特許第6553385号(P6553385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553385部品製造方法、及び、それを用いた成形体製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553385
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】部品製造方法、及び、それを用いた成形体製造方法。
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   B29C45/14
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-65967(P2015-65967)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-185626(P2016-185626A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2018年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】515084742
【氏名又は名称】株式会社染宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大滝 喜治
(72)【発明者】
【氏名】森島 隆人
(72)【発明者】
【氏名】原田 博明
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−047732(JP,A)
【文献】 特開昭63−060719(JP,A)
【文献】 特開2009−136780(JP,A)
【文献】 特公平05−013995(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート成形で金型内に配置され、前記金型内に射出される射出成形材料が形成する筐体を貫くように一体化され、前記筐体を貫くことによって前記射出成形材料で覆われる領域を有する部品を製造する部品製造方法であって、
前記部品は、中央部で段状に折れ曲がった細長い板状の部材であり、
前記部品の前記射出成形材料で覆われる領域である前記中央部以外の領域をマスキング材料によりマスキングするマスキング工程と、
前記部品の前記中央部を液状の接着剤に浸漬する接着剤浸漬工程と、
前記部品を前記接着剤から取り出し、該部品の長手方向に延びる軸線を回転中心軸線として所定時間回転させる回転工程と、
前記部品に付着させた前記接着剤を乾燥させる接着剤乾燥工程とを備えていることを特徴とする部品製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の部品製造方法であって、
前記回転工程で、浸漬した前記部品を回転させつつ前記接着剤から取り出すことを特徴とする部品製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の部品製造方法であって、
前記接着剤浸漬工程で、前記接着剤が撹拌状態であることを特徴とする部品製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の部品製造方法であって、
前記マスキング材料は、ワックスであることを特徴とする部品製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の部品製造方法であって、
前記マスキング工程は、前記部品の前記中央部以外の領域を溶融した前記ワックスに浸漬するワックス浸漬工程と、浸漬させた前記部品を前記ワックスから取り出し乾燥させるワックス乾燥工程とを有することを特徴とする部品製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の部品製造方法であって、
前記接着剤が乾燥した後、前記部品から前記マスキング材料を剥離する剥離工程を備えていることを特徴とする部品製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の部品製造方法と、
前記部品を金型内に配置し、前記部品の前記中央部を覆うように前記射出成形材料を前記金型内に射出し、前記射出成形材料で形成される前記筐体と前記部品とを接着して一体化する射出成形工程とを備えていることを特徴とする成形体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形において金型内で射出成形材料で形成される筐体と一体化される部品の製造方法、及び、その部品を用いた成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの産業分野において、樹脂製の筐体とその筐体を貫く金属端子とを有する成形体が用いられている。そのような成形体の製造方法としては、金型内に金属端子等を予め配置した後、その金型内に樹脂等の射出成形材料を射出し、樹脂で形成された筐体と金属端子とを一体化するインサート成形が知られている。
【0003】
この種の成形体のうち、自動車部品等の過酷な環境で使用される成形体では、筐体や金属端子等の部品の耐久性とともに、筐体と金属端子との間における気密性が要求される。気密性が十分でないと、金属端子と筐体との間から成形体の内部に湿気等が浸入し、成形体の内部に配置された電子回路等に腐食等が生じてしまうためである。
【0004】
このような問題を解決するための方法としては、インサート成形において、筐体を形成する材料を金型内に射出する前に、金属端子に対して接着剤を塗布しておき、筐体と金属端子との間を接着剤で封止して気密性を高めるという方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−80555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のような従来の方法では、接着剤の塗布方法として浸漬塗布、刷毛塗り、スプレー塗布、スクリーン印刷といった塗布方法が採用されている。
【0007】
しかし、浸漬塗布や刷毛塗りといった塗布方法では、接着剤を均一に塗布することが難しいという問題があった。接着剤が均一に塗布されていない場合、接着剤が十分に塗布されていなかった領域で剥離が生じたり、接着剤が過剰に塗布された領域で接着剤と射出される材料との収縮率の差から固化の際に隙間が生じたりしてしまい、成形体の気密性を十分に確保することができない。
【0008】
また、スプレー塗布やスクリーン印刷といった塗布方法では、接着剤を均一に塗布することは可能であるものの、製造工程が複雑化してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、簡易な工程で、部品の所望の領域に対して適切な量の接着剤を均一に塗布することができる部品製造方法及びそれを用いた成形体製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の部品製造方法は、インサート成形で金型内に配置され、金型内に射出される射出成形材料が形成する筐体を貫くように一体化され、筐体を貫くことによって射出成形材料で覆われる領域を有する部品を製造する部品製造方法であって、部品は、中央部で段状に折れ曲がった細長い板状の部材であり、部品の射出成形材料で覆われる領域である中央部以外の領域をマスキング材料によりマスキングするマスキング工程と、部品の中央部を液状の接着剤に浸漬する接着剤浸漬工程と、部品を接着剤から取り出し、その部品の長手方向に延びる軸線を回転中心軸線として所定時間回転させる回転工程と、部品に付着させた接着剤を乾燥させる接着剤乾燥工程とを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の部品製造方法では、インサート成形で射出成形材料に覆われる領域以外の領域に対してマスキングを施す。このマスキングという簡易な工程によって、インサート成形を行った際に射出成形材料で形成された筐体を貫く部分(すなわち、射出成形材料に覆われる部分)を露出させて、その部分に接着剤を塗布することができる。
【0012】
また、本発明の部品製造方法では、マスキングを施した部品を液状の接着剤に浸漬して接着剤を付着させた後、接着剤から取り出した後に所定時間回転を維持する。この浸漬と回転という簡易な工程によって、部品から余分な接着剤を除去して塗布する接着剤の量を適切なものとしつつ、部品に付着した接着剤の厚さの均一化を行うことができる。
【0013】
また、本発明の部品製造方法においては、回転工程で、浸漬した部品を回転させつつ接着剤から取り出すことが好ましい。
【0014】
浸漬させた状態で部品を回転させれば、接着剤の粘度や濃度が十分でない場合にも、部品に接着剤を十分に絡みつかせて塗布することができる。
【0015】
また、本発明の部品製造方法においては、接着剤浸漬工程で、接着剤が撹拌状態であることが好ましい。
【0016】
液状の接着剤としては、接着剤をアセトン等の溶剤によって液状にしたものが使用される場合がある。そのような接着剤では、沈殿等の影響で場所によって濃度や粘度が変化してしまうおそれがある。そこで、接着剤を撹拌状態とすれば、濃度や粘度を一定に保つことができるので、塗布される接着剤をより均一にすることができる。
【0017】
また、本発明の部品製造方法においては、マスキング材料は、ワックスであることが好ましい。具体的には、マスキング工程として、部品の中央以外の領域を溶融したワックスに浸漬するワックス浸漬工程と、浸漬させた部品をワックスから取り出し乾燥させるワックス乾燥工程とを有するようにするとよい。
【0018】
ワックスは容易に溶融させることができ、溶融したワックスは塗布が容易であり、剥離にも特殊な機械を用いる必要がないので、部品のマスキングを行うマスキング材料としてワックスを用いれば、他のマスキング材料を用いた場合よりも、製造工程をより簡易なものにすることができる。
【0019】
また、本発明の部品製造方法においては、接着剤が乾燥した後、部品からマスキング材料を剥離する剥離工程を備えていることが好ましい。
【0020】
マスキング材料の剥離を行っておくことにより、すぐに部品をインサート成形に使用することができる。
【0021】
また、上記目的を達成するために、本発明の成形体製造方法は、上記の部品製造方法で製造された部品を金型内に配置し、部品の中央部を覆うように射出成形材料を金型内に射出し、射出成形材料で形成される筐体と部品とを接着して一体化する射出成形工程とを備えていることを特徴とする。
【0022】
上記の部品製造方法で製造された部品は、適切な量の接着剤が均一に塗布されている。そのため、その部品の接着剤が塗布された領域を樹脂等の射出成形材料で覆うようにしてインサート成形を行えば、射出成形材料と部品とが接着剤によって接着されるので、それらの間において十分な気密性を有する成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る成形体の金属端子周辺の形状を拡大して示す断面図。
図2図1の接着剤の塗布された金属端子及び成形体を製造する工程を示すフローチャート。
図3図2のフローチャートにおけるマスキング工程で行われる処理を示す模式図であり。図3Aはワックス浸漬工程を示し、図3Bはワックス乾燥工程を示す。
図4図2のフローチャートにおける接着剤浸漬工程及び回転工程で行われる処理を示す模式図であり、図4Aは金属端子を接着剤に浸漬した状態、図4Bは接着剤から金属端子を取り出す直前の状態、図4Cは接着剤から金属端子を取り出した後の状態を示す。
図5図2のフローチャートにおける射出成形工程を示す模式図であり、図5Aは金型内に金属端子を配置した状態、図5Bは金型内に射出成形材料を注入した状態、図5Cは金型から成形体を取り出した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
図1に示すように、成形体Mは、射出成形材料で形成された筐体1と、筐体1を貫くようにして配置された複数の金属端子2(部品)とで構成されている。
【0026】
筐体1は、筒状の側壁部1aと、側壁部1aの内部の空間を上下に分割する隔壁部1bとを有している。そのため、筐体1の内部の空間は、隔壁部1bによって、第1空間1cと第2空間1dとに区切られている。
【0027】
金属端子2は、中央部2aで段状に折れ曲がった細長い板状の部材であり、中央部2aには後述する方法によって接着剤層7aが形成されている。中央部2aは、筐体1の隔壁部1bを貫くようにして配置されている。すなわち、中央部2aは、筐体1を形成する射出成形材料によって覆われている。
【0028】
筐体1と金属端子2との間は、金属端子2の中央部2aに塗布された接着剤層7a(すなわち、接着剤層7aを形成する接着剤7)で封止されているので、筐体1の第1空間1c及び第2空間1dの一方から他方に向かって、湿気等を含む気体が浸入することがない。
【0029】
図2は、接着剤7の塗布された金属端子2及び成形体Mを製造する工程を示すフローチャートであり、図2におけるSTEP01〜STEP08が、接着剤7の塗布された金属端子2を製造する工程である部品製造工程である。
【0030】
まず、図3に示すように、まず、金属端子2の一方側の端部(以下、「被覆側端部2b」という。)にワックス3(マスキング材料)によって、マスキング層3aを形成し、マスキングを施す(図2のSTEP01,STEP02/マスキング工程)。
【0031】
具体的には、マスキング工程では、まず、図3Aに示すように、金属端子2の被覆側端部2bとは反対側の端部を、第1治具4に保持させる。本実施形態では、複数の金属端子2に同時にマスキング層3aを形成するために、第1治具4として複数の金属端子2を保持し得るものを用いている。なお、第1治具4として金属端子2を1つだけ保持する治具を用いてもよい。
【0032】
その後、第1治具4を移動させ、金属端子2の射出成形材料で覆われる領域(中央部2a)以外の領域(被覆側端部2b)を、電熱器5で加熱して耐熱容器である第1容器6の内部で溶融させたワックス3に浸漬する(図2のSTEP01/ワックス浸漬工程)。
【0033】
その後、図3Bに示すように、第1治具4を移動させ、浸漬させた金属端子2をワックス3から取り出し乾燥させ、金属端子2の被覆側端部2bにワックス3によるマスキング層3aを形成する(図2のSTEP02/ワックス乾燥工程)。
【0034】
なお、ワックスとしては、例えば、石油ワックスであるパラフィンワックス等を用いる。
【0035】
次に、図4Aに示すように、金属端子2の中央部2a及び被覆側端部2bを、液状の接着剤7に浸漬する(図2のSTEP03/接着剤浸漬工程)。
【0036】
具体的には、接着剤浸漬工程では、まず、金属端子2の被覆側端部2bとは反対側の端部を第2治具8に保持させる。第2治具8は、保持した金属端子2を、金属端子2の長手方向を軸線として回転させることができるものである。
【0037】
その後、第2治具8を移動させ、金属端子2の射出成形材料で覆われる領域(中央部2a)、及び、マスキングを施した領域(被覆側端部2b)を、第2容器9の内部の液状の接着剤7に浸漬する。接着剤7としては、例えば、ニトリルゴム、プロロクレンゴム、SBR、合成樹脂等を主成分とし、ケトン系溶剤、アセトン、MEK、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール等を溶剤として用いる。
【0038】
接着剤浸漬工程において、第2容器9内の接着剤は、濃度や粘度を一定に保つために、第2容器9の下に配置されている磁力誘導攪拌機である攪拌機10で撹拌状態とされている。なお、攪拌機10としては、他の形式の攪拌機を用いてもよい。
【0039】
次に、図4B及び図4Cに示すように、接着剤7に浸漬した金属端子2を、接着剤7を絡み付かせるために回転させつつ接着剤7から取り出し、付着した接着剤7の厚さを均一にするために所定時間回転を維持する(図2のSTEP04〜06/回転工程)。
【0040】
具体的には、回転工程では、まず、図4Bに示すように、接着剤浸漬工程で接着剤7に浸漬した金属端子2を、接着剤7の中で、第2治具8を介して金属端子2の長手方向を軸線として回転させる(図2のSTEP04)。この回転により、接着剤7の粘度や濃度が十分でない場合にも、接着剤7を金属端子2に十分に絡み付かせることができる。
【0041】
その後、図4Cで示すように、回転を維持したまま、第2治具8を上方に移動させ、金属端子2を接着剤7から引き上げる(図2のSTEP05)。
【0042】
その後、金属端子2の回転を所定時間維持し、回転を停止する(図2のSTEP06)。この回転により、金属端子2から余分な接着剤を除去して塗布する接着剤7の量を適切なものとしつつ、金属端子2に付着した接着剤7の厚さの均一化が行われる。例えば、引き上げた直後に金属端子2の中央部2aの段差部分に接着剤7が溜まっていたとしても、この回転によってその段差部分から余分な接着剤7が除去される。
【0043】
回転工程において、回転速度及び回転時間は、接着剤7の種類、粘度、濃度や形成する接着剤層7aの厚さに応じて適宜設定すればよい。また、浸漬した状態における回転速度と引き揚げた後の回転速度は、同じ速度でもよいし異なる速度でもよい。
【0044】
次に、金属端子2に形成した接着剤層7a(すなわち、金属端子2に付着させた接着剤7)を乾燥させる(図2のSTEP07/接着剤乾燥工程)。
【0045】
具体的には、例えば、回転工程が終了した状態のまま乾燥させてもよいし、金属端子2の被覆側端部2bとは反対側の端部を他の治具に保持させて乾燥させてもよい。その際に用いる治具としては、金属や樹脂で形成した専用の治具でもよいが、金属端子2の被覆側端部2bとは反対側の端部を差し込めるもの(例えば、発泡スチロール等)を用いてもよい。
【0046】
次に、接着剤層7aが乾燥した後、金属端子2からマスキング層3a(すなわち、ワックス3)を剥離する(図2のSTEP08/剥離工程)。
【0047】
なお、このとき、中央部2a以外の領域に接着剤7が付着していた場合には、溶剤を用いてその部分の接着剤7を除去する。
【0048】
以上の工程により、中央部2aに接着剤層7aが形成された(すなわち、接着剤7が塗布された)金属端子2が製造される。
【0049】
以上の工程によって製造された金属端子2は、ワックス3によるマスキング層3aの形成という簡易な工程によって、インサート成形を行った際に射出成形材料で形成された筐体1を貫く部分(すなわち、射出成形材料に覆われる部分)を露出させているので、その部分に接着剤層7aが形成された(すなわち、接着剤7が塗布された)ものとなる。
【0050】
また、金属端子2は、浸漬と回転という簡易な工程によって、余分な接着剤7が除去されて塗布する接着剤の量が適切なものとなり、形成された接着剤層7a(すなわち、付着した接着剤7)の厚さも均一なものとなる。
【0051】
図2は、接着剤7の塗布された金属端子2及び成形体Mを製造する工程を示すフローチャートであり、図2におけるSTEP09〜STEP11が、金属端子2を用いてインサート成形を行い、成形体Mを製造する工程(射出成形工程)である。
【0052】
射出成形工程においては、まず、図5Aに示すように、上記の部品製造工程で製造された金属端子2の一方の端部を、金属端子2の中央部2aが露出するように、金型11の固定側金型11aに形成されている金属端子挿入部11a1に挿入する。その後、可動側金型11bを、可動側金型11bの金属端子挿入部11b1に金属端子2の他方の端部が挿入され、且つ、挿入後に金属端子2の中央部2aが露出するように、下降させる(図2/STEP09)。
【0053】
この作業によって、金属端子2は、固定側金型11aの筐体形成部11a2と可動側金型11bの筐体形成部11b2とで形成された空間の内部で、中央部2a(すなわち、接着剤層7aが形成されている部分)のみが露出した状態になる。
【0054】
その後、図5Bに示すように、固定側金型11aの筐体形成部11a2と可動側金型11bの筐体形成部11b2とで形成された空間に対して、可動側金型11bに形成された注入孔11b3から樹脂12(射出成形材料)を注入して、筐体1を射出成形する(図2のSTEP10)。
【0055】
この作業によって、金属端子2の中央部2aは樹脂12によって覆われ、金属端子2は、樹脂12で形成された筐体1と接着される。その結果、金属端子2は筐体1を貫くように一体化され、成形体Mが製造される。
【0056】
最後に、図5Cに示すように、成形体Mを金型11から取り出す(図2のSTEP11)。
【0057】
以上の工程により、金属端子2が筐体1を貫くように配置された成形体Mが製造される。
【0058】
以上の工程によって製造された成形体Mは、適切な量の接着剤7が均一に塗布された金属端子2の中央部2aを樹脂12で覆うようにしてインサート成形されたものであるので、樹脂12で形成された筐体1と金属端子2とが接着剤7で強固に接着されたものとなる。その結果、筐体1の側壁部1aの内部で隔壁部1bによって形成された第1空間1c及び第2空間1dの一方から他方に向かって、湿気等を含む気体が浸入することがない。
【0059】
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではない。
【0060】
例えば、上記実施形態では、マスキング材料としてワックス3を用いている。これは、ワックスは容易に溶融させることができ、溶融したワックスは塗布が容易であり、剥離にも特殊な機械を用いる必要がないためである。しかし、本発明におけるマスキング材料はワックスに限定されるものではなく、他の材料を用いてもよい。例えば、マスキングテープ等を用いてマスキングを施してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、接着剤7の乾燥後、インサート成形を行う前に、マスキング層3aの剥離を行っている。しかし、マスキングは部品の所望していない領域への接着剤の付着を防止するためのものであるので、例えば、インサート成形の後にマスキングの剥離を行ってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…成形体、1…筐体、1a…側壁部、1b…隔壁部、1c…第1空間、1d…第2空間、2…金属端子(部品)、2a…中央部、2b…被覆側端部、3…ワックス(マスキング材料)、3a…マスキング層、4…第1治具、5…電熱器、6…第1容器、7…接着剤、7a…接着剤層、8…第2治具、9…第2容器、10…攪拌機、11…金型、11a…可動側金型、11a1…端子挿入部、11a2…筐体形成部、11b…固定側金型、11b1…端子挿入部、11b2…筐体形成部、11b3…注入孔、12…樹脂(射出成形材料)、M…成形体。
図1
図2
図3
図4
図5