特許第6553303号(P6553303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553303
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】部分放電監視システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   G01R31/12 A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-536611(P2018-536611)
(86)(22)【出願日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】JP2016075633
(87)【国際公開番号】WO2018042588
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2018年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】丸山 志郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 高
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 伸
(72)【発明者】
【氏名】永田 純一
【審査官】 山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−181218(JP,A)
【文献】 特開2003−307539(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/148049(WO,A1)
【文献】 特開2007−124880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相一括型の電気機器に設けられた部分放電センサと、
前記電気機器の主回路電圧位相と同期して、部分放電信号を交流電圧位相1サイクル毎のサンプリング数が12の倍数でサンプリングする変換装置と、
前記変換装置に接続されたデータ処理装置を備え、
前記データ処理装置は、
サンプリングされた部分放電信号を、発生した部分放電の交流電圧位相に対するパターンに変換するパターン生成部と、
前記パターンに基づいて部分放電の発生要因、または有無の判定を行う診断処理部とを備え
前記診断処理部は、教師データに基づいた学習により診断知識を生成する過程において、
各相間または各相と接地間のいずれかに模擬欠陥を設け、この模擬欠陥によって発生した部分放電信号から得られた交流位相分解型パターンに基づいて、基礎となる教師データを生成するとともに、
前記基礎となる教師データの位相を前記サンプリング間隔を単位としてずらすことで、模擬欠陥に起因しない各相間または各相と接地間の教師データを生成する、部分放電監視システム。
【請求項2】
前記データ処理装置に表示部が設けられ、
前記表示部が、表示される電圧位相軸の基準電圧を、各相電圧と各相間電圧とに変更して表示するものである請求項記載の部分放電監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガス絶縁機器内部における部分放電監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
変電所などの電力施設では、GISなどのガス絶縁開閉装置、ガス絶縁母線、ガス絶縁変圧器等のガス絶縁機器が用いられている。ガス絶縁機器は、絶縁ガスを充填した密閉金属容器内に高電圧導体を収納し、これを絶縁物により支持してなる機器である。このガス絶縁機器において、金属容器内部に接触不良、金属異物混入などの欠陥部が生じると、その欠陥部分から部分放電が発生することが知られている。
【0003】
ガス絶縁機器内の部分放電を放置しておくと、やがて絶縁破壊に至り、重大な事故発生に進展する可能性がある。したがって、部分放電を早期に発見し、欠陥部分を補修するなど、何らかの対策を施し重大事故を未然に防ぐことが重要である。
【0004】
ガス絶縁機器の絶縁診断に対する予防保全技術として、ニューラルネットワークを利用して部分放電が発生したか否も含め、判別させるシステムが提案されている。このシステムは、ガス絶縁機器の内部の部分放電を検出する複数の部分放電検出ユニットと、各部分放電検出ユニットからの部分放電信号をリング状のネットワークを介して監視するデータ処理装置とを備える。これらの従来技術は、例えば、特許文献1〜3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−181218号公報
【特許文献2】特開平11−237432号公報
【特許文献3】特開2015−78882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術におけるニューラルネットワークの学習方法の一例は、次のとおりである。(1)模擬欠陥、例えば絶縁物内のボイドを有した試料を課電して部分放電を発生させる。部分放電センサにより検出された部分放電信号の大きさ(振幅)、課電圧に対する部分放電発生位相、部分放電の発生頻度などの教師データをニューラルネットワークに入力する。その後、教師データを入力した場合に、出力層から所定の値が出力されるように、ニューラルネットワークの学習を行う。
【0007】
(2)他の模擬欠陥、例えば高電圧導体部の突起を有した試料を課電して部分放電を発生させ、部分放電センサにより、その模擬欠陥についての教師データを収集する。その後、他の模擬欠陥の教師データを入力した場合に、出力層から所定の値が出力されるように、ニューラルネットワークの学習を行う。
【0008】
(3)健全な試料を用いて部分放電が発生していない場合の教師データを収集し、健全な教師データを入力した場合に、それに対応する値が出力されるように、ニューラルネットワークの学習を行う。
【0009】
(4)前記(1)から(3)のようにして、充分な回数の学習を行った後、新たな試料に対して部分放電の発生要因、または有無の判定を行う。
【0010】
通常、ニューラルネットワークの学習に当たって使用される部分放電センサは、3相一括構成のガス絶縁機器に対して、1か所の設置となる。しかし、3相のガス絶縁機器に部分放電監視システムを適用する場合、主回路の代表電圧信号に対応した交流位相分解型パターンは、部分放電の発生原因の物理的位置により、3相のどの相の電圧が印加されるのかに応じて、異なってくる。
【0011】
このため、ニューラルネットワーク等の診断ソフト学習用の教師データを収集するためには、模擬欠陥を有した資料によるデータ収集、又は印加電圧位相を変更してのデータ収集が必要であった。
【0012】
また、従来のシステムにおいては、部分放電センサからの信号を取得して、サンプリングしてディジタル化する時間間隔が、例えば、1サイクルを64分割される間隔であった。そのため、3相電圧の位相ずれに対応したニューラルネットワーク学習用の教師データ取得に当たっては、模擬欠陥の高電圧導体に対する位置に応じて取得する必要があり、教師データの取得に時間を要していた。なお、ニューラルネットワーク以外の診断処理部についてても、教師データの作成について、同様な問題があった。
【0013】
本発明の実施形態の目的は、部分放電センサからの信号を取得して、サンプリングしてディジタル化する時間間隔を適切に選択する構成により、教師データの取得に要する時間の短縮を可能とした部分放電監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような目的を達成するための本実施形態のシステムは、次のような構成を有する。
(1)3相一括型の電気機器に設けられた部分放電センサ。
(2)前記電気機器の主回路電圧位相と同期して、部分放電信号を交流電圧位相1サイクル毎のサンプリング数が12の倍数でサンプリングする変換装置。
(3)前記変換装置に接続されたデータ処理装置。
(4)サンプリングされた部分放電信号を、発生した部分放電の交流電圧位相に対するパターンに変換するパターン生成部。
(5)前記パターンに基づいて部分放電の発生要因、または有無の判定を行う診断処理部。
(6)前記診断処理部は、教師データに基づいた学習により診断知識を生成する過程において、各相間または各相と接地間のいずれかに模擬欠陥を設け、この模擬欠陥によって発生した部分放電信号から得られた交流位相分解型パターンに基づいて、基礎となる教師データを生成するとともに、前記基礎となる教師データの位相を前記サンプリング間隔を単位としてずらすことで、模擬欠陥に起因しない各相間または各相と接地間の教師データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の部分放電監視システムの構成を示すブロック図
図2図1のシステムにおけるデータ処理部の構成を示すブロック図
図3】部分放電検出装置を取り付けた3相一括型ガス絶縁機器の断面図
図4】実施形態の部分放電監視システムにおける取得データ図
図5】ニューラルネットワークの構成及び機能を説明するための説明図
図6】実施形態における部分放電信号の交流位相分解型パターンを示す説明図
図7】他の実施形態における部分放電信号の交流位相分解型パターンについて、その基準電圧を変更した場合を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(1)システム全体構成
図1は、部分放電識別を行う部分放電監視システムの説明図である。3相一括型のガス絶縁電気機器に設置された部分放電センサ1は、同軸ケーブル2により変換装置3に接続される。変換装置3は、データ伝送路4、HUB5、データ伝送路6を介して、データ・インターフェイス装置7に接続される。データ・インターフェイス装置7は、データ伝送路8を介して、データ処理装置9に接続される。
【0017】
データ・インターフェイス装置7は、電気機器の主回路の代表電圧信号、例えばA相電圧を入力し、主回路電圧の位相と同期した基準信号を変換装置3に送信する。変換装置3は、主回路電圧位相と同期して部分放電信号をサンプリングする。すなわち、変換装置3は、データ・インターフェイス装置7により検出された主回路電圧信号の位相のゼロクロスタイミングを基準として、時間分割された領域毎にセンサ1の信号を検出する。
【0018】
データ処理装置9は、データ伝送路8を介してデータの送受信を行うデータ送受信部91と、受信したデータの変換や教師データの作成及び部分放電の判定処理を行うデータ処理部92と、処理されたデータを保存する記憶部93を備える。データ処理装置9は、処理された処理された部分放電信号の発生パターンの表示を行う表示装置94と、キーボードやマウス等の入力部や接点信号等の出力部からなる入出力部95を備える。
【0019】
図2に示すように、データ処理部92には、データ送受信部91から受け取った部分放電信号を、発生した部分放電の交流電圧位相に対するパターン(一般に、交流位相分解型パターンと呼ばれる)に変換するパターン生成部921を有する。パターン生成部921の出力側は、ニューラルネットワーク等の診断処理部922が実装される。
【0020】
診断処理装置922は、教師データに基づいた学習により診断知識を生成する過程において、各相間または各相と接地間のいずれかに模擬欠陥を設け、この模擬欠陥によって発生した部分放電信号から得られた交流位相分解型パターンに基づいて、基礎となる教師データを生成するとともに、基礎となる教師データの位相をサンプリング間隔を単位としてずらすことで、模擬欠陥に起因しない各相間または各相と接地間の教師データを生成する。診断処理装置922は、このようにして生成された教師データに従って学習を行い、パターン生成部921から入力された信号がどのような部分放電であるかを診断する。
【0021】
記憶装置93には、部分放電の検出時において、部分放電信号の大きさ(振幅)、課電圧に対する部分放電発生位相、部分放電の発生頻度が記憶される。ニューラルネットワークの実運用時には、これらの情報が診断処理部922に入力され、部分放電の有無の判別結果が表示装置94に表示される。表示装置94において、部分放電信号の発生パターンは、横軸を電圧の電気角0〜360°とするグラフで表示される。
【0022】
(2)部分放電の検出
図3に示すように、3相一括型のガス絶縁電気機器は、タンク14内に配置されたA相導体15A、B相導体15BおよびC相導体15Cと、タンク14の一部に設けられた部分放電センサ1を備える。3相一括構成のガス絶縁電気機器において、部分放電は、A相−対地間、B相−対地間、C相−対地間、A相−B相間、B相−C相間、C相−A相間に発生し、これらの部分放電をセンサ1によって検出し、その交流位相分解パターンに基づいて診断処理部922が発生個所を特定する。
【0023】
(3)交流位相分解型パターンの構成
図4には、部分放電センサから受信した部分放電信号に基づいて、データ処理部92において変換された交流位相分解型パターンの構成を示す。図4では、系統電圧の1サイクル分に相当する部分放電信号を、横軸を電圧の電気角0〜360°として表示している。また、電気角0〜360°を24分割した15°毎の時間領域における部分放電信号の大きさを縦軸に表示する。この交流位相分解型パターンが、診断処理部922の教師データおよび部分放電判定データとしてて使用される。
【0024】
(4)ニューラルネットワークの構造と機能
図5は診断処理部922の構造および機能を説明するための説明図である。この診断処理部922は、一例として、入力層11、中間層12、出力層13の3層構造となっている。入力層11の各セル111〜113は中間層12の各セル121〜123と接続され、中間層12の各セル121〜123は出力層13のセル131(部分放電あり)と132(部分放電なし)に接続される。
【0025】
入力層11の各セル111〜113は、部分放電測定器7に記憶される情報の内、特定の位相範囲(例えば0°〜18°)と振幅範囲(例えば10〜20pC)に対応しており、その範囲を満たす信号の数が各セルの入力値となる。入力層11の各セルに値が入力されると、中間層12および出力層13において評価がなされ、出力層13のセル131と132に評価値が得られる。これら評価値の大小関係により部分放電の発生要因、または有無の判定を行う。
【0026】
(5)ニューラルネットワークの学習方法
診断処理部922の学習方法を説明する。まず、模擬欠陥1、例えば絶縁物内のボイドを有した試料を課電して部分放電を発生させる。部分放電検出センサにより検出された部分放電信号の大きさ(振幅)、課電圧に対する部分放電発生位相、部分放電の発生頻度を診断処理部922に入力した場合に、出力層13のセル131の出力値が「1」、セル132、セル133の出力値が「0」になるように、ニューラルネットワークの学習を行う。
【0027】
模擬欠陥2、例えば高電圧導体部の突起を有した試料を課電して部分放電を発生させ、出力層13のセル132の出力値が「1」、セル131、セル133の出力値が「0」になるように、ニューラルネットワークの学習を行う。さらに、健全な試料を用いて部分放電が発生していない場合に出力層13のセル133の出力値が「1」、セル131、セル132の出力値が「0」になるように、ニューラルネットワークの学習を行う。そして、充分な回数の学習を行った後、新たな試料に対して部分放電の発生要因、または有無の判定を行う。
【0028】
[1−2.作用]
以下、本実施形態の作用を説明する。図6(a)(b)に検出された部分放電信号の交流位相分解型パターンを示す。
【0029】
(1)交流位相分解型パターン
図6(a)は、A相導体−対地(タンク14)間の絶縁物にボイド欠陥がある場合の交流位相分解型パターンである。横軸はA相−対地間電圧の電気角0〜360°として表示している。図6(a)では、A相の課電電圧に対し、電圧上昇領域0〜90°、165〜285°の電圧位相にて部分放電が発生している。
【0030】
図6(b)は、A相−B相間の絶縁物にボイド欠陥がある場合の交流位相分解型パターンである。図6(b)では、A−B相間の電圧位相に応じて部分放電が発生するため、A相の課電電圧の−30°〜60°、135°〜355°の電圧位相にて部分放電が発生している。
【0031】
(2)基礎となる教師データ作成と診断処理部922の学習
前記(1)のように、3相一括構成のガス絶縁電気機器における部分放電信号の交流位相分解型パターンは、部分放電原因の物理的位置により異なるため、ニューラルネットワーク等の診断ソフト学習用の教師データを収集するためには、物理的位置の異なる模擬欠陥を有した資料によるデータ収集が必要である。
【0032】
一方、本実施形態においては、電圧の電気角0〜360°のサンプリング数が12の倍数である24である。そのため、図6(b)に相当する部分放電信号の交流位相分解型パターンデータは、図6(a)のデータを、サンプリング間隔を単位として、例えば2サンプリングデータ分ずらすことで実現することが可能となる。
【0033】
3相一括構成のガス絶縁電気機器において、A相−対地間、B相−対地間、C相−対地間、A相−B相間、B相−C相間、C相−A相間に発生するが、これらの部分放電は、各相の導体とタンク間の距離が等しいこと、および各相の導体間の距離が等しいことから、各相の交流電圧の位相が異なるだけで、交流位相分解型パターン自体はほとんど同一のものとなる。各相の導体15A〜15Cとセンサ1との距離が全く等しいわけではないので、微小な差異はあるものの、診断処理部922の教師データとしてみた場合、無視できる。
【0034】
そのため、本実施形態においては、まず、A相−対地間の模擬欠陥によって発生した部分放電信号をパターン生成部921によって交流位相分解型パターンデータに変換し、教師データ作成部922によりA相−対地間の教師データを作成して、診断処理部922の学習を行う。その後、他の模擬欠陥および健全な試料を用いた部分放電が発生していない場合についても、診断処理部922の学習を行う。このようにして、A相−対地間に関し、部分放電の発生要因、発生要因の物理的位置に応じた交流位相分解型パターンを取得して、このデータを診断処理部922に学習させる。
【0035】
このようにして作成したA相−対地間の教師データ、すなわち図6(a)の交流位相分解型パターンとそれによって求められる部分放電の判定結果は、記憶部93に保存され、他の部分の教師データの基礎となる。また、診断処理部922の学習結果も、記憶部93に保存される。
【0036】
(3)他の部分の教師データ作成と診断処理部922の学習
A相−対地間の部分放電について、診断処理部922の学習が終わった後は、記憶部93に保存されているA相−対地間の交流位相分解型パターンデータを読み出し、その位相を−30°ずらすことより、図6(b)のA−B相間に発生する交流位相分解型パターンを、パターン生成部921により作成する。その後、位相をずらした交流位相分解型パターンをA−B相間に発生する部分放電検出の教師データとして、診断処理部922に入力し、診断処理部922の学習を行う。
【0037】
以下、同様にして、A相−対地間とA相−B相間以外の部分放電についても、A相−対地間の交流位相分解型パターンの位相をずらすことにより、教師データを作成し、診断処理部922の学習を行う。この場合、どの個所の部分放電についてどの程度位相をずらすかについては、各部について同一の模擬欠陥を与えて交流位相分解型パターンを検出し、その位相を比較することで決定する。
【0038】
(4)実運用時の判定
診断処理部922について、各部の部分放電に関する学習が終了した後は、従来の部分放電監視システムと同様に、センサ1からの部分放電信号をデータ処理部92に取り込む。データ処理部92のパターン生成部921では、部分放電信号を交流位相分解型パターンに変換し、これを診断処理部922によって処理することで、いずれの個所で、どのような部分放電が発生しているかを判定する。
[1−3.効果]
以上述べたように、本実施の形態では、診断処理部922の学習用の教師データを収集する場合に、1つの部分放電発生要因、物理的位置のデータ収集により、他の物理的位置のデータを容易に取得することが可能となる。特に、3相一括構成のガス絶縁電気機器においては、模擬欠陥を、A相−対地間、B相−対地間、C相−対地間、A相−B相間、B相−C相間、C相−A相間に設けて、それによって発生する部分放電をそれぞれに配置したセンサにより収集して、教師データを取得する必要があった。本実施の形態では、交流電圧位相1サイクル毎のサンプリング数が12の倍数であるため、例えばA相−対地間の条件で取得したサンプリングデータを30°単位でずらすことが可能であり、他の条件の教師データを容易に作成することが可能となる。このため、安価で使い勝手の良い部分放電監視システムを提供することが可能となる。
【0039】
[2.他の実施形態]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下は、その一例である。
【0040】
(1)図7(a)には、電圧位相軸の基準電圧をA相電圧とした表示部94に表示される部分放電様相を示す。図7(b)には、図7(a)と同一のデータを、電圧位相軸の基準電圧をA相−B相間電圧とした部分放電様相を示す。この変形例では、表示部94に、電圧位相軸の基準電圧をA相電圧から、A相−B相間電圧に変更して表示する機能を設けることができる。これにより、部分放電発生原因が同一である現象を同一の視覚イメージとして表示することが可能となり、使い勝手の良い部分放電監視システムを提供することが可能となる。
【0041】
(2)図示の実施形態は、電圧の電気角0〜360°のサンプリング数を24としたが、サンプリング数は24に限らず、12の倍数であればよい。交流位相分解型パターンの位相をずらして他の教師データを作成するに当たり、サンプリング数に合わせて位相をずらすことができれば良い。
【0042】
(3)診断処理部922以外の教師データを必要とする診断処理部を有する部分放電監視システムにも前記実施形態を適用できる。
【0043】
【符号の説明】
【0044】
1…部分放電センサ
2…同軸ケーブル
3…変換装置
4…データ伝送路
5…HUB
6…データ伝送路
7…データ・インターフェイス装置
8…データ伝送路
9…データ処理装置
11…入力層
12…中間層
13…出力層
14…タンク
15A…A相導体
15B…B相導体
15C…C相導体
91…データ送受信部
92…データ処理部
921…パターン生成部
922…診断処理部
93…記憶部
94…表示部
95…入出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7