特許第6553423号(P6553423)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553423
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】レール間除雪器
(51)【国際特許分類】
   E01B 19/00 20060101AFI20190722BHJP
   E01B 7/02 20060101ALI20190722BHJP
   E01H 8/10 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   E01B19/00 A
   E01B7/02
   E01H8/10
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-129501(P2015-129501)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-14710(P2017-14710A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昭良
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 清文
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 忠則
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 行雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 初男
(72)【発明者】
【氏名】高田 史郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 光明
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−144670(JP,A)
【文献】 特開2010−007422(JP,A)
【文献】 特開2005−344355(JP,A)
【文献】 特開2009−041284(JP,A)
【文献】 特開2002−030628(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0183278(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 19/00
E01B 7/02
E01H 8/10
E01H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本レールとトングレールが並設されている箇所で前記トングレール所定の金具を固定するため、前記トングレールの腹部を貫通するように取り付けられており、その軸心に沿った貫通孔が設けられている金具固定ボルトと、
前記基本レールと対向する前記金具固定ボルトの一方の端部に取り付けられたノズルと、
前記金具固定ボルトの他方の端部に取り付けられ、液体又は気体を送給する配管と、
を備え、
前記ノズルから前記基本レールと前記トングレールの間に向けて液体又は気体を噴射するように構成されているレール間除雪器であって、
前記金具は、前記トングレールの腹部に固定された転てつ棒であることを特徴とするレール間除雪器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐器のレールの腹部に設けられる金具固定ボルト利用して基本レールとトングレールとの間の除雪を行うレール間除雪器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の分岐器には、雪氷が介在することでポイント不転換が発生しないように、分岐器の可動部分に向けて温水などを噴射し、雪氷を融かして除去する融雪装置が設置されている。例えば、図8に示すように、クロッシング部に向けて温水を噴射するノズル1と、トング部に向けて温水を噴射するノズル2とを備えた融雪装置が知られている。
また、圧縮気体の圧力により液体を発射し、基本レールRとトングレールRtの間に挟まった雪氷を吹き飛ばすように除去する除雪装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−279633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の場合、ノズル2からトング部に向けて噴射した温水や、基本レールRとトングレールRtとの間に向けて発射した液体は、基本レールRに固定されているレール止め金具Sに当たってしまい、基本レールRとトングレールRtの間に温水や液体が十分に届かず、基本レールRとトングレールRtの間の雪氷の除去が不十分になってしまうことがあった。
レール止め金具Sは、トングレールRtが移動し過ぎないようにするストッパーの機能を有しているため、レール止め金具Sの形状を変更することはできないので、既存の設備を大幅に変更することなく、基本レールRとトングレールRtとの間の除雪を可能にする技術が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、基本レールとトングレールとの間の除雪を行うためレール間除雪器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本出願に係発明は
基本レールとトングレールが並設されている箇所で前記トングレール所定の金具を固定するため、前記トングレールの腹部を貫通するように取り付けられており、その軸心に沿った貫通孔が設けられている金具固定ボルトと、
前記基本レールと対向する前記金具固定ボルトの一方の端部に取り付けられたノズルと、
前記金具固定ボルトの他方の端部に取り付けられ、液体又は気体を送給する配管と、
を備え、
前記ノズルから前記基本レールと前記トングレールの間に向けて液体又は気体を噴射するように構成されているレール間除雪器であって、
前記金具は、前記トングレールの腹部に固定された転てつ棒であるようにした。
【0009】
かかる構成のレール間除雪器であれば、トングレールの腹部に転てつ棒を固定している金具固定ボルトの貫通孔を通じて基本レールとトングレールの間に液体又は気体を供給し、ノズルから液体又は気体を噴射することで、基本レールとトングレールの間に挟まった雪氷を融かしたり吹き飛ばしたりすることができ、基本レールとトングレールとの間の除雪を好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基本レールとトングレールとの間の除雪を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のレール間除雪器を備えた融雪装置を示す概観図である。
図2】本実施形態のレール間除雪器を示す上面図である。
図3】本実施形態のレール間除雪器を示す斜視図である。
図4】本実施形態の金具固定ボルトを示す一端側の正面図(a)と、一部断面視した側面図(b)である。
図5】一端部にノズルを取り付けた金具固定ボルトを示す斜視図である。
図6】他の実施形態のレール間除雪器を備えた融雪装置を示す概観図である。
図7】他の実施形態のレール間除雪器を示す上面図である。
図8】従来の融雪装置を示す概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る金具固定ボルト及びレール間除雪器の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
図1は、本実施形態のレール間除雪器10を備えた融雪装置100を示す概観図である。図2はレール間除雪器10を示す上面図、図3はその斜視図である。
融雪装置100は、図1に示すように、クロッシング部に向けて温水を噴射するノズル1と、トング部に向けて温水を噴射するノズル2と、基本レールRとトングレールRtの間に向けて温水を噴射するレール間除雪器10と、温水を貯留している温水タンクTと、温水タンクT内の温水をノズル1,ノズル2,レール間除雪器10に送給するポンプPと、上記各部を繋いでいる配管等を備えている。
本実施形態では、レール間除雪器10は左右のレールにそれぞれ8つずつ設けられている。
【0018】
レール間除雪器10は、図1図3に示すように、基本レールRとトングレールRtが並設されている箇所で、トングレールRt側となる基本レールRの腹部にレール止め金具Sを固定している金具固定ボルト11と、トングレールRtと対向する金具固定ボルト11の一方の端部11aに取り付けられたノズル12と、金具固定ボルト11の他方の端部11bに取り付けられた配管13等を備えて構成されている。
このように、レール間除雪器10は、基本レールRとトングレールRtが並設されている箇所で、基本レールR側に取り付けられている。
【0019】
基本レールRの腹部に固定されたレール止め金具Sは、トングレールRtに向けて突き出した突出部Saを有している。
レール止め金具Sは、基本レールRの腹部に所定間隔をあけて複数固定されており(図8参照)、トングレールRtが基本レールR側に移動し過ぎないように規制するストッパーとして機能する。
【0020】
金具固定ボルト11は、図2図3に示すように、レール止め金具Sを基本レールRに固定するために、基本レールRを貫通して取り付けられており、金具固定ボルト11の他方の端部11bにはナットNが螺合されている。
また、レール止め金具Sにおける突出部Saを挟んだ金具固定ボルト11の反対側には、レール止め金具Sを基本レールRに固定するためのボルトBと、そのボルトBに螺合されたナットNが取り付けられている。
【0021】
この金具固定ボルト11には、図4図5に示すように、その軸心に沿った貫通孔11hが設けられている。この貫通孔11hは、ノズル12から噴射する温水の流路として利用するために設けられている。
例えば、レール止め金具Sを基本レールRに固定するためのボルトBは、その軸径がφ20mmであるので、この金具固定ボルト11の軸径もφ20mmとした。また、金具固定ボルト11の軸径がφ20mmである場合、貫通孔11hの直径は3.5mmとした。
これは、貫通孔11hの直径が3.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mmの金具固定ボルト11に対し、ボルトの規格値として引張荷重255(KN)、引張強さ1040(N/mm)を目安にした負荷をかける強度試験を行ったところ、直径が4.0mmと4.5mmのボルトには破断が生じることがあったが、直径が3.0mmと3.5mmのボルトには破断が生じなかったことによる。こうして、軸径がφ20mmである金具固定ボルト11の貫通孔11hの直径が3.5mm以下であれば、締結ボルトとして使用できる強度であることを確認した。
【0022】
ノズル12は、図2図3図5に示すように、金具固定ボルト11の一方の端部11aに取り付けられており、貫通孔11hの開口に螺着されている。ノズル12は、レール止め金具Sの突出部SaよりトングレールRt側に突き出ないサイズを有している。
このノズル12には、温水を噴射する噴射口12aが設けられている。
噴射口12aは、基本レールRの延在方向に沿い、レール止め金具Sの突出部Saから離間する方向に温水を噴射する向きに設けられている。
特に、ノズル12の噴射口12aから噴射する温水を上下に拡散させて、基本レールRの頭部と底部に当てる構造になっている。例えば、ノズル12の噴射口12aから上下にそれぞれα(例えば30°〜40°)の角度で温水を拡散させるように噴射するようになっている。こうすることで、基本レールRとトングレールRtの隙間に上下に幅広く温水を噴射することができる。
【0023】
配管13は、図2に示すように、金具固定ボルト11の他方の端部11bに取り付けられており、貫通孔11hの開口に接続部材13aを介して螺着されている。
この配管13は、ノズル12の噴射口12aから噴射する温水をレール間除雪器10に送給するため金具固定ボルト11に接続されている。
【0024】
このようなレール間除雪器10であれば、金具固定ボルト11を通じて基本レールRとトングレールRtの間に温水を供給して、基本レールRとトングレールRtとの間の雪氷を融雪して除雪を行うことができる。
特に、複数のレール止め金具Sにそれぞれレール間除雪器10を取り付け、各レール間除雪器10のノズル12の噴射口12aから基本レールRの延在方向に沿い、レール止め金具Sの突出部Saから離間する方向に温水を噴射するようにすることで、レール止め金具Sに挟まれている空間にある雪氷に的確に温水を噴き掛けることができ、基本レールRとトングレールRtとの間の融雪を好適に行うことができる。
【0025】
また、このレール間除雪器10は、レール止め金具Sを基本レールRに固定する金具固定ボルト11にノズル12を取り付けた構造を有しており、基本レールRとトングレールRtの間に設置したレール間除雪器10のノズル12がトングレールRtの移動の妨げにならない位置にあるので、基本レールRとトングレールRtとの間の融雪を好適に行うことができる。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図6図7に示すように、左右のトングレールRtに架け渡して取り付ける転てつ棒Qの両端部をトングレールRtの腹部に固定するボルトに金具固定ボルト11を用いてもよい。
つまり、基本レールRとトングレールRtが並設されている箇所で、トングレールRt側にレール間除雪器10を取り付けるようにしてもよい。なお、トングレールRtに固定した金具固定ボルト11は、トングレールRtを貫通して取り付けられている。
【0027】
そして、基本レールRと対向する金具固定ボルト11の一方の端部11aにノズル12を取り付け、金具固定ボルト11の他方の端部11bに配管13を取り付けるようにすれば、金具固定ボルト11を通じて基本レールRとトングレールRtの間に温水を供給して、基本レールRとトングレールRtとの間の雪氷を融雪して除雪を行うことができる。
特に、複数(図中4本)の転てつ棒Qの両端部にそれぞれレール間除雪器10を取り付け、各レール間除雪器10のノズル12の噴射口12aからトングレールRtの延在方向に沿って温水を噴射するようにすることで、基本レールRとトングレールRtとの間の融雪を好適に行うことができる。
【0028】
以上のように、本実施形態のレール間除雪器10は、金具固定ボルト11を通じて供給された温水を、ノズル12の噴射口12aから基本レールRとトングレールRtの間に噴射して、基本レールRとトングレールRtとの間の融雪を好適に行うことができる。
【0029】
なお、以上の実施の形態においては、レール間除雪器10はノズル12から温水を噴射して融雪するとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ノズル12から地下水を噴射したり、ノズル12からエアー(気体)を噴射したりして融雪するものでもよい。
【0030】
また、金具固定ボルト11にノズル12を取り付けず、金具固定ボルト11の貫通孔11hに電熱線などのケーブルを挿通し、その電熱線を利用して融雪するようにしてもよい。
【0031】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 ノズル
2 ノズル
10 レール間除雪器
11 金具固定ボルト
11a 一方の端部
11b 他方の端部
11h 貫通孔
12 ノズル
12a 噴射口
13 配管
13a 接続部材
100 融雪装置
S レール止め金具(所定の金具)
Sa 突出部
Q 転てつ棒(所定の金具)
R 基本レール
Rt トングレール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8