(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
[集塵システムの構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る集塵システムの構成例を示す図である。
【0015】
図1に示す集塵システムSは、湿式電気集塵装置1と、電源装置2と、電源制御装置3と、を備えており、外部システム4と接続している。
以下、湿式電気集塵装置1、電源装置2、及び電源制御装置3のそれぞれの構成について、その順番で個別に説明する。
【0016】
[湿式電気集塵装置の構成]
はじめに、
図2を参照して、湿式電気集塵装置1の構成について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る湿式電気集塵装置の概略構成を示す断面図である。
具体的には、
図2(A)及び
図2(B)は、湿式電気集塵装置の外観の概略構成を示す断面図であり、相互に略直角の別々の方向からみた断面図である。
【0017】
湿式電気集塵装置1には、上部ケーシング11と、側部ケーシングとしても機能する集塵極12と、下部ケーシング13と、架構14と、が設けられている。
【0018】
上部ケーシング11と、集塵極12と、下部ケーシング13とが上方からその順番で組み合わされることによって、湿式電気集塵装置1の筺体が構成される。湿式電気集塵装置1の筺体は、架構14により、地上から所定距離だけ上方に離間して固定されている。湿式電気集塵装置1の筺体の材質は、本実施形態では導電性のFRP(Fiber Reinforced Plastics)が採用されている。
【0019】
図3は、湿式電気集塵装置1の筺体内部の概略構成を示す斜視図である。
図3に示すように、湿式電気集塵装置1の筺体内部には、上部グリッド21と、上述した集塵極12と、下部グリッド23と、電極ロッド24と、放電線25と、ウェイト26と、上向きスプレーノズル27と、洗浄用配管28とが設けられている。
【0020】
上部グリッド21と、集塵極12と、下部グリッド23とは、
図3に示すように、上方からその順番で相互に所定距離だけ離間して、水平方向に相互に略平行となるように、配設されている。
【0021】
集塵極12は、
図3に示すように、角筒を単位(以下、このような単位を「室」と呼ぶ)として、複数の「室」を繰り返し連続して配置することによって構成される。
具体的には、以下、略水平方向のうち、一方向を「縦方向」と呼び、縦方向に直角な方向を「横方向」と呼ぶ。この場合、縦方向にN個の単位を繰り返し連続して配置させ、横方向にM個の単位を繰り返し連続して配置させること(以下、「N×M」と表現する)によって、集塵極12が構成される。
ここで、NとMとは独立した任意の整数値であり、本実施形態では、
図3に示すように、集塵極12の「室」の個数はN×M=9×9個とされている。
また、本実施形態の室は、35〜50cmの長さの辺からなる角筒である。
なお、集塵極12の材質は、本実施形態では、導電性のFRPが採用されている。
【0022】
このような集塵極12に対する放電極は、本実施形態では、電極ロッド24及び放電線25により構成されている。
電極ロッド24は、
図3に示すように、集塵極12の所定の「室」の中央内部を略垂直方向に貫通するように配設され、上端部が上部グリッド21に固定され、下端部が下部グリッド23に固定される。
放電線25は、
図3に示すように、上部グリッド21から吊下げられ、集塵極12の所定の「室」の中央内部を略垂直方向に貫通するように配設される。放電線25はまた、弛まないだけの張力を持たすように、下部グリッド23の上部に設けられたウェイト26に接続される。
【0023】
電極ロッド24には、電源装置2から供給される負極の直流高電圧(荷電電圧)が直接印加される。一方、放電線25には、当該負極の直流高電圧が、上部グリッド21を介して印加される。
【0024】
上向きスプレーノズル27は、集塵極12の各「室」の四隅の上方に配設され、洗浄用配管28に流通している洗浄水を、略垂直上向き方向に微細の霧として噴出する。これにより、集塵極12に付着したミストやダスト等の微粒子を洗浄除去することが可能になる。
【0025】
本実施形態の湿式電気集塵装置1では、洗浄水は、上向きスプレーノズル27から微細の霧として略垂直上向き方向に噴出される。これにより、洗浄水の分散がよくなるため、使用される洗浄水の水量を従来使用される水量より減少させることができる。
上向きスプレーノズル27は、電極ロッド24及び放電線25に印加される負極の直流高電圧の上昇に寄与する構成要素である。
【0026】
次に、再び
図1を参照して、このような湿式電気集塵装置1の電極ロッド24に対して負極の直流高電圧Vを印加する電源装置2の構成について説明する。
【0027】
図1に示すように、電源装置2は、後述する電源制御装置3から供給される電圧設定値に応じて負極の直流高電圧Vを発生して、湿式電気集塵装置1の電極ロッド24に印加する。湿式電気集塵装置1の電圧及び電流の現在値は、電源制御装置3にフィードバックされ、後述の制御に適宜利用される。
【0028】
電源装置2の盤面には、下方から順に、切替スイッチ31と、ボリューム32と、表示部33と、が設けられている。
切替スイッチ31は、電源装置2の制御を「遠方」と「直接」のうち一方から他方へと切り替えるスイッチである。切替スイッチ31が「遠方」に切り替えられると、電源装置2は、後述する電源制御装置3による遠隔制御がなされる。これに対して、切替スイッチ31が「直接」に切り替えられると、電源装置2は、付近にいるオペレータ(図示せず)による直接的な盤面操作により制御される。
ボリューム32は、切替スイッチ31が「直接」に切り替えられている場合にオペレータにより操作され、電圧設定値や電流設定値を変更する指示をする。即ち、切替スイッチ31が「遠方」に切り替えられている場合には、ボリューム32の操作は禁止される。
表示部33は、湿式電気集塵装置1の電圧及び電流の現在値を表示する。
【0029】
次に、引き続き
図1を参照して、このような電源装置2を制御する電源制御装置3の構成について説明する。
【0030】
電源制御装置3は、例えばPLC(programmable logic controller)により構成され、TP(touch panel)41と、直流高電圧制御部42と、を備える。
【0031】
TP41は、各種情報を表示する表示画面に積層され、ユーザの指示操作に応じて各種情報を入力する。TP41の入力画面の詳細については、後述の
図8を参照して説明する。
【0032】
直流高電圧制御部42は、湿式電気集塵装置1に入力されるガス(
図2のガスG1)に含まれる微粒子(塵やダスト等)の濃度に応じて電源装置2からの荷電電圧の値を可変制御する。
直流高電圧制御部42は、このような微粒子の濃度に応じて荷電電圧を可変制御するために、機能的には濃度判定部51を備える。
ここで、機能的には、と記載したのは、濃度判定部51の実現形態をハードウェアに限定する必要がないからである。即ち、濃度判定部51は、以下の機能を有すれば足り、その実現形態は特に限定されず、ハードウェアで構成されてもよいし、ソフトウェアで構成されてもよいし、或いはまたそれらの組み合わせで構成されてもよい。
【0033】
濃度判定部51は、微粒子の濃度を判定する機能を有する。当該機能の実現形態は特に限定されず、微粒子の濃度を実際に測定する機能でもよいが、本実施形態では、放電極側と、接地した集塵極12側との間に形成された電流電界により生ずるコロナ放電の電流を検出することにより、微粒子の濃度を推定する機能が、濃度判定部51に設けられている。換言すると、電流を、微粒子の濃度の指標として検出する機能が、濃度判定部51に設けられている。
以下、
図4乃至
図7を参照して、濃度判定部51に設けられた機能、即ち電流を、微粒子の濃度の指標として検出する機能の詳細について説明する。
【0034】
図4は、湿式電気集塵装置1の集塵極12の各「室」に入力された気体に存在する微粒子による空間電荷効果を説明する図である。
なお、以下、湿式電気集塵装置1の集塵極12の各「室」に入力された気体の中に、塵やダスト等の微粒子(集塵対象)がほぼ含まれない状態を「エアロード」と呼び、塵やダスト等の微粒子(集塵対象)が一定以上含まれる状態を「ガスロード」と呼ぶ。
図4(1)に示すように、エアロード時に、電極ロッド24又は放電線25(以下、説明の便宜上、放電線25のみ言及する)側と、接地した集塵極12側との間に直流高電圧Vが印加されると、放電線25側と、接地した集塵極12側との間に強力な電流電界が形成され、電圧の上昇に伴って放電線25側から旺盛なコロナ放電が発生する。
これに対し、
図4(2)に示すように、ガスロード時に、集塵極12の各「室」の開口部に入力された気体(
図2のガスG1)内のダスト等の微粒子の濃度が高くなると、それら微粒子が荷電されて「室」内の集塵空間に大量の空間電荷(負イオンi)が形成される。すると、これら大量の空間電荷による遮蔽効果によって放電線25近傍のコロナ放電が抑制される。このような大量の空間電荷によるコロナ放電の抑制は一般的に、「空間電荷効果」又は「コロナ阻止現象」と呼ばれる。この空間電荷効果(コロナ阻止現象)は、気体G1(ガス)中のダスト等の微粒子の濃度が高いほど、また、微粒子の粒子径が小さいほど起きやすい。
【0035】
次に、
図5を参照して、微粒子の濃度に応じて変化する、湿式電気集塵装置1の電流と電圧との関係について説明する。
図5は、エアロード時とガスロード時における、湿式電気集塵装置1の電流と電圧(直流高電圧V1)との関係を示す図である。
具体的には、エアロード時の電流と電圧との関係を示す曲線L1と、ガスロード時の電流と電圧(直流高電圧V1)との関係を示す曲線L2と、が示されている。
また、
図5において、縦軸は、湿式電気集塵装置1の電流を示し、横軸は、湿式電気集塵装置1の荷電電圧(直流高電圧V1)の実効電圧を示している。
湿式電気集塵装置1の直流高電圧が一定値V1a(V1aは、定格電圧以下の任意の値)である場合には、微粒子の濃度が高いガスロード時の曲線L2の方が、微粒子の濃度が低いエアロード時の曲線L1よりも下方に位置している。このことより、湿式電気集塵装置1の直流高電圧が一定値V1aである場合、微粒子の濃度は、電流の値が高くなる程少なくなり、逆に、電流の値が小さくなる程高くなることがわかる。
従って、本実施形態では上述したように、微粒子の濃度の指標として電流が検出され、検出された電流の値に応じて、直流高電圧V1の値が可変制御される。
【0036】
より具体的には、ガスロード時の曲線L2からわかるように、気体G1(ガス)中の微粒子の濃度が高いほど、空間電荷効果により、湿式電気集塵装置1の電流の値が低くなる。従って、濃度判定部51は、湿式電気集塵装置1の電流の値(電源装置2から供給される電流の現在値)が低い場合には、気体G1(ガス)中のダスト等の微粒子の濃度が高いと判定することができる。
これに対し、エアロード時の曲線L1からわかるように、気体G1(ガス)中の微粒子の濃度が低いほど、空間電荷効果により、湿式電気集塵装置1の電流の値が高くなる。従って、濃度判定部51は、湿式電気集塵装置1の電流の値(電源装置2から供給される電流の現在値)が高い場合には、気体G1(ガス)中のダスト等の微粒子の濃度が低いと判定することができる。
【0037】
次に、
図6を参照して、本実施形態に適用されている直流高電圧制御部42による荷電電圧の可変制御の具体例について説明する。
【0038】
図6は、直流高電圧制御部42による荷電電圧の可変制御の具体例を説明する図である。
図6には、エアロード時の電流と電圧との関係を示す曲線L3と、ガスロード時の電流と電圧(直流高電圧V1)との関係を示す曲線L4と、が示されている。
また、
図6において、縦軸は、湿式電気集塵装置1の電流を示し、横軸は、湿式電気集塵装置1の荷電電圧(直流高電圧V1)の実効電圧を示している。
本実施形態では、湿式電気集塵装置1の荷電電圧(直流高電圧V1)の実効電圧は、省エネ電圧値V12及び通常電圧値V11(V11>V12)の2値を取るものとする。
ここで、本実施形態では、このような
図6に示す可変制御を実現すべく、
図1に示すように、濃度判定部51は、濃度上昇判定部61と、濃度下降判定部62と、を備える。
濃度上昇判定部61は、電流の値(電源装置2から供給される電流の現在値)が第1の閾値C1(
図6参照)以下となったときに、微粒子の濃度が上昇したと判定する。電流が第1の閾値C1以下となったときには、微粒子の濃度が一定以上に高くなるため、微粒子の集塵効率を高くする必要がある。そこで、直流高電圧制御部42は、電流が第1の閾値C1以下となったときは、電源装置2の荷電電圧(直流高電圧V1)を、省エネ電圧値V12から通常電圧値V11に上昇させる制御、より具体的には電圧設定値を上昇させる制御を行うことで、集塵効率を向上させる。
これに対して、濃度下降判定部62は、電流の値(電源装置2から供給される電流の現在値)が第2の閾値C2以上となったときには、微粒子の濃度が下降したと判定する。電流が第2の閾値C2以上となったときは、微粒子の濃度が低くなっているため、微粒子の集塵効率をさほど高くする必要がない。そこで、直流高電圧制御部42は、電流が第2の閾値C2以上となったときは、電源装置2の荷電電圧(直流高電圧V1)を、通常電圧値V11から省エネ電圧値V12に下降させる制御を行うことで、省電力を図る。
【0039】
このように、電流の値が第1の閾値C1以下となって、微粒子の濃度が一定以上に高くなると、電源装置2の荷電電圧(直流高電圧V1)が通常電圧値V11となり、微粒子の集塵効率が向上する。
ここで、電流の値が第2の閾値C2以上となって、微粒子の濃度が低くなったにも関わらず、電源装置2の荷電電圧(直流高電圧V1)が通常電圧値V11のままでは過剰な荷電電圧を印加していることになり、電力が無駄である。そこで、このような場合には、電源装置2の荷電電圧(直流高電圧V1)が省エネ電圧値V12まで低下されて、省電力を図ることが可能になる。
【0040】
なお、電源装置2は、異常放電時には、直流高電圧V1の値を短時間低下させることで、火花放電の発生を防止している。
しかしながら、異常放電時に直流高電圧V1の値の低下は、電流の値の低下を招く。従って、微粒子の濃度とは無関係に(微粒子の濃度が変化しない場合であっても)、異常放電が発生して直流高電圧V1の値が低下したことが起因となった場合であっても、電流の値が第1の閾値C1以下になると、微粒子の濃度が上昇したと誤判定されるおそれがある。
そこで、このような誤判定を防止すべく、濃度判定部51は、異常放電により直流高電圧V1の値が低下している間においては、微粒子の濃度の変化の検出を禁止する。
【0041】
[湿式電気集塵装置の動作]
次に、
図7を参照して、以上の構成の本実施形態の集塵システムSの動作について説明する。
図7は、電源制御装置の状態遷移を示す図である。
図7において、各状態は、1つの楕円で示されており、その楕円に引かれた“S”を含む符号により判別される。
1つの状態から1つの状態への状態遷移は、所定の条件(以下、「遷移条件」と呼ぶ)が満たされると実行される。
このような遷移条件は、
図7おいては、1つの状態から1つの状態への遷移を表す矢印に、“T”を含む符号を付して表されている。
【0042】
以下、各状態S1〜S3について説明する。
待機状態S1は、電源制御装置3の電源が投入された初期段階の状態であり、未だ荷電電圧(電圧設定値)が0Vのまま待機している状態である。
通常電圧状態S2は、気体G1(ガス)中の微粒子の濃度が高い場合に、集塵効率を上昇させてこれら微粒子を除去すべく、荷電電圧(電圧設定値)が通常電圧値V11に設定された状態である。
省エネ電圧状態S3は、気体G1(ガス)中の微粒子の濃度が低くなった場合に、消費する電力量を抑制すべく、荷電電圧(電圧設定値)が省エネ電圧値V12に設定された状態である。省エネ電圧値V12は、微粒子の集塵効率を下げても微粒子等の不純物の濃度を目標値以下とすることができる値が規定されている。
【0043】
以下、各状態S1〜S3へ遷移するための遷移条件T1〜T5について説明する。
【0044】
遷移条件T1:待機状態S1から通常電圧状態S2に遷移させるための条件であり、待機状態S1において、集塵開始を指示するためのスイッチ(図示せず)がON状態にされた場合又は外部システム4から送信された起動信号が受信された場合に満たされる。
【0045】
遷移条件T2:通常電圧状態S2から省エネ電圧状態S3に遷移させるための条件であり、通常電圧状態S2において、電流の現在値が第2の閾値C2(
図6参照)以上となった場合に満たされる。
【0046】
遷移条件T3:省エネ電圧状態S3から通常電圧状態S2に遷移させるための条件であり、省エネ電圧状態S3において、電流の現在値が第1の閾値C1(
図6参照)以下となった場合に満たされる。
【0047】
遷移条件T4:通常電圧状態S2から待機状態S1に遷移させるための条件であり、通常電圧状態S2において、集塵開始を指示するためのスイッチ(図示せず)がOFF状態にされた場合又は外部システム4から送信された停止信号が受信された場合に満たされる。
【0048】
遷移条件T5:省エネ電圧状態S3から待機状態S1に遷移させるための条件であり、省エネ電圧状態S3において、集塵開始を指示するためのスイッチ(図示せず)がOFF状態にされた場合又は外部システム4から送信された停止信号が受信された場合に満たされる。
【0049】
ここで、外部システム4は、排ガスの発生を伴うプロセスの全体を制御するシステムであり、電源制御装置3と通信により各種情報を授受する。例えば外部システム4は、所定の条件が成立すると、集塵システムSの起動信号を電源制御装置41に送信する。
【0050】
待機状態S1において、このような外部システム4から送信された起動信号が受信された場合、又は集塵開始を指示するためのスイッチ(図示せず)がON状態にされた場合、遷移条件T1が満たされて、電源制御装置の状態は待機状態S1から通常電圧状態S2に遷移する。
すると、直流高電圧制御部42は、通常電圧値V11を電圧設定値に設定して、電源装置2に通知する。通知の形態は特に限定されないが、本実施形態では、電圧設定値に応じて4〜20mAの間で可変するレベル信号を送信することで、電圧設定値を通知する手法が採用されている。即ち、4〜20mAの範囲で電圧値が対応付けられており、レベル信号のレベル(電流値)に対応する電圧値が電圧設定値として直流高電圧制御部42から電源装置2に通知される。
電源装置2は、通知された電圧設定値、即ちここでは通常電圧値V11となるように直流高電圧V1を発生し、湿式電気集塵装置1に印加する。
【0051】
このような通常電圧状態S2が継続している最中に、外部システム4側で制御するプロセスの停止により排ガスが停止する等して、気体G1(ガス)中の微粒子の濃度が低下するに伴い、電源装置2から通知される電流の現在値が上昇し、第2の閾値C2以上になると、遷移条件T2が満たされて、電源制御装置3の状態は通常電圧状態S2から省エネ電圧状態S3に遷移する。
すると、直流高電圧制御部42は、省エネ電圧値V12を電圧設定値に設定して(設定更新して)、電源装置2に通知する。電源装置2は、通知された電圧設定値、即ちここでは省エネ電圧値V12となるように直流高電圧V1を発生し、即ち直流高電圧V1を低下させて、湿式電気集塵装置1に印加する。
【0052】
このような省エネ電圧状態S3が継続している最中に、外部システム4側で制御するプロセスの再開により排ガスが再発生する等して、気体G1(ガス)中の微粒子の濃度が上昇するに伴い、電源装置2から通知される電流の現在値が下降し、第1の閾値C1以下になると、遷移条件T3が満たされて、電源制御装置3の状態は省エネ電圧状態S3から通常電圧状態S2に遷移する。
すると、直流高電圧制御部42は、通常電圧値V11を電圧設定値に設定して(設定更新して)、電源装置2に通知する。電源装置2は、通知された電圧設定値、即ちここでは通常電圧値V11となるように直流高電圧V1を発生し、即ち直流高電圧V1を上昇させて、湿式電気集塵装置1に印加する。
【0053】
なお、通常電圧状態S2又は省エネ電圧状態S3のときに、集塵開始を指示するためのスイッチ(図示せず)がOFF状態にされた場合、又は外部システム4から送信された停止信号が受信された場合、遷移条件T4又はT5が満たされて、電源制御装置3の状態は通常電圧状態S2又は省エネ電圧状態S3から待機状態S1に遷移する。
【0054】
[TPの表示例]
次に、以上の構成の本実施形態の電源制御装置3のTP41の入力画面の表示例について説明する。
図8は、TPの入力画面の表示例を示す図である。
【0055】
TP41の左上欄には、電源装置2の制御状態が表示される。即ち、この左上欄の表示は、電源装置2の盤面の切替スイッチ31の状態と対応する。
TP41の右上欄には、電源装置2から通知される電圧及び電流の現在値が表示されている。同図の例においては、電圧の現在値として「50」kvが、電流の現在値として「700」mAが、それぞれ表示されている。即ち、この右上欄の表示は、電源装置2の盤面の表示部33の状態と対応する。
【0056】
TP41の中欄には、通常電圧状態S2及び省エネ電圧状態S3の設定値がそれぞれ表示されている。
同図の例においては、通常電圧状態S2の荷電電圧として「60」kvが、第2の閾値C2として「900」mAが、通常電圧状態S2の継続時間残時間として「0」分が、通常電圧状態S2の継続時間設定値として「3」分が、それぞれ設定されている。
また、省エネ電圧状態S3の荷電電圧として「50」kvが、第1の閾値C1として「600」mAが、省エネ電圧状態S3の継続時間残時間として「0」分が、省エネ電圧状態S3の継続時間設定値として「1」分が、それぞれ設定されている。
【0057】
ここで、
図9と
図10を参照して、本実施形態に適用されている直流高電圧制御部42による荷電電圧の可変制御(
図10)の、従来の荷電電圧の制御(
図9)に対する優位性について説明する。
【0058】
図9は、実際の運転における、従来の湿式電気集塵装置の電流と電圧(直流高電圧V1)の時間的推移を示す図である。
具体的には、所定時刻t1〜t5の間における、電流を示す曲線L5と、電圧(直流高電圧V1)を示す曲線L6とがそれぞれ示されている。
また、
図9において、縦軸は、湿式電気集塵装置の荷電電圧(直流高電圧V1)の実効電圧(kV)又は電流(mA)を示し、横軸は、所定時刻t1〜t5を含む時間軸を示している。所定時刻tk〜tk+1(kは、1〜4の整数値)の時間間隔は、一定時間である。
図9において、時刻t1〜t5の間の、時刻ta、tb及びtcをそれぞれ含む時間帯において、電流の値のピークが見られることから、この時間帯においては、気体G1(ガス)中のダスト等の微粒子の濃度が低いと把握できる。しかしながら、従来の湿式電気集塵装置1では、このような時間帯も含め、荷電電圧(直流高電圧V1)の実効電圧は略一定に制御されているため、無駄な電力が消費されていた。
【0059】
図10は、実際の運転における、本実施形態に適用されている湿式電気集塵装置1の電流と電圧(直流高電圧V1)の時間的推移を示す図である。
具体的には、所定時刻t6〜t10の間における、電流を示す曲線L7と、電圧(直流高電圧V1)を示す曲線L8とがそれぞれ示されている。
また、
図10において、縦軸は、湿式電気集塵装置の荷電電圧(直流高電圧V1)の実効電圧(kV)又は電流(mA)を示し、横軸は、所定時刻t6〜t10を含む時間軸を示している。所定時刻tm〜tm+1(mは、6〜9の整数値)の時間間隔は、
図9の所定時刻tk〜tk+1(kは、1〜4の整数値)の時間間隔と同一の、一定時間である。
本実施形態では、湿式電気集塵装置1の荷電電圧(直流高電圧V1)の実効電圧は、省エネ電圧値V12及び通常電圧値V11(V11>V12)の2値を取るものとする。
【0060】
ここで、本実施形態では、このような
図10に示す可変制御を実現すべく、
図1に示すように、濃度判定部51は、濃度上昇判定部61と、濃度下降判定部62と、を備える。
濃度下降判定部62は、時刻td、te又はtfを含む時間帯のように電流の値(電源装置2から供給される電流の現在値)が第2の閾値C2以上となった時間帯においては、微粒子の濃度が下降したと判定する。電流が第2の閾値C2以上となったときは、微粒子の濃度が低くなっているため、微粒子の集塵効率をさほど高くする必要がない。そこで、直流高電圧制御部42は、電流が第2の閾値C2以上となったときは、電源装置2の荷電電圧(直流高電圧V1)を、通常電圧値V11から省エネ電圧値V12に下降させる制御を行うことで省電力を図る。
これに対し、濃度上昇判定部61は、電流の値(電源装置2から供給される電流の現在値)が第1の閾値C1(
図6参照)以下となる時間帯においては、微粒子の濃度が上昇したと判定する。電流が第1の閾値C1以下となったときには、微粒子の濃度が一定以上に高くなるため、微粒子の集塵効率を高くする必要がある。そこで、直流高電圧制御部42は、電流が第1の閾値C1以下となったときは、電源装置2の荷電電圧(直流高電圧V1)を、省エネ電圧値V12から通常電圧値V11に上昇させる制御、より具体的には電圧設定値を上昇させる制御を行うことで、集塵効率を向上させる。
このように、第1実施形態では、通常電圧と省エネ電圧の2段階による2段階電圧を採用することにより、集塵効率の向上を図ることができるともに、省電力を図ることができる。
【0061】
[第1実施形態の湿式電気集塵装置の効果]
以上まとめると、第1実施形態の集塵システムSは、従来の集塵システムと比較して、次のように(1)乃至(5)の有利な効果を奏することが可能である。
【0062】
(1)従来では、湿式電気集塵装置の荷電電圧を高めていくと、集塵効率を高めることができるものの、電力が大量に消費されるため不経済であり、省エネルギーが求められている昨今の事情に反する結果となっていた。その一方で、単に荷電電圧を低下させると、微粒子やダスト等の集塵効率が落ちるため、廃ガスから微粒子やダスト等を十分に除去することができなくなる。
これに対して、本実施形態では、電源制御装置3は、微粒子の濃度に応じて荷電電圧を可変制御するようにした。これにより、過剰に印加される直流高電圧を抑制することで省電力を達成しつつ、重金属を含む微粒子やダストの集塵効率を維持しつつ、省電力を図ることができる。
【0063】
(2)また、本実施形態では、直流高電圧制御部42は、濃度判定部51により検出された電流に応じて印加される直流高電圧を可変制御するようにした。
これにより、微粒子の濃度に対応して最適な直流高電圧を供給することができるため、微粒子の濃度が低い場合には、過剰に印加される直流高電圧を抑制することにより、省電力を達成することができる。さらに、微粒子の濃度が高いときには、十分な直流高電圧を供給することにより、重金属を含む微粒子やダストの集塵効率を維持しつつ、省電力を図ることができる。
【0064】
(3)また、本実施形態では、直流高電圧制御部42は、濃度上昇判定部61により、電流が第1の閾値C1以下となり、微粒子の濃度が上昇したと判定した場合、電源装置2の荷電電圧を上昇させる制御が行われる。
これに対し、直流高電圧制御部42は、濃度下降判定部62により、電流が第2の閾値C2以上となり、微粒子の濃度が下降したと判定した場合、電源装置2の荷電電圧を下降させる制御が行われる。
これにより、電流の上下動を判定することにより、微粒子の濃度の変動が判定される。そして、微粒子の濃度が上昇したと判定された場合には、十分な直流高電圧を供給することにより、重金属を含む微粒子やダストの集塵効率の向上を図ることができる。さらに、微粒子の濃度が下降したと判定された場合には、過剰に印加される直流高電圧の供給を抑制することにより、省電力を達成することができる。
【0065】
(4)また、本実施形態では、直流高電圧制御部42は、微粒子の濃度が上昇したと判定された場合、直流高電圧を第1電圧値にする制御が行われる。これに対し、直流高電圧制御部42は、微粒子の濃度が下降したと判定された場合、直流高電圧を第1電圧値よりも低い第2電圧値にする制御が行われる。これにより、微粒子の濃度が上昇したと判定された場合には、十分な電圧値である第1電圧値とすることにより、重金属を含む微粒子やダストの集塵効率の向上を図ることができる。さらに、微粒子の濃度が下降したと判定された場合には、第1電圧値よりも直流高電圧の抑制した第2電圧値とすることで、省電力を達成することができる。
【0066】
(5)また、本実施形態では、電源装置2は、異常放電時には、所定の時間電流を下げて直流高電圧を発生する。そして、濃度判定部51は、異常放電時には、電流を下げている所定の時間内の微粒子の濃度の変化を検出しない。
これにより、過剰な電圧が発生する異常放電時においては、電源装置2は、所定の時間電流を下げることにより、火花放電を防ぐことができる。そして、濃度判定部51は、異常放電に伴い電源装置2により電流が下げられたことを起因として、微粒子の濃度が下げられていると誤判定されないよう、電流を下げている所定の時間内の微粒子の濃度の変化は検出しない。従って、異常放電時が発生した場合であっても、継続して省電力を達成しつつ、集塵効率の向上を図ることができる。
【0067】
[第2実施形態]
次に、
図11を参照して、第2実施形態の集塵システムSが適用されるプラント100について説明する。
図11は、第2実施形態の集塵システムSが適用されるプラント100の構成例を示す図である。
図11に示すプラント100は、集塵システムSと、排ガス発生源側設備100と、運転制御盤110と、エリア監視盤120と、を含む。
【0068】
排ガス発生源側設備100は、n個の排ガス発生源100−1〜100−n(nは、1以上の整数)により構成され、排ガス発生源100−1〜100−nのそれぞれから発生する排ガスは、排ガスダクトを介して集塵システムSに排出される。排ガス発生源側設備100は、例えば合成石英製造設備等により構成される。
【0069】
運転制御盤110は、ユーザの指示操作に基づき、運転信号等の各種信号を各排ガス発生源100−1〜100−nに送信することにより、各各排ガス発生源100−1〜100−nの運転の制御、例えば運転の開始や停止を制御する。
エリア監視盤120は、運転制御盤110の制御に基づき各排ガス発生源100−1〜100−nの運転が開始又は停止されたことを示す運転制御信号を受信すると、当該運転制御信号を集塵システムSに送信する。
【0070】
集塵システムSは、湿式電気集塵装置1と、電源制御装置3と、前処理装置5と、後処理装置6と、を含んで構成されている。
前処理装置5は、排ガス発生源側設備100から排出された排ガスを受け入れ、所定の前処理を実行した後、湿式電気集塵装置1に供給する。
湿式電気集塵装置1は、電源制御装置3の制御に基づき、排ガス発生源側設備100から前処理装置5を介して供給された排ガスを処理し、処理した排ガスを、後処理装置6に供給する。
後処理装置6は、湿式電気集塵装置1から供給された排ガスを受け入れ、所定の後処理を実行した後、外部へ排出する。
【0071】
さらに以下、
図12を参照して、本発明の第2実施形態に係る集塵システムSについて説明する。
図12は、本発明の第2実施形態に係る集塵システムSの構成例を示す図である。
【0072】
図12に示す集塵システムSは、湿式電気集塵装置1と、電源装置2と、電源制御装置3と、を備えており、エリア監視盤120と接続している。湿式電気集塵装置1及び電源装置2については、
図1の湿式電気集塵装置1及び電源装置2と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
電源制御装置3は、例えばPLCにより構成され、TP41と、直流高電圧制御部42と、を備える。
TP41については、
図1の集塵システムSのTP41と同様であるため、説明を省略する。
【0074】
直流高電圧制御部42は、排ガス発生源からの排ガスの負荷に応じて、具体的には運転制御盤110の制御に基づき各排ガス発生源100−1〜100−nの運転の状態より推定される排ガスの負荷に応じて、電源装置2からの荷電電圧の値を可変制御する。
より具体的には、直流高電圧制御部42は、排ガス発生源からの排ガスの負荷を推定することが可能な所定の制御信号に応じて荷電電圧を可変制御する。このため、直流高電圧制御部42は、機能的には、排ガス負荷の増減を推定する、排ガス負荷増減予測部71を備える。
ここで、機能的には、と記載したのは、排ガス負荷増減予測部71の実現形態をハードウェアに限定する必要がないからである。即ち、排ガス負荷増減予測部71は、以下の機能を有すれば足り、その実現形態は特に限定されず、ハードウェアで構成されてもよいし、ソフトウェアで構成されてもよいし、或いはまたそれらの組み合わせで構成されてもよい。
なお、直流高電圧制御部42は、第1の実施形態と同様に、濃度判定部を備えていてもよく、排ガス発生源100−1〜100−nの運転の状態より推定される排ガスの負荷に加え、湿式電気集塵装置1に入力されるガスに含まれる微粒子(塵やダスト等)の濃度に応じ、電源装置2からの荷電電圧の値を可変制御してもよい。
【0075】
排ガス負荷増減予測部71は、排ガス発生源側設備100から送信される所定の制御信号に応じて排ガス発生源から排出される排ガスの負荷の増減を予測する機能を有する。当該機能の実現形態は特に限定されないが、本発明の第2実施形態では、エリア監視盤120から送信される各排ガス発生源100−1〜100−nの運転の開始又は停止を制御するための運転制御信号に基づいて、各排ガス発生源100−1〜100−nから排出される排ガスの負荷を推定する機能が、排ガス負荷増減予測部71に設けられている。換言すると、各排ガス発生源100−1〜100−nの運転の開始又は停止を制御するための運転制御信号を、排ガスの負荷の指標として予測する機能が、排ガス負荷増減予測部71に設けられている。
具体的には、排ガス負荷増減予測部71は、各排ガス発生源100−1〜100−nの各稼働率に基づいて、湿式電気集塵装置1が処理すべき排ガスの負荷の増減を予測する。各排ガス発生源100−1〜100−nの稼働率としては、例えば、排ガス発生源100−1〜100−nのうち、いくつの各排ガス発生源100−1〜100−nが稼働しているかどうかを示す率を採用することができる。
【0076】
[第2実施形態の湿式電気集塵装置の効果]
以上まとめると、第2実施形態の集塵システムSは、従来の集塵システムと比較して、次のように(1)、(2)の有利な効果を奏することが可能である。
【0077】
(1)従来では、湿式電気集塵装置の荷電電圧を高めていくと、集塵効率を高めることができるものの、電力消費が大きくなり不経済であり、省エネルギーが求められている昨今の事情に反する結果となっていた。その一方で、単に荷電電圧を低下させると、微粒子やダスト等の集塵効率が落ちるため、廃ガスから微粒子やダスト等を十分に除去することができなくなる。
これに対して、本実施形態では、電源制御装置3は、各排ガス発生源100−1〜100−nに関する所定の制御信号に応じて、電極ロッド24及び放電線25に印加される直流高電圧を可変制御するようにした。これにより、例えば、各排ガス発生源100−1〜100−nの運転状態として、直流電圧の印加が過剰な状態では当該直流高電圧を抑制することで省電力を達成しつつ、直流電圧の印加が必要な状態では当該直流高電圧を維持することで重金属を含む微粒子やダストの集塵効率を維持することができる。このように、集塵効率の維持と、省電力との両方を実現することができる。
【0078】
(2)また、本実施形態では、直流高電圧制御部42は、各排ガス発生源100−1〜100−nの運転及び停止を制御するための運転制御信号に応じて電極ロッド24及び放電線25に印加される直流高電圧を可変制御するようにした。
これにより、各排ガス発生源100−1〜100−nの運転及び停止を勘案することにより、排ガスの負荷の増減(微粒子の濃度の変動)が予測される。そして、排ガスの負荷が上昇すると予測された場合には、十分な直流高電圧を供給することにより、重金属を含む微粒子やダストの集塵効率の向上を図ることができる。さらに、排ガスの負荷が下降したと判定された場合には、過剰に印加される直流高電圧の供給を抑制することにより、省電力を達成することができる。
【0079】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の集塵システムが適用されるプラントについて説明する。第3実施形態は、第1、第2実施形態が荷電電圧の大きさを制御するのに対し、荷電電圧を間欠制御する、間欠制御部を備える点が異なる。
間欠制御部は、湿式電気集塵装置に入力されるガスに含まれる微粒子(塵やダスト等)の濃度や、排ガス発生源側設備100から送信される所定の制御信号等に応じて、直流高電圧を間欠して印加する機能を有する。当該機能の実現形態は特に限定されないが、本発明の第3実施形態では、間欠制御部は、第1実施形態の濃度判定部51により検出された微粒子の濃度や、第2実施形態の排ガス負荷増減予測部71により予測された排ガスの負荷の増減に応じて、直流高電圧の間欠する間隔を可変制御する。
【0080】
以下、
図13を参照して、間欠制御部により間欠して印加する機能の詳細について説明する。
図13は、間欠制御部による運転状態の切り替えの制御についてのタイミングチャートであり、排ガス中の微粒子の濃度や、排ガス発生源側設備の稼働率等から求まる排ガス負荷の増減に応じて、直流高電圧が間欠する間隔を可変制御する例である。
具体的には、運転時刻t21〜t26の時間帯における、排ガス負荷を示す曲線L7と、電力を示す曲線L8と、荷電電圧(直流高電圧V1)を示す曲線L9とがそれぞれ示されている。また、
図13において、縦軸は、湿式電気集塵装置1の排ガス負荷、電力又は荷電電圧(直流高電圧V1)の実効電圧を示し、横軸は、時間軸を示している。
【0081】
間欠制御部は、排ガス負荷に応じて、印加する直流高電圧の間欠の間隔を可変制御する。本実施形態では、通常運転C1、第1省エネ運転C2及び第2省エネ運転C3の3つの運転状態の各々に対して、間欠の間隔が徐々に長くなるような3つのパターンがそれぞれ対応付けられており、間欠制御部は、排ガス負荷状態から推定される運転状態に対応付けられたパターンの間隔で、直流電圧を間欠して印加する制御を実行する。
通常運転C1には、間欠の間隔として「0」が対応付けられており、間欠制御部は、運転状態として通常運転C1を推定すると、間隔が「0」となるような間欠で直流電圧を印加する制御、即ち連続的に直流電圧を印加し続ける制御を実行する。
第1省エネ運転C2には、間欠の間隔として第1の間隔tg(tg=t23−t22)が対応付けられており、間欠制御部は、運転状態として第1省エネ運転C2を推定すると、第1の間隔tgとなるような間欠で直流電圧を印加する制御を実行する。
第2省エネ運転C3には、間欠の間隔として第2の間隔th(th=t25−t24)が対応付けられており、間欠制御部は、運転状態として第2省エネ運転C3を推定すると、第2の間隔thとなるような間欠で直流電圧を印加する制御を実行する。
【0082】
具体的には
図13の例では、運転時刻t21〜運転時刻t22の直前までの間、排ガス負荷は一定の閾値(上述の他の閾値と区別すべく、「第3の閾値」と呼ぶ)以上であるため、間欠制御部72は、運転状態として通常運転C1を推定し、連続的に直流電圧を印加し続ける制御を実行する。
【0083】
運転時刻t22の直前になると、排ガス負荷が第3の閾値以下に低下したので、間欠制御部は、運転状態の推定結果を、通常運転C1から第1省エネ運転C2に切り替える。即ち、排ガス負荷が第3の閾値以下に低下し、微粒子の濃度が一定以下に低下した場合には、微粒子の集塵効率をさほど高くする必要がない。そこで、間欠制御部72は、第1の間隔tgとなるような間欠で直流電圧を印加する制御を実行する。その結果、電力は、従来の連続的な直流電圧の印加状態と比較すると、曲線L8に示すように低くなる。即ち、従来と比較して省電力が図られる。なお、電力は、所定時間の平均値が採用されるため、間欠の印加が開始された直後の運転時刻t22〜運転時刻t23の間は減少し続ける。
その後、運転時刻t24の直前までの間、排ガス負荷は一定の閾値(上述の他の閾値と区別すべく、「第4の閾値」と呼ぶ)以上であるため、間欠制御部72は、運転状態として第1省エネ運転C2を推定し、第1の間隔tgで直流電圧を間欠して印加する制御を実行する。
【0084】
運転時刻t24の直前になると、排ガス負荷が第4の閾値以下に低下したので、間欠制御部72は、運転状態の推定結果を、第1省エネ運転C2から第2省エネ運転C3に切り替える。即ち、排ガス負荷が第4の閾値以下に低下し、微粒子の濃度がさらに低下した場合には、微粒子の集塵効率をさらに減少させても問題ない。そこで、間欠制御部72は、第2の間隔thとなるような間欠で直流電圧を印加する制御を実行する。その結果、電力は、従来の連続的な直流電圧の印加状態と比較すると、曲線L8に示すようにさらに低くなる。即ち、従来と比較してさらに省電力が図られる。なお、電力は、所定時間の平均値が採用されるため、間欠の間隔が第1の間隔tgから第2の間隔thに変化した直後の運転時刻t24〜運転時刻t25の間は、減少し続ける。
その後、排ガス負荷は第4の閾値以下を保っているため、間欠制御部72は、運転状態として第2省エネ運転C3を推定し、第2の間隔thで直流電圧を間欠して印加する制御を実行する。
【0085】
[第3実施形態の湿式電気集塵装置の効果]
以上まとめると、第3実施形態の集塵システムSは、従来の集塵システムと比較して、次のように(1)の有利な効果を奏することが可能である。
【0086】
(1)本実施形態では、直流高電圧制御部42は、微粒子の濃度や、各排ガス発生源100−1〜100−nから放出される排ガスの負荷の増減に応じて、間欠の間隔を可変する制御を実行するようにした。
これにより、排ガスの負荷に対応して最適な直流高電圧を供給することができるため、排ガスの負荷が低い場合には、微粒子の濃度が低いと推定して過剰に印加される直流高電圧の間欠の間隔を適切に制御することにより、省電力を達成することができる。また、排ガスの負荷が高い場合には、微粒子の濃度が高いと推定して十分な直流高電圧を供給することにより、重金属を含む微粒子やダストの集塵効率をさらに適切に維持することができる。
【0087】
ここで、
図14を参照して、従来品と、第1実施形態及び第3実施形態との比較をする。
図14は、従来品(固定電圧制御)と、
図1の第1実施形態の直流高電圧制御部42を備える湿式電気集塵装置1と、
図13の第3実施形態の直流高電圧制御部42を備える湿式電気集塵装置1との各々における、省エネ移行トリガ、省エネ方法及び電力を比較した図である。
【0088】
図14に示すように、第1実施形態の直流高電圧制御部42を備える湿式電気集塵装置1は、従来の直流高電圧制御部を備える湿式電気集塵装置と比較して、電力比で16%以上も省電力効果が向上している。
【0089】
また、
図14に示すように、第3実施形態の直流高電圧制御部42を備える湿式電気集塵装置1は、従来の直流高電圧制御部を備える湿式電気集塵装置と比較して、電力比で11%以上も省電力効果が向上している。
【0090】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0091】
例えば、上述したように、第2実施形態に対して第3実施形態を組み合わせた実施形態を採用することもできる。
この場合の実施形態に係る集塵システムは、従来の集塵システムと比較して、第2実施形態の(1),(2)の効果と第3実施形態の効果(1)とを共に奏することが可能である。
同様に、第1実施形態に対して第3実施形態を組み合わせた実施形態を採用することもできる。
この場合の実施形態に係る集塵システムは、従来の集塵システムと比較して、第1実施形態の(1)乃至(5)の効果と第3実施形態の効果(1)とを共に奏することが可能である。
【0092】
また例えば、上記実施形態では、直流高電圧制御部42は、荷電電圧を通常電圧値V11と省エネ電圧値V12との間の種類で可変制御していたがこれに限られるものでない。例えば、直流高電圧制御部42により可変制御される荷電電圧は2段階ではなく、多段階やアナログ的に連続的に可変制御することができる。
【0093】
図1に戻り、濃度判定部51は、このような微粒子の濃度の指標(電流)の判定を行うべく、濃度上昇判定部61と、濃度下降判定部62と、を備える。
濃度上昇判定部61は、電流の値(電源装置2から供給される電流の現在値)が第1の閾値C1(
図6参照)以下となったときに、微粒子の濃度が上昇したと判定する。これに対し、濃度下降判定部62は、電流の値(電源装置2から供給される電流の現在値)が第2の閾値C2(
図6参照)以上となったときに、微粒子の濃度が下降したと判定する。
そして、直流高電圧制御部42は、濃度上昇判定部61により微粒子の濃度が上昇したと判定された場合、電源装置2の荷電電圧(直流高電圧V1)を上昇させる制御、より具体的には電圧設定値を上昇させる制御を行う。これに対し、直流高電圧制御部42は、濃度下降判定部62により微粒子の濃度が下降したと判定された場合、電源装置2の荷電電圧(直流高電圧V1)を下降させる制御、より具体的には電圧設定値を下降させる制御を行う。
【0094】
また、上記実施形態では、直流高電圧制御部42は、PLCにより構成しているがこれに限られるものではなく、例えば、リレー制御盤といった簡易かつ安価な構成とすることも可能である。
【0095】
また、上述の実施形態では、排ガス負荷増減予測部71は、エリア監視盤120から送信される各排ガス発生源100−1〜100−nの運転の開始又は停止を制御するための運転制御信号に基づいて、各排ガス発生源100−1〜100−nから排出される排ガスの負荷を予測しているがこれに限られるものではない。例えば、排ガス負荷増減予測部71は、エリア監視盤120から送信される各排ガス発生源100−1〜100−nに供給される原料流量等の情報を含む信号に基づいて、各排ガス発生源100−1〜100−nから排出される排ガスの負荷を予測することもできる。
つまり、各排ガス発生源100−1〜100−nに対し供給された原料の流量を勘案することにより、排ガスの負荷の変動が推定されて、微粒子の濃度の変動が予測される。そして、原料の流量が増加した場合には、排ガスの負荷が上昇すると推定して、十分な直流高電圧を供給することにより、重金属を含む微粒子やダストの集塵効率の向上を図ることができる。さらに、原料の流量が減少した場合には、排ガスの負荷が下降すると推定して、過剰に印加される直流高電圧の供給を減らすることにより、省電力を達成することができる。