特許第6553350号(P6553350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553350
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20190722BHJP
   G05D 1/02 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B60L15/20 S
   G05D1/02 S
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-238626(P2014-238626)
(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-101055(P2016-101055A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】落合 博敏
(72)【発明者】
【氏名】安藤 充宏
(72)【発明者】
【氏名】梁 盛濬
(72)【発明者】
【氏名】長嶺 昇
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 渉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】古田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】清水 正晴
(72)【発明者】
【氏名】大和 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】戸田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】小太刀 崇
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−321722(JP,A)
【文献】 特開2014−121190(JP,A)
【文献】 特開2014−191485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員による操作装置への入力に従って駆動される駆動装置によって走行する移動体であって、
前記移動体は、
被検知物を検知する検知装置と、
前記操作装置に入力された情報である入力情報に基づいて、前記駆動装置の駆動量を制御して前記移動体を走行させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記入力情報に基づいて予測される前記移動体の予測進路の進行方向に沿って延びる第一領域を生成する第一領域生成部と、
前記移動体から所定距離以内の周辺領域として、前記第一領域の大きさと比べて周方向の角度範囲が大きくなるように設定される第二領域を生成する第二領域生成部と、
前記第一領域内および前記第二領域内において、前記被検知物である障害物の有無を検出する障害物有無検出部と、
前記障害物有無検出部によって、前記第一領域内に前記障害物が有ると検出されている間、前記駆動装置の前記駆動量を制限駆動量に制限して前記移動体の直進速度の最高速度を前記障害物までの最短距離が小さいほど小さくなるように設定された第一最高直進速度に制限し、前記第二領域内に前記障害物が有ると検出されている間、前記駆動装置の前記駆動量を制限駆動量に制限して前記移動体の直進速度の最高速度を前記障害物までの最短距離の大きさにかかわらず一定の速度となるように設定された第二最高直進速度に制限する駆動量制限部と、を備えている移動体。
【請求項2】
前記制御装置は、前記障害物有無検出部による検出結果が障害物有りの状態から障害物無しの状態に変化した時点以降、前記移動体が移動する所定移動時間または前記移動体が所定移動距離を移動する間、前記駆動装置の前記駆動量を前記制限駆動量に維持する駆動量制限維持部をさらに備えている請求項1記載の移動体。
【請求項3】
前記第二領域の幅は、前記移動体の幅より大きくなるように設定されている請求項1または請求項2記載の移動体。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記検知装置が前記被検知物を検知可能な角度範囲のうち、前記検知装置の検知部から所定検知距離内にあって前記検知装置によって検知される前記被検知物である遮蔽物が占める角度の割合を、前記遮蔽物が前記検知装置の検知部を遮蔽する割合である遮蔽率として算出する遮蔽率算出部と、
前記遮蔽率算出部によって算出された前記遮蔽率が遮蔽率判定値以上である場合、前記検知装置が前記障害物を検知できない遮蔽状態であると判定する第一遮蔽状態判定部と、
をさらに備えている請求項1乃至請求項3の何れか一項記載の移動体。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記検知装置が前記被検知物を検知可能な角度範囲のうち、前記検知装置の検知部から所定検知距離内にあって前記検知装置によって検知される前記被検知物である遮蔽物が占める角度の割合を、前記遮蔽物が前記検知装置の検知部を遮蔽する割合である遮蔽率として算出する遮蔽率算出部と、
前記遮蔽率の変化率である遮蔽変化率を算出する遮蔽変化率算出部と、
前記遮蔽変化率算出部によって算出された前記遮蔽変化率が遮蔽変化率判定値以下である場合、前記検知装置が前記障害物を検知できない遮蔽状態であると判定する第二遮蔽状態判定部と、をさらに備えている請求項1乃至請求項3の何れか一項記載の移動体。
【請求項6】
前記制御装置は、前記入力情報に基づいて変換された前記直進速度から、前記直進速度の大きさと前記所定検知距離との関係を示したマップに基づいて前記所定検知距離を算出する所定検知距離算出部をさらに備えている請求項4または請求項5記載の移動体。
【請求項7】
前記制御装置は、前記入力情報に基づいて変換された前記直進速度から、前記直進速度の大きさと前記遮蔽率判定値との関係を示したマップに基づいて前記遮蔽率判定値を算出する遮蔽率判定値算出部をさらに備えている請求項4記載の移動体。
【請求項8】
乗員による操作装置への入力に従って駆動される駆動装置によって走行する移動体であって、
前記移動体は、
被検知物を検知する検知装置と、
前記操作装置に入力された情報である入力情報に基づいて、前記駆動装置の駆動量を制御して前記移動体を走行させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記入力情報に基づいて予測される前記移動体の予測進路の進行方向に沿って延びる第一領域を生成する第一領域生成部と、
前記移動体から所定距離以内の周辺領域として、前記第一領域の大きさと比べて周方向の角度範囲が大きくなるように設定される第二領域を生成する第二領域生成部と、
前記第一領域内および前記第二領域内において、前記被検知物である障害物の有無を検出する障害物有無検出部と、
前記障害物有無検出部によって、前記第一領域内および前記第二領域内の少なくともいずれか一方に前記障害物が有ると検出されている間、前記駆動装置の前記駆動量を制限駆動量に制限して前記移動体の直進速度の最高速度を制限最高速度に制限する駆動量制限部と、
前記検知装置が前記被検知物を検知可能な角度範囲のうち、前記検知装置の検知部から所定検知距離内にあって前記検知装置によって検知される前記被検知物である遮蔽物が占める角度の割合を、前記遮蔽物が前記検知装置の検知部を遮蔽する割合である遮蔽率として算出する遮蔽率算出部と、
前記遮蔽率算出部によって算出された前記遮蔽率が遮蔽率判定値以上である場合、前記検知装置が前記障害物を検知できない遮蔽状態であると判定する第一遮蔽状態判定部と、
前記入力情報に基づいて変換された前記直進速度から、前記直進速度の大きさと前記所定検知距離との関係を示したマップに基づいて前記所定検知距離を算出する所定検知距離算出部と、をさらに備えている移動体。
【請求項9】
乗員による操作装置への入力に従って駆動される駆動装置によって走行する移動体であって、
前記移動体は、
被検知物を検知する検知装置と、
前記操作装置に入力された情報である入力情報に基づいて、前記駆動装置の駆動量を制御して前記移動体を走行させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記入力情報に基づいて予測される前記移動体の予測進路の進行方向に沿って延びる第一領域を生成する第一領域生成部と、
前記移動体から所定距離以内の周辺領域として、前記第一領域の大きさと比べて周方向の角度範囲が大きくなるように設定される第二領域を生成する第二領域生成部と、
前記第一領域内および前記第二領域内において、前記被検知物である障害物の有無を検出する障害物有無検出部と、
前記障害物有無検出部によって、前記第一領域内および前記第二領域内の少なくともいずれか一方に前記障害物が有ると検出されている間、前記駆動装置の前記駆動量を制限駆動量に制限して前記移動体の直進速度の最高速度を制限最高速度に制限する駆動量制限部と、
前記制御装置は、
前記検知装置が前記被検知物を検知可能な角度範囲のうち、前記検知装置の検知部から所定検知距離内にあって前記検知装置によって検知される前記被検知物である遮蔽物が占める角度の割合を、前記遮蔽物が前記検知装置の検知部を遮蔽する割合である遮蔽率として算出する遮蔽率算出部と、
前記遮蔽率の変化率である遮蔽変化率を算出する遮蔽変化率算出部と、
前記遮蔽変化率算出部によって算出された前記遮蔽変化率が遮蔽変化率判定値以下である場合、前記検知装置が前記障害物を検知できない遮蔽状態であると判定する第二遮蔽状態判定部と、
前記入力情報に基づいて変換された前記直進速度から、前記直進速度の大きさと前記所定検知距離との関係を示したマップに基づいて前記所定検知距離を算出する所定検知距離算出部と、をさらに備えている移動体。
【請求項10】
乗員による操作装置への入力に従って駆動される駆動装置によって走行する移動体であって、
前記移動体は、
被検知物を検知する検知装置と、
前記操作装置に入力された情報である入力情報に基づいて、前記駆動装置の駆動量を制御して前記移動体を走行させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記入力情報に基づいて予測される前記移動体の予測進路の進行方向に沿って延びる第一領域を生成する第一領域生成部と、
前記移動体から所定距離以内の周辺領域として、前記第一領域の大きさと比べて周方向の角度範囲が大きくなるように設定される第二領域を生成する第二領域生成部と、
前記第一領域内および前記第二領域内において、前記被検知物である障害物の有無を検出する障害物有無検出部と、
前記障害物有無検出部によって、前記第一領域内および前記第二領域内の少なくともいずれか一方に前記障害物が有ると検出されている間、前記駆動装置の前記駆動量を制限駆動量に制限して前記移動体の直進速度の最高速度を制限最高速度に制限する駆動量制限部と、
前記検知装置が前記被検知物を検知可能な角度範囲のうち、前記検知装置の検知部から所定検知距離内にあって前記検知装置によって検知される前記被検知物である遮蔽物が占める角度の割合を、前記遮蔽物が前記検知装置の検知部を遮蔽する割合である遮蔽率として算出する遮蔽率算出部と、
前記遮蔽率算出部によって算出された前記遮蔽率が遮蔽率判定値以上である場合、前記検知装置が前記障害物を検知できない遮蔽状態であると判定する第一遮蔽状態判定部と、
前記入力情報に基づいて変換された前記直進速度から、前記直進速度の大きさと前記遮蔽率判定値との関係を示したマップに基づいて前記遮蔽率判定値を算出する遮蔽率判定値算出部と、をさらに備えている移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体、特に、乗員の操作によって走行する移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
操作されることにより移動する移動体の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1および図2に示すように、移動体は、例えば電動車いすであり、電動車いすは、検知エリア内の物体を検知する物体検知センサ19、車輪を駆動するモータ5、モータ5の駆動量を制御して電動車いすの走行制御を行う制御回路25を備えている。制御回路25は、物体検知センサ19からの検知信号が入力された場合、電動車いすの最大速度を制限する駆動制御手段を備えている。これにより、電動車いすと歩行者等の障害物との衝突の可能性を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−86005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、障害物が歩行者等の移動するものである場合、障害物が物体検知センサ19によって検知された後、障害物が検知エリア外へ移動する場合がある。さらに、障害物が移動して、検知エリアの死角から電動車いすに近づくような場合には、障害物が検知エリアから外れていることにより、電動車いすの最大速度の制限が解除されているため、電動車いすと障害物との衝突の可能性を低減することができない。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を解消するためになされたもので、障害物を検知する検知装置を備えた移動体において、検知装置によって検知される領域にあることにより検知された障害物が相対的に移動して、その領域から外れて移動体に近づくような場合においても、安全かつ安心して走行することができる移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る移動体は、乗員による操作装置への入力に従って駆動される駆動装置によって走行する移動体であって、前記移動体は、被検知物を検知する検知装置と、前記操作装置に入力された情報である入力情報に基づいて、前記駆動装置の駆動量を制御して前記移動体を走行させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記入力情報に基づいて予測される前記移動体の予測進路の進行方向に沿って延びる第一領域を生成する第一領域生成部と、前記移動体から所定距離以内の周辺領域として、前記第一領域の大きさと比べて周方向の角度範囲が大きくなるように設定される第二領域を生成する第二領域生成部と、前記第一領域内および前記第二領域内において、前記被検知物である障害物の有無を検出する障害物有無検出部と、前記障害物有無検出部によって、前記第一領域内に前記障害物が有ると検出されている間、前記駆動装置の前記駆動量を制限駆動量に制限して前記移動体の直進速度の最高速度を前記障害物までの最短距離が小さいほど小さくなるように設定された第一最高直進速度に制限し、前記第二領域内に前記障害物が有ると検出されている間、前記駆動装置の前記駆動量を制限駆動量に制限して前記移動体の直進速度の最高速度を前記障害物までの最短距離の大きさにかかわらず一定の速度となるように設定された第二最高直進速度に制限する駆動量制限部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
これによれば、障害物と移動体とが接近するような場合において、検知装置によって第一領域内で一旦検知された障害物が第一領域外へ外れたときにおいても、この障害物を移動体の周辺領域である第二領域により捕捉することができる。したがって、障害物と移動体との衝突の可能性を低減することができるとともに、安全かつ安心して走行することができる移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明による移動体の一実施形態の構成を示す概要図である。
図2図1の操作装置に入力された入力情報を示す模式図であり、縦軸は、移動体の前後方向を、横軸は移動体の左右方向を表している。
図3図1に示す移動体のブロック図である。
図4A図3に示す制御装置に記憶されている第一マップであり、所望直進速度と移動体の直進速度との関係を示したマップである。
図4B図3に示す制御装置に記憶されている第二マップであり、所望旋回速度と移動体の旋回速度との関係を示したマップである。
図5図3に示す制御装置によって第一領域内に障害物が有ると検出されている状態を表す模式図であり、縦軸は、移動体の前後方向を、横軸は移動体の左右方向を表している。
図6A図3に示す制御装置に記憶されている第三マップであり、障害物が第一領域内に有る場合における移動体と障害物との最短距離と、駆動装置の駆動量の制限駆動量との関係を示したマップである。
図6B図3に示す制御装置に記憶されている第四マップであり、障害物が第二領域内に有る場合における移動体と障害物との最短距離と、駆動装置の駆動量の制限駆動量との関係を示したマップである。
図7図3に示す制御装置に記憶されている第五マップであり、移動体と障害物との最短距離と、所定移動時間との関係を示したマップである。
図8図3に示す制御装置に記憶されている第六マップであり、移動体の速度と所定検知距離との関係を示したマップである。
図9図3に示す制御装置によって、制御装置によって操作装置の検知部の一部が遮蔽されていることが検出されている状態を示す模式図であり、縦軸は、移動体の前後方向を、横軸は移動体の左右方向を表している。
図10図3に示す制御装置に記憶されている第七マップであり、移動体の速度と遮蔽率判定値との関係を示したマップである。
図11図3に示す制御装置で実行されるプログラムのフローチャートである。
図12図3に示す制御装置で実行されるプログラムのフローチャートである。
図13】本発明による移動体の一実施形態の第一変形例のブロック図である。
図14図13に示す制御装置に記憶されている第八マップであり、移動体と障害物との最短距離と、所定移動距離との関係を示したマップである。
図15】本発明による移動体の一実施形態の第二変形例のブロック図である。
図16図15に示す制御装置に記憶されている第九マップであり、移動体の速度と所定遮蔽時間との関係を示したマップである。
図17図15に示す制御装置に記憶されている第十マップであり、移動体の速度と遮蔽変化率判定値との関係を示したマップである。
図18図15に示す制御装置で実行されるプログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による移動体の一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態における移動体として、図1に示す電動車椅子1を例に挙げて説明する。なお、本明細書においては説明の便宜上、図1における上側および下側をそれぞれ電動車椅子1の上方および下方とし、同じく左下側および右上側をそれぞれ電動車椅子1の前方および後方とし、同じく左上側および右下側を、それぞれ電動車椅子1の右方および左方として説明する。また、図1には、各方向を示す矢印を示している。
【0010】
電動車椅子1は、車椅子本体10、駆動装置20、操作装置30、検知装置40および制御装置50を備えている。電動車椅子1は、乗員による操作装置30への入力に従って駆動される駆動装置20によって走行する移動体である。駆動装置20、操作装置30、検知装置40および制御装置50は、車椅子本体10に取り付けられている。
【0011】
車椅子本体10は、フレーム11、乗員が着座する座席12および車輪13を備えている。座席12および車輪13は、フレーム11に取り付けられている。車輪13は、回転軸回りに回転可能に構成されている。車輪13は、車椅子本体10の左右両側に配設され、駆動装置20によって駆動される左駆動輪13aおよび右駆動輪13b、並びに、電動車椅子1の走行を補助する左補助輪13cおよび右補助輪13dを備えている。
【0012】
駆動装置20は、各駆動輪13a,13bをそれぞれ回転駆動させて、電動車椅子1を走行させるものである。駆動装置20は、例えば、電動モータ(図示なし)と減速機(図示なし)とを組み合わせることにより構成されている。駆動装置20は、各駆動輪13a,13bにそれぞれ1つずつ(合計2つ)設けられている。
【0013】
操作装置30は、電動車椅子1の直進速度vおよび旋回速度wを指示するために乗員によって操作されるものである。直進速度vは、電動車椅子1の前方向(正面方向)における電動車椅子1の速度である。旋回速度wは、電動車椅子1の位置する場所において、電動車椅子1が電動車椅子1の重心を中心に旋回する角速度である。本実施形態において、操作装置30は、ジョイスティックである。操作装置30は、操作されていない位置(以下、ニュートラル位置とする)において、鉛直方向に起立した状態で位置決めされている。操作装置30は、ニュートラル位置から乗員に傾けられることにより操作される。操作装置30が操作された状態は、図2に示すように、操作装置30を水平面と平行なXY平面に投影したときにおける操作装置30の先端の座標によって表すことができる。X軸は、電動車椅子1の前後方向と同じであり、X軸の正の方向は、電動車椅子1の前方向と同じ方向である。Y軸は、電動車椅子1の左右方向と同じであり、Y軸の正の方向は、電動車椅子1の右方向と同じ方向である。X座標の値は、乗員が所望する電動車椅子1の直進速度である所望直進速度xjsである。Y座標の値は、乗員が所望する電動車椅子1の旋回速度である所望旋回速度yjsである。所望直進速度xjsおよび所望旋回速度yjsは、操作装置30に入力された情報である入力情報として、制御装置50に第一所定時間毎に出力される。第一所定時間は、例えば、1/25秒である。
【0014】
検知装置40は、被検知物を検知するものである。被検知物には、障害物と遮蔽物とがある。障害物は、検知装置40の検知部41から所定検知距離Dsより離れた被検知物である。遮蔽物は、検知装置40の検知部41から所定検知距離Ds内にある被検知物である。所定検知距離Dsは、比較的短い距離(例えば、10cm)である。所定検知距離Dsは、操作装置30からの入力情報に基づいて算出される(後述する)。なお、上記において、障害物を検知する場合と遮蔽物を検知する場合のそれぞれの所定検知距離Dsは等しく設定されているが、所定検知距離Dsは、それぞれの場合に応じて異なる検知距離を設定しても良い。
【0015】
検知装置40は、3次元測域センサ(レーザーレンジスキャナー(3Dスキャナー))である。検知装置40は、検知部41からレーザーを水平方向および上下方向に(三次元的に)発射して、被検知物からの反射波を検知部41にて受信することにより、被検知物の有無および検知部41から被検知物までの距離を被検知物情報として取得する。検知装置40は、レーザーを電動車椅子1の前方に放射状に発射する。レーザーの発射可能な角度範囲は、検知装置40が被検知物を検知可能な角度範囲に相当する。検知装置40は、例えば、第一所定時間毎に被検知物情報を取得する。検知装置40が取得した被検知物情報は、制御装置50に出力される。
【0016】
制御装置50は、入力情報に基づいて、駆動装置20の駆動量を制御して電動車椅子1を走行させるものである。制御装置50は、図3に示すように、駆動装置20、操作装置30および検知装置40が接続されている。制御装置50が電動車椅子1を走行させる走行制御について説明する。操作装置30が操作され、操作装置30からの入力情報を制御装置50が取得した時点から、制御装置50は、走行制御を開始する。制御装置50は、操作装置30からの入力情報(所望直進速度xjsおよび所望旋回速度yjs)を、直進速度vおよび旋回速度wに変換する。制御装置50は、取得した所望直進速度xjsから、図4Aに示す第一マップM1に基づいて、直進速度vを算出する。第一マップM1は、所望直進速度xjsと直進速度vとの関係を示したものである。また、制御装置50は、取得した所望旋回速度yjsから、図4Bに示す第二マップM2に基づいて、旋回速度wを算出する。第二マップM2は、所望旋回速度yjsと旋回速度wとの関係を示したものである。
【0017】
第一マップM1は、図4Aに示すように、所望直進速度xjsと直進速度vとが、比例する比例部mv1と、所望直進速度xjsの大きさにかかわらず直進速度vが一定の値である不感部mv2備えている。直進速度vが正である場合、電動車椅子1が前進する。一方、直進速度vが負である場合、電動車椅子1が後退する。また、第二マップM2は、図4Bに示すように、所望旋回速度yjsと旋回速度wとが比例する比例部mw1と、所望旋回速度yjsの大きさにかかわらず旋回速度wが一定の値である不感部mw2を備えている。旋回速度wが正である場合、電動車椅子1が右旋回する。一方、旋回速度wが負である場合、電動車椅子1が左旋回する。
【0018】
制御装置50は、変換された直進速度vおよび旋回速度wに基づいて、駆動装置20の駆動量(回転数)を制御する。具体的には、変換された直進速度vおよび旋回速度wが、左駆動輪13aの回転速度および右駆動輪13bの回転速度にさらに変換される。直進速度vの大きさは、各駆動輪13a,13bの回転速度の大きさに比例する。また、旋回速度wの大きさは、左駆動輪13aと右駆動輪13bとの回転速度の差の大きさに比例する。直進速度vおよび旋回速度wと各駆動輪13a,13bの回転速度との関係は、予め実験等により実測されて導出されている。なお、駆動装置20がPWM制御されているため、駆動装置20の制御指令値は、デューティ比にて算出される。
【0019】
制御装置50が走行制御を行っている際に、乗員が操作装置30の位置をニュートラル位置にした場合、直進速度vおよび旋回速度wがゼロとなることで、電動車椅子1が停止する。この場合、制御装置50の走行制御が終了する。
【0020】
また、制御装置50は、図3に示すように、衝突リスク低減制御部51および検知部遮蔽状態検出部52を備えている。衝突リスク低減制御部51は、電動車椅子1と障害物との衝突するリスクを低減する衝突リスク低減制御(後述する)を行うものである。衝突リスク低減制御部51は、記憶部51a、進路予測部51b、第一領域生成部51c、第二領域生成部51d、障害物有無検出部51e、駆動量制限部51f、領域外移動検出部51g、駆動量制限維持部51hおよび所定移動時間算出部51iを備えている。
記憶部51aは、制御プログラムを実行する際に用いられる各マップM1,M2および極座標C(後述する)等のデータ等を記憶するものである。
【0021】
進路予測部51bは、入力情報に基づいて、電動車椅子1の進路を予測するものである。進路予測部51bは、図5に示すように、極座標C上にて、電動車椅子1の進路を予測する。極座標Cは、水平面と平行に配設され、検知装置40の検知部41の位置を原点C0とするとともに、図5の上側を電動車椅子1の前方とした極座標である。極座標Cは、径方向および周方向に所定間隔(例えば、径方向に50cm間隔および径方向に5°間隔)に区画された複数のグリッドGを有している。進路予測部51bが予測する電動車椅子1の進路である予測進路Wyは、具体的には、制御装置50が入力情報を取得した時点から第二所定時間(例えば5秒)経過した時点までの検知部41を通る線状の移動軌跡にて示される。予測進路Wyは、直進速度vおよび旋回速度wから、予め実験等により実測されて導出された所定の関数に基づいて生成される。予測進路Wyは、制御装置50が操作装置30からの入力情報を取得する第一所定時間毎に生成(更新)される。
【0022】
第一領域生成部51cは、進路予測部51bによって予測された電動車椅子1の進路である予測進路Wyの進行方向に沿って延びる第一領域A1を生成するものである。第一領域A1は、極座標C上において、予測進路Wyが位置するグリッドGを含むように生成される。本実施形態においては、第一領域A1は、例えば、予測進路Wyが位置するグリッドGと、そのグリッドGの周方向に隣り合う複数(例えば、両側2個づつ)のグリッドGとから、予測進路Wyの進行方向に沿って延びる略扇形に生成されている。第一領域A1の形状は、入力情報の変化による予測進路Wyの変化に応じて変化する。
【0023】
第二領域生成部51dは、所定の大きさの第二領域A2を予測進路Wyの進行方向に沿って生成するものである。第二領域A2は、他人に近付かれると不快に感じる空間であるパーソナルエリアの大きさを考慮された領域である。具体的には、第二領域A2は、電動車椅子1(電動車椅子1の重心)から所定距離以内の周辺領域である。所定距離は、比較的短い距離(例えば、2m)である。第二領域A2は、極座標C上において、所定の大きさに予め設定された原点C0を中心とする扇形に生成される。第二領域A2は、本実施形態において、第一領域A1の大きさと比べて、周方向の角度範囲が大きくなるように、かつ、第二領域A2の幅(左右方向長さの最大長さ)が、電動車椅子1の幅(左右方向長さの最大長さ)より大きくなるように設定されている。具体的には、第二領域A2の径方向長さは、原点C0から5つのグリッドG分の長さに設定されている。第二領域A2の周方向の角度範囲は、検知装置40が被検知物を検知可能な極座標C上の周方向の角度範囲である検知角度範囲Ahと同じ角度範囲に設定されている。
【0024】
障害物有無検出部51eは、第一領域生成部51cによって生成された第一領域A1内および第二領域生成部51dによって生成された第二領域A2内において、検知装置40によって検知された被検知物の情報である被検知物情報に基づいて、障害物の有無を検出するものである。障害物有無検出部51eが行う障害物の有無を検出する障害物有無検出制御について説明する。はじめに、検知装置40からの被検知物情報が、極座標Cに投影される。被検知物情報は、被検知物の三次元位置情報を表す複数の点Pから構成された点群PGの座標データである。極座標Cに投影された点群PGを構成する点Pの個数が所定個数以上であるグリッドGが、被検知物が存在するグリッドGである被検知物グリッドGkとされる。所定個数は、例えば5個である。被検知物グリッドGkが第一領域A1内にある場合、障害物有無検出部51eは、第一領域A1内に障害物有りと検出する。また、被検知物グリッドGkが第二領域A2内にある場合、障害物有無検出部51eは、第二領域A2内に障害物有りと検出する。一方、被検知物グリッドGkが第一領域A1内に無い場合、障害物有無検出部51eは、第一領域A1内に障害物無しと検出する。また、被検知物グリッドGkが第二領域A2内に無い場合、障害物有無検出部51eは、第二領域A2内に障害物無しと検出する。被検知物情報が第一所定時間毎に取得されるため、障害物有無検出部51eが行う障害物有無検出制御は、第一所定時間毎に実行される。すなわち、第一領域A1内および第二領域A2内に障害物の有無の検出結果は、第一所定時間毎に更新される。なお、図5には、第一領域A1内に障害物が有り、第二領域A2内に障害物が無い状態が示されている。
【0025】
駆動量制限部51fは、障害物有無検出部51eによって第一領域A1内および第二領域A2内の少なくともいずれか一方に障害物が有ると検出されている間、駆動装置20の駆動量を制限駆動量に制限するものである。本実施形態においては、制限駆動量は、駆動装置20の駆動量の最大駆動量を制限する駆動量である。すなわち、駆動装置20の最大駆動量が制限駆動量に制限されることにより、直進速度vの最高速度が制限される。具体的には、第一領域A1内に障害物が有ると検出されている間、駆動量制限部51fは、直進速度vの最高速度を第一最高直進速度vx1に制限する。第一最高直進速度vx1は、電動車椅子1(検知装置40の検知部41(原点C0))から障害物までの最短距離Dmin(図5参照)から、図6Aに示す第三マップM3に基づいて算出される。最短距離Dminは、被検知物情報から算出することができる。最短距離Dminは、障害物有無検出部51eにより障害物が有ると検出されている間、駆動量制限部51fによって算出される。第三マップM3は、最短距離Dminと第一最高直進速度vx1との関係を示したものである。最短距離Dminと第一最高直進速度vx1との関係は、最短距離Dminが小さい程、第一最高直進速度vx1が小さくなるように設定されている。
【0026】
また、第二領域A2内に障害物が有ると検出されている場合、駆動量制限部51fは、直進速度vの最高速度を第二最高直進速度vx2に制限する。第二最高直進速度vx2は、最短距離Dminから、図6Bに示す第四マップM4に基づいて算出される。第四マップM4は、最短距離Dminと第二最高直進速度vx2との関係を示したものである。第二最高直進速度vx2は、最短距離Dminの大きさにかかわらず、一定の速度となるように設定されている。なお、第一領域A1と第二領域A2との重複領域A3(図5参照)に障害物が有ると検出された場合、直進速度vの最高速度は、第一最高直進速度vx1と第二最高直進速度vx2とを比較して小さい方の速度に制限される。
【0027】
領域外移動検出部51gは、障害物有無検出部51eによって検出された障害物の検出結果に基づいて、第一領域A1内に有ると検出された障害物が相対的に移動して、第一領域A1外へ外れたことを検出するものである。領域外移動検出部51gは、障害物有無検出部51eによって検出された障害物の検出結果が入力される。この障害物の検出結果は、第一領域A1内の障害物の有無である。例えば、障害物が、第一領域A1内にて移動している場合、「第一領域A1内に障害物有り」の検出結果が領域外移動検出部51gに入力される。その後、その障害物が、第一領域A1外へ外れた場合、「第一領域A1内に障害物無し」旨の検出結果が領域外移動検出部51gに入力される。これにより、領域外移動検出部51gは、障害物有無検出部51eからの検出情報が、「第一領域A1内に障害物有り」から「第一領域A1内に障害物無し」に変化した時点に、障害物が相対的に移動して、第一領域A1内から第一領域A1外へ外れたことを検出する。
【0028】
駆動量制限維持部51hは、領域外移動検出部51gによって、障害物が第一領域A1外へ外れたことを検出された時点以降、所定移動時間Tmだけ、駆動装置20の駆動量を制限駆動量に維持するものである。すなわち、駆動量制限維持部51hは、第一領域A1内に有ると一旦検出された障害物が第一領域A1外へ外れた時点以降、所定移動時間Tmだけ、駆動量制限維持部51hによって、第一領域A1内に障害物があるときと同じ制限駆動量を維持される。所定移動時間Tmは、第一領域A1内に有ると一旦検出された障害物が相対的に移動して、第一領域A1外へ外れた時点から、電動車椅子1を通り過ぎると想定される時間である。所定移動時間Tmは、所定移動時間算出部51iによって算出される。
【0029】
所定移動時間算出部51iは、電動車椅子1と障害物との最短距離Dminから、所定移動時間Tmを算出するものである。所定移動時間Tmが算出されるときの最短距離Dminは、第一領域A1内に有ると一旦検出された障害物が相対的に移動して、第一領域A1外へ外れた時点の最短距離Dminである領域外移動時最短距離Daminである。所定移動時間算出部51iは、領域外移動時最短距離Daminから図7に示す第五マップM5に基づいて、所定移動時間Tmを算出する。第五マップM5は、領域外移動時最短距離Daminと所定移動時間Tmとの関係を示すものである。領域外移動時最短距離Daminと所定移動時間Tmとの関係は、領域外移動時最短距離Daminが小さい程、所定移動時間Tmが小さくなるように設定されている。
【0030】
検知部遮蔽状態検出部52は、検知装置40が遮蔽状態であるか否かを検出する検知部遮蔽状態検出制御(後述する)を行うものである。遮蔽状態は、検知装置40の検知部41が、電動車椅子1の前方に立ち止っている人や布等によって遮蔽されていることにより、検知装置40が障害物を検知できない状態である。検知部遮蔽状態検出部52は、所定検知距離算出部52a、遮蔽率算出部52b、遮蔽率判定値算出部52c、および第一遮蔽状態判定部52dを備えている(図3参照)。
【0031】
所定検知距離算出部52aは、操作装置30からの入力情報に基づいて、所定検知距離Dsを算出するものである。所定検知距離Dsは、入力情報に基づいて変換された直進速度vから、図8に示す第六マップM6に基づいて算出される。第六マップM6は、直進速度vの大きさ(直進速度vの絶対値|v|)と所定検知距離Dsとの関係を示すものである。直進速度vの大きさと所定検知距離Dsとの関係は、直進速度vの大きさが小さい程、所定検知距離Dsが小さくなるように設定されている。
【0032】
遮蔽率算出部52bは、検知装置40が被検知物を検知可能な角度範囲である検知角度範囲Ahのうち、検知装置40の検知部41から所定検知距離Ds内にあって検知装置40によって検知された被検知物である遮蔽物が占める角度の割合を、遮蔽物が検知装置40の検知部41を遮蔽する割合である遮蔽率Rsとして算出するものである。具体的には、図9に示す極座標Cにおいて、検知角度範囲Ah内における原点C0から径方向に所定検知距離Ds内にあるグリッドGを、遮蔽率Rsを算出するための遮蔽率算出グリッドGsとする。そして、遮蔽率Rsは、遮蔽率算出グリッドGsの周方向の個数と、遮蔽率算出グリッドGs内にある被検知物グリッドGkの周方向の個数とによって算出される。具体的には、遮蔽率Rsは、遮蔽率算出グリッドGsの周方向の個数に対する遮蔽率算出グリッドGs内にある被検知物グリッドGkの周方向の個数の割合である。(遮蔽率Rs=(被検知物グリッドGkの周方向の個数/遮蔽率算出グリッドGs内にある遮蔽率算出グリッドGsの周方向の個数)×100)。なお、図9において、遮蔽率算出グリッドGsの周方向の個数が28個であり、遮蔽率算出グリッドGs内にある被検知物グリッドGkの周方向の個数が17個であるため、遮蔽率Rsは、およそ61(=(17/28)×100)%である。
【0033】
遮蔽率判定値算出部52cは、操作装置30からの入力情報に基づいて、遮蔽率判定値Thsを算出するものである。遮蔽率判定値Thsは、第一遮蔽状態判定部52dによって、検知装置40が遮蔽状態であるか否かを判定するための判定値である。遮蔽率判定値Thsは、入力情報に基づいて変換された直進速度vから、図10に示す第七マップM7に基づいて算出される。第七マップM7は、直進速度vの大きさ(直進速度vの絶対値|v|)と遮蔽率判定値Thsとの関係を示すものである。直進速度vの大きさと遮蔽率判定値Thsとの関係は、直進速度vの大きさが小さい程、遮蔽率判定値Thsが大きくなるように設定されている。
【0034】
第一遮蔽状態判定部52dは、遮蔽率算出部52bによって算出された遮蔽率Rsが、遮蔽率判定値算出部52cによって算出された遮蔽率判定値Ths以上である場合、検知装置40が障害物を検知できない遮蔽状態であると判定するものである。一方、第一遮蔽状態判定部52dは、遮蔽率Rsが遮蔽率判定値Thsより小さい場合、検知装置40が遮蔽されておらず、検知装置40が障害物を適切に検知可能であると判定する。
【0035】
次に、制御装置50が行う電動車椅子1と障害物との衝突するリスクを低減する衝突リスク低減制御について、図11に示すフローチャートに沿って説明する。衝突リスク低減制御は、電動車椅子1の走行制御中において、電動車椅子1の予測進路Wy上に障害物が有る場合、電動車椅子1の走行速度を制限して、乗員が障害物を回避するための操作時間に余裕を持たせることで、電動車椅子1と障害物との衝突するリスクを低減する制御である。
【0036】
はじめに、乗員が操作装置30を操作して、電動車椅子1が走行制御されているときにおいて、各領域A1,A2に障害物が無い場合(第一の場合)について説明する。制御装置50は、操作装置30の位置がニュートラル位置であるか否かを判定する(ステップS102)。電動車椅子1が走行制御されている場合、操作装置30がニュートラル位置でないため、制御装置50は、ステップS102にて「NO」と判定する。制御装置50は、操作装置30からの入力情報に基づいて、電動車椅子1の進路を予測する(ステップS104;進路予測部51b)。制御装置50は、第一領域A1および第二領域A2を生成し(ステップS106;第一領域生成部51c,第二領域生成部51d)、検知装置40からの被検知物情報を取得する(ステップS108)。
【0037】
そして、制御装置50は、第一領域A1内または第二領域A2内に障害物が有るか否かを判定する(ステップS110;障害物有無検出部51e)。本第一の場合においては、各領域A1,A2に障害物が無いため、制御装置50は、ステップS110にて「NO」と判定し、プログラムをステップS112に進める。制御装置50は、ステップS112にて、駆動装置20の駆動量が制限されているか否かを判定する。このとき、駆動量制限部51fによる駆動装置20の駆動量の制限が行われていないため、制御装置50は、ステップS112にて「NO」と判定し、プログラムをステップS102に戻す。このように、電動車椅子1が走行制御されているときにおいて、各領域A1,A2に障害物が無い場合、ステップS102〜ステップS112が繰り返し実行される。
【0038】
また、ステップS102〜ステップS112が繰り返し実行されている場合、乗員が電動車椅子1の走行を停止させるために操作装置30の位置をニュートラル位置にしたとき、制御装置50は、ステップS102にて「YES」と判定し、プログラムをステップS114に進める。このとき、駆動量制限部51fによる駆動装置20の駆動量の制限が行われていないため、制御装置50は、ステップS114にて「NO」と判定し、プログラムをステップS102に戻す。制御装置50は、操作装置30が操作されるまでステップS102,S114を繰り返し実行する。
【0039】
次に、電動車椅子1が走行制御されているときにおいて、第一領域A1内または第二領域A2内に障害物が有る場合(第二の場合)について説明する。上述した第一の場合と同様に、制御装置50は、ステップS102〜S108を実行し、第一領域A1内または第二領域A2内に障害物が有か否かを判定する(ステップS110;障害物有無検出部51e)。本第二の場合、第一領域A1内または第二領域A2内に障害物が有るため、制御装置50は、ステップS110にて「YES」と判定し、プログラムをステップS116に進める。制御装置50は、ステップS116にて、駆動装置20の駆動量が制限されているか判定する。このとき、駆動量制限部51fによる駆動装置20の駆動量の制限が行われていないため、制御装置50は、ステップS116にて「NO」と判定する。そして、制御装置50は、駆動装置20の駆動量を制限し(ステップS118;駆動量制限部51f)、プログラムをステップS102に戻す。
【0040】
さらに、第一領域A1内または第二領域A2内に被検知物が有る状態が継続されているとき、制御装置50は、ステップS102〜S108を実行し、ステップS110にて第一領域A1内または第二領域A2内に障害物が有ると判定(ステップS110にて「YES」と判定)して、プログラムをステップS116に進める。このとき、駆動量制限部51fによる駆動装置20の駆動量の制限が行われているため、制御装置50は、ステップS116にて「YES」と判定し、プログラムをステップS102に戻す。このように、第一領域A1内または第二領域A2内に障害物が有る状態が継続されているとき、制御装置50は、ステップS102〜S116を繰り返し実行する。
【0041】
また、ステップS102〜S116が繰り返し実行されている場合、乗員が電動車椅子1の走行を停止させるために操作装置30の位置をニュートラル位置にしたとき、制御装置50は、ステップS102にて「YES」と判定し、プログラムをステップS114に進める。このとき、駆動量制限部51fによる駆動装置20の駆動量の制限が行われているため、制御装置50は、ステップS114にて「YES」と判定する。そして、制御装置50は、ステップS120にて、駆動量制限部51fによる駆動装置20の駆動量の制限を解除して、プログラムをステップS102に戻す。制御装置50は、操作装置30が操作されるまでステップS102,S114を繰り返し実行する。
【0042】
次に、電動車椅子1が走行制御されているときにおいて、第一領域A1内で一旦検出された障害物が相対的に移動して、第一領域A1外へ外れた場合(第三の場合)について説明する。第一領域A1内に障害物が有る場合、上述した第二の場合と同様に、制御装置50は、ステップS102〜ステップS116を繰り返し実行する。そして、第一領域A1内に有る障害物が相対的に移動して、第一領域A1内から第一領域A1外へ外れたとき、制御装置50は、ステップS110にて「NO」と判定する。このとき、制御装置50は、障害物有無検出部51eからの検出結果に基づいて、第一領域A1内の障害物が第一領域A1外へ外れたことを検出する(領域外移動検出部51g)。そして、制御装置50は、駆動量制限部51fによる駆動装置20の駆動量の制限がされているため、ステップS112にて「YES」と判定し、障害物が第一領域A1内から第一領域A1外へ外れたか否かをステップS124にて判定する。このとき、制御装置50は、領域外移動検出部51gによって障害物が第一領域A1外へ外れたことを検出したため、制御装置50は、ステップS124にて「YES」と判定し、プログラムをステップS126に進める。
【0043】
制御装置50は、所定移動時間Tmを算出し(ステップS126;所定移動時間算出部51i)、領域外移動検出部51gによって障害物が第一領域A1外へ外れたことを検出した時点から、所定移動時間Tmが経過したか否かを判定する(ステップS128)。所定移動時間Tmが経過しておらず、各領域A1,A2に被検知物が無い状態にて走行制御が継続されている場合、制御装置50は、ステップS128〜S138を繰り返し実行して、駆動装置20の駆動量が制限された状態を維持する(駆動量制限維持部51h)。具体的には、制御装置50は、所定移動時間Tmが経過していない場合、ステップS128にて「NO」と判定し、ステップS130にて、操作装置30の位置がニュートラル位置であるか否かを判定する。走行制御がされている場合、操作装置30の位置がニュートラル位置でないため、制御装置50は、ステップS130にて「NO」と判定する。そして、制御装置50は、入力情報に基づいて電動車椅子1の進路を予測し(ステップS132;進路予測部51b)、各領域A1,A2を生成する(ステップS134;第一領域生成部51c,第二領域生成部51d)。制御装置50は、被検知物情報を取得し(ステップS136)、各領域A1,A2に障害物が有るか否かを判定する(ステップS138;障害物有無検出部51e)。そして、制御装置50は、各領域A1,A2に障害物が無いと検出されている場合、ステップS138にて「NO」と判定し、プログラムをステップS128に戻す。
【0044】
制御装置50がステップS128〜S138を繰り返し実行している際に、障害物が第一領域A1内または第二領域A2内に有ると検出されたとき、制御装置50は、ステップS138にて「YES」と判定し、駆動量制限部51fによる駆動装置20の駆動量の制限を維持した状態にて、プログラムをステップS102に戻す。また、制御装置50がステップS128〜S138を繰り返し実行している際に、乗員が電動車椅子1の走行を停止させるために操作装置30の位置をニュートラル位置にした場合、制御装置50は、ステップS130にて「YES」と判定し、プログラムをステップS140に進める。制御装置50は、ステップS140にて、駆動量制限部51fによる駆動装置20の駆動量の制限を解除して、プログラムをステップS102に戻す。
【0045】
一方、制御装置50は、所定移動時間Tmが経過した場合、ステップS128にて「YES」と判定し、プログラムをステップS140に進める。制御装置50は、ステップS140にて、駆動量制限部51fによる駆動装置20の駆動量の制限を解除して、プログラムをステップS102に戻す。
【0046】
次に、電動車椅子1が走行制御されているときにおいて、第二領域A2外から第二領域A2内に障害物が進入した後に、第二領域A2内から第二領域A2外へ外れた場合(第四の場合)について説明する。この場合、例えば、障害物と電動車椅子1とが接近するようなときにおいて、第一領域A1内にて一旦検出された障害物が相対的に移動して、第一領域A1外へ外れた後、第二領域A2内に進入した場合や、障害物が第一領域A1内に一度も進入せずに第二領域A2内に進入した場合等がある。障害物が第二領域A2内に有る場合、上述した第二の場合と同様に、制御装置50は、ステップS102〜S116を繰り返し実行する。第二領域A2内に有る障害物が第二領域A2外へ外れた場合、制御装置50は、ステップS110にて「NO」と判定し、プログラムをステップS112に進める。このとき、障害物は、第二領域A2内から第二領域A2外へ外れたため、領域外移動検出部51gによって障害物が第一領域A1外へ外れたことを検出されない。そして、制御装置50は、駆動量制限部51fにより駆動装置20の駆動量が制限されているため、ステップS112にて「YES」と判定し、領域外移動検出部51gによって障害物が第一領域A1外へ外れたことを検出されなかったため、ステップS124にて「NO」と判定して、プログラムをステップS140に進める。制御装置50は、ステップS140にて、駆動量制限部51fによる駆動装置20の駆動量の制限を解除して、プログラムをステップS102に戻す。
【0047】
次に、制御装置50が行う検知部遮蔽状態検出制御について、図12に示すフローチャートに沿って説明する。検知部遮蔽状態検出制御は、検知装置40が遮蔽状態であるか否かを検出する制御である。検知部遮蔽状態検出制御は、電動車椅子1の電源が投入されている間に実行される。
【0048】
制御装置50は、操作装置30からの入力情報に基づいて、所定検知距離Dsを算出し(ステップS202;所定検知距離算出部52a)、遮蔽率Rsを算出する(ステップS204;遮蔽率算出部52b)。そして、制御装置50は、遮蔽率判定値Thsを算出し(ステップS206;遮蔽率判定値算出部52c)、遮蔽率算出部52bによって算出された遮蔽率Rsが、遮蔽率判定値算出部52cによって算出された遮蔽率判定値Ths以上であるか否かを判定する(ステップS208;第一遮蔽状態判定部52d)。検知装置40の検知部41が遮蔽されていないことにより、遮蔽率Rsが遮蔽率判定値Thsより小さい場合、制御装置50は、ステップS208にて「NO」と判定し、プログラムをステップS202に戻す。一方、例えば、検知装置40の検知部41に布等がかかっていることで、遮蔽率Rsが遮蔽率判定値Ths以上である場合、制御装置50は、ステップS208にて「YES」と判定し、ステップS210にて、検知装置40が遮蔽状態であると検出する。この場合、制御装置50は、例えば、電動車椅子1の走行制御が行われているとき、電動車椅子1の走行制御を停止する。また、例えば、電動車椅子1が乗員への報知を可能とするブザー等の報知装置(図示なし)を備えている場合、制御装置50は、報知装置により、検知部41が遮蔽状態であることを報知する。
【0049】
本実施形態によれば、電動車椅子1は、乗員による操作装置30への入力に従って駆動される駆動装置20によって走行する電動車椅子1であって、電動車椅子1は、被検知物を検知する検知装置40と、操作装置30に入力された情報である入力情報に基づいて、駆動装置20の駆動量を制御して電動車椅子1を走行させる制御装置50と、を備えている。制御装置50は、入力情報に基づいて予測される電動車椅子1の予測進路Wyの進行方向に沿って延びる第一領域A1を生成する第一領域生成部51cと、第一領域A1内、および電動車椅子1から所定距離以内の周辺領域としての第二領域A2内において、被検知物である障害物の有無を検出する障害物有無検出部51eと、障害物有無検出部51eによって、第一領域A1内および第二領域A2内の少なくともいずれか一方に障害物が有ると検出されている間、駆動装置20の駆動量を制限駆動量に制限する駆動量制限部51fと、を備えている。
これによれば、障害物と電動車椅子1とが接近するような場合において、検知装置40によって第一領域A1内で一旦検知された障害物が、第一領域A1外へ外れたときにおいても、この障害物を移動体の周辺領域である第二領域A2により捕捉することができる。したがって、障害物と電動車椅子1との衝突の可能性を低減することができるとともに、安全かつ安心して走行することができる電動車椅子1を提供することができる。また、電動車椅子1が障害物とすれ違うとき、乗員が障害物に衝突するかもしれないと感じる不安を解消することができる。
【0050】
また、制御装置50は、障害物有無検出部51eによる検出結果が第一領域A1内に障害物有りの状態から第一領域A1内に障害物無しの状態に変化した時点以降、電動車椅子1が移動する所定移動時間Tmだけ、駆動装置20の駆動量を制限駆動量に維持する駆動量制限維持部51hをさらに備えている。
これによれば、障害物と電動車椅子1とが接近するような場合において、検知装置40によって第一領域A1内で一旦検知された障害物が、第一領域A1外へ外れたときにおいても、電動車椅子1は、駆動量制限維持部51hによって、その障害物が第一領域A1外へ外れた時点から所定移動時間Tmだけ、第一領域A1内に障害物があるときと同じ制限駆動量を維持される。よって、例えば、電動車椅子1は、障害物が電動車椅子1を通過するまで、電動車椅子1の最高速度が制限された状態を維持される。したがって、障害物と移動体との衝突の可能性を確実に低減することができる。また、電動車椅子1が障害物とすれ違うとき、乗員が障害物に衝突するかもしれないと感じる不安を解消することができる。
【0051】
また、第二領域A2の幅は、電動車椅子1の幅より大きくなるように設定されている。
これによれば、障害物と電動車椅子1とが接近するような場合において、検知装置40によって第一領域A1内で一旦検知された障害物が、第一領域A1外へ外れたときにおいても、この障害物を第二領域A2内にて確実に捕捉することができる。これにより、駆動量制限部51fによって駆動装置20の駆動量が制限される。よって、障害物と電動車椅子1との衝突の可能性をさらに確実に低減することができる。また、電動車椅子1が障害物とすれ違うとき、乗員が障害物に衝突するかもしれないと感じる不安を解消することができる。
【0052】
また、制御装置50は、検知装置40が被検知物を検知可能な角度範囲のうち、検知装置40の検知部41から所定検知距離Ds内にあって検知装置40によって検知される被検知物である遮蔽物が占める角度の割合を、遮蔽物が検知装置40の検知部41を遮蔽する割合である遮蔽率Rsとして算出する遮蔽率算出部52bと、遮蔽率算出部52bによって算出された遮蔽率Rsが遮蔽率判定値Ths以上である場合、検知装置40が障害物を検知できない遮蔽状態であると判定する第一遮蔽状態判定部52dと、をさらに備えている。
これによれば、例えば検知装置40の検知部41が遮蔽物によって遮蔽されて、遮蔽率算出部52bによって算出された遮蔽率Rsが遮蔽率判定値Ths以上となった場合、制御装置50は、第一遮蔽状態判定部52dによって、検知装置40が障害物を検知できない遮蔽状態であると判定することができる。検知装置40が遮蔽状態であると判定された場合、制御装置50は、例えば、電動車椅子1を停止させたり、乗員に警告したり等の制御を行うことができる。これにより、例えば電動車椅子1の乗員が、検知装置40の検知部41を遮蔽している遮蔽物を取り除く等の処置をとることができるため、検知装置40の遮蔽状態が解消する。よって、検知装置40が、障害物を適切に検知可能な状態に復帰するため、障害物と電動車椅子1との衝突の可能性を低減することができる状態を維持することができる。また、電動車椅子1が障害物とすれ違うとき、乗員が障害物に衝突するかもしれないと感じる不安を解消することができる。
【0053】
また、制御装置50は、入力情報に基づいて所定検知距離Dsを算出する所定検知距離算出部52aをさらに備えている。
例えば歩行者等の障害物が密集しているような場所を、電動車椅子1が低速にて走行しているような場合、検知装置40の検知部41が歩行者等によって一時的に遮蔽されて、遮蔽率Rsが一時的に遮蔽率判定値Ths以上となる頻度が高い状態にある。この場合、歩行者等が電動車椅子1に接近した後通過して、実際には検知装置40が各領域A1,A2に位置する障害物を適切に検出可能な場合においても、制御装置50は、検知装置40が遮蔽状態であると誤判定するときがある。これに対して、本実施形態において、制御装置50は、電動車椅子1が例えば低速にて走行している場合、所定検知距離算出部52aによって、所定検知距離Dsを小さく算出することにより、遮蔽率Rsを比較的低くすることができる。よって、遮蔽率Rsが一時的に遮蔽率判定値Ths以上となることを抑制することができる。したがって、制御装置50は、検知装置40を一時的に遮蔽する障害物によって、検知装置40が遮蔽状態であると判定される誤判定を抑制することができる。その結果、安全かつ安心して走行することができる。
【0054】
また、制御装置50は、入力情報に基づいて遮蔽率判定値Thsを算出する遮蔽率判定値算出部52cをさらに備えている。
例えば歩行者等の障害物が密集しているような場所を、電動車椅子1が低速にて走行しているような場合、検知装置40の検知部41が歩行者等によって一時的に遮蔽されて、上述したように、制御装置50は、検知装置40が遮蔽状態であると誤判定するときがある。これに対して、本実施形態において、制御装置50は、電動車椅子1が例えば低速にて走行している場合、遮蔽率判定値算出部52cによって、遮蔽率判定値Thsを大きく算出することにより、遮蔽率Rsが一時的に所定遮蔽率以上となる頻度を抑制することができる。したがって、制御装置50は、検知装置40を一時的に遮蔽する障害物によって、検知装置40が遮蔽状態であると判定される誤判定を抑制することができる。その結果、安全かつ安心して走行することができる。
【0055】
次に、上述した実施形態における第一変形例として、制御装置50が実行する衝突リスク低減制御の変形例について説明する。上述した実施形態において、駆動量制限維持部51hは、領域外移動検出部51gによって、障害物が第一領域A1外へ外れたことを検出された時点以降、所定移動時間Tmだけ、駆動装置20の駆動量を制限駆動量に維持する。これに代えて、本第一変形例における駆動量制限維持部51hは、領域外移動検出部51gによって、障害物が第一領域A1外へ外れたことを検出された時点以降、電動車椅子1が所定移動距離Dmを移動する間だけ、駆動装置20の駆動量を制限駆動量に維持する。所定移動距離Dmは、第一領域A1内に有ると一旦検出された障害物が相対的に移動して、第一領域A1外へ外れた時点から、電動車椅子1を通り過ぎると想定される距離である。
【0056】
また、本第一変形例の制御装置50の衝突リスク低減制御部51は、上述した実施形態の所定移動時間算出部51iに代えて、図13に示すように、所定移動距離算出部151jを備えている。所定移動距離算出部151jは、領域外移動時最短距離Daminから図14に示す第八マップM8に基づいて、所定移動距離Dmを算出する。第八マップM8は、領域外移動時最短距離Daminと所定移動距離Dmとの関係を示すものである。領域外移動時最短距離Daminと所定移動距離Dmとの関係は、領域外移動時最短距離Daminが小さい程、所定移動距離Dmが小さくなるように設定されている。このように、駆動量制限維持部51hは、領域外移動検出部51gによって、障害物が第一領域A1外へ外れたことを検出された時点以降、電動車椅子1が移動する所定移動時間Tmまたは電動車椅子1が所定移動距離Dmを移動する間、駆動装置20の駆動量を制限駆動量に維持する。
【0057】
次に、上述した実施形態における第二変形例として、制御装置50が実行する検知部遮蔽状態検出制御の変形例について説明する。本第二変形例における制御装置50が行う検知部遮蔽状態検出制御は、図15に示す制御装置50が備える検知部遮蔽状態検出部152にて行われる。検知部遮蔽状態検出部152は、所定検知距離算出部152a、遮蔽率算出部152b、遮蔽変化率算出部152e、所定遮蔽時間算出部152f、第二遮蔽状態判定部152gおよび遮蔽変化率判定値算出部152hを備えている。
【0058】
所定検知距離算出部152aは、上述した実施形態における所定検知距離算出部52aと同様に、所定検知距離Dsを算出するものである。遮蔽率算出部152bは、上述した実施形態における遮蔽率算出部52bと同様に、遮蔽率Rsを算出するものである。
【0059】
遮蔽変化率算出部152eは、遮蔽率Rsの変化率である遮蔽変化率Rshを算出するものである。遮蔽変化率算出部152eは、遮蔽率Rsの時系列データに基づいて、遮蔽率Rsの変化率である遮蔽変化率Rshを算出する。遮蔽率Rsの時系列データは、遮蔽率算出部152bによって算出された遮蔽率Rsの時間的変化のデータである。遮蔽率Rsの時系列データは、第一所定時間毎に記憶部51aに記憶されることにより形成されている。遮蔽変化率Rshは、記憶部51aの時系列データに記憶された最新の遮蔽率Rsである現遮蔽率Rsnと、現遮蔽率Rsnが記憶された時点から所定遮蔽時間Ts前の遮蔽率Rsである前遮蔽率Rsbとから算出される。具体的には、遮蔽変化率Rshは、現遮蔽率Rsnの前遮蔽率Rsbに対する変化率である(遮蔽変化率Rsh=現遮蔽率Rsn/前遮蔽率Rsb)。所定遮蔽時間Tsは、所定遮蔽時間算出部152fによって算出される時間である。
【0060】
所定遮蔽時間算出部152fは、操作装置30からの入力情報に基づいて、所定遮蔽時間Tsを算出するものである。所定遮蔽時間Tsは、入力情報に基づいて変換された直進速度vから、図16に示す第九マップM9に基づいて算出される。第九マップM9は、直進速度vの大きさ(直進速度vの絶対値|v|)と所定遮蔽時間Tsとの関係を示すものである。直進速度vの大きさと所定遮蔽時間Tsとの関係は、直進速度vの大きさが小さい程、所定遮蔽時間Tsが大きくなるように設定されている。
【0061】
第二遮蔽状態判定部152gは、遮蔽変化率算出部152eによって算出された遮蔽変化率Rshが遮蔽変化率判定値Thsh以下である場合、検知装置40が障害物を検知できない遮蔽状態であると判定する。遮蔽変化率判定値Thshは、遮蔽変化率判定値算出部152hによって算出される。
【0062】
遮蔽変化率判定値算出部152hは、操作装置30からの入力情報に基づいて遮蔽変化率判定値Thshを算出するものである。遮蔽変化率判定値算出部152hは、直進速度vの大きさから、図17に示す第十マップM10に基づいて算出される。第十マップM10は、直進速度vの大きさ(直進速度vの絶対値|v|)と遮蔽変化率判定値Thshとの関係を示すものである。直進速度vの大きさと遮蔽変化率判定値Thshとの関係は、直進速度vの大きさが小さい程、遮蔽変化率判定値Thshが大きくなるように設定されている。
【0063】
また、本第二変形例の制御装置50が行う検知部遮蔽状態検出制御について、図18に示すフローチャートに沿って説明する。
制御装置50は、操作装置30からの入力情報に基づいて、所定検知距離Dsを算出すし(ステップS302;所定検知距離算出部152a)、遮蔽率Rsを算出する(ステップS304;遮蔽率算出部152b)。そして、制御装置50は、遮蔽率算出部152bによって算出された遮蔽率Rsを記憶部51aに時系列データを形成するように記憶する(ステップS306)。
【0064】
制御装置50は、ステップS308にて、算出された遮蔽率Rsがゼロであるか否かを判定する。検知装置40の検知部41に遮蔽物が無い場合、遮蔽率Rsがゼロであるため、制御装置50は、ステップS308にて「YES」と判定し、プログラムをステップS302に戻す。一方、検知装置40の検知部41が遮蔽物によって少なくとも一部が遮蔽された場合、遮蔽率Rsがゼロでないため、制御装置50は、ステップS308にて「NO」と判定し、プログラムをステップS310に進める。
【0065】
制御装置50は、所定遮蔽時間Tsを算出する(ステップS310;所定遮蔽時間算出部152f)。制御装置50は、ステップS312にて、時系列データから現遮蔽率Rsnおよび前遮蔽率Rsbを抽出する。時系列データの個数が少ない場合等により前遮蔽率Rsbが抽出できない場合は、制御装置50は、前遮蔽率Rsbをゼロとする。制御装置50は,ステップS314にて、前遮蔽率Rsbがゼロであるか否かを判定する。検知装置40の検知部41が遮蔽されていない場合や、時系列データの個数が少ない場合などにより、前遮蔽率Rsbがゼロである場合、制御装置50は、ステップS314にて「YES」と判定し、プログラムをステップS302に戻す。一方、前遮蔽率Rsbがゼロでない場合、制御装置50は、ステップS314にて「NO」と判定し、プログラムをステップS316に進める。
【0066】
制御装置50は、遮蔽変化率Rshを算出し(ステップS316;遮蔽変化率算出部152e)、操作装置30からの入力情報に基づいて遮蔽変化率判定値Thshを算出する(ステップS318;遮蔽変化率判定値算出部152h)。そして、制御装置50は、遮蔽変化率Rshが遮蔽変化率判定値Thsh以下であるか否かを判定する(ステップS320;第二遮蔽状態判定部152g)。検知装置40の検知部41が布等の遮蔽物により遮蔽され続けている場合、遮蔽変化率Rshが比較的小さいため、遮蔽変化率Rshが遮蔽変化率判定値Thsh以下となる。この場合、制御装置50は、ステップS320にて「YES」と判定し、ステップS322にて検知装置40の遮蔽状態を検出する。一方、乗員の電動車椅子1への乗り降りや歩行者の接近等により、検知装置40の検知部41が一時的に遮蔽された場合、遮蔽変化率Rshが比較的大きいため、遮蔽変化率Rshが遮蔽変化率判定値Thshより大きくなる。この場合、制御装置50は、ステップS320にて「NO」と判定し、プログラムをステップS302に戻す。
【0067】
本第二変形例によれば、制御装置は50、検知装置40が被検知物を検知可能な角度範囲のうち、検知装置40の検知部41から所定検知距離Ds内にあって検知装置40によって検知される被検知物である遮蔽物が占める角度の割合を、遮蔽物が検知装置40の検知部41を遮蔽する割合である遮蔽率Rsとして算出する遮蔽率算出部152bと、遮蔽率Rsの変化率である遮蔽変化率Rshを算出する遮蔽変化率算出部152eと、遮蔽変化率算出部152eによって算出された遮蔽変化率Rshが遮蔽変化率判定値Thsh以下である場合、検知装置40が障害物を検知できない遮蔽状態であると判定する第二遮蔽状態判定部152gと、をさらに備えている。
例えば歩行者等の障害物が密集しているような場所を、電動車椅子1が低速にて走行しているような場合、検知装置40の検知部41が障害物によって一時的に遮蔽されて、上述したように、制御装置50は、検知装置40が遮蔽状態であると誤判定するときがある。これに対して、本第二変形例における制御装置50は、遮蔽変化率算出部152eによって算出された遮蔽変化率Rshを考慮して、検知装置40が遮蔽状態であるか否かを判定する。よって、検知装置40の検知部41を一時的に遮蔽する障害物により、検知装置40が遮蔽状態であると判定される誤判定を抑制することができる。
【0068】
なお、上述した実施形態において、移動体の一例を示したが、本発明はこれに限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、上述した実施形態において、移動体は、電動車椅子1であるが、これに代えて、小型車両や移動ロボット等の搭乗型の移動体としても良い。
また、上述した実施形態において、操作装置30はジョイスティックであるが、これに代えて、操作装置30を、電動車椅子1の直進速度を指示するアクセルおよび電動車椅子1の旋回方向を指示するハンドルによって構成するようにしても良い。
【0069】
また、上述した実施形態において、検知装置40は、被検知物の三次元位置情報を検出する三次元測域センサであるが、これに代えて、被検知物の二次元位置情報を検出する二次元測域センサとしても良い。
また、上述した実施形態において、電動車椅子1は、検知装置40を一つ備えているが、これに代えて、検知装置40を複数備えるようにしても良い。これによれば、検知装置40が一つである場合に比べて、検知装置40の被検知物を検出可能な検知角度範囲Ahを広げることができる。
【0070】
また、上述した実施形態において、第一領域A1および第二領域A2は、極座標C上に平面状に生成されているが、これ代えて、第一領域A1および第二領域A2を立体的に生成するようにしても良い。この場合、極座標Cに代えて、電動車椅子1を中心とする球座標上に第一領域A1および第二領域A2を生成するようにすると良い。これによれば、検知装置40が被検知物を検知可能な範囲内において、第一領域A1の高さと第二領域A2の高さとを異なるように設定することができる。
また、上述した実施形態において、極座標Cの原点C0は、検知装置40の検知部41の位置としているが、これに代えて、極座標Cの原点C0を、電動車椅子1の例えば重心としても良い。この場合、検知装置40からの被検知物情報である座標データを補正して、極座標Cへの投影を行う。
【0071】
また、上述した実施形態において、第二領域A2は、電動車椅子1の比較的近傍に生成されているが、これに代えて、第二領域A2を第一領域A1より電動車椅子1の進行方向に大きくなるように生成するようにしても良い。これによれば、例えば、移動速度の速い障害物が、電動車椅子1に接近するような場合において、電動車椅子1の走行速度が小さいことにより、第一領域A1の大きさが比較的小さいときにおいても、第二領域A2にて、障害物を捕捉することができる。
また、上述した実施形態において、制御装置50は、第二領域生成部51dによって第二領域A2を生成しているが、これに代えて、第二領域A2を生成しないようにしても良い。
【0072】
また、上述した実施形態において、第一領域A1内に障害物が有る場合、駆動量制限部51fにより制限される直進速度vの最高速度は、最短距離Dminに応じて変化するが、これに代えて、電動車椅子1と障害物との相対速度やグリッドG内の障害物の密度(点群PGの密度)に応じて変化するようにしても良い。第一領域A1内に障害物が有る場合、駆動量制限部51fは、最短距離Dminにかかわらず、一定の速度に直進速度vの最高速度を制限するようにしても良い。
また、上述した実施形態において、駆動量制限部51fによって、駆動装置20の駆動量を制限駆動量にすることで、直進速度vの最高速度が制限されているが、これに代えて、直進速度vを所定の割合にて一律に低減するようにしても良い。また、直進速度vの時間変化率(加速度)を制限するようにしても良い。
【0073】
また、上述した実施形態において、第二領域A2内に障害物が有る場合、駆動量制限部51fにより制限される直進速度vの最高速度は、一定の速度に設定されているが、これに代えて、最短距離Dmin、電動車椅子1と障害物との相対速度やグリッドG内の障害物の密度(点群PGの密度)に応じて変化するようにしても良い。
【0074】
また、上述した実施形態において、所定移動時間算出部51iは、領域外移動時最短距離Daminから所定移動時間Tmを算出しているが、これに代えて、電動車椅子1と障害物との相対速度やグリッドG内の障害物の密度(点群PGの密度)から所定移動時間Tmを算出しても良い。
また、上述した実施形態において、所定移動時間Tmは、所定移動時間算出部51iによって算出されているが、これに代えて、所定移動時間Tmを、一定の時間に予め設定しても良い。この場合、所定移動時間Tmは、第一領域A1内に有ると一旦検出された障害物が相対的に移動して、ら第一領域A1外へ外れた時点から、電動車椅子1を通り過ぎると想定される時間(例えば、10秒)に予め設定される。
【0075】
また、上述した第一変形例において、所定移動距離Dmは、所定移動距離算出部151jによって算出されているが、これに変えて、所定移動距離Dmを一定の距離に予め設定しても良い。この場合、所定移動距離Dmは、第一領域A1内に有ると一旦検出された障害物が相対的に移動して、第一領域A1外へ外れた時点から、電動車椅子1を通り過ぎると想定される距離(例えば、5m)に設定される。
【0076】
また、上述した実施形態において、検知部遮蔽状態検出制御は、電動車椅子1の電源が投入されている間に実行されているが、これに代えて、電動車椅子1が走行制御されている場合のみに実行されるようにしても良い。
また、上述した実施形態において、遮蔽率算出部52bは、グリッドGを用いて遮蔽率Rsを算出しているが、被検知物情報(点群PGの座標データ)から直接的に遮蔽率Rsを算出するようにしても良い。具体的には、点群PGの座標データから、所定検知距離Ds内における障害物の存在する周方向の角度範囲を算出する。遮蔽率Rsは、この角度範囲における検知装置40の検知角度範囲Ahに対する割合として算出される。
【0077】
また、上述した第二変形例において、所定遮蔽時間Tsは、所定遮蔽時間算出部152fによって算出されているが、これに代えて、所定遮蔽時間Tsを、一定の時間(例えば5秒)に予め設定するようにしても良い。
また、上述した第二変形例において、遮蔽変化率判定値Thshは、遮蔽変化率判定値算出部152hによって算出されているが、これに代えて、遮蔽変化率判定値Thshを、一定の値(例えば10%)に予め設定するようにしても良い。
【0078】
また、上述した実施形態において、第二領域A2は、第二領域生成部51dにより予測進路Wyの進行方向に沿って所定の大きさで生成されているが、これに代えて、移動体(電動車椅子1)に対して所定の方向(例えば電動車椅子1の前方)に固定されて予め設定されている構成としても良い。また、移動体(電動車椅子1)が検知装置40を複数備えている場合、第一領域A1と第二領域A2を、互いに異なる検知装置40に基づいてそれぞれ設定される構成としても良い。
【0079】
また、上述した実施形態において、第二領域A2内に障害物が有ると検出されている場合、駆動量制限部51fは、第二最高直進速度vx2を第四マップM4に基づいて算出しているが、これに代えて、第二最高直進速度vx2は予め設定された所定の固定値としても良い。
【0080】
また、上述した実施形態において、駆動量制限部51fは、障害物有無検出部51eによって第一領域A1内および第二領域A2内の少なくともいずれか一方に障害物が有ると検出されている間、駆動装置20の駆動量を制限駆動量に制限するが、操作装置30に入力された所望直進速度xjsが、第一最高直進速度vx1および第二最高直進速度vx2よりも小さい場合は、駆動量の制限を解除するようにしても良い。
【0081】
また、上述した実施形態において、障害物有無検出部51eでの検出結果が障害物有りの状態から障害物無しの状態に変化した時点以降、電動車椅子1が移動する所定移動時間Tmまたは電動車椅子1が所定移動距離Dmを移動する間、駆動装置20の駆動量を制限駆動量に維持するが、この駆動制限方法は、障害物無しの状態に変化した時点以降から段階的あるいは除々に制限駆動量を変更するようにしても良い。
【0082】
また、上述した実施形態において、領域外移動検出部51gは、障害物有無検出部51eによって検出された障害物の検出結果に基づいて、第一領域A1内に有ると検出された障害物が相対的に移動して、第一領域A1外へ外れたことを検出している。これに代えて、領域外移動検出部51gが、障害物有無検出部51eによって検出された障害物の検出結果に基づいて、第二領域A2内に有ると検出された障害物が相対的に移動して、第二領域A2外へ外れたことを検出するようにしても良い。さらに、この場合、駆動量制限維持部51hを、領域外移動検出部51gによって、障害物が第二領域A2外へ外れたことを検出された時点以降、電動車椅子1が移動する所定移動時間Tmまたは電動車椅子1が所定移動距離Dmを移動する間、駆動装置20の駆動量を制限駆動量に維持するようにしても良い。すなわち、駆動量制限維持部51hは、障害物有無検出部51eによる検出結果が第二領域A2内に障害物有りの状態から第二領域A2内に障害物無しの状態に変化した時点以降、電動車椅子1が移動する所定移動時間Tmまたは電動車椅子1が所定移動距離Dmを移動する間、駆動装置20の駆動量を制限駆動量に維持する。このように、制御装置50は、障害物有無検出部51eによる検出結果が障害物有りの状態から障害物無しの状態に変化した時点以降、電動車椅子1が移動する所定移動時間Tmまたは電動車椅子1が所定移動距離Dmを移動する間、駆動装置20の駆動量を制限駆動量に維持する駆動量制限維持部51hをさらに備えている。
【0083】
なお、上記した記載には、以下のような技術的思想も含まれる。
(付記項1)
乗員による操作装置への入力に従って駆動される駆動装置によって走行する移動体であって、前記移動体は、被検知物を検知する検知装置と、前記操作装置に入力された情報である入力情報に基づいて、前記駆動装置の駆動量を制御して前記移動体を走行させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記入力情報に基づいて、前記移動体の進路を予測する進路予測部と、前記進路予測部によって予測された前記移動体の進路である予測進路の進行方向に沿って延びる第一領域を生成する第一領域生成部と、前記第一領域生成部によって生成された前記第一領域内において、前記検知装置によって検知された被検知物の情報である被検知物情報に基づいて、前記検知装置の検知部から所定検知距離より離れた前記被検知物である障害物の有無を検出する障害物有無検出部と、前記障害物有無検出部によって、前記第一領域内に前記障害物が有ると検出されている間、前記駆動装置の前記駆動量を制限駆動量に制限する駆動量制限部と、前記障害物有無検出部によって検出された障害物の情報に基づいて、前記第一領域内に有ると検出された前記障害物が相対的に移動して、前記第一領域外へ外れたことを検出する領域外移動検出部と、前記領域外移動検出部によって、前記障害物が前記第一領域外へ外れたことを検出された時点以降、前記駆動装置の前記駆動量を前記制限駆動量に維持する駆動量制限維持部と、を備えている移動体。
【0084】
(付記項2)
乗員による操作装置への入力に従って駆動される駆動装置によって走行する移動体であって、前記移動体は、被検知物を検知する検知装置と、前記操作装置に入力された情報である入力情報に基づいて、前記駆動装置の駆動量を制御して前記移動体を走行させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記入力情報に基づいて予測される前記移動体の予測進路の進行方向に沿って延びる第一領域および前記移動体から所定距離以内の周辺領域としての前記第二領域の少なくともいずれか一方の領域を生成する領域生成部(上述した実施形態の第一領域生成部51cおよび第二領域生成部51dに相当)と、前記領域生成部によって生成された前記領域に障害物が有るか否かを前記検知装置の検知結果に基づいて判定する障害物有無判定部(上述した実施形態における障害物有無検出部51eに相当)と、前記障害物有無判定部によって、前記障害物が有ると判定されている間、前記駆動装置の前記駆動量を制限駆動量に制限する駆動量制限部と、を備え、前記制御装置は、前記障害物有無判定部での判定結果が障害物有りの状態から障害物無しの状態に変化した時点以降、前記移動体が移動する所定移動時間または前記移動体が所定移動距離を移動する間、前記駆動装置の前記駆動量を前記制限駆動量に維持する、移動体。
【符号の説明】
【0085】
1…電動車椅子、10…車椅子本体、20…駆動装置、30…操作装置、40…検知装置、41…検知部、50…制御装置、51…衝突リスク低減制御部、51b…進路予測部、51c…第一領域生成部、51d…第二領域生成部、51e…障害物有無検出部、51f…駆動量制限部、51g…領域外移動検出部、51h…駆動量制限維持部、52…検知部遮蔽状態検出部、52b…遮蔽率算出部、52d…第一遮蔽状態判定部、152e…遮蔽変化率算出部、152g…第二遮蔽状態判定部、A1…第一領域、A2…第二領域、Ah…検知角度範囲、C…極座標、Dm…所定移動距離、Ds…所定検知距離、Rs…遮蔽率、Rsh…遮蔽変化率、Ths…遮蔽率判定値、Thsh…遮蔽変化率判定値、Tm…所定移動時間、Wy…予測進路。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18