(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553468
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】遮蔽障害が少ない受信強度を選択する管理装置、端末、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20190722BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20190722BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20190722BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
H04W88/02 150
H04W64/00 110
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-190352(P2015-190352)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-67502(P2017-67502A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 修平
(72)【発明者】
【氏名】荒井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大岸 智彦
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−074699(JP,A)
【文献】
特開2013−003084(JP,A)
【文献】
特開2014−216726(JP,A)
【文献】
特開2014−192813(JP,A)
【文献】
特開2008−224489(JP,A)
【文献】
特表2012−529635(JP,A)
【文献】
特開2015−158492(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0051434(US,A1)
【文献】
原田 直弥 Naoya HARADA,無線LAN環境における主成分分析を用いたハイブリッド位置推定手法 A Hybrid Approach Using Principal Component Analysis for Wireless LAN Based Location Estimation,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.108 No.290 IEICE Technical Report,日本,社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2008年11月 6日,第108巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00−17/95
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各デバイスから発信された電波を受信した各端末における、当該電波の周波数成分毎の受信強度を記憶した受信強度記憶手段を有する管理装置において、
学習フェーズとして、
端末及びデバイスの組毎に、当該端末が当該デバイスから受信した電波の周波数成分毎の受信強度を入力し、主成分分析によって所定成分数までの主成分負荷量を算出する主成分負荷量算出手段と、
当該端末に対する複数のデバイスの前記主成分負荷量における平均値を算出し、当該平均値を含む所定の主成分負荷量範囲を設定する主成分負荷量範囲設定手段と
を有し、
位置推定フェーズとして、
当該端末が当該デバイスから受信した、現時点の電波の各周波数成分の受信強度に基づく現主成分負荷量が、前記主成分負荷量範囲に含まれる場合にのみ、当該デバイスから受信した電波の受信強度を採用する受信強度選択手段と
を有することを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記主成分負荷量範囲設定手段は、所定の主成分負荷量範囲を、所定成分数に応じて以下のように設定する
(Leave−v) ≦ LeN ≦ (Leave+w)
Len:当該端末がデバイスnから受信した主成分負荷量
Leave:当該端末が複数N個のデバイスから受信した主成分負荷量の平均値
(=1/NΣn=1NLen)
LeN:当該端末が複数N個のデバイスから受信可能な主成分負荷量範囲
v:平均値Leave以下となる範囲を表す所定係数
w:平均値Leave以上となる範囲を表す所定係数
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記主成分負荷量範囲設定手段は、所定の主成分負荷量範囲を、所定成分数に応じて、前記平均値Leaveを中央値として、所定標準偏差Lestdに基づく分布範囲を以下のように設定する
(Leave−α*Lestd) ≦ LeN ≦ (Leave+α*Lestd)
Len:当該端末がデバイスnから受信した主成分負荷量
Leave:当該端末が複数N個のデバイスから受信した主成分負荷量の平均値
(=1/NΣn=1NLen)
LeN:当該端末が複数N個のデバイスから受信可能な主成分負荷量範囲
Lestd:所定標準偏差
α:調整係数
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項4】
学習フェーズとして予め指定された参照点位置毎に、当該端末に対するタグデバイス毎の電波の受信強度の組を予め記憶したフィンガープリント記憶手段と、
前記フィンガープリント記憶手段を用いて、前記受信強度選択手段によって採用されたタグデバイス毎の電波の受信強度から、前記参照点位置を推定する参照点位置推定手段と
を更に有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記フィンガープリント記憶手段は、学習フェーズとして、前記端末を所持したオペレータが実際に所定範囲を移動することによって、参照点位置毎に、前記端末によって受信されたタグデバイス毎の電波の受信強度を記憶する
ことを特徴とする請求項4に記載の管理装置。
【請求項6】
各デバイスから発信された電波を受信し、当該電波の周波数成分毎の受信強度を記憶した受信強度記憶手段を有する端末において、
学習フェーズとして、
デバイス毎に、当該端末が当該デバイスから受信した電波の周波数成分毎の受信強度を入力し、主成分分析によって所定成分数までの主成分負荷量を算出する主成分負荷量算出手段と、
複数のデバイスの前記主成分負荷量における平均値を算出し、当該平均値を含む所定の主成分負荷量範囲を設定する主成分負荷量範囲設定手段と
を有し、
位置推定フェーズとして、
当該デバイスから受信した、現時点の電波の各周波数成分の受信強度に基づく現主成分負荷量が、前記主成分負荷量範囲に含まれる場合にのみ、当該デバイスから受信した電波の受信強度を採用する受信強度選択手段と
を有することを特徴とする端末。
【請求項7】
各デバイスから発信された電波を受信した各端末における、当該電波の周波数成分毎の受信強度を記憶した受信強度記憶手段を有する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
学習フェーズとして、
端末及びデバイスの組毎に、当該端末が当該デバイスから受信した電波の周波数成分毎の受信強度を入力し、主成分分析によって所定成分数までの主成分負荷量を算出する主成分負荷量算出手段と、
当該端末に対する複数のデバイスの前記主成分負荷量における平均値を算出し、当該平均値を含む所定の主成分負荷量範囲を設定する主成分負荷量範囲設定手段と
を有し、
位置推定フェーズとして、
当該端末が当該デバイスから受信した、現時点の電波の各周波数成分の受信強度に基づく現主成分負荷量が、前記主成分負荷量範囲に含まれる場合にのみ、当該デバイスから受信した電波の受信強度を採用する受信強度選択手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
各デバイスから発信された電波を受信した各端末における、当該電波の周波数成分毎の受信強度を記憶した受信強度記憶手段を有する装置の受信強度選択方法において、
前記装置は、
学習フェーズとして、
端末及びデバイスの組毎に、当該端末が当該デバイスから受信した電波の周波数成分毎の受信強度を入力し、主成分分析によって所定成分数までの主成分負荷量を算出する第1のステップと、
当該端末に対する複数のデバイスの前記主成分負荷量における平均値を算出し、当該平均値を含む所定の主成分負荷量範囲を設定する第2のステップと
を実行し、
位置推定フェーズとして、
当該端末が当該デバイスから受信した、現時点の電波の各周波数成分の受信強度に基づく現主成分負荷量が、前記主成分負荷量範囲に含まれる場合にのみ、当該デバイスから受信した電波の受信強度を採用するステップと
を実行することを特徴とする装置の受信強度選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の受信強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を計測する技術に関する。特に、近距離無線通信方式に基づく受信強度を利用した位置推定サービスに適する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフラインの実店舗とオンラインの電子商取引との間の購買活動を連携するシステムとして、O2O(Online to Offline)と称されるサービスが普及しつつある。このサービスによれば、例えば、ユーザの位置を推定することによって、実店舗でユーザが当該商品に物理的に近接したことを検出した際に、そのユーザが所持する端末(例えばスマートフォン)のディスプレイに、当該商品に関するコンテンツを表示させることができる。
【0003】
端末は、無線リンクとして、近距離無線通信方式(例えばBluetooth(登録商標)やZigbee(登録商標))又は狭域無線通信方式(例えば無線LAN)を用いている。その中でも、ユーザが当該商品に物理的に近接したことを検知する用途に対して、近距離無線通信方式のBluetoothを用いた「BLE(Bluetooth Low Energy)」が適する。BLEは、近距離無線規格Bluetoothの仕様策定団体である「Bluetooth SIG」によって、「低消費電力版Bluetooth」として規格化されたものである(例えば非特許文献1参照)。尚、Apple社のiOS7以降のOSに基づくiBeacon(登録商標)も、BLEに基づくものである(例えば非特許文献2参照)。
【0004】
図1は、近距離無線通信方式を用いた第1のシステム構成図である。
【0005】
図1によれば、顧客としてのユーザは、自らのスマートフォン2を所持して移動している。また、店舗内空間の至る所に、タグデバイス3が配置されている。タグデバイス3は、標準Bluetoothと比較して1/3程度の電力で動作するために、ボタン電池であっても数年稼働する。通信には、2.4MHz帯(ISMバンド)の電波を用いて、最大1Mbps程度で、1回に37byte以下の小容量データを伝送する。Bluetooth規格によれば、タグデバイス3は「advertiser」として機能し、端末2は「scanner」として機能する。タグデバイス3は、周期的に、デバイス情報を含む広報パケットを報知している。これによって、ユーザが店舗内を移動し、各タグデバイス3に接近する度に、スマートフォン2は、その広報パケットを受信することができる。
【0006】
図2は、近距離無線通信方式を用いた第2のシステム構成図である。
【0007】
図2によれば、
図1とは逆に、ユーザが、タグデバイス3を所持して(身に付けて)移動している。また、店舗内空間の至る所に、サービス提供者によって、O2O専用アプリケーションが予めインストールされた端末(例えばスマートフォンやタブレット)2が配置されている。即ち、
図2によれば、
図1とは逆に、端末としてのスマートフォンは、ユーザ側ではなく、サービス提供者側にある。タグデバイス3を所持したユーザが、店舗内を移動することによって、端末2は、近接した当該タグデバイス3から「広報パケット」を受信する。
【0008】
端末2のO2O専用アプリケーションは、アクセスネットワーク(無線LANや携帯電話網)を介して、そのデバイス情報を管理装置1へ送信する。管理装置1は、端末2によって計測された、タグデバイス3から発信された電波の受信強度を収集し、ユーザの位置を推定することができる。
【0009】
従来、タグデバイスから定期的に送信される広報パケットの受信強度(RSSI)を用いて、当該スマートフォンの位置を推定する技術がある(例えば非特許文献3参照)。この技術によれば、「フィンガープリント方式」を用いている。この方式は、学習フェーズとして、複数の所定位置(x,y)(座標形式)毎に、複数のタグデバイスからのRSSIの組を事前に計測し、フィンガープリントとして記憶しておく。現時点における複数のタグデバイスからのRSSIと、フィンガープリントとを比較して、現時点の位置を推定することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「Specification of the Bluetooth System」、[online]、[平成27年9月5日検索]、インターネット<URL:https://www.bluetooth.org/en-us>
【非特許文献2】Apple社、「iBeacon for Developers」、[online]、[平成27年9月5日検索]、インターネット<URL:https://developer.apple.com/ibeacon/>
【非特許文献3】H. Koyuncu and S. H. Yang, “Improved Fingerprint Localization by Using Static and Dynamic Segmentation,” Computational Science and Computational Intelligence (CSCI), 2014 International Conference on, vol. 1. pp. 149-156, 2014.
【非特許文献4】Rと主成分分析、[online]、[平成27年9月5日検索]、インターネット<URL:http://www1.doshisha.ac.jp/~mjin/R/24/24.html>
【非特許文献5】主成分負荷量について、[online]、[平成27年9月5日検索]、インターネット<URL:http://tmats.net/?p=2785>
【非特許文献6】統計ソフトウェア「R」、[online]、[平成27年9月5日検索]、インターネット<URL:https://www.r-project.org/>
【非特許文献7】prcomp関数(日本語版)、[online]、[平成27年9月5日検索]、インターネット<URL:https://cran.r-project.org/doc/contrib/manuals-jp/Mase-Rstatman.pdf>
【非特許文献8】Guo, D. Zhang, and L. M. Ni, “Localizing Multiple Objects in an RF-based Dynamic Environment,” 2012 IEEE 32nd Int. Conf. Distrib. Comput. Syst., pp. 576-585, Jun. 2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、O2Oのサービスシステムによれば、屋内環境で利用される場合が多いために、新たな遮蔽障害によって、同じ位置であっても受信強度が変化することがある。タグデバイス(送信側)と端末(受信側)との間で無線で通信するために、壁や設置物などによって電波が反射・回折する。このとき、受信機側では、複数の経路から同じ電波を受信してしまうマルチパスが発生する。マルチパスが生じた場合、複数の距離が異なる経路の電波を受信するため、受信機における受信強度は、様々な経路の電波を併せた値として算出される。具体的には、屋内環境におけるレイアウト変更等によってマルチパスの経路も変化し、受信機側における受信強度にも影響を及ぼす。
【0012】
この場合、受信強度を用いた位置推定サービスによれば、受信強度の誤差が、推定位置の誤差として直接的に影響を与える。具体的には、学習フェーズと位置推定フェーズとで、屋内の遮蔽環境が異なることによって、位置推定結果に誤差を含むこととなる。
【0013】
これに対し、本願の発明者らは、LOS(Line-of-Sight)経路が遮断された送信機及び受信機の組の受信強度を除去することができれば、電波の受信強度を用いた位置推定の精度を高めることができるのではないか?と考えた。即ち、送信機と受信機との間で、できる限り、反射・減衰せずに直接到達する電波のみを用いて位置を推定することができないか?と考えた。LOS経路は、環境の変化の影響を受けづらいため、受信強度のブレも小さくなる。
【0014】
そこで、本発明は、遮蔽障害が少ない受信強度を選択する管理装置、端末、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、
各デバイスから発信された電波を受信した各端末における、当該電波の周波数成分毎の受信強度を記憶した受信強度記憶手段を有する管理装置において、
学習フェーズとして、
端末
及びデバイス
の組毎に、
当該端末が当該デバイスから受信した電波の周波数成分毎の受信強度
を入力し、主成分分析によって所定成分
数までの主成分負荷
量を算出する主成分負荷量算出手段と、
当該端末に対する複
数のデバイスの主成分負荷
量における平均
値を算出し、当該平均
値を含む所定の主成分負荷量範囲を設定する主成分負荷量範囲設定手段と
を有し、
位置推定フェーズとして、
当該端末が当該デバイスから受信した
、現時点の電波の各周波数成分の受信強度に基づく現主成分負荷
量が、主成分負荷量範囲に含まれる場合にのみ、当該デバイスから受信した電波の受信強度を採用する受信強度選択手段と
を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
主成分負荷量範囲設定手段は、所定の主成分負荷量範囲を、所定成分
数に応じて以下のように設定する
(
Leave−v) ≦
LeN ≦ (
Leave+w)
Len:当該端末がデバイスnから受信した主成分負荷量
Leave:当該端末が複数N個のデバイスから受信した主成分負荷量の平均値
(=1/NΣn=1NLen)
LeN:当該端末が複数N個のデバイスから受信可能な主成分負荷量範囲
v:平均値
Leave以下となる範囲を表す所定係数
w:平均値
Leave以上となる範囲を表す所定係数
ことも好ましい。
【0017】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
主成分負荷量範囲設定手段は、所定の主成分負荷量範囲を、所定成分
数に応じて、平均値
Leaveを中央値として、
所定標準偏差
Lestdに基づく分布範囲を以下のように設定する
(
Leave−α*
Lestd) ≦
LeN ≦ (
Leave+α*
Lestd)
Len:当該端末がデバイスnから受信した主成分負荷量
Leave:当該端末が複数N個のデバイスから受信した主成分負荷量の平均値
(=1/NΣn=1NLen)
LeN:当該端末が複数N個のデバイスから受信可能な主成分負荷量範囲
Lestd:所定標準偏差
α:調整係数
ことも好ましい。
【0020】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
学習フェーズとして
予め指定された参照点位置毎に、当該端末に対するタグデバイス毎の電波の受信強度の組を予め記憶したフィンガープリント記憶手段と、
フィンガープリント記憶手段を用いて、受信強度選択手段によって採用されたタグデバイス毎の電波の受信強度から、参照点位置を推定する参照点位置推定手段と
を更に有することも好ましい。
【0021】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
フィンガープリント記憶手段は、学習フェーズとして、端末を所持したオペレータが実際に所定範囲を移動することによって、参照点位置毎に、端末によって受信されたタグデバイス毎の電波の受信強度を記憶することも好ましい。
【0022】
本発明によれば、
各デバイスから発信された電波を受信し、当該電波の周波数成分毎の受信強度を記憶した受信強度記憶手段を有する端末において、
学習フェーズとして、
デバイス毎に、
当該端末が当該デバイスから受信した電波の周波数成分毎の受信強度
を入力し、主成分分析によって所定成分
数までの主成分負荷量
を算出する主成分負荷量算出手段と、
複
数のデバイスの主成分負荷
量における平均
値を算出し、当該平均
値を含む所定の主成分負荷量範囲を設定する主成分負荷量範囲設定手段と
を有し、
位置推定フェーズとして、
当該デバイスから受信した
、現時点の電波の各周波数成分の受信強度に基づく現主成分負荷
量が、主成分負荷量範囲に含まれる場合にのみ、当該デバイスから受信した電波の受信強度を採用する受信強度選択手段と
を有することを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、
各デバイスから発信された電波を受信した各端末における、当該電波の周波数成分毎の受信強度を記憶した受信強度記憶手段を有する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
学習フェーズとして、
端末
及びデバイス
の組毎に、
当該端末が当該デバイスから受信した電波の周波数成分毎の受信強度
を入力し、主成分分析によって所定成分
数までの主成分負荷量
を算出する主成分負荷量算出手段と、
当該端末に対する複
数のデバイスの主成分負荷
量における平均
値を算出し、当該平均
値を含む所定の主成分負荷量範囲を設定する主成分負荷量範囲設定手段と
を有し、
位置推定フェーズとして、
当該端末が当該デバイスから受信した
、現時点の電波の各周波数成分の受信強度に基づく現主成分負荷
量が、主成分負荷量範囲に含まれる場合にのみ、当該デバイスから受信した電波の受信強度を採用する受信強度選択手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、
各デバイスから発信された電波を受信した各端末における、当該電波の周波数成分毎の受信強度を記憶した受信強度記憶手段を有する装置の受信強度選択方法において、
装置は、
学習フェーズとして、
端末
及びデバイス
の組毎に、
当該端末が当該デバイスから受信した電波の周波数成分毎の受信強度
を入力し、主成分分析によって所定成分
数までの主成分負荷量
を算出する第1のステップと、
当該端末に対する複
数のデバイスの主成分負荷
量における平均
値を算出し、当該平均
値を含む所定の主成分負荷量範囲を設定する第2のステップと
を実行し、
位置推定フェーズとして、
当該端末が当該デバイスから受信した
、現時点の電波の各周波数成分の受信強度に基づく現主成分負荷
量が、主成分負荷量範囲に含まれる場合にのみ、当該デバイスから受信した電波の受信強度を採用するステップと
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の管理装置、端末、プログラム及び方法によれば、遮蔽障害が少ない受信強度を選択することができる。これによって、電波の受信強度を用いた位置推定の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】近距離無線通信方式を用いた第1のシステム構成図である。
【
図2】近距離無線通信方式を用いた第2のシステム構成図である。
【
図3】本発明における管理装置(及び端末)の機能構成図である。
【
図4】本発明におけるシステムのシーケンス図である。
【
図5】屋内環境における参照点位置を表す外観図である。
【
図6】本発明におけるフィンガープリント記憶部及び位置推定部のデータ構成を表す説明図である。
【
図7】χ
2距離における累積密度と誤差との関係を表すグラフである。
【
図8】本発明と一般的方式とを比較した、評価結果及びχ
2距離を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0028】
図3は、本発明における管理装置(及び端末)の機能構成図である。
図4は、本発明におけるシステムのシーケンス図である。
【0029】
図3によれば、管理装置1(又は端末2)は、受信強度記憶部10と、主成分負荷量算出部11と、主成分負荷量範囲設定部12と、受信強度選択部13とを有する。また、受信強度に基づくユーザの位置を推定するために、フィンガープリント記憶部14と、参照点位置推定部15とを有する。これら機能構成部は、管理装置1(又は端末2)に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。尚、これら機能構成部の処理の流れは、受信強度選択方法としても理解できる。
【0030】
[受信強度記憶部10]
受信強度記憶部10は、複数のタグデバイス3(デバイス)から発信された複数の周波数成分それぞれの電波を端末によって受信した際における、複数の受信強度を記憶したものである。例えばBLE規格によれば、タグデバイス3は、複数の異なる周波数成分毎に、広報パケット「Advertising Packet」の電波を、周期的(例えば100ms(規格として20ms〜10.24s))に発信している。端末2は、マスター側として機能し、タグデバイス3から発信される広報パケットを受信する。端末2はこのとき、受信強度(RSSI)を計測する。そして、端末2は、広報パケットにおけるID(IDentifier)及び受信強度を、管理装置1へ送信する。
ID (Advertising Packetを送信したタグデバイスのUUID)
受信強度 (受信したAdvertising PacketのRSSI)
【0031】
例えば、N個のタグデバイス(送信側)1と、1台の端末(受信側)2とが存在するとする。このとき、各タグデバイス3は、q個の周波数成分の電波を発信している。端末2は、所定時間毎に、受信した電波の周波数成分毎の受信強度の代表値(例えば中央値又は平均値)を計測する。これら受信強度の代表値は、端末2から管理装置1へ送信され、受信強度記憶部10によって記憶される。これら受信強度の代表値は、例えば以下のように表される。
Xch
g=[x
q1・・・x
qj・・・x
qN] 式(1)
【0032】
[主成分負荷量算出部11]
主成分負荷量算出部11は、当該端末と各デバイスとの組毎に、複数の周波数成分それぞれの受信強度に基づいて、主成分分析によって所定成分eまでの主成分負荷量Leを算出する。
【0033】
「主成分分析(principal component analysis)」とは、多数の変数に基づく量的データの変数間の相関を排除し、できるだけ少ない情報の損失で、少数個の無相関な合成変数(線形結合式)に縮約して分析する技術をいう(例えば非特許文献4参照)。縮約された合成変数の係数を「主成分」という。
【0034】
分散(相関)を最大化する主成分は、データの分散共分散行列(相関係数行列)の固有値λと固有ベクトルuによって表される。
固有ベクトルu:主成分
固有値λ :固有ベクトルuに含まれる情報の多少
固有値λは、主成分得点の標準偏差の2乗に等しい。固有値λが大きい主成分(固有値ベクトル)ほど、元のデータの情報を多く含んでいる。
第1主成分:最も大きい固有値に対応する主成分
第2主成分:第1主成分の次に大きい固有値に対応する主成分
・・・・・
第n主成分:最も小さい固有値に対応する主成分
主成分にデータ全体の情報がどれぐらい含まれているかは、その主成分に対応する固有値(標準偏差の2乗)が、固有値全体(標準偏差の2乗の合計)の中でどれぐらいの割合を占めているかによって表される。
各固有値が固有値全体に占める割合を「寄与率」、その寄与率を累積したものを「累積寄与率」と称する。主成分分析の場合、寄与率が大きい少数個の主成分を用いる。即ち、q個の主成分にデータ全体の何割の情報が含まれているかは、第q主成分までの累積寄与率を用いて表す。
【0035】
具体的に、主成分負荷量算出部11は、受信強度記憶部10に記憶された受信強度を用いて、以下のように主成分を分析する。
最初に、Xch
gの和をXとして、以下のように表す。
X=Σ
i=1qXch
i 式(2)
次に、Xの平均X
−を、以下のように表す。
X
−=1/N・Σ
n=1NXn 式(3)
また、共分散行列Sを、以下のように表す。
S=1/N・Σ
n=1N(Xn−X
−)(Xn−X
−)
T 式(4)
そして、固有値問題を解くことによって、固有値λ及び固有値ベクトルuが得られる。
S*u=λ*u 式(5)
これによって算出したλ及びuによって、主成分負荷量Leを、以下のように算出する(例えば非特許文献5参照)。ここで、主成分負荷量Leは、第e主成分まで算出可能である。
Le=√λ*u 式(6)
【0036】
主成分負荷量算出部11は、統計ソフトウェア「R」における関数prcomp又はprincompを用いることが好ましい(例えば非特許文献6及び7参照)。関数prcompによれば、固有値の代わりに、標準偏差(standard deviation)を出力する。標準偏差は、各主成分得点の標準偏差で、固有値の正の平方根に等しい。元の変数がn個あると、非ゼロである固有値及び主成分(固有ベクトル)はk(≦n)個を算出する。主成分分析の目的は、できるだけ少ない主成分に、元の変数の情報を吸収することにある。主成分分析によれば、第q番目の主成分までに、元の変数の情報がどれだけ吸収できたかが問題となる。その判断のために、寄与率と累積寄与率に関する情報が必要となる。例えば、5次元データについて、第2主成分までの累積寄与率が0.997(99,7%)である場合、そのデータの情報のほとんどが、第1、2主成分に縮約されている。
【0037】
[主成分負荷量範囲設定部12]
主成分負荷量範囲設定部12は、当該端末に対する複数(N>1)のデバイスの主成分負荷量Le
nにおける平均値Le
ave(=1/NΣ
n=1NLe
n)を算出し、当該平均値Le
aveを含む所定の主成分負荷量範囲を設定する。例えば、環境内にN=16個のタグデバイスが存在する場合、Le1〜Le16の平均値となる。主成分負荷量範囲設定部12は、所定の主成分負荷量範囲を、所定成分eに応じて以下のように設定する。
(Le
ave−v) ≦ LeN ≦ (Le
ave+w) 式(7)
v:平均値Le
ave以下となる範囲を表す所定係数
w:平均値Le
ave以上となる範囲を表す所定係数
【0038】
また、主成分負荷量範囲設定部12は、所定の主成分負荷量範囲を、所定成分eに応じて、平均値Le
aveを中央値として、当該主成分負荷量の標準偏差Le
stdに基づく分布範囲を以下のように設定することも好ましい。例えば、環境内にN=16個のタグデバイスが存在する場合、標準偏差も、Le1〜Le16の標準偏差となる。
(Le
ave−α*Le
std) ≦ LeN ≦ (Le
ave+α*Le
std) 式(8)
α:調整係数
【0039】
[受信強度選択部13]
受信強度選択部13は、当該デバイスから当該端末が受信した電波の受信強度に基づく現主成分負荷量Leが、主成分負荷量範囲に含まれる場合にのみ、当該デバイスから受信した電波の受信強度を採用する。即ち、端末(受信側)2とそのタグデバイス(送信側)3との間では、「LOS経路にある」と判定する。
逆に、主成分負荷量範囲に含まれない現主成分負荷量Leの受信強度は、除去する。即ち、端末(受信側)2とそのタグデバイス(送信側)3との間では、「LOS経路にない」と判定する。
【0040】
図5は、屋内環境における参照点位置を表す外観図である。
【0041】
図5によれば、屋内環境(縦8m×横7.5m×高さ3m)に、16個のタグデバイスが設置されている。
図5(a)は、遮蔽障害物がほとんどない環境であり、
図5(b)は、遮蔽障害物が存在する環境である。
図5(b)によれば、遮蔽障害物として、パーテーション(床からの高さ約150〜180cm)、ホワイトボード(床からの高さ約210cm)、アルミシート(天井からの長さ約210cm)が用いられている。パーテーション及びホワイトボードは、床に設置され、アルミシートは、天井から吊るされている。
【0042】
[フィンガープリント記憶部14]
フィンガープリント記憶部14は、学習フェーズとして、参照点位置毎に、当該端末に対するタグデバイス毎の電波の受信強度の組を予め記憶したものである。フィンガープリント記憶部14は、学習フェーズとして、端末を所持したオペレータが実際に所定範囲を移動することによって、参照点位置毎に、端末によって受信されたタグデバイス毎の電波の受信強度を記憶する。
【0043】
前述した
図5(a)によれば、端末2を所持したユーザが、屋内環境内を移動している。ここでは、33点の参照点位置における各タグデバイスからの電波の受信強度群が、フィンガープリント記憶部14で学習的に記憶される。尚、
図5における参照点位置は、ユーザの歩行速度をおよそ0.5m/sとし、1秒毎に計測した場合、参照点間はおよそ0.5mとなる。
【0044】
[位置推定部15]
位置推定部15は、フィンガープリント記憶部14を用いて、受信強度選択部13によって採用されたタグデバイス毎の電波の受信強度から、参照点位置を推定する。具体的には、フィンガープリントとしてのタグデバイス毎の受信強度群と、現に受信したクエリとなるタグデバイス単位の受信強度群とを比較する。そして、最も類似するフィンガープリントの受信強度群における参照点位置を選択する。結果的に、その参照点位置を、タグデバイスを所持するユーザの位置と推定する。
【0045】
図6は、本発明におけるフィンガープリント記憶部及び位置推定部のデータ構成を表す説明図である。
【0046】
図6によれば、参照点位置毎に、端末2によって受信された、複数のタグデバイス3からの複数の周波数成分に基づく受信強度群を表す。このデータ構成は、フィンガープリント記憶部14によって記憶される。このように、参照点位置毎の受信強度の次元数は増大する。そして、クエリとして、ユーザの端末2からの現受信強度群と、フィンガープリント記憶部14とを比較することによって、多数の次元数で比較して、最も近い参照点位置を検索する。
【0047】
<本発明に基づく位置推定の精度>
本発明に基づく位置推定の精度を表す評価指標として、「χ
2距離」を用いる。この値が小さいほど、周辺環境の変化(遮蔽障害の有無)の影響を受けていないことを意味する。
Duv=D(m
u,m
v)=1/2・Σ
r=1R{(o
u(r)−o
v(r))]
2/(o
u(r)+o
v(r))}
式(9)
Duv:χ
2距離
D(m
u,m
v):o
u及びo
vの差の総和
U:遮蔽障害ありの環境
V:遮蔽障害なしの環境
r:累積分布U及びVについて、座標o
u(X
w,Y
r)及びo
v(X
z,Y
r)は、累積分布の
縦軸をR個のセクションに分割した際の各セクションの座標
【0048】
図7は、χ
2距離における累積密度と誤差との関係を表すグラフである。
【0049】
図7によれば、同一の累積値であっても、遮蔽障害ありの環境Uの方が、遮蔽障害なしの環境Vよりも、位置推定の誤差が大きいことが理解できる。
【0050】
図8は、本発明と一般的方式とを比較した、評価結果及びχ
2距離を表す説明図である。
【0051】
本発明の効果を確認するため、受信強度の位置推定の技術(フィンガープリント方式)を用いて、環境の変化の前後で、χ
2距離を比較した。環境の変化は、環境内に遮蔽障害物を追加することによって計測した。
学習用データ(フィンガープリント):遮蔽障害なしの環境で収集したデータ群
位置推定データ :遮蔽障害ありの環境で収集したデータ群(P1,P2,P3,P4)
:遮蔽障害なしの環境で収集したデータ群(P5,P6,P7,P8)
主成分e=1
調整係数α=3
【0052】
学習データS1及び位置推定データP1〜P8を用いて、フィンガープリント方式で位置を推定した際における、
図5の黒丸点毎の誤差を累積分布で表す。そして、一般的なフィンガープリント方式の累積分布と、本発明に基づくフィンガープリント方式の累積分布とを、χ
2距離で算出した。4個のデータ群に基づく平均及び標準偏差を、遮蔽障害あり/なしの2種類で比較して算出した。
【0053】
図8によれば、遮蔽障害なしと遮蔽障害ありの環境で比較した場合、χ
2距離の平均値は以下のようになった。
一般的なフィンガープリントのχ
2距離の平均値 :0.606
本発明を用いたフィンガープリントのχ
2距離の平均値:0.433
本発明によれば、一般的な方式と比較して、χ
2距離で28%も、位置推定の精度が高まることが理解できる。
【0054】
また、遮蔽なし同士の環境(環境の変化がない)で比較した場合、χ
2距離の平均値は以下のようになった。
一般的なフィンガープリントでのχ
2距離の平均値 :0.062
本発明を用いたフィンガープリントのχ
2距離の平均値:0.046
いずれもχ
2距離で低い値となり、遮蔽障害の影響を受けていないことが理解できる。
【0055】
<LOS経路の受信強度を推定する従来技術>
従来、本願発明と異なるものとして、LOS経路の受信強度を推定する技術がある(例えば非特許文献8参照)。この技術によれば、LOS経路の電波伝搬(送信機と受信機との間で通信される電波の挙動)を、フリスの公式によって、以下のように表す。
Pr=|p
→|=PtGtGrλ
2/(4πd)
2 式(10)
Pr:受信機の受信強度(dBm)
Pt:送信機の送信出力(dBm)
Gt:送信機のアンテナ利得(dBm)
Gr:受信機のアンテナ利得(dBm)
λ:電波の波長(m)
d:LOS経路の経路長(m)
【0056】
しかしながら、実環境によれば、LOSではないNLOS(None-Line-of-Sight)経路が多く存在し、反射等によって、以下のようにエネルギーが低下する。
|p
→|=γ{PtGtGrλ
2/(4πd)
2} 式(11)
γ:反射係数(γ∈(0,1))
【0057】
ここで、LOS経路の経路長dは、実環境における受信機及び送信機の間の距離とは異なる。マルチパス環境下における受信機における受信強度は、全ての経路を組み合わせて算出され、以下のように表される。
|p
→|=|Σ
i=1np
i→| 式(12)
【0058】
送信機と受信機との間で、n個の電波伝播経路を想定した場合、以下のように表される。
|p
→|=((Σ
i=1n(γ
i{PtGtGrλ
2/(4πd)
2sin(d
i/λ)))
2
+(Σ
i=1n(γ
i{PtGtGrλ
2/(4πd)
2cos(d
i/λ))
2)
1/2
=f(γ
i,di) 式(13)
式(4)によれば、各経路の直交分解を用いて、合成したシグナルの受信電力を得る。Pt,Gt,Gr及びπは、一定値であり、Ptは、利用者による設定値である。送信機と受信機のアンテナ利得は、機器仕様として決定されている。
【0059】
最大チャネル数をmとすると、これらのチャネルの波長は、λj, j∈[1,m]となる。そのため、電波の波長の違いによって異なる受信電力を得ることになり、以下の式のように表される。
ε
1=f
λ1(d
1・・・,d
n,γ
1・・・,γ
n)−|p
λ1→|,
ε
2=f
λ2(d
1・・・,d
n,γ
1・・・,γ
n)−|p
λ2→|,
・・・・・
ε
m=f
λm(d
1・・・,d
n,γ
1・・・,γ
n)−|p
λm→| 式(14)
Min(Σ
j=1m(ε
j)
2) 式(15)
【0060】
ここで、ε
iは、個々の誤差差分である。誤差差分を最小化する適切なd
1・・・,d
n,γ
1・・・,γ
nを算出することを目的とする。前述した式(12)を満たす際のd
1の値がLOSの経路長となる。そのd
1を式(10)に改めて代入することにより、LOSの受信強度を算出することができる。
【0061】
しかしながら、非特許文献4に記載の従来技術によれば、算出されるLOS経路の受信強度は、必ず何らかの値が算出される。そのために、送信機と受信機との間に、設置物や人物等が存在し、LOS経路が遮蔽される場合であっても、本来存在しないLOS経路の受信強度を算出することとなる。即ち、LOS経路を遮蔽された受信機及び送信機の組を推定できないと。その点で、本願発明と全く異なるものである。
【0062】
以上、詳細に説明したように、本発明の管理装置、端末、プログラム及び方法によれば、遮蔽障害が少ない受信強度を選択することができる。これによって、電波の受信強度を用いた位置推定の精度を高めることができる。このような機能は、O2Oに限らず、IoT(Internet of Things)やIoE(Internet of Everything)、M2M(Machine-to-Machine)など、様々な近距離無線通信システムに適用することができる。
【0063】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0064】
1 管理装置
10 受信強度記憶部
11 主成分負荷量算出部
12 主成分負荷量範囲設定部
13 受信強度選択部
14 フィンガープリント記憶部
15 参照点位置推定部
2 端末
3 デバイス、タグデバイス