(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態>
本発明を実施するための形態の一例について説明する。
図1は、探査装置100を示す図である。探査装置100は、受入船1、門型構造物2及び保持体3を備える。
図2は、門型構造物2と保持体3を受入船1上に設置した状態を示す図である。図示した受入船1においては、右上が船尾であり、左下が船首である。以下の説明で用いる座標系では、受入船1の中心線と平行且つ水平方向の座標軸をX軸とし、X軸と垂直に交差する水平方向の座標軸をY軸とし、鉛直方向の座標軸をZ軸とする。従って、X−Y平面が水平面である。また、船尾から船首に向かう方向を+X方向とし、右舷から左舷に向かう方向を+Y方向とし、上向きを+Z方向とする。
【0009】
受入船1は、埋立予定水域に隣接した位置に停泊し、船体の中央に設けられた受入部11に土運船を受け入れる。受入部11は、平面視において船首側が開放されたコの字形に形成されており、土運船は受入船の船首側から受入部11に進入する。受入部11には船底が設けられておらず、土運船に積載された浚渫土は、受入部11の下方の水底に投下される。投下された浚渫土は、受入船1に備えられたポンプによって、埋立予定水域の水底に圧送される。
【0010】
門型構造物2は、桁21と支柱22を備える。桁21は、Y軸方向を長手方向とし、その両端は支柱22で支持される。甲板12の右舷側と左舷側には、X軸方向に延びる互いに平行なレール13が設けられている。支柱22の下端にはレール13に対応する車輪(図示省略)が設けられており、門型構造物2がX軸方向に走行する。桁21の上面には、Y軸方向に延びる横行レール23が設けられている。保持体3を吊り下げる台車31の底部には横行レール23に対応する車輪32が設けられており(
図3参照)、台車31がY軸方向に走行する。門型構造物2や台車31を走行させる動力としては、ウインチによる牽引や、モータによる車輪の駆動など、いかなる動力を用いてもよい。門型構造物2、レール13及び台車31により、クラブトロリ式門型(橋形)クレーンと同様の機能を有する第1移動機構20が構成される。第1移動機構20は、浚渫土が堆積される区域(土運船の船倉)の上方に保持体3が位置するように保持体3を支持するとともに保持体3を水平方向に移動させる。
【0011】
図3は、保持体3を示す図である。保持体3は、底版33と、底版33の中央に立てられた支柱34を有する。台車31の底部には、第2移動機構35が備えられている。第2移動機構35は、支柱34を上下方向(Z軸方向)に移動させることによって保持体3を上下方向(Z軸方向)に移動させる。第2移動機構35は、例えば、油圧シリンダや電動アクチュエータなどである。保持体3には、作業員が乗り込んだ場合に作業員の落下を防止する柵36が備えられている。
【0012】
保持体3には、複数の棒4が設けられている。複数の棒4は、保持体3に保持され、保持体3に対して上下方向に移動自在である。複数の棒4は、水平面上の座標を互いに異ならせて保持体3に保持されている。棒4は、樹脂や金属などで作製された部材であり、その下端が浚渫土中の異物に突き当たったときに撓みが生じない程度の剛性を有する。この例では、保持体3の右舷側と左舷側にそれぞれ5本の棒4が備えられているが、保持体3に備えられる棒4の数は、複数であればいくつでもよい。複数の棒4のX方向とY方向の間隔は、等間隔であることが望ましい。棒4の上端には、上端の視認性を高めるための加工が施されていることが望ましい。例えば、上端から数cm程度の部分を他の部分と異なる色で着色してもよいし、上端に発光ダイオードなどの発光体を設けてもよい。
【0013】
図4は、第3移動機構41を示す図(
図3のA部の拡大図)である。保持体3には、棒4を上下方向に移動させる第3移動機構41が備えられている。具体的には、底版33の上面に支柱42が設けられており、支柱42の上端には小型のウインチ43が設けられている。棒4の上端には、ウインチ43に巻き取られるロープ44の一端が連結されており、棒4は、長手方向を鉛直方向(Z軸方向)としてロープ44によって吊り下げられる。ウインチ43がロープ44を巻き取ると棒4が上昇し、ウインチ43がロープ44を繰り出すと棒4が下降する。
【0014】
図5は、案内部材45を示す図(
図3のB部の拡大図)である。保持体3には、棒4の移動方向を案内する案内部材45が備えられている。具体的には、案内部材45は、保持体3の底版33の側端部に設けられ、底版33と案内部材45との間に形成される空間に棒4が通される。この空間は、底版33及び案内部材45と棒4との間に摩擦抵抗が生じないように、棒4の断面よりもやや大きな断面を有する。そのため、棒4は上下方向に移動自在であり、且つ、棒4の揺動が抑えられる。
【0015】
保持体3には、第1移動機構20と第2移動機構35と第3移動機構41に制御信号を送信する制御装置5が備えられている。制御装置5は、例えば、移動距離の入力や、移動の開始や停止を指示するキーボードなどを備え、保持体3に乗り込んだ作業員が制御装置5を操作することによって第1移動機構20と第2移動機構35と第3移動機構41を制御する。
【0016】
次に、探査装置100による異物探査の仕組みについて説明する。土運船の船倉には、浚渫土が積載されている。浚渫土には、異物(セメント塊、木片、金属片、ごみなど)が混入している場合がある。浚渫土は主にヘドロ(水底に沈殿した有機物などからなる泥)であるため、ウインチ43により棒4を下降させると、棒4の自重により棒4の下端が浚渫土の中に貫入する。貫入する深さは浚渫土の成分や状態に依存し、下端が船倉の底部に到達する場合もあり、到達しない場合もあるが、浚渫土に異物が混入していない場合には、保持体3に保持された複数の棒4の下端が貫入する深さはほぼ同じとなる。本実施形態では、棒4の上端の高さを作業員が観測するが、浚渫土に異物が混入していない場合には、観測される複数の棒4の上端の高さはほぼ同じとなる。これに対して、浚渫土に異物が混入している場合には、棒4の下端が異物に突き当たると、その棒4の上端の高さは他の棒4の上端の高さよりも高くなるため、その棒4の位置に異物が存在する可能性があると判断することができる。以下の説明では、或る棒4の下端が異物に突き当たることによりその棒4の上端の高さが他の棒4の上端の高さよりも高くなることを「高止まり」と呼ぶ。
【0017】
次に、探査装置100による異物探査の手順について説明する。
図6は、保持体3の水平移動を示す図である。同図は、受入船1の受入部11に土運船6を進入させた状態を示す平面図であり、図の上方が受入船1の船尾側である。土運船6は、上部が開放された船倉61を備え、浚渫された浚渫土が船倉61に積載されている。土運船6の船倉61の左上隅を保持体3の初期位置と定め、初期位置に対するX軸方向とY軸方向の移動距離によって保持体3の水平面上の座標を表す。また、各棒4に予め固有の番号(この例では、1から10)を割り当てておく。異物の座標は、保持体3の水平面上の座標と高止まりした棒4の番号との組み合わせで表される。
【0018】
土運船6が受入船1の受入部11に進入すると、第1移動機構20により保持体3を初期位置に水平移動させる。次に、初期位置において、第2移動機構35により保持体3を下降させる。保持体3を下降させる高さは、保持体3の底版33が浚渫土に接触しない程度の高さである。次に、第3移動機構41により全ての棒4を下降させる。棒4の下降が停止したならば、高止まりした棒4の有無を目視で確認し、高止まりした棒4が存在する場合には、その棒4の座標を記録する。次に、第3移動機構41により棒4を上昇させ、第1移動機構20により保持体3を次の探査位置に水平移動させる。
【0019】
図7は、保持体3のY軸方向の水平移動を示す図である。白丸は、水平移動前の棒4を示し、黒丸は、水平移動後の棒4を示す。距離dは、棒4のY軸方向の間隔である。
図7(a)の例は、+Y方向に距離2dだけ保持体3を水平移動させた例である。
図7(b)の例は、+Y方向に距離d/2だけ保持体3を水平移動させた例である。この場合、
図7(a)の例と比べてY軸方向に2倍の密度で探査が行われる。
【0020】
保持体3を水平移動させたならば、再び棒4を下降させて探査を行う。
図6に示す経路で探査と水平移動を繰り返して、土運船6の船倉61全体の探査を行う。船倉61全体の探査が完了したならば、第2移動機構35により保持体を上昇させ、第1移動機構20により保持体を初期位置に水平移動させる。なお、保持体3の初期位置や水平移動の経路や一度に水平移動させる距離は、この例に限定されない。
【0021】
本実施形態によれば、複数の棒4の上端の高さを観測するだけで異物の有無と位置が判るので、浚渫土に含まれる異物を容易に探査することができる。
また、複数の棒4が水平面上の座標を互いに異ならせて保持体3に保持されているので、複数の棒4の上端の高さの比較により、異物の有無や位置を容易に判断することができる。
また、土運船6の船倉61の底部に舷側から中央部に向かって傾斜した部分がある場合であっても、異物の有無や位置を容易に判断することができる。
また、第1移動機構20を用いて保持体3を水平移動させることにより、土運船6の船倉61全体の探査を行うことができる。
【0022】
<変形例>
上記の実施形態を以下のように変形してもよい。また、複数の変形例を組み合わせてもよい。
<1>
保持体3又は棒4の水平面上の座標を記録する記録手段を探査装置100に備えるようにしてもよい。例えば、制御装置5にコンピュータを接続し、このコンピュータが、保持体3の初期位置を原点として、制御装置5に入力されたX座標及びY座標を原点の座標に加算して水平移動後の保持体の座標を算出し、算出された座標を記録する。そして、作業員が高止まりした棒4の番号をコンピュータに入力し、その番号を保持体の座標と対応付けて記録する。
【0023】
<2>
上記の記録手段が、複数の棒4の下端が浚渫土に貫入させられたときに、一の棒4の上下方向における位置が他の棒4の上下方向における位置よりも高い場合に、当該一の棒4の水平面上の座標を記録するようにしてもよい。例えば、棒4の上端の高さを自動的に計測し、その高さに基づいて棒4の高止まりをコンピュータが判定し、高止まりと判定した棒4の座標を記録するようにしてもよい。高止まりの判定は、例えば、複数の棒4の上端の高さを相互に比較し、或る棒4の上端の高さが他の棒4の上端の高さよりも所定値以上上回った場合に、その棒4の位置に異物が存在すると判定してもよい。棒4の上端の高さは、衛星航法システムや光学測量機などを用いて計測してもよい。
【0024】
<3>
棒4を動力で押し下げるようにしてもよい。例えば、第3移動機構41を構成するウインチ43の代わりに電動アクチュエータなどを設けて、棒4を強制的に浚渫土に押し込むようにしてもよい。この構成によれば、棒4の自重だけでは棒4が貫入しにくい性状の浚渫土の場合でも、異物を探査することができる。
【0025】
<4>
複数の棒4を保持した保持体3を埋立予定水域近傍の岸壁などに設けてもよい。例えば、土運船6を岸壁に係留し、複数関節のアームを有する重機(油圧ショベル、高所作業車など)のアームの先端に保持体3を取り付けて、この重機を第1移動機構20及び第2移動機構35として用いて異物の探査を行ってもよい。
また、自然に堆積した土砂の中に廃棄物などの異物が埋まっている場合がある。例えば、都市部の河川や用水路、排水路など、河床が比較的平坦な場所における異物の探査に本発明は好適である。つまり、本発明は、浚渫土に含まれる異物の探査に限定されず、自然に堆積した土砂に含まれる異物の探査にも適用できる。
【0026】
<5>
制御装置5は、受入船1の甲板12に設けられていてもよい。この場合、作業員が甲板12上で制御装置5を操作し、棒4の位置を甲板12上から観測するようにしてもよい。また、作業員が制御装置5を操作する代わりに、コンピュータで第1移動機構20、第2移動機構35、第3移動機構41を制御することにより、決められた移動量及び移動方向に従って保持体3や棒4を移動させるようにしてもよい。
【0027】
<6>
棒4の表面に、長手方向の距離を表す目盛が設けられていてもよい。目盛は、例えば、一定の長さ毎に交互に色を異ならせた塗色を棒4の表面に施したものなど、視認性の高いものが望ましい。
【0028】
<7>
高止まりした棒4を特定することは必須でなく、保持体3の座標だけを特定してもよい。なぜならば、保持体3の座標によって異物の位置を大まかに特定することができるからである。
【0029】
<8>
図8は、棒4の下端の変形例を示す図である。棒4Aは、下端が先細りの形状に形成された例である。浚渫土が硬いために棒4の下端が浚渫土の表層付近に留まってしまう場合、異物の探査が困難になるが、棒4Aによれば、一律な断面の棒4と比べて下端が浚渫土に貫入しやすいから、浚渫土が硬い場合でも異物を探査しやすくなる。
棒4Bは、下端が先太りの形状に形成された例である。棒4Bによれば、一律な断面の棒4と比べて下端の面積が広いから、一度の貫入工程で棒4と比べて広い範囲の探査を行うことができる。棒4Bは、浚渫土が軟らかい場合に好適である。
【0030】
棒4Cは、下端が網状に形成された例である。棒4Bは、棒4と比べて下端の面積が広いため、浚渫土に貫入しにくくなるが、棒4Cによれば、浚渫土の粒子や水分が網目を通り抜けるから、棒4Bと比べて下端が浚渫土に貫入しやすくなる。網目の大きさは、想定される異物が網目を通過しない程度の大きさに設定されている。
【0031】
また、棒4Cは、以下の効果も奏する。下降させた棒4の下端が異物に突き当たった後、棒4が異物を脇に押しのけながらさらに下降したり、棒4が横方向にぶれて異物の脇を通ったりしてしまうと、異物を発見できないおそれがある。これに対して、棒4Cは、棒4と比べて、その網状の形状により下端が異物の表面に留まりやすく異物からずれにくいから、異物が発見されやすくなる。また、棒4Cが浚渫土に貫入させられたときに、仮に異物が網目を通過したとしても、棒4Cを水面より高い位置に引き上げたときにその異物が網目に引っ掛かっていれば、目視により異物を発見することが可能となる。
【0032】
棒4Dは、下端が櫛状に形成された例である。棒4Dによれば、浚渫土の粒子や水分が櫛の歯と歯の間から横方向に流出するから、棒4Bと比べて下端が浚渫土に貫入しやすくなる。櫛の歯の間隔は、想定される異物が歯と歯の間に噛み込まれない程度の間隔に設定されている。また、棒4Cは、棒4と比べて、その櫛状の形状により下端が異物の表面に留まりやすく異物からずれにくいから、異物が発見されやすくなる。
【0033】
浚渫土の性状に応じて棒4、4A、4B、4C、4Dのいずれかを選択して保持体3に取り付けるようにしてもよい。また、棒4A、4B、4C、4Dの形状のアタッチメントを浚渫土の性状に応じて選択して棒4の下端に取り付けるようにしてもよい。また、網目の大きさの異なる複数種類の棒4Cを用意しておき、異物の大きさに応じた棒4Cを選択するようにしてもよい。また、櫛の歯の間隔の異なる複数種類の棒4Dを用意しておき、異物の大きさに応じた棒4Dを選択するようにしてもよい。