(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
図1〜
図3は、本発明の第1実施形態に基づく穿刺器具を示している。本実施形態の穿刺器具A1は、器具本体1、穿刺カートリッジ2および復帰部材51を備えている。穿刺器具A1は、たとえば簡易血糖測定器(self monitoring of blood glucose:SMBG)の測定対象検体である血液を、患者の指先などから採取するためのものである。
【0018】
図2において、図中上下方向が、装填方向Nであり、図中下方を装填方向N奥側、図中上方を装填方向N手前側と定義する。また、本実施形態においては、後述する穿刺移動体3が穿刺の際に移動する方向が、装填方向Nに沿った方向となっており、装填方向N手前側に向かって移動する。なお、本発明において、装填方向と穿刺方向とは、互いに一致してもよいし、異なる方向であってもよい。
【0019】
穿刺カートリッジ2は、器具本体1に装填されることにより穿刺器具A1による穿刺を可能とするカートリッジである。本実施形態の穿刺カートリッジ2は、穿刺移動体3およびカートリッジケース4によって構成されている。穿刺カートリッジ2は、1回または所定回の穿刺の後に廃棄される、いわゆるディスポーザブルとして構成されている。
【0020】
カートリッジケース4は、穿刺移動体3を収容しており、穿刺カートリッジ2の外観のほとんどをなしている。カートリッジケース4の形状、大きさおよび材質は特に限定されない。本実施形態においては、カートリッジケース4は、穿刺移動体3を内蔵する空間を規定する略筒状とされている。筒状の具体形態としては、たとえば角筒状や円筒状を採用しうる。カートリッジケース4の材質としては、たとえば樹脂が挙げられる。
【0021】
カートリッジケース4には、穿刺口42が形成されている。穿刺口42は、カートリッジケース4の装填方向N手前側端部に設けられており、装填方向Nに貫通する開口である。穿刺口42は、穿刺移動体3の後述する穿刺要素31を外部に突出させるために設けられている。
【0022】
穿刺移動体3は、穿刺器具A1による穿刺において、体液を採取すべき患者の身体の一部に向けて移動する部位である。本実施形態においては、穿刺移動体3は、穿刺要素31および保持部32を有する。穿刺要素31は、身体に穿刺される要素であり、たとえば金属からなる針や刃などである。穿刺要素31は、装填方向N手前側(穿刺方向前方)に向かって尖った形状となっている。
【0023】
保持部32は、穿刺要素31を保持する部位であり、たとえば樹脂からなる。保持部32は、穿刺要素31の先端に対して装填方向N奥方(穿刺方向後方)に位置している。本実施形態の保持部32は、後端突起322を有している。後端突起322は、装填方向N前側に向けて突出している。後端突起322は、後述する器具本体1の一部に連結する部位である。
【0024】
なお、穿刺カートリッジ2は、穿刺移動体3の穿刺要素31を覆うキャップ部を有する構成であってもよい。このキャップ部は、未使用時の穿刺要素31を覆うことにより、穿刺要素31を無菌状態に保つためのものである。このようなキャップ部の一例としては、たとえば穿刺移動体3の保持部32とともに一体的に形成された構成が挙げられる。そして、たとえば後述する穿刺カートリッジ2の器具本体1への装填時あるいは使用者の手作業によって、キャップ部は適宜取り外される。
【0025】
器具本体1は、穿刺カートリッジ2が装填されるものであり、穿刺器具A1の外観の大部分を占めている。本実施形態の器具本体1は、本体ケース6、発射手段7、ラッチ部81および復帰ブラケット82を有する。
【0026】
本体ケース6は、発射手段7などを保持するものであり、装填された穿刺カートリッジ2を支持する部位である。本実施形態においては、本体ケース6は、全体として装填方向N手前側に開口する筒状に形成されており、その内部空間に向けて穿刺カートリッジ2が装填される。ただし、本体ケース6の構成はこれに限定されず、装填される穿刺カートリッジ2を適切に保持しうる構成であればよい。本体ケース6は、たとえば樹脂からなる。
【0027】
本体ケース6は、スリット61、係合部62および発射ボタン66を有している。
【0028】
スリット61は、本体ケース6の側壁部を径方向に貫通しており、本実施形態においては、筒状とされた本体ケース6の軸方向に沿って延びている。
【0029】
係合部62は、
図2に示すように、本体ケース6の側壁部から径方向内方に突出した部位である。係合部62は、復帰ブラケット82の所定部位と係合関係をなすためのものである。
【0030】
発射ボタン66は、使用者が穿刺操作を行うための操作手段である。発射ボタン66の具体的構成は特に限定されず、本実施形態においては本体ケース6の外面から突出した形態を例に説明する。発射ボタン66の具体的機能は、たとえば後述するラッチ部81を動作させる機能を果たす。発射ボタン66がラッチ部81を動作させるための機構は、既知のあらゆる機構を採用することが可能であり、強度部材や弾性部材を組み合わせた機械的機構や電気的機構などを適宜選択すればよい。
【0031】
発射手段7は、穿刺移動体3を発射するためのものである。本実施形態においては、発射手段7は、弾性部材70および連結部71からなる。なお、発射手段7の具体的機構は特に限定されず、本実施形態の構成を一例とする機械的構造の他に電気的構造を組み合わせた構成を採用してもよい。後述するように、発射手段7は、穿刺移動体3を発射可能である発射可能状態と、穿刺移動体3の発射を完了した発射完了状態とをとる。
【0032】
弾性部材70は、穿刺カートリッジ2の穿刺移動体3を穿刺方向前方(装填方向N手前側)へと移動させる弾性力を発揮するものである。弾性部材70の具体的構成は特に限定されず、本実施形態においては、いわゆる弦巻ばねが採用されている。弾性部材70の装填方向N奥方端は、本体ケース6に対して固定されている。
【0033】
連結部71は、弾性部材70の装填方向N手前側端に設けられている。連結部71は、穿刺移動体3の後端突起322と連結することにより、穿刺移動体3と弾性部材7とを一時的に一体化させる機能を担う。連結部71は、たとえば金属や樹脂からなる。
【0034】
連結部71には、連結凹部711、ラッチ凹部712およびフランジ部713が形成されている。
【0035】
連結凹部711は、装填方向N奥側に凹んでおり、穿刺移動体3の後端突起322が嵌り込む部分である。ラッチ凹部712は、連結凹部711の一部が装填方向Nと交差する方向である図中左右方向に凹んだ部位である。フランジ部713は、径方向外方に突出した部位であり、本実施形態においては、連結部71の装填方向N奥側端に設けられている。
【0036】
ラッチ部81は、弾性部材70が弾性力を発揮しうる状態で、連結凹部711を所望に位置において一時的に停止させるためのものである。ラッチ部81の具体的構成は特に限定されず、本実施形態においては、
図2おける図中右方に尖った部材からなる。このラッチ部81は、使用者の操作によって、連結凹部711を停止させる位置が設定可能とされていてもよい。後述する工程において、ラッチ部81は、連結部71のラッチ凹部712に進入することにより、連結部71を停止させる。ラッチ凹部712とラッチ部81とを備える構成は、連結部71を一時的に停止させる具体的構造の一例に過ぎず、同様の目的を達成させる構造として、既知の様々な構造を採用しうる。
【0037】
復帰ブラケット82は、使用者が意図する場合にのみ、発射手段7を発射完了状態から発射可能状態へと復帰させるために用いられるものである。本実施形態においては、復帰ブラケット82は、筒状部821、貫通孔822および係合レバー823を有している。復帰ブラケット82の材質は特に限定されず、金属または樹脂などが用いられる。
【0038】
筒状部821は、復帰ブラケット82の大部分を占める本体部分であり、装填方向Nを軸方向とし、装填方向N手前側に底を有する有底筒状部材である。貫通孔822は、筒状部821の底に設けられており、装填方向Nに貫通している。貫通孔822には、連結部71が挿通されている。また、連結部71のフランジ部713は、貫通孔822よりも装填方向N奥側に位置している。貫通孔822の大きさは、連結部71の大部分を通過させる一方、フランジ部713よりも小である。このため、フランジ部713が貫通孔822を通過することは阻止される。
【0039】
係合レバー823は、本体ケース6の係合部62と係合することにより、復帰ブラケット82が装填方向N奥側へと移動することを阻止するためのものである。係合レバー823と係合部62とが係合した状態は、発射手段7が発射完了状態から発射可能状態へと復帰することを阻止する状態である。この状態にあるA1は、本発明で言う再穿刺阻止モードにあると定義する。
【0040】
係合レバー823は、再穿刺阻止モードを実現しうる構成であれば、その形状や大きさはなんら限定されない。本実施形態の係合レバー823は、復帰ブラケット82の装填方向N奥側端から径方向外方に若干突出する部分と、この突出する部分から装填方向N手前側に延びる部分と、装填方向N手前側に延びる部分から径方向外側に突出する部分とを有する構成とされている。係合レバー823の装填方向N手前側先端部分が係合部62と係合する。
【0041】
また、係合レバー823には、凹部824が形成されている。凹部824は、係合レバー823のうち装填方向N方向に沿って延びる部分において径方向内方に凹むように形成されている。係合レバー823が上述した形状とされていることにより、凹部824に径方向内方に向かう力が付加されると、係合レバー823の先端が径方向内方へと移動するように係合レバー823が変形する。
【0042】
復帰部材51は、穿刺器具A1を上述した再穿刺阻止モードから、発射手段7を発射完了状態から発射可能状態へと復帰させることを許容する再穿刺可能モードへと移行させるための部材である。また、本実施形態においては、復帰部材51は、再穿刺可能モードにおいて、発射手段7を発射完了状態から発射可能状態へと復帰させる操作に用いられる。
【0043】
復帰部材51は、器具本体1に対して脱着可能とされている。このため、復帰部材51が装着されていない状態(
図2に示す状態)は、再穿刺阻止モードの穿刺器具A1を示している。本実施形態の復帰部材51は、
図1および
図3に示すように、使用者特定情報表示領域511、係合部512および復帰凸部513を有している。
【0044】
使用者特定情報表示領域511は、穿刺器具A1を使用する個々の使用者を特定するための使用者特定情報を表示するための領域である。
図4は、復帰部材51を示す平面図である。図示された例においては、使用者特定情報表示領域511は、一般的な筆記用具で所望の文字、記号や図形を描くことが可能な領域として構成されている。また、本例においては、使用者特定情報として、使用者の氏名が記載されている。なお、使用者特定情報は、穿刺器具A1が使用される環境において個々の使用者を特定しうる情報であれば、その具体的構成はなんら限定されない。このような使用者特定情報としては、氏名の他に、ニックネーム、患者番号が挙げられ、さらに顔写真や似顔絵などであってもよい。また、使用者が穿刺器具を識別できるようなマークが使用者特定情報表示領域511に付されていてもよい。これにより、再穿刺可能モードとした場合であっても、他の使用者が利用している穿刺器具を誤って使用することが防止することができる。
【0045】
図3に示すように、係合部512は、本体ケース6のスリット61と係合することにより、復帰部材51の本体ケース6に対する径方向移動を規制するためのものである。このような構成は、後述するように復帰部材51によって復帰ブラケット82の係合レバー823を変形させる際に、その反力によって復帰部材51が不安定となることを回避するために採用されている。かかる目的を達成するための機構としては、係合部512以外の既知の構成が適宜採用されうる。
【0046】
復帰凸部513は、径方向内方に突出した部位であり、係合部512がスリット61と係合した状態において、本体ケース6の内部に向けて突出する。後述するように、復帰凸部513は、復帰ブラケット82の係合レバー823の凹部824に嵌り込む部位である。
【0047】
次に、穿刺器具A1を用いた穿刺について、
図2および
図5〜
図9を参照しつつ、以下に説明する。
【0048】
図2は、穿刺器具A1の使用開始状態を示している。穿刺カートリッジ2は、未だ使用されていないものである。穿刺カートリッジ2を器具本体1の装填方向N手前側に配置し、必要な場合、穿刺カートリッジ2の器具本体1に対する角度などを合わせる。
【0049】
次いで、器具本体1に対する穿刺カートリッジ2の装填を開始する。具体的には、器具本体1に対して穿刺カートリッジ2を装填方向N奥側へと移動させる。典型的な装填方法としては、使用者の一方の手によって器具本体1の本体ケース6を挟持することにより固定し、他方の手によって穿刺カートリッジ2のカートリッジケース4を挟持しつつ穿刺カートリッジ2を移動させる。
【0050】
装填が進行すると、
図5に示す状態となる。同図は、穿刺カートリッジ2の装填に伴って弾性部材7の弾性変形が開始する状態を示している。本実施形態においては、穿刺カートリッジ2の穿刺移動体3の後端突起322が連結部71の連結凹部711に嵌り込むことにより、穿刺移動体3が連結部71を装填方向N奥側へと押し得る状態となっている。なお、穿刺カートリッジ2の穿刺移動体3とカートリッジケース4とは、発射手段7の70を弾性変形させうる力を伝達し得る程度に図示しない連結部材などによって互いに連結されている。
【0051】
さらに、装填が進行すると、
図6に示す状態となる。同図においては、穿刺カートリッジ2の装填により、発射手段7の弾性部材70が圧縮変形されている。また、ラッチ部81が連結部71のラッチ凹部712へと嵌り込み、連結部71および穿刺移動体3の移動を一時的に阻止する。なお、ラッチ部81の装填方向Nにおける位置は、使用者の任意により変更可能であってもよい。また、ラッチ部81がラッチ凹部712へと嵌り込む動作は、図示しない既知の機構によって自動的に実行されてもよいし、使用者の操作によって実行されてもよい。これにより、この発射手段7は、本発明で言う発射可能状態をとることとなり、穿刺器具A1は、穿刺が可能な状態となる。
【0052】
次いで、カートリッジケース4の穿刺口42を、血液等の体液を採取すべき身体の箇所に近接させる。また、穿刺移動体3とカートリッジケース4との上述した連結を解除し、穿刺移動体3がカートリッジケース4に対して相対動可能な状態としておく。続いて、発射ボタン66を操作することにより、
図7に示すように、ラッチ部81を連結部71のラッチ凹部712から退避させる。これにより、穿刺移動体3は、発射手段7の弾性部材70の弾性力によって、連結部71とともに装填方向N手前側(穿刺方向前方)へと急速に移動し、連結部71のフランジ部713が、復帰ブラケット82の筒状部821に当接する状態になると、カートリッジケース4の穿刺口42から穿刺移動体3の穿刺要素31が突出し、穿刺要素31の先端が身体の所定箇所に穿刺される。穿刺した後、弾性部材70の復元力により、発射部材7は、
図2に示すようなフランジ部723が、復帰ブラケット82から所定の間隔を隔てた位置に戻る。以上の工程により、穿刺器具A1を用いた穿刺が完了する。人体から血液等の体液を露出させうる適切な穿刺がなされた後は、穿刺によって得られた血液等の体液を対象として、たとえばグルコース濃度などの測定を行う。また、穿刺器具A1からは使用済みの穿刺カートリッジ2が取り外され、この穿刺カートリッジ2は廃棄される。
【0053】
一方、使用者の操作ミスなどによって、たとえば、カートリッジケース4の穿刺口42が身体の箇所に近接させられていない状態で、穿刺が行われることが想定される。この場合、穿刺器具A1を再穿刺可能モードに移行させることにより、穿刺カートリッジ2を交換することなくあらためて正規の穿刺を行うことが可能となる。
【0054】
図8は、
図7に示した穿刺を完了した状態から、再穿刺可能モードに移行させた穿刺器具A1を示している。すなわち、発射手段7は、穿刺を終えたことから穿刺完了状態をとっている。また、器具本体1には、復帰部材51が装着されている。復帰部材51の装着は、上述した係合部512が本体ケース6のスリット61に係合するように、係合部512と復帰凸部513とをスリット61に挿入することによって行う。復帰部材51の装着により、復帰部材51の復帰凸部513が復帰ブラケット82の係合レバー823の凹部824に嵌り込み、係合レバー823を径方向内方へと変形させる。これにより、係合レバー823の先端と本体ケース6の係合部62との係合が解除され、復帰ブラケット82が本体ケース6に対して装填方向N奥側へと移動可能な状態となる。これが、本実施形態における穿刺器具A1の再穿刺阻止モードから再穿刺可能モードへの移行である。
【0055】
次いで、復帰部材51をスリット61に沿って、装填方向N奥側へと移動させる。この復帰部材51の装填方向N奥側への移動は、復帰ブラケット82、連結部71および穿刺移動体3を一体的に装填方向N奥側へと移動させることとなる。これにより、発射手段7は、
図8に示す発射完了状態から
図9に示す発射可能状態へと復帰される。この後は、発射ボタン66の操作によってラッチ部81を退避させることにより、穿刺を行うことができる。なお、この穿刺に際しては、穿刺移動体3および連結部71とともに、復帰ブラケット82および復帰部材51が装填方向N手前側へと移動する。以上により、再穿刺が完了する。本実施形態の再穿刺は、複数回行うことが可能である。
【0056】
次に、穿刺器具A1の作用について説明する。
【0057】
本実施形態によれば、穿刺器具A1は、再穿刺阻止モードと再穿刺可能モードとをとる。通常は、穿刺器具A1は、再穿刺阻止モードにあるため、穿刺カートリッジ2の再使用は不可能である。一方、意図しない穿刺を行ってしまった場合には、穿刺器具A1を再穿刺可能モードへと移行させることにより、発射手段7を発射完了状態から発射可能状態へと復帰させることが可能である。したがって、使用者が意図する場合にのみ、形式的に穿刺動作を行ったものの、いまだ体液などによって汚染されていない穿刺要素31を有する穿刺カートリッジ2を再利用することができる。
【0058】
また、穿刺器具A1においては、脱着可能である復帰部材51が装着されることによって、穿刺器具A1が再穿刺阻止モードから再穿刺可能モードへと移行する。このため、復帰部材51を所有する正規の使用者が意図した場合にのみ、穿刺器具A1を再穿刺可能モードに移行させることが可能である。これは、たとえば、穿刺器具A1の使用方法を十分に熟知しない者が、誤って再穿刺してしまうことを防止するのに適している。
【0059】
復帰部材51には、使用者特定情報表示領域511が設けられている。使用者特定情報表示領域511に表示された使用者特定情報は、個々の使用者を特定するものである。このため、穿刺器具A1に取り付けられた復帰部材51は、いずれの使用者のものであるかが明示される。したがって、ある使用者の復帰部材51が装着されたまま、他の使用者が誤って再穿刺可能モードで穿刺器具A1を使用してしまうことを防止することができる。
【0060】
図10〜
図14は、本発明の他の実施形態および変形例を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0061】
図10は、穿刺器具A1の変形例を示している。本変形例においては、再穿刺阻止モードにある穿刺器具A1に装着されるダミー部材51Aを備えている。ダミー部材51Aは、復帰部材51と同様に、本体ケース6のスリット61との係合などによって器具本体1に装着される。しかしながら、ダミー部材51Aは、復帰部材51の復帰凸部513を有していない。このため、ダミー部材51Aが装着されていても、復帰ブラケット82の係合レバー823は、本体ケース6の係合部62と係合した状態を維持しており、穿刺器具A1は、再穿刺阻止モードにある。
【0062】
本変形例においては、通常の穿刺を行う場合には、ダミー部材51Aを装着した状態で、穿刺要素31の穿刺を行うことができる。ただし、この際の穿刺器具A1は、再穿刺阻止モードにあるため、再穿刺は不可能である。操作ミスなどによって再穿刺が望まれる場合には、使用者は、ダミー部材51Aを一旦取り外した後に、上述した復帰部材51を装着することによって穿刺器具A1を再穿刺可能モードに移行させることができる。このような構成は、穿刺器具A1を再穿刺可能モードに移行させるために、使用者により多くの操作を行わせるものであり、使用者の錯誤などによって穿刺器具A1が不当に再穿刺可能モードに移行させることを防止するのに適している。
【0063】
なお、上記実施形態では、再穿刺不可である穿刺器具に、復帰部材51を装着することで、再穿刺可能モードに移行させているが、穿刺器具に予め復帰部材51が装着され、再穿刺可能である穿刺器具A1において、復帰部材51を取り外すことで、再穿刺不可モードに移行させるものであってもよい。
【0064】
図11〜
図13は、本発明の第2実施形態に基づく穿刺器具を示している。本実施形態の穿刺器具A2は、切替部材52を備えており、上述した復帰部材51を用いない構成である。
【0065】
切替部材52は、穿刺器具A1を再穿刺阻止モードから再穿刺可能モードへと移行させるための部材である。切替部材52の形状、大きさおよび材質は特に限定されないが、以降においては、上述した復帰部材51と類似の外観を有する場合を例に説明する。すなわち、切替部材52は、全体として装填方向N方向に長く延びる形状であり、復帰凸部522を有している。復帰凸部522は、上述した復帰部材51の復帰凸部513と同様に、復帰ブラケット82の係合レバー823と係合部62との係合を解除する機能を果たす。
【0066】
また、本実施形態の本体ケース6のスリット61は、軸方向部611および周方向部612を有する構成とされている。軸方向部611は、穿刺器具A1におけるスリット61と同様に装填方向Nに沿って延びる部分である。周方向部612は、軸方向部611の装填方向N手前側端に繋がっており、本体ケース6の周方向に延びている。
【0067】
図11の実線で示された切替部材52および
図12に示す切替部材52は、本発明で言う第1姿勢をとっている。具体的には、切替部材52は、周方向部612のうち軸方向部611とは反対側の端部に位置している。この場合、
図12に示すように、切替部材52の復帰凸部522は、復帰ブラケット82の凹部824とは、周方向位置が異なっている。このため、復帰ブラケット82の係合レバー823と本体ケース6の係合部62とが係合した状態であり、この状態の穿刺器具A2は、
図2および
図5〜
図7に示す穿刺器具A1と同様の状態である。すなわち、この状態の穿刺器具A2は、本発明でいう再穿刺阻止モードにある。再穿刺阻止モードの穿刺器具A2を用いれば、1つの穿刺カートリッジ2について1回のみの穿刺が許容される。
【0068】
一方、
図11で二点鎖線(仮想線)で示された切替部材52および
図13で実線で示された切替部材52は、本発明で言う第2姿勢をとっている。具体的には、切替部材52は、周方向部612のうち軸方向部611側の端部に位置している。
図13に示すように、本実施形態においては、係合レバー823の凹部824に傾斜面824aが形成されており、復帰凸部522に傾斜面522aが形成されている。第1姿勢から第2姿勢へと切替部材52が移動すると、復帰凸部522の傾斜面522aが凹部824の傾斜面824aに乗り上げるような格好となる。そして、切替部材52が第2姿勢をとると、凹部824に復帰凸部522が正対する姿勢で当接し、復帰凸部522が凹部824を径方向内方へと移動させる。この結果、係合レバー823が径方向内方へと変形し、
図13に示すように、係合レバー823の先端と係合部62との係合が解除される。この状態の穿刺器具A2は、
図8および
図9に示す穿刺器具A1と同様の状態であり、再穿刺可能モードへと移行している。この後は、復帰部材51の操作と同様に切替部材52を操作することにより、発射手段7を発射完了状態から発射可能状態へと復帰させることが可能であり、再穿刺を行うことができる。
【0069】
本実施形態によっても、使用者が意図する場合にのみ、形式的に穿刺動作を行ったものの、いまだ体液などによって汚染されていない穿刺要素31を有する穿刺カートリッジ2を再利用することができる。
【0070】
図14は、穿刺器具A2の変形例を示している。本変形例においては、切替部材52は、鍵要素523を含む構成とされている。鍵要素523は、切替部材52のうち本体ケース6の外側に現れる部位を主な構成要素とするものである。鍵要素523には、使用者特定情報表示領域521が設けられていることが好ましい。使用者特定情報表示領域521は、使用者特定情報表示領域511と同様に、使用者を特定する使用者特定情報が表示される領域である。すなわち、鍵要素523は、個々の使用者ごとに所有されるものである。
【0071】
また、本変形例においては、復帰凸部522は、係合などの既知の構造を採用することにより、本体ケース6に常に装着されており、本体ケース6に対してスリット61に沿った相対動が可能とされている。ここで、スリット61は、たとえば上述の第2実施形態で示した形状である。ただし、鍵要素523が未だ装着されていない状態においては、本体ケース6の外側から復帰凸部522を操作することが実際上不可能であり、復帰凸部522の移動が阻止されている。このため、
図14において、鍵要素523が装着されていない状態の穿刺器具A2は、再穿刺阻止モードとされている。
【0072】
一方、鍵要素523が復帰凸部522に嵌合されるなどによって装着されると、切替部材52が形成される。この状態の切替部材52は、使用者の操作を受け付ける状態であり、使用者の操作によって第1姿勢と第2姿勢とを取りうる。鍵要素523を復帰凸部522に装着し、鍵要素をスリット61の周方向に移動させると、復帰凸部522の傾斜面522aが凹部824の傾斜面824aに乗り上げるような格好となる。その結果、係合レバー823が径方向内方へと変形し、係合レバー823の先端と係合部62との係合が解除される。したがって、鍵要素523の装着によって、切替部材52は、第1姿勢から第2姿勢へと移行することが許容される。
【0073】
穿刺器具A2の使用例としては、鍵要素523が装着されない場合、再穿刺阻止モードとして使用され、1つの穿刺カートリッジ2について1回のみの穿刺が行われる。一方、鍵要素523が装着されると、使用者の意図に沿った再穿刺が可能となる。このように、鍵要素523は、再穿刺可能モードへの意向を許容するという重要な機能を果たすため、使用者特定情報表示領域521に使用者特定情報が付された上で、然るべき使用者のみが携帯することが好ましい。
【0074】
なお、
図11〜
図14に示した穿刺器具A2において、切替部材52を第2姿勢に移行させることにより再穿刺可能とした主体(使用者)を特定するために、たとえば、本体ケース6に、上述した使用者特定情報表示領域511と同様の使用者特定情報表示領域を設けてもよい。この使用者特定情報表示領域は、上述した使用者特定情報表示領域511と同様のバリエーションを含むものであり、たとえば使用者の氏名が記載されたシールが貼付された領域であってもよいし、筆記具によって使用者の氏名が記入された領域であってもよい。
【0075】
また、
図11〜
図14に示した穿刺器具A2において、切替部材52の切替動作を阻止する脱着可能なストッパ部品を更に備える構成であってもよい。当該ストッパ部品が装着されていない状態においては、切替部材52は、上述した切替動作が可能である。一方、当該ストッパ部品が装着されると、切替部材52の切替動作が阻止される。このようなストッパ部品の構成は特に限定されず、係合等の機械的原理を利用したもの、電機的原理を利用したもの、あるいは磁力を利用したもの等が適宜採用される。
【0076】
本発明に係る穿刺器具は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る穿刺器具の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。