(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の免震装置では、建物の風揺れを防止するために、リミットスイッチ及び地震センサの両方の検出信号に基づいて切換弁を随時、制御しなければならず、その制御処理が煩雑である。また、リミットスイッチ及び地震センサを必要とすることに加え、両者及び切換弁をコントローラに接続しなければならないため、その構成が非常に複雑になってしまう。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、簡便な構成によって、構造物の風揺れ及び地震による振動を適切に抑制することができる構造物の免震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、構造物の免震層に設けられ、構造物の振動を抑制する構造物の免震装置であって、構造物を含む系内における免震層よりも上側の上層部及び免震層よりも下側の下層部の一方に連結された筒状の本体部と、上層部及び下層部の他方に連結され、本体部内に本体部の軸線方向に摺動可能に設けられるとともに、本体部内を第1流体室と第2流体室に区画し、構造物が振動していないときに所定の中立位置に位置するピストンと、を備え、本体部の内部空間は、軸線方向において、ピストンの中立位置を含む所定の内側区間と、内側区間の両外側の所定の一対の外側区間に区分され、第1及び第2流体室に充填された粘性流体と、ピストンに設けられ、第1流体室内の粘性流体の圧力が第1所定圧力に達したときに開弁し、第1及び第2流体室を互いに連通させる第1リリーフ弁と、ピストンに設けられ、第2流体室内の粘性流体の圧力が第2所定圧力に達したときに開弁し、第1及び第2流体室を互いに連通させる第2リリーフ弁と、本体部に設けられ、一対の外側区間の一方及び内側区間に連通する一方の外側連通路と、一対の外側区間の他方及び内側区間に連通する他方の外側連通路とから成る一対の外側連通路と、をさらに備え、一対の外側連通路は、ピストンが一対の外側区間の一方に位置しているときに、一方の外側区間に連通する一方の外側連通路によってピストンをバイパスすることにより、ピストンが一対の外側区間の他方に位置しているときに、他方の外側区間に連通する他方の外側連通路によってピストンをバイパスすることにより、第1及び第2流体室を互いに連通させるとともに、ピストンが内側区間に位置するときに、ピストンをバイパスしないように構成されて
おり、ピストンが内側区間に位置しているときに、ピストンをバイパスし、第1及び第2流体室を互いに連通させるための内側連通路と、地震の終了後にピストンを中立位置に復帰させるために開弁される、内側連通路を開閉するための手動式の開閉弁と、をさらに備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、筒状の本体部が、免震層よりも上側の上層部及び免震層よりも下側の下層部の一方に連結されており、本体部内には、ピストンが軸線方向に摺動可能に設けられている。このピストンは、上層部及び下層部の他方に連結され、本体部内を第1流体室と第2流体室に区画するとともに、構造物が振動していないときに所定の中立位置に位置している。第1及び第2流体室には、粘性流体が充填されており、ピストンには、第1リリーフ弁及び第2リリーフ弁が設けられている。この第1リリーフ弁は、第1流体室内の粘性流体の圧力が第1所定圧力に達したときに開弁し、それにより第1及び第2流体室が互いに連通させられる。上記の第2リリーフ弁は、第2流体室内の粘性流体の圧力が第2所定圧力に達したときに開弁し、それにより第1及び第2流体室が互いに連通させられる。また、ピストンが中立位置を含む所定の内側区間よりも軸線方向の両外側の所定の一対の外側区間に位置しているときにそれぞれ、一対の外側連通路がピストンをバイパスし、それにより第1及び第2流体室が互いに連通させられる。
【0009】
以上の構成から明らかなように、構造物の振動に伴う上層部と下層部の間の相対変位は、本体部及びピストンに伝達される。この場合、ピストンが内側区間に位置しているときには、第1及び第2流体室内の粘性流体の圧力が第1及び第2所定圧力にそれぞれ達しない限り、両流体室が第1又は第2リリーフ弁を介して互いに連通させられないので、ピストンが本体部に対してロックされる。これにより、構造物の風揺れが発生するようなときに、構造物の上層部を、免震装置を介して、下層部に連結できるので、両者の間の相対変位を抑制し、構造物の風揺れを適切に抑制することができる。
【0010】
また、地震により構造物が振動する場合には、風揺れの場合と比較して、上層部及び下層部から本体部及びピストンに、大きな力が入力されることにより、ピストンが本体部内を摺動する。ピストンが本体部内の内側区間を摺動しているときには、第1及び第2流体室内の粘性流体の圧力が第1及び第2所定圧力にそれぞれ達することで、第1又は第2リリーフ弁が開弁し、粘性流体が第1及び第2流体室の間で流動する結果、粘性流体による減衰力が上層部及び下層部に作用する。また、ピストンが本体部内の外側区間を摺動しているときには、粘性流体が、外側連通路を介して、第1及び第2流体室の間で流動する結果、粘性流体による減衰力が上層部及び下層部に作用する。以上のように、地震により構造物が振動しているときに、粘性流体による減衰力を上層部及び下層部に作用させることができるので、地震による構造物の振動を適切に抑制することができる。
【0011】
この場合、ピストンが外側区間を移動している場合に、内側区間を移動している場合と比較して、粘性流体による減衰力が小さくなるので、地震による上層部と下層部の間の相対変位が大きいときに、免震層による上層部と下層部の間の絶縁効果を適切に得ることができる。また、前述した従来の免震装置と異なり、リミットスイッチ及び地震センサの両方の検出信号に基づく切換弁の制御を行うことなく、簡便な構成によって上述した効果を得ることができる。
【0013】
地震による構造物の振動に伴い、ピストンが本体部内を摺動し、ピストンが内側区間における中立位置以外の位置にある状態で、地震が終了したときには、前述した本発明による免震装置の構成から明らかなように、粘性流体がピストンを本体部に対してロックするように作用することにより、地震に伴って発生した免震層の変形が残留する可能性がある。上述した構成によれば、ピストンが内側区間に位置しているときに、ピストンをバイパスする内側連通路によって、第1及び第2流体室が互いに連通させられるとともに、
地震の終了後にピストンを中立位置に復帰させるために、内側連通路が
手動式の開閉弁によって開閉される。
【0014】
このため、地震が終了するまでは、開閉弁により内側連通路を閉鎖することによって、
本発明による前述した効果、すなわち、構造物の風揺れ及び地震による振動を適切に抑制できるという効果を、適切に得ることができる。また、地震が終了した以後に、開閉弁により
手動で内側連通路を開放することによって、第1及び第2流体室の間で、粘性流体を、内側連通路を介して流動させることができる。これにより、ピストンが本体部内を摺動しやすくなるので、免震層の復元力によって、地震による免震層の変形をなくすことができる。この場合、前述した従来の免震装置の切換弁と異なり、開閉弁を随時、制御する必要はなく、地震が終了しない限り、開閉弁を閉弁状態に保持し、地震が終了した以後に開弁すればよいので、例えば、手動式の常閉型の開閉弁を用いるとともに、地震終了後のメンテナンス時に、オペレータが開閉弁を一時的に開弁すればよい。
【0015】
前記目的を達成するために、請求項
2に係る発明は、構造物の免震層に設けられ、
構造物の振動を抑制する構造物の免震装置であって、構造物を含む系内における免震層よりも上側の上層部及び免震層よりも下側の下層部の一方に連結された筒状の本体部と、上層部及び下層部の他方に連結され、本体部内に本体部の軸線方向に摺動可能に設けられるとともに、本体部内を第1流体室と第2流体室に区画し、構造物が振動していないときに所定の中立位置に位置するピストンと、を備え、本体部の内部空間は、軸線方向において、ピストンの中立位置を含む所定の内側区間と、内側区間の両外側の所定の一対の外側区間に区分され、第1及び第2流体室に充填された粘性流体と、ピストンに設けられ、第1流体室内の粘性流体の圧力が第1所定圧力に達したときに開弁し、第1及び第2流体室を互いに連通させる第1リリーフ弁と、ピストンに設けられ、第2流体室内の粘性流体の圧力が第2所定圧力に達したときに開弁し、第1及び第2流体室を互いに連通させる第2リリーフ弁と、本体部に設けられ、一対の外側区間の一方及び内側区間に連通する一方の外側連通路と、一対の外側区間の他方及び内側区間に連通する他方の外側連通路とから成る一対の外側連通路と、をさらに備え、一対の外側連通路は、ピストンが一対の外側区間の一方に位置しているときに、一方の外側区間に連通する一方の外側連通路によってピストンをバイパスすることにより、ピストンが一対の外側区間の他方に位置しているときに、他方の外側区間に連通する他方の外側連通路によってピストンをバイパスすることにより、第1及び第2流体室を互いに連通させるとともに、ピストンが内側区間に位置するときに、ピストンをバイパスしないように構成されており、粘性流体が充填され、ピストンが内側区間に位置しているときに、第1及び第2流体室に連通する内側連通路と、内側連通路に設けられ、内側連通路内の粘性流体を第1又は第2流体室に流動させるとともに、流動量を変更することによって、ピストンを本体部内で摺動させるように、第1及び第2流体室内の粘性流体の圧力を調整するための流量可変装置と、をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
請求項
1に係る発明の説明で述べたように、地震による構造物の振動に伴い、ピストンが本体部内を摺動し、ピストンが内側区間における中立位置以外の位置にある状態で、地震が終了したときには、粘性流体がピストンを本体部に対してロックするように作用することにより、地震に伴って発生した免震層の変形が残留する可能性がある。上述した構成によれば、ピストンが内側区間に位置しているときに、内側連通路が第1及び第2流体室に連通する。この内側連通路には、粘性流体が充填されるとともに、流量可変装置が設けられている。この流量可変装置によって、内側連通路内の粘性流体が第1又は第2流体室に流動させられるとともに、その流動量が変更されることにより、ピストンを本体部内で摺動させるように、第1及び第2流体室における粘性流体の圧力が調整される。
【0017】
このため、地震が終了するまでは、流量可変装置を停止することによって、内側連通路と第1及び第2流体室との間での粘性流体の流動を停止することで、請求項1に係る発明による前述した効果、すなわち構造物の風揺れ及び地震による振動を適切に抑制できるという効果を、適切に得ることができる。また、地震が終了した以後に、流量可変装置を作動させることにより、内側連通路と第1及び第2流体室との間で粘性流体を流動させ、ピストンが中立位置に位置するように、第1及び第2流体室における粘性流体の圧力を調整することによって、地震による免震層の変形をなくすことができる。この場合、前述した従来の免震装置の切換弁と異なり、流量可変装置を随時、制御する必要はなく、地震が終了しない限り、流量可変装置を停止状態に保持し、地震が終了したときに作動させればよいので、地震終了後のメンテナンス時に、オペレータが流量可変装置を一時的に作動させればよい。
【0018】
請求項
3に係る発明は、請求項
1又は2に記載の構造物の免震装置において、上層部及び下層部の他方に連結され、本体部に軸線方向に移動可能に部分的に収容されるとともに、ピストンに対して軸線方向に移動可能なロッドと、ロッドに一体に設けられ、本体部に収容されるとともに、ピストンの軸線方向の両側にそれぞれ配置された一対のフランジと、本体部に収容され、本体部に取り付けられるとともに、ピストンの軸線方向の両側にそれぞれ配置された一対の第1滑車と、本体部に収容され、一対のフランジにそれぞれ取り付けられた一対の第2滑車と、本体部に収容されるとともに、一端部がピストンに連結され、ピストンから互いに反対方向に延び、その途中で第1及び第2滑車に巻き回されるとともに、他端部が一対のフランジにそれぞれ連結された一対のケーブルと、をさらに備え、ピストンは、一対のケーブル、一対のフランジ及びロッドを介して、上層部及び下層部の他方に連結されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、上層部及び下層部の他方に連結されたロッドが、ピストンに対して軸線方向に移動可能であり、本体部に軸線方向に移動可能に部分的に収容されている。このロッドには、一対のフランジが一体に設けられており、これらの一対のフランジは、本体部に収容されるとともに、ピストンの軸線方向の両側にそれぞれ配置されている。また、本体部には、一対の第1滑車、第2滑車及びケーブルが収容されている。これらの一対の第1滑車は、本体部に取り付けられるとともに、ピストンの軸線方向の両側にそれぞれ配置されており、一対の第2滑車は、一対のフランジにそれぞれ取り付けられている。また、上記の一対のケーブルは、一端部がピストンに連結され、ピストンから互いに反対方向に延び、その途中で第1及び第2滑車に巻き回されるとともに、他端部が一対のフランジにそれぞれ連結されている。ピストンは、これらの一対のケーブル、一対のフランジ及びロッドを介して、上層部及び下層部の他方に連結されている。
【0020】
地震による構造物の振動時、上層部と下層部が互いに相対的に変位したときに、当該変位の方向に応じて、ピストンは、ロッド及びケーブルで引っ張られることにより、本体部内を摺動する。この場合、ケーブルやピストンなどが上述したように構成されているため、ピストンは、上層部及び下層部が所定方向に相対的に変位したときに、ロッド及び一対のケーブルの一方で引っ張られることにより第1流体室側に移動し、上層部及び下層部が所定方向と反対方向に相対的に変位したときに、ロッド及び一対のケーブルの他方で引っ張られることにより第2流体室側に移動する。このように、構造物の振動に伴って上層部及び下層部が所定方向とこれとは反対方向とに相対的に交互に繰り返し変位したときに、両者の間の相対変位を、両ケーブルを介して、ピストンに適切に伝達することができる。
【0021】
この場合、一対のケーブルが一対の第1及び第2滑車にそれぞれ巻き回されており、各第1及び第2滑車の一方が他方に対して、いわゆる動滑車として機能し、ピストンが、本体部及びロッドに対して移動可能に設けられている。以上により、本体部及びピストンを介して上層部及び下層部に伝達される粘性流体の減衰力を、第1及び第2滑車への巻き回しによるケーブルの折り返しの数の分、増大させることができ、ひいては、構造物の振動をより適切に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による免震装置1を、これを適用した高層の建物Bとともに概略的に示している。建物Bは、免震層ILを介して、基礎Fに立設されている。免震装置1は、複数の免震支承2(2つのみ図示)及び減衰ダンパ3(1つのみ図示)を備えており、免震層ILに設けられている。
【0024】
各免震支承2は、積層ゴムタイプのものであり、
図1及び
図2に示すように、上下一対の矩形板状のフランジ11、11と、両フランジ11、11の間に、互いに一体に積層された円板状の複数の内部ゴム12と、内部ゴム12の外表を覆う円筒状の被覆ゴム13を有している。内部ゴム12は、上下の内部鋼板14、14をそれぞれ介して、上下のフランジ11、11に取り付けられている。なお、
図2では、便宜上、内部ゴム12の一部の符号と、内部ゴム12、被覆ゴム13及び内部鋼板14、14の断面のハッチングを省略している。
【0025】
各フランジ11の4つの角部の各々には、上下方向に貫通する3つの取付孔11aが形成されており、各取付孔11aには、ボルト(図示せず)が挿入されている。上側のフランジ11の取付孔11aに挿入されたボルトは、建物Bの底面にねじ込まれており、下側のフランジ11の取付孔11aに挿入されたボルトは、基礎Fにねじ込まれている。以上の構成により、建物Bは免震支承2で支持されており、地震の発生中、免震層ILの絶縁効果によって、基礎Fの振動が吸収され、建物Bの振動が抑制(長周期化)される。
【0026】
図3に示すように、前記複数の減衰ダンパ3の各々は、円筒状のシリンダ21と、シリンダ21内に軸線方向に摺動可能に設けられたピストン22と、ピストン22に一体に設けられ、シリンダ21内に軸線方向に移動可能に部分的に収容されたロッド23を有している。以下、便宜上、減衰ダンパ3について、
図1及び
図3の左側及び右側をそれぞれ「左」及び「右」として説明する。
【0027】
シリンダ21は、互いに対向する左壁21a及び右壁21bと、両者21a、21bの間に一体に設けられた周壁21cで構成されている。これらの左右の壁21a、21b及び周壁21cによって画成された流体室は、ピストン22によって左側の第1流体室21dと右側の第2流体室21eに区画されており、第1及び第2流体室21d、21eには、シリコンオイルで構成された粘性流体HFが充填されている。また、右壁21bの径方向の中央には、左右方向(軸線方向)に貫通するロッド案内孔21fが形成されており、ロッド案内孔21fには、シール31が設けられている。
【0028】
さらに、左壁21aには、左方に突出する凸部21gが一体に設けられている。凸部21gの内部には、第1流体室21dの粘性流体HFの圧力変動を緩和するためのアキュムレータ32が設けられており、アキュムレータ32は、左壁21aに形成された連通路(図示せず)を介して、第1流体室21dに連通している。また、凸部21gの左端部には、自在継手を介して、第1取付具FL1が設けられている。
【0029】
前記ロッド23は、上記のロッド案内孔21fに、シール31を介して挿入され、左右方向に延びるとともに、シリンダ21に対して左右方向に移動可能であり、その左端部がピストン22に取り付けられている。また、ロッド23の右端部には、自在継手を介して、第2取付具FL2が設けられている。
【0030】
前記ピストン22は、円柱状に形成され、その周面には、シール33が設けられており、建物Bが振動していないときには、
図3に示すように、シリンダ21内の左右方向の中央の中立位置に位置している。この中立位置は、これに限らず、シリンダ21内の左右方向の中央よりも左側又は右側の位置でもよい。また、ピストン22の径方向の外端部には、左右方向に貫通する複数の孔が形成されており(2つのみ図示)、これらの孔には、第1リリーフ弁34及び第2リリーフ弁35が設けられている。
【0031】
第1リリーフ弁34は、弁体と、これを閉弁側に付勢するばねで構成されており、建物Bの振動に伴うピストン22の移動によって第1流体室21d内の粘性流体HFの圧力が所定の上限圧力に達したときに開弁する。これにより、第1及び第2流体室21d、21eが互いに連通させられることによって、第1流体室21d内の粘性流体HFの圧力が上限圧力以下に制限される。第2リリーフ弁35は、第1リリーフ弁34と同様、弁体と、これを閉弁側に付勢するばねで構成されており、建物Bの振動に伴うピストン22の移動によって第2流体室21e内の粘性流体HFの圧力が上記の上限圧力に達したときに開弁する。これにより、第1及び第2流体室21d、21eが互いに連通させられることによって、第2流体室21e内の粘性流体HFの圧力が上限圧力以下に制限される。この上限圧力の設定手法については、後述する。
【0032】
また、減衰ダンパ3は、シリンダ21に接続された、断面円形の左右一対の第1連通管24L、24Rをさらに有している。第1連通管24L、24Rの断面積(軸線方向に直交する面の面積)は、シリンダ21の断面積(軸線方向に直交する面の面積)よりも小さな値に設定されており、左右の第1連通管24L、24Rの断面積は、互いに同じ値に設定されている。
【0033】
左右の第1連通管24L、24Rは、ピストン22がシリンダ21内の上記の中立位置を含む所定の第1区間IN1よりも左側及び右側の所定の左右一対の第2区間IN2L、IN2Rに位置しているときにそれぞれ、ピストン22をバイパスし、第1及び第2流体室21d、21eを互いに連通させるように、設けられている。より具体的には、左側の第2連通管24Lは、そのシリンダ21との中立位置側(右側)の接続部分における中立位置と反対側(左側)の内壁面が左側の第2区間IN2Lの右端と面一になるように、かつ、そのシリンダ21との中立位置と反対側(左側)の接続部分における中立位置側(右側)の内壁面が左側の第2区間IN2Lの左端と面一になるように、配置されている。
【0034】
右側の第2連通管24Rは、左側の第2連通管24Lと中立位置を中心として左右対称に配置されており、そのシリンダ21との中立位置側(左側)の接続部分における中立位置と反対側(右側)の内壁面が右側の第2区間IN2Rの左端と面一になるように、かつ、そのシリンダ21との中立位置と反対側(右側)の接続部分における中立位置側(左側)の内壁面が右側の第2区間IN2Rの右端と面一になるように、配置されている。第1実施形態では、左側の第2区間IN2Lの左右方向の長さと、右側の第2区間IN2Rのそれとは、互いに同じであるが、異なっていてもよい。
【0035】
また、
図1に示すように、減衰ダンパ3の前述した第1取付具FL1は第1連結部材EN1に、第2取付具FL2は第2連結部材EN2に、それぞれ取り付けられている。これらの第1及び第2連結部材EN1、EN2は、鋼材で構成されており、前者EN1は建物Bの底面に、後者EN2は基礎Fに、それぞれ取り付けられている。以上により、減衰ダンパ3は、そのシリンダ21が建物Bに連結され、ピストン22がロッド23とともに基礎Fに連結されており、水平方向に延びている。なお、
図1では、便宜上、シリンダ21などの符号や、第1連通管24L、24Rを省略している。
【0036】
以上の構成の免震装置1では、建物Bの振動に伴う建物Bと基礎Fの間の相対変位は、シリンダ21及びピストン22に伝達される。この場合、ピストン22が第1区間IN1に位置しているときには、第1及び第2流体室21d、21e内の粘性流体HFの圧力が上限圧力にそれぞれ達しない限り、両流体室21d、21eが第1又は第2リリーフ弁34、35を介して互いに連通させられないので、ピストン22がシリンダ21に対してロックされる。この上限圧力は、建物Bの風揺れが発生するようなときに、ピストン22がシリンダ21内を摺動しないような大きさに、設定されている。以上により、建物Bの風揺れが発生するようなときに、免震装置1の減衰ダンパ3を介して、建物Bを基礎Fに連結できるので、両者B、Fの間の相対変位を抑制し、建物Bの風揺れを適切に抑制することができる。
【0037】
また、地震により建物Bが振動する場合には、風揺れの場合と比較して、建物B及び基礎Fからシリンダ21及びピストン22に、大きな力が入力されることにより、ピストン22がシリンダ21内を摺動する。ピストン22がシリンダ21内の第1区間IN1を摺動しているときには、第1及び第2流体室21d、21e内の粘性流体HFの圧力が上限圧力に達することで、第1又は第2リリーフ弁34、35が開弁し、粘性流体HFが第1及び第2流体室21d、21eの間を流動する結果、粘性流体HFによる減衰力が建物B及び基礎Fに作用する。また、ピストン22がシリンダ21内の第2区間IN2L(IN2R)を摺動しているときには、粘性流体HFが、第1連通管24L(24R)を介して第1及び第2流体室21d、21eの間を流動する結果、粘性流体HFによる減衰力が建物B及び基礎Fに作用する。以上のように、地震により建物Bが振動しているときに、粘性流体HFによる減衰力を建物Bに作用させることができるので、地震による建物Bの振動を適切に抑制することができる。
【0038】
また、前述した従来の免震装置と異なり、リミットスイッチ及び地震センサの両方の検出信号に基づく切換弁の制御を行うことなく、簡便な構成によって上述した効果を得ることができる。
【0039】
図4は、シリンダ21に対するピストン22の変位(以下「ダンパ変位」という)DDと、減衰ダンパ3の減衰力(反力。以下「ダンパ減衰力」という)FDとの関係を示しており、実線は、シリンダ21に対するピストン22の移動速度が低速である場合について、一点鎖線は、中速である場合について、二点鎖線は、高速である場合について、それぞれ示している。また、ダンパ変位DDが0であることは、ピストン22が中立位置に位置していることを表している。さらに、
図4では、理解の容易化のために、ダンパ変位DDとダンパ減衰力FDとの関係を、第1区間IN1及び第2区間IN2L、IN2Rと関係づけて表している。
【0040】
図4に示すように、ピストン22が第1区間IN1を移動しているときには、ダンパ減衰力FDは、前記上限圧力に応じた大きさになり、最大値+FMAX(−FMAX)になる。なお、
図4では便宜上、第1区間IN1における実線、一点鎖線及び二点鎖線(ピストン22の移動速度が低速・中速・高速である場合)を、互いに少し離して描いているが、これらのいずれの場合にも、ダンパ減衰力FDはその最大値+FMAX(−FMAX)になる。また、ピストン22が第2区間IN2L(IN2R)を移動しているときには、粘性流体HFが第1連通管24L(24R)を流動するため、ダンパ減衰力FDは、シリンダ21に対するピストン22の移動速度が高いほど、より大きくなる。この場合(正弦波加振の場合)、ピストン22が中立位置から外側に離れるほど、ピストン22の移動速度がより低くなるため、ダンパ減衰力FDは、より小さくなり、ピストン22が最も外側に位置したときに、値0になる。
【0041】
また、
図5は、ピストン22が第1区間IN1を移動している場合におけるシリンダ21に対するピストン22の速度(以下「ダンパ速度」という)VDと、ダンパ減衰力FDとの関係を示しており、
図6は、ピストン22が第2区間IN2L(IN2R)を移動している場合におけるダンパ速度VDとダンパ減衰力FDとの関係を示している。
図5に示すように、ピストン22が第1区間IN1を移動しているときには、ダンパ速度VDの絶対値が値0よりも大きい範囲では、一律に最大値+FMAX(−FMAX)になる。
【0042】
また、
図6に示すように、ピストン22が第2区間IN2L(IN2R)を移動しているときには、ダンパ減衰力FDは、ダンパ速度VDの絶対値が大きいほど、リニアにより大きくなり、ダンパ速度VDが高速の範囲では、最大値+FMAX(−FMAX)になる。この場合におけるダンパ速度VDに対するダンパ減衰力FDの傾きは、粘性流体HFの減衰係数に相当する。
【0043】
なお、ダンパ減衰力FDは、ピストン22の外径や、第1連通管24L(24R)の内径、粘性流体HFの粘性係数を設定することによって、調整される。
【0044】
以上のように、第1実施形態によれば、簡便な構成によって、建物Bの風揺れ及び地震による振動を適切に抑制することができる。また、
図4に示すように、ピストン22が外側の第2区間IN2L、IN2Rを移動している場合に、内側の第1区間IN1を移動している場合と比較して、ダンパ減衰力FDが小さくなるので、地震による建物Bと基礎Fの間の相対変位が大きいときに、免震層ILによる建物Bと基礎Fの間の絶縁効果を適切に得ることができる。
【0045】
次に、
図7及び
図8を参照しながら、本発明の第2実施形態による免震装置について説明する。この免震装置は、第1実施形態と比較して、減衰ダンパ41の構成のみが異なっている。
図7及び
図8において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0046】
図7及び
図8に示すように、減衰ダンパ41は、シリンダ21やピストン22に加え、シリンダ21に接続された第2連通管42と、第2連通管42を開閉するための開閉弁43をさらに有している。第2連通管42は、ピストン22がシリンダ21内の前記第1区間IN1に位置しているときに、第1及び第2流体室21d、21eに連通するように、設けられている。より具体的には、
図8に示すように、第2連通管42は、そのシリンダ21との左側の接続部分における左側の内壁面が左側の第2区間IN2Lの右端に位置するピストン22の左面と面一になるように、かつ、そのシリンダ21との右側の接続部分における右側の内壁面が右側の第2区間IN2Rの左端に位置するピストン22の右面と面一になるように、配置されている。なお、
図8では、便宜上、右側の第2区間IN2Rの左端に位置するピストン22を、二点鎖線で示している。
【0047】
開閉弁43は、例えば、手動式の常閉型のバタフライ弁であり、オペレータによる操作によって開弁される。
【0048】
以上の構成の減衰ダンパ41は、第1実施形態の減衰ダンパ3と同様にして、建物B及び基礎Fに連結される(
図1参照)。上述したように、第2連通管42を開閉する開閉弁43は、常閉弁であり、オペレータによって操作されない限り、閉弁状態に保持される。これにより、第1実施形態と同様、建物Bの風揺れ及び地震による振動を適切に抑制することができる。
【0049】
また、地震が終了した場合において、ピストン22が中立位置に位置していないときには、開閉弁43は、地震の終了以後のメンテナンス時に、オペレータによって一時的に開弁される。これにより、ピストン22がシリンダ21内を摺動しやすくなるので、免震層ILの復元力によって、地震による免震層ILの変形をなくすことができる。この場合、前述した従来の免震装置と異なり、開閉弁43を随時、地震センサなどの検出信号に応じて制御する必要がないので、第1実施形態と同様、上述した効果、すなわち建物Bの風揺れ及び地震による振動を適切に抑制できるという効果を、簡便な構成によって得ることができる。なお、ピストン22が中立位置に位置しているかの判定は、オペレータによって行われる。
【0050】
さらに、第2連通管42が
図8を参照して説明したように配置されているので、ピストン22が第1区間IN1と第2区間IN2L、IN2Rとの境界線上に位置するような場合でも、第2連通管42がピストン22で完全に塞がれることがない。したがって、上述した効果、すなわち地震による免震層ILの変形をなくすことができるという効果を、適切に得ることができる。
【0051】
次に、
図9を参照しながら、本発明の第3実施形態による免震装置について説明する。この免震装置は、第1及び第2実施形態と比較して、減衰ダンパ51の構成のみが異なっている。
図9において、第1及び第2実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1及び第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0052】
図9に示すように、減衰ダンパ51の第2連通管42の途中には、開閉弁43に代えて、ポンプ52が設けられている。このポンプ52は、例えば歯車式のものであり、第1ポート52a、第2ポート52b、及び、互いに噛み合う一対の歯車52cを有している。これらの第1及び第2ポート52a、52bは、第2連通管42を介して、第1及び第2流体室21d、21eにそれぞれ連通している。
【0053】
ポンプ52では、その作動中、第1及び第2流体室21d、21eの一方における粘性流体HFの一部が、第2連通管42を介して、当該一方に対応する第1及び第2ポート52a、52bの一方に吸い込まれる。吸い込まれた粘性流体HFは、第1及び第2ポート52a、52bの他方から吐出され、第2連通管42を介して、当該他方に対応する第1及び第2流体室21d、21eの他方に流動する。これにより、第1及び第2流体室21d、21eの一方における粘性流体HFの圧力が低下するとともに、他方における粘性流体HFの圧力が上昇することによって、粘性流体HFからピストン22に、第1及び第2流体室21d、21eの一方の側に移動させるような押圧力が、作用する。この場合、歯車52cの回転方向を変更することによって、ポンプ52の吸込/吐出方向が変更される。また、ポンプ52の停止中には、第2連通管42と第1及び第2流体室21d、21eとの間における粘性流体HFの流動が停止される。さらに、ポンプ52の作動/停止は、オペレータによって行われる。
【0054】
以上の構成の減衰ダンパ51は、第1実施形態の減衰ダンパ3と同様にして、建物B及び基礎Fに連結される(
図1参照)。第2連通管42に設けられたポンプ52は、基本的には、停止状態に保持される。これにより、第2連通管42と第1及び第2流体室21d、21eとの間での粘性流体HFの流動が停止されることによって、第1実施形態と同様、建物Bの風揺れ及び地震による振動を適切に抑制することができる。
【0055】
また、地震が終了した場合において、ピストン22が第1区間IN1にあり、かつ中立位置に位置していないときには、ポンプ52は、地震の終了以後のメンテナンス時に、オペレータによって作動させられる。この場合、ピストン22が第1区間IN1における中立位置よりも左側に位置しているときには、第2流体室21eの粘性流体HFの一部が第2連通管42を介して第1流体室21dに流動することで、ピストン22が中立位置に位置するように、ポンプ52が作動させられる。一方、ピストン22が第1区間IN1における中立位置よりも右側に位置しているときには、第1流体室21dの粘性流体HFの一部が第2連通管42を介して第2流体室21eに流動することで、ピストン22が中立位置に位置するように、ポンプ52が作動させられる。
【0056】
以上のようにポンプ52を作動させることによって、地震による免震層ILの変形をなくすことができる。この場合、前述した従来の免震装置と異なり、ポンプ52を随時、地震センサなどの検出信号に応じて制御する必要がないので、第1実施形態と同様、上述した効果、すなわち建物Bの風揺れ及び地震による振動を適切に抑制できるという効果を、簡便な構成によって得ることができる。なお、ピストン22が中立位置に位置しているかの判定は、オペレータによって行われる。
【0057】
さらに、第2実施形態と同様、第2連通管42が
図8を参照して説明したように配置されているので、ピストン22が第1区間IN1と第2区間IN2L、IN2Rとの境界線上に位置するような場合でも、第2連通管42がピストン22で完全に塞がれることがない。したがって、上述した効果、すなわち地震による免震層ILの変形をなくすことができるという効果を、適切に得ることができる。
【0058】
次に、
図10を参照しながら、本発明の第4実施形態による免震装置について説明する。この免震装置は、第1及び第2実施形態と比較して、減衰ダンパ61の構成のみが異なっている。
図10において、第1及び第2実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を伏している。以下、第1及び第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0059】
図10に示す減衰ダンパ61では、円柱状のピストン62の径方向の中央に、左右方向に貫通する挿入孔62aが形成されている。ロッド23は、第1及び第2実施形態と異なり、ピストン62に一体には設けられておらず、ピストン62の上記の挿入孔62aに、シール63を介して挿入されている。これにより、ロッド23及びピストン62は、左右方向に互いに移動可能である。また、ピストン62には、第1実施形態のピストン22と同様、シール33、第1及び第2リリーフ弁34、35が設けられており、ピストン62は、シリンダ21内を左右方向に摺動可能である。また、ロッド23には、左右一対のフランジ64L、64Rが同心状に一体に設けられており、両者64L、64Rは、ピストン62の左側及び右側にそれぞれ配置され、第1及び第2流体室21d、21eにそれぞれ収容されている。なお、
図10では、便宜上、第1及び第2区間IN1、IN2L、IN2Rの符号を省略している。
【0060】
また、減衰ダンパ61は、左右一対の第1滑車65L、65R、第2滑車66L、66R、及びケーブル67L、67Rをさらに有している。左側の第1及び第2滑車65L、66Lならびに左ケーブル67Lは、第1流体室21dに収容されている。また、右側の第1及び第2滑車65R、66Rならびに右ケーブル67Rは、第2流体室21eに収容されており、ピストン62を中心として、左側の第1及び第2滑車65L、66Lならびにケーブル67Lと左右対称に設けられている。第1及び第2流体室21d、21eは、上記の第1滑車65L、65Rなどがそれぞれ収容されている分、第1及び第2実施形態の場合よりも左右方向に大きくなっている。
【0061】
左側の第1及び第2滑車65L、66Lは、上下一対の滑車でそれぞれ構成され、第1滑車65Lはシリンダ21の左壁21aに、第2滑車66Lは左フランジ64Lに、それぞれ取り付けられており、互いに対向している。左ケーブル67Lは、第1及び第2滑車65L、66Lに対応して上下一対のケーブルから成り、例えば鋼線で構成されている。また、左ケーブル67Lは、その一端部が左フランジ64Lに取り付けられていて、その途中で第1及び第2滑車65L、66Lに折り返された状態で巻き回され、さらに左フランジ64Lのケーブル案内孔64aに挿通されており、他端部がピストン62の左端部に取り付けられている。なお、
図10では、便宜上、下側のケーブル案内孔64aのみを示している。
【0062】
右側の第1及び第2滑車65R、66Rは、左側の第1及び第2滑車65L、66Lと同様、上下一対の滑車でそれぞれ構成され、第1滑車65Rはシリンダ21の右壁21bに、第2滑車66Rは右フランジ64Rに、それぞれ取り付けられており、互いに対向している。右ケーブル67Rは、第1及び第2滑車65R、66Rに対応して上下一対のケーブルから成り、例えば鋼線で構成されており、弾性を有している。また、右ケーブル67Rは、その一端部が右フランジ64Rに取り付けられていて、その途中で第1及び第2滑車65R、66Rに折り返された状態で巻き回され、さらに右フランジ64Rのケーブル案内孔64aに挿通されており、他端部がピストン62の右端部に取り付けられている。なお、
図10では、便宜上、下側のケーブル案内孔64aのみを示している。左右のケーブル67L、67Rには、互いに同じ所定のテンションが付与されている。
【0063】
以上の構成の減衰ダンパ61は、第1実施形態の減衰ダンパ3と同様にして、建物B及び基礎Fに連結される(
図1参照)。これにより、減衰ダンパ61のピストン62は、左右のケーブル67L、67R、左右のフランジ64L、64R及びロッド23を介して、基礎Fに連結される。建物Bが振動していないときには、ピストン62は、
図10に示すように、シリンダ21内の左右方向の中央の中立位置に位置している。この中立位置は、これに限らず、シリンダ21内の左右方向の中央よりも左側又は右側の位置でもよい。
【0064】
地震により建物Bが振動することにより、建物Bが基礎Fに対して左方に変位し、建物B及び基礎Fから減衰ダンパ61に引張力が作用したときには、ロッド23及び左右のフランジ64L、64Rがシリンダ21に対して右方に移動する。それに伴い、ピストン62が、ロッド23、左フランジ64L及び左ケーブル67Lで引っ張られることにより、シリンダ21内を左方に移動する。一方、地震により建物Bが振動することにより、建物Bが基礎Fに対して右方に変位し、建物B及び基礎Fから減衰ダンパ61に圧縮力が作用したときには、ロッド23及び左右のフランジ64L、64Rが、シリンダ21に対して左方に移動する。それに伴い、ピストン62が、ロッド23、右フランジ64R及び右ケーブル67Rで引っ張られることにより、シリンダ21内を右方に移動する。以上のように、地震に伴って建物Bが基礎Fに対して左方と右方に交互に繰り返し変位したときに、両者B、Fの間の相対変位を、両ケーブル67L、67Rを介して、ピストン62に適切に伝達することができる。
【0065】
この場合、第2実施形態と同様、第2連通管42を開閉する開閉弁43は、オペレータによって操作されない限り、閉弁状態に保持される。したがって、簡便な構成により、建物Bの風揺れ及び地震による振動を適切に抑制することができるとともに、地震による免震層ILの変形をなくすことができる。さらに、第2実施形態と同様、第2連通管42が
図8を参照して説明したように配置されているので、ピストン22が第1区間IN1と第2区間IN2L、IN2Rとの境界線上に位置するような場合でも、第2連通管42がピストン22で完全に塞がれることがない。したがって、上述した効果、すなわち地震による免震層ILの変形をなくすことができるという効果を、適切に得ることができる。
【0066】
また、左右のケーブル67L、67Rが左右の第1及び第2滑車65L、66L、65R、66Rにそれぞれ巻き回されており、各第1及び第2滑車65L、66L(65R、66R)の一方が他方に対して、いわゆる動滑車として機能し、ピストン62が、シリンダ21及びロッド23に対して移動可能に設けられている。以上により、シリンダ21及びピストン62を介して建物Bに伝達される粘性流体の減衰力を、第1及び第2滑車65L、66L、65R、66Rへの巻き回しによるケーブル67L、67Rの折り返しの数の分、増大させることができ、ひいては、建物Bの振動をより適切に抑制することができる。
【0067】
次に、
図11を参照しながら、本発明の第5実施形態による免震装置について説明する。この免震装置は、第1、第2及び第4実施形態と比較して、減衰ダンパ71の構成のみが異なっている。
図11において、第1、第2及び第4実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1、第2及び第4実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0068】
図11に示すように、減衰ダンパ71では、第4実施形態と同様、ロッド23は、ピストン62の挿入孔62aに、シール63を介して挿入されている。また、ロッド23には、第4実施形態と異なり、左右のフランジ64L、64Rに代えて、左右一対のストッパ72L、72Rが同心状に一体に設けられており、左右のストッパ72L、72Rは、ピストン62の左側及び右側にそれぞれ配置され、第1及び第2流体室21d、21eにそれぞれ収容されている。さらに、左ストッパ72Lとピストン62の間には左コイルばね73Lが、右ストッパ72Rとピストン62の間には右コイルばね73Rが、それぞれ同心状に挟持されており、左右のコイルばね73L、73Rは、第1及び第2流体室21d、21eにそれぞれ収容されている。
【0069】
以上の構成の減衰ダンパ71は、第1実施形態の減衰ダンパ3と同様にして、建物B及び基礎Fに連結される(
図1参照)。これにより、減衰ダンパ71のピストン62は、左右のコイルばね73L、73R、左右のストッパ72L、72R及びロッド23を介して、基礎Fに連結される。建物Bが振動していないときには、ピストン62は、
図11に示すように、シリンダ21内の左右方向の中央の中立位置に位置している。この中立位置は、これに限らず、シリンダ21内の左右方向の中央よりも左側又は右側の位置でもよい。
【0070】
地震により建物Bが振動することにより、建物Bが基礎Fに対して右方に変位し、建物B及び基礎Fから減衰ダンパ71に圧縮力が作用したときには、ロッド23及び左右のストッパ72L、72Rが、シリンダ21に対して左方に移動する。それに伴い、右コイルばね73Rが右ストッパ72Rで圧縮され、当該ロッド23の変位が、右ストッパ72R及び右コイルばね73Rを介してピストン62に伝達されることにより、ピストン62がシリンダ21内を左方に移動する。一方、地震により建物Bが振動することにより、建物Bが基礎Fに対して左方に変位し、建物B及び基礎Fから減衰ダンパ71に引張力が作用したときには、ロッド23及び左右のストッパ73L、73Rが、シリンダ21に対して右方に移動する。それに伴い、左コイルばね73Lが左ストッパ72Lで圧縮され、当該ロッド23の変位が、左ストッパ72L及び左コイルばね73Lを介してピストン62に伝達されることにより、ピストン62がシリンダ21内を右方に移動する。
【0071】
以上のように、地震による建物Bの振動に伴って建物Bが基礎Fに対して左方と右方に交互に繰り返し変位したときに、両者B、Fの間の相対変位を、両コイルばね73L、73Rを介して、ピストン62に適切に伝達することができる。これにより、減衰ダンパ71の比較的大きな減衰力が建物Bに急激に作用するのを防止することができる。なお、左右のコイルばね73L、73Rに代えて、他の適当な緩衝材、例えば、ゴムや皿ばねなどを用いてもよい。
【0072】
また、第2実施形態と同様、第2連通管42を開閉する開閉弁43は、オペレータによって操作されない限り、閉弁状態に保持される。したがって、簡便な構成により、建物Bの風揺れ及び地震による振動を適切に抑制することができるとともに、地震による免震層ILの変形をなくすことができる。さらに、第2実施形態と同様、第2連通管42が
図8を参照して説明したように配置されているので、ピストン62が第1区間IN1と第2区間IN2L、IN2Rとの境界線上に位置するような場合でも、第2連通管42がピストン62で完全に塞がれることがない。したがって、上述した効果、すなわち地震による免震層ILの変形をなくすことができるという効果を、適切に得ることができる。
【0073】
なお、本発明は、説明した第1〜第5実施形態(以下、総称する場合「実施形態」という)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、シリンダ21やピストン22、62の断面形状は、円形状であるが、他の適当な形状、例えば矩形状や、多角形状でもよい。このことは、第1連通管24L、24R及び第2〜第5実施形態の第2連通管42についても、同様に当てはまる。
【0074】
また、実施形態では、本発明における外側連通路として、シリンダ21に接続された第1連通管24L、24Rを用いているが、シリンダの壁部に形成された連通路を用いてもよい。このことは、第2連通管42についても同様に当てはまる。さらに、実施形態では、シリコンオイルで構成された粘性流体HFを用いているが、粘性を有する他の適当な流体を用いてもよい。また、実施形態では、第1及び第2リリーフ弁34、35が開弁する粘性流体HFの圧力を、互いに同じ上限圧力に設定しているが、互いに異なる値に設定してもよい。
【0075】
さらに、第3実施形態では、本発明における流量可変装置として、歯車式のポンプ52を用いているが、他の適当な装置、例えば、ベーン式のポンプや、本出願人による特願2015-147612号の
図5などに開示されたピストン機構51や電気モータ15の組み合わせから成る装置などを用いてもよい。また、第4実施形態に関し、シリンダ21や左右のフランジ64L、64Rなどの構成として、本出願人による特願2014-197837号の
図4などに示されたような構成を採用してもよい。
【0076】
さらに、第4実施形態では、左右のケーブル67L、67Rを、別個のケーブルで構成しているが、共通の単一のケーブルで構成してもよい。その場合には、このケーブルをピストンに形成されたケーブル案内孔に挿通するとともに、ケーブルに一体に設けられた一対のナットでピストンを両側から挟み込むことによって、ケーブルがピストンに連結される。また、第4実施形態では、ケーブル67L、67Rは、鋼線であるが、テンションを付与することにより剛性を発揮するものであればよく、例えば帯状の鋼板でもよい。なお、第1及び第2滑車65L、66L、65R、66Rへのケーブル67L、67Rの折り返し数は、任意に設定可能であり、当該設定により、ダンパ減衰力FDの増幅倍率を自由に設定することができる。
【0077】
さらに、第2、第4及び第5実施形態では、開閉弁43として、バタフライ弁を用いているが、他の適当な開閉弁、例えばボール弁などを用いてもよい。また、開閉弁43として、手動式のものではなく、電動式や油圧式のものを用いてもよい。また、第4及び第5実施形態に関し、第2連通管42及び開閉弁43を省略してもよく、また、開閉弁43に代えて、第3実施形態のポンプ52を用いてもよい。この場合にも、本発明における流量可変装置として、前述したべーン式のポンプなど、様々な装置を用いることができる。
【0078】
さらに、実施形態では、免震層ILに、積層ゴムタイプの免震支承2を設けているが、これに代えて、又はこれとともに、建物Bを前後左右方向に移動可能に支持するリニアガイドタイプの免震支承や、積層ゴムやすべり板の組み合わせから成る免震支承(本出願人のホームページに掲載の「弾性すべり系積層ゴム」を参照)などを設けてもよい。また、実施形態では、本発明における上層部及び下層部として、建物B及び基礎Fをそれぞれ用いているが、構造物の中層部に免震層を設けるとともに、構造物の上層部及び下層部をそれぞれ用いてもよい。さらに、実施形態は、本発明による免震装置1を高層の建物Bに適用した例であるが、本発明はこれに限らず、他の適当な構造物、例えば鉄塔や橋梁などにも適用可能である。以上の実施形態に関するバリエーションを適宜、組み合わせて採用してもよいことは、もちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。