(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の透明樹脂フィルム及び透明導電性フィルムの実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、図の一部又は全部において、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大または縮小等して図示した部分がある。上下等の位置関係を示す用語は、単に説明を容易にするために用いられており、本発明の構成を限定する意図は一切ない。
【0019】
<透明導電性フィルム>
図1は、本発明の一実施形態に係る透明樹脂フィルムの模式的断面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る透明導電性フィルムの模式的断面図である。
図1に示すように、本発明の透明樹脂フィルムは、基材フィルム1と、硬化樹脂層2とを含む。硬化樹脂層2は、樹脂3と無機粒子4とを含む。無機粒子4は、小粒子41と大粒子42とを含む。
図2に示すように、本発明の透明導電性フィルムは、透明樹脂フィルムの少なくとも一方の面側に透明導電膜5が形成されており、硬化樹脂層2上に透明導電膜5が形成されていてもよい。なお、
図1には、基材フィルム1の一方の面側にのみ硬化樹脂層2が形成されているが、基材フィルム1の両面に硬化樹脂層2が形成されていてもよい。また、
図2には、基材フィルム1の一方の面側にのみ硬化樹脂層2及び透明導電膜5が形成されているが、基材フィルム1の両面に硬化樹脂層2及び透明導電膜5が形成されていてもよい。
【0020】
(基材フィルム)
基材フィルムとしては、可視光領域において透明であるものであれば特に制限されず、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。例えば、プラスチックフィルムの材料としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂である。
【0021】
基材フィルムには、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、基材フィルム上に形成される硬化樹脂層や透明導電膜等との密着性を向上させるようにしてもよい。また、硬化樹脂層や透明導電膜を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、基材フィルム表面を除塵、清浄化してもよい。
【0022】
基材フィルムの厚みは、2〜200μmの範囲内であることが好ましく、10〜100μmの範囲内であることがより好ましい。この範囲であると、基材フィルムの機械的強度が十分であり、耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上が図れる。また、フィルムをロール状にして透明導電膜等を連続的に形成する操作が可能である。
【0023】
基材フィルムを形成する樹脂フィルム原反(硬化樹脂層を積層する前の、加熱処理等を施す前のフィルム)の熱収縮率は特に限定されるものでないが、特に樹脂フィルム原反として、MD方向の熱収縮率が1.2%以下であり、かつTD方向の熱収縮率が−0.2〜0.6%であるポリエステル系樹脂フィルムを用いることが好ましく、MD方向の熱収縮率が0.9%以下であり、かつTD方向の熱収縮率が−0.15〜0.5%であるポリエステル系樹脂フィルムを用いることがより好ましい。前記範囲のMD方向の熱収縮率及びTD方向の熱収縮率を有するポリエチレンテレフタレートフィルムが更に好ましい。これにより、強靭性、加工性、透明性に優れたキャリアフィルムとなり、作業性が向上するとともに、うねりの発生を抑制できる。
【0024】
また、基材フィルムの少なくとも一方の面側には硬化樹脂層を有するが、透明導電膜形成面側に、光学調整層、ブロッキング防止層等のアンダーコート層が形成されていてもよい。基材フィルムの透明導電膜形成面側と反対の面側には、必要に応じて易接着層、ブロッキング防止層等のアンダーコート層が設けられていてもよい。また、粘着剤などの適宜の接着手段を用いて他の基材が貼り合わせたものや、他の基材と貼り合わせるための粘着剤層等にセパレータ等の保護層が仮着されたものであってもよい。
【0025】
(硬化樹脂層)
硬化樹脂層は、基材フィルムの少なくとも一方の面側に形成される。これにより、反射特性の制御や、透明導電膜等との密着性を向上できるとともに、透明導電膜の形成やパターン化または電子機器への搭載などの各工程において、基材フィルムに傷が入ることを防ぐことができる。
【0026】
硬化樹脂層は、樹脂と無機粒子とを含む。前記樹脂の材料は、硬化樹脂層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できる。用いる樹脂としては、熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく硬化樹脂層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。
【0027】
紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂としては、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂が好ましく、より好ましくはアクリル系樹脂である。
【0028】
前記樹脂には、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、微粒子、レべリング剤、光重合開始剤、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの常用の添加剤が挙げられる。
【0029】
光重合開始剤としては、放射線反応性成分の種類に応じ、その重合反応の引金となり得る適当な波長の紫外線を照射することによりラジカルもしくはカチオンを生成する物質であれば特に制限されない。光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤などが挙げられ、耐熱性の観点から、アルキルフェノン系光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤の含有量は、樹脂100重量部に対し、通常0.1〜10重量部配合し、0.2〜7重量部の範囲で配合するのが好ましい。
【0030】
レベリング剤としては、例えば、アクリル系、フッ素系またはシリコーン系のレベリング剤が挙げられ、好ましくは、シリコーン系レベリング剤である。シリコーン系レベリング剤としては、例えば、反応性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられる。なかでも好ましくは、反応性シリコーンである。反応性シリコーンを添加すれば、硬化樹脂層表面に滑り性が付与され耐擦傷性が長期間にわたり持続するようになる。レベリング剤の含有量は、樹脂100重量部に対し、通常好ましくは5重量部以下であり、より好ましくは0.01〜5重量部である。
【0031】
硬化樹脂層には、うねりを防止する観点から、無機粒子を含むことが好ましい。無機粒子は、少なくとも大粒子と小粒子とを含むことが好ましい。無機粒子としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ粒子)粒子、中空ナノシリカ粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、酸化ジルコニウム粒子等があげられる。これらの中でも、酸化ケイ素(シリカ粒子)粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、酸化ジルコニウム粒子が好ましい。特に、屈折率の観点から、酸化ケイ素(シリカ粒子)粒子が好適である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記小粒子の粒径は、うねりの発生を防止するとともにヘイズを抑える観点から、10nm〜60nmの範囲が好ましく、15nm〜55nmの範囲がより好ましく、20nm〜50nmの範囲が更に好ましい。なお、「粒径」とは、最頻粒子径(粒径分布の極大値を示す粒径)であることが好ましい。
【0033】
前記大粒子の粒径は、密度が高い状態にパッキングしてうねりを防止する観点から、60nmを超え500nm以下の範囲が好ましく、80nm〜450nmの範囲がより好ましく、100nm〜400nmの範囲が更に好ましい。
【0034】
前記小粒子は、うねりの発生を防止するとともにヘイズを抑える観点から、硬化樹脂層中に、25〜74重量%含まれることが好ましく、30〜70重量%含まれることがより好ましく、45〜69重量%含まれることが更に好ましい。
【0035】
前記大粒子は、密度が高い状態にパッキングしてうねりを防止する観点から、硬化樹脂層中に、1〜30重量%含まれることが好ましく、3〜27重量%含まれることがより好ましく、5〜25重量%含まれることが更に好ましい。
【0036】
小粒子と大粒子との合計は、透明導電膜をパターニングした際の透明導電膜パターン部とエッチング部の熱収縮率の差を低下させ、うねりを防止するとともにヘイズを抑制する観点から、硬化樹脂層中に、46〜75重量%含まれることが好ましく、50〜74重量%含まれることがより好ましく、52〜73重量%含まれることが更に好ましい。
【0037】
大粒子の含有量を小粒子の含有量で割った比率は、ヘイズを低減させるとともに密度が高い状態にパッキングするとの観点から、0.05〜0.75の範囲が好ましく、0.07〜0.67の範囲がより好ましく、0.08〜0.50の範囲が更に好ましい。
【0038】
硬化樹脂層は、硬化型樹脂と必要に応じてレベリング剤、光重合開始剤、無機粒子等とを含む樹脂組成物を基材フィルム上に塗布し、樹脂組成物が溶剤を含む場合には、溶剤の乾燥を行い、熱、活性エネルギー線等により硬化させ得られる。熱は、空気循環式オーブンやIRヒーターなど公知の手段を用いることができるが、これらの方法に限定されない。活性エネルギー線の例としては、紫外線、電子線、ガンマ線などがあるが特に限定されない。
【0039】
硬化樹脂層は、上記の材料を用いて、ウェットコーティング法(塗工法)等により製膜できる。例えば、透明導電膜として酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)を形成する場合、下地層である硬化樹脂層の表面が平滑であると、透明導電膜の結晶化時間を短縮することもできる。かかる観点から、硬化樹脂層はウェットコーティング法により製膜されることが好ましい。
【0040】
硬化樹脂層の厚みは、好ましくは0.5μm〜10μmであり、より好ましくは0.5μm〜7μmであり、最も好ましくは0.5μm〜5μmである。硬化樹脂層の厚みが前記範囲にあると、プラスチックフィルムからのオリゴマー等の低分子量成分の析出を抑止でき、タッチパネル等の視認性が悪化することを防ぐことができる。また、透明導電膜の結晶化時やタッチパネルの組立時の加熱により発生するうねりやカールを抑制することができる。
【0041】
基材フィルム上に硬化樹脂層を形成した際において、透明樹脂フィルムを140℃で90分間加熱した時のMD方向の熱収縮率は、うねりを抑制する観点から、0.45%以下であることが好ましく、0.40%以下であることがより好ましく、0.35%以下であることが更に好ましい。MD方向の熱収縮率の下限値は特に限定されないが、0%以上であることが好ましい。また、TD方向の熱収縮率は、0.40%以下であることが好ましく、0.20%以下であることがより好ましく、0.10%以下であることが更に好ましい。TD方向の熱収縮率の下限値は特に限定されないが、−0.10%以上であることが好ましい。また、うねりの発生を抑制するとともに、パターン視認性を向上させる観点から、MD方向の熱収縮率及びTD方向の熱収縮率がいずれも0.4%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましい。
【0042】
本発明の透明樹脂フィルムの硬化樹脂層のヘイズは、0.3%未満であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましい。透明樹脂フィルムのヘイズが高くなると、タッチパネル等に使用する際に、光の散乱により画像の鮮明性が低下し、表示画面の文字ボケ等を生じ易くなる傾向がある。
【0043】
硬化樹脂層は、その他の無機物を含有することが可能である。無機物としては、NaF(1.3)、Na
3AlF
6(1.35)、LiF(1.36)、MgF
2(1.38)、CaF
2(1.4)、BaF
2(1.3)、LaF
3(1.55)、CeF(1.63)など(括弧内の数値は屈折率を示す)が挙げられる。
【0044】
(光学調整層)
透明樹脂フィルムと透明導電膜との間に、1層以上の光学調整層が形成されることが好ましい。光学調整層は、透明導電膜が形成されているパターン形成部と透明導電膜が除去されたパターン開口部との光学厚み差を調整することによって、両者間の反射率差を低減し、パターンが視認され難くすることを目的として設けられる。
【0045】
光学調整層は、無機物、有機物、又は、無機物と有機物との混合物により形成することができる。例えば、無機物として、NaF(1.3)、Na
3AlF
6(1.35)、LiF(1.36)、MgF
2(1.38)、CaF
2(1.4)、BaF
2(1.3)、SiO
2(1.46)、LaF
3(1.55)、CeF
3(1.63)、Al
2O
3(1.63)などの無機物〔上記各材料の括弧内の数値は屈折率である〕が挙げられる。これらのなかでも、SiO
2、MgF
2、Al
2O
3などが好ましく用いられる。特に、SiO
2が好適である。
【0046】
上記有機物としてはアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などが挙げられる。これら有機物は、少なくとも1種が用いられる。特に、有機物としては、メラミン系樹脂とアルキド系樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
【0047】
形成された光学調整層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセス、またはウェットコーティング法(塗工法)などにより形成できる。
【0048】
光学調整層の屈折率は、透明導電膜の屈折率との差が、0.1以上であることが好ましい。透明導電体層の屈折率と光学干渉層の屈折率の差は、0.1以上0.9以下、さらには0.1以上0.6以下であるのが好ましい。なお、光学干渉層の屈折率は、通常、1.3〜2.5、さらには1.38〜2.3、さらには1.4〜2.3であるのが好ましい。このように光学調整層の屈折率を制御することによって、パターン形成部とパターン開口部との反射率差を低減することができる。
【0049】
光学調整層の厚みは、特に制限されるものではないが、光学設計や、透明樹脂フィルムからのオリゴマー発生防止効果の点から、通常、1〜300nm程度であり、好ましくは5〜300nmである。なお、光学調整層が2層以上からなる場合、各層の厚みは、5〜250nm程度であることが好ましく、10〜250nmであることがより好ましい。
【0050】
このような光学調整層は、基材フィルム上に直接設けることもできるし、前述のような硬化樹脂層上に設けてもよい。光学調整層も、上記の硬化樹脂層と同様に透明樹脂フィルムの加熱寸法変化の抑制に寄与し得る。しかしながら、光学調整層は、一般に硬化樹脂層に比して厚みが小さいために、加熱寸法変化の抑制効果は硬化樹脂層の方が優れている。そのため、基材フィルム上に硬化樹脂層を設け、その上に光学調整層を設けることで、透明樹脂フィルムの寸法変化を抑制しつつ、パターン形成部とパターン開口部との間の反射率差を抑制することもできる。
【0051】
(透明導電膜)
透明導電膜は、少なくとも1層の透明導電膜が形成されたものであり、2層以上の透明導電膜を有していてもよい。透明導電膜は、金属の導電性酸化物を主成分とする薄膜、または主金属と1種以上の不純物金属を含有する複合金属酸化物を主成分とする薄膜である。これらの導電性薄膜は、透明でありかつ導電性を有するものであれば、その構成材料は特に限定されず、Sc,Y,Si,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Tc,Re,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,Al,Mg,Ga,Ti,Ge,In,Sn,Pb,As,Sb,Bi,Se,Te,Iからなる群より選択される1種の金属を主成分とする金属酸化物が好適に用いられる。透明導電膜の透明性や導電性の観点からは、主金属元素はIn,Zn,Snのいずれかであることが好ましく、インジウム系複合酸化物が最も好ましい。透明導電膜が、主金属と不純物金属を含有する複合金属酸化物である場合、不純物金属としても、上記群より選択される1種以上の金属が好適に用いられる。
【0052】
透明導電膜のキャリア密度を上昇させて透明導電膜を低抵抗化する観点においては、複合金属酸化物における不純物金属は、主金属よりも価電子数の多いものが好適に用いられる。このような複合金属酸化物としては、インジウム・スズ複合酸化物(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)等が挙げられる。中でも低抵抗かつ高透明性の透明導電膜を形成する観点において、インジウム・スズ複合酸化物が最も好適に用いられる。このようなインジウム・スズ複合酸化物は、可視光領域(380nm〜780nm)で透過率が高く、且つ単位面積当りの表面抵抗値が低いという特徴を有している。
【0053】
透明導電膜の形成方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0054】
各透明導電膜は結晶質であってもよく、非晶質であってもよい。例えば、透明基材としてプラスチックフィルムが用いられ、透明導電膜としてスパッタリング法によってITO膜が形成される場合、基材の耐熱性による制約があるため、高い温度でスパッタ製膜を行うことができない。そのため、製膜直後の透明導電膜は非晶質膜(一部が結晶化している場合もある)となっている場合が多い。このような非晶質の透明導電膜は結晶質のもの比して透過率が低く、加湿熱試験後の抵抗変化が大きい等の問題を生じる場合がある。かかる観点からは、一旦非晶質の透明導電膜を形成した後、大気中の酸素存在下で加熱することにより、結晶膜へ転換させてもよい。透明導電膜を結晶化することにより、透明性が向上し、低抵抗化が図られるとともに、さらに加湿熱試験後の抵抗変化が小さく、加湿熱信頼性が向上するなどの利点がもたらされる。
【0055】
インジウム・スズ系複合酸化物層の表面抵抗値は、好ましくは300Ω/□以下であり、さらに好ましくは270Ω/□以下である。このような表面抵抗値の小さい透明導電性フィルムは、例えば、スパッタリング法又は真空蒸着法により、インジウム・スズ系複合酸化物の非晶質層を硬化樹脂層上に形成した後、120℃〜200℃で30〜90分間程度加熱処理して、非晶質層を結晶質層に変化させることにより得られる。この転化させる手段は、特に限定されないが空気循環式オーブンやIRヒーターなどが用いられる。後述するようなエッチング処理により透明導電膜をパターン化する場合、透明導電膜の結晶化は、エッチング加工前に行うこともできるし、エッチング加工後に行うこともできる。
【0056】
「結晶質」の定義については、透明基材上に透明導電膜が形成された透明導電性フィルムを、20℃、濃度5重量%の塩酸に15分間浸漬した後、水洗・乾燥し、15mm間の端子間抵抗をテスタにて測定を行い、端子間抵抗が10kΩを超えない場合、ITO膜の結晶質への転化が完了したものとする。
【0057】
透明導電膜の厚みは、15nm〜35nmであることが好ましく、20nm〜30nmであることがより好ましい。この範囲内であると、膜表面の電気抵抗が高くならず、連続被膜を行い易いとともに、透明性の低下を防ぐことができる。
【0058】
透明導電膜のパターンニングは、エッチングにより行うことが好ましい。エッチングに際しては、パターンを形成するためのマスクにより、透明電極に対応する領域の表面を覆って、エッチャントにより透明導電膜をエッチングする方法が好適に用いられる。透明導電膜のエッチングに用いられるエッチャントは、透明導電膜を形成する材料によって適宜に選択し得る。透明導電膜としてITO等が用いられる場合は、エッチャントとして酸が好適に用いられる。酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液が挙げられる。透明導電膜のエッチングは、非晶質膜を形成後、結晶化する前に行うこともできるし、結晶化後に行ってもよい。
【0059】
透明導電性フィルムにおいて、140℃で90分間加熱した時のMD方向の熱収縮率は、うねりを抑制する観点から、0.45%以下であることが好ましく、0.40%以下であることがより好ましく、0.35%以下であることが更に好ましい。MD方向の熱収縮率の下限値は特に限定されないが、0%以上であることが好ましい。また、TD方向の熱収縮率は、0.40%以下であることが好ましく、0.20%以下であることがより好ましく、0.10%以下であることが更に好ましい。TD方向の熱収縮率の下限値は特に限定されないが、−0.10%以上であることが好ましい。また、うねりの発生を抑制するとともに、パターン視認性を向上させる観点から、MD方向の熱収縮率及びTD方向の熱収縮率がいずれも0.4%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましい。
【0060】
本発明の透明導電性フィルムの硬化樹脂層のヘイズは、0.3%未満であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましい。透明導電性フィルムのヘイズが高くなると、タッチパネル等に使用する際に、光の散乱により画像の鮮明性が低下し、表示画面の文字ボケ等を生じ易くなる傾向がある。
【0061】
(保護フィルム)
透明導電性フィルムの破断を防止する観点から、透明導電性フィルムに後述する粘着剤層を介して保護フィルムを積層して透明導電性積層体とすることができる。保護フィルムは、ポリエステル系樹脂を含む。基材フィルムの両面に上述の硬化樹脂層を設けることにより、基材フィルム自体に傷は入りにくくなるが、より硬く裂けやすくなる。また、透明樹脂フィルムが長尺状の場合には、例えば透明導電膜の形成工程や透明導電膜のパターン化工程などで、フィルム走行時に透明樹脂フィルムに破断が発生しやすくなるという課題がある。保護フィルムを構成するポリエステル系樹脂フィルムは、機械強度を向上させる観点から、一軸延伸処理や二軸延伸処理などの延伸処理がされていることが好ましい。機械強度や耐熱特性向上の観点から、特に二軸延伸の処理がされていることが好ましい。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂やポリエチレンナフタレート系樹脂が挙げられ、ポリエチレンテレフタレート系樹脂が機械的特性や光学特性、入手容易性の点で好ましい。
【0062】
保護フィルムの厚みは、120μm〜250μmであれば良いものの、140μm〜220μmがより好ましく、145μm〜190μmが更に好ましい。この範囲であれば、カールの発生を防止できるとともに、フィルムをロール状に巻き取る際の作業効率等を向上させることができる。
【0063】
(粘着剤層)
粘着剤層の形成材料としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できるが、好ましくはアクリル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、シリコーン系粘着剤であり、より好ましくはアクリル系粘着剤である。形成される粘着剤層の乾燥厚さは適宜に調整することができるが、通常、1〜40μm程度であり、3〜35μmが好ましく、さらには5〜30μmが好ましい。
【0064】
<タッチパネル>
本発明のタッチパネルは、以上で述べた透明樹脂フィルム及び透明導電性フィルムを用いたものである。例えば、透明樹脂フィルム及び透明導電性フィルムは、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルに好適に適用できる。
【0065】
タッチパネルの形成に際しては、透明導電性フィルムの一方または両方の主面に透明な粘着剤層を介して、ガラスや高分子フィルム等の他の基材等を貼り合わせることができる。例えば、透明導電性フィルムの透明導電膜が形成されていない側の面に透明な粘着剤層を介して透明基体が貼り合わせられた積層体を形成してもよい。透明基材は、1枚の基体フィルムからなっていてもよく、2枚以上の基体フィルムの積層体(例えば透明な粘着剤層を介して積層したもの)であってもよい。
【0066】
本発明にかかる透明樹脂フィルム及び透明導電性フィルムを、タッチパネルの形成に用いた場合、タッチパネル等の表示装置の視認性が向上できるとともに、うねりの発生を防止することができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明に関して実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
<実施例1>
(硬化樹脂層の形成)
厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという。三菱樹脂株式会社製)の片面に、紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))250重量部、無機大粒子(日産化学社製、MP−1040(粒径100nm))21重量部(硬化樹脂層中の無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 66.0 /6.0))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し72%になるよう調整し、乾燥後の厚みが1.0μmとなるように塗布し、80℃で1分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量240mJ/cm
2の紫外線を照射することで、無機粒子を含有する硬化樹脂層を形成した。次に、PETフィルムの前記硬化樹脂層を形成した面とは反対面側に、前記と同様に紫外線硬化型アクリル樹脂を、乾燥後の厚みが1.0μmとなるように塗布し、80℃で1分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量240mJ/cm
2の紫外線を照射することで、PETフィルムの両面に無機粒子を含有する硬化樹脂層を形成した。
【0069】
(透明導電膜の形成)
次に、Arガス80体積%およびO
2ガス20体積%とからなる4×10
−3Torrの雰囲気中で、酸化インジウムと酸化スズを有する焼結体のターゲット材料を用いて、DCマグネトロンスパッタ法により、PETフィルムの硬化樹脂層上に透明導電膜を24nmの厚みで形成した。
【0070】
その後、上記インジウム・スズ酸化物の非晶質層が形成されたPETフィルムを、空気循環式オーブンに投入し、140℃で90分間の加熱処理を行い、透明導電膜を非晶質から結晶質に転化させた透明導電性フィルムを作製した。
【0071】
(パターン化した透明導電性フィルムの形成)
この透明導電性フィルムの透明導電膜上に、市販のポリイミドテープ(2mm幅)を2mmのピッチでMD方向に沿って貼りあわせた。透明導電性フィルムを50℃の10%塩酸水溶液に10分間浸漬し、不要な透明導電膜をエッチングした後、水洗を行った。透明導電膜がエッチングされていることを表面抵抗にて確認した後に、ポリイミドテープを剥がした。その後、140℃で30分間の乾燥処理を行い、エッチング液洗浄後の乾燥工程を模擬して、パターン化した透明導電膜が形成された透明導電性フィルムを作製した。
【0072】
<実施例2>
実施例1において、上記紫外線硬化型アクリル樹脂混合物を、乾燥後の厚みが3.5μmとなるように両面に塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0073】
<実施例3>
実施例1において、上記紫外線硬化型アクリル樹脂混合物を、乾燥後の厚みが5.0μmとなるように両面に塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0074】
<実施例4>
紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))200重量部、無機大粒子(日産化学社製、MP−1040(粒径100nm))80重量部(無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 52 /21))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し73%になるよう調整したこと、及び乾燥後の厚みが2.0μmとなるように両面に塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0075】
<実施例5>
紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))59.5重量部、無機大粒子(日産化学社製、MP−1040(粒径100nm))43重量部(無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 29 /21))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し50%になるよう調整したこと、及び乾燥後の厚みが2.0μmとなるように両面に塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0076】
<実施例6>
紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))230重量部、無機大粒子(日産化学社製、MP−1040(粒径100nm))20重量部(無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 65 / 6))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し71%になるよう調整して、PETフィルムの透明導電膜形成面側のみに、乾燥後の厚みが1.5μmとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0077】
<実施例7>
実施例6において、紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))250重量部、無機大粒子(日産化学社、MP−1040(粒径100nm))21重量部(無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 66 / 6))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し72%になるよう調整したこと以外は、実施例6と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0078】
<実施例8>
実施例6において、紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))190重量部、無機大粒子(日産化学社製、MP−1040(粒径100nm))77重量部(無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 51 / 21))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し72%になるよう調整したこと以外は、実施例6と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0079】
<実施例9>
実施例6において、紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))200重量部、無機大粒子(日産化学社製、MP−1040(粒径100nm))80重量部(無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 52 / 21))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し73%になるよう調整したこと以外は、実施例6と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0080】
<実施例10>
実施例6において、紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))277重量部、無機大粒子(日産化学社製、MP−1040(粒径100nm))25重量部(無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 68 / 6))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し74%になるよう調整したこと以外は、実施例6と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0081】
<実施例11>
実施例6において、紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))215重量部、無機大粒子(日産化学社製、MP−1040(粒径100nm))85重量部(無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 53 / 21))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し74%になるよう調整したこと以外は、実施例6と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0082】
<比較例1>
実施例1において、紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))65重量部、無機大粒子(日産化学社製、MP−1040(粒径100nm))5重量部(無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 37 / 3))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し40%になるよう調整したこと、及び、乾燥後の厚みが2.0μmとなるように両面に塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0083】
<比較例2>
比較例1において、紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))280重量部、無機大粒子(日産化学社製、MP−1040(粒径100nm))5重量部(無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 72 / 1))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し73%になるよう調整したこと以外は、比較例1と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0084】
<比較例3>
比較例1において、紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))10重量部、無機大粒子(日産化学社製MP-1040(粒径100nm))93重量部(無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 5 / 45))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し50%になるよう調整したこと以外は、比較例1と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0085】
<比較例4>
比較例1において、紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))120重量部、無機大粒子(日産化学社製、MP−1040(粒径100nm))150重量部(無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 32 / 40))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し72%になるよう調整したこと、及びPETフィルムの透明導電膜形成面側のみに、乾燥後の厚みが1.5μmとなるように塗布したこと以外は、比較例1と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0086】
<比較例5>
比較例1において、紫外線硬化型アクリル樹脂(大阪有機化学工業社製、ビスコート300)100重量部に対し、無機小粒子(BYK社製、NANOBYK−3605(粒径20nm))235重量部、無機大粒子(日産化学社製、MP−1040(粒径100nm))90重量部(無機粒子の含有割合:小粒子(粒径20nm)/大粒子(粒径100nm)= 55 / 21))、レべリング剤(DIC製、GRANDIC PC4100)0.5重量部、及び光開始剤(BASF製、IRGACURE907)5重量部を配合し、粒子充填量が固形分に対し76%になるよう調整したこと、及びPETフィルムの透明導電膜形成面側のみに、乾燥後の厚みが1.5μmとなるように塗布したこと以外は、比較例1と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0087】
<評価>
(1)厚みの測定
1.0μm未満の厚みは、透過型電子顕微鏡(日立製作所製、製品名「H−7650」)を用いて、透明導電性フィルムの断面を観察して測定した。1.0μm以上の厚みは、膜厚計(Peacock社製、デジタルダイアルゲージDG−205)を用いて測定した。評価した結果を表1に示す。
【0088】
(2)MD方向とTD方向の熱収縮率
透明樹脂フィルム及び透明導電性フィルムの長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の熱収縮率を以下のように算出した。具体的には、フィルムを、幅100mm、長さ100mmに切り取り(試験片)、MD方向とTD方向のそれぞれの方向に長さ80mmの直線をひき十字印をつけて、MD方向とTD方向の印の長さ(mm)をオリンパスデジタル式小型測定顕微鏡STM5(オリンパス光学工業(株)製)により測定した。その後、加熱処理(140℃、90分)を行った。室温で1hr放冷後に再度、MD方向とTD方向の印の長さを測定し、その測定値を下記式に代入することにより、MD方向とTD方向のそれぞれの熱収縮率を求めた。評価した結果を表1に示す。
熱収縮率(%)=[[加熱前の印の長さ(mm)−加熱後の印の長さ(mm)]/加熱前の印の長さ(mm)]×100
【0089】
(3)うねりの測定
透明導電性フィルムの積層体を140℃、30分条件で乾燥させて、エッチング工程後に得られた透明導電性フィルムの、透明電極パターンのある部分とない部分のうねり(高低差)を目視により評価した。評価した結果を表1に示す。
【0090】
<評価基準>
◎:うねりが防止されており、非常に良好
○:うねりが防止されており、良好
×:うねりが発生
【0091】
(4)ヘイズの測定
透明樹脂フィルムの表面(硬化樹脂層側)のヘイズは、Direct reading haze computer (Suga Test Instruments社製 製品名「HGM−ZDP」)を用いて測定した。硬化樹脂層単体の外部ヘイズを測定する為、以下の手順で測定した。すなわち、硬化樹脂層付き透明樹脂フィルム表面のヘイズを測定した(i)。iで測定した硬化樹脂層付き透明樹脂フィルム表面の硬化樹脂層面に粘着剤を介してガラス(厚み1.2〜1.5mmのMATSUNAMI製スライドガラス)を貼り、ヘイズを測定した(ii)。iとiiとの差(i−ii)で硬化樹脂層のみのヘイズを算出するものとした。評価結果を表1に示す。
【0092】
(5)表面抵抗値の測定
JIS K7194に準じて、4端子法により測定した。
【0093】
【表1】
【0094】
(結果及び考察)
実施例1〜11においては、うねりは発生せず、ヘイズは小さく、良好な結果が得られた。一方、比較例1〜2においては、硬化樹脂層中の大粒子の添加量が少なすぎるため、ヘイズは改善したものの、うねりが発生した。また、比較例3〜5においては、硬化樹脂層中の大粒子の添加量が多すぎるため、うねりの発生は抑制できたものの、ヘイズが大きくなった。