(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記窒化物半導体層にショットキー接触し、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電流を制御するための第3の電極をさらに備えた、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【背景技術】
【0002】
SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などのワイドギャップ半導体は、Siに比べてバンドギャップが大きいため、高い破壊電界強度を有している。また、ワイドギャップ半導体が高い破壊電界強度を有していることに起因して、ワイドギャップ半導体を用いたデバイスでは、ドリフト層の厚みを薄くし、かつ不純物濃度を高くすることが可能となり、オン抵抗を低くすることができる。このような特性を有することから、ワイドギャップ半導体を用いたデバイスは、たとえばハイブリッド自動車の制御装置、家電、または電力などの高耐圧・低損失が必要な分野、または高温動作が必要な分野などでの採用が期待されている。
【0003】
ワイドギャップ半導体を用いたデバイスとしては、たとえば、化合物半導体としてGaN層を用いたHEMTデバイスであるGaN−HEMT(高電子移動度トランジスタ)デバイスなどがある。HEMTデバイスとは、化合物半導体のヘテロ接合界面に生じる二次元電子ガスをチャネルに用いることで、高速動作を可能とした電子デバイスである。GaN−HEMTデバイスは、GaAs(ガリウム砒素)−HEMTデバイスに比べて高速動作が可能であり、高耐圧を有している。また、GaN−HEMTデバイスは、バンドギャップの大きいGaNがHEMT材料に用いられているので、SiのMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)などと比較してオン抵抗を低下することができる。
【0004】
ワイドギャップ半導体を堆積する際の下地となる基板としては、Si基板またはバルクのSiC基板が広く用いられている。このうちSiC基板は、現在のところ4インチ程度のものしか存在しておらず、大口径化が困難であるという問題を有している。安価で大口径のワイドギャップ半導体を得るためには、Si基板を用いることが好ましい。
【0005】
下記特許文献1および2には、Si基板またはSiC基板と、Si基板またはSiC基板上に形成されたGaN成分を含む層とを備えた半導体装置が開示されている。下記特許文献1の半導体装置は、導電性を有するSiCからなる基材と、基材上に形成されたSiCからなる絶縁層と、絶縁層上に形成されたAlN(窒化アルミニウム)からなるバッファ層と、バッファ層上に形成されたGaNからなるチャネル層と、チャネル層上に形成されたAl
xIn
yGa
zN(x+y+z=1)からなる障壁層とを備えている。絶縁層は、導電性のSiC基材上にバナジウムを添加することにより、SiCを絶縁化したものである。
【0006】
下記特許文献2の半導体装置は、Si基板またはSiC基板と、バッファ領域と、半導体素子を形成するための主半導体領域と、主半導体領域の主面に形成されたソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極と、Si基板またはSiC基板の裏面に形成された裏面電極とを備えている。Si基板またはSiC基板は、p型半導体領域と、n型半導体領域とを含んでいる。この技術では、p型半導体領域とn型半導体領域とのpn接合によって、ドレイン電極と裏面電極との間の耐圧を高めている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【0024】
図1を参照して、本実施の形態における半導体装置は、HEMTであり、Si基板1と、Si化合物半導体層4と、窒化物半導体層8と、ソース電極11およびドレイン電極15(第1および第2の電極の一例)と、ゲート電極13(第3の電極の一例)とを備えている。
【0025】
Si基板1は、アンドープのSiよりなっており、主面1aと、主面1aとは反対側にある主面1bとを有している。Si基板1はp型またはn型の導電型を有していてもよい。
【0026】
Si化合物半導体層4は、Si基板1の主面1aに形成されている。Si化合物半導体層4は、ワイドギャップ半導体であるSi化合物よりなっている。具体的には、Si化合物半導体層4は、3C−SiC、4H−SiC、または6H−SiCなどよりなっている。特に、Si化合物半導体層4がSi基板1上にエピタキシャル成長されたものである場合、一般的に、Si化合物半導体層4は3C−SiCよりなっている。Si化合物半導体層4を構成するSi化合物は、2eV以上3.26eV以下のバンドギャップを有することが好ましい。
【0027】
Si化合物半導体層4は、Si基板1の表面を炭化することで得られたSiCよりなる下地層上に、MBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学蒸着)法、またはLPE(液相エピタキシー)法などを用いて、SiCをホモエピタキシャル成長させることによって形成されてもよい。Si化合物半導体層4は、Si基板1の表面を炭化することのみによって形成されてもよい。さらに、Si化合物半導体層4は、Si基板1上に(またはバッファ層を挟んで)ヘテロエピタキシャル成長させることによって形成されてもよい。
【0028】
Si化合物半導体層4は、p型半導体層3と、n型半導体層5とを含んでいる。p型半導体層3およびn型半導体層5はpn接合を構成している。p型半導体層3はSi基板1の主面1aに形成されている。n型半導体層5は、p型半導体層3よりもSi基板1から離れた位置(言い換えれば、p型半導体層3の表面)に形成されている。
【0029】
p型半導体層3およびn型半導体層5は、Si基板1の主面1aにp型半導体層をエピタキシャル成長させた後で、熱拡散またはイオン注入などの方法でn型不純物をp型半導体層の表面に導入することにより形成されてもよい。p型半導体層3およびn型半導体層5は、Si基板1の主面1aにn型半導体層をエピタキシャル成長させた後で、イオン注入でp型不純物をn型半導体層内の所定の深さ位置に導入することにより形成されてもよい。さらに、p型半導体層3およびn型半導体層5は、Si基板1の主面1aにp型半導体層をエピタキシャル成長させた後で、p型半導体層の表面にn型半導体層をエピタキシャル成長させることにより形成されてもよい。
【0030】
p型半導体層3およびn型半導体層5が構成するpn接合の位置は、たとえば、Si化合物半導体層4内の不純物の濃度分布を計測することにより特定することが可能である。
【0031】
n型半導体層5がイオン注入やエピタキシャル成長によって形成された場合などには、n型半導体層5の深さ方向の位置が比較的規定しやすいため、pn接合の接合面は、主面1aに対して平行に延びる。一方、n型半導体層5が熱拡散を用いて形成された場合などには、pn接合の接合面は、Si基板1の端部(周縁部)において曲面形状を呈する。
【0032】
Si化合物半導体層4がSiCよりなる場合、Si化合物半導体層4をp型化する不純物(ドーパント)としては、たとえばB(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、およびIn(インジウム)のうち少なくとも1種類のものを用いることができる。Si化合物半導体層4をn型化する不純物としては、たとえばN(窒素)、P(リン)、およびAs(砒素)のうち少なくとも1種類のものを用いることができる。なお、pおよびnのキャリア濃度を制御するために、V(バナジウム)などの遷移元素をドープしてもよい。
【0033】
窒化物半導体層8は、Si化合物半導体層4の表面に形成されている。窒化物半導体層8は、GaNを含んでいる。窒化物半導体層8は、GaN層7と、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)層9とを含んでいる。GaN層7は、Si化合物半導体層4の表面に形成されている。GaN層7には不純物が導入されておらず、GaN層7はHEMTの電子走行層となる。AlGaN層9は、GaN層7の表面に形成されている。AlGaN層9はn型の導電型を有しており、HEMTの障壁層となる。窒化物半導体層8は、たとえばHVPE(水素化物気相エピタキシー)法、またはMOCVD(有機金属気相成長)法などにより形成される。
【0034】
Si化合物半導体層4を構成するSi化合物と、GaNとは、格子定数が近似している。このためSi化合物半導体層4は、窒化物半導体層8のバッファ層(下地層)としての役割を果たす。なお、窒化物半導体層8はSi化合物半導体層4上に形成されればよく、Si化合物半導体層4と窒化物半導体層8との間に、たとえばAlNよりなるバッファ層が形成されていてもよい。窒化物半導体層8は、第1の窒化物半導体層と、第1の窒化物半導体層の表面に形成され、第1の窒化物半導体層のバンドギャップよりも広いバンドギャップを有する第2の窒化物半導体層とを含んでいるものであればよく、GaNとAlGaNとの組合せ以外の窒化物半導体材料の組合せにより構成されてもよい。
【0035】
ソース電極11、ゲート電極13、およびドレイン電極15の各々は、窒化物半導体層8の表面に互いに間隔を空けて形成されている。ソース電極11およびドレイン電極15の各々は、窒化物半導体層8にオーミック接触している。ゲート電極13は、窒化物半導体層8にショットキー接触している。ソース電極11およびドレイン電極15の各々は、たとえば、窒化物半導体層8側から順にTi(チタン)層およびAl(アルミニウム)層を積層した構造を有している。ゲート電極13は、たとえば、窒化物半導体層8側から順にNi(ニッケル)層およびAu(金)層を積層した構造を有している。ソース電極11、ゲート電極13、およびドレイン電極15の各々は、たとえば蒸着法、MOCVD法、またはスパッタ法などにより形成される。
【0036】
図2は、本発明の第1の実施の形態における半導体装置の動作を説明する図である。説明の便宜のため、
図2では各部のハッチングを省略している。
【0037】
図2を参照して、GaN層7とAlGaN層9とのバンドギャップの差に起因して、AlGaN層9で発生した電子は、GaN層7におけるAlGaN層9とのヘテロ接合界面に集まり、二次元電子ガスTEを形成する。二次元電子ガスTEの形成に伴い、AlGaN層9内は、GaN層7とのヘテロ接合界面から
図1中上方向に延びる空乏層と、ゲート電極13との接合界面から
図1中下方向に延びる空乏層とで完全に空乏層化される。
【0038】
一般的に、ソース電極11およびSi基板1の主面1bは、常に、接地電位GND(基準となる電位)に保たれる。この状態で、ゲート電極13およびドレイン電極15の各々に電圧VGおよびVD(電圧VGおよびVDの電位はプラスであるものとする)の各々を印加すると、電界効果により二次元電子ガスTEの濃度が高くなり、ドレイン電極15からソース電極11へ電流が流れる。
【0039】
ドレイン電極15にプラスの電圧VDが印加されると、ドレイン電極15とSi基板1の主面1bとの間にはソース・ドレイン間電圧に等しい電圧が印加される。これにより、p型半導体層3とn型半導体層5との間のpn接合は逆バイアス状態となり、pn接合の空乏層VLは、矢印で示すように厚くなる。これによって、半導体装置の縦方向耐圧は向上し、ドレイン電極15とSi基板1の主面1bとの間の破壊が防止される。Si基板1の主面1bが接地電位とされずフローティングである場合にも、電圧印加時のドレイン電極15の電位がSi基板1の主面1bの電位よりも高いときには、上述の効果を得ることができる。
【0040】
本実施の形態によれば、Si基板1から近い順に、p型のワイドギャップ半導体層(p型半導体層3)とn型のワイドギャップ半導体層(n型半導体層5)とを積層したバッファ層(Si化合物半導体層4)を用いることで、ドレイン電極15にプラスの電圧を印加した場合に、これらの半導体層によって構成されるpn接合が逆バイアス状態となり、pn接合界面に空乏層が広がる。この空乏層が高抵抗層(半絶縁層)として機能するので、半導体装置の耐圧を向上することができる。
【0041】
加えて、GaNを含む窒化物半導体層8の下地層としてSi化合物半導体層4を用いることによって、Si化合物半導体層4がバッファ層として機能し、欠陥の少ない良質な窒化物半導体層8を得ることができる。
【0042】
また、高価で小径なバルクのSiC基板を用いる必要が無いので、ワイドギャップ半導体からなる高耐圧の半導体装置を容易かつ安価に作製することができる。
【0043】
さらに、Si化合物半導体層4がSiCよりなる場合には、次の効果を得ることができる。Siのバンドギャップに比べてSiCのバンドギャップは大きいので、半導体装置の耐圧を向上することができる。Siの熱伝導率に比べてSiCの熱伝導率は高いので、半導体装置に大電流を流した場合に、効率よく放熱を行うことができ、半導体装置の熱暴走を抑止することができる。さらに、Siの格子定数に比べてSiCの格子定数はGaNの格子定数に近いので、SiCを下地としてGaNをエピタキシャル成長させることにより、高品質のGaNを得ることができる。
【0044】
本実施の形態の効果を確認すべく、本願発明者らは、Si化合物半導体層4として2.2eVのバンドギャップを有する立方晶のSiCを用いた場合の半導体装置の絶縁破壊電界と、Si化合物半導体層4の代わりにSi層を用いた場合の半導体装置の絶縁破壊電界とを計測した。Si層におけるp型半導体層およびn型半導体層の各々の不純物濃度は、Si化合物半導体層4におけるp型半導体層3およびn型半導体層5の各々の不純物濃度と同じにした。その結果、Si化合物半導体層4として2.2eVのバンドギャップを有する立方晶のSiCを用いた場合の半導体装置の絶縁破壊電界は、1.0×10
6V/cmとなった。Si化合物半導体層4の代わりにSi層を用いた場合の半導体装置の絶縁破壊電界は、3.0×10
5V/cmとなった。この結果から、本実施の形態の半導体装置の絶縁破壊電界は、Si層を用いた場合の絶縁破壊電界に比べて約3倍大きくなっており、耐圧性能の向上が確認された。
【0046】
図3は、本発明の第2の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【0047】
図3を参照して、本実施の形態における半導体装置は、裏面電極17をさらに備えている点で、
図1に示す第1の実施の形態の半導体装置とは異なっている。裏面電極17は、Si基板1の主面1bに接触するように形成されている。裏面電極17は、ソース電極11と電気的に接続されている。これにより、基板1の主面1bはソース電極11と同じ電位(接地電位GND)とされている。裏面電極17は、たとえば蒸着法、MOCVD法、またはスパッタ法などにより形成される。
【0048】
なお、裏面電極17はソース電極11と同電位に保たれるものである必要は無く、p型半導体層3とn型半導体層5との間のpn接合が逆バイアス状態になるように、Si基板1の主面1bの電位を固定するものであればよい。
【0049】
これ以外の半導体装置の構成は、
図1に示す第1の実施の形態の半導体装置の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0050】
本実施の形態によれば、裏面電極17の電位が固定されるので、半導体装置の動作状態の変化によるSi基板1の電位の変化を防ぐことができ、半導体装置の電気的動作を安定させることができる。
【0051】
加えて、裏面電極17の電位がソース電極11と同じ電位に保たれるので、ドレイン電極15にプラスの電圧VDが印加されると、ドレイン電極15とSi基板1の主面1bとの間にはソース・ドレイン間電圧に等しい電圧が印加される。この電圧によってp型半導体層3とn型半導体層5との間のpn接合は逆バイアス状態となる。その結果、半導体装置の縦方向耐圧は向上し、ドレイン電極15とSi基板1の主面1bとの間の破壊が防止される。
【0053】
図4は、本発明の第3の実施の形態における半導体装置の第1の構成を示す断面図である。
【0054】
図4を参照して、本実施の形態における半導体装置は、Si化合物半導体層4がn型半導体層6a(他のn型半導体層の一例)をさらに含んでいる点で、
図1に示す第1の実施の形態の半導体装置とは異なっている。n型半導体層6aは、Si基板1の主面1a上に形成されており、n型半導体層5とともにp型半導体層3を挟んでいる。これにより、n型半導体層6aとp型半導体層3とが新たなpn接合を構成する。新たなpn接合は、p型半導体層3とn型半導体層5とが構成するpn接合とは逆の向きとなる。n型半導体層6aは、たとえばエピタキシャル成長、熱拡散またはイオン注入などの方法で形成される。
【0055】
これ以外の半導体装置の構成は、
図1に示す第1の実施の形態の半導体装置の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0056】
本実施の形態によれば、Si基板1の主面1bに対して不意にサージ電圧が印加された場合などに、n型半導体層6aとp型半導体層3との間のpn接合が逆バイアス状態となり、n型半導体層6aとp型半導体層3との間のpn接合の空乏層が厚くなる。これによって、ソース電極11、ゲート電極13、およびドレイン電極15の各々と、Si基板1の主面1bとの間の破壊が防止される。
【0057】
図5は、本発明の第3の実施の形態における半導体装置の第2の構成を示す断面図である。
【0058】
図5を参照して、本実施の形態における半導体装置は、Si化合物半導体層4がn型半導体層6aの代わりにp型半導体層6b(他のp型半導体層の一例)をさらに含んでいる点において、
図4の構成と異なっている。p型半導体層6bは、n型半導体層5の表面に形成されており、p型半導体層3とともにn型半導体層5を挟んでいる。これにより、n型半導体層5とp型半導体層6bとが新たなpn接合を構成する。新たなpn接合は、p型半導体層3とn型半導体層5とが構成するpn接合とは逆の向きとなる。p型半導体層6bは、たとえばエピタキシャル成長、熱拡散またはイオン注入などの方法で形成される。この半導体装置によれば、上述の効果と同様の効果を得ることができる。
【0059】
なお、Si化合物半導体層4は、p型とn型とが交互になるように積層して形成された2層以上のp型半導体層と2層以上のn型半導体層とを含んでいてもよい。
【0061】
図6は、本発明の第4の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【0062】
図6を参照して、本実施の形態における半導体装置は、Si基板の代わりにSOI基板1を用いている点で、
図1に示す第1の実施の形態の半導体装置とは異なっている。SOI基板とは、絶縁膜上に形成した単結晶Siの基板である。SOI基板1は、Si基板21と、SiO
2(二酸化ケイ素)層22と、SOI層23とを含んでいる。Si基板21の表面にはSiO
2層22が形成されている。SiO
2層22の表面にはSiよりなるSOI層23が形成されている。SOI基板1は任意の方法で作製される。
【0063】
本実施の形態によれば、Si化合物半導体層4の下地層としてSOI基板1を用いることで、半導体装置の接合容量を小さくすることができ、耐圧性を向上することができる。
【0065】
図7は、本発明の第5の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【0066】
図7を参照して、本実施の形態における半導体装置は、裏面電極17をさらに備えている点、およびn型半導体層5の表面にp型半導体層3が形成されている点で、
図1に示す第1の実施の形態の半導体装置とは異なっている。裏面電極17は、Si基板1の主面1bに接触するように形成されている。裏面電極17は、ドレイン電極15と電気的に接続されている。これにより、基板1の主面1bはドレイン電極15と同じ電位とされている。n型半導体層5はSi基板1の主面1aに形成されている。p型半導体層3は、n型半導体層5よりもSi基板1から離れた位置(言い換えれば、n型半導体層5表面)に形成されている。
【0067】
これ以外の半導体装置の構成は、
図1に示す第1の実施の形態の半導体装置の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0068】
本実施の形態によれば、裏面電極17の電位が固定されるので、半導体装置の動作状態の変化によるSi基板1の電位の変化を防ぐことができ、半導体装置の電気的動作を安定させることができる。
【0069】
加えて、裏面電極17の電位がドレイン電極15と同じ電位に保たれるので、ドレイン電極15にプラスの電圧VDが印加されると、ソース電極11とSi基板1の主面1bとの間にはソース・ドレイン間電圧に等しい電圧が印加される。この電圧によってp型半導体層3とn型半導体層5との間のpn接合は逆バイアス状態となる。その結果、半導体装置の縦方向耐圧は向上し、ソース電極11とSi基板1の主面1bとの間の破壊が防止される。
【0071】
図8は、本発明の第6の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【0072】
図8を参照して、本実施の形態における半導体装置は、横型のpチャネル型のMOSFETである。Si化合物半導体層4は、n型半導体層5と、p型半導体層3と、デバイス形成層10とを含んでいる。デバイス形成層10は、n型の導電型を有するSi化合物よりなっている。デバイス形成層10にはMOSFETが形成されている。n型半導体層5およびp型半導体層3は、pn接合を構成している。n型半導体層5およびp型半導体層3は、バッファ層(耐圧構造)として機能し、Si基板1とMOSFETとの間に設けられている。
【0073】
n型半導体層5はSi基板1の主面1aに形成されている。p型半導体層3は、n型半導体層5よりもSi基板1から離れた位置(言い換えれば、n型半導体層5の表面)に形成されている。デバイス形成層10は、p型半導体層3よりもSi基板1から離れた位置(言い換えれば、p型半導体層3の表面)に形成されている。
【0074】
デバイス形成層10の表面には、高濃度のp型不純物領域5aおよび5bが互いに間隔を空けて形成されている。ソース電極11およびドレイン電極15の各々は、p型不純物領域5aおよび5bの各々と接触するように、デバイス形成層10の表面に形成されている。デバイス形成層10の表面におけるソース電極11およびドレイン電極15の周囲には、たとえばSiO
2よりなる絶縁層12が形成されている。ゲート電極13は、デバイス形成層10の表面におけるソース電極11とドレイン電極15との間に、絶縁層12を介して形成されている。窒化物半導体層は形成されていない。
【0075】
ソース電極11およびSi基板1の主面1bは、常に、接地電位GNDに保たれる。この状態で、ゲート電極13およびドレイン電極15の各々にマイナスの電圧(ソース電極11とドレイン電極15との間に、たとえば−600Vの電圧)を印加すると、ゲート電極13の真下のデバイス形成層10の表面に正孔のチャネルが形成され、ソース電極11からドレイン電極15へ電流が流れる。この電流の大きさは、ゲート電極13に印加される電圧によって制御される。
【0076】
ドレイン電極15にマイナスの電圧が印加されると、ドレイン電極15とSi基板1の主面1bとの間にはソース・ドレイン間電圧に等しい電圧が印加される。これにより、p型半導体層3内の正孔、およびデバイス形成層10内の電子は、p型半導体層3とデバイス形成層10との接合界面に集まる。また、n型半導体層5内の電子は、Si基板1とn型半導体層5との接合界面に集まる。その結果、p型半導体層3とn型半導体層5との間のpn接合は逆バイアス状態となり、p型半導体層3とn型半導体層5との間のpn接合の空乏層は厚くなる。これによって、半導体装置の縦方向耐圧は向上し、ドレイン電極15とSi基板1の主面1bとの間の破壊が防止される。
【0077】
p型不純物領域5aおよび5bは、たとえば、デバイス形成層10の表面にレジストをパターニングし、このレジストによってマスクされていないデバイス形成層10の表面からp型不純物をイオン注入し、さらにアニールを行うことによって形成される。
【0078】
これ以外の半導体装置の構成は、
図1に示す第1の実施の形態の半導体装置の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0079】
本実施の形態によれば、p型半導体層3とn型半導体層5との間のpn接合の作用により、MOSFETの縦方向耐圧が向上し、ドレイン電極15とSi基板1の主面1bとの間の破壊が防止される。
【0080】
ところで、バルクのSiC基板と比較して、Si基板上に形成されたSiCは次の利点を有している。通常Si基板上に形成されたSiCは、3C−SiCの結晶構造を有しているのに対して、SiC基板は4H―SiCの結晶構造を有している。3C−SiCは、4H−SiCと比較して界面移動度が大きいという特徴がある。このため、本実施の形態において、Si化合物半導体層4が3C−SiCよりなる場合には、Si化合物半導体層4表面にチャネルが形成されるので、MOSFETの動作速度を向上することができる。
【0081】
なお、本実施の形態における半導体装置は、横型のnチャネル型のMOSFETであってもよい。この場合の半導体装置において、デバイス形成層10は、p型の導電型を有するSi化合物よりなっている。p型半導体層3はSi基板1の主面1aに形成されている。n型半導体層5は、p型半導体層3よりもSi基板1から離れた位置(言い換えれば、p型半導体層3の表面)に形成されている。デバイス形成層10は、n型半導体層5よりもSi基板1から離れた位置(言い換えれば、n型半導体層5の表面)に形成されている。デバイス形成層10には、横型のnチャネル型のMOSFETが形成されている。
【0083】
Si化合物半導体層上に形成される半導体装置は、上述の実施の形態で示したものの他、発光ダイオード、バイポーラトランジスタ、MESFET(Metal−Semiconductor Field Effect Transistor)、縦型トランジスタ、または半導体レーザなど、任意のものであればよい。
【0084】
上述の実施の形態は、互いに組み合わせることができる。たとえば、第2または第5の実施の形態の裏面電極を備えた構成を、第3、第4、または第6の実施の形態の構成に適用してもよい。第3の実施の形態の他のn型半導体層(n型半導体層6a)または他のp型半導体層(p型半導体層6b)を備えた構成を、第4、第5、または第6の実施の形態の構成に適用しても良い。第4の実施の形態のSOI基板を用いた構成を、第5または第6の実施の形態の構成に適用してもよい。
【0085】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。