(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のモニタリング方法では詳細な計測ができず、例えば地盤内部の応力状態に起因する地盤の特性値を詳細に計測することはできなかった。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、地盤の特性値を詳細に計測できるモニタリングシステム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するための第1の発明は、地盤に挿入された棒材の長手方向に沿って取り付けられた光ファイバーケーブルと、
第1のグラウンドアンカーの地盤への打設時に、前記光ファイバーケーブルの光ファイバーの長手方向に沿った歪分布を計測する歪分布計測装置と、前記歪分布から地盤の特性値
として前記第1のグラウンドアンカーによる地盤への導入応力を求める特性値算出装置と、
前記特性値に基づいて決定された緊張力で緊張して地盤に打設された第2のグラウンドアンカーと、を含むことを特徴とするモニタリングシステムである。
【0007】
前記棒材
は螺旋状に撚り合せたPC鋼線を有する緊張材であり、前記光ファイバーケーブルは隣り合う前記PC鋼線の間に沿わせて螺旋状に配置され、前記PC鋼線および前記光ファイバーケーブルの外側で防食被覆がされていることが望ましい
。緊張材は例えば一端を前記地盤内に固定し、他端を前記地盤の斜面に定着したグラウンドアンカーである。
【0008】
第1の発明のモニタリングシステムは、前記光ファイバーケーブルの光ファイバーに検査光を入射して反射光を検出し、光ファイバーの長手方向に沿った反射光の光量分布を計測する光量分布計測装置と、前記光量分布から異常検出を行う異常検出装置と、を更に含むことが望ましい。また、異常が検出された場合に警報を行う警報装置を更に含むことも望ましい。
【0009】
第2の発明は、歪分布計測装置により、地盤に挿入された棒材の長手方向に沿って取り付けられた光ファイバーケーブルの光ファイバーの長手方向に沿った歪分布を
第1のグラウンドアンカーの地盤への打設時に計測し、特性値算出装置により、前記歪分布から地盤の特性値
として前記第1のグラウンドアンカーによる地盤への導入応力を求め
、第2のグラウンドアンカーを、前記特性値に基づいて決定された緊張力で緊張して地盤に打設することを特徴とするモニタリング方法である。
【0010】
前記棒材
は螺旋状に撚り合せたPC鋼線を有する緊張材であり、前記光ファイバーケーブルは隣り合う前記PC鋼線の間に沿わせて螺旋状に配置され、前記PC鋼線および前記光ファイバーケーブルの外側で防食被覆がされていることが望ましい
。緊張材は例えば一端を前記地盤内に固定し、他端を前記地盤の斜面に定着したグラウンドアンカーである。
【0011】
第2の発明のモニタリング方法では、光量分布計測装置により、前記光ファイバーケーブルの光ファイバーに光を入射して反射光を検出し、光ファイバーの長手方向に沿った反射光の光量分布を計測し、異常検出装置により、前記光量分布から異常検出を行い、異常が検出された場合に、前記光ファイバーケーブルを前記歪分布計測装置に接続し、前記歪分布計測装置による前記歪分布の計測と、前記特性値算出装置による前記特性値の算出を行うことが望ましい。また異常が検出された場合に、警報装置により警報を行うことが望ましい。
【0012】
本発明では、長手方向に沿って光ファイバーケーブルを取付けた棒材を地盤に挿入し、地盤内の応力状態に応じて棒材ひいては光ファイバーケーブルの光ファイバーが歪むことを利用し、光ファイバーの延長に沿った歪分布をBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer)、BOCDA(Brillouin Optical Correlation Domain Analysis)、FBG(Fiber Bragg Grating)方式等の手法により計測することで、地盤内部の応力状態に起因する様々な特性値を精緻に得ることができ、災害防止等につながる。
【0013】
また棒材として緊張材を用い、緊張材をグラウンドアンカーとすることで、地盤の補強時に本発明のモニタリング方法を適用できる。さらに前記の防食被覆を行うことで、光ファイバーケーブルが棒材に好適に固定される。
【0014】
ただし、BOTDR、BOCDA、FBG方式等による計測装置は高価であるので、常時は安価なOTDR(Optical
Time Domain Reflectometer)方式による計測装置を用いて光ファイバーの長手方向に沿った反射光の光量分布から異常検出を行い、異常時に警報を発するなどしてBOTDR、BOCDA、FBG方式等による計測装置に切り替え、歪分布の計測と地盤の特性値の算出を行うようにしておくと全体として低コストである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、地盤の特性値を詳細に計測できるモニタリングシステム等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
(1.モニタリングシステム1)
図1は本発明の第1の実施形態に係るモニタリングシステム1を示す図である。モニタリングシステム1は地盤4のモニタリングを行うものであり、光ファイバー組込式PC鋼材10(棒材)、モニタリング部2等を有する。
【0019】
光ファイバー組込式PC鋼材10は、光ファイバーケーブルを長手方向に沿って取付けたPC鋼材(緊張材)である。光ファイバー組込式PC鋼材10は、従来のグラウンドアンカーと同様にして地盤4に打設し、地盤4に圧縮力を導入して補強を行う。
【0020】
図2は光ファイバー組込式PC鋼材10を示す図である。
図2(a)は光ファイバー組込式PC鋼材10の端部を側方から見た図であり、
図2(b)は光ファイバー組込式PC鋼材10の長手方向と直交する方向の断面を見た図である。
【0021】
本実施形態では、光ファイバー組込式PC鋼材10として、中心のPC鋼線11の周囲に6本のPC鋼線11を螺旋状に撚り合わせたPC鋼撚り線が用いられる。
【0022】
光ファイバーケーブル12(以下、ケーブルということがある)は隣り合うPC鋼線11の間に沿わせて光ファイバー組込式PC鋼材10の外面で螺旋状に配置され、光ファイバー組込式PC鋼材10の長手方向に沿って略全長に渡り連続的に取り付けて一体化される。ケーブル12は光ファイバーを被覆材等で被覆したものであり、BOTDR、BOCDA、FBG等の既知の手法により光ファイバーの長手方向に沿った歪分布を計測するために用いられる。
【0023】
各PC鋼線11の長手方向と直交する方向の断面は略円形であり、ケーブル12の長手方向と直交する方向の断面は略三角形状となっている。ケーブル12は断面の略三角形の頂点を中心のPC鋼線11に向けることで、隣接するPC鋼線11の間の隙間に収まりよく配置でき、
図2(b)の点線で示す光ファイバー組込式PC鋼材10の外接六角形内にうまく収めることができる。
【0024】
なお、光ファイバーケーブル12は、PC鋼線11との接着力が、光ファイバー組込式PC鋼材10の周囲に充填される後述の充填材42との接着力より大きくなるように接着される。例えば、撚り合わせたPC鋼線11およびケーブル12の外側で防食被覆を施すことは、ケーブル12のPC鋼材11への接着力の向上とグラウト等の充填材42との接触を防ぐ上で好適である。
図2(c)は防食被覆を施した光ファイバー組込式PC鋼材10’の例であり、この例では、防食被覆として、PC鋼線11やケーブル12がPE(ポリエチレン)管等の外管15内に収容され、外管15の内部に防食材16が充填される。
【0025】
図1に示すように、光ファイバー組込式PC鋼材10は、地盤4に形成した穴41に挿入して一方の端部を固定部13で地盤4に固定し、他方の端部を緊張して支圧板14で地盤斜面に定着し、穴41内を充填材42で充填し地盤4と一体化することでグラウンドアンカーとして地盤補強に用いられる。
【0026】
モニタリング部2は、計測装置20(歪分布計測装置)、PC30(特性値算出装置)等を有する。モニタリング部2は、光ファイバーの長手方向に沿った歪分布の計測を行い、歪分布のデータから地盤の特性値を算出する。
【0027】
計測装置20はケーブル12と接続され、光ファイバーに検査光を入射して光ファイバーからの反射光を検出し、反射光の分析を行うことでBOTDR、BOCDA、FBG等の手法による歪分布の計測を行う。計測した歪分布のデータはPC30に入力される。
【0028】
BOTDR、BOCDA、FBG等の手法は既知である(例えば、特開2008-224338号公報、特開2009-236813号公報、特開2012-132927号公報参照)ので簡単に説明すると、例えばBOTDR方式では計測装置20によって光ファイバーに検査光を入射するとともに反射光としてブリルアン散乱光を検出し、そのスペクトルを分析する。詳細は省略するが、検査光の入射から反射光の検出までの時間遅れによって反射光の発生位置を特定し、反射光における周波数のシフト量から当該位置での歪の値が得られる。
【0029】
BOCDA方式の場合、折り返して配置したケーブル12の両端を計測装置20に接続し、計測装置20によって光ファイバーの両端から検査光を入射する。詳細は省略するが、BOCDA方式では両検査光の制御によりブリルアン散乱光の発生位置を制御し、その位置でのブリルアンゲインスペクトルから周波数のシフト量を得ることで歪を計測できる。BOTDR、BOCDA方式のいずれの場合でも光ファイバーの長手方向に沿った連続的な歪分布の計測を行うことができる。
【0030】
FBG方式の場合、光ファイバーの長手方向の複数の位置に屈折率を変化させた回折格子を設けておき、計測装置20によって検査光を光ファイバーに入射して反射光を検出する。詳細は省略するが、FBG方式では反射光における周波数のシフト量から各回折格子における歪を計測でき、各回折格子の位置での歪の値から光ファイバーの長手方向に沿った断続的な歪分布の計測を行うことができる。
【0031】
図1の説明に戻る。PC30は、計測装置20から入力された歪分布のデータを表示したり、歪分布のデータから地盤の特性値を算出する。
【0032】
図3はPC30のハードウェア構成を示す図である。
図3に示すように、PC30は、例えば制御部31、記憶部32、入力部33、表示部34、通信部35等をバス36により接続して構成されたコンピュータにより実現できる。但しこれに限ることなく、適宜様々な構成をとることができる。
【0033】
制御部31は、CPU、ROM、RAMなどから構成される。CPUは、記憶部32、ROMなどの記録媒体に格納されたPC30の処理に係るプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行する。ROMは不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOSなどのプログラム、データなどを恒久的に保持している。RAMは揮発性メモリであり、記憶部32、ROMなどからロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部31が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0034】
記憶部32は例えばハードディスクドライブであり、制御部31が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OSなどが格納される。これらのプログラムやデータは、制御部31により必要に応じて読み出され、RAMに移して実行される。
【0035】
入力部33はデータの入力を行い、例えばキーボード、マウスなどのポインティングデバイス、テンキーなどの入力装置を有する。
表示部34は、液晶パネルなどのディスプレイ装置等を有する。
通信部35は、ネットワークを介した通信を媒介する通信インタフェースであり、他の装置との間で通信を行う。
バス36は、各部間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0036】
(2.地盤4のモニタリング方法)
次に、本実施形態に係る地盤4のモニタリング方法について
図4等を参照して説明する。
図4は地盤4のモニタリング方法を示すフローチャートである。
【0037】
本実施形態では、光ファイバー組込式PC鋼材10をグラウンドアンカーとして地盤4に打設する(S11)。また、光ファイバー組込式PC鋼材10の光ファイバーケーブル12を計測装置20に接続し(S12)、光ファイバーの長手方向に沿った歪分布の計測を開始する(S13)。
【0038】
図5(a)に示すように、光ファイバー組込式PC鋼材10が地盤4からせん断力Sを受けて歪むと光ファイバーケーブル12(
図2参照)の光ファイバーも同様に歪む。
図5(b)に示すように、せん断力Sが大きいほど歪も大きくなり、光ファイバーの歪と地盤4から受けるせん断力Sは相関する。従って、光ファイバーの長手方向に沿った歪分布の値から地盤4内の応力状態に起因する様々な地盤4の特性値を算出できる。
【0039】
フローチャートの説明に戻る。PC30は光ファイバーの歪分布のデータを計測装置20から取得し、歪分布から地盤4の特性値として地盤4の滑り面の位置を算出する(S14)。
【0040】
本実施形態では、例えば有限要素法等を用いて地盤4の解析を予め行い、
図6(a)に示すような地盤4の滑り面の位置43a〜43dと、滑り面が各位置43a〜43dにある場合の光ファイバー組込式PC鋼材10の長手方向に沿った歪分布の形状、大きさ等の関係を求め、PC30の記憶部32に記憶しておく。そして、計測装置20から取得した光ファイバー(光ファイバー組込式PC鋼材10)の歪Pの分布(
図6(b)参照)と一致する歪分布となる滑り面の位置(
図6(b)の例では位置43c)を、地盤4の滑り面の位置として算出する。
【0041】
計測装置20は光ファイバーの歪分布をリアルタイムで計測し、PC30は歪分布の値を取得して滑り面の位置を継時的に算出する。こうして地盤4の滑り面の位置を継時的に求めることで地盤4のモニタリングを行う。PC30は、歪分布の形状、大きさの時間変化から滑り面の将来予測を行うことも可能である。
【0042】
S14で算出する地盤4の特性値は滑り面の位置に限らず、上記と同様の手法で歪分布から斜面の位置を算出し、歪分布の形状、大きさの時間変化から斜面の移動量を同定して斜面の挙動を評価することも可能である。
【0043】
このように、歪分布の計測と解析の組合せで地盤4内の応力状態に起因する様々な地盤4の特性値が詳細に算出できる。例えば、各種条件(降雨、地震時など)下での地盤斜面を対象とした解析シミュレーションに歪分布の計測結果を用い、シミュレーションの実施により、歪分布やその時間変化から地盤4の特性値として斜面崩壊リスクの算出や今後の予測を行って地盤4の健全性を評価することもできる。その他、別のグラウンドアンカーを打設した際に計測された歪分布やその時間変化から、当該グラウンドアンカーによる地盤4への導入応力を地盤4の特性値として算出、評価し、更に別のグラウンドアンカーを打設する時の緊張力等を決定する際に用いることも可能である。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、長手方向に沿って光ファイバーケーブル12を取付けた光ファイバー組込式PC鋼材10を地盤4に挿入し、地盤4内の応力状態に応じて光ファイバー組込式PC鋼材10ひいては光ファイバーケーブル12の光ファイバーが歪むことを利用し、光ファイバーの延長に沿った歪分布をBOTDR、BOCDA、FBG方式等により計測することで、地盤4内の応力状態に起因する様々な特性値を精緻に得ることができ、災害防止等につながる。
【0045】
本実施形態では光ファイバー組込式PC鋼材10をグラウンドアンカーとすることで、地盤4の補強時にモニタリングを行うことができる。また、前記の防食被覆を行うことで、撚り合わせたPC鋼線11に対し光ファイバーケーブル12が好適に固定される。しかしながらこれに限ることはなく、地盤4に挿入する棒材であれば同様の光ファイバーケーブル12を長手方向に取り付けてモニタリングに用いることができ、また設置位置も地盤4の斜面に限らない。
【0046】
その他、
図7のモニタリングシステム1’に示すように、モニタリング部2’において、例えばBOTDRとFBGなど複数の手法による計測を行う複数の計測装置20a、20bを設けることもできる。モニタリング部2’では、光ファイバーケーブル12に接続された光スイッチ21により、どちらの方法で光ファイバーの歪分布の計測を行うかを定めることができる。
【0047】
次に、本発明に係るモニタリングシステムの別の例について第2の実施形態として説明する。第2の実施形態は第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、同様の構成については同じ符号を付すなどして説明を省略する。
【0048】
[第2の実施形態]
(1.モニタリングシステム1a)
図8は第2の実施形態に係るモニタリングシステム1aを示す図である。
図8に示すモニタリングシステム1aは、モニタリング部2aとして計測装置20c、PC30、警報装置50を含む。
【0049】
計測装置20c(光量分布計測装置)はケーブル12と接続され、OTDR方式による異常検出を行うため、光ファイバーに検査光を入射して光ファイバーからの反射光を検出し、その分析を行う。OTDR方式による計測装置20cは安価で常設に好適であり、本実施形態ではOTDR方式による計測装置20cを用いて常時のモニタリングを行う。
【0050】
OTDR方式は既知であるので簡単に説明すると、光ファイバーに検査光を入射させてその反射光の光量(強度)を計測するものである。詳細は省略するが、OTDR方式では検査光の入射から反射光の検出までの時間遅れによって反射光の発生位置を特定するとともに、その位置で生じた反射光の光量(すなわち、検査光に対する光損失)を得ることで、光ファイバーの長手方向に沿った各位置で生じた反射光の光量(光ファイバーの長手方向に沿った反射光の光量分布)を計測できる。
【0051】
計測装置20cによって計測された反射光の光量分布のデータはPC30に入力される。地盤4内部のせん断力などにより光ファイバー組込式PC鋼材10の歪み、PC鋼線11の破断や損傷が生じて光ファイバーが歪んだり、あるいは光ファイバー自体の損傷や破断等が生じると上記の光量分布が変化するので、OTDR方式ではこの光量分布により異常検出を行うことができる。
【0052】
PC30(異常検出装置)は計測装置20cから入力された反射光の光量分布のデータを表示したり、反射光の光量分布から異常検出を行う。例えば光ファイバーやPC鋼線11の破断を異常として検出する場合、それらの異常に対応させて判定に用いる閾値を定め、閾値との比較により任意の位置での反射光の光量やその変動が異常値と判定された場合に警報装置50に警報信号を出力する。上記の変動は、隣接位置の光量との差であってもよいし、光量の時間変化であってもよい。
【0053】
警報装置50は、PC30からの警報信号の入力に応じて警報を発信する。警報は、無線による管理者へのシグナル送信、メール送信、現地でのアラーム、光表示等によって、視覚的あるいは聴覚的な警報の発信を行うものである。
【0054】
(2.地盤4のモニタリング方法)
次に、
図9等を参照して本実施形態に係る地盤4のモニタリング方法について説明する。
図9は地盤4のモニタリング方法を示すフローチャートである。
【0055】
本実施形態においても、光ファイバー組込式PC鋼材10をグラウンドアンカーとして地盤4に打設する(S21)。また、OTDR方式による計測装置20c等を設け、光ファイバー組込式PC鋼材10の光ファイバーケーブル12を計測装置20cに接続する(S22)。そして前記したように計測装置20cによって光ファイバーの長手方向に沿った反射光の光量分布の計測を開始し、PC30によって光量分布による異常検出を開始する(S23)。
【0056】
計測装置20cは光ファイバーの長手方向に沿った反射光の光量分布をリアルタイムで計測し、PC30は光量分布の値を取得して経時的に異常検出を行う。
【0057】
異常を検出しない場合(S24;NO)にはそのまま異常検出を続けるが、前記したように反射光の光量分布から破断等の異常を検出した場合(S24;YES)、PC30から警報装置50に警報信号を出力し、警報装置50により警報を発信する(S25)。
【0058】
この警報に応じて、管理者等は地盤4等の危険性を認識でき、適切な処置を施すことができる。本実施形態では、必要に応じて光ファイバー組込式PC鋼材10や光ファイバー等の修復、地盤4の補強等を行い、モニタリングシステム1aとして計測装置20(
図8参照)を設置し詳細点検として第1の実施形態の手法によるモニタリングを行う。
【0059】
すなわち、光ファイバーケーブル12を計測装置20に接続し(S26)、前記と同様に光ファイバーの長手方向に沿った歪分布の計測を開始する(S27)。
【0060】
PC30(特性値算出装置)は第1の実施形態と同様に歪分布から地盤4の特性値を算出し(S28)、地盤4のモニタリングを行い健全性などを評価する。歪分布や地盤4の特性値を閾値と比較して異常検出を行い、これらの値やその変動が異常値と判定された場合に警報装置50により前記と同様の警報を行うことも可能である。前記したモニタリングシステム1においても同様の警報装置50を設け上記のような警報を行うようにしてもよい。
【0061】
本実施形態では、常時は安価であり常設に好適なOTDR方式による計測装置20cを用いて異常検出を行い、警報装置50により異常を管理者等に認識させ、異常発生時に適切な処置を施すことができる。本実施形態では第1の実施形態のモニタリング方法を実施し詳細なモニタリングを行うが、この場合でも常時にOTDR方式によるモニタリングを行うことで、全体として低コストなシステムとできる。なお、第1の実施形態によるモニタリングに切り替えるタイミングは上記のような異常発生時に限らず、数年に1回など定期的なものであってもよい。
【0062】
また、本実施形態のOTDR方式によるモニタリング方法は、グラウンドアンカーとして地盤4に打設した光ファイバー組込式PC鋼材10に適用するものに限らない。例えば
図10(a)、(b)のモニタリングシステム1bは、光ファイバー組込式PC鋼材10を用いて橋梁の主桁等の桁材60にプレストレスを導入した場合の適用例であり、光ファイバー組込式PC鋼材10に加え、計測装置20c、PC30、警報装置50等からなるモニタリング部2bを有する。なお
図10(a)、(b)の桁材60は箱桁の一部を示したものである。
【0063】
図10(a)は光ファイバー組込式PC鋼材10を桁材60の内部に通して内ケーブルとして用いた例であり、
図10(b)は光ファイバー組込式PC鋼材10を桁材60の張出部61に通して外ケーブルとして用いた例である。
【0064】
これらの場合、例えば桁材60に加わるせん断力が大きくなると、光ファイバー組込式PC鋼材10の歪み、PC鋼線11の破断や損傷が生じて光ファイバーが歪んだり、あるいは光ファイバー自体の損傷や破断等が生じて上記の光量分布が変化するので、前記のS21〜S25の手順で異常検出とこれによる警報発信により桁材60の危険性を認識でき、適切な処置が施せるようになる。
【0065】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。