特許第6553363号(P6553363)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553363
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20190722BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B65D1/02 111
   B65D83/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-17522(P2015-17522)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-141421(P2016-141421A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
(72)【発明者】
【氏名】木虎 修一
【審査官】 田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−230817(JP,A)
【文献】 国際公開第97/045245(WO,A1)
【文献】 特開平05−310265(JP,A)
【文献】 特開2002−036344(JP,A)
【文献】 特開2014−208546(JP,A)
【文献】 特開平11−300815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00−1/48
B65D 83/00
B65D 77/06
B65D 77/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、胴部及び底部を有するボトル状をなし、容器の外殻を形成する外層体と、該外層体の内側に収められる減容変形自在な内層体とを備え、
ブロー成形の割り金型による食い切りによって前記底部に形成されるピンチオフ部に、前記外層体を貫通する直線状のスリットを有する二重容器において、
前記底部は、前記スリットの延在方向における少なくとも中央の領域を、該スリットの両側から挟み込むように配置された、前記口部側に向けて凹となる一対の挟み込み凹部を有し、
前記外層体の底部を形成する底壁は、接地面となる外縁部と、前記外縁部の径方向内側で口部側に向けて凹となる凹部とを有し、
前記挟み込み凹部は、前記底壁の凹部において、さらに前記口部側に向けて凹となるように形成されていることを特徴とする二重容器。
【請求項2】
前記一対の挟み込み凹部はそれぞれ、前記スリットに平行、かつ、容器の中心軸線に平行に延びる内側平面を有し、それぞれの該内側平面で前記スリットを両側から挟み込む、請求項1に記載の二重容器。
【請求項3】
前記底部は、前記ピンチオフ部において、前記スリットの延在方向における両端部外側に、該スリットの延長線に沿って延在する一対の補強リブを備える、請求項1または2に記載の二重容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の外殻を形成する外層体と、該外層体の内側に収められる減容変形自在な内層体とを備え、内容物の吐出に伴って内層体のみを減容させる二重容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧水などの化粧料や、シャンプーやリンスあるいは液体石鹸、また食品調味料などを収納する容器としては、容器の外殻を形成する外層体と、該外層体の内側に収められる減容変形自在な内層体とを備え、外層体に、内層体との相互間に通じる外気導入用の開口を設けて、内容物の吐出に伴って内層体のみを減容させるようにした二重容器(デラミ容器とも言う)が知られている。
【0003】
また、内容物の吐出方式としては、外層体の口部に装着したポンプによるものや、主に外層体の胴部をスクイズすることによるもの、更に、主に内容物の自重によるもの(例えば特許文献1参照)等がある。ポンプを利用する容器では、構造が複雑になる上、コストの増大が避けられず、また、外層体のスクイズを利用する容器では、構造が比較的簡素化されるものの、内層体のみを減容させる為には、外層体への押圧時には外気導入用の開口を閉じ、押圧を解除すると開く外気導入弁を設ける必要がある。一方、内容物の自重を利用する容器では、構造も簡単である上、外気導入弁も不要であることから、コスト削減にも優れている。
【0004】
特に、このような内容物の自重を利用する容器では、合成樹脂製の外層体と、外層体に対して相溶性が低い合成樹脂にて形成される内層体とを積層して形成したパリソンを、ブロー成形することによって形成する場合には、ブロー成形の割り金型による食い切りによって底部に形成されるピンチオフ部を、そのまま外気導入孔として用いることができる。すなわち、ピンチオフ部において外層体の底壁を割ることで内層体を外層体から剥離させ、ピンチオフ部にスリット状の外気導入孔を設けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−207860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のようにピンチオフ部にスリット状の外気導入孔を設ける場合、成形後のピンチオフ部において、外層体から内層体を剥離した部分に外気導入孔の開口が形成されるため、その開口幅は、内層体の厚さに対応したものとなる。ここで、容器のブロー成形において、筒状のパリソンを金型のピンチオフ部で食い切る際に、図4(a)に示すようにパリソンPが傾斜した状態で切断してしまうと、図4(b)に示すようにパリソンPが適切な角度で切断された場合に比べて、切断面における内層体20の厚さTが大きくなり、その結果、形成される外気導入孔の開口幅が所期したよりも大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
また、例えば、ピンチオフ部において外気導入孔に隣接する位置に補強用のリブを設け、このリブの一方側の側面から他方側の側面に向けて食い込み部を形成するような場合においても、金型を閉じる際に、食い込み部成形用のピンに押されてパリソンが傾くことがある。この場合にも、上記と同様に、外気導入孔の開口幅が大きくなってしまう。
【0008】
そして、上記のように外気導入孔の開口幅が大きくなった場合、内容物の自重では吐出しきれなかった内容物を取出すために外層体をスクイズしても、外層体と内層体との相互間の空気が外気導入孔から漏れてしまい、内層体を十分に減容させることができないため、内容物の吐出が難しくなるという不具合があった。このため、この点を改良した新たな二重容器が望まれていた。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、内容物をその自重で吐出させることができる二重容器において、ピンチオフ部に設けた外気導入孔の開口幅を適切な大きさに形成し、外層体のスクイズによるスムーズな吐出を実現する二重容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の二重容器は、口部、胴部及び底部を有するボトル状をなし、容器の外殻を形成する外層体と、該外層体の内側に収められる減容変形自在な内層体とを備え、
ブロー成形の割り金型による食い切りによって前記底部に形成されるピンチオフ部に、前記外層体を貫通する直線状のスリットを有する二重容器において、
前記底部は、前記スリットの延在方向における少なくとも中央の領域を、該スリットの両側から挟み込むように配置された、前記口部側に向けて凹となる一対の挟み込み凹部を有することを特徴とする。
【0011】
なお、本発明の二重容器にあっては、前記一対の挟み込み凹部はそれぞれ、前記スリットに平行、かつ、容器の中心軸線方向に平行に延びる内側平面を有し、それぞれの該内側平面で前記スリットを両側から挟み込むことが好ましい。
【0012】
また、本発明の二重容器にあっては、前記底部は、前記ピンチオフ部において、前記スリットの延在方向における両端部外側に、該スリットの延長線に沿って延在する一対の補強リブを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内容物をその自重で吐出させることができる二重容器において、ピンチオフ部に設けた外気導入孔の開口幅を適切な大きさに形成し、外層体のスクイズによるスムーズな吐出を実現する二重容器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る二重容器を一部断面で示した正面図である。
図2】(a)は、図1における二重容器の側面図であり、(b)は、図1に示す二重容器の底面図である。
図3】(a)は、図1に示す二重容器を成形するための金型を示す断面図であり、(b)は、図3(a)の金型でパリソンを切断する様子を表す図である。
図4】(a)は、参考例としての二重容器の製造過程における、パリソンと金型との関係を示す断面図であり、(b)は、図4(a)との比較のために示したパリソンと金型との関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に例示説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る二重容器を、部分的に断面で表した正面図である。
【0016】
二重容器1は、容器の外殻を形成する外層体10と、外層体10の内側に収められる減容変形自在な内層体20とを備え、外層体10と内層体20の間には、これら外層体10及び内層体20を互いに接合する接着帯30が設けられている。
【0017】
ここで、本実施形態における二重容器1は、合成樹脂製の外層体10と、外層体10に対して相溶性が低い合成樹脂にて形成される内層体20と、外層体10及び内層体20に対して接着性を有する合成樹脂にて形成される帯状の接着層、すなわち、接着帯30とを積層させたものであり、これらの合成樹脂を積層して形成したパリソンを、ブロー成形することによって得られたものである。ここで、本実施形態の二重容器1においては、外層体10を外側の低密度ポリエチレン(LDPE)と内側のポリプロピレン樹脂(PP)の2層構造とし、内層体20を外側のエチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)と内側の変性ポリオレフィン樹脂(三井化学株式会社製「アドマー」(登録商標))の2層構造としている。また、接着帯30を変性ポリオレフィン樹脂(「アドマー」(登録商標))で構成している。なお、本実施形態では、スクイズ性を付与するため、外層体10の外側の層を低密度ポリエチレン(LDPE)で構成しているが、ポリプロピレン樹脂(PP)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、又は高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)とすることも可能である。また、本実施形態の外層体10を構成するポリプロピレン樹脂(PP)の層は、内層体20の剥離性を向上するために設けたものであり、必ずしも必要なものではない。さらに、上記の層構成は一例であり、外層体10に対して内層体20が剥離可能であれば、外層体10、内層体20、及び接着帯30の材料は特に限定されるものではなく、それぞれ単層構造としても良いし、多層構造としても良い。
【0018】
外層体10は、復元自在な可撓性を有するものであり、外層体10の底部を形成する底壁11と、底壁11の外縁に連結して外層体10の胴部を形成する側壁12と、側壁12の上部に連結するともに円筒状をなし外層体10の口部を形成する口部壁13とを備えている。内層体20は、その内側に内容物を充填可能とする充填空間Mを有するものであり、積層された外層体10から剥離させることで減容変形させることができる。
【0019】
なお、本実施形態において側壁12は、横断面が円形であり、口部壁13に向けて縮径する筒形状としているが、これに限定されず、例えば、横断面が多角形や楕円形等の形状とすることができる。また、口部壁13には、蓋体等を装着するためのねじ部13aが設けられている。
【0020】
図1、及び図2(a)、(b)に示すように、底壁11は、接地面となる円環状の外縁部11aと、外縁部11aの径方向内側で口部壁13側に凹となる凹部11bとを有する。凹部11bにおける中央域には、外層体10の内外を貫通し直線状に延在する、外気導入孔としてのスリット14が形成されている。
【0021】
また、底壁11の凹部11bには、スリット14の延在方向における中央の領域を、両側から挟み込むように配置された、口部壁13側に凹となる一対の挟み込み凹部17が形成されている。図2(a)に示すように、一対の挟み込み凹部17の深さは、径方向外側から内側に向けて徐々に深くなっている。また、図2(b)に示すように、一対の挟み込み凹部17は、平面視で略半円形状であり、スリット14を延長した直線Lに対して線対照形状とされている。
【0022】
また、本実施形態において、一対の挟み込み凹部17はそれぞれ、スリット14に平行、かつ、容器の中心軸線C方向に平行に延びる内側平面17aを有し、それぞれの内側平面17aでスリット14を両側から挟み込む構成としている。なお、本発明において、一対の挟み込み凹部17の形状は特に限定されるものではなく、スリット14の延在方向における中央領域を挟む形状であれば、必ずしも平面視で線対照形状である必要はない。
【0023】
また、スリット14の両端部14a、14bの外側には、スリット14の延長線Lに沿って延在する一対の補強リブ15a、15bが設けられている。ここで、スリット14及び一対の補強リブ15a、15bは、ブロー成形の割り金型による食い切りによって形成されるピンチオフ部に形成されている。すなわち、一対の補強リブ15a、15bは、割り金型にて外層体10と内層体20とを挟み込んで扁平に押し潰すことにより形成される。また、スリット14は、割り金型にてパリソンの底部中央域を食い切り、ブロー成形後に外層体10の底壁11を割り、内層体20を外層体10から剥離させることにより形成される。
【0024】
ここで、本実施形態においては、スリット14の両側に一対の挟み込み凹部17を有する構成としたため、図3(a)に示すように、ブロー成形の割り金型18には、当該挟み込み凹部17に対応する形状の挟み込み突起19が設けられることとなる。また、それぞれの挟み込み突起19は、挟み込み凹部17の内側平面17aに対応する内側平面19aを有している。そして、成形の過程で金型18を閉じる際には、図3(b)に示すように、挟み込み突起19の内側平面19aでパリソンPの外面を両側から挟み込むこととなる。これにより、型締めの際にパリソンPの傾きを補正して適切な角度で切断することができるので、ピンチオフ部の切断面における内層体20の厚さが、所期した通りの厚さとなる。その結果、外層体10から内層体20を剥離して形成されるスリット14の開口幅を所期した大きさに形成することができる。
【0025】
なお、例えば、補強リブ15a、15bに、一方側の側面から他方側に食い込む、補強用の食い込み部が設けられた構成である場合、当該食い込み部形成用のピンが金型に設けられ、当該ピンに押されてパリソンPが傾きそうになったとしても、少なくともスリット14の中央領域では挟み込み突起19によってパリソンPの傾きが補正されるため、スリット14の開口幅は所期した大きさに形成することができる。ここで、スリット14の開口幅は、スリット14の延在方向における中央領域で拡がり易いため、本発明における挟み込み凹部17は、少なくとも当該スリット14の中央領域を挟み込む構成としているものの、挟み込み凹部17の長さは特に限定されず、例えば、スリット14の長さよりも長い形状としてもよい。また、パリソンPの姿勢をより効果的に補正するため、挟み込み突起19の内側平面19aに対応する挟み込み凹部17の内側平面17aは、スリット14に平行、かつ、容器の中心軸線C方向に平行に延びることが好ましい。
【0026】
ブロー成形後に外層体10の底壁11を割り、スリット14を形成する方法としては、一対の補強リブ15a、15bを口部壁13側に向けて押圧する方法があり、これによれば、容易に外層体10の底壁11を割るとともに内層体20を外層体10から剥離させて、スリット14を形成することができる。この時、補強リブ15a、15bはスリット14の部分に比べて剛性が高いため、スリット14となる外層体10の亀裂が、補強リブ15a、15bの根元であるスリット14の両端部14a、14bでとどまり、所期した長さのスリット14を形成することができる。なお、本発明において、各補強リブ15a、15bは必須の構成ではなく、その形状、数、位置は特に限定されるものではない。
【0027】
本実施形態において、側壁12には、接着帯30が1本のみ設けられており、当該接着帯30は、一方の補強リブ15bの近接域から容器の中心軸線C方向に沿って延在し、口部壁13まで延びている。なお、接着帯30の終端部は、補強リブ15bに重なっていても良いし、補強リブ15bの手前で終端していても良い。本実施形態において、接着帯30は、スリット14の延長線Lに沿って、また、割り金型18によって形成される側壁12のパーティングラインに沿って延在し、接着帯30の底壁11側の終端部は、補強リブ15bの外端部に重なっている。接着帯30の長さ、幅、本数は特に限定されるものではなく適宜変更が可能である。さらに、接着帯30は、直線状に延在することに限らず、屈曲部や湾曲部を有していても良い。なお、本発明において、接着帯30は必須の構成ではなく、一対の補強リブ15a、15bのうち、一方の補強リブ15b側のみに設けても良いし、両側に設けても良い。本実施形態においては、一方の補強リブ15bの近接域に接着帯30を設けたことにより、当該補強リブ15bの接着性が強くなって、より亀裂が生じ難く、また、割れた場合においてもスクイズ時に開き難くなっている。
【0028】
本実施形態の二重容器1の口部には、注出キャップ40がねじ係合により装着されている。注出キャップ40は、口部壁13に係合保持され、注出栓41と、注出栓41にヒンジ42を介して連結され、当該注出栓41の開閉を行う蓋体43とを備える。なお、ヒンジ42を設けずに、蓋体43を別体として形成し、注出栓41にねじ係合やアンダーカット係合させる構成としてもよい。
【0029】
注出栓41は、口部壁13の外周面に対してアンダーカット係合する装着筒44と、装着筒44の上部を覆う隔壁45と、隔壁45から上方に立設し、内側が充填空間Mに繋がる注出筒46とを備える。注出筒46の下方には、円筒壁47が連なっており、円筒壁47の内周面には、周方向に間隔をあけて設けられる複数の縦リブ48を設けている。縦リブ48の径方向内側には、球状体49が配置され、縦リブ48の上端に設けた膨出部によって抜け止め保持されている。円筒壁47の下部には、下方に向けて縮径する傾斜壁47aを設けている。ここで、球状体49は、縦リブ48に沿って自重にて移動するものであり、図1に示すように二重容器1が起立姿勢にあるときは傾斜壁47aと全周にわたって当接して、内層体20の充填空間Mを封止している。
【0030】
蓋体43は、注出栓41の上方を覆う頂壁50の外縁部に周壁51を連結したものであり、周壁51はヒンジ42によって装着筒44に連結されている。また、頂壁50の下面には、注出筒46と液密に当接するシール筒52を設けている。また、シール筒52の径方向内側には、下方に向けて延びるピン53を設けている。ピン53は、球状体49が上方へ変位する際、上限に至る手前で球状体49に当接するように設けられている。これにより、輸送等によって球状体49が勢いよく上方に移動しても、縦リブ48の上端に設けた膨出部を越えて外れてしまうことがない。
【0031】
注出キャップ40を装着した二重容器1から内容物を吐出するにあたっては、蓋体43を開いて二重容器1を傾倒或いは倒立姿勢にすることで、球状体49は注出筒46側に変位し、充填空間M内の内容物は自重により傾斜壁47aの開口から縦リブ48の相互間を通り抜けて注出筒46より吐出される。この際、外層体10と内層体20との相互間にはスリット14を通して外気が導入されるので、外層体10はその形状を保ったまま、内層体20のみが減容することとなる。
【0032】
内容物の吐出が進んで残量が減ってくると、内容物全体の重量が少なくなることから、二重容器1を傾けるだけでは内容物が吐出され難くなる。そこで、側壁12を両側から挟むようにして外層体10をスクイズする。
【0033】
上述のように、スリット14は、外層体10と内層体20との相互間に外気を導入するものであるが、スクイズにより内容物を吐出する際には、内層体20を十分に押圧するために、スリット14から漏れ出す空気の量が出来る限り少ないことが好ましい。
【0034】
ここで、本実施形態の二重容器1にあっては、上述のように、スリット14の両側に一対の挟み込み凹部17を有する構成として、スリット14の開口幅を所期した大きさに形成することにより、スクイズ時に、外層体10と内層体20の間の空気がスリット14から漏れ出し難くなり、内層体20は十分に押圧されることになるので、自重では吐出され難くなった内容物も最後まで吐出させることができる。なお、押圧を解除すれば、外層体10がその剛性によって復元し、外層体10と内層体20との相互間にはスリット14を通じて外気が十分に導入される。よって、本発明の二重容器1によれば、内容物をその自重で吐出させることができ、しかも内容物の残量が少なくなった際には外層体10のスクイズによるスムーズな吐出を実現することができる。また、外気導入弁も不要であるため、コストの増大を招くこともない。なお、本実施形態の二重容器1にあっては、用途に応じて、初めから外層体10をスクイズして内容物を吐出することも可能である。
【0035】
また、本実施形態にあっては、スリット14の両側に、補強リブ15a、15bを設けたことにより、スリット14の両端部14a、14bの強度を高め、成形時、また、繰返し使用時にも、スリット14の両端部14a、14bから亀裂が進展することを防止することができる。これにより、外気導入孔としてのスリット14の長さを、所期した長さに形成することができる。その結果、スリット14の機能をより有効に発揮して、よりスムーズな内容物の吐出が可能となる。
【0036】
本実施形態の二重容器1にあっては、接着帯30を一方の補強リブ15bの近接域に設けたことにより、接着帯30を設けた側の補強リブ15bは接着性が強くなっているため、亀裂の発生、進展を防止することができ、スリット14を所望の長さに設定する効果を高めることができる。
【0037】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、口部壁13に打栓用の係合突起を設けて、ねじ係合ではなく、打栓により注出キャップをアンダーカット係合させる構成としても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 二重容器
10 外層体
11 底壁
11a 外縁部(接地面)
11b 凹部
12 側壁
13 口部壁
14 スリット
14a、14b スリットの端部
15a、15b 補強リブ
17 挟み込み凹部
17a 内側平面
18 割り金型
19 挟み込み突起
20 内層体
30 接着帯
40 注出キャップ
41 注出栓
42 ヒンジ
43 蓋体
44 装着筒
45 隔壁
46 注出筒
47 円筒壁
47a 傾斜壁
48 縦リブ
49 球状体
50 頂壁
51 周壁
52 シール筒
53 ピン
C 容器の中心軸線
L スリットに沿う延長線
M 充填空間
P パリソン
図1
図2
図3
図4