションB:無線送信される歪んだ基準シーケンスが、US14/854,474号に開示されたように生成され、そしてチャンネル周波数応答が、図3に示すチャンネル推定器構造で推定される。
−オプションC:無線送信される基準シーケンスが、図2に示すように生成され、そしてチャンネル周波数応答が、図5に示す本発明の実施形態によるチャンネル推定器構造で推定される。
【0037】
更に、望ましいZCシーケンスだけが送信される場合(干渉物なし)、及び他の送信器が同じ帯域にわたり同じZCシーケンスの異なる繰り返しシフトを同時に使用する場合について考える。
【0038】
その結果が図7に示されている。次のことが観察される。
−オプションAは、顕著なエラーフロアを招く非理想的な自己相関及びゼロパディングされた基準シーケンスの非フラットな応答で悩まされている。
−オプションBは、干渉物が存在しない場合には良好な性能を示す。干渉物が存在すると、性能が著しく低下する。これは、同じオリジナルZCシーケンスの繰り返しシフトが、ゼロ相互相関から利益を受けない異なるシーケンスに変換されるためである。
−本発明の実施形態によるチャンネル推定器を使用するオプションCは、干渉物の存在に関わらず低いMSEを示す。
【0039】
本発明の実施形態は、送信信号を変更せずに効率的なチャンネル推定を可能にする。本発明の実施形態は、ゼロテイルをもつZCシーケンスを、RACHプリアンブル又はDMRSシーケンスとして使用するのを許し、そしてLTEと同様に繰り返しシフトをもつ単一のZCシーケンスから多数のプリアンブルシーケンスを得ることができる。本発明の別の実施形態では、ZCシーケンスに代ってm−シーケンスが使用される。
【0040】
図8は、本発明の規範的実施形態が具現化される制御ユニット10の構成を示す概略ブロック図である。
【0041】
通信システムにワイヤレスアクセスを与えるアクセスネットワークのベースステーション、アクセスノード又はeNodeBのような受信器の一部分であり及び/又はそれにより使用される制御ユニット10は、処理リソース(処理回路)11、メモリリソース(メモリ回路)12及びインターフェイス(インターフェイス回路)13を備えている。メモリリソース12は、処理リソース11により実行されたときに制御ユニット10が図5を参照して上述したチャンネル推定器の動作を遂行するようにさせる少なくとも1つのプログラムを記憶する。例えば、インターフェイス13は、チャンネル、例えば、空気中を経てZT DFT−s−OFDM信号を受信し、処理リソース11は、メモリリソース12に記憶されたプログラムに基づいてZT DFT−s−OFDM信号を処理し、そしてインターフェイス13は、チャンネルの推定周波数応答を出力する。又、メモリリソース12は、相関に使用されるべき基準シーケンスも記憶する。
【0042】
一般的に、本発明の規範的実施形態は、メモリリソース12に記憶されて処理リソース11により実行可能なコンピュータソフトウェアにより、又はハードウェアにより、又はソフトウェア及び/又はファームウェア及びハードウェアの組み合せにより具現化することができる。
【0043】
メモリリソース12は、ローカル技術環境に適した任意のタイプでよく、そして適当なデータ記憶技術、例えば、半導体ベースのメモリ装置、磁気メモリ装置及びシステム、光学的メモリ装置及びシステム、固定メモリ及び除去可能なメモリを使用して具現化されてもよい。処理リソース11は、ローカル技術環境に適した任意のタイプでよく、そして非限定例として、汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータ、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、及びマルチコアプロセッサアーキテクチャーをベースとするプロセッサ、の1つ以上を含む。
【0044】
更に、本出願で使用する「回路」という語は、次の全部を指す。
(a)ハードウェアのみの回路実施(例えば、アナログ及び/又はデジタル回路のみでの実施)、
(b)回路及びソフトウェア(及び/又はファームウェア)の組み合せ、例えば、(該当すれば):(i)プロセッサの組み合せ、又は(ii)移動電話又はサーバーのような装置に種々の機能を遂行させるよう一緒に働くプロセッサ/ソフトウェア(デジタル信号プロセッサを含む)、ソフトウェア、及びメモリの部分、及び
(c)ソフトウェア又はファームウェアが物理的に存在しなくても、動作のためにソフトウェア又はファームウェアを要求するマイクロプロセッサ又はマイクロプロセッサの一部分のような回路。
【0045】
「回路」のこの定義は、特許請求の範囲を含めて本出願におけるこの用語の全ての使用に適用される。更なる例として、本出願に使用する「回路」という語は、単にプロセッサ(又はマルチプロセッサ)又はプロセッサの一部分並びにその付随するソフトウェア及び/又はファームウェアの実施も網羅する。又、「回路」という語は、例えば、特定の請求項要素に適用できる場合には、基本的帯域集積回路、又は移動電話のためのアプリケーションプロセッサ集積回路、又はサーバーにおける同様の集積回路、セルラーネットワーク装置、或いは他のネットワーク装置も網羅する。
【0046】
以上の説明は、本発明を例示するもので、本発明を限定するものと解釈してはならないことを理解されたい。当業者であれば、特許請求の範囲に規定された本発明の真の精神及び範囲から逸脱せずに種々の変更及び応用が明らかであろう。
【符号の説明】
【0047】
10:制御ユニット
11:処理リソース
12:メモリリソース
13:インターフェイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8