(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の典型的な実施形態の幾つかの例を説明する。なお、この明細書にて引用された文献の内容や公知技術を、以下の実施形態に適宜援用することができる。
【0012】
実施形態の眼科装置は、巡回健診や在宅医療のような移動を伴う医療形態において使用される。つまり、眼科装置は、健康診断会場や患者宅や医療機関など様々な位置に移動される。眼科装置により取得された各被検者(及び各被検眼)のデータ(検査データ)は、読影センター等の医療機関に送られて眼科医による読影に供される。読影の結果は、被検者ごとの登録先(自宅や医療機関(かかりつけ医等))に送られる。
【0013】
眼科装置は、被検眼の光学的な検査に用いられる。眼科装置は、眼科撮影装置としての機能、及び/又は、眼科測定装置としての機能を有する。眼科撮影装置としては、光干渉断層計(OCT装置)、眼底カメラ、走査型レーザ検眼鏡などがある。また、眼科測定装置としては、眼屈折検査装置、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザなどがある。更に、眼科装置は、撮影画像や測定データを解析するためのアプリケーションを含んでいてもよい。以下の実施形態では、光干渉断層計として機能する眼科装置について説明するが、他の機能を具備する眼科装置に対しても実施形態に係る構成が同様に適用される。
【0014】
実施形態では、低コヒーレンス光源と分光器が搭載された、いわゆるスペクトラルドメイン(Spectral Domain)タイプのOCTを用いた光干渉断層計について説明するが、スペクトラルドメイン以外のタイプ、たとえばスウェプトソース(Swept Source)タイプのOCTの手法を用いた光干渉断層計に対してこの発明を適用することも可能である。スウェプトソースOCTとは、被写体に照射される光の波長を走査(波長掃引)し、各波長の光の反射光と参照光とを重ね合わせて得られる干渉光を順次に検出してスペクトル強度分布を取得し、それに対してフーリエ変換を施すことにより被写体を画像化する手法である。
【0015】
〈第1の実施形態〉
[構成]
実施形態に係る眼科装置の構成について説明する。
図1に示す眼科装置1は、光学ユニット10と、コンピュータ100と、ユーザインターフェイス(UI)200と、測位信号受信部300とを有する。
【0016】
光学ユニット10、コンピュータ100、ユーザインターフェイス200及び測位信号受信部300は一体的に(つまり単一の筐体内に)設けられていてよい。或いは、これらは2つ以上の筐体内に分散配置されていてもよい。その場合、眼科装置1の一部が他の装置に設けられていてよい。たとえば、コンピュータ100の一部又は全部を、パーソナルコンピュータや携帯端末(タブレット型コンピュータ、携帯電話、スマートフォン等)に設けることができる。また、ユーザインターフェイス200の一部又は全部を、パーソナルコンピュータ、携帯端末、テレビ受像機、スマートテレビなどに設けることができる。
【0017】
〔光学ユニット10〕
光学ユニット10は、OCT計測を行うための光学系と、それに含まれる光学素子を駆動する機構とを備える。光学系は、光源11からの光を測定光と参照光とに分割し、測定光の被検眼Eからの戻り光と参照光とを干渉させ、その干渉光を検出する。この光学系は、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、低コヒーレンス光(広帯域光)を利用して干渉光を生成し、この干渉光を分光器で検出するように構成される。スペクトル成分の検出結果(検出信号)はコンピュータ100に送られる。
【0018】
スウェプトソースタイプのOCTが適用される場合、低コヒーレンス光源の代わりに波長掃引光源が設けられ、分光器の代わりにバランスドフォトダイオード等が設けられる。一般に、光学ユニット10は、OCTのタイプに応じた公知の構成を備えてよい。また、OCT以外の機能を有する眼科装置が適用される場合、この眼科装置は、その機能(撮影機能、測定機能等)に応じた公知の構成を備えてよい。
【0019】
光源11は広帯域の低コヒーレンス光を出力する。この低コヒーレンス光は、たとえば、近赤外領域の波長帯(約800nm〜900nm程度)を含み、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する。なお、不可視光(たとえば1040〜1060nm程度の中心波長を有する近赤外光)を低コヒーレンス光として用いてもよい。光源11は、スーパールミネセントダイオード(Super Luminescent Diode:SLD)や、LEDや、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)等の光出力デバイスを含む。
【0020】
光源11から出力された低コヒーレンス光は、コリメートレンズ12により平行光束とされてビームスプリッタ13に導かれる。ビームスプリッタ13は、たとえば、所定割合の光を反射し、残りを透過させるハーフミラーである。ビームスプリッタ13は、コリメートレンズ12からの平行光束を測定光と参照光とに分割する。
【0021】
測定光とは被検眼Eに照射される光である(信号光などとも呼ばれる)。測定光の光路(測定光路)を形成する光学素子群は測定アームと呼ばれる(サンプルアームなどとも呼ばれる)。参照光とは、測定光の戻り光に含まれる情報を干渉信号として抽出するための基準となる光である。参照光の光路(参照光路)を形成する光学素子群は参照アームと呼ばれる。
【0022】
参照光路の一端はビームスプリッタ13であり、他端は参照ミラー14である。ビームスプリッタ13を透過した成分からなる参照光は、参照ミラー14により反射されてビームスプリッタ13に戻ってくる。参照ミラー14は、
図2に示す参照ミラー駆動部14Aにより、参照光の進行方向に沿って移動される。それにより、参照光路の長さが変更される。なお、参照光路の長さを変更する構成の代わりに、或いはこの構成に加えて、測定光路の長さを変更する構成を設けることができる。測定光路の長さの変更は、たとえば、入射する測定光を逆方向に向けて反射するコーナーキューブと、このコーナーキューブを移動させるための機構とにより実現される。
【0023】
ビームスプリッタ13に反射された成分からなる測定光は、測定光路に対して傾斜配置された固定ミラー15により偏向されてスキャナ16に導かれる。スキャナ16は、たとえば、2軸光スキャナ、又は一対の1軸光スキャナである。つまり、スキャナ16は、測定光を2次元的に偏向可能である。スキャナ16は、たとえば、互いに直交する方向に偏向可能な2つのミラーを含むミラースキャナである。このミラースキャナは、たとえばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラースキャナやガルバノスキャナである。
【0024】
スキャナ16から出力される測定光は、2次元的に偏向されたコリメート光である。この測定光は、リレーレンズ17により集束光とされ、眼底Efと共役な面(眼底共役面)Pcにおいて空中結像される。更に、測定光は、合焦レンズとしての機能を有する対物レンズ19により再び集束光とされて被検眼Eに入射する。また、後述の視度補正レンズ27が測定光路に配置されている場合、測定光は、対物レンズ19を経由した後、視度補正レンズ27により屈折されて被検眼Eに入射する。
【0025】
対物レンズ19と鏡筒部19Aは、
図2に示す鏡筒駆動部19Bにより、測定光路に沿って移動される。対物レンズ19と鏡筒部19Aは、被検眼Eの屈折力に応じて光軸方向に移動される。それにより、眼底共役面Pcが眼底Efと共役な位置に配置される。その結果、測定光は、スポット光として眼底Efに投射される。なお、対物レンズ19とは別に合焦レンズを設けることも可能である。また、眼底共役面Pcは、後述のダイクロイックミラー18と対物レンズ19との間に配置されている。
【0026】
視度補正レンズ27は、合焦レンズと同様に被検眼Eに対する測定光の合焦位置を変更するものであるが、たとえば強度近視眼のように極端な屈折力を有する被検眼に対処するために測定光路に配置される光学素子である。視度補正レンズ27は、
図2に示すレンズ駆動部27Aにより測定光路に対して挿入/退避される。
【0027】
眼底Efに照射された測定光は、眼底Efの様々な深さ位置において散乱・反射される。眼底Efによる測定光の後方散乱光(戻り光)は、往路と同じ経路を逆向きに進行してビームスプリッタ13に導かれる。
【0028】
ビームスプリッタ13は、測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを干渉させる。このとき、参照光路の長さとほぼ等しい距離を経由した戻り光の成分のみが、つまり参照光路の長さに対して可干渉距離以内の範囲からの後方散乱光のみが、参照光と実質的に干渉する。ビームスプリッタ13を介して生成された干渉光は、分光器20に導かれる。分光器20に入射した干渉光は、回折格子21により分光(スペクトル分解)され、レンズ22を介してイメージセンサ23の受光面に照射される。
【0029】
イメージセンサ23は、たとえばラインセンサ又はエリアセンサであり、分光された干渉光の各スペクトル成分を検出して信号(検出信号)を生成し、これをコンピュータ100に送る。
【0030】
リレーレンズ17と眼底共役面Pcとの間の位置には、ダイクロイックミラー18が傾斜配置されている。ダイクロイックミラー18は、近赤外帯域の測定光を透過させ、可視帯域の光を反射するように構成されている。
【0031】
ダイクロイックミラー18を介して測定光路から分岐した光路には、フラットパネルディスプレイ(FPD)25と、レンズ26とが設けられている。フラットパネルディスプレイ25は、レンズ26を介して眼底共役面Pcと共役な位置(よって、眼底Efと共役な位置)に配置されている。フラットパネルディスプレイ25は、制御部110による制御を受けて情報を表示する。フラットパネルディスプレイ25に表示される情報として、被検眼Eに対して提示される各種の視標がある。このような視標の例として、自覚式視力検査用の視標(ランドルト環など)や、被検眼Eを固視させるための固視標などがある。
【0032】
フラットパネルディスプレイ25から出力された可視光は、レンズ26を介してダイクロイックミラー18に反射され、対物レンズ19を介して被検眼Eに入射し、眼底Efに到達する。それにより、この可視光に基づく像(たとえば視標像)が眼底Efに投影される。
【0033】
測定光及び/又は参照光の特性を変換するために、たとえば光アッテネータや偏波コントローラを設けることが可能である。また、被検眼Eを撮影してその正面画像を取得するための正面画像取得光学系を設けることが可能である。この正面画像は、前眼部又は眼底Efの画像である。正面画像取得光学系は、測定光路から分岐した光路を形成するものであり、たとえば従来の眼底カメラ又はSLOと同様の光学系を含む。
【0034】
正面画像取得光学系が設けられる場合、アライメント用の視標を被検眼Eに投影する光学系を更に設けることができ、従来の眼底カメラ等と同様に、手動又は自動でアライメントを行うことができる。なお、アライメント時には、ユニット駆動部10Aによって光学ユニット10が移動される。更に、フォーカシング用の視標を眼底Efに投影する光学系を更に設けることができ、従来の眼底カメラ等と同様に、手動又は自動でフォーカシングを行うことができる。フォーカシング時には、視標投影光学系と合焦レンズ(対物レンズ19等)とが移動される。更に、正面画像取得光学系により得られる動画像に基づいて被検眼Eの動きを検出し、それに合わせて光学ユニット10をリアルタイムで移動させることができる(オートトラッキング)。
【0035】
〔コンピュータ100〕
コンピュータ100は、各種の演算や制御を実行する。コンピュータ100は、
図2に示す制御部110、画像形成部120、データ処理部130及び通信部140を含む。これらについては後述する。
【0036】
コンピュータ100はプロセッサを含む。本明細書において「プロセッサ」は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。制御部110は、たとえば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。コンピュータ100は、更に、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含む。
【0037】
(ユーザインターフェイス200)
コンピュータ100にはユーザインターフェイス200が接続されている。ユーザインターフェイス200は、表示部210と操作部220とを含む。表示部210は、フラットパネルディスプレイ等の表示デバイスを含む。操作部220は、眼科装置1の筐体や外部に設けられたボタン、キー、ジョイスティック、操作パネル等の操作デバイスを含む。また、操作部220は、眼科装置1に接続されたパーソナルコンピュータ等の操作デバイス(マウス、キーボード、トラックパッド、ボタン、タッチパネル等)を含んでよい。
【0038】
表示部210と操作部220は、たとえばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを含んでよい。また、ユーザインターフェイス200は、情報提示と操作入力とを行うためのグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)を含んでよい。
【0039】
被検者識別情報を入力するためにユーザインターフェイス200を使用することができる。たとえば、表示部210に表示された画面に被検者識別情報を入力するために操作部220を用いることができる。なお、被検者識別情報の入力態様はこれに限定されない。たとえば、被検者識別情報が記録された媒体(患者カード等)に対応したリーダ(読取装置)を利用することができる。
【0040】
(測位信号受信部300)
測位信号受信部300は、測位システムからの信号を受信する。測位システムとしては、航法衛星(及び地上局)からの電波信号に基づいて現在位置を測定する航法衛星システム(Navigation Satellite System:NSS)や、地上局からの電波信号に基づいて現在位置を測定するシステムがある。測位システムの典型的な例として、グローバルポジショニングシステム(GPS)、ガリレオ(Galileo)、グロナス(GLObal Navigation Satellite System:GLONASS)などがある。測位信号受信部300は、1以上の測位システムからの信号を受信可能である。測位信号受信部300は、従来のGPS受信器等と同様に、アンテナや回路を含む。
【0041】
〔制御系・データ処理系〕
眼科装置1の制御系及びデータ処理系について説明する。制御系及びデータ処理系の構成例を
図2に示す。
【0042】
(制御部110)
制御部110は、情報を記憶する機能と、演算や制御を行う機能とを含む。制御部110は、主制御部111と記憶部112を備える。
【0043】
(主制御部111)
主制御部111は、眼科装置1の各部の制御を行う。たとえば、主制御部111は、ユニット駆動部10A、光源11、参照ミラー駆動部14A、スキャナ16、鏡筒駆動部19B、イメージセンサ23、フラットパネルディスプレイ25、データ処理部130、通信部140、ユーザインターフェイス200などを制御する。
【0044】
ユニット駆動部10Aは、光学ユニット10を3次元的に移動する。参照ミラー駆動部14Aは、参照光路に沿って参照ミラー14を移動する。鏡筒駆動部19Bは、測定光路に沿って対物レンズ19及び鏡筒部19Aを移動する。レンズ駆動部27Aは、視度補正レンズ27を測定光路に対して挿脱する。或いは、レンズ駆動部27Aは、複数の視度補正レンズを選択的に測定光路に配置させる。
【0045】
(記憶部112)
記憶部112は、各種のデータを記憶する。また、記憶部112には、眼科装置1を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。記憶部112に記憶されるデータは、眼科装置1により取得されるデータと、予め格納されるデータとを含む。
【0046】
眼科装置1により取得されるデータとしては、検査データ(OCT画像データ、解析データ等)、正面画像データ、測位データなどがある。検査データは、光学ユニット10による干渉光の検出結果を処理して得られたデータである。解析データは、OCT画像データ等を解析アプリケーションで解析して得られたデータである。測位データは、測位信号受信部300により取得されたデータ、又はそれを処理して生成されたデータである。
【0047】
記憶部112に予め格納されるデータとしては、
図3に示す外部コンピュータ情報112aや、被検者の個人認証に関する情報がある。また、所定の被検者に対する検査に関する設定情報がある。設定情報は、光学ユニット10やデータ処理部130に関する所定の項目の設定内容が記録された情報である。設定情報は、たとえば次の事項のうち少なくとも1つに関する設定内容を含む:(1)固視位置;(2)OCTスキャンパターン;(3)フォーカス位置;(4)視度補正;(5)最大干渉深度;(6)解析処理。
【0048】
図3に示す外部コンピュータ情報112aについて説明する。外部コンピュータ情報112aは、複数の外部コンピュータ1000に関する通信アドレスと位置情報とを含む。
【0049】
外部コンピュータ1000は、眼科装置1が被検眼Eを検査して取得した検査データの送信先である。外部コンピュータ1000は、たとえば、読影センター等の医療機関に設置された画像管理サーバや、眼科医(読影医)が利用するシステムの画像管理サーバや、眼科医(読影医)が使用するコンピュータなどであってよい。また、外部コンピュータ1000は、眼科装置1を含むシステムの運営者が管理するサーバなどであってよい。外部コンピュータ1000はこれらに限定されず、検査データの送信先となる任意のコンピュータであってよい。
【0050】
外部コンピュータ1000に関する通信アドレスは、ネットワークに接続された外部コンピュータ1000に付与されたアドレス情報である。通信アドレスの典型的な例として、インターネットにおけるIPアドレス(Internet Protocol Address)がある。また、イントラネットやエクストラネットにおけるアドレス情報や、電話番号などを利用してもよい。
【0051】
外部コンピュータ1000に関する位置情報は、外部コンピュータ1000やそのユーザの所在地を示す。位置情報の典型的な例として、任意の測地系(経緯度、標高)、住所(の一部)、居所(の一部)、郵便番号などがある。
【0052】
複数の外部コンピュータ1000のそれぞれには識別情報が付与されている。
図3に示す外部コンピュータ情報112aにおいては、この識別情報として、外部コンピュータ1000が設置されている医療機関、又は外部コンピュータ1000を利用可能な医療機関に対して付与された識別情報(医療機関ID)が記録されている。更に、外部コンピュータ情報112aには、複数の医療機関IDのそれぞれに対し、その医療機関(外部コンピュータ1000)の通信アドレスと位置情報とが関連付けられている。たとえば、医療機関ID「0001」に対して、通信アドレス「aaaaa」と位置情報「(x1,y1,z1)」とが関連付けられている。
【0053】
(画像形成部120)
画像形成部120は、イメージセンサ23からの検出信号に基づいて、被検眼Eの断面像データを形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプのOCTと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、分散補償、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。他のタイプのOCTが適用される場合、画像形成部120は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。画像形成部120はプロセッサを含む。
【0054】
(データ処理部130)
データ処理部130は、各種のデータ処理を実行する。たとえば、データ処理部130は、画像形成部120により形成された断面像データに対して画像処理を施す。その例として、データ処理部130は、複数の2次元断面像に基づいて3次元画像データ(スタックデータ、ボリュームデータ等)を形成することや、3次元画像データの任意の断面を画像化するMPR(Multi−Planar Reconstruction)を実行することができる。データ処理部130はプロセッサを含む。
【0055】
データ処理部130は、信号解析部131と、関連付け処理部132と、通信アドレス選択部133とを含む。
【0056】
(信号解析部131)
信号解析部131は、測位信号受信部300により受信された信号を解析して現在位置を示す位置情報(現在位置情報)を生成する。測位信号から現在位置を求めるための処理は既知である。たとえば、測位信号受信部300が航法衛星システムからの電波信号を受信するよう構成されている場合、信号解析部131は、測位信号受信部300により取得された複数の電波信号(たとえば少なくとも4つの航法衛星からの電波信号)を解析することで現在位置情報を生成する。
【0057】
現在位置情報は、外部コンピュータ情報112aに含まれる位置情報と同種の位置情報であってよい。或いは、外部コンピュータ情報112aに含まれる位置情報と現在位置情報とが異なる種別である場合、一方の位置情報を他方の位置情報に変換する処理をデータ処理部130(たとえば通信アドレス選択部133)が実行するように構成することが可能である。
【0058】
なお、測位信号受信部300及び信号解析部131は、眼科装置1に外付けされてもよい。たとえば、携帯端末に搭載された測位機能(GPS機能等)を利用して現在位置情報を取得し、それを眼科装置1に入力するように構成することが可能である。
【0059】
また、測位信号受信部300が2以上の測位システムからの信号を受信可能である場合、信号解析部131は、それぞれの測位システムに対応した信号解析を実行することで、より精度や確度の高い現在位置情報を取得することができる。逆に、現在位置情報に精度や確度がそれほど求められない場合、その程度に応じた信号解析手法を適用することが可能である。
【0060】
また、たとえばGPSのように、測位信号が時刻に関する情報を含む場合、信号解析部131は、測位信号受信部300により受信された信号を解析して時刻情報を生成する。更に、信号解析部131は、測位信号に含まれる時刻(航法衛星からの電波信号の発信時刻等)を補正する処理や、測位信号に含まれる時刻を現在地が属するタイムゾーンにおける現在時刻に変換する処理などを実行してよい。ここで、現在地が属するタイムゾーンは、デフォルト設定されてもよいし、信号解析部131が取得した現在地情報に基づき決定されてもよい。
【0061】
(関連付け処理部132)
関連付け処理部132は、眼科装置1により取得された検査データと、ユーザインターフェイス200やリーダを介して入力された被検者識別情報と、信号解析部131により生成された現在位置情報とを関連付ける。信号解析部131が時刻情報を生成する場合、関連付け処理部132は、検査データと被検者識別情報と現在位置情報と時刻情報とを関連付ける。
【0062】
関連付け処理部132が実行する関連付け処理は、たとえば、検査データと被検者識別情報と現在位置情報と(時刻情報と)に対して同じ情報(たとえば検査ID)を付与するものである。
【0063】
関連付け処理の他の例として、検査データに他の情報を付帯させることができる。その具体例として、画像データをDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)フォーマットで管理する場合、DICOMタグの所定領域に被検者識別情報と現在位置情報と(時刻情報と)を書き込むことができる。
【0064】
更に他の例として、検査データと被検者識別情報と現在位置情報と(時刻情報と)を2以上のファイルとし、それらを同じフォルダに格納することができる。
【0065】
これらの方式以外にも、たとえば、被検者識別情報と現在位置情報と(時刻情報と)を検査データ(画像データ)に埋め込むことができる。たとえば、被検者識別情報と現在位置情報と(時刻情報と)を画像化し、それらを空間周波数領域データに変換し、それを検査データに埋め込むことができる。或いは、画像データにおいて読影を妨げない部分(たとえば枠の近傍)に、被検者識別情報と現在位置情報と(時刻情報と)を埋め込むことができる。この場合、情報が埋め込まれる領域は、デフォルト設定されてもよいし、関連付け処理の度に決定されてもよい。後者の例として、画像データを解析して被検眼Eの注目部位(黄斑、視神経乳頭、疾患部、血管等)に相当する画像領域を特定し、この画像領域以外の領域を埋め込み領域として設定することができる。
【0066】
(通信アドレス選択部133)
通信アドレス選択部133は、信号解析部131により生成された現在位置情報と、記憶部112に記憶された外部コンピュータ情報112aとに基づいて、情報送信先となる1以上の外部コンピュータ1000の通信アドレスを選択する。
【0067】
その具体例として、通信アドレス選択部133は、外部コンピュータ情報112aに記録されているそれぞれの位置情報を現在位置情報と比較し、1以上の外部コンピュータ1000の通信アドレスを選択することができる。この処理の基準として距離や道のりがある。このとき、たとえば、現在位置情報が示す現在位置から最短距離に存在する外部コンピュータ1000の通信アドレスを選択することや、現在位置から近い順に所定数の外部コンピュータ1000の通信アドレスを選択することや、現在位置から所定距離以下の範囲に存在する外部コンピュータ1000の通信アドレスを選択することが可能である。或いは、現在位置情報が示す地域と同一地域に属する外部コンピュータ1000の通信アドレスを選択することが可能である。通信アドレスを選択するための処理はこれらに限定されず、選択基準は任意に設定される。
【0068】
(通信部140)
通信部140は、外部装置との間でデータ通信を行う。データ通信の方式は任意である。たとえば、通信部140は、インターネットに準拠した通信インターフェイス、LANに準拠した通信インターフェイスなどを含む。また、データ通信は有線通信でも無線通信でもよい。
【0069】
通信部140は、通信回線2000を介して、外部コンピュータ1000との間でデータ通信を行う。なお、外部コンピュータ1000は、任意の個数設けられる。
【0070】
通信部140による送受信されるデータは暗号化されてよい。その場合、制御部110(又はデータ処理部130)は、送信データを暗号化する暗号化処理部を含む。
【0071】
[使用形態]
眼科装置1の使用形態について説明する。使用形態の例を
図4に示す。
【0072】
(S1:測位信号を受信する)
巡回健診や在宅医療において、眼科装置1が健康診断会場や患者宅に移動され、その電源が投入されると、測位信号受信部300は測位信号の受信を開始する。制御部110は、測位信号受信部300から入力される測位信号を信号解析部131に送る。
【0073】
(S2:現在位置情報を生成する)
信号解析部131は、複数の測位信号を解析することにより現在位置情報を生成する。生成された現在位置情報は、関連付け処理部132に送られる。或いは、現在位置情報は、記憶部112に格納される。
【0074】
(S3:被検者識別情報を入力する)
眼科装置1に被検者識別情報が入力される。被検者識別情報は、被検者又は検者により手入力され、或いは記録媒体から読み取られる。入力された被検者識別情報は、関連付け処理部132に送られる。或いは、被検者識別情報は、記憶部112に格納される。
【0075】
(S4:被検眼の検査を行う)
眼科装置1を用いて被検眼Eの検査が実行される。本実施形態では、たとえば、被検眼Eに対するOCT計測が行われて画像データ(検査データ)が取得される。取得された画像データは、関連付け処理部132に送られる。或いは、画像データは、記憶部112に格納される。
【0076】
(S5:検査データと被検者識別情報と現在位置情報とを関連付ける)
関連付け処理部132は、ステップS2で生成された現在位置情報と、ステップS3で入力された被検者識別情報と、ステップS4で取得された検査データとを関連付ける。
【0077】
(S6:通信アドレスを選択する)
通信アドレス選択部133は、ステップS2で生成された現在位置情報と、外部コンピュータ情報112aに記録されている位置情報とに基づいて、外部コンピュータ情報112aに記録されている通信アドレスのうちから1以上の通信アドレスを選択する。
【0078】
(S7:検査データ等を送信する)
制御部110は、通信部140を制御することにより、ステップS5で関連付けられた検査データと被検者識別情報と現在位置情報とを、ステップS6で選択された通信アドレスで特定される外部コンピュータ1000に向けて送信する。
【0079】
(S8:外部コンピュータが検査データ等を受信する)
外部コンピュータ1000は、眼科装置1から送信された検査データと被検者識別情報と現在位置情報とを受信する。受信された検査データ等は、たとえば、画像管理システムにより管理される。
【0080】
(S9:医師が読影診断を行う)
医師は、図示しないコンピュータ端末(読影端末等)を操作して、画像管理システムから検査データ等を読み出して読影診断を行う。
【0081】
(S10:読影レポートを保存する)
医師は、ステップS9の読影診断の結果を読影レポートに記入する。作成された読影レポートは、画像管理サーバや読影レポートサーバに送られて保存される。
【0082】
(S11:読影レポートを送る)
ステップS10で保存された読影レポートが、被検者宅、医療機関、健康診断を管理している機関などに向けて送られる。その態様として、ネットワーク経由でのデータ送信や、郵便等による検査結果シートの郵送などがある。健康診断などにおいては、被検者に関する情報(被検者情報)や健康診断会場に関する情報(健診会場情報)が管理されている。読影レポートの送り先は被検者情報や健診会場情報に含まれており、これを参照して読影レポートが送られる。
【0083】
[作用・効果]
実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0084】
実施形態の眼科装置は、検査部(光学ユニット10、画像形成部120等)と、識別情報受付部(ユーザインターフェイス200、リーダ等)と、測位信号受信部(300)と、信号解析部(131)と、関連付け処理部(132)とを備える。検査部は、被検眼を光学的に検査することにより検査データ(OCT画像データ等)を生成する。識別情報受付部は、被検者識別情報を受け付ける。測位信号受信部は、測位システムからの信号を受信する。信号解析部は、受信された信号を解析して現在位置を示す位置情報(現在位置情報)を生成する。関連付け処理部は、検査データと被検者識別情報と位置情報とを関連付ける。
【0085】
このような実施形態によれば、被検眼の検査が行われた位置を示す位置情報を被検者識別情報及び検査データと関連付けることができるので、たとえば、集団検診、在宅医療、僻地医療、福祉施設での検査のように、眼科装置を複数の場所に順次に移動させつつ検査を行う場合であっても、どの場所で検査が行われたか把握することが可能である。したがって、検査データに基づく診断の結果(読影レポート、解析レポート等)を検査が実施された場所等に容易にフィードバックすることが可能である。よって、眼科装置の移動を伴う医療形態を好適に実施することが可能である。
【0086】
実施形態の眼科装置は、関連付け処理部により関連付けられた検査データと被検者識別情報と位置情報とを外部コンピュータ(1000)に向けて送信する通信部(140)を備えていてよい。
【0087】
この構成によれば、検査データが行われる医療機関等に検査データ等を送信できるので便利である。また、検査の後すぐに検査データ等を送信することで、診断結果を迅速に提供することが可能である。
【0088】
実施形態の眼科装置は、第1記憶部(記憶部112)と、通信アドレス選択部(133)とを備えていてよい。第1記憶部は、複数の外部コンピュータ(1000)のそれぞれについて通信アドレスと位置情報とを予め記憶している(外部コンピュータ情報112a)。通信アドレス選択部は、信号解析部により生成された眼科装置の位置情報と、第1記憶部に記憶された外部コンピュータの位置情報とに基づいて、複数の外部コンピュータのうちの少なくとも1つの通信アドレスを選択する。更に、通信部は、選択された通信アドレスに基づいて、1以上の外部コンピュータに検査データ等を送信することができる。
【0089】
この構成によれば、検査が実施された位置(施設、機関等の位置)との位置関係に基づいて、検査データ等の送信先(たとえば、診断が行われる医療機関)を決定し送信することができる。したがって、診断結果の迅速な返送や、地域ごとの診断結果の管理などが可能となる。
【0090】
なお、外部コンピュータ情報112aのような情報を設けることなく、予め決められた外部コンピュータに向けて検査データ等を送信する構成を適用することも可能である。つまり、予め決められた医療機関(読影センター等)に検査データ等を送る実施形態を適用することも可能である。
【0091】
また、次のような構成のシステムも可能である。外部コンピュータ情報112a等をネットワーク上のサーバに予め記憶しておく。眼科装置は、このサーバ等に向けて検査データ等を送信する。このサーバ等は、外部コンピュータ情報112a等と、眼科装置から送られた現在位置情報とに基づいて、送信先となる外部コンピュータ1000(医療機関等)を選択し、選択された外部コンピュータ1000に向けて検査データ等を転送する。このようなシステムによっても、上記実施形態と同様の効果を提供することが可能である。
【0092】
[変形例]
上記実施形態では、眼科装置の位置(検査が行われた場所)を基準として検査データ等の送信先となる外部コンピュータを選択している。一方、本変形例では、検査データ等の送信先を被検者ごとに登録可能である。被検者ごとの送信先の例として、かかりつけ医、通院中の医療機関、通院や入院をしていた医療機関、治療中の疾患の専門医療機関、既往症の疾患の専門医療機関などがある。
【0093】
本変形例の眼科装置の構成例を
図5及び
図6に示す。なお、上記実施形態と同様の構成部分には同じ符号が付され、その説明は適宜省略される。また、
図1に示す構成が本変形例に適用される。
【0094】
図5に示す構成は、
図2に示す構成において通信アドレス選択部133を通信アドレス取得部134に置換したものである。なお、通信アドレス選択部133と通信アドレス取得部134の双方を設けることも可能である。その場合、通信アドレス選択部133が上記実施形態と同様の処理を実行し、更に、通信アドレス取得部134が後述の処理を実行する。或いは、たとえば動作モードや手動操作などに応じて通信アドレス選択部133又は通信アドレス取得部134が選択され、選択された側が処理を実行する。
【0095】
通信アドレス取得部134は、
図6に示す送信先登録情報112bを参照することにより、眼科装置が受け付けた被検者識別情報に対応する通信アドレスを取得する。
【0096】
送信先登録情報112bには、複数の被検者のそれぞれについて、被検者識別情報(被検者ID)と、医療機関IDと、その医療機関に設置された又はその医療機関にて利用可能な外部コンピュータ1000の通信アドレスとが互いに関連付けられて記録されている。たとえば、被検者ID「111111」に対して、医療機関ID「0008」と通信アドレス「hhhhh」とが関連付けられている。また、被検者ID「111113」には、医療機関ID及び通信アドレスが関連付けられていない。
【0097】
通信アドレス取得部134は、入力された被検者識別情報を送信先登録情報112bに含まれる複数の被検者識別情報(被検者ID)から検索し、検索された被検者識別情報に関連付けられた通信アドレスを特定する。
【0098】
本変形例の眼科装置の使用形態の例を
図7に示す。
【0099】
ステップS21〜S25は、
図4のステップS1〜S5と同様に実行される。
【0100】
ステップS26において、通信アドレス取得部134は、送信先登録情報112bを参照することにより、ステップS23で受け付けられた被検者識別情報(被検者ID)に対応する通信アドレスを取得する。
【0101】
ステップS26において当該被検者に対応する通信アドレスが取得された場合(S27:Yes)、
図4のステップS7と同様に、眼科装置は、ステップS25で関連付けられた検査データと被検者識別情報と現在位置情報とを、ステップS26で取得された通信アドレスで特定される外部コンピュータ1000に向けて送信する(S29)。ステップS30以降の処理は、上記実施形態のステップS8以降の処理と同様である。
【0102】
他方、ステップS26において当該被検者に対応する通信アドレスが取得されなかった場合(S27:No)、制御部110は、記憶部112に予め記憶された通信アドレスを読み出す(S28)。そして、眼科装置は、ステップS28において取得された通信アドレスで特定される外部コンピュータ1000に向けて、ステップS25で関連付けられた検査データと被検者識別情報と現在位置情報とを送信する(S29)。
【0103】
或いは、外部コンピュータ情報112a及び通信アドレス選択部133も設けられている場合、眼科装置は、第1の実施形態と同様の処理を実行して送信先の通信アドレスを選択し、選択された通信アドレスで特定される外部コンピュータ1000に向けて、ステップS25で関連付けられた検査データと被検者識別情報と現在位置情報とを送信することができる(S29)。
【0104】
ステップS26において当該被検者に対応する通信アドレスが取得されなかった場合(S27:No)においても、ステップS30以降の処理は、上記実施形態のステップS8以降の処理と同様である。
【0105】
本変形例の眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0106】
本変形例の眼科装置は、第2記憶部(記憶部112)と、通信アドレス取得部(134)とを備える。第2記憶部は、複数の被検者のそれぞれについて、被検者識別情報と、外部コンピュータの通信アドレスとを予め記憶する。通信アドレス取得部は、識別情報受付部により受け付けられた被検者識別情報に対応する通信アドレスを第2記憶部から取得する。更に、通信部は、取得された通信アドレスに基づいて、関連付け処理部(132)により関連付けられた検査データと被検者識別情報と位置情報とを送信する。
【0107】
このような構成によれば、被検者ごとに最適な医療機関に向けて検査データ等を送信することが可能である。
【0108】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態では、ネットワークを通じて検査データ等を読影センター等に送信しているが、ネットワークに接続できない場所に眼科装置が配置される場合や、検査データ等をネットワーク経由で送信したくない場合(たとえば暗号化できない場合など)もあり得る。そのような場合には、眼科装置又はそれに付随する記憶装置に検査データを蓄積し、それらを事後的に読み出すといった運用がなされることが想定される。本実施形態では、このような運用を可能とする眼科装置について説明する。
【0109】
本実施形態の眼科装置の構成例を
図8及び
図9に示す。第1の実施形態と同様の構成部分には同じ符号が付され、その説明は適宜省略される。また、第1の実施形態の
図1に示す構成が本実施形態に適用されるものとする。
【0110】
図8に示す構成は、
図2に示す構成における通信部140を含んでいなくてよい(含んでいてもよい)。更に、制御部110に出力制御部113が設けられている。出力制御部113は主制御部111の一部として構成されてよい。加えて、記憶部112には、検査データ等を格納するための記憶領域が設けられている(図示省略)。また、記憶部112には、
図9に示す被検者−医療機関情報112cが設けられている。更に、本実施形態の眼科装置は、情報出力部115を備える。
【0111】
情報出力部115は、医療機関コンピュータ3000に対して各種情報を出力するインターフェイスを含む。たとえば、情報出力部115は、コンピュータとの間で情報の入出力を行うためのコネクタや端子を含んでいてよい。医療機関コンピュータ3000は、たとえば医療機関に設置されたコンピュータ(サーバ等)や、医療機関により利用可能なコンピュータである。
【0112】
被検者−医療機関情報112cについて説明する。被検者−医療機関情報112cには、複数の被検者のそれぞれについて、被検者識別情報(被検者ID)と、医療機関識別情報(医療機関ID)と、その医療機関(医療機関コンピュータ3000)に付与された認証情報(医療機関PW)とが互いに関連付けられて記録されている。たとえば、被検者ID「111111」に対して、医療機関ID「0008」と医療機関PW「abcde」とが関連付けられている。
【0113】
出力制御部113は、医療機関コンピュータ3000から入力された情報出力要求を、たとえば情報出力部115を介して受ける。或いは、出力制御部113は、ユーザインターフェイス200を介して情報出力要求を受ける。情報出力要求は、眼科装置に記憶されている検査データ等を医療機関コンピュータ3000に出力することを要求する指令である。情報出力要求は、少なくとも医療機関IDを含み、更に認証情報(医療機関PW)を含んでよい。
【0114】
医療機関識別情報(医療機関ID)等を含む情報出力要求が入力されたとき、出力制御部113は、入力された医療機関識別情報等に対応する被検者識別情報(被検者ID)を被検者-医療機関情報112cを参照して取得する。更に、出力制御部113は、取得された被検者識別情報に関連付けられた検査データ及び現在位置情報を記憶部112から読み出し、情報出力部150を制御してそれらを医療機関コンピュータ3000に出力させる。ここで、被検者識別情報と検査データと現在位置情報との関連付けは、それらが記憶部112に格納される前に、関連付け処理部132によって実行される。
【0115】
被検者−医療機関情報112cに認証情報(医療機関PW)が含まれる場合、出力制御部113は、認証情報の入力指示を医療機関コンピュータ3000に送る。或いは、出力制御部113は、認証情報の入力指示をユーザインターフェイス200に表示させる。医療機関識別情報に加えて認証情報を含む情報出力要求が入力されると、出力制御部113は、入力された医療機関識別情報と認証情報との組み合わせを、被検者−医療機関情報112cに含まれる医療機関IDと医療機関PWとの組み合わせと照合する。照合に成功した場合、検査データ等の出力を許可する。他方、照合に失敗した場合、検査データ等の出力を許可しない。なお、照合の失敗が所定回数に達するまで、認証情報の再入力の指示を提示するように構成してよい。
【0116】
本実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0117】
本実施形態の眼科装置は、第1の実施形態と同様に、検査部(光学ユニット10、画像形成部120等)と、識別情報受付部(ユーザインターフェイス200、リーダ等)と、測位信号受信部(300)と、信号解析部(131)と、関連付け処理部(132)とを備える。更に、本実施形態の眼科装置は、関連付け処理部により関連付けられた検査データと被検者識別情報と位置情報とを記憶する第3記憶部(記憶部112の上記記憶領域)を備える。
【0118】
このような実施形態によれば、眼科装置の移動を伴う医療形態において、眼科装置又はそれに付随する記憶装置に検査データ等を蓄積し、蓄積された検査データ等を医療機関コンピュータ(3000)に出力することができる。
【0119】
本実施形態の眼科装置は、情報出力部(150)と、第4記憶部(記憶部112)と、出力制御部113とを更に備えていてよい。第4記憶部は、複数の被検者のそれぞれについて、被検者識別情報と医療機関識別情報とを予め記憶する(被検者−医療機関情報112c)。出力制御部は、医療機関識別情報を含む情報出力要求が入力されたとき、入力された医療機関識別情報に対応する被検者識別情報を第4記憶部から取得し、取得された被検者識別情報に関連付けられた検査データ及び位置情報を記憶部から読み出して情報出力部に出力させる。
【0120】
このような構成によれば、眼科装置又はそれに付随する記憶装置に蓄積された検査データ等を、被検者ごとに登録された医療機関に選択的に提供することができる。それにより、検査データ等を誤って出力する事態を防止することができ、個人情報の漏洩の防止等を図ることができる。
【0121】
〈第3の実施形態〉
健康診断等においては、どの会場でどの被検者の検査を行うか予め決められていることが多い。しかし、複数の会場を移動しながら眼科装置を使用する場合、被検者の取り違え等が発生するおそれがある。本実施形態では、そのような事態の防止に寄与する眼科装置について説明する。
【0122】
本実施形態の眼科装置の構成例を
図10及び
図11に示す。第1の実施形態と同様の構成部分には同じ符号が付され、その説明は適宜省略される。また、第1の実施形態の
図1に示す構成が本実施形態に適用されるものとする。
【0123】
図10に示す構成は、報知部160を含む。更に、データ処理部130は照合部135を備える。また、記憶部112には、
図11に示す被検者−検査会場情報112dが設けられている。
【0124】
報知部160は、制御部100による制御を受けて報知情報を出力する。報知情報は、ユーザに所定の事項を報知するための情報である。報知情報は、たとえば視覚情報及び/又は聴覚情報を含む。視覚情報は、たとえば、所定の事項を示す文字列情報及び/又は画像情報を含む。聴覚情報は、たとえば、所定の事項を示す音声及び/又は警告音を含む。報知情報が視覚情報を含む場合、報知部160の少なくとも一部は表示部210に含まれてよい。
【0125】
被検者−検査会場情報112dについて説明する。被検者−検査会場情報112dには、複数の被検者のそれぞれについて、被検者識別情報(被検者ID)と、眼科装置による検査が行われる場所の識別情報(会場ID)と、その会場の位置情報(検査位置情報)とが互いに関連付けられて記録されている。たとえば、被検者ID「111111」に対して、会場ID「AAA」と検査位置情報「(X1,Y1,Z1)」とが関連付けられている。
【0126】
照合部135は、関連付け処理部132により一の被検者識別情報に関連付けられた現在位置情報と、被検者−検査会場情報112dに記録されている当該一の被検者識別情報に対応する検査位置情報とを照合する。すなわち、照合部135は、被検眼に対して実際に検査が行われた会場の位置情報(眼科装置の位置情報)と、当該被検眼について予め登録された検査会場の位置情報(被検者−検査会場情報112dに記録されている検査位置情報)とを照合する。この照合処理は、予め登録された検査会場にて被検眼の検査が実際に行われたか否か判定する処理と言える。
【0127】
なお、照合処理においては、或る程度の誤差が許容される。たとえば、位置情報として測地系の座標値が用いられる場合や、検査会場が広い場合、正しい検査会場で検査が行われたとしても、現在位置の測定が実施されたときの眼科装置の座標値と、被検者−検査会場情報112dに登録された座標値との間に変位が生じることがある。そうすると、正しい会場で検査が行われたにもかかわらず、誤った会場で検査が実施されたと判定される可能性がある。このような事態を防止するために、たとえば検査会場の広さや、登録されている複数の検査会場の間の相対位置(位置関係)などに基づいて、たとえば検査会場ごとに許容範囲を事前に設定しておくことができる。
【0128】
照合処理の結果は制御部100に入力される。制御部100は、照合部135による照合の結果を表す報知情報を出力する。この報知情報は、たとえば、照合の結果(照合の成功又は失敗)を示す情報を含んでよい。また、照合に失敗した場合にのみ報知処理を実行するようにしてもよい。また、報知情報は、被検者−検査会場情報112dに登録されている当該被検者の検査会場を示す情報を含んでいてよい。
【0129】
なお、照合処理及び報知処理は、被検眼の検査時やその後の任意のタイミングで実行される。具体的には、被検者IDが眼科装置に入力された後の任意のタイミングで照合処理及び報知処理を実行することが可能である。
【0130】
また、外部コンピュータ1000や、医療機関コンピュータ3000や、システム運営者が管理しているコンピュータが、同様の照合処理を実行するようにしてもよい。
【0131】
本実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0132】
本実施形態の眼科装置は、第1の実施形態と同様に、検査部(光学ユニット10、画像形成部120等)と、識別情報受付部(ユーザインターフェイス200、リーダ等)と、測位信号受信部(300)と、信号解析部(131)と、関連付け処理部(132)とを備える。
【0133】
更に、本実施形態の眼科装置は、第5記憶部(記憶部112)と、第1照合部(照合部135)と、第1報知部(制御部100、報知部160等)とを備える。第5記憶部は、複数の被検者のそれぞれについて、被検者識別情報と検査位置情報とを予め記憶する(被検者−検査会場情報112d)。第1照合部は、関連付け処理部(132)により一の被検者識別情報に関連付けられた現在位置情報と、第5記憶部に格納されている当該一の被検者識別情報に対応する検査位置情報とを照合する。第1報知部は、第1照合部による照合の結果を表す第1報知情報を出力する。
【0134】
このような実施形態によれば、眼科装置の移動を伴う医療形態において、被検者に対する検査が正しい会場で実施されたか否かを判定し報知することができるので、被検者の取り違えを防止することができる。
【0135】
[変形例]
本実施形態の眼科装置を被検者の個人認証に利用することも可能である。たとえば次のように構成することができる。
【0136】
眼科装置に被検者識別情報(被検者ID)が入力され、かつ、信号解析部131が眼科装置の現在位置情報を生成したときに、照合部135が、生成された現在位置情報と、眼科装置に予め記憶された、当該被検者IDに対応する検査位置情報とを照合する。
【0137】
照合の結果は制御部100に入力される。制御部100は、照合部135による照合の結果を表す報知情報を報知部160に出力させる。
【0138】
本変形例において、記憶部112は第5記憶部に相当し、照合部135は第2照合部に相当し、制御部100及び報知部160は第2報知部に相当する。
【0139】
このような構成によれば、検査を受けようとしている者が正しい被検者であるか否かに関する一つの指標を提供することが可能である。
【0140】
〈変形例〉
以上に説明した実施形態は本発明の典型的な例示に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。
【0141】
たとえば、上記実施形態やその変形例に含まれる構成を任意に組み合わせることが可能である。そのような組み合わせにより得られる変形例は、組み合わせられた構成の動作や作用や効果うちの少なくとも一部を引き継ぐ。また、組み合わせられた構成を利用して、任意の使用形態を実現することが可能である。
【0142】
上記実施形態において、眼科装置が屋内に配置された場合や他の建造物の影になる位置に配置された場合などに、航法衛星や地上局からの測位信号(電波信号)を好適に受信できないことが想定される。そのような場合、制御部100は、現在位置情報を入力するための画面を表示部210に表示させることができる。ユーザは、操作部220を用いて現在位置情報の入力を行う。この場合の操作部220は、たとえばハードウェアキーボード又はソフトウェアキーボードである。また、入力される現在位置情報は、たとえば、眼科装置が現在配置されている施設の名称や識別情報である。関連付け処理部132は、ユーザが入力した現在位置情報を検査データ及び被検者識別情報に関連付ける。
【0143】
測位信号(電波信号)を好適に受信できない場合に対処するための他の例として次のものがある。測位信号受信部300は、たとえば制御部100の制御の下に、電波信号を受信するための動作を繰り返し実行する。この電波信号を受信するための動作は、たとえば所定の時間間隔で実行される。信号解析部131は、位置情報を求めるために必要な複数の電波信号(たとえばGPSであれば4つの航法衛星からの電波信号)が受信されたときに、位置情報を求める。
【0144】
関連付け処理の第1の例として、関連付け処理部132は、眼科装置による検査が行われているときに受信された複数の電波信号に基づき求められた位置情報を、現在位置情報として検査データ及び被検者識別情報に関連付けることができる。第2の例として、関連付け処理部132は、検査の前に最後に受信された複数の電波信号に基づき求められた位置情報を、現在位置情報として検査データ及び被検者識別情報に関連付けることができる。第3の例として、関連付け処理部132は、検査の後に最初に受信された複数の電波信号に基づく位置情報を、現在位置情報として検査データ及び被検者識別情報に関連付けることができる。
【0145】
これら変形例によれば、航法衛星や地上局からの測位信号(電波信号)を好適に受信できない場合であっても、現在位置情報を取得して検査データ及び被検者識別情報に関連付けることが可能である。