(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
【0010】
本発明の毛髪化粧料において、成分(A)〜(D)の混合物は25℃においてラメラ構造を有する。本発明のラメラ構造は水により膨潤することができるため、毛髪化粧料の使用時に水により希釈されても、毛髪化粧料の粘度の低下を抑制し、弾性を付与でき、塗布時にコク感と伸ばし易さを付与できると考えられる。
ラメラ構造は、偏光顕微鏡による観察、小角X線散乱、または微分干渉顕微鏡を用いて観察することができる。
【0011】
成分(A)のカチオン界面活性剤としては、例えば、(i)アルキルトリメチルアンモニウム塩、(ii)アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩、(iii)ジアルキルジメチルアンモニウム塩、(iv)アルキルジメチルアミン及びその塩、(v)アルコキシジメチルアミン及びその塩、(vi)アルキルアミドジメチルアミン及びその塩等が挙げられる。成分(A)は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0012】
(i)アルキルトリメチルアンモニウム塩
アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、例えば下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
R
1−N
+(CH
3)
3X
− (1)
〔式中、R
1は炭素数12〜22のアルキル基を示し、X
−は塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオンを示す。〕
具体的には、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0013】
(ii)アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩
アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、例えば下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。
R
2−O−R
3−N
+(CH
3)
3X
− (2)
〔式中、R
2は炭素数12〜22のアルキル基を示し、R
3はヒドロキシ基が置換していてもよいエチレン基又はプロピレン基を示し、X
−は上記と同じである。〕
具体的には、ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアロキシヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0014】
(iii)ジアルキルジメチルアンモニウム塩
ジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、例えば下記一般式(3)で表されるものが挙げられる。
(R
4)
2N
+(CH
3)
2X
− (3)
〔式中、R
4はそれぞれ独立して炭素数12〜22のアルキル基又はベンジル基を示し、X
−は上記と同じである。〕
具体的には、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0015】
(iv)アルキルジメチルアミン及びその塩
アルキルジメチルアミンは、酸と反応して4級アンモニウム塩となり、界面活性剤となる。従って、ここでは、アルキルジメチルアミン及びその塩をカチオン界面活性剤と定義する。また、その含有量は、アルキルジメチルアミンの質量で換算する。アルキルジメチルアミン及びその塩としては、例えば下記一般式(4)で表されるもの及びその塩が挙げられる。
R
5−N(CH
3)
2 (4)
〔式中、R
5は炭素数12〜22のアルキル基を示す。〕
【0016】
アルキルジメチルアミンの塩としては、有機酸又は無機酸による塩が挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸;ポリグルタミン酸等のポリカルボン酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸等が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。これらの中で、有機酸が好ましく、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、酸性アミノ酸が好ましく、ジカルボン酸としてはマレイン酸、コハク酸がより好ましい。ヒドロキシカルボン酸としてはグリコール酸、乳酸、リンゴ酸がより好ましい。酸性アミノ酸としてはグルタミン酸がより好ましい。
具体的なアルキルジメチルアミン及びその塩としては、N,N−ジメチルベヘニルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン及びそれらの有機酸塩が挙げられ、N,N−ジメチルベヘニルアミンの乳酸塩、N,N−ジメチルステアリルアミンのグリコール酸塩などが好ましい。
【0017】
(v)アルコキシジメチルアミン及びその塩
アルコキシジメチルアミンは、酸と反応して4級アンモニウム塩となり、界面活性剤となる。従って、ここでは、アルキルジメチルアミン及びその塩をカチオン界面活性剤と定義する。また、その含有量は、アルコキシジメチルアミンの質量で換算する。アルコキシジメチルアミン及びその塩としては、例えば下記一般式(5)で表されるもの及びその塩が挙げられる。
R
6−O−R
7−N(CH
3)
2 (5)
〔式中、R
6は炭素素数12〜22のアルキル基を示し、R
7はエチレン基又はプロピレン基を示す。〕
【0018】
アルコキシジメチルアミンの塩としては、有機酸又は無機酸による塩が挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸;ポリグルタミン酸等のポリカルボン酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸等が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。これらの中で、有機酸が好ましく、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、酸性アミノ酸が好ましく、ジカルボン酸としてはマレイン酸、コハク酸がより好ましい。ヒドロキシカルボン酸としてはグリコール酸、乳酸、リンゴ酸がより好ましい。酸性アミノ酸としてはグルタミン酸がより好ましい。
具体的なアルコキシジメチルアミン及びその塩としては、N,N−ジメチル−3−ヘキサデシルオキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミン及びそれらの有機酸塩が挙げられ、N,N−ジメチル−3−ヘキサデシルオキシプロピルアミンの乳酸塩、N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミンのグリコール酸塩が好ましい。
【0019】
(vi)アルキルアミドジメチルアミン及びその塩
アルキルアミドジメチルアミンは、酸と反応して4級アンモニウム塩となり、界面活性剤となる。従って、ここでは、アルキルジメチルアミン及びその塩をカチオン界面活性剤と定義する。また、その含有量は、アルキルアミドジメチルアミンの質量で換算する。アルキルアミドジメチルアミン及びその塩としては、例えば下記一般式(6)で表されるもの及びその塩が挙げられる。
R
8−C(=O)NH−R
9−N(CH
3)
2 (6)
〔式中、R
8は炭素数11〜21のアルキル基を示し、R
9はエチレン基又はプロピレン基を示す。〕
【0020】
アルキルアミドジメチルアミンの塩としては、有機酸又は無機酸による塩が挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸;ポリグルタミン酸等のポリカルボン酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸等が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。これらの中で、有機酸が好ましく、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、酸性アミノ酸が好ましく、ジカルボン酸としてはマレイン酸、コハク酸がより好ましい。ヒドロキシカルボン酸としてはグリコール酸、乳酸、リンゴ酸がより好ましい。酸性アミノ酸としてはグルタミン酸がより好ましい。
具体的なアルキルアミドジメチルアミン及びその塩としては、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ドコサナミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ステアラミド及びそれらの有機酸塩が挙げられ、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ドコサナミドの乳酸塩、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ステアラミドのグリコール酸塩が好ましい。
【0021】
成分(A)としては、コンディショニング効果の観点から、(v)アルコキシジメチルアミン及びその塩、又は(vi)アルキルアミドジメチルアミン及びその塩が好ましい。その中でも、(v)アルコキシジメチルアミン及びその塩が好ましく、具体的には、N,N−ジメチル−3−ヘキサデシルオキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミン(ステアロキシプロピルジメチルアミン)又はこれらの混合物がより好ましく、N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミン(ステアロキシプロピルジメチルアミン)がさらに好ましい。
【0022】
成分(A)の含有量は、適度な粘度、伸ばしやすさを付与する観点から、毛髪化粧料全体に対し、0.5質量%以上であり、1質量%以上が好ましい。一方、成分(A)の含有量は、適度な粘度、良好な使用感を付与する観点から、毛髪化粧料全体に対し、3質量%以下であり、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。また、1質量%以上2質量%以下が好ましく、1質量%以上1.5質量%以下の範囲がより好ましい。
【0023】
成分(B)は、炭素数12以上22以下の直鎖アルコールであり、1種又は2種以上を用いてもよい。成分(B)は、好ましくは炭素数16以上22以下、より好ましくは炭素数18の直鎖アルコールである。具体的には、セチルアルコール(炭素数16)、ステアリルアルコール(炭素数18)、アラキルアルコール(炭素数20)、ベヘニルアルコール(炭素数22)等が挙げられ、ステアリルアルコールが好ましい。
【0024】
成分(B)の含有量は、毛髪における良好な使用感を付与する観点から、毛髪化粧料全体に対し、1.5質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましい。一方、成分(B)の含有量は、適度な粘度を得る観点から、毛髪化粧料全体に対し、15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましい。また、2質量%以上10質量%以下が好ましく、4質量%以上6質量%以下の範囲がより好ましい。
【0025】
成分(A)の重量に対する成分(B)の重量比((B)/(A))は、3以上5以下が好ましい。これにより、ラメラ構造を形成し、塗布時のコク感と伸ばしやすさに優れることができる。コク感と伸ばしやすさのバランスを向上させる観点から、重量比((B)/(A))は、3.5以上が好ましく、一方、4以下が好ましい。
【0026】
成分(C)は、一般式(I)で示されるポリオキシプロピレンアルキルエーテルである。
RO−(PO)
n−H (I)
(一般式(I)中、Rは炭素数3〜8のアルキル基、POはプロピレンオキシ基、nはPOの平均付加モル数を示し、n=2.5〜15である。)
【0027】
成分(C)のオクタノール−水分配係数(logP値)は1以上4以下である。これにより、塗布時のコク感と伸ばしやすさのバランスを良好にできる。また、成分(C)のlogP値は、より一層伸ばしやすさを付与する観点から、1.3以上4以下が好ましく、コク感と伸ばしやすさのバランスを向上させる観点から、2以上4以下がより好ましく、3以上4以下がさらに好ましい。
【0028】
ここで、「logP値」とは、化合物の1−オクタノール/水の分配係数の対数値であり、1−オクタノールと水の2液相の溶媒系に化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡において、それぞれの溶媒中での溶質の平衡濃度の比を意味し、底10に対する対数「logP」の形で一般的に示される。すなわち、logP値は親油性(疎水性)の指標であり、この値が大きいほど疎水的であり、値が小さいほど親水的であることを示す。
【0029】
本件では、logP値については、KOWWIN(tm):Estimates the log octanol−water partition coefficient, log KOW, of chemicals using an atom/fragment contribution method.(Perspectives in Drug Discovery and Design, 19: 67-84, 2000)により、フラグメントアプローチで計算された数値を用いる。
【0030】
成分(C)の含有量は、ラメラ構造を形成する毛髪化粧料に、塗布時、コク感、伸ばしやすさを付与する観点から、毛髪化粧料全体に対し、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましい。一方、ラメラ構造を形成する毛髪化粧料により、適度な粘度、良好な使用感を得る観点から、毛髪化粧料全体に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。また、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.03質量%以上5質量%以下の範囲がより好ましい。
【0031】
成分(A)と成分(B)の合計の重量に対する成分(C)の重量比((C)/{(A)+(B)})は、0.003以上0.8以下である。これにより、良好なラメラ構造を形成し、塗布時のコク感と伸ばしやすさに優れることができる。コク感と伸ばしやすさのバランスをより向上させる観点から、重量比((C)/{(A)+(B)})は、0.006以上が好ましく、一方、0.05以下が好ましく、0.02以下がより好ましい。また、重量比((C)/{(A)+(B)})は、0.003以上0.05以下が好ましく、0.006以上0.02以下がより好ましい。
【0032】
成分(D)の水は、イオン交換水や蒸留水等を用いることができる。成分(D)の含有量は、毛髪化粧料全体に対し、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。また98質量%未満が好ましく、95質量%以下がより好ましい。
【0033】
本発明による毛髪化粧料は、さらに、(E)ポリプロピレングリコールを含有してもよい。成分(E)の含有量は、塗布時、使用者にコク感を付与する観点から、毛髪化粧料全体に対し、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、一方、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。また、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上3質量%以下の範囲がより好ましく、0.05質量%以上2質量%以下の範囲がさらに好ましい。
【0034】
本発明により得られる毛髪化粧料は、水で20重量倍に希釈した際の25℃でのpHが1〜5.5であることが好ましい。この範囲であると、良好な乳化物が得られ、塗布時にコク感、伸ばしやすさを付与できる。pHを調整することにより、成分(A)の一部もしくは全てが塩の形に置換して使用される。pHは、2〜6がより好ましく、コク感を付与する観点から、2.5〜5がさらに好ましい。pHの調整には、炭素数1以上10以下の有機酸、無機酸や水酸化ナトリウム等の塩基性物質など、通常pH調整剤として使用されるものを用いてもよい。
【0035】
本発明による毛髪化粧料は、水で2重量倍に希釈した際の30℃におけるせん断速度(500s
−1)の時の粘度は、0.050〜0.270(Pa・s)が好ましい。これにより、コク感、伸ばしやすさが得られる。
粘度計としては、例えば、レオメーター(Anton Paar社、Physica MCR301)を使用することができる。
【0036】
一般に、毛髪化粧料の使用者は、リンス等の毛髪化粧料をシャンプー後の濡れ髪に用いる。従って、毛髪化粧料は、塗布時、毛髪から水分を供給され、水で希釈されながら、頭髪全体に手で伸ばされていくこととなる。この際、使用者が手で感じる毛髪化粧料の液性のイメージが、毛髪化粧料の性能の1つのイメージにつながる。ここで、一般の毛髪化粧料であれば、水分を供給されることで、単に粘度が大幅に下がり、吸収感といった毛髪化粧料の性能のイメージとなる。しかし、本発明の毛髪化粧料では、毛髪に塗布し、広げられる際に、栄養感やコク感といったイメージを付与することが解った。
【0037】
本発明の毛髪化粧料は、特定の成分(A)〜(C)を特定の比率で含有し、25℃においてラメラ構造を有することにより、塗布時のコク感と伸ばしやすさに優れることができる。この理由の詳細は明らかではないが、以下のように考えられる。
一般に、リンス等の毛髪化粧料は、カチオン界面活性剤と高級アルコールとを構成成分とする二分子膜を形成し、これが毛髪化粧料全体にラメラ構造を形成することにより、増粘していると考えられている。しかしながら、このような従来の毛髪化粧料は、水による希釈によりかかる二分子膜が膨張して破壊され、低粘化しやすいものであった。
これに対し、本発明の毛髪化粧料は、特定の比率で、成分(A)、(B)に、成分(C)を組み合わせることで、成分(C)中のプロピレンオキシ基が親水性と疎水性の両方の性質を兼ねることで、成分(A)、(B)により形成された二分子膜の構造及び二分子膜が層状に重なったラメラ構造を補強すると考えられる。これにより、ラメラ構造が水により膨潤しても構造が維持されるため、毛髪化粧料の使用時に水により希釈されても、毛髪化粧料の粘度の低下が抑制され、弾性(法線応力)が得られると考えられる。このように、本発明の毛髪化粧料は、毛髪化粧料自体の粘度を高くするものではなく、水による希釈に対して、希釈前の粘度を保持しようとするものである。したがって、毛髪全体に「伸ばしやすい」といった効果に加えて、特定の成分(C)を含有することで、厚み感、栄養感が得られる結果「コク感」を付与できる。
【0038】
また、本発明による毛髪化粧料は、法線応力を示すことが好ましい。法線応力とは、毛髪化粧料を毛髪に塗布した際に手指に感じられる反発力であり、コク感が感じられる一因として考えられる。法線応力は、毛髪化粧料の粘度、水の量等様々な因子の影響を受ける。
【0039】
法線応力は、例えば、以下のようにして測定できる。
毛髪化粧料に同重量の水を加えて2重量倍に希釈し、2倍希釈液を調製する。得られた2倍希釈液を用いて、レオメーター(Anton Paar社、Physica MCR301)により、せん断速度(1000s
−1)に対する、正の法線応力の発現を確認することができる。
【0040】
本発明による毛髪化粧料には、他のカチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;高重合ジメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン及びアルキル変性シリコーン等のシリコーン化合物:ヒマワリ油、ヒマシ油などの植物油、それらの水素添加物や混合物、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン等の炭化水素油、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸およびそれらのエステル類、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル等の多価アルコール縮合物の有機酸エステル等の油性成分;カチオン化セルロース、カチオン化グアーガムス等のカチオン性ポリマー;その他、パール化剤、色素、香料、噴射剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、清涼剤、抗フケ剤、酸化防止剤等を本発明の目的を損なわない範囲内で適宜配合することができる。
【0041】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、グリセリルエーテル、成分(C)を除くポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリンアルキルエーテル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグリコシド類等が挙げられる。このうち、アルキルグリコシド類、ポリオキシアルキレン(炭素数8〜20)脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミドが好ましい。例えば、オレイン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミドが挙げられる。
【0042】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン等のベタイン系界面活性剤が挙げられる。具体的には、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインを使用できる。
【0043】
次に、毛髪化粧料の製造方法を説明する。
本発明による毛髪化粧料の製造方法は、次の成分(A)〜(C);
(A)カチオン界面活性剤
(B)炭素数12以上22以下の直鎖アルコール
(C)下記一般式(I)で示されるポリオキシプロピレンアルキルエーテル
RO−(PO)
n−H (I)
(一般式(I)中、Rは炭素数3〜8のアルキル基、POはプロピレンオキシ基、nはPOの平均付加モル数を示し、n=2.5〜15であり、オクタノール−水分配係数(logP値)が1以上4以下である。)を含有する油相を用い、
水相に、上記油相を均一混合し、乳化物を得る工程と、
当該乳化物を室温まで冷却する工程と、を含み、
上記乳化物を得る工程は、上記乳化物の相転移温度未満かつ上記油相の融点以上で加熱しながら均一混合するものである。
【0044】
ここで、乳化物の相転移温度および油相の融点は、示差走査熱量測定(DSC)等を用いて測定できる。乳化物の相転移温度未満かつ成分(A)〜(C)を含有する油相の融点以上で加熱することにより、良好なラメラ構造を有する毛髪化粧料が得られる。均一混合し、乳化する手段は、一般的な混合攪拌装置が用いられる。
【0045】
本発明による毛髪化粧料は、へアリンス、へアコンディショナー、へアトリートメント、へアパック、へアクリーム、コンディショニングムース、へアムース、シャンプー、リーブオントリートメント等に用いることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
本発明は、さらに以下の組成物、製造方法、或いは用途を開示する。
【0047】
<1>
次の成分(A)〜(D);
(A)カチオン界面活性剤 0.5〜3質量%
(B)炭素数12以上22以下の直鎖アルコール 1.5〜15質量%
(C)一般式(I)で示されるポリオキシプロピレンアルキルエーテル
RO−(PO)
n−H (I)
(一般式(I)中、Rは炭素数3〜8のアルキル基、POはプロピレンオキシ基、nはPOの平均付加モル数を示し、n=2.5〜15であり、オクタノール−水分配係数(logP値)が1以上4以下である。)
(D)水
を含有し、
成分(A)と成分(B)の合計の重量に対する成分(C)の重量比((C)/{(A)+(B)})が、0.003以上0.8以下であり、
成分(A)〜(D)の混合物が25℃においてラメラ構造を形成する毛髪化粧料。
【0048】
<2>
(E)ポリプロピレングリコールを、当該毛髪化粧料全体に対し、0.01〜5質量%を含有することが好ましく、0.05質量%以上3質量%以下の範囲がより好ましく、0.05質量%以上2質量%以下の範囲がさらに好ましく、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、一方、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい、<1>に記載の毛髪化粧料。
<3>
成分(A)の重量に対する成分(B)の重量比((B)/(A))が、3以上5以下であり、3.5以上が好ましく、一方、4以下が好ましい、<1>または<2>に記載の毛髪化粧料。
<4>
成分(A)が、好ましくは、(i)アルキルトリメチルアンモニウム塩、(ii)アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩、(iii)ジアルキルジメチルアンモニウム塩、(iv)アルキルジメチルアミン及びその塩、(v)アルコキシジメチルアミン及びその塩、(vi)アルキルアミドジメチルアミン及びその塩の中から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくは、(v)アルコキシジメチルアミン及びその塩、又は(vi)アルキルアミドジメチルアミン及びその塩であり、さらに好ましくは、(v)アルコキシジメチルアミン及びその塩であり、ことさら好ましくは、N,N−ジメチル−3−ヘキサデシルオキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミン(ステアロキシプロピルジメチルアミン)又はこれらの混合物である、<1>乃至<3>いずれかに記載の毛髪化粧料。
<5>
成分(A)の含有量は、毛髪化粧料全体に対し、1質量%以上が好ましく、一方、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、また、1質量%以上2質量%以下が好ましく、1質量%以上1.5質量%以下の範囲がより好ましい、<1>乃至<4>いずれかに記載の毛髪化粧料。
<6>
成分(B)は、好ましくは炭素数16以上22以下、より好ましくは炭素数18の直鎖アルコールであり、さらに好ましくは、セチルアルコール(炭素数16)、ステアリルアルコール(炭素数18)、アラキルアルコール(炭素数20)、ベヘニルアルコール(炭素数22)等が挙げられ、ステアリルアルコールの中から選ばれる少なくとも一つである、<1>乃至<5>いずれかに記載の毛髪化粧料。
<7>
成分(B)の含有量は、毛髪化粧料全体に対し、2質量%以上が好ましく、一方、4質量%以上がより好ましく、10質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましく、また、2質量%以上10質量%以下が好ましく、4質量%以上6質量%以下の範囲がより好ましい、<1>乃至<6>いずれかに記載の毛髪化粧料。
<8>
成分(C)のオクタノール−水分配係数(logP値)は、1.3以上4以下が好ましく、2以上4以下がより好ましく、3以上4以下がさらに好ましい、<1>乃至<7>いずれかに記載の毛髪化粧料。
<9>
成分(C)の含有量は、毛髪化粧料全体に対し、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、一方、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、また、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.03質量%以上5質量%以下の範囲がより好ましい、<1>乃至<8>いずれかに記載の毛髪化粧料。
<10>
成分(A)と成分(B)の合計の重量に対する成分(C)の重量比((C)/{(A)+(B)})は、0.006以上が好ましく、一方、0.05以下が好ましく、0.02以下がより好ましい、<1>乃至<9>いずれかに記載の毛髪化粧料。
<11>
成分(D)の含有量は、毛髪化粧料全体に対し、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、一方、98質量%未満が好ましく、95質量%以下がより好ましい、<1>乃至<10>いずれかに記載の毛髪化粧料。
<12>
毛髪化粧料を水で20重量倍に希釈した際の25℃でのpHが、1〜5.5であることが好ましく、2〜6がより好ましく、コク感を付与する観点から、2.5〜5がさらに好ましい、<1>乃至<11>いずれかに記載の毛髪化粧料。
<13>
毛髪化粧料を水で2重量倍に希釈した際の30℃におけるせん断速度(500s
−1)の時の粘度が、好ましくは、0.050〜0.270(Pa・s)である、<1>乃至<12>いずれかに記載の毛髪化粧料。
<14>
<1>乃至<13>いずれかに記載の毛髪化粧料を濡れた毛髪に塗布する毛髪化粧料の使用方法。
<15>
次の成分(A)〜(C);
(A)カチオン界面活性剤
(B)炭素数12以上22以下の直鎖アルコール
(C)下記一般式(I)で示されるポリオキシプロピレンアルキルエーテル
RO−(PO)
n−H (I)
(一般式(I)中、Rは炭素数3〜8のアルキル基、POはプロピレンオキシ基、nはPOの平均付加モル数を示し、n=2.5〜15であり、オクタノール−水分配係数(logP値)が1以上4以下である。)を含有する油相を用い、
水相に、前記油相を均一混合し、乳化物を得る工程と、
当該乳化物を室温まで冷却する工程と、を含み、
前記乳化物を得る工程は、前記乳化物の相転移温度未満かつ前記油相の融点以上で加熱しながら均一混合する、毛髪化粧料の製造方法。
【実施例】
【0049】
以下の実施例において、%で示すものはすべて質量%である。
【0050】
<毛髪化粧料の製造>
表1に示す組成の毛髪化粧料を、以下の手順により製造した。
(1)55℃に加熱した成分(D)に有機酸を添加した。(水相)
(2)成分(A)、(B)、(C)(場合により、成分(E))を80℃で混合溶解した。(油相)
(3)水相をプロペラ攪拌(500ml程度の製造で約200r/min)しながら、水相に油相を添加し、約20分間加熱混合して、乳化した(乳化温度は表1に示した)。
(4)30℃まで冷却し、毛髪化粧料を得た。
【0051】
<乳化物の相転移温度、油相の融点>
得られた乳化物および油相について示差走査熱量計(SEIKO社製 SSC5200シリーズ、DSC120、昇温スピード 2℃/min)で測定した。
結果を、表1に示す。
【0052】
<logP値>
logP値、KOWWIN(tm):Estimates the log octanol−water partition coefficient, log KOW, of chemicals using an atom/fragment contribution method.(Perspectives in Drug Discovery and Design, 19: 67-84, 2000)により、フラグメントアプローチで計算された数値を用いた。
【0053】
<ラメラ構造の観察>
毛髪化粧料を、偏光顕微鏡を用いて、25℃におけるラメラ構造の有無を観察した。結果を、表1に示す。
【0054】
<評価>
(官能評価)
日本人女性の毛髪20g(約15〜20cm)を束ね、標準シャンプーで洗浄した。この毛束に、得られた毛髪化粧料2gを均一に塗布し、評価を行った。「塗布時に厚みがあってコクのある感じ」、「塗布時の伸ばしやすさ」の各評価項目について以下の基準で評価し、専門パネラー3人の合計点を評点とした。
・標準シャンプーの処方(pH7.0)
25%ポリオキシエチレン(2.5)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩 62.0%
ラウリン酸ジエタノールアミド 2.3%
エデト酸二ナトリウム 0.15%
安息香酸ナトリウム 0.5%
塩化ナトリウム 0.8%
75%リン酸 適量
香料、メチルパラベン 適量
精製水 残量
・評価基準
5:良い
4:やや良い
3:どちらでもない
2:やや悪い
1:悪い
【0055】
(物性評価)
・粘度
毛髪化粧料に同重量の水を加えて2重量倍に希釈し、100rpmで10分間撹拌して、2倍希釈液を調製した。得られた2倍希釈液について、レオメーター(Anton Paar社、Physica MCR301)を用いて、30℃におけるせん断速度(500s
−1)に対する粘度を測定した(Pa・s)。治具は直径50mm、サンドブラスト処理したコーンプレート(Anton Paar社 CP50−1/S)を用い、せん断速度0.001s
−1〜1000s
−1の範囲で測定し、500s
−1時の粘度を読み取った。
【0056】
・法線応力
上記のようにして得られた2倍希釈液について、コクが強く感じられた実施例2,3,10についてレオメーター(Anton Paar社、Physica MCR301)を用いて、30℃におけるせん断速度0.001s
−1〜1000s
−1の範囲で法線応力を測定し、せん断速度(1000s
−1)に対する、法線応力が正の値を取るか、そうでないかを確認した。正の値を取る場合は○、そうでない場合は×とした。なお、治具は直径50mm、サンドブラスト処理したコーンプレート(Anton Paar社 CP50−1/S)を用た。
【0057】
<実施例、比較例>
表1に示す組成の毛髪化粧料を、上記のように調製し評価した。結果を、表1に示す。
また、法線応力を測定した結果を表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1中、各成分は、以下の通りである。
ステアロキシプロピルジメチルアミン(ファーミン DME−80、花王株式会社)
ステアリルアルコール(カルコール8098、花王株式会社)
ポリオキシプロピレン(3)オクチルエーテル(logP=3.24)(ソフケア GP−1、花王株式会社)なお、括弧内の数値は、PO基の平均付加モル数を示す(以下、同)。
ポリオキシプロピレン(7)プロピルエーテル(logP=1.35)(合成品)
ポリオキシプロピレン(10)ブチルエーテル(logP=2.27)(合成品)
ポリオキシプロピレン(6)オクチルエーテル(logP=3.66)(合成品)
ポリオキシプロピレン(10)ラウリルエーテル(logP=6.20)(合成品)
ポリオキシプロピレン(3)プロピルエーテル(logP=0.78)(合成品)
ポリプロピレングリコール(PPG−7)(アデカ カーポール DL−30、株式会社ADEKA
DL−乳酸(ムサシノ乳酸90、武蔵野化学株式会社)
【0060】
【表2】