特許第6553352号(P6553352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553352
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】天板構造とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47B 96/18 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   A47B96/18 D
   A47B96/18 H
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-243130(P2014-243130)
(22)【出願日】2014年12月1日
(65)【公開番号】特開2016-104082(P2016-104082A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2017年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸央
(72)【発明者】
【氏名】小堀 勝章
(72)【発明者】
【氏名】山本 琢磨
【審査官】 中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−170533(JP,A)
【文献】 実開昭59−070544(JP,U)
【文献】 実開昭57−124230(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0037848(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 77/00−97/08
A47B 1/00−41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面が平面状に形成された天板と、
前記天板の前端と面一または前記天板の前端より引っ込められた位置で前記天板の裏面に固定された前框と、
前記前框の背面側で間隙を介して前記天板に固定された裏貼り部と、
前記間隙に充填されて前記天板と前框と裏貼り部を互いに固定する接着剤層と、
前記前框の背面に一の面が固定され且つ他の面が前記接着剤層を覆って前記裏貼り部に固定された前見付け部と、を備え
前記接着剤層は、前記間隙に加えて、前記前框の背面と前記天板に当接する接合面との角部を一部切除してなる切除部にも設けられていることを特徴とする天板構造。
【請求項2】
天板の前端と面一または前記天板の前端より引っ込められた位置で前記天板の平面状に形成された裏面に前框を接着剤で接着する工程と、
前記前框の背面側に間隙を開けて裏貼り部を前記天板の裏面に接着する工程と、
前記間隙に接着剤を充填して前記前框と天板と裏貼り部を固定する接着剤層を形成する工程と、
前記前框の背面と裏貼り部とに前見付け部を接着して前記間隙の接着剤層を覆う工程と、を備え
前記前框の背面と前記天板に当接する接合面との角部を予め切除してなる切除部が前記間隙と一体に形成されていて、前記切除部にも前記接着剤層の接着剤が充填されていることを特徴とする天板構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシステムキッチンの流し台等におけるセラミックや天然大理石等の各種材料による天板と前框を備えた天板構造とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、システムキッチン等の流し台の天板構造(ワークトップカウンター)では天板に人造大理石の天板を設けたものが広く知られている。例えば流し台の天板構造として人造大理石の天板とその前面に設けた前框との連結に際し、前框の背面に形成した凹部と天板の前端部に形成した凸部とにそれぞれ接着剤を塗布し、前框の凹部に天板の凸部を嵌合接着させて一体化したものが知られている。そして、接着剤の硬化後に凸部と凹部の嵌合部からはみ出た接着剤を研磨することできれいに仕上がる。
【0003】
また、別の天板構造として、例えば特許文献1に記載されたものが提案されている。この天板構造では、天板として板状の人造大理石からなる天板における上面の前縁部に返り縁が形成され、後縁部にバックガードが形成されている。この天板の裏面における前縁部と後縁部にそれぞれ合板からなる桟を接着によって固定し、前縁部の桟の前面側に人造大理石からなる前框を接着剤で固定している。
【0004】
また、特許文献2に記載された流し台の天板構造では、前框を前面に取り付けた前部芯材と後部芯材に跨って繊維強化プラスチック製補強層の上面にセラミック天板を載置し、後部芯材の上の繊維強化プラスチック製補強層上にセラミックバックガードを起立状態で取り付けている。そして、前框及びセラミック天板の間と、セラミック天板及びセラミックバックガードの間にエポキシ樹脂からなる目地材を充填してカウンタを組み立てている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平2−30986号公報
【特許文献2】特公平6−26523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した人造大理石の天板と前框を凹凸嵌合させた天板構造は、取り付け強度を増大させるために前框の凹部と天板の凸部を形成し、互いに嵌合して接着固定しているが、天板や前框が人造大理石よりも高硬度材料のセラミック製等であると、凹部や凸部の加工が困難であった。しかも接合部の研磨を行うと釉薬が除去されて表面の意匠性が低下してしまうため、研磨仕上げも困難であった。
【0007】
また、特許文献1に記載された天板構造では、人造大理石の天板と前框を合板製の桟と接着剤で接合するにすぎないため、上述した凹凸嵌合構造と比較して接着強度が小さいという欠点があった。
また、特許文献2に記載された天板構造では、天板やバックガードを人造大理石よりも高硬度のセラミックで製作したので凹部や凸部等の加工が一層困難であった。そのため、天板やバックガードは平板状に形成して補強層の上に載置し、これらの隙間にエポキシ樹脂等からなる目地材を充填して固定せざるを得なかった。そのため、凹凸嵌合と比較して、上記特許文献1記載の天板構造と同様に接着強度が小さいという欠点があった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、凹凸嵌合等することなく、天板や前框を高強度で固定できるようにした天板構造とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による天板構造は、裏面が平面状に形成された天板と、前記天板の前端と面一または前記天板の前端より引っ込められた位置で前記天板の裏面に固定された前框と、前框の背面側で間隙を介して天板に固定した裏貼り部と、間隙に充填されて天板と前框と裏貼り部を互いに固定する接着剤層と、前記前框の背面に一の面が固定され且つ他の面が前記接着剤層を覆って前記裏貼り部に固定された前見付け部と、を備え、前記接着剤層は、前記間隙に加えて、前記前框の背面と前記天板に当接する接合面との角部を一部切除してなる切除部にも設けられていることを特徴とする。
本発明による天板構造によれば、天板の裏面で前框と裏貼り部との間隙に接着剤を充填して接着剤層を形成することで、接着剤層によって前框を天板と裏貼り部に強固に固定できると共に、天板と前框の接合部の背面に厚みのある接着材層を設けたことで耐水性能が向上する。しかも、接着材層の部位の研磨仕上げを不要にできる。また、前框は裏貼り部と接着剤層を介して縁切りしたため、裏貼り部の形状や取り付け位置の誤差に影響されることなく、前框を天板に対して正確に固定できる。
また、天板と前框がセラミック等の高硬度材料からなっていても、これら天板と前框に凹凸加工を施したりせず表面に塗布した接着剤による接合によらず、高い強度に固定できる。
【0010】
しかも、接着剤層は、間隙に加えて、前框の背面と天板に当接する接合面との角部を一部切除してなる切除部にも設けられていることを特徴とする。
間隙に接着剤を充填する際に前框の背面の上部角部にテーパ部等の切除部を設けたため、切除部にも接着剤を充填することができて、前框と天板の接合強度をより高く設定できる。そのため、前框と天板がセラミック等の高硬度材料であっても高強度に固定できる。
【0011】
本発明による天板構造の製造方法は、天板の前端と面一または前記天板の前端より引っ込められた位置で前記天板の平面状に形成された裏面に前框を接着剤で接着する工程と、前框の背面側に間隙を開けて裏貼り部を天板の裏面に接着する工程と、間隙に接着剤を充填して前框と天板と裏貼り部を固定する接着剤層を形成する工程と、前框の背面と裏貼り部とに前見付け部を接着して前記間隙の接着剤層を覆う工程と、を備え、前記前框の背面と前記天板に当接する接合面との角部を予め切除してなる切除部が前記間隙と一体に形成されていて、前記切除部にも前記接着剤層の接着剤が充填されていることを特徴とする。
本発明によれば、天板の裏面に前框を接着して前框の背面に間隙を開けて裏貼り部を固定した後で、間隙に接着剤を充填して接着剤層を形成することによって、前框と天板を強固に固定できる。また、前框の背面と裏貼り部とに前見付け部を接着することで接着剤層を覆うことができ、しかも前見付け部を化粧材として露出して使用できる。
【0012】
しかも、前框は、前框の背面と天板に当接する接合面との角部を予め切除してなる切除部を間隙と一体に形成していることを特徴とする
【発明の効果】
【0013】
本発明による天板構造とその製造方法によれば、間隙に充填した接着剤層によって前框を天板と裏貼り部に強固に固定できると共に接着剤の部位の研磨仕上げを不要にできる。しかも、天板と前框の接合部の背面に厚みのある接着材層を設けたことで水の侵入を防いで耐水性能が向上する。
また、前框は裏貼り部とは接着剤層の間隙を介して縁切りしたため、裏貼り部の形状誤差や取り付け誤差等に影響されることなく、前框を天板に対して正確に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による流し台の天板構造を示す要部斜視図である。
図2図1に示す流し台の天板構造のA−A線縦断面図である。
図3図2に示す天板と前框の部分のB部拡大図である。
図4】(a)、(b)、(c)、(d)は天板構造の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態による流し台、例えばシステムキッチン等の流し台1の天板構造を図1乃至図4に基づいて説明する。
図1に示す実施形態によるシステムキッチン等における流し台1は、例えば箱形のキャビネット2の上部に天板(ワークトップカウンター)3を備えたものである。天板3は高硬度材料、例えばセラミックからなるものであり、その一部領域には調理器具等を洗うための凹部形状のシンク4を備え、シンク4の近傍には図示しない水栓を取り付けている。天板3の奥側(背面側)には上方に起立するバックガード5が固定されている。なお、天板3にシンク4を設けなくてもよい。
【0016】
また、図2及び図3に示す流し台1の天板構造14において、天板3の裏面側には例えば木材からなる補強板として裏貼り部7が固定されている。天板3のバックガード5に対向する位置で作業者が立って調理や洗浄等の作業を行う側の面を前面とし、バックガード5側の面を後面とし、その両側を側面とする。なお、天板3は図1に示すように前面側と後面側が長辺をなし、これに直交する側面側が短辺をなす略長方形板状に形成されている。
【0017】
裏貼り部7の前面には間隙8を介して前框9が固定されている。本実施形態では、前框9は天板3の前端から若干後方、即ち裏貼り部7側に引込められたオーバーハング位置で天板3に直交して固定されているが、天板3の前端と面一に固定されていてもよい。
前框9は天板3と同様に高硬度材料のセラミック製であり、天板3との接合面9aと間隙8に面する背面9bとの間の上部角部を予め斜めに切除してテーパー部10を形成している。テーパー部10の空間は間隙8と一体の空間を構成している。高硬度なセラミック製の前框9にテーパー部10を予め形成するには、例えばウォータージェットを噴出して前框9の上部角部を切削加工することで得られる。
【0018】
また、前框9の背面と裏貼り部7の下面には化粧材として前見付け部12が固定されており、前見付け部12によって前框9と裏貼り部7との間の間隙8を覆っている。そして、間隙8内には例えばエポキシ樹脂等からなる接着剤が充填されて固化されることで所定厚みの接着剤層Sを構成しており、これによって天板3と前框9と裏貼り部7とを堅固に固定している。なお、間隙8の幅は前框9と裏貼り部7とを接着剤を塗布することで固定する場合より大きな幅とする。
そして、前見付け部12によって接着剤層Sを外部から見えないように覆っている。天板3と前框9を備えたこれらの部材は天板構造14を構成する。
【0019】
本実施形態による流し台1の天板構造14は上述した構成を備えており、次に天板構造14の製造方法について図4に基づいて説明する。
図4(a)において、セラミック製の天板3に対して前面側から若干引込められた位置にセラミック製の前框9を瞬間接着剤で天板3に垂直に仮固定する。次に、前框9の背面側で所定の間隙8を開けて裏貼り部7を接着剤で天板3に接着する。本実施形態では、裏貼り部7は天板3のほぼ全面に配設されていてセラミック製の天板3を支持・補強する。
【0020】
こうして、前框9と裏貼り部7との間に間隙8として水平方向に細長い溝を形成し、この間隙8内にエポキシ樹脂からなる接着剤を充填させる。エポキシ樹脂からなる接着剤は粘性があるために前框9と天板3との角部に隙間なく充填されにくいが、前框9の背面9bと接合面9aとの間の上部角部を切除してテーパー部10を形成しているために、テーパー部10にまで接着剤が良く流入して充填できる。そのため、セラミック製の天板3と前框9とを所定厚みの接着剤層Sによって強固に固着できる。
そして、最後に前見付け部12の化粧材を裏貼り部7と前框9の背面9bとに当接させて接着剤で張り付けて固定する。こうして天板構造14の組立を完了できる。
【0021】
上述のように本実施形態による流し台1の天板構造14とその製造方法によれば、高硬度材料であるセラミック製の天板3と前框9を裏貼り部7との間に形成した所定厚みの接着剤層Sによって強固に固定できる。しかも、前框9の上部角部に形成したテーパー部10に粘性の高い接着剤が侵入する接着剤溜まりを形成して間隙8の接着剤層Sと一体に形成したため、天板3と前框9の接着強度が高い。
また、接着剤は天板3と前框9の隙間からはみ出ることがなく、接着部位の研磨仕上げが不要であると共に、天板3と前框9の接合部の裏面に所定厚みの接着剤層Sを形成したから前框9側からの水の侵入を防いで耐水性が高い。
【0022】
また、天板3に対して後方にセットバックした位置に前框9を固定するため、天板3と前框9を位置合わせする際に接着剤層Sによって天板3と前框9の位置合わせの寸法バラツキを吸収させることができる。
しかも、裏貼り部7の前面に接着剤を塗布して前框9を接着すると裏貼り部7の形状誤差や取り付け誤差等によって前框9が斜めに傾斜したり位置ずれしたりするおそれがあるが、接着剤層Sによって裏貼り部7と縁切りして前框9を治具等を用いて天板3に垂直に取り付けることができて、意匠性に優れている。
【0023】
なお、本発明による流し台1の天板構造14は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能である。以下に、本発明の変形例について説明するが、上述した実施形態で説明した部品や部材等と同一または同様なものについては同一の符号を用いて説明する。
【0024】
上述した実施形態では、前框9の天板3との接合面9aの角部を切除してテーパー部10を形成して天板3と前框9との接合性を高くしたが、テーパー部10は必ずしも形成する必要はない。この場合でも間隙8は前框9と裏貼り部7とを縁切りするに十分な隙間を有しており、この間隙8に接着剤を充填して接着剤層Sを形成したから前框9と天板3との接合強度は十分高い。
なお、間隙8における接着剤を充填する前框9の上部角部に関し、面取り状のテーパー部10に代えて他の切除形状、例えば断面R状に切除して丸ホーニング形状にしてもよいし、階段状に段付き形状に切除してもよく、これらはテーパー部10を含めて切除部を構成する。また、前框9だけでなく、裏貼り部7の間隙8に面する上部角部にも切除部を形成して接着剤を充填させてもよい。
【0025】
また、本発明における天板3や前框9を形成する高硬度材料として実施形態ではセラミック製のものを用いたが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、互いに嵌合可能な凹部や凸部のような加工が困難な高硬度材料であれば他の材料からなる天板や前框であっても適用可能であり、例えば天然大理石等の石材を用いてもよい。
【0026】
また、本発明による天板構造は、天板や前框が高硬度材料でなくてもよく、人造大理石や人工大理石等の材料やその他の材料であっても本発明を適用できる。即ち、本発明による天板構造は、凹凸嵌合部を形成することなく、また薄層の接着剤塗布によっては得られない高い接着強度を、天板と前框と裏貼り部との間の接着剤層Sによって得ることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 流し台
3 天板
7 裏貼り部
8 間隙
9 前框
10 テーパー部
12 前見付け部
S 接着剤層
図1
図2
図3
図4