特許第6553450号(P6553450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553450
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】鉄道車両構体
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/08 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   B61D17/08
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-164635(P2015-164635)
(22)【出願日】2015年8月24日
(65)【公開番号】特開2017-43113(P2017-43113A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】河田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】根本 直
(72)【発明者】
【氏名】側垣 正
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 翔太
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−025050(JP,A)
【文献】 特開2015−020729(JP,A)
【文献】 特開2007−118690(JP,A)
【文献】 特開2007−145256(JP,A)
【文献】 特開2007−112343(JP,A)
【文献】 米国特許第06224144(US,B1)
【文献】 特開2013−052746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口用の開口部が設けられた側構体を備えた鉄道車両構体であって、
前記側構体は、
外板と、
前記外板の内面側で前記開口部の周辺に配置された出入口枠と、
前記外板の内面側で前記出入口枠に隣接して配置された骨部材と、を有し、
前記出入口枠及び前記骨部材は、前記外板の内面に沿う取付部と、前記取付部に交差して車両内側に突出する剛性部とをそれぞれ有し、
前記外板、前記出入口枠、及び前記骨部材は、
前記外板と前記出入口枠の前記取付部とを接合する第1の接合部と、
前記外板と前記骨部材の前記取付部とを接合する第2の接合部と、
前記出入口枠の前記剛性部と前記骨部材の前記剛性部とを接合する第3の接合部と、によって互いに接合されている、
鉄道車両構体。
【請求項2】
前記出入口枠の前記剛性部及び前記骨部材の前記剛性部は、前記外板と略平行に延びる延在部をそれぞれ有し、
前記延在部同士が前記第3の接合部によって互いに接合されている、請求項1記載の鉄道車両構体。
【請求項3】
前記出入口枠の前記剛性部と前記骨部材の前記剛性部とが離間している、請求項2記載の鉄道車両構体。
【請求項4】
前記骨部材は、前記剛性部としてのチャンネル部と、前記取付部としてのフランジ部とを有するハット材であり、
前記出入口枠の前記延在部が前記第3の接合部によって前記チャンネル部の頂部に接合されている、請求項2又は3記載の鉄道車両構体。
【請求項5】
前記出入口枠が前記フランジ部から離間している、請求項4記載の鉄道車両構体。
【請求項6】
前記側構体は、前記外板の内面側で前記出入口枠の反対側に位置するように前記骨部材に隣接して配置された別の骨部材をさらに備え、
前記別の骨部材は、前記外板の内面に沿う取付部と、前記取付部に交差して車両内側に突出する剛性部とを有し、
前記骨部材の前記剛性部と、前記別の骨部材の前記剛性部とが補強板によって連結されている、請求項1〜5のいずれか一項記載の鉄道車両構体。
【請求項7】
前記外板は、幕部、吹寄部の上部、及び出入口上部の一部が一体化された第1の分割板と、腰部及び前記吹寄部の下部が一体化された第2の分割板と、を接合してなる、請求項1〜6のいずれか一項記載の鉄道車両構体。
【請求項8】
前記外板の前記出入口枠側の端部は、隅肉溶接部によって前記出入口枠の外面側に接合されており、
前記外板の前記端部が面取りされている、請求項1〜7のいずれか一項記載の鉄道車両構体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両構体に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両構体に備えられる側構体には、窓用枠及び出入口枠を取り付けるための開口部が設けられる。例えば下記特許文献1には、内面に複数の骨部材が取り付けられた外板において、出入口用の開口部周辺にドアフレーム(出入口枠)を設けることが記載されている。このドアフレームの取付基部は外板の車両外側に位置しており、車両内側から外板に溶接されている。また、取付基部が溶接されている領域においては、骨部材の取付部であるフランジ部が外板に溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−112343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年側構体の美観を向上させるために、当該側構体のフラット化が望まれている。このフラット化を実現する方法の一つとして、ドアフレームを車両内側から外板に被せるように取り付けることが挙げられる。しかしながら、上記特許文献1のように骨部材であるハット材が溶接されている外板に対してドアフレームを車両内側から被せるように取り付けようとすると、外板に対するドアフレームの位置決めが困難になる。
【0005】
このドアフレームの位置決め困難性を解消するためには、例えば骨部材をドアフレームから離間させること、又は外板にドアフレームを取り付けた後に骨部材を外板に取り付けることが考えられる。しかしながら、前者の場合では外板の出入口用の開口部周辺に骨部材が設けられないので、出入口周辺の強度が低下してしまう。また、後者の場合は一般的な側構体の組み立て方法と異なるので、新規に設備等を整える必要があると共に、側構体の製造工程における作業性が低下するため現実的ではない。
【0006】
なお、上記特許文献1においてドアフレームを車両内側から外板に被せるように取り付ける際にドアフレームを骨部材のフランジ部上に載置して固定することも考えられるが、この場合、外板とドアフレームとの間に隙間が生じることとなる。この隙間によりドアフレームの強度が低下してしまうと共に、外板のドアフレーム側の端部に水が浸入して腐食が生じてしまう。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、側構体における出入口周辺の構成に十分な強度を持たせつつ、フラット化できる鉄道車両構体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る鉄道車両構体は、出入口用の開口部が設けられた側構体を備えた鉄道車両構体であって、側構体は、外板と、外板の内面側で開口部の周辺に配置された出入口枠と、外板の内面側で出入口枠に隣接して配置された骨部材と、を有し、出入口枠及び骨部材は、外板の内面に沿う取付部と、取付部に交差して車両内側に突出する剛性部とを其々有し、外板、出入口枠、及び骨部材は、外板と出入口枠の取付部とを接合する第1の接合部と、外板と骨部材の取付部とを接合する第2の接合部と、出入口枠の剛性部と骨部材の剛性部とを接合する第3の接合部と、によって互いに接合されている。
【0009】
この鉄道車両構体によれば、側構体は、外板と、外板の内面側で開口部の周辺に配置された出入口枠とを有しており、外板と出入口枠の取付部とは、第1の接合部によって互いに接合されている。これにより、出入口枠は外板に対して車両内側から取り付けられるので、出入口枠の取付部と外板とによって形成される段差が目立ちにくくなり、側構体をフラット化できる。また、側構体は、外板の内面側で出入口枠に隣接して配置された骨部材を有し、外板、出入口枠、及び骨部材は、上記第1の接合部に加えて、外板と骨部材の取付部とを接合する第2の接合部と、出入口枠の剛性部と骨部材の剛性部とを接合する第3の接合部と、によって互いに接合されている。これにより、出入口枠にかかる力が第1〜第3の接合部を介して外板及び骨部材に分散されるので、側構体における出入口用の開口部周辺の構成の強度を十分に確保できる。
【0010】
また、出入口枠の剛性部及び骨部材の剛性部は、外板と略平行に延びる延在部をそれぞれ有し、延在部同士が第3の接合部によって互いに接合されていてもよい。この場合、出入口枠及び骨部材の剛性部にそれぞれ延在部を設けることで、出入口枠の位置決め困難性を緩和できる。
【0011】
また、出入口枠の剛性部と骨部材の剛性部とが離間してもよい。この場合、出入口枠の位置決め困難性をさらに緩和できる。
【0012】
また、骨部材は、剛性部としてのチャンネル部と、取付部としてのフランジ部とを有するハット材であり、出入口枠の延在部が第3の接合部によってチャンネル部の頂部に接合されてもよい。このように骨部材としてハット材を用いた場合であっても、出入口枠にかかる力が第1〜第3の接合部を介して外板及び骨部材により分散されるので、側構体における出入口用の開口部周辺の構成の強度を十分に確保できる。
【0013】
また、出入口枠がフランジ部から離間していてもよい。この場合、骨部材としてハット材を用いた場合であっても、出入口枠の位置決め困難性を緩和できる。
【0014】
また、側構体は、外板の内面側で出入口枠の反対側に位置するように骨部材に隣接して配置された別の骨部材をさらに備え、別の骨部材は、外板の内面に沿う取付部と、取付部に交差して車両内側に突出する剛性部とを有し、骨部材の剛性部と、別の骨部材の剛性部とが補強板によって連結されていてもよい。この場合、側構体の剛性を一層向上できる。
【0015】
また、外板は、幕部、吹寄部の上部、及び出入口上部の一部が一体化された第1の分割板と、腰部及び吹寄部の下部が一体化された第2の分割板と、を接合してなってもよい。このような外板によって構成される側構体では、出入口用の開口部が外板の上部まで到達せず、コの字状となる。このような場合であっても、外板に骨部材を接合した後に外板の内側から出入口枠を上記開口部の周辺に配置できるので、側構体の製造工程における作業性を向上できる。
【0016】
また、外板の出入口枠側の端部は、隅肉溶接部によって出入口枠の外面側に接合されており、外板の端部が面取りされていてもよい。この場合、車両外側に形成される外板と出入口枠との継ぎ目が、隅肉溶接部と面取りされた外板の端部とによって滑らかになるので、出入口周辺の安全性が向上すると共に、側構体の美観が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、側構体における出入口周辺の構成に十分な強度を持たせつつ、フラット化できる鉄道車両構体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る鉄道車両用構造部材が適用された鉄道車両の一例を示す斜視図である。
図2】側構体の一部を車両外側から見た概略図である。
図3図2のIII−III線矢視断面図である。
図4】変形例に係る鉄道車両構体の側構体の断面図である。
図5】変形例に係る鉄道車両構体の側構体の断面図である。
図6】変形例に係る鉄道車両構体の側構体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る鉄道車両用構造部材が適用された鉄道車両の一例を示す斜視図である。図1に示すように、鉄道車両構体1は、床構体2と、側構体3と、屋根構体4と、妻構体5とを備えている。鉄道車両構体1は、床構体2、側構体3、屋根構体4、及び妻構体5が相互に接合されることにより、乗客を収容する空間を内部に有する箱型形状をなしている。鉄道車両構体1は主に金属製であり、鉄道車両構体1を形成する各構体は、例えば一辺数m、厚さ1.2mm〜2mm程度のステンレス鋼板又はアルミニウム合金板を1枚又は複数枚用いることによって製造されている。
【0021】
床構体2は、鉄道車両の床部を構成する構体として鉄道車両構体1の底部に配置されている。側構体3及び妻構体5は、車両の側部を構成する構体として、床構体2の左右の縁部及び前後の縁部を囲むように立設されている。側構体3には、ドア6を取り付けるための出入口用の開口部3aが等間隔に複数(例えば3ヶ所)設けられている。
【0022】
また、ドア6,6間と側構体3の両端部とには、窓部7が設けられている。妻構体5は、乗客・乗員らが車両間を行き来するための出入口部8が設けられている。屋根構体4は、鉄道車両の屋根部を構成する構体であり、床構体2、側構体3及び妻構体5によって囲まれる空間に対して蓋をするように鉄道車両構体1の上部に配置されている。車両の屋根構体4には、その上部に車内の温度を調整するためのエアコンディショナー、及びパンタグラフ(図示しない)などが設置されている。
【0023】
図2は、側構体の一部を車両外側から見た概略図である。図2に示されるように、側構体3を形成する複数の外板11のそれぞれは、車両上側に位置する第1の分割板12と、車両下側に位置する第2の分割板13とを接合してなる。本実施形態では、第1の分割板12と第2の分割板13とは、レーザ溶接等により互いに溶接されている。
【0024】
第1の分割板12は、幕部14と、吹寄部15の上部15aと、幕部14の両端部から車両前後方向に沿ってそれぞれ突出する突出部16とが一体化されてなる。吹寄部15の上部15aには、窓部7を形成するための切欠部7aが設けられている。突出部16は、出入口用の開口部3aにおいて車両上部の縁を形成する部分であり、出入口上部の一部をなす。この突出部16は、隣接する外板11同士の接合部分となっている。
【0025】
第2の分割板13は、腰部17と、吹寄部15の下部15bとが一体化されてなる。吹寄部15の下部15bには、窓部7を形成するための切欠部7bが設けられている。
【0026】
側構体3における開口部3aの周辺には、開口部3a周辺の構成の強度を向上させるコの字状の出入口枠21が配置されている。この出入口枠21は、車両上下方向に延在する一対の柱部21a,21bと、柱部21a,21bの上端同士を繋ぐ梁部21cとを有する。出入口枠21は外板11の内面11a側から取り付けられており、具体的には、柱部21aは一方の外板11の吹寄部15及び腰部17に取り付けられ、柱部21bは他方の外板11の吹寄部15及び腰部17に取り付けられ、梁部21cは両方の外板11の幕部14及び突出部16に取付けられている。また、出入口枠21の一部が外板11の外面11b側から見て開口部3aから露出するように、出入口枠21が外板11に取り付けられている。出入口枠21は、例えば厚さ4mm程度のステンレス鋼板又はアルミニウム合金板によって製造されている。
【0027】
図3は、図2のIII−III線矢視断面図である。図3に示されるように、側構体3は、外板11の剛性向上に寄与する骨部材31〜33と、骨部材31,32を連結するための補強板34とを備えている。骨部材31〜33及び補強板34の寸法は、外板11に取り付けられる位置と、外板11に要求される剛性及び強度とによって適宜設定される。
【0028】
骨部材31は、車両上下方向に沿って延在するC型チャンネル鋼材であり、外板11の内面11a側で出入口枠21に隣接して配置されている。骨部材31は、外板11に取り付けられる取付部31aと、外板11の剛性(特にせん断応力に対する剛性)の向上に寄与する剛性部31bとを有している。取付部31aは、外板11の内面11aに沿うように延在しており、溶接部W1(第2の接合部)によって外板11に接合されている。例えば、取付部31aと外板11とは、車両内側からスポット溶接されることによって接合されている。
【0029】
剛性部31bは、取付部31aに交差して車両内側に突出している部分である。また、剛性部31bは、その車両内側にて外板11と略平行に延びる延在部31cを有している。延在部31cは、剛性部31bにおける車両内側の端部が取付部31aに重なるように当該剛性部31bを屈折して形成される。延在部31cは、取付部31aに重なることにより、外板11の曲げモーメントに対する剛性向上に寄与する。
【0030】
骨部材32は、車両上下方向に沿って延在するハット形鋼材(ハット材)であり、内面11a側で出入口枠21の反対側に位置するように骨部材31と隣接して配置されている。骨部材32は、取付部としての一対のフランジ部32aと、剛性部としてのチャンネル部32bとを有している。骨部材31側に位置する一方のフランジ部32aは、外板11の内面11aに沿うように延在しており、溶接部W2によって外板11に接合されている。骨部材31と反対側に位置する他方のフランジ部32aは、外板11の内面11aに沿うように延在しており、溶接部W3によって外板11に接合されている。チャンネル部32bは、車両内側に突出する一対のウェブ部と、当該ウェブ部の車両内側の先端同士を繋ぎ、外板11と略平行に延びる頂部とによって構成されている。
【0031】
骨部材33は、車両前後方向に沿って延在するハット材であり、内面11a側で骨部材31の反対側に位置するように骨部材32と隣接して配置されている。骨部材33は、骨部材32と同様に、取付部としての一対のフランジ部33aと、剛性部としてのチャンネル部33bとを有している。骨部材33において骨部材32側の端部は、他方のフランジ部32a上に位置するように背切り加工されている。フランジ部33aの背切り部分は、溶接部W3によってフランジ部32aを介して外板11に接合されている。したがって、溶接部W3は、骨部材32上に骨部材33を重ねた後に設けられる。なお、フランジ部33aは、溶接部W3以外の他のスポット溶接部によって外板11に直接接合されてもよい。また、骨部材33は、車両上下方向に沿って複数並列して配列されている。
【0032】
出入口枠21は、上述した骨部材31〜33が接合された外板11の内面11aに取り付けられている。図3に示されるように、出入口枠21は、外板11の内面11aに沿う取付部22と、取付部22の開口部3a内にて車両内側に屈曲する屈曲部23と、屈曲部23の反対側に設けられると共に取付部22に交差して車両内側に突出する剛性部24とを備えている。これらの取付部22、屈曲部23、及び剛性部24は、出入口枠21を構成する柱部21a,21b及び梁部21cのそれぞれに設けられており、取付部同士、屈曲部同士、剛性部同士は、それぞれ連続して設けられている。
【0033】
取付部22は、溶接部W6(第1の接合部)によって外板11に接合されている。例えば、取付部22と外板11とは、車両内側からスポット溶接されることによって接合されている。また、屈曲部23は、出入口枠21における開口部3a側の剛性向上に寄与するように、2つの屈曲点B1,B2によってその先端が車両内側に突出するように屈曲されている。
【0034】
剛性部24は、外板11の剛性向上に寄与する部分であり、取付部22の延在方向に対して垂直に延在している。剛性部24は、骨部材31の剛性部31bに対して隙間なく接しており、溶接部W7(第3の接合部)によって骨部材31の剛性部31bに接合されている。例えば、剛性部31bと剛性部24とは、車両内側からスポット溶接されることによって接合されている。
【0035】
外板11の出入口枠21側(開口部3a側)の端部11cは、隅肉溶接部FW1によって出入口枠21の外面側に接合されている。隅肉溶接部FW1は、例えば車両外側からレーザ溶接等を行うことによって設けられる。また、この外板11の端部11cが面取りされていることにより、車両外側における外板11と出入口枠21との継ぎ目が滑らかになっている。
【0036】
補強板34は、骨部材31,32による外板11に対する剛性向上を高めるために用いられる板状部材である。補強板34は、溶接部W4,W5を介して骨部材31の剛性部31bと骨部材32のチャンネル部32bとを連結している。本実施形態では、補強板34は、溶接部W4によって出入口枠21の剛性部24及び剛性部31bの延在部31cに接合されていると共に、溶接部W5によってチャンネル部32bの頂部に接合されている。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る鉄道車両構体1によれば、側構体3は、外板11と、外板11の内面11a側で開口部3aの周辺に配置された出入口枠21とを有しており、外板11と出入口枠21の取付部22とは、溶接部W6によって互いに接合されている。これにより、出入口枠21は外板11に対して車両内側から取り付けられるので、出入口枠21の取付部22と外板11とによって形成される段差が目立ちにくくなり、側構体3をフラット化できる。また、側構体3は、外板11の内面11a側で出入口枠21に隣接して配置された骨部材31を有し、外板11、出入口枠21、及び骨部材31は、上記溶接部W6に加えて、外板11と骨部材31の取付部31aとを接合する溶接部W1と、出入口枠21の剛性部24と骨部材31の剛性部31bとを接合する溶接部W7と、によって互いに接合されている。これにより、出入口枠21にかかる力が溶接部W1,W6,W7を介して外板11及び骨部材31に分散されるので、側構体3における出入口用の開口部3a周辺の構成の強度を十分に確保できる。
【0038】
加えて、出入口枠21は、外板11の剛性向上に寄与する剛性部24を有していることから、側構体3における開口部3a周辺の骨部材としての役割も備える。このような出入口枠21を用いることにより、側構体3における開口部3a周辺の剛性向上が実現できる。また、出入口枠21を外板11に取り付けた後に当該外板11に別の外板11を取り付ける場合、出入口枠21を別の外板11に対する位置決め部材として用いることが可能になる。
【0039】
また、側構体3は、外板11の内面11a側で出入口枠21の反対側に位置するように骨部材31に隣接して配置された骨部材32を備え、骨部材32は、外板11の内面11aに沿うフランジ部32aと、フランジ部32aに交差して車両内側に突出するチャンネル部32bとを有し、骨部材31の剛性部31bと、骨部材32のチャンネル部32bとが補強板34によって連結されている。この場合、側構体3の剛性を一層向上できる。
【0040】
また、外板11は、幕部14、吹寄部15の上部15a、及び出入口上部の一部である突出部16が一体化された第1の分割板12と、腰部17及び吹寄部15の下部15bが一体化された第2の分割板13と、を接合してなる。このような外板11によって構成される側構体3では、出入口用の開口部3aが外板11の上部まで到達せず、コの字状となる。このような場合であっても、外板11に骨部材31〜33を接合した後に外板11の内側から出入口枠21を開口部3aの周辺に配置できるので、側構体3の製造工程における作業性を向上できる。
【0041】
また、外板11の出入口枠21側の端部11cは、隅肉溶接部FW1によって出入口枠21の外面側に接合されており、外板11の端部11cが面取りされている。この場合、車両外側に形成される外板11と出入口枠21との継ぎ目が、隅肉溶接部FW1と面取りされた外板11の端部11cとによって滑らかになるので、出入口周辺の安全性が向上すると共に、側構体3の美観が向上する。
【0042】
また、側構体3に設けられる溶接部W1〜W7は、全て車両内側から形成されている。このため、本実施形態の側構体3を形成するための溶接工程は、隅肉溶接を除いて車両内側から行うことができるので、側構体3の製造工程における作業性を向上できる。
【0043】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0044】
例えば上記実施形態で出入口枠21と骨部材31とは隙間なく隣接しているが、図4に示されるように、出入口枠21の剛性部24と骨部材31の剛性部31bとが互いに離間してもよい。この場合、出入口枠21の剛性部24は、その車両内側にて外板11と略平行に延びる延在部25を有する。この延在部25は、骨部材31に向かって延在しており、剛性部31bの延在部31cに重なると共に補強板34に接している。加えて、延在部25は、溶接部W11によって補強板34を介して延在部31cに接合されている。換言すれば、延在部25,31c同士が溶接部W11によって接合されている。この溶接部W11は、例えば補強板34と剛性部24の延在部25とを車両内側からレーザ溶接することによって設けられる。なお、本変形例では外板11と出入口枠21の取付部22とは、溶接部W12,W13によって接合されている。これらの溶接部W12,W13は、例えば車両内側からレーザ溶接することによって形成される。溶接部W12,W13は、溶接部W11の形成と連続するように形成されることが好ましい。
【0045】
このように出入口枠21の剛性部24と骨部材31の剛性部31bとが、延在部25,31cとをそれぞれ有し、剛性部24,31b同士が離間していることにより、出入口枠21の位置決め困難性を緩和できる。また、溶接部W11を介して出入口枠21と骨部材31とが互いに接合することによって、出入口枠21にかかる力が骨部材31に分散されるので、側構体3における出入口用の開口部3a周辺の構成の強度を十分に確保できる。
【0046】
上述したように出入口枠21の剛性部24が延在部25を有し、且つ、出入口枠21の剛性部24と骨部材31の剛性部31bとが互いに離間する場合、図5に示されるように、骨部材31の剛性部31bは、出入口枠21と反対側に設けられてもよい。この場合であっても、図4に示される側構体3と同等の作用効果が奏される。
【0047】
また、出入口枠21の剛性部24が延在部25を有する場合、図6に示されるように、骨部材31Aは、骨部材32,33と同様にハット材であってもよい。この場合、取付部31aがフランジ部となり、剛性部31bがチャンネル部となり、剛性部31bの延在部31cはチャンネル部の頂部になる。また、出入口枠21における剛性部24の延在部25は、溶接部W11によって補強板34を介して骨部材31Aのチャンネル部の頂部に接合されている。このように骨部材31Aとしてハット材を用いた場合であっても、側構体3における出入口用の開口部3a周辺の構成の強度を十分に確保できるといった上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0048】
ハット材である骨部材31Aを用いる場合、出入口枠21と骨部材31Aのフランジ部とは互いに離間してもよいし、互いに接触してもよい。出入口枠21と骨部材31Aのフランジ部とが互いに離間する場合、出入口枠21の位置決め困難性を緩和できる。
【0049】
本発明は、上記実施形態及び上記変形例に限られるものではない。例えば上記実施形態及び上記変形例を適宜組み合わせてもよく、具体例としては、上記実施形態において出入口枠21の取付部22を、溶接部W12,W13によって外板11に接合してもよい。また、上記実施形態においては、必ずしも補強板34が用いられなくてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…鉄道車両構体、3…側構体、3a…開口部、11…外板、11a…内面、11c…端部、12…第1の分割板、13…第2の分割板、14…幕部、15…吹寄部、15a…上部、15b…下部、16…突出部、17…腰部、21…出入口枠、22…取付部、23…屈曲部、24…剛性部、25…延在部、31〜33,31A…骨部材、31a…取付部、31b…剛性部、31c…延在部、34…補強板、FW1…隅肉溶接部、W1〜W7,W11〜W13…溶接部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6