特許第6553435号(P6553435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553435
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】油分離回収器
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/02 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   F25B43/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-141102(P2015-141102)
(22)【出願日】2015年7月15日
(65)【公開番号】特開2017-20761(P2017-20761A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泊 圭一郎
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−019691(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0255308(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0028571(US,A1)
【文献】 実開昭50−044959(JP,U)
【文献】 特開平08−159581(JP,A)
【文献】 実開昭52−119152(JP,U)
【文献】 実開昭49−086466(JP,U)
【文献】 特開2008−019857(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0065110(US,A1)
【文献】 実公昭49−008323(JP,Y1)
【文献】 特開平07−063427(JP,A)
【文献】 特開平11−125184(JP,A)
【文献】 特開2014−044006(JP,A)
【文献】 特開平08−110127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/02
F04B 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横置き配置される横長形状の容器本体を有し、油冷式圧縮機から油を伴って吐出された圧縮ガスから前記油を分離して回収する油分離回収器において、
前記容器本体の一端側の上部に設けられ、前記油を伴った前記圧縮ガスを前記容器本体内に流入させるガス流入口と、
前記容器本体の他端側の上部に設けられ、前記油が分離された前記圧縮ガスを前記容器本体内から流出させるガス流出口と、
前記容器本体の下部を、前記ガス流入口側の第1室と、前記ガス流出口側の第2室とに区分けする仕切り板と、
を有し、
前記油を伴った前記圧縮ガスを前記第1室に対向しない方向から前記容器本体内に流入させるエルボ流入管が前記容器本体内に設けられており、
前記ガス流入口は、前記エルボ流入管の下流側の開口であり、
前記容器本体内の前記圧縮ガスを前記ガス流出口側の側壁側から前記容器本体外に流出させるエルボ流出管が前記容器本体内に設けられており、
前記ガス流出口は、前記エルボ流出管の上流側の開口であり、
前記容器本体は両端が閉塞された円筒体であり、
前記容器本体の胴径をφD(mm)とし、前記容器本体の中心軸方向において前記ガス流出口の開口端の内縁における前記第1室に最も近い部分の位置を原点とし、前記ガス流入口側を正とすると、前記仕切り板は、前記原点に対して0(mm)以上0.5φD(mm)以下の位置に配置されていることを特徴とする油分離回収器。
【請求項2】
前記容器本体は両端が閉塞された円筒体であり、
前記容器本体の胴径をφD(mm)とすると、前記仕切り板の高さが、前記第1室に溜まった前記油の油面の高さを超えて0.8φD(mm)以下にされていることを特徴とする請求項1に記載の油分離回収器。
【請求項3】
前記容器本体は両端が閉塞された円筒体であり、
前記容器本体の胴径をφD(mm)とすると、前記容器本体の中心軸方向において前記ガス流出口の開口端の内縁における前記第1室に最も近い部分は、前記容器本体における前記ガス流出口側の側壁から0.7φD(mm)以上離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の油分離回収器。
【請求項4】
前記第2室の下部に前記油の泡を捕集する捕集手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の油分離回収器。
【請求項5】
前記第2室の底部にフロート弁が設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の油分離回収器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油冷式圧縮機から油を伴って吐出された圧縮ガスから油を分離して回収する油分離回収器に関する。
【背景技術】
【0002】
油冷式圧縮機においては、潤滑油をローター部に噴射することで、機器の冷却とローター部における圧縮ガスのシールとを行っている。よって、油冷式圧縮機から吐出された圧縮ガスには潤滑油が含まれている。
【0003】
そこで、特許文献1に開示されているような油分離回収器を用いて、圧縮ガスから潤滑油を分離回収している。特許文献1の油分離回収器は、横長形状の容器からなるため、その頂面部を圧縮機本体等の据付スペースにすることができる。よって、縦長形状の容器からなる油分離回収器に比べて、油冷式圧縮機をコンパクトにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−234826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、横長形状の容器からなる油分離回収器では、容器内に流入した圧縮ガスが容器内の油の油面に吹き付けられることによって油面が泡立ち、圧縮ガス中に油滴や油を含んだ泡が発生する。さらに、横長形状の容器では圧縮ガスの流出口と油面との距離が近いため、発生した油滴や油泡が流出口付近のガスの流れに乗って容器外に流出する。これにより、油分離回収器の油分離効率が低下する。
【0006】
そこで、圧縮ガスに含まれる油量を設計基準まで低減させるために、油分離回収器の下流に複数の油分離エレメントを設置することが考えられる。しかし、この場合、製造コストが増加する。
【0007】
本発明の目的は、製造コストを増加させることなく、油分離効率を向上させることが可能な油分離回収器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、横置き配置される横長形状の容器本体を有し、油冷式圧縮機から油を伴って吐出された圧縮ガスから前記油を分離して回収する油分離回収器において、前記容器本体の一端側の上部に設けられ、前記油を伴った前記圧縮ガスを前記容器本体内に流入させるガス流入口と、前記容器本体の他端側の上部に設けられ、前記油が分離された前記圧縮ガスを前記容器本体内から流出させるガス流出口と、前記容器本体の下部を、前記ガス流入口側の第1室と、前記ガス流出口側の第2室とに区分けする仕切り板と、を有し、前記油を伴った前記圧縮ガスを前記第1室に対向しない方向から前記容器本体内に流入させるエルボ流入管が前記容器本体内に設けられており、前記ガス流入口は、前記エルボ流入管の下流側の開口であり、前記容器本体内の前記圧縮ガスを前記ガス流出口側の側壁側から前記容器本体外に流出させるエルボ流出管が前記容器本体内に設けられており、前記ガス流出口は、前記エルボ流出管の上流側の開口であり、前記容器本体は両端が閉塞された円筒体であり、前記容器本体の胴径をφD(mm)とし、前記容器本体の中心軸方向において前記ガス流出口の開口端の内縁における前記第1室に最も近い部分の位置を原点とし、前記ガス流入口側を正とすると、前記仕切り板は、前記原点に対して0(mm)以上0.5φD(mm)以下の位置に配置されていることを特徴とする。


【発明の効果】
【0009】
本発明によると、仕切り板で、容器本体の下部をガス流入口側の第1室とガス流出口側の第2室とに区分けする。これにより、圧縮ガスから分離した油は主に第1室に溜まり、第2室にはほとんど油が溜まらない。ここで、容器本体内に流入した圧縮ガスが第1室に吹き付けられることによって、第1室に溜まった油の油面が泡立ち、油面から油滴が発生するとともに、油を含んだ泡が油面に発生する。さらに、横長形状の容器本体においては、第1室の油面とガス流出口との距離が近いため、発生した油滴及び油泡がガス流出口付近の圧縮ガスの流れに乗ってガス流出口から流出する。これにより、油分離回収器の油分離効率が低下する。そこで、容器本体の下部のガス流出口側を、油がほとんど溜まらない第2室とする。これにより、第1室の油面とガス流出口との距離が遠くなるので、発生した油滴及び油泡がガス流出口に吸い込まれるのを防止することができる。また、発生した油滴や油泡の一部は圧縮ガスの流れに乗って油面から飛散するが、圧縮ガスは、第2室の上方を通過して容器本体の側壁に沿って旋回し、第2室を仕切り板の方に向かって流れる。このとき、慣性力の大きな油滴及び油泡は仕切り板に向かって直進するので、油滴及び油泡を仕切り板に衝突させて圧縮ガスから分離させることで、圧縮ガスの流れに乗る油滴及び油泡を捕集することができる。これにより、発生した油滴及び油泡が圧縮ガスの流れに乗ってガス流出口から流出するのを防止することができるので、製造コストを増加させることなく、油分離効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】油冷式圧縮機の周辺の構成図である。
図2図1の要部Aの拡大図である。
図3】高さL1および距離L2と吐出率との関係を示す図である。
図4】距離L3と吐出率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(油冷式圧縮機の周辺の構成)
本発明の実施形態による油分離回収器は、油冷式圧縮機から油を伴って吐出された圧縮ガスから油を分離して回収するものである。油冷式圧縮機の周辺の構成図である図1に示すように、油分離回収器1は、油冷式圧縮機21の下流側に設けられている。
【0013】
油冷式圧縮機21には、吸込流路22から圧縮されるべきガスが導入される。油冷式圧縮機21は、吸込流路22から導入された圧縮されるべきガスを圧縮して昇圧する。このとき、機器の冷却、潤滑およびローター部における圧縮ガスのシールを目的として、油供給流路23から油冷式圧縮機21内に油が注入される。圧縮されたガス(圧縮ガス)は、油冷式圧縮機21から油を伴って吐出され、吐出流路24を通って油分離回収器1に供給される。
【0014】
油分離回収器1においては、供給された圧縮ガスから質量差によって油が分離回収される。油が分離回収された圧縮ガスは、油分離回収器1から排出される。油分離回収器1から排出された圧縮ガスは、排出流路25を通って油分離器26に供給される。油分離器26は、油分離エレメント(フィルター)26aを備えており、圧縮ガスに残存する油を分離する。残存する油が分離された圧縮ガスは、供給流路27を通って下流プロセスに送られる。
【0015】
油分離回収器1に回収された油は、油分離回収器1に一旦貯留された後に、下部に設けられた油流出口から排出されて油循環経路28を通って潤滑油クーラー29に送られる。潤滑油クーラー29は、油を冷却する。潤滑油クーラー29で冷却された油は、油供給流路23を流れ、通り油フィルタ30でろ過され、潤滑油ポンプ31で昇圧された後に、再び油冷式圧縮機21のローター部に供給される。
【0016】
(油分離回収器の構成)
油分離回収器1は、横置き配置される金属製で横長形状の容器本体2を有している。容器本体2は、両端が閉塞された円筒体であり、その上方は油冷式圧縮機21等の据付スペースにされている。容器本体2の一端側の上部には、油を伴った圧縮ガスを容器本体2内に流入させるガス流入口3が設けられている。また、容器本体2の他端側の上部には、油が分離された圧縮ガスを容器本体2内から流出させるガス流出口4が設けられている。後述するように、ガス流入口3は、エルボ流入管11の下流側の開口である。また、ガス流出口4は、エルボ流出管12の上流側の開口である。
【0017】
また、容器本体2の下部には、容器本体2の下部をガス流入口3側の第1室6と、ガス流出口4側の第2室7とに区分けする仕切り板5が設けられている。圧縮ガスから分離した油は、主に第1室6に溜まり、第2室7にはほとんど油は溜まらない。
【0018】
ここで、容器本体2内に流入した圧縮ガスが第1室6に吹き付けられることによって、第1室6に溜まった油の油面が泡立ち、油面から油滴が発生するとともに、油を含んだ泡が油面に発生する。さらに、横長形状の容器本体2においては、第1室6の油面とガス流出口4との距離が近いため、発生した油滴及び油泡がガス流出口4付近の圧縮ガスの流れに乗ってガス流出口4から流出する。これにより、油分離回収器1の油分離効率が低下する。
【0019】
そこで、容器本体2の下部のガス流出口4側を、油がほとんど溜まらない第2室7とする。これにより、第1室6の油面とガス流出口4との距離が遠くなるので、発生した油滴及び油泡がガス流出口4に吸い込まれるのを防止することができる。また、発生した油滴や油泡の一部は圧縮ガスの流れに乗って油面から飛散するが、圧縮ガスは、第2室7の上方を通過して容器本体2の他端側の側壁に沿って旋回し、第2室7を仕切り板5の方に向かって流れる。このとき、慣性力の大きな油滴及び油泡は仕切り板5に向かって直進するので、油滴及び油泡を仕切り板5に衝突させて圧縮ガスから分離させることで、圧縮ガスの流れに乗る油滴及び油泡を捕集することができる。これにより、発生した油滴及び油泡が圧縮ガスの流れに乗ってガス流出口4から流出するのを防止することができるので、製造コストを増加させることなく、油分離効率を向上させることができる。
【0020】
また、第2室7の下部には、油泡を捕集するデミスタ(捕集手段)8が設けられている。第1室6の油面に発生した油泡のほとんどは、仕切り板5の高さを超えられず、一定時間経過後に消滅する。しかし、油泡の一部は、嵩が増えることによって仕切り板5の上部を通過し、第2室7に流出する可能性がある。そして、仕切り板5を通過した油泡は、圧縮ガスの流れに乗りガス流出口4から流出する恐れがある。そこで、第2室7の下部にデミスタ8を設けて仕切り板5を通過した油泡を捕集することで、油泡の再飛散を防止することができる。
【0021】
また、第2室7の底部には、フロート弁9が設けられている。フロート弁9は、第2室7の底部に油が一定量溜まった場合に弁を開き、容器本体2外に油を流出させる構造となっている。フロート弁9から流出した油は、配管経路10を通って油循環経路28を流れる。
【0022】
仕切り板5及びデミスタ8で捕集された油滴及び油泡は、第2室7の底部に溜まる。その量は時間経過とともに増えていくため、ある程度溜まると再び圧縮ガスの流れに乗ってガス流出口4から流出する。また、第2室7の底部に溜まった油の油面がガス流出口4に到達すると、ガス流出口4から流出する恐れがある。そこで、第2室7の底部にフロート弁9を設けて、第2室7の底部に溜まった油を容器本体2外に流出させることで、第2室7の底部に溜まった油がガス流出口4から流出するのを防止することができる。
【0023】
また、容器本体2内には、エルボ流入管11が設けられている。エルボ流入管11は、油を伴った圧縮ガスを第1室6に対向しない方向から容器本体2内に流入させるものである。上述したように、ガス流入口3は、エルボ流入管11の下流側の開口である。本実施形態において、エルボ流入管11は、油を伴った圧縮ガスを容器本体2のガス流入口3側(一端側)の側壁に向かって流入させるが、流入方向はこれに限定されない。
【0024】
圧縮ガスを直接第1室6に吹きつけた場合、第1室6の油面が激しく波立ち、油滴及び油泡の発生量が増加する。これにより、油分離回収器1の油分離効率が低下する。そこで、エルボ流入管11を設けて圧縮ガスを直接第1室6に吹きつけないようにすることで、第1室6の油面の波立ちを抑制し、油滴及び油泡の発生量を低減させることができる。
【0025】
また、容器本体2内には、エルボ流出管12が設けられている。エルボ流出管12は、容器本体2内の圧縮ガスをガス流出口4側(他端側)の側壁側から容器本体2外に流出させるものである。上述したように、ガス流出口4は、エルボ流出管12の上流側の開口である。
【0026】
ガス流出口4が第1室6の油面に近い場合、圧縮ガスの流れに乗って油滴及び油泡がガス流出口4から流出する恐れがある。そこで、エルボ流出管12を設けてガス流出口4の入口を第1室6の油面から遠ざけることで、圧縮ガスの流れに乗って流出する油滴及び油泡の飛散量を低減させることができる。
【0027】
また、図1の要部Aの拡大図である図2に示すように、容器本体2の胴径をφD(mm)とすると、第1室6の油面6aの高さは、0.5φD以下にされている。よって、仕切り板5の高さL1(mm)は、0.5φDよりも高くされている。また、容器本体2におけるガス流出口4側の側壁は、0.3φDの深さで湾曲されている。容器本体2におけるガス流入口3側の側壁についても同様である。なお、容器本体2の側壁は、湾曲された構成に限定されず、平坦面を有する構成であってもよい。
【0028】
また、容器本体2の中心軸O方向においてエルボ流出管12の開口(ガス流出口4)の開口端の内縁における第1室6に最も近い部分Bの位置を原点とし、ガス流入口3側を正とすると、仕切り板5は、原点に対して0(mm)以上0.5φD(mm)以下の位置に配置されている。即ち、仕切り板5と原点との距離L2(mm)は、ガス流入口3側を正とすると、0(mm)以上0.5φD(mm)以下にされている。
【0029】
後述するように、距離L2が0mm未満であると、第1室6の油面がガス流出口4の下部まで到達するために、ガス流出口4と油面との距離が近くなり、圧縮ガスの流れに乗って飛散する油が増加する。また、距離L2が0.5φDを超えるとガス流出口4と油面との距離が遠くなりすぎ、圧縮ガスがより上流側で仕切り板5に衝突するために圧縮ガスの乱れが大きくなり、油面から圧縮ガス中に飛散する油が増加する。そこで、距離L2を0(mm)以上0.5φD(mm)以下にすることで、ガス流出口4から油滴及び油泡が流出しにくい圧縮ガスの流れをガス流出口4付近に形成することができる。これにより、油捕集性能をさらに向上させることができる。
【0030】
また、仕切り板5の高さL1(mm)が、第1室6の油面6aの高さを超えて0.8φD(mm)以下にされている。後述するように、仕切り板5が高くなりすぎると圧縮ガス(主に油が飛散している油面付近の圧縮ガス)がガス流出口4のより近傍を通過するために、ガス流出口4から飛散する油が増加する。そこで、仕切り板5の高さL1を0.8φD(mm)以下にすることで、油滴及び油泡がガス流出口4付近の圧縮ガスの流れに乗ってガス流出口4から流出するのを好適に抑制することができる。また、図中矢印で示すように、圧縮ガスを容器本体2の側壁に沿って好適に旋回させることができるので、慣性力の働きで直進する油滴及び油泡を仕切り板5に衝突させて好適に捕集することができる。
【0031】
また、容器本体2の中心軸O方向においてガス流出口4の開口端の内縁における第1室6に最も近い部分Bは、容器本体2のガス流出口4側の側壁から0.7φD(mm)以上離れた位置に配置されている。即ち、ガス流出口4の開口端の内縁における第1室6に最も近い部分Bと容器本体2のガス流出口4側の側壁との距離L3(mm)は0.7φD(mm)以上にされている。これにより、圧縮ガスは、図中矢印で示すように、第2室7の上方を通り容器本体2の他端側の側壁に沿って下降して仕切り板5の方に向かう旋回流を好適に形成する。よって、慣性力の働きで直進する油滴及び油泡を仕切り板5に衝突させて好適に捕集することができるので、油分離性能をさらに向上させることができる。
【0032】
(油捕集性能の評価)
次に、仕切り板5の条件を異ならせて、油捕集性能をシミュレーションにより評価した。具体的には、図2において、仕切り板5の厚みを6mmとし、仕切り板5の高さL1(mm)、および、距離L2(mm)をそれぞれ異ならせて、油捕集性能を評価した。また、距離L3(mm)を異ならせた条件や、仕切り板5がない条件でも評価を行った。評価を行った15種類の条件を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
ここで、容器本体2の胴内径φDを254mm、第1室6の水平方向の長さを2000mm、ガス流入口3およびガス流出口4の内径φdを60mmとした。また、第1室6の油面の高さを0.5φDとした。これは、潤滑油の保持時間(リテンションタイム)と容器本体2のサイズとのトレードオフの関係から、第1室6の油面の高さを0.5φDで設計するのが一般的であるからである。そして、圧縮ガスとして、温度が50℃、圧力が2.0MPaG、容器本体2内での平均流速が0.48m/sの空気を流した。
【0035】
油捕集性能の評価方法として、第1室6の油面に直径10μmの油滴を一定間隔で配置し、これらの油滴がガス流出口4から流出する確率(吐出率)を上記の15条件で比較した。結果を図3及び図4に示す。図3は、高さL1および距離L2と吐出率との関係を示す図である。図4は、距離L3と吐出率との関係を示す図である。
【0036】
図3及び図4から、仕切り板5を用いたすべての条件(case1〜15)において、油滴の吐出率すなわち油飛散量を1/2程度に低減できることがわかる。また、仕切り板5の高さL1を0.6φD≦L1≦0.8φDの範囲、原点と仕切り板5との距離L2を0≦L2≦0.5φDの範囲、ガス流出口4の開口端の内縁における第1室6に最も近い部分Bと容器本体2のガス流出口4側の側壁との距離L3をL3≧0.7φDの範囲にそれぞれ設定することで、さらに吐出率を低減させることができることがわかる。
【0037】
なお、仕切り板5の高さL1の下限値は、油が仕切り板5を乗り越えない高さであってよい。その理由としては、図3より、仕切り板5の高さL1が0.8φDよりも0.6φDの方が吐出率の低減効果が大きいことから、L1=0.5φD〜0.6φDの範囲においても外挿的に吐出率の低減効果があると考えられるからである。
【0038】
仕切り板5の高さL1が0.8φDを超えると効果がよくない理由として、仕切り板5が高くなりすぎると圧縮ガス(主に油が飛散している油面付近の圧縮ガス)がガス流出口4のより近傍を通過するために、ガス流出口4から飛散する油が増加することが考えられる。仕切り板5の高さL1が0.8φDよりも0.6φDの方が効果が大きい理由としても、同様のことが考えられる。
【0039】
原点と仕切り板5との距離L2が0未満で効果がよくない理由として、距離L2が0未満であると、第1室6の油面がガス流出口4の下部まで到達するために、ガス流出口4と油面との距離が近くなり、圧縮ガスの流れに乗って飛散する油が増加することと考えられる。また、距離L2が0.5φDを超えると効果がよくない理由として、距離L2が0.5φDを超えるとガス流出口4と油面との距離が遠くなりすぎ、圧縮ガスがより上流側で仕切り板5に衝突するために圧縮ガスの乱れが大きくなり、油面から圧縮ガス中に飛散する油が増加すると考えられる。
【0040】
なお、本評価は圧縮ガスの圧力条件を2.0MPaGのみとしているが、圧力が異なる条件においても仕切り板5の位置と吐出率との関係は変わらないため、いかなる圧力条件においても仕切り板5による効果を得ることができる。
【0041】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る油分離回収器1によると、仕切り板5で、容器本体2の下部をガス流入口3側の第1室6とガス流出口4側の第2室7とに区分けする。これにより、圧縮ガスから分離した油は主に第1室6に溜まり、第2室7にはほとんど油が溜まらない。ここで、容器本体2内に流入した圧縮ガスが第1室6に吹き付けられることによって、第1室6に溜まった油の油面が泡立ち、油面から油滴が発生するとともに、油を含んだ泡が油面に発生する。さらに、横長形状の容器本体2においては、第1室6の油面とガス流出口4との距離が近いため、発生した油滴及び油泡がガス流出口4付近の圧縮ガスの流れに乗ってガス流出口4から流出する。これにより、油分離回収器1の油分離効率が低下する。そこで、容器本体2の下部のガス流出口4側を、油がほとんど溜まらない第2室7とする。これにより、第1室6の油面とガス流出口4との距離が遠くなるので、発生した油滴及び油泡がガス流出口4に吸い込まれるのを防止することができる。また、発生した油滴や油泡の一部は圧縮ガスの流れに乗って油面から飛散するが、圧縮ガスは、第2室7の上方を通過して容器本体2の側壁に沿って旋回し、第2室7を仕切り板5の方に向かって流れる。このとき、慣性力の大きな油滴及び油泡は仕切り板5に向かって直進するので、油滴及び油泡を仕切り板5に衝突させて圧縮ガスから分離させることで、圧縮ガスの流れに乗る油滴及び油泡を捕集することができる。これにより、発生した油滴及び油泡が圧縮ガスの流れに乗ってガス流出口4から流出するのを防止することができるので、製造コストを増加させることなく、油分離効率を向上させることができる。
【0042】
また、原点(図2の部分Bの位置)と仕切り板5との距離L2を0(mm)以上0.5φD(mm)以下にする。距離L2が0mm未満であると、第1室6の油面がガス流出口4の下部まで到達するために、ガス流出口4と油面との距離が近くなり、圧縮ガスの流れに乗って飛散する油が増加する。また、距離L2が0.5φDを超えるとガス流出口4と油面との距離が遠くなりすぎ、圧縮ガスがより上流側で仕切り板5に衝突するために圧縮ガスの乱れが大きくなり、油面から圧縮ガス中に飛散する油が増加する。そこで、距離L2を0(mm)以上0.5φD(mm)以下にすることで、ガス流出口4から油滴及び油泡が流出しにくい圧縮ガスの流れをガス流出口4付近に形成することができる。これにより、油捕集性能をさらに向上させることができる。
【0043】
また、仕切り板5の高さを第1室6に溜まった油の油面6aの高さを超えて0.8φD(mm)以下にする。仕切り板5が高くなりすぎると圧縮ガス(主に油が飛散している油面付近の圧縮ガス)がガス流出口4のより近傍を通過するために、ガス流出口4から飛散する油が増加する。そこで、仕切り板5の高さL1を0.8φD(mm)以下にすることで、油滴及び油泡がガス流出口4付近の圧縮ガスの流れに乗ってガス流出口4から流出するのを好適に抑制することができる。また、図2に矢印で示すように、圧縮ガスを容器本体2の側壁に沿って好適に旋回させることができるので、慣性力の働きで直進する油滴及び油泡を仕切り板5に衝突させて好適に捕集することができる。
【0044】
また、容器本体2の中心軸O方向においてガス流出口4の開口端の内縁における第1室に最も近い部分Bと、容器本体2におけるガス流出口4側の側壁との距離L3を0.7φD(mm)以上にする。これにより、圧縮ガスは、図2に矢印で示すように、第2室7の上方を通り容器本体2の側壁に沿って下降して仕切り板5の方に向かう旋回流を好適に形成する。よって、慣性力の働きで直進する油滴及び油泡を仕切り板5に衝突させて好適に捕集することができるので、油分離性能をさらに向上させることができる。
【0045】
また、第2室7の下部に油の泡を捕集するデミスタ8を設ける。第1室6の油面に発生した油泡のほとんどは、仕切り板5の高さを超えられず、一定時間経過後に消滅する。しかし、油泡の一部は、嵩が増えることによって仕切り板5の上部を通過し、第2室7に流出する可能性がある。そして、仕切り板5を通過した油泡は、圧縮ガスの流れに乗りガス流出口4から流出する恐れがある。そこで、第2室7の下部にデミスタ8を設けて仕切り板5を通過した油泡を捕集することで、油泡の再飛散を防止することができる。
【0046】
また、第2室7の底部にフロート弁9を設ける。仕切り板5及びデミスタ8で捕集された油滴及び油泡は、第2室7の底部に溜まる。その量は時間経過とともに増えていくため、ある程度溜まると再び圧縮ガスの流れに乗ってガス流出口4から流出する。また、第2室7の底部に溜まった油の油面がガス流出口4に到達すると、ガス流出口4から流出する恐れがある。そこで、第2室7の底部にフロート弁9を設けて、第2室7の底部に溜まった油を容器本体2外に流出させることで、第2室7の底部に溜まった油がガス流出口4から流出するのを防止することができる。
【0047】
また、エルボ流入管11を容器本体2内に設けて、油を伴った圧縮ガスを第1室6に対向しない方向から容器本体2内に流入させる。圧縮ガスを直接第1室6に吹きつけた場合、第1室6の油面が激しく波立ち、油滴及び油泡の発生量が増加する。これにより、油分離回収器1の油分離効率が低下する。そこで、エルボ流入管11を設けて圧縮ガスを直接第1室6に吹きつけないようにすることで、第1室6の油面の波立ちを抑制し、油滴及び油泡の発生量を低減させることができる。
【0048】
また、エルボ流出管12を容器本体2内に設けて、容器本体2内の圧縮ガスをガス流出口4側の側壁側から容器本体2外に流出させる。ガス流出口4が第1室6の油面に近い場合、圧縮ガスの流れに乗って油滴及び油泡がガス流出口4から流出する恐れがある。そこで、エルボ流出管12を設けてガス流出口4の入口を第1室6の油面から遠ざけることで、圧縮ガスの流れに乗って流出する油滴及び油泡の飛散量を低減させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
1 油分離回収器
2 容器本体
3 ガス流入口
4 ガス流出口
5 仕切り板
6 第1室
6a 油面
7 第2室
8 デミスタ
9 フロート弁
10 配管経路
11 エルボ流入管
12 エルボ流出管
21 油冷式圧縮機
22 吸込流路
23 油供給流路
24 吐出流路
25 排出流路
26 油分離器
26a 油分離エレメント
27 供給流路
28 油循環経路
29 潤滑油クーラー
30 油フィルタ
31 潤滑油ポンプ
図1
図2
図3
図4