特許第6553346号(P6553346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553346過電流検出回路およびそれを利用したUSB給電装置、電子機器、過電流検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553346
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】過電流検出回路およびそれを利用したUSB給電装置、電子機器、過電流検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/165 20060101AFI20190722BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20190722BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20190722BHJP
   H02H 3/087 20060101ALI20190722BHJP
   H02H 3/093 20060101ALI20190722BHJP
   H02H 3/08 20060101ALI20190722BHJP
   G06F 1/28 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   G01R19/165 L
   H02J7/00 S
   H02J1/00 309R
   H02H3/087
   H02H3/093
   H02H3/08 N
   G06F1/28
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-217686(P2014-217686)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-85107(P2016-85107A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】本木 健一
【審査官】 山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−177949(JP,A)
【文献】 特開2013−172603(JP,A)
【文献】 特開2014−138457(JP,A)
【文献】 特開2016−013024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/165
G06F 1/28
H02H 3/08
H02H 3/087
H02H 3/093
H02J 1/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
USB(Universal Serial Bus)規格に準拠し、USB受電装置に電力を供給するUSB給電装置に搭載される過電流検出回路であって、
前記USB受電装置に供給されるサプライ電流に応じた検出信号を、可変のしきい値と比較し、前記検出信号が前記しきい値を超えると、比較信号をアサートする電流センサと、
(i)前記しきい値が過電流保護の基準値に応じた第1値である第1状態と、(ii)前記しきい値が前記第1値より大きな第2値である第2状態と、が切りかえ可能であり、前記第1状態において、前記比較信号がアサートされると、過電流検出信号のネゲートを維持したまま前記第2状態に遷移し、前記第2状態において前記比較信号がアサートされたときのみ、前記過電流検出信号をアサートする判定部と、
を備えることを特徴とする過電流検出回路。
【請求項2】
前記判定部は、前記第2状態に遷移してからの時間を測定し、前記第2状態において前記比較信号がネゲートされた状態が所定の判定時間持続すると、前記第1状態に遷移するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の過電流検出回路。
【請求項3】
バスライン上に設けられた出力スイッチをさらに備え、
前記判定部は、前記過電流検出信号がアサートされると、前記出力スイッチをオフすることを特徴とする請求項1または2に記載の過電流検出回路。
【請求項4】
前記サプライ電流の経路上に設けられた検出抵抗をさらに備え、
前記電流センサは、前記検出抵抗の電圧降下を前記検出信号として監視することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の過電流検出回路。
【請求項5】
前記USB給電装置は、USB−PD(Universal Serial Bus−Power Delivery)規格、またはUSB−TypeC規格に準拠することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の過電流検出回路。
【請求項6】
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の過電流検出回路。
【請求項7】
USB(Universal Serial Bus)規格に準拠し、USB受電装置に電力を供給するUSB給電装置であって、
電源回路と、
前記電源回路の出力と前記USB受電装置とを接続するバスラインと、
前記USB受電装置に供給されるサプライ電流の過電流状態を検出する請求項3に記載の過電流検出回路と、
を備えることを特徴とするUSB給電装置。
【請求項8】
請求項7に記載のUSB給電装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
USB(Universal Serial Bus)規格に準拠し、USB受電装置に電力を供給するUSB給電装置における過電流検出方法であって、
前記USB受電装置に供給されるサプライ電流に応じた検出信号を生成するステップと、
前記検出信号を、可変のしきい値と比較し、前記検出信号が前記しきい値を超えると、比較信号をアサートするステップと、
初期状態である第1状態において、前記しきい値を過電流保護の基準値に応じた第1値とするステップと、
第2状態において、前記しきい値を前記第1値より大きな第2値とするステップと、
前記第1状態において、前記比較信号がアサートされると、過電流検出信号のネゲートを維持しつつ、前記第2状態に遷移するステップと、
前記第2状態において前記比較信号がアサートされたときに限り、前記過電流検出信号をアサートするステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は過電流検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末、スマートホン、タブレット端末、ノート型コンピュータ、ポータブルオーディオプレイヤをはじめとする電池駆動デバイスは、充電可能な二次電池とともに、それを充電するための充電回路を内蔵する。充電回路には、外部からUSB(Universal Serial Bus)ケーブルを介して供給されたDC電圧(バス電圧VBUS)にもとづいて二次電池を充電するものが存在する。
【0003】
現在、モバイル機器に搭載される充電回路は、USB Battery Charging Specificationと呼ばれる規格(以下、BC規格という)に準拠したものが主流である。USBホストあるいはチャージャ(以下、USB給電装置と総称する)には、いくつかの種類が存在する。BC revision 1.2規格においては、USB給電装置の種類として、SDP(Standard Downstream Port)、DCP(Dedicated Charging Port)、CDP(Charging Downstream Port)が定義されている。そしてUSB給電装置が供給できる電流(電流容量)は、その種類に応じて規定されている。具体的には、DCP、CDPでは1500mA、SDPでは、USBのバージョンに応じて100mA、500mA、900mAのように規定されている。
【0004】
USBを利用した次世代の二次電池充電の方式、システムとして、USB Power Deliveryと呼ばれる規格(以下、PD規格という)が策定されている。PD規格では、供給可能な電力がBC規格の7.5Wから、最大100Wまで大幅に増大する。具体的にはPD規格では、USBバス電圧として、5Vより高い電圧(具体的には、12V、20V)の供給が許容されており、充電電流も、BC規格よりも大きな量(具体的には、2A,3A、5A)の供給が許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−38892号公報
【特許文献2】特開2014−3850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
USB−PD規格においては、過電流保護に関して、ピークカレントという仕様が定められている。ピークカレント仕様では、サプライ電流IOUTが、過電流保護のためのしきい値IOCを超えた場合であっても、増加の割合が所定値αより小さく、かつしきい値IOCを上回る時間が所定時間TIMAX以内であれば、給電を継続するというものである。
【0007】
図1は、本発明者が検討した過電流検出回路100rの回路図である。過電流検出回路100rは、検出抵抗R1、出力スイッチSW1、電流センサ20rおよびマスク回路26を含む。電流センサ20rは、検出抵抗R1の電圧降下(検出電圧)Vsを監視し、検出電圧Vsが所定のしきい値を超えると、比較信号S1をアサート(たとえばハイレベル)する。たとえば電流センサ20rは、検出抵抗R1の電圧降下を増幅するセンスアンプ22と、センスアンプ22の出力電圧をしきい値VTHと比較するコンパレータを含む。マスク回路26は、ノイズによる過電流状態の誤検出を防止するために、マスク時間TMSKより短い過電流検出(比較信号S1のアサート)をマスクする。マスク回路26はアナログフィルタあるいはデジタルタイマなどを用いて構成される。
【0008】
図2(a)〜(c)は、図1の過電流検出回路100rの動作波形図である。本発明者は、図1の過電流検出回路100rにおいて、マスク回路26のマスク時間TMSKを所定時間TIMAXに設定し、USB−PD規格に対応させることを検討した。
【0009】
図2(a)に示すように、サプライ電流IOUTがしきい値IOPを超える状態が、所定時間TIMAXを超えて持続すると、マスク回路26の出力(過電流検出信号)S2がアサートされ、出力スイッチSW1がオフされ、回路保護がかかる。
【0010】
図2(b)に示すように、サプライ電流IOUTがしきい値IOPを超える状態が、所定時間TIMAXより短い場合には、マスク回路26によって電流センサ20rの出力S1のアサートがマスクされる。その結果、マスク回路26の出力S2はローレベルを維持し、出力スイッチSW1はオンを維持する。つまり図1の過電流検出回路100rによれば、一時的な過電流をマスクすることができる。
【0011】
ところが、図2(c)に示すように、所定時間TIMAX中に、サプライ電流IOUTが過電流保護のためのしきい値IOCを超え、さらにその後、回路異常(たとえばバスラインの地絡)によりサプライ電流IOUTが非常に大きくなった場合に、直ちに出力スイッチSW1をオフすることができず、大電流IEMは、所定時間TIMAXにわたり流れ続けることとなる。過電流しきい値IOCを超える大電流IEMが流れ続けると、USBホストやUSBデバイス(スレーブ機器)の信頼性に悪影響を及ぼすおそれがある。なお同様の問題は、USB−TypeC規格においても生じうる。
【0012】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、一時的な過電流状態をマスクしつつ、真の過電流状態を短時間で検出可能な過電流検出回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様は、USB(Universal Serial Bus)規格に準拠し、USB受電装置に電力を供給するUSB給電装置に搭載される過電流検出回路に関する。過電流検出回路は、USB受電装置に供給されるサプライ電流に応じた検出信号を、可変のしきい値と比較し、検出信号がしきい値を超えると、比較信号をアサートする電流センサと、(i)しきい値が過電流保護の基準値に応じた第1値である第1状態と、(ii)しきい値が第1値より大きな第2値である第2状態と、が切りかえ可能であり、第1状態において、比較信号がアサートされると、第2状態に遷移し、第2状態において比較信号がアサートされると、過電流検出信号をアサートする判定部と、を備える。
【0014】
この態様によると、サプライ電流の一時的な過電流状態をマスクしつつ、サプライ電流が、回路異常により増大したことを短時間で検出することができる。
【0015】
判定部は、第2状態に遷移してからの時間を測定し、第2状態において比較信号がネゲートされた状態が所定の判定時間持続すると、第1状態に遷移するように構成されてもよい。
【0016】
過電流検出回路は、バスライン上に設けられた出力スイッチをさらに備えてもよい。判定部は、過電流検出信号がアサートされると、出力スイッチをオフしてもよい。
【0017】
過電流検出回路は、サプライ電流の経路上に設けられた検出抵抗をさらに備えてもよい。電流センサは、検出抵抗の電圧降下を検出信号として監視してもよい。
【0018】
USB給電装置は、USB−PD(Universal Serial Bus−Power Delivery)規格、またはUSB−TypeC規格に準拠してもよい。
【0019】
過電流検出回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0020】
本発明の別の態様は、USB(Universal Serial Bus)規格に準拠し、USB受電装置に電力を供給するUSB給電装置に関する。USB給電装置は、電源回路と、電源回路の出力とUSB受電装置とを接続するバスラインと、USB受電装置に供給されるサプライ電流の過電流状態を検出する上述の過電流検出回路と、を備える。
【0021】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のある態様によれば、一時的な過電流状態をマスクしつつ、真の過電流状態を短時間で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明者が検討した過電流検出回路の回路図である。
図2図2(a)〜(c)は、図1の過電流検出回路の動作波形図である。
図3】実施の形態に係るUSB給電装置のブロック図である。
図4】過電流検出回路の回路図である。
図5】過電流検出回路(判定部)の状態遷移図である。
図6図6(a)、(b)は、過電流検出回路の動作波形図である。
図7】第1変形例に係るUSB給電装置のブロック図である。
図8】USB給電装置を備える電子機器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
図3は、実施の形態に係るUSB給電装置100のブロック図である。USB給電装置100は、USB−PD規格に準拠しており、USBホストであってもよいし、ホスト機能付きあるいはホスト機能無しのUSBチャージャであってもよいし、あるいはホスト・デバイスのデュアルロール端末に搭載されるUSBチャージャであってもよい。レセプタクル(USBポート、USBプラグともいう)108には、USBケーブル202を介して、電力供給先のUSB受電装置200が接続される。USB受電装置200は、通常はUSBデバイスであるが、ホスト・デバイスのデュアルロール端末であってもよいし、ホスト機能を有する端末であってもよい。ここでは、VBUSラインとGNDラインのみが示される。
【0027】
電源回路102は、USB受電装置200に供給すべきDC電圧VOUTを生成する。電源回路102は、その出力電圧VOUTが基準電圧VREFに近づくようにフィードバック制御される。キャパシタC1は、USB給電装置100の出力電圧VOUTを平滑化する。たとえば電源回路102はリニアレギュレータであってもよいし、非絶縁型の降圧、昇圧もしくは昇降圧DC/DCコンバータであってもよいし、フライバック型、フォワード型の絶縁型DC/DCコンバータであってもよいし、AC/DCコンバータであってもよい。
【0028】
バスライン106は、電源回路102の出力からレセプタクル108の間を接続する。出力スイッチSW1およびインダクタL1は、バスライン106の経路上に直列に設けられる。たとえば出力スイッチSW1は、対向配置された2つのNチャンネルMOSFETを含む。キャパシタC2は、レセプタクル108の近傍においてバスライン106と接続され、バス電圧VBUSを平滑化する。
【0029】
コントローラ110は、USB給電装置100全体を統合的に制御する。コントローラ110は、(i)USB受電装置200と通信して設定電圧VSETを決定する機能、(ii)電源回路102を制御する機能、(iii)出力スイッチSW1のオン、オフ状態を制御する機能を有する。コントローラ110は、ひとつの半導体基板に一体集積化された機能ICであってもよい。
【0030】
コントローラ110のCOM端子は、キャパシタC3を介してバスライン106とカップリングされる。通信部113は、バス電圧VBUSに重畳される変調電圧VMODを受け、これを復調してロジック部114に出力する。ロジック部114は、USB受電装置200とのネゴシエーションに応じて、USB給電装置100がUSB受電装置200に供給すべきバス電圧VBUSの電圧レベル(設定電圧VSET)を決定する。
【0031】
コントローラ110のロジック部114は、決定した設定電圧VSETを、フィードバック回路104に通知する。
【0032】
ロジック部114は、USB給電装置100の電気的状態や、所定のシーケンスにしたがって、出力スイッチSW1のオン、オフ状態を制御する。ドライバ116は、ロジック部114が生成する制御信号S3にもとづいて出力スイッチSW1を制御する。たとえばドライバ116は、チャージポンプ回路を含み、出力スイッチSW1のオンが指示されるとき、VOUTより高いハイレベル電圧を生成して出力スイッチSW1のゲートに供給する。
【0033】
電流センサ120は、サプライ電流ISUPPLYを監視する。後述するように、電流センサ120の検出結果は、過電圧保護に利用される。ロジック部114は、過電圧状態を検出すると、出力スイッチSW1をオフし、サプライ電流ISUPPLYを遮断する。そのほか、コントローラ110は、OVP(過電圧保護)回路などを含んでもよく、ロジック部114は過電圧状態が検出されると、出力スイッチSW1をオフに切りかえてもよい。
【0034】
またコントローラ110は、出力キャパシタC1、C2の電荷を放電するための放電回路を含んでもよく、ロジック部114は放電回路を制御してもよい。ただしこれらの機能は、本発明とは関連がないため省略する。
【0035】
以上がUSB給電装置100の全体の構成である。続いて、過電流検出回路130について説明する。
図4は、過電流検出回路130の回路図である。過電流検出回路130は、電流センサ120および判定部132を備える。電流センサ120は、USB受電装置200に供給されるサプライ電流ISUPPLYに応じた検出信号Iを、可変のしきい値ITHと比較し、検出信号Iがしきい値ITHを超えると、比較信号S10をアサート(たとえばハイレベル)する。
【0036】
たとえば電流センサ120は、アンプ124およびコンパレータ126を含む。抵抗Rは、サプライ電流ISUPLLYの経路上に設けられる。抵抗Rは、バスライン106上に出力スイッチSW1と直列に設けられてもよいし、GNDライン上に設けられてもよい。抵抗Rには、サプライ電流ISUPPLYに比例する電圧降下が発生する。アンプ124は、抵抗Rの電圧降下を増幅し、サプライ電流ISUPPLYに比例する検出信号Iを生成する。
【0037】
コンパレータ126は、検出信号Iをしきい値ITHと比較し、I>ITHのときに比較信号S10をアサートする。なおコンパレータ126は、アナログ電圧の検出信号Iを、アナログ電圧のしきい値ITHと比較するアナログ電圧コンパレータでありえる。あるいはコンパレータ126は、アナログ電圧の検出信号Iをデジタルの検出値に変換した後に、デジタルのしきい値と比較するデジタルコンパレータであってもよい。後者の場合、コンパレータ126はロジック部114に内蔵されることになる。
【0038】
判定部132は、電流センサ120からの比較信号S10にもとづいて過電流状態を判定する。判定部132は、ロジック部114に内蔵されてもよい。
【0039】
判定部132は、(i)しきい値ITHが過電流保護の基準値(初期値)に応じた第1値ITH1である第1状態φ1と、(ii)しきい値ITHが第1値ITHより大きな第2値ITH2である第2状態φ2と、が切りかえ可能となっている。そして第1状態φ1において、比較信号S10がアサートされると、第2状態φ2に遷移する。第2状態φ2において比較信号S10がアサートされると、ただちに過電流検出信号S11をアサートする。過電流検出信号S11がアサートされた状態を、過電流状態φ3と称する。
【0040】
ロジック部114は、過電流検出信号S11がアサートされると、制御信号S3をローレベルとして、出力スイッチSW1をオフさせる。
【0041】
判定部132は、第2状態φ2に遷移してからの時間を測定し、第2状態φ2において比較信号S10がネゲート(ローレベル)された状態が所定の判定時間TIMAX持続すると、第1状態φ1に遷移する。
【0042】
たとえば判定部132は、ステートマシン134およびタイマ136で構成される。図5は、判定部132の状態遷移図である。ステートマシン134には、上述の第1状態φ1、第2状態φ2、過電流状態φ3が規定される。タイマ136は、第2状態φ2に遷移してからの経過時間を測定する。
【0043】
初期状態は第1状態φ1であり、しきい値ITHは第1値ITH1となる。検出信号Iがしきい値ITH1を超えると、比較信号S10がアサートされて、第2状態φ2に遷移する(S100)。第2状態φ2において、検出信号Iがしきい値ITH2を超えると、比較信号S10がアサートされ、過電流状態φ3に遷移する(S102)。
【0044】
第2状態φ2において、しきい値ITHを第2値ITH2に高めた後に、検出信号Iがしきい値ITH2より低いレベルを維持し、そのまま判定時間TIMAXが経過したとき、言い換えれば、比較信号S10がネゲートされた状態が判定時間TIMAX持続したとき(S104)、第1状態φ1に戻り、しきい値ITHが第1値ITH1に戻される。
【0045】
過電流状態φ3から第1状態φ1への復帰条件(S106)は特に限定されない。
【0046】
以上が過電流検出回路130およびそれを備えるUSB給電装置100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0047】
図6(a)、(b)は、過電流検出回路130の動作波形図である。
図6(a)を参照する。初期状態は第1状態φ1であり、サプライ電流ISUPPLYは、しきい値ITH1より低くなっている。時刻t1に、サプライ電流ISUPPLYが増大してしきい値ITH1を超えると、比較信号S10がアサートされて第2状態φ2に遷移し、しきい値ITHが第2値ITH2となる。ISUPPLY<ITH2であるため、比較信号S10は直ちにネゲートされる。その後、判定時間TIMAXの間、第2状態φ2が維持される。過電流検出信号S11はアサートされることなく、時刻t2に第1状態φ1に戻る。
【0048】
図6(b)を参照する。時刻t1に、サプライ電流ISUPPLYが増大してしきい値ITH1を超えると、比較信号S10がアサートされて第2状態φ2に遷移し、しきい値ITHが第2値ITH2となる。
【0049】
第2状態φ2に遷移した直後は、ISUPPLY<ITH2であるため、比較信号S10はネゲートされるが、時刻t3に地絡等の異常が発生すると、サプライ電流ISUPPLYがしきい値ITH2よりも大きい異常レベルIEMまで増大する。これにより、第2状態φ2において比較信号S10がアサートされることとなり、過電流検出信号S11がアサートされ、過電流状態φ3に遷移する。過電流状態φ3に遷移すると、出力スイッチSW1がオフされるため、サプライ電流ISUPPLYは異常レベルIEMを維持することなく、直ちにゼロ付近まで低下する。
【0050】
以上がUSB給電装置100の動作である。
このUSB給電装置100によれば、図6(a)に示すように、サプライ電流ISUPPLYの一時的な過電流状態をマスクすることができる。また図6(b)に示すように、サプライ電流ISUPPLYが、回路異常により増大したこと(真の過電流状態)を短時間で検出することができ、回路保護をかけることができる。
【0051】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0052】
(第1の変形例)
実施の形態では、USB−PD規格に準拠するUSB給電装置100を説明したが、USB−TypeC規格にも適用可能である。図7は、第1変形例に係るUSB給電装置100bのブロック図である。USB−TypeC規格では、コントローラ110bとUSB受電装置200b間の通信は、専用線204を介して行われる。つまりバス電圧VBUSに変調電圧VMODは重畳されないため、図3のキャパシタC3は不要であり、またインダクタL1を省略することもできる。その他については図3と同様である。
【0053】
(用途)
最後にUSB給電装置100の用途を説明する。図8は、USB給電装置100を備える電子機器300の斜視図である。電子機器300は、たとえばテレビや液晶ディスプレイ、ノート型コンピュータなどである。
【0054】
電子機器300は、筐体302、ディスプレイパネル304、上述のUSB給電装置100を備える。USB給電装置100の電源回路102は、AC/DCコンバータであり、AC電圧VACをDC電圧VOUTに変換する。DC電圧VOUTの設定電圧VSETは、コントローラ110により選択される。レセプタクル108は、筐体302の前面あるいは背面に設置され、USBケーブル202が挿入可能となっている。
【0055】
なお電子機器300は、携帯電話端末、タブレット端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどであってもよい。
【0056】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0057】
100…USB給電装置、102…電源回路、104…フィードバック回路、106…バスライン、108…レセプタクル、110…コントローラ、113…通信部、114…ロジック部、116…ドライバ、120…電流センサ、124…アンプ、126…コンパレータ、130…過電流検出回路、132…判定部、134…ステートマシン、136…タイマ、200…USB受電装置、202…USBケーブル、SW1…出力スイッチ、L1…インダクタ、C1,C2…出力キャパシタ、300…電子機器、302…筐体、304…ディスプレイパネル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8